JP2018203806A - ポリビニルアルコール系樹脂組成物、成形物、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、接着剤、医薬品の結合剤、分散剤、フィルム、化粧品等が挙げられる。
中でも近年、食品包装材、医薬品の包装材、農業用の包装材など、包装材としての要望が高まっており、PVA系樹脂や糖類を用いた包装材が各種の用途で用いられるようになった。
そこで本発明は、低湿度下での耐ひび割れ性、及び高湿度下での強度の両立の問題を解決し、低湿度下での耐ひび割れ性、かつ高湿度下での包装材の形状安定性に優れるフィルム等の成形物を提供することを目的とするものである。
以下の工程[I]及び[II]を順次行い成形物を得ることを特徴とする成形物の製造方法に関するものである。
[I]ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部と糖類(B)30〜50重量部を含有する樹脂組成物を水溶液にする溶解工程
[II]得られた水溶液を、乾燥温度50℃以下で乾燥する乾燥工程
本発明においては、PVA系樹脂及び糖類を、例えば樹脂組成物の水溶液とすることにより、水に溶解した糖類は可塑剤として作用し、溶解しきれなかった糖類はフィラーとして作用することとなり、弾性率が向上し高湿度下では強度に優れる。また、乾燥温度を比較的低温とすることにより、成形物の表面にPVA系樹脂が多く存在することとなり、低湿度下では破断のびが向上し、ひび割れが生じないものである。
以下の工程[I]及び[II]を順次行い成形物を得ることを特徴とする成形物の製造方法である。
[I]ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部と糖類(B)30〜50重量部を含有する樹脂組成物を水溶液にする溶解工程
[II]得られた水溶液を、乾燥温度50℃以下で乾燥する乾燥工程
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
PVA系樹脂(A)は、ビニルエステル系単量体を共重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
平均重合度が小さすぎると成形物の強度が低下する傾向があり、大きすぎると水溶液の安定性、及びハンドリング性が低下する傾向がある。
ケン化度が低すぎると、水溶性が低下する傾向があり、高すぎると、成形物の柔軟性が低下する傾向がある。
かかる変性PVA系樹脂中の変性種、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きく異なるため一概には言えないが、通常、0.1〜20モル%であり、特に0.5〜12モル%、更に1〜10モル%の範囲が好ましく用いられる。
次に、本発明で用いられる糖類(B)について説明する。
糖類(B)としては、例えば、マンニトール、イソマルツロース、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられる。中でも、低吸湿性の点でマンニトールが特に好ましい。
かかる吸水率は、30℃、90%RH下で糖類を保管し、1週間後の重量を測定し、保管前からの重量変化より求めるものとする。
吸水率(重量%)=〔(W2−W1)/W1〕×100
W1:吸水前の試料の重量
W2:吸水後の試料の重量
本発明においては、PVA系樹脂(A)と糖類(B)を含有するものであるが、糖類(B)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、30〜50重量部であり、好ましくは35〜50重量部、更に好ましくは40〜50重量部である。かかる含有量が多すぎると成形物の強度が低下することとなり、少なすぎると成形物の耐ひび割れ性が低下することとなる。
かかる破断のびの測定方法は以下の通りである。
即ち、樹脂組成物から得られたフィルムに対して、オートグラフ(島津製作所社製、AG−IS)を用いて、幅10mm、つかみ具間距離50mm、引張速度100mm/minにて引張試験を行い、そのときの破断のびを算出するものである。
なお、破断のびの測定に当たっては、既にフィルムとして存在する場合は、そのまま該フィルムを用いて、25℃、20%RHで1週間放置した後のフィルムについて破断のびを測定することができ、樹脂組成物として存在する場合は、例えば、以下の(1)及び(2)の方法でフィルムとし破断のびを測定することができる。
(1)PVA系樹脂(A)と糖類(B)を水に溶解させ、樹脂組成物水溶液を作製する。
(2)得られた樹脂組成物水溶液を100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材に塗工し、40℃で2時間乾燥して、膜厚100μmのフィルムとし、その後25℃、20%RHで1週間放置し、フィルムを得る。
かかる弾性率の測定方法は以下の通りである。
即ち、樹脂組成物から得られたフィルムに対して、オートグラフ(島津製作所社製、A
G−IS)を用いて、幅10mm、つかみ具間距離50mm、引張速度100mm/min
にて引張試験を行い、そのときの弾性率を算出するものである。
なお、以下の(1)及び(2)の方法でフィルムとし弾性率を測定することができる。
(1)PVA系樹脂(A)と糖類(B)を水に溶解させ、樹脂組成物水溶液を作製する。
(2)得られた樹脂組成物水溶液を100μmのPET基材に塗工し、80℃で2時間乾
燥して、膜厚100μmのフィルムとし、その後25℃、65%RHで1週間調湿し、フ
ィルムを得る。
吸湿性(吸水率)を調整する、(2)PVA系樹脂のケン化度を調整する、(3)フィル
ムの含水率を調整する等の方法が挙げられ、中でもフィルム作製時の簡便性の点で(1)
の方法が好ましい。
上記の他の水溶性高分子の含有量としては、樹脂組成物に対して、10重量%以下、特には5重量%以下が好ましい。
(i)PVA系樹脂(A)の粉末と糖類(B)の粉末とを混合し、水溶液とする方法、(ii)PVA系樹脂(A)の水溶液に糖類(B)の粉末を添加し、水溶液とする方法、(iii)糖類(B)の水溶液にPVA系樹脂(A)の粉末を添加し、水溶液とする方法、(iv)PVA系樹脂(A)の水溶液と糖類(B)の水溶液を混合する等が挙げられる。
中でも製造効率の点から(i)と(iii)の方法が好ましい。
本発明の樹脂組成物の用途としては、例えば、下記の(1)〜(10)に示すような各種用途が挙げられる。
(1)成形物関係:繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用、水溶性繊維等。
(2)接着剤関係:錠剤のバインダー、木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着剤、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤等。
(3)被覆剤関係:錠剤のコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、暫定塗料等。
(4)疎水性樹脂用ブレンド剤関係:疎水性樹脂の帯電防止剤、および親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤等。
(5)増粘剤関係:各種水溶液やエマルジョンや食料品や医薬品の増粘剤等。
(6)凝集剤関係:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水性等。
(7)交換樹脂等関係:イオン交換樹脂、キレート交換樹脂、イオン交換膜等。
(8)その他:土壌改良剤、感光剤、感光性レジスト樹脂等。
上記の中でも特に、本発明の樹脂組成物は、フィルムやシート等の成形物やコーティング剤として有用であり、特にフィルムや容器等の成形物として有用である。
〔成形物〕
本発明においては、上記樹脂組成物を用いて成形物が得られる。かかる成形物の形状としては、例えば、フィルム状、カップ状、チューブ状、中空状、カプセル状などが挙げられ、特にフィルム状のものが好適に用いられる。
[I]PVA系樹脂(A)100重量部と糖類(B)30〜50重量部を含有する樹脂組成物を水溶液にする溶解工程
[II]得られた水溶液を、乾燥温度50℃以下で乾燥する乾燥工程
成形物の作製、とりわけフィルムの作製について以下に説明するが、フィルム以外の他の成形物の場合でもこれに準じて行えばよい。
以下、流延法について説明する。
[I]のPVA系樹脂(A)100重量部と糖類(B)30〜50重量部を含有する樹脂組成物を水溶液にする溶解工程において、樹脂組成物の固形分濃度は、通常5〜30重量%、好ましくは8〜20重量%、特に好ましくは10〜15重量%である。
かかる樹脂組成物の固形分濃度が低すぎると生産性が低下する傾向があり、高すぎると高粘度となってドープの脱泡に時間を要したり、フィルム製膜時にダイラインが発生する傾向がある。
また、乾燥温度としては、50℃以下であり、より好ましくは10〜48℃、特に好ましくは20〜45℃である。かかる温度が低すぎると乾燥に時間を要してしまう傾向があり、高すぎると低湿度下での耐ひび割れ性が悪化したり、製膜時に発泡してしまう傾向がある。
また乾燥時間は、通常0.1〜6時間、好ましくは1〜4時間、特に好ましくは2〜3時間である。
又、該フィルムの表面はプレーンであってもよいが、ブロッキング性、加工時の滑り性、製品同士の密着性軽減の点から、該フィルムの片面或いは両面にエンボス模様や梨地模様等を施しておくこともできる。
例えば、飲食品用包装材、薬剤(農薬、医薬)の包装材、医薬用カプセル、繊維、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用繊維、水溶性繊維、容器、バッグインボックス用内袋、容器用パッキング、医療用輸液バッグ、有機液体用容器、有機液体輸送用パイプ、各種ガスの容器(チューブ、ホース)などが挙げられる。また、各種電気部品、自動車部品、工業用部品、レジャー用品、スポーツ用品、日用品、玩具、医療器具などに用いることも可能である。
[樹脂組成物水溶液(1)の作製]
マンニトール(和光純薬社製)7.5部を85部の水に添加後、室温で10分撹拌し完全に溶解させ、8.1%水溶液を得た。得られたマンニトール水溶液にPVA(ケン化度88モル%、平均重合度2400)15部を添加後、85℃に昇温させPVAを溶解し、樹脂組成物水溶液(1)を作製した。
上記で得られた樹脂組成物水溶液(1)を100μmのPET基材に塗工し、40℃で2時間乾燥して、膜厚100μmのフィルムとして、25℃、20%RHで1週間放置し、フィルム(1)を得た。
得られたフィルム(1)について、以下の評価を行った。
25℃、20%RHの環境下で、上記で得られたフィルム(1)の引張試験を実施した。引張試験は、オートグラフ(島津製作所社製、AG−IS)を用いて、幅10mm、つかみ具間距離50mm、引張速度100mm/minで行い、破断のびを算出した。
上記で得られた樹脂組成物水溶液(1)を100μmのPET基材に塗工し、40℃で2時間乾燥して、膜厚100μmのフィルムとして、25℃、65%RHで1週間調湿し、フィルム(2)を得た。
得られたフィルム(2)について、以下の評価を行った。
25℃、65%RHの環境下で、上記で得られたフィルム(2)の引張試験を実施した。引張試験は、オートグラフ(島津製作所社製、AG−IS)を用いて、幅10mm、つかみ具間距離50mm、引張速度100mm/minで行い、弾性率を算出した。
実施例1において、マンニトールの含有量を3部にした以外は、実施例1と同様にして、25℃、20%RHで1週間放置した後のフィルム(3)、25℃、65%RHで1週間調湿した後のフィルム(4)を得て、実施例1と同様に評価した。
実施例1において、マンニトールの含有量を9部にした以外は、実施例1と同様にして、25℃、20%RHで1週間放置した後のフィルム(5)、25℃、65%RHで1週間調湿した後のフィルム(6)を得て、実施例1と同様に評価した。
実施例1において、フィルムの乾燥を60℃で2時間行ったこと以外は、実施例1と同様にして、25℃、20%RHで1週間放置した後のフィルム(7)、25℃、65%RHで1週間調湿した後のフィルム(8)を得て、実施例1と同様に評価した。
Claims (7)
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)と糖類(B)を含有する樹脂組成物において、糖類(B)の含有量が、ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して、30〜50重量部であり、前記樹脂組成物からなるフィルムを25℃、20%RHで1週間放置した際の該フィルムの破断のびが20〜80%であることを特徴とする樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)のケン化度が60〜100モル%であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)の平均重合度が200〜4000であることを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の樹脂組成物。
- 糖類(B)の吸水率が1.003重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)と糖類(B)を含有する樹脂組成物からなるフィルムを、25℃、65%RHで1週間調湿した際の該フィルムの弾性率が600N/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形物。
- 以下の工程[I]及び[II]を順次行い成形物を得ることを特徴とする成形物の製造方法。
[I]ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部と糖類(B)30〜50重量部を含有する樹脂組成物を水溶液にする溶解工程
[II]得られた水溶液を、乾燥温度50℃以下で乾燥する乾燥工程
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