JP2018199659A - バイオフィルム除去剤、歯磨剤及び洗口剤 - Google Patents
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Abstract
Description
バイオフィルムは、一般に、物質表面に付着した微生物が、微生物の細胞内から多糖、タンパク質、核酸などの細胞外多糖類(EPS;Extracellular polysaccharide)を産生して形成した高分子フィルム状の構造体であり、バイオフィルム中では、微生物が生育していることが知られている。
また、特許文献2には、抗菌活性成分を実質的に含まない粒子を有効成分として含有する抗菌剤が開示されている。
特許文献2に記載された抗菌活性成分を実質的に含まない粒子を有効成分として含有する抗菌剤では、バイオフィルムを効率的に除去することに対する改良が求められている。
<1> アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する、バイオフィルム除去剤。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤は、少なくとも、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
バイオフィルム除去剤に含まれる特定のシアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む。シアノアクリレートポリマー粒子がバイオフィルムと接触すると、シアノアクリレートポリマー粒子はバイオフィルムを構成する細胞外多糖類に接着し、細胞外多糖類間の結合を弱める作用があり、バイオフィルムを物質表面から除去することが可能になると推定している。
また、シアノアクリレートポリマー粒子の平均粒子径が特定の範囲にあることで、バイオフィルムが形成されている物質表面と、バイオフィルムとの間に入り込みやすく、外力を加えることで、形成されたバイオフィルムがより剥がれやすくなると推測している。
以下、本発明のバイオフィルム除去剤に用いられる各成分の詳細について説明する。
シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種(以下、これらを総称して「アミノ酸系分子」ともいう。)を含有し、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmである。
すなわち、シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸系分子を含有するシアノアクリレートポリマー粒子(以下、「特定シアノアクリレート粒子」ともいう。)である。
アミノ酸の代表的な具体例としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、シスチン又はシステイン、グルタミン、アスパラギン、プロリン、メチオニン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸(GABA;神経伝達物質)、カルニチン、γ−アミノレブリン酸、γ−アミノ吉草酸などが挙げられる。
本明細書において、「アミノ酸」とは、分子内にアミノ基(−NH2)とカルボキシ基とを持つ化合物をいい、一般的なアミノ酸の定義の通り、アミノ基の水素が分子内の他の部分と置換して二級アミンとなった環状化合物であるイミノ酸も包含する。
アミノ酸誘導体としては、特に制限はなく、クレアチン(アルギニン誘導体で1−メチルグアニジノ酢酸)、オルニチン(アルギニン誘導体で尿素サイクル産物)、サイロキシン(芳香族アミノ酸類であるトリヨウドサイロニン;T4)、デスモシン(角質エラスチン、コラーゲン等の構成成分;3分子のアリシンの側鎖と1分子のリシンの側鎖が結合した構造)、ヒドロキシプロリン及びヒドロキシリジン(ゼラチン、コラーゲン等の構成成分)、ホスホセリン(セリンとリン酸のエステル;カゼイン構成成分)、テアニン(茶成分、グルタミン酸誘導体)、カイニン酸(海人草の虫下し成分)、トリコロミン酸(シメジの成分)やサルコシン(卵黄、ハム、豆類等の成分;Nメチルグリシン)等が挙げられる。
また、本明細書において、アミノ酸の「ポリマー」とは、11個以上のアミノ酸残基がペプチド結合により結合したポリペプチドをいう。
アミノ酸の「オリゴマー」及びアミノ酸の「ポリマー」において、いずれも、アミノ酸だけではなくアミノ酸誘導体を残基として含んでいてもよい。
オリゴペプチドの中でも、残基数が、2残基〜7残基、2残基〜5残基、又は2残基若しくは3残基のオリゴペプチドがより好ましい。
アミノ酸系分子を効率良く含有させる点から、シアノアクリレートポリマー粒子にアミノ酸系分子を含有する方法としては、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合する際にアミノ酸系分子を共存させる方法であることが好ましい。
また、アニオン重合の際に2種類以上のアミノ酸系分子を共存させた場合には、2種類以上のアミノ酸系分子を含有したシアノアクリレートポリマー粒子を製造することが可能となる。
シアノアクリレートモノマーとしては、化学的安定性と安全性の観点から、アルキル基を有するアルキルシアノアクリレートモノマーが好ましい。
また、アルキル基を構成する炭素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)で置き換わっていてもよい。
これらの中でも特に、外科領域において傷口の縫合のための接着剤として従来用いられている点から、シアノアクリレートモノマーとしては、下記式で表されるn−ブチル−2−シアノアクリレート(nBCA)を好ましく用いることができる。
特定シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸系分子に加え、さらに、糖及びポリソルベートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
シアノアクリレートポリマー粒子の合成において、シアノアクリレートモノマーとともに、糖及びポリソルベートの少なくとも一方を含むと、糖及びポリソルベートは、アニオン重合の際に重合開始剤又は安定剤として作用するため、重合の安定化を図ることが可能となり、所望の特定シアノアクリレートポリマー粒子が得られやすい傾向がある。
すなわち、特定シアノアクリレートポリマー粒子には、重合開始剤又は安定剤として作用する、糖及びポリソルベートの少なくとも1種を含むシアノアクリレートポリマー粒子も包含される。
糖及びポリソルベートは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの糖は、環状、鎖状のいずれであってもよい。また、糖が環状である場合、ピラノース型、フラノース型等のいずれであってもよい。また、糖には種々の異性体が存在するがそれらのいずれであってもよい。
なお、デキストランの重量平均分子量(Mw)の上限は、特に制限はなく、通常、重量平均分子量(Mw)は50万程度以下である。
デキストランの重量平均分子量(Mw)は、例えば、リン酸緩衝液を流動相とするゲル濾過クロマトグラフィーによって求めることができる。
シアノアクリレートポリマー粒子の一次平均粒径が、50nm〜1000nmの範囲にあると、物質表面に形成されたバイオフィルムを効果的に除去することが可能となる。
バイオフィルムを効果的に除去し、かつ、ポリマー粒子製造の観点から、シアノアクリレートポリマー粒子の一次平均粒径としては、50nm〜600nmの範囲であることが好ましく、50nm〜550nmの範囲であることがより好ましい。
ゼータ電位とは、粒子表面の電荷を示すものであり、粒子の分散性の指標となる。ゼータ電位は、例えばHe・Neレーザーを用いた市販の装置(例えば、ゼータサイザーナノ、マルバーン社製)を用いて容易に測定することができる。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
−GPC測定装置−
示差屈折率検出器(Waters社製、型番;Waters 2414)
HPLCポンプ(Waters社製、型番;Waters1515)
−カラム−
SDVカラム(Polymer Standards Service社製)100Å、1000Å、100000Å(30cm×0.8cm I.D. 5μm)を連結して使用した。
(測定方法)
水に分散したシアノアクリレートポリマー粒子を凍結乾燥し、シアノアクリレートポリマー粒子の粉末を得たのち、テトラヒドロフラン(THF)を加えてシアノアクリレートポリマーを抽出する。
THFを流動相(1ml/分)とし、410から903,000ダルトンのポリメタクリル酸メチル(Polymer Standards Service社製)で校正したゲル濾過クロマトグラフィーにより重量平均分子量(Mw)測定する。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の含有率が上記範囲であると、効果的にバイオフィルムを除去する傾向がある。上記観点から、特定シアノアクリレートポリマー粒子の含有率としては、バイオフィルム除去剤100質量部に対して、0.0005質量部〜1.0質量部であることがより好ましく、0.005質量部〜1.0質量部であることがさらに好ましい。
本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤は、さらに、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、フェノール基、アミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に2つ以上有し、かつ、前記官能基の官能基当量が25〜100である化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
ここで、「官能基の当量」とは、官能基1つあたりの分子量であり、具体的には、単体の特定化合物の分子量を、特定化合物1分子あたりに含まれる官能基の数で割った値を意味する。
保存安定性に優れる理由は、明らかではないが、水素結合受容基を持つ化合物が、特定シアノアクリレートポリマー粒子の内部に存在する水分等の結晶成長を阻害することであると推定される。特定シアノアクリレートポリマー粒子の内部に存在する水分等の結晶が成長すると、特定シアノアクリレートポリマーの粒子構造が破壊され、凝集すると考えられる。
なお前記推定理由は、水分等の結晶成長の阻害を例として記載しているが、バイオフィルム除去剤に水分等が含有されていることを意味するものではなく、バイオフィルム除去剤に外気から水分等が混入する場合も想定している。
また前記特定化合物は、バイオフィルム除去剤を低温(前記水分等の結晶成長が始まる温度)に保管した場合のみならず、常温以上の温度でも、特定シアノアクリレートポリマー粒子の内部に存在する水分等の蒸発を抑制することで、前記粒子の粒子構造の破壊を抑制し、バイオフィルム除去剤の保存安定性を向上させることが期待できる。
保存安定性の観点から、特定化合物が有する官能基としては、ヒドロキシ基及びエーテル基の少なくとも一方であることがより好ましく、ヒドロキシ基であることがさらに好ましい。
これらの中でも、特定シアノアクリレートポリマー粒子の凝集をより抑制する点から、特定化合物としては、水溶性の多価アルコール及び多価アルコールのアルキルエーテルの少なくとも一方であることが好ましく、水溶性の多価アルコールがより好ましい。
ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、D−アラビニトール、L−アラビニトール、リビトール、D−イジトール、ガラクチトール、及びマンニトール、糖アルコールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
特定化合物の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、特定シアノアクリレートポリマー粒子の凝集をより抑制しやすい傾向があり、保存安定性がさらに向上する。
上記観点から、特定化合物の重量平均分子量(Mw)は、50〜500,000がより好ましく、60〜100,000がさらに好ましい。
なお、特定化合物の重量平均分子量(Mw)は、上述のデキストランの重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法によって求めることができる。
特定化合物の含有率が上記範囲内にあると、保存安定性により優れる傾向がある。上記観点から、特定化合物の含有率としては、バイオフィルム除去剤100質量部に対して、2質量部〜85質量部の範囲内であることがより好ましく、5質量部〜70質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造方法は、特に限定されない。特定シアノアクリレートポリマー粒子は、少なくとも1種のシアノアクリレートモノマーと、必要に応じて、重合開始又は安定剤とを加えて、アニオン重合して製造することができる。
特定シアノアクリレートポリマー粒子の製造方法としては、例えば、適当な溶媒中に、少なくとも1種の重合開始又は安定剤を溶解させた後、撹拌下において、少なくとも1種のシアノアクリレートモノマーを加え、適宜撹拌を続けて重合反応を進行させればよい。
アニオン重合は、水酸化物イオンにより重合が開始されるので、反応液のpHは、重合速度に影響する。反応液のpHが高い場合には、水酸化物イオンの濃度が高くなるので重合が速く、pHが低い場合には重合が遅くなる。pHが1.5〜3.0程度の酸性下でアニオン重合すると、適度な重合速度が得られる傾向があり、特定(メタ)アクリル系ポリマーを効率より製造することが可能となる。
塩酸の濃度は、特に限定されず、0.0005N〜0.5N程度であればよい。
例えば、塩基性アミノ酸を含有させる場合には0.05N程度とし、中性又は酸性アミノ酸を含有させる場合に0.01N程度とする、というように、アミノ酸の性質に応じて塩酸濃度を適宜選択することができる。
特定シアノアクリレートポリマー粒子は、重合反応終了後に、重合反応液をフィルター濾過し、適宜滅菌水で洗浄して回収することが可能である。
一次平均粒径は、反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度やpH、反応時間によって調整することができる。また、重合開始又は安定剤として、糖及びポリソルベートから選択される少なくとも1種を用いる場合には、重合開始剤又は安定剤の濃度や種類を変えることによっても、一次平均粒径を調節することができる。
一般に、反応液のpHを高めた場合、反応時間を長くした場合、及び反応液の糖濃度を低くした場合には、一次平均粒径が大きくなる傾向がある。重合開始又は安定剤としてポリソルベートを用いた場合には、一次平均粒径が小さくなる傾向がある。
これらの反応条件を適宜組み合わせることで、所望の一次平均粒径を有する特定シアノアクリレートポリマー粒子を製造することが可能となる。
なお、上記方法で得られる特定シアノアクリレートポリマー粒子におけるアミノ酸系分子の含有率は、添加したアミノ酸系分子の全質量に対して、通常約20質量%〜約65質量%程度である。
アミノ酸系分子含有量=(アミノ酸系分子添加量)−(フィルター通過液中のアミノ酸系分子の量)
アミノ酸系分子含有率(質量%)=アミノ酸系分子含有量/アミノ酸系分子添加量×100
他の成分としては、例えば、溶剤、界面活性剤、殺菌剤、抗菌剤、洗浄剤、アルカリ剤、アルカリビルダー、金属捕捉剤、分散剤等を含有していてもよく、さらには、例えば、芳香成分や消臭成分等の機能性成分、再付着防止剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、懸濁剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酵素、顔料や染料等の色素、蛍光剤、賦形剤、ソイルリリース剤、漂白剤、漂白活性化剤、粉末化剤、造粒剤、コーティング剤等を含有していてもよい。
また、バイオフィルム除去剤を作用させた後は、必要に応じて、水等を用いてバイオフィルム除去剤を除去されたバイオフィルムとともに洗い流すことが好ましい。
本発明の一実施形態の歯磨剤は、本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤を含む。バイオフィルム除去剤は特定シアノアクリレートポリマー粒子を含むので、口腔内のバイオフィルムを効果的に除去することが可能である。
歯磨剤は、上述のバイオフィルム除去剤に加えて、さらに、研磨剤、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、及び水からなる群より選択される少なくとも1種含むことが好ましい。
本発明の一実施形態の洗口剤は、本発明の一実施形態のバイオフィルム除去剤を含む。バイオフィルム除去剤は特定シアノアクリレートポリマー粒子を含むので、口腔内のバイオフィルムを効果的に除去することが可能である。
洗口剤は、上述のバイオフィルム除去剤に加えて、さらに、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、水、エタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
歯磨剤は、例えば、上述のバイオフィルム除去剤と、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、甘味料、保存剤、香料等の成分と水とを混合し製造することができる。
国際公開第2012/133648号及び国際公開第2013/108871号に記載されている方法に準じて、特定シアノアクリレート粒子を製造した。具体的な手順は以下の通りである。
得られた特定シアノアクリレート粒子を5μmサイズのMilexフィルター(商品名、MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprepフィルター(商品名、MILLIPORE社)を用いて3000rpm/15分間にて遠心濾過した。Centriprepフィルターを通過しなかった液について、さらに蒸留水(DW)を加え懸濁後3000rpm/15分間遠心し、同様の操作を3回行い、精製した。
<バイオフィルム除去剤の調製>
滅菌精製水(大塚製薬(株)製)を用いて、上記で製造した特定シアノアクリレート粒子1を添加して、均一になるまで混合し、下記表2に示す組成のバイオフィルム除去剤を調製した。
バイオフィルム除去剤について、以下の評価を行った。
(1)ミュータンス菌液の調製
ミュータンス菌(Streptococcus mutans、株名:NBRC 13955T)を、BHI(ブレインハートインフュージョン)ブイヨン培地(Difco Laboratories社製)に添加したのち、37℃で一晩、好気条件下で、静置培養し、前培養を行った。
前培養したミュータンス菌液を、リン酸緩衝生理食塩水に懸濁させ、600nmにおける濁度(OD600)が0.7になるように調製した。
滅菌した2cm×2cm×0.2cmのアクリル板(商品名:アクリライト、三菱レイヨン(株)製を加工)を、滅菌シャーレの中に置き、1質量%のスクロースを添加したBHI培地10mLを加えた。この中に、上記(1)で調製したミュータンス菌液を100μL滴下し、アネロパック(商品名、三菱ガス化学(株)製)を使用して、嫌気条件下にて37℃、20時間、静置培養した。
培養後のアクリル板を、水中で20秒間ボルテックスして、アクリル板表面に緩く付着したバイオフィルムを除去し、バイオフィルムが形成されたアクリル板(バイオフィルム除去評価用サンプル)を作製した。
上記(2)で作製したバイオフィルム除去評価用サンプルを、15mLのバイオフィルム除去剤(0.05質量%)に浸漬させ、直後に、超音波洗浄機(サイレントソニックUT−204、シャープ(株)製)にて、3分間、超音波洗浄を行った。超音波によりバイオフィルム除去剤を洗浄した後のサンプルを、クリスタルバイオレット(和光純薬工業(株)社製)0.04質量%を含有するグラム染色液で染色した。
上記(2)で作製したバイオフィルム除去評価用サンプルを、滅菌水に浸漬させた以外は、上記(1)と同様の条件で、超音波洗浄及びグラム染色を行い、比較用サンプルを作製した。
(4)色素の定量
染色後のバイオフィルム除去評価用サンプル及び比較サンプルについて、水洗後、それぞれ、色素の定量を行った。色素は、エタノールを用いて抽出し、マイクロプレートリーダー(製品名:スパーク 10M、テカン社製)を用いて、595nmで色素の定量を行った。測定された色素の量について、有意差検定(t検定)を行った。
P<0.01であるとき、「有意水準1%で平均値に差がある」と言え、有意がある場合には、バイオフィルム除去性があるといえる。
1mLのバイオフィルム除去剤を、1.5mLマイクロチューブに入れ、−20℃に18時間放置した。その後、室温に戻して、自然融解したものを、寒冷地での保存安定性サンプルとした。
A:目視にて凝集および沈殿物がなく、分散性が良好である。
B:目視にて浮遊した凝集物が確認できるが、沈澱物は存在しない。
C:目視にて凝集物および沈殿物が確認できる。
実施例2〜実施例12並びに比較例1及び比較例2において、実施例1の組成を表2〜表4に示した組成に変更した以外は、実施例1と同様にして表2〜表4に示すようなバイオフィルム除去剤を調製した。調製したバイオフィルム除去剤を用いて、実施例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。結果を表2〜表4に示す。
・TritonX−100;特定化合物(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、和光純薬工業(株)製)
<バイオフィルム除去剤を用いた歯磨剤の調製>
特定シアノアクリレート粒子として、シアノアクリレート粒子1を用いて、下記表5に示す組成の歯磨剤を調製した。
実施例13の歯磨剤は、実施例1〜12と同様に、バイオフィルム除去性があり、また、寒冷地での保存安定性に優れていた。
・シリカ;研磨剤(Huber Engineered Materials社製、製品名;Zeodent 124)
・CMC;粘度調整剤(カルボキシメチルセルロース、ダイセルファインケム株式会社製)
<バイオフィルム除去剤を用いた洗口剤の調製>
特定シアノアクリレート粒子として、シアノアクリレート粒子1を用いて、下記表6に示す組成の洗口剤を調製した。
実施例14の洗口剤は、実施例1〜12と同様に、バイオフィルム除去性があり、また、寒冷地での保存安定性に優れていた。
Claims (17)
- アミノ酸、アミノ酸誘導体、並びに、それらのオリゴマー及びポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、一次平均粒径が50nm〜1000nmであるシアノアクリレートポリマー粒子を含有する、バイオフィルム除去剤。
- さらに、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、チオール基、アミノ基、フェノール基、及びアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に2つ以上有し、かつ、前記官能基の官能基当量が25〜100である化合物を含む、請求項1に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記官能基当量が28〜65である、請求項2に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記官能基当量が30〜60である、請求項2または請求項3に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記化合物の重量平均分子量(Mw)が50〜900,000である、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記官能基は、ヒドロキシ基及びエーテル基の少なくとも一方を含む、請求項2に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記化合物の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して1質量部〜99質量部である、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記シアノアクリレートポリマー粒子は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、及びそれらのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記アミノ酸誘導体が、クレアチン、オルニチン、サイロキシン、デスモシン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、ホスホセリン、テアニン、カイニン酸、トリコロミン酸、及びサルコシンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、シスチン又はシステイン、グルタミン、アスパラギン、プロリン、メチオニン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、カルニチン、γ−アミノレブリン酸、及びγ−アミノ吉草酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記シアノアクリレートポリマー粒子は、さらに、糖及びポリソルベートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記シアノアクリレートポリマー粒子のシアノアクリレートがn−ブチル−2−シアノアクリレートである請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 前記シアノアクリレートポリマー粒子の含有率は、バイオフィルム除去剤100質量部に対して0.0005質量部〜1.0質量部である、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤。
- 請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤を含む、歯磨剤。
- さらに、研磨剤、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、及び水からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項14に記載の歯磨剤。
- 請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤を含む、洗口剤。
- さらに、界面活性剤、湿潤剤、粘結剤、粘度調整剤、保存剤、香料、甘味料、清掃助剤、殺菌剤、歯質強化剤、消炎剤、水、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項16に記載の洗口剤。
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