JP2018199659A - バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤 - Google Patents

バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2018199659A
JP2018199659A JP2017106000A JP2017106000A JP2018199659A JP 2018199659 A JP2018199659 A JP 2018199659A JP 2017106000 A JP2017106000 A JP 2017106000A JP 2017106000 A JP2017106000 A JP 2017106000A JP 2018199659 A JP2018199659 A JP 2018199659A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
biofilm
cyanoacrylate
polymer particles
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017106000A
Other languages
English (en)
Inventor
かおり 的石
Kaori Matoishi
かおり 的石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NANOCAME CO Ltd
Original Assignee
NANOCAME CO Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NANOCAME CO Ltd filed Critical NANOCAME CO Ltd
Priority to JP2017106000A priority Critical patent/JP2018199659A/ja
Publication of JP2018199659A publication Critical patent/JP2018199659A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Cosmetics (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

【課題】簡便にかつ効果的にバイオフィルムを除去できるバイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤を提供する。【解決手段】バイオフィルム除去剤は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤に関する。
台所、浴室、洗面所、トイレ、排水管、排水溝、医療器具、冷却水系等の水が存在する環境は、微生物の生育に適している。このような環境では、微生物が増殖しやすく、バイオフィルムも形成されやすい。
バイオフィルムは、一般に、物質表面に付着した微生物が、微生物の細胞内から多糖、タンパク質、核酸などの細胞外多糖類(EPS;Extracellular polysaccharide)を産生して形成した高分子フィルム状の構造体であり、バイオフィルム中では、微生物が生育していることが知られている。
近年、医療器具の狭い隙間や空孔内に微生物が残存してバイオフィルムを形成し、これを原因とする院内感染例が数多く報告されている。また、ヒト口腔内において歯に形成するバイオフィルム、いわゆるデンタルプラーク(歯垢)がう蝕や歯周病の原因となることが知られており、これらの問題について長い間検討がなされている。
バイオフィルムを除去する方法として、殺菌剤を用いる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、クロルヘキシジンとアルカリ剤、界面活性剤を併用する方法が開示されている。
また、特許文献2には、抗菌活性成分を実質的に含まない粒子を有効成分として含有する抗菌剤が開示されている。
特許第5639345号公報 国際公開第2009/084494号
バイオフィルムが形成された微生物に対して酵素や殺菌剤などの薬剤を用いた場合、薬剤は細胞外多糖類から形成された膜によって、バイオフィルムの深部まで作用することが妨げられてしまい、バイオフィルムの内部に生育する微生物に対して薬剤を作用させることは難しい。
特許文献2に記載された抗菌活性成分を実質的に含まない粒子を有効成分として含有する抗菌剤では、バイオフィルムを効率的に除去することに対する改良が求められている。
上記状況を鑑み、本発明は、簡便にかつ効果的にバイオフィルムを除去できるバイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、バイオフィルム除去剤の使用にあたり、グラム染色性を問わず様々な細菌に対し抗菌作用を発揮するシアノアクリレート粒子が、バイオフィルムの除去に有効であることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決するための具体的手段は以下の態様が含まれる。
<1> アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する、バイオフィルム除去剤。
<2> さらに、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、フェノール基、及びアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に2つ以上有し、かつ、前記官能基の官能基当量が25〜100である化合物を含む、前記<1>に記載のバイオフィルム除去剤。
<3> 前記官能基当量が28〜65である、前記<2>に記載のバイオフィルム除去剤。
<4> 前記官能基当量が30〜60である、前記<2>または<3>に記載のバイオフィルム除去剤。
<5> 前記化合物の重量平均分子量(Mw)が50〜900,000である、前記<2>〜<4>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<6> 前記官能基は、ヒドロキシ基及びエーテル基の少なくとも一方を含む、前記<2>に記載のバイオフィルム除去剤。
<7> 前記化合物の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して1質量部〜99質量部である、前記<2>〜<6>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<8> 前記シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、及びそれらのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<9> 前記アミノ酸誘導体が、クレアチン、オルニチン、サイロキシン、デスモシン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、ホスホセリン、テアニン、カイニン酸、トリコロミン酸、及びサルコシンからなる群より選択される少なくとも1種である、前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<10> 前記アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、シスチン又はシステイン、グルタミン、アスパラギン、プロリン、メチオニン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、カルニチン、γ−アミノレブリン酸、及びγ−アミノ吉草酸からなる群より選択される少なくとも1種である、前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<11> 前記シアノアクリレートポリマー粒子は、さらに、糖及びポリソルベートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<12> 前記シアノアクリレートポリマー粒子のシアノアクリレートがn−ブチル−2−シアノアクリレートである前記<1>〜<11>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<13> 前記シアノアクリレートポリマー粒子の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して0.0005質量部〜1.0質量部である、前記<1>〜<12>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤。
<14> 前記<1>〜<13>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤を含む、歯磨剤。
<15> さらに、研磨剤、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、及び水からなる群より選択される少なくとも1種を含む、前記<14>に記載の歯磨剤。
<16> 前記<1>〜<13>のいずれか1つに記載のバイオフィルム除去剤を含む、洗口剤。
<17> さらに、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、水、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記<16>に記載の洗口剤。
本発明によれば、簡便にかつ効果的にバイオフィルムを除去できるバイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤が提供される。
本実施形態のバイオフィルム除去剤の体積粒度分布の一例を示す図である。 本実施形態のバイオフィルム除去剤の体積粒度分布の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
<<バイオフィルム除去剤>>
本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤は、少なくとも、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する。
バイオフィルム除去剤は、特定の物質を含み、かつ、平均粒子径が特定の範囲である、特定のシアノアクリレートポリマー粒子を有し、微生物および微生物の産生する細胞外多糖類への選択的な接着性を利用することで、簡便にかつ効果的にバイオフィルムを除去することが可能となると推定している。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
バイオフィルムは、一般に、物質表面に付着した細菌が、細胞外に細胞外多糖類を生成して、物質表面を足場として形成されることが知られている。バイオフィルム中では、細菌が生育しているため、細菌の増殖に伴いバイオフィルムが発達していくと考えられている。
バイオフィルム除去剤に含まれる特定のシアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む。シアノアクリレートポリマー粒子がバイオフィルムと接触すると、シアノアクリレートポリマー粒子はバイオフィルムを構成する細胞外多糖類に接着し、細胞外多糖類間の結合を弱める作用があり、バイオフィルムを物質表面から除去することが可能になると推定している。
また、シアノアクリレートポリマー粒子の平均粒子径が特定の範囲にあることで、バイオフィルムが形成されている物質表面と、バイオフィルムとの間に入り込みやすく、外力を加えることで、形成されたバイオフィルムがより剥がれやすくなると推測している。
このように、本発明のバイオフィルム除去剤は、簡便にかつ効果的にバイオフィルムの除去が可能であると推察される。
以下、本発明のバイオフィルム除去剤に用いられる各成分の詳細について説明する。
<シアノアクリレートポリマー粒子>
シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種(以下、これらを総称して「アミノ酸系分子」ともいう。)を含有し、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmである。
すなわち、シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸系分子を含有するシアノアクリレートポリマー粒子(以下、「特定シアノアクリレート粒子」ともいう。)である。
アミノ酸としては、特に制限はなく、天然のタンパク質を構成する20種のα−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸及びδ−アミノ酸であってもよい。
アミノ酸の代表的な具体例としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、シスチン又はシステイン、グルタミン、アスパラギン、プロリン、メチオニン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸(GABA;神経伝達物質)、カルニチン、γ−アミノレブリン酸、γ−アミノ吉草酸などが挙げられる。
本明細書において、「アミノ酸」とは、分子内にアミノ基(−NH)とカルボキシ基とを持つ化合物をいい、一般的なアミノ酸の定義の通り、アミノ基の水素が分子内の他の部分と置換して二級アミンとなった環状化合物であるイミノ酸も包含する。
本明細書において、「アミノ酸誘導体」とは、上記アミノ酸において、いずれかの基が修飾又は置換された構造を有する化合物をいう。生体を構築する成分である天然に存在するアミノ酸誘導体は、通常、好ましく使用することができる。
アミノ酸誘導体としては、特に制限はなく、クレアチン(アルギニン誘導体で1−メチルグアニジノ酢酸)、オルニチン(アルギニン誘導体で尿素サイクル産物)、サイロキシン(芳香族アミノ酸類であるトリヨウドサイロニン;T4)、デスモシン(角質エラスチン、コラーゲン等の構成成分;3分子のアリシンの側鎖と1分子のリシンの側鎖が結合した構造)、ヒドロキシプロリン及びヒドロキシリジン(ゼラチン、コラーゲン等の構成成分)、ホスホセリン(セリンとリン酸のエステル;カゼイン構成成分)、テアニン(茶成分、グルタミン酸誘導体)、カイニン酸(海人草の虫下し成分)、トリコロミン酸(シメジの成分)やサルコシン(卵黄、ハム、豆類等の成分;Nメチルグリシン)等が挙げられる。
本明細書において、アミノ酸の「オリゴマー」とは、10個以下のアミノ酸残基がペプチド結合により結合したオリゴペプチドをいう。
また、本明細書において、アミノ酸の「ポリマー」とは、11個以上のアミノ酸残基がペプチド結合により結合したポリペプチドをいう。
アミノ酸の「オリゴマー」及びアミノ酸の「ポリマー」において、いずれも、アミノ酸だけではなくアミノ酸誘導体を残基として含んでいてもよい。
ポリペプチドの残基数の上限は、特に限定されず、例えば、残基数は500残基以下であってもよい。ポリペプチドの残基数としては、11残基〜100残基、11残基〜50残基、11残基〜30残基、11残基〜20残基、又は11残基〜15残基が好ましい。
アミノ酸系分子としては、オリゴペプチドであることが好ましい。
オリゴペプチドの中でも、残基数が、2残基〜7残基、2残基〜5残基、又は2残基若しくは3残基のオリゴペプチドがより好ましい。
特定シアノアクリレートポリマー粒子にアミノ酸系分子を含有する方法としては、アミノ酸系分子をシアノアクリレートポリマー粒子に抱合させることが可能であれば、特に制限はなく、例えば、シアノアクリレートポリマー粒子を合成した後に、シアノアクリレートポリマー粒子をアミノ酸系分子溶液中に浸漬する方法、及び、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合する際にアミノ酸系分子を共存させる方法が挙げられる。
アミノ酸系分子を効率良く含有させる点から、シアノアクリレートポリマー粒子にアミノ酸系分子を含有する方法としては、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合する際にアミノ酸系分子を共存させる方法であることが好ましい。
また、アニオン重合の際に2種類以上のアミノ酸系分子を共存させた場合には、2種類以上のアミノ酸系分子を含有したシアノアクリレートポリマー粒子を製造することが可能となる。
バイオフィルム除去剤に用いられる特定シアノアクリレートポリマー粒子は、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合して得られる。
シアノアクリレートモノマーとしては、化学的安定性と安全性の観点から、アルキル基を有するアルキルシアノアクリレートモノマーが好ましい。
上記アルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは3〜5であり、直鎖であってもよく、分岐でもあってもよい。
また、アルキル基を構成する炭素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)で置き換わっていてもよい。
シアノアクリレートモノマーの具体例としては、メチル−2−シアノアクリレート、エチル−2−シアノアクリレート、n−プロピル−2−シアノアクリレート、イソプロピル−2−シアノアクリレート、n−ブチル−2−シアノアクリレート、イソブチル−2−シアノアクリレート、n−ペンチル−2−シアノクリレート、n−ヘキシル−2−シアノアクリレート、n−ヘプチル−2−シアノアクリレート、n−オクチル−2−シアノアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも特に、外科領域において傷口の縫合のための接着剤として従来用いられている点から、シアノアクリレートモノマーとしては、下記式で表されるn−ブチル−2−シアノアクリレート(nBCA)を好ましく用いることができる。
<糖及びポリソルベート>
特定シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸系分子に加え、さらに、糖及びポリソルベートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
シアノアクリレートポリマー粒子の合成において、シアノアクリレートモノマーとともに、糖及びポリソルベートの少なくとも一方を含むと、糖及びポリソルベートは、アニオン重合の際に重合開始剤又は安定剤として作用するため、重合の安定化を図ることが可能となり、所望の特定シアノアクリレートポリマー粒子が得られやすい傾向がある。
すなわち、特定シアノアクリレートポリマー粒子には、重合開始剤又は安定剤として作用する、糖及びポリソルベートの少なくとも1種を含むシアノアクリレートポリマー粒子も包含される。
糖及びポリソルベートは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
「糖」としては、水酸基を有する単糖類(例えばグルコース、マンノース、リボース及びフルクトース等)、水酸基を有する二糖類(例えばマルトース、トレハロース、ラクトース及びスクロース等)、水酸基を有する多糖類(例えばデキストラン、マンナン等)等が挙げられる。
これらの糖は、環状、鎖状のいずれであってもよい。また、糖が環状である場合、ピラノース型、フラノース型等のいずれであってもよい。また、糖には種々の異性体が存在するがそれらのいずれであってもよい。
「ポリソルベート」としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween系界面活性剤)が挙げられる。
糖及びポリソルベートとしては、安価に入手でき、かつ、コスト面で有利な観点から、グルコース、デキストラン、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
糖及びポリソルベートとして、デキストランを用いる場合、デキストランとしては、重量平均分子量(Mw)が5万以上のデキストランが好ましい。
なお、デキストランの重量平均分子量(Mw)の上限は、特に制限はなく、通常、重量平均分子量(Mw)は50万程度以下である。
デキストランの重量平均分子量(Mw)は、例えば、リン酸緩衝液を流動相とするゲル濾過クロマトグラフィーによって求めることができる。
特定シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸系分子を含有したシアノアクリレートポリマー粒子であり、一次平均粒径が50nm〜1000nmである。
シアノアクリレートポリマー粒子の一次平均粒径が、50nm〜1000nmの範囲にあると、物質表面に形成されたバイオフィルムを効果的に除去することが可能となる。
バイオフィルムを効果的に除去し、かつ、ポリマー粒子製造の観点から、シアノアクリレートポリマー粒子の一次平均粒径としては、50nm〜600nmの範囲であることが好ましく、50nm〜550nmの範囲であることがより好ましい。
本明細書中において、「シアノアクリレートポリマー粒子の一次平均粒径」とは、動的光散乱法により測定された値である。具体的な方法は、以下のとおりである。
シアノアクリレートポリマー粒子の水分散液を適宜蒸留水を用いて希釈混合する。これを動的光散乱光度計(製品名:ゼータサイザーナノ、マルバーン株式会社製)にセットし、測定した結果をコンピュータ処理することで、シアノアクリレートポリマー粒子の一次平均粒径を求める。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の電荷(ゼータ電位)は、特に限定されず、通常−50mV〜0mV程度である。
ゼータ電位とは、粒子表面の電荷を示すものであり、粒子の分散性の指標となる。ゼータ電位は、例えばHe・Neレーザーを用いた市販の装置(例えば、ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)を用いて容易に測定することができる。
特定シアノアクリレートポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、500〜20万が好ましい。特定シアノアクリレートポリマーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると水に良好に分散するシアノアクリレートポリマー粒子を得ることが可能となる。
特定シアノアクリレートポリマーの重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
−GPC測定装置−
示差屈折率検出器(Waters社製、型番;Waters 2414)
HPLCポンプ(Waters社製、型番;Waters1515)
−カラム−
SDVカラム(Polymer Standards Service社製)100Å、1000Å、100000Å(30cm×0.8cm I.D. 5μm)を連結して使用した。
(測定方法)
水に分散したシアノアクリレートポリマー粒子を凍結乾燥し、シアノアクリレートポリマー粒子の粉末を得たのち、テトラヒドロフラン(THF)を加えてシアノアクリレートポリマーを抽出する。
THFを流動相(1ml/分)とし、410から903,000ダルトンのポリメタクリル酸メチル(Polymer Standards Service社製)で校正したゲル濾過クロマトグラフィーにより重量平均分子量(Mw)測定する。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して、0.0005質量部〜1.0質量部であることが好ましい。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の含有率が上記範囲であると、効果的にバイオフィルムを除去する傾向がある。上記観点から、特定シアノアクリレートポリマー粒子の含有率としては、バイオフィルム除去剤100質量部に対して、0.0005質量部〜1.0質量部であることがより好ましく、0.005質量部〜1.0質量部であることがさらに好ましい。
(特定化合物)
本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤は、さらに、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、フェノール基、アミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に2つ以上有し、かつ、前記官能基の官能基当量が25〜100である化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
ここで、「官能基の当量」とは、官能基1つあたりの分子量であり、具体的には、単体の特定化合物の分子量を、特定化合物1分子あたりに含まれる官能基の数で割った値を意味する。
バイオフィルム除去剤を、寒冷地、例えば、−20℃程度の環境下で保存した場合や、冷蔵庫等で低温保管した場合、バイオフィルム除去剤に含まれる特定化合物は、水素結合受容基である特定の官能基を、1分子中に2つ以上有するので、バイオフィルム除去剤に含まれる特定シアノアクリレートポリマー粒子の凝集を抑制する傾向がある。そのため、特定化合物を含むバイオフィルム除去剤は、優れた保存安定性を発揮することが可能となる。
保存安定性に優れる理由は、明らかではないが、水素結合受容基を持つ化合物が、特定シアノアクリレートポリマー粒子の内部に存在する水分等の結晶成長を阻害することであると推定される。特定シアノアクリレートポリマー粒子の内部に存在する水分等の結晶が成長すると、特定シアノアクリレートポリマーの粒子構造が破壊され、凝集すると考えられる。
なお前記推定理由は、水分等の結晶成長の阻害を例として記載しているが、バイオフィルム除去剤に水分等が含有されていることを意味するものではなく、バイオフィルム除去剤に外気から水分等が混入する場合も想定している。
また前記特定化合物は、バイオフィルム除去剤を低温(前記水分等の結晶成長が始まる温度)に保管した場合のみならず、常温以上の温度でも、特定シアノアクリレートポリマー粒子の内部に存在する水分等の蒸発を抑制することで、前記粒子の粒子構造の破壊を抑制し、バイオフィルム除去剤の保存安定性を向上させることが期待できる。
保存安定性の観点から、特定化合物が有する官能基としては、ヒドロキシ基及びエーテル基の少なくとも一方であることがより好ましく、ヒドロキシ基であることがさらに好ましい。
官能基としてヒドロキシ基及びエーテル基の少なくとも一方を、1分子中に2つ以上有し、かつ、前記官能基の官能基当量が25〜100である化合物としては、多価アルコール、多価アルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、特定シアノアクリレートポリマー粒子の凝集をより抑制する点から、特定化合物としては、水溶性の多価アルコール及び多価アルコールのアルキルエーテルの少なくとも一方であることが好ましく、水溶性の多価アルコールがより好ましい。
ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
水溶性の多価アルコールとしては、官能基の官能基当量が25〜100である化合物であれば、特に制限はなく、具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−メチルプロパンジオール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
上記水溶性の多価アルコールは、糖アルコールであってもよい。糖アルコールは、単糖に由来する糖アルコールであってもよいし、多糖に由来する糖アルコールであってもよい。
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、D−アラビニトール、L−アラビニトール、リビトール、D−イジトール、ガラクチトール、及びマンニトール、糖アルコールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
多価アルコールのアルキルエーテルとしては、官能基の官能基当量が25〜100である化合物であれば、特に制限はなく、具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル及びプロピレングリコールモノフェニルエーテル、並びに、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテルのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
これらの中でも、保存安定性の観点から、特定化合物としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
バイオフィルム除去剤に含まれる特定化合物において、官能基の官能基当量は、25〜100であることが好ましく、保存安定性の観点から、官能基の官能基当量としては、28〜65であることがより好ましく、30〜60であることがさらに好ましい。
特定化合物の重量平均分子量(Mw)は、50〜900,000であることが好ましい。
特定化合物の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、特定シアノアクリレートポリマー粒子の凝集をより抑制しやすい傾向があり、保存安定性がさらに向上する。
上記観点から、特定化合物の重量平均分子量(Mw)は、50〜500,000がより好ましく、60〜100,000がさらに好ましい。
なお、特定化合物の重量平均分子量(Mw)は、上述のデキストランの重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法によって求めることができる。
特定化合物の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して1質量部〜99質量部であることが好ましい。
特定化合物の含有率が上記範囲内にあると、保存安定性により優れる傾向がある。上記観点から、特定化合物の含有率としては、バイオフィルム除去剤100質量部に対して、2質量部〜85質量部の範囲内であることがより好ましく、5質量部〜70質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
−特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造方法−
特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造方法は、特に限定されない。特定シアノアクリレートポリマー粒子は、少なくとも1種のシアノアクリレートモノマーと、必要に応じて、重合開始又は安定剤とを加えて、アニオン重合して製造することができる。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造方法としては、例えば、適当な溶媒中に、少なくとも1種の重合開始又は安定剤を溶解させた後、撹拌下において、少なくとも1種のシアノアクリレートモノマーを加え、適宜撹拌を続けて重合反応を進行させればよい。
アニオン重合反応に用いられる溶媒としては、水性媒体(例えば、水、低級アルコール水溶液)が挙げられる。アミノ酸系分子を含有するシアノアクリレートポリマー粒子の製造の観点から、溶媒としては、通常、水が好ましい。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造において、シアノアクリレートモノマーを含む反応液は、pHが1.5〜3.0程度の酸性下でアニオン重合することが好ましい。
アニオン重合は、水酸化物イオンにより重合が開始されるので、反応液のpHは、重合速度に影響する。反応液のpHが高い場合には、水酸化物イオンの濃度が高くなるので重合が速く、pHが低い場合には重合が遅くなる。pHが1.5〜3.0程度の酸性下でアニオン重合すると、適度な重合速度が得られる傾向があり、特定(メタ)アクリル系ポリマーを効率より製造することが可能となる。
反応液を酸性にするために添加する酸としては、特に限定されず、反応に影響を与えず、かつ、反応後に揮散する点から、塩酸が好ましい。
塩酸の濃度は、特に限定されず、0.0005N〜0.5N程度であればよい。
例えば、塩基性アミノ酸を含有させる場合には0.05N程度とし、中性又は酸性アミノ酸を含有させる場合に0.01N程度とする、というように、アミノ酸の性質に応じて塩酸濃度を適宜選択することができる。
反応開始時の重合反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度は、特に限定されない。シアノアクリレートモノマーの濃度としては、通常、0.5質量%〜2.0質量%、好ましくは0.8質量%〜1.2質量%である。
特定シアノアクリレートポリマー粒子を製造する重合温度としては、特に限定されない。製造が簡便となる点から、重合温度としては、室温が好ましい。
特定シアノアクリレートポリマー粒子のアニオン重合における反応時間としては、反応液のpH、溶媒の種類等に応じて反応速度が異なるため、これらの要素に応じて適宜選択することができる。反応時間としては、10分〜5時間程度、好ましくは30分〜4時間程度である。
得られた特定シアノアクリレートポリマー粒子は、通常、中性の粒子として用いることが好ましい。そのため、重合反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶液を重合反応液に添加して中和することが好ましい。
特定シアノアクリレートポリマー粒子は、重合反応終了後に、重合反応液をフィルター濾過し、適宜滅菌水で洗浄して回収することが可能である。
上記の製造方法によれば、一次平均粒径が1000nm以下である特定シアノアクリレートポリマー粒子を容易に製造することが可能である。
一次平均粒径は、反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度やpH、反応時間によって調整することができる。また、重合開始又は安定剤として、糖及びポリソルベートから選択される少なくとも1種を用いる場合には、重合開始剤又は安定剤の濃度や種類を変えることによっても、一次平均粒径を調節することができる。
一般に、反応液のpHを高めた場合、反応時間を長くした場合、及び反応液の糖濃度を低くした場合には、一次平均粒径が大きくなる傾向がある。重合開始又は安定剤としてポリソルベートを用いた場合には、一次平均粒径が小さくなる傾向がある。
これらの反応条件を適宜組み合わせることで、所望の一次平均粒径を有する特定シアノアクリレートポリマー粒子を製造することが可能となる。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造において、アミノ酸系分子を重合開始剤又は安定剤として用いた場合、製造された特定シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸系分子が単に、特定シアノアクリレートポリマー粒子に付着して含有されるのみならず、アミノ酸構造中の−COO基がシアノアクリレート構造中のエチレン末端の炭素に結合し、共有結合により粒子に含有されていると推察される。
なお、上記方法で得られる特定シアノアクリレートポリマー粒子におけるアミノ酸系分子の含有率は、添加したアミノ酸系分子の全質量に対して、通常約20質量%〜約65質量%程度である。
アミノ酸系分子の含有率は、重合後にフィルター洗浄したときのフィルター通過液の吸光度を210nmの波長で測定し、フィルター通過液中のアミノ酸系分子の量(すなわち、特定シアノアクリレートポリマー粒子に結合しなかったアミノ酸系分子の量)を吸光度法により求めた後、下記の式によって算出することができる。
アミノ酸系分子含有量=(アミノ酸系分子添加量)−(フィルター通過液中のアミノ酸系分子の量)
アミノ酸系分子含有率(質量%)=アミノ酸系分子含有量/アミノ酸系分子添加量×100
特定シアノアクリレートポリマー粒子は、細菌類に対する抗菌活性成分を含まず、細菌表面(細胞壁)への特異的接着性により細菌を溶菌に導くことが可能であり、バイオフィルムに対しても特異的接着性により細菌を溶菌に導くことが可能である。すなわち、特定シアノアクリレートポリマー粒子は、効果的にバイオフィルムを除去することが可能である。
バイオフィルム除去剤は、特定シアノアクリレート、アミノ酸系分子、糖及びポリソルベート以外に、本発明の一実施形態の効果を発揮する範囲において、他の成分を加えてもよい。
他の成分としては、例えば、溶剤、界面活性剤、殺菌剤、抗菌剤、洗浄剤、アルカリ剤、アルカリビルダー、金属捕捉剤、分散剤等を含有していてもよく、さらには、例えば、芳香成分や消臭成分等の機能性成分、再付着防止剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、懸濁剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酵素、顔料や染料等の色素、蛍光剤、賦形剤、ソイルリリース剤、漂白剤、漂白活性化剤、粉末化剤、造粒剤、コーティング剤等を含有していてもよい。
バイオフィルム除去剤の使用方法は、バイオフィルム除去剤をバイオフィルムに作用させることができる方法であれば特に限定されず、バイオフィルム除去剤の塗布や散布、また、被対象物の浸漬等が挙げられる。
具体例としては、例えば、スポンジ、タオル、ブラシ、刷毛等を用いて塗布する方法、バイオフィルム除去剤を被対象物に直接滴下する方法、容器に噴射剤と併せて充填して散布する方法、バイオフィルム除去剤を入れた容器に被対象物を一定時間浸漬する方法等が挙げられる。
また、バイオフィルム除去剤を作用させた後は、必要に応じて、水等を用いてバイオフィルム除去剤を除去されたバイオフィルムとともに洗い流すことが好ましい。
<歯磨剤>
本発明の一実施形態の歯磨剤は、本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤を含む。バイオフィルム除去剤は特定シアノアクリレートポリマー粒子を含むので、口腔内のバイオフィルムを効果的に除去することが可能である。
歯磨剤は、上述のバイオフィルム除去剤に加えて、さらに、研磨剤、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、及び水からなる群より選択される少なくとも1種含むことが好ましい。
歯磨剤の形態としては、特に制限はなく、例えば、ペースト状、液体、粉末等の形態であってもよく、これらの形態に限定されない。
<洗口剤>
本発明の一実施形態の洗口剤は、本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤を含む。バイオフィルム除去剤は特定シアノアクリレートポリマー粒子を含むので、口腔内のバイオフィルムを効果的に除去することが可能である。
洗口剤は、上述のバイオフィルム除去剤に加えて、さらに、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、水、エタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
洗口剤の形態としては、特に制限はなく、例えば、液体、スプレー等の形態であってもよく、これらの形態に限定されない。
歯磨剤及び洗口剤の製造方法は、公知の方法を用いることができる。
歯磨剤は、例えば、上述のバイオフィルム除去剤と、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、甘味料、保存剤、香料等の成分と水とを混合し製造することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の一実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[特定シアノアクリレート粒子の製造]
国際公開第2012/133648号及び国際公開第2013/108871号に記載されている方法に準じて、特定シアノアクリレート粒子を製造した。具体的な手順は以下の通りである。
10mLの0.01Nの塩酸に、100mgのデキストラン70K(分子量70,000、東京化成工業(株)社製)、100mgのグリシン、100mgのアスパラギン酸及び100mgのアラニン(以下、単に「アミノ酸」ともいう。)をそれぞれ溶解した。デキストラン及びアミノ酸を溶解した溶液のpHを、用時調整した1N塩酸を用いて、pH3.0に調整した。
上記の溶液を撹拌下、100μLのn−ブチル−2−シアノアクリレート(nBCA)を加え、3時間撹拌し、重合反応を行った。1Nの水酸化ナトリウムを滴下して、反応溶液をpH7.8にまで中和し、さらに30分撹拌することで、デキストラン及びアミノ酸を含有するナノサイズのポリマー粒子(特定シアノアクリレート粒子)をそれぞれ得た。
得られた特定シアノアクリレート粒子を5μmサイズのMilexフィルター(商品名、MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprepフィルター(商品名、MILLIPORE社)を用いて3000rpm/15分間にて遠心濾過した。Centriprepフィルターを通過しなかった液について、さらに蒸留水(DW)を加え懸濁後3000rpm/15分間遠心し、同様の操作を3回行い、精製した。
市販のゼータサイザー(製品名:ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)を用いて、ナノ粒子の一次平均粒径及びゼータ電位を測定した。また、フィルター洗浄時のフィルター通過液中のアミノ酸分子の量を吸光度法により求め、特定シアノアクリレート粒子におけるアミノ酸含有率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例1)
<バイオフィルム除去剤の調製>
滅菌精製水(大塚製薬(株)製)を用いて、上記で製造した特定シアノアクリレート粒子1を添加して、均一になるまで混合し、下記表2に示す組成のバイオフィルム除去剤を調製した。
[評価]
バイオフィルム除去剤について、以下の評価を行った。
<バイオフィルムの除去性>
(1)ミュータンス菌液の調製
ミュータンス菌(Streptococcus mutans、株名:NBRC 13955T)を、BHI(ブレインハートインフュージョン)ブイヨン培地(Difco Laboratories社製)に添加したのち、37℃で一晩、好気条件下で、静置培養し、前培養を行った。
前培養したミュータンス菌液を、リン酸緩衝生理食塩水に懸濁させ、600nmにおける濁度(OD600)が0.7になるように調製した。
(2)バイオフィルムの作製
滅菌した2cm×2cm×0.2cmのアクリル板(商品名:アクリライト、三菱レイヨン(株)製を加工)を、滅菌シャーレの中に置き、1質量%のスクロースを添加したBHI培地10mLを加えた。この中に、上記(1)で調製したミュータンス菌液を100μL滴下し、アネロパック(商品名、三菱ガス化学(株)製)を使用して、嫌気条件下にて37℃、20時間、静置培養した。
培養後のアクリル板を、水中で20秒間ボルテックスして、アクリル板表面に緩く付着したバイオフィルムを除去し、バイオフィルムが形成されたアクリル板(バイオフィルム除去評価用サンプル)を作製した。
(3)染色
上記(2)で作製したバイオフィルム除去評価用サンプルを、15mLのバイオフィルム除去剤(0.05質量%)に浸漬させ、直後に、超音波洗浄機(サイレントソニックUT−204、シャープ(株)製)にて、3分間、超音波洗浄を行った。超音波によりバイオフィルム除去剤を洗浄した後のサンプルを、クリスタルバイオレット(和光純薬工業(株)社製)0.04質量%を含有するグラム染色液で染色した。
上記(2)で作製したバイオフィルム除去評価用サンプルを、滅菌水に浸漬させた以外は、上記(1)と同様の条件で、超音波洗浄及びグラム染色を行い、比較用サンプルを作製した。
(4)色素の定量
染色後のバイオフィルム除去評価用サンプル及び比較サンプルについて、水洗後、それぞれ、色素の定量を行った。色素は、エタノールを用いて抽出し、マイクロプレートリーダー(製品名:スパーク 10M、テカン社製)を用いて、595nmで色素の定量を行った。測定された色素の量について、有意差検定(t検定)を行った。
P<0.01であるとき、「有意水準1%で平均値に差がある」と言え、有意がある場合には、バイオフィルム除去性があるといえる。
<保存安定性>
1mLのバイオフィルム除去剤を、1.5mLマイクロチューブに入れ、−20℃に18時間放置した。その後、室温に戻して、自然融解したものを、寒冷地での保存安定性サンプルとした。
保存安定性は、次のように評価した。上記で得られた保存安定性サンプルを、ボルテックスで分散した後の粒度分布を動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「マイクロトラックUPA−EX150(日機装(株)製)」にて測定し、体積粒度分布の分布形態により評価した。結果は図1及び図2に示す。
−評価基準−
A:目視にて凝集および沈殿物がなく、分散性が良好である。
B:目視にて浮遊した凝集物が確認できるが、沈澱物は存在しない。
C:目視にて凝集物および沈殿物が確認できる。
(実施例2〜実施例12並びに比較例1及び比較例2)
実施例2〜実施例12並びに比較例1及び比較例2において、実施例1の組成を表2〜表4に示した組成に変更した以外は、実施例1と同様にして表2〜表4に示すようなバイオフィルム除去剤を調製した。調製したバイオフィルム除去剤を用いて、実施例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。結果を表2〜表4に示す。
表1〜4における略号は以下の通りである。なお、表中「−」は、当該成分を含まないことを意味する。
・TritonX−100;特定化合物(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、和光純薬工業(株)製)
(実施例13)
<バイオフィルム除去剤を用いた歯磨剤の調製>
特定シアノアクリレート粒子として、シアノアクリレート粒子1を用いて、下記表5に示す組成の歯磨剤を調製した。
実施例13の歯磨剤は、実施例1〜12と同様に、バイオフィルム除去性があり、また、寒冷地での保存安定性に優れていた。
表5における略号は以下の通りである。
・シリカ;研磨剤(Huber Engineered Materials社製、製品名;Zeodent 124)
・CMC;粘度調整剤(カルボキシメチルセルロース、ダイセルファインケム株式会社製)
(実施例14)
<バイオフィルム除去剤を用いた洗口剤の調製>
特定シアノアクリレート粒子として、シアノアクリレート粒子1を用いて、下記表6に示す組成の洗口剤を調製した。
実施例14の洗口剤は、実施例1〜12と同様に、バイオフィルム除去性があり、また、寒冷地での保存安定性に優れていた。
本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤及び歯磨剤は、簡便かつ効果的にバイオフィルムを除去できることがわかる。また、本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤及び歯磨剤は、寒冷地での保存安定性に優れていることがわかる。

Claims (17)

  1. アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する、バイオフィルム除去剤。
  2. さらに、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、フェノール基、及びアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に2つ以上有し、かつ、前記官能基の官能基当量が25〜100である化合物を含む、請求項1に記載のバイオフィルム除去剤。
  3. 前記官能基当量が28〜65である、請求項2に記載のバイオフィルム除去剤。
  4. 前記官能基当量が30〜60である、請求項2または請求項3に記載のバイオフィルム除去剤。
  5. 前記化合物の重量平均分子量(Mw)が50〜900,000である、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  6. 前記官能基は、ヒドロキシ基及びエーテル基の少なくとも一方を含む、請求項2に記載のバイオフィルム除去剤。
  7. 前記化合物の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して1質量部〜99質量部である、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  8. 前記シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、及びそれらのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  9. 前記アミノ酸誘導体が、クレアチン、オルニチン、サイロキシン、デスモシン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、ホスホセリン、テアニン、カイニン酸、トリコロミン酸、及びサルコシンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  10. 前記アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、シスチン又はシステイン、グルタミン、アスパラギン、プロリン、メチオニン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、カルニチン、γ−アミノレブリン酸、及びγ−アミノ吉草酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  11. 前記シアノアクリレートポリマー粒子は、さらに、糖及びポリソルベートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  12. 前記シアノアクリレートポリマー粒子のシアノアクリレートがn−ブチル−2−シアノアクリレートである請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  13. 前記シアノアクリレートポリマー粒子の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して0.0005質量部〜1.0質量部である、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
  14. 請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤を含む、歯磨剤。
  15. さらに、研磨剤、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、及び水からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項14に記載の歯磨剤。
  16. 請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤を含む、洗口剤。
  17. さらに、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、水、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項16に記載の洗口剤。
JP2017106000A 2017-05-29 2017-05-29 バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤 Pending JP2018199659A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017106000A JP2018199659A (ja) 2017-05-29 2017-05-29 バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017106000A JP2018199659A (ja) 2017-05-29 2017-05-29 バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018199659A true JP2018199659A (ja) 2018-12-20

Family

ID=64667764

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017106000A Pending JP2018199659A (ja) 2017-05-29 2017-05-29 バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018199659A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3600220B1 (en) Polyphenols/peg based hydrogel system for a dental varnish
AU2014366222B2 (en) Use of poly alpha-1,3-glucan ethers as viscosity modifiers
EP0586275A1 (fr) Composition cosmétique contenant en suspension des particules non hydrosolubles
JP6682872B2 (ja) 口腔用シリカ分散安定化剤およびこれを含有する歯磨剤組成物
AU2017345685B2 (en) Antimicrobial compositions for oral care or cleansing, and methods for anti-attachment polymers and coatings
WO2016058140A1 (en) Oral care compositions comprising zinc, arginine and serine
AU2014413970A1 (en) Oral composition for tooth whitening
AU2020359946B2 (en) Dentifrice compositions comprising bicarbonate salt and neutral amino acid
WO2005032498A2 (fr) Composition aqueuse comprenant un polymere dentrique polyonique et un agent tensioactif ionique
Cai et al. Chlorhexidine-loaded poly (amido amine) dendrimer and a dental adhesive containing amorphous calcium phosphate nanofillers for enhancing bonding durability
Hu et al. Mussel-inspired polymer with catechol and cationic Lys functionalities for dentin wet bonding
JP2016538268A (ja) 制汗組成物
CN1227597A (zh) 清洁组合物
FR2625901A1 (fr) Composition d&#39;hygiene buccale et procede pour son utilisation
EP4034077A1 (en) Oral care composition with ammonium alkyl sulfonate or carbonate components for treating caries
JP2018199659A (ja) バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤
CN1227592A (zh) 清洁组合物
JP7032889B2 (ja) カチオン性殺菌剤、未修飾シリカ、及びベタイン系界面活性剤を含む口腔用組成物
JP4937583B2 (ja) 口腔用組成物
JP4538869B2 (ja) 保香剤
JP6988463B2 (ja) 歯面用微生物付着抑制剤
Miranda et al. Influence of the chlorhexidine application on adhesive interface stability: literature review
JP4056653B2 (ja) 洗浄剤用保香剤組成物
JP2018184389A (ja) 象牙細管封鎖性を有する歯処置用材料
JP5071613B2 (ja) 水難溶性有効成分の付着化組成物及び水難溶性有効成分の付着方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20171013

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171013

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180801

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20180806

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20180806