JP5071613B2 - 水難溶性有効成分の付着化組成物及び水難溶性有効成分の付着方法 - Google Patents

水難溶性有効成分の付着化組成物及び水難溶性有効成分の付着方法 Download PDF

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Description

本発明は、対象面に水難溶性有効成分を高効率に付着させる組成物及び水難溶性有効成分を対象面に高効率に付着させる方法に関するものである。具体的には、電解質水溶液に溶解している塩感応性高分子化合物が水で希釈され析出し、その際、水難溶性有効成分を担持して対象物表面に付着し、対象面に水難溶性有効成分を付着させる付着化組成物及び水難溶性有効成分の付着方法に関する。
水難溶性有効成分を効率よく付着させる方法として、アニオン性対象面に対し反対電荷を持つカチオン性界面活性剤が付着しやすいことを利用して、カチオン性界面活性剤を共存させて水難溶性有効成分を可溶化し、これでアニオン性対象面を処理することにより、水難溶性有効成分の付着量を高める方法が提案されている。しかしながら、この方法では、付着性向上効果はあまり高くない。また、各種高分子化合物を組成物中に共存させ、粘度を上昇させることで、水難溶性有効成分を効率よく付着させる方法が提案されている。しかしながら、ここで用いられている高分子化合物は、増粘を目的とするものであり、希釈系での析出は起こさず、水難溶性有効成分の付着性向上効果は不十分であった(特許文献1:特開平8−003074号公報、特許文献2:特開平6−192060号公報参照)。
一方、硬表面を白く見せる方法として、インク等の塗料の塗布、マニキュア等のような皮膜形成能のあるポリマーによる被覆等が提案されている(例えば、特許文献3:特開2004−292429号公報参照)。しかしながら、この方法は、塗布膜の乾燥及び硬化に時間がかかること、一度塗布すると薬剤等を使って除去しなければならないという問題があった。
また、液状及び粉体塗料等をスプレーで噴射して被塗面を塗装する方法は、簡単な操作で平滑な塗面を形成しやすい等の特徴を有している。しかしながら、この方法は、凹凸面や複雑な形状の面に対しては塗装が十分に行われず、塗料が全く塗布できなかったり、塗布しても膜厚が不十分であったり、一様に塗布できない等の問題がある。
さらに、過酸化物を使って歯を白色化する方法が提案されているが、歯科医師に使用が認められているもので、消費者が家庭で使用することは認められていない。以上のことから、安全かつ簡便に対象面を白色化する技術の開発が望まれていた。
特開平8−003074号公報 特開平6−192060号公報 特開2004−292429号公報 特開2002−326911号公報 特開平7−76610号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、安全、簡便かつ短時間で対象面に水難溶性有効成分が付着し、対象面に滞留してその機能を発現する技術であり、対象面に水難溶性有効成分を高効率に付着させる組成物及び水難溶性有効成分を高効率に付着させる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物や、例えば、アニオン性高分子化合物等とカチオン性高分子化合物等との組み合わせが、電解質を含む水溶液中では溶解する性質を有する一方、水中では不溶であることを知見した。さらに、このような性質を有する化合物(以下、塩感応性高分子化合物)が溶解した電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを有する組成物を水で希釈することにより、塩感応性高分子化合物が水難溶性有効成分とともに析出し、対象表面に付着されることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
従って、下記発明を提供する。
[1].塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させる水難溶性有効成分の付着化組成物であって、上記塩感応性高分子化合物が、(II)下記(1)〜(3)から選ばれる組み合わせである、水難溶性有効成分の付着化組成物。
(1)(i−1)アニオン性高分子化合物と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質との組み合わせ、
(2)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−2)カチオン性高分子化合物との組み合わせ、
(3)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質
[2].(i−2)酸性のタンパク質が、アルブミン、グリニシン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン及びポリグルタミン酸ナトリウム、並びにムチン、マリンムチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマンタン硫酸、ヘパリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、(ii−1)塩基性のタンパク質が、ラクトフェリン、リゾチーム及びポリリジンから選ばれる1種以上である[]記載の組成物。
[3].上記(i)((i−1)アニオン性高分子化合物又は(i−2)酸性のタンパク質)と、(ii)((ii−1)塩基性のタンパク質又は(ii−2)カチオン性高分子化合物)との質量比(i)/(ii)が、1/99〜99/1である[]又は[]記載の組成物。
[4].塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させる水難溶性有効成分の付着化組成物であって、上記塩感応性高分子化合物が(I)下記共重合体であって、(b)単量体と(a)単量体の質量比〔b〕/〔a〕が0.03〜3、(c)単量体と(a)単量体の質量比〔c〕/〔a〕が0.01〜1である、水難溶性有効成分の付着化組成物。
(a)下記(a1)〜(a3)から選ばれる単量体と、
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体
(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体
(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体
(b)ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる疎水性基含有ビニル単量体と、
(c)親水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体
[5].塩感応性高分子化合物が、(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c)親水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体であることを特徴とする[]記載の組成物。
[6].(c)親水性基含有ビニル単量体が、エチレンオキサイド基含有ビニル単量体であることを特徴とする[]は[]記載の組成物。
[7].対象面が口腔内である[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8].水難溶性有効成分が、平均粒子径0.01〜1μmの金属酸化物からなる白色化剤である[1]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
[9].塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含む組成物を、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させる水難溶性有効成分の付着方法であって、上記塩感応性高分子化合物が、下記(I)又は(II)である付着方法。
(I)共重合体
(a)下記(a1)〜(a3)から選ばれる単量体と、
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体
(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体
(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体
(b)ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる疎水性基含有ビニル単量体と、
(c)親水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体であって、(b)単量体と(a)単量体の質量比〔b〕/〔a〕が0.03〜3、(c)単量体と(a)単量体の質量比〔c〕/〔a〕が0.01〜1である共重合体。
(II)下記(1)〜(3)から選ばれる組み合わせ
(1)(i−1)アニオン性高分子化合物と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質との組み合わせ、
(2)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−2)カチオン性高分子化合物との組み合わせ、
(3)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質
本発明によれば、塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含む組成物を、水で希釈することにより、水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させることで、安全かつ簡便に対象面に水難溶性有効成分が効率よく滞留し、その機能を発現することができる水難溶性有効成分の付着化組成物及び水難溶性有効成分の付着方法を提供することができる。
本発明の水難溶性有効成分の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させるものである。
塩感応性高分子化合物
本発明の塩感応性高分子化合物は、室温において、電解質水溶液中で溶解する一方、水中には不溶であるという塩感応性を有する化合物をいう。より具体的には、0.5質量%以上、好ましくは0.5〜10質量%の電解質水溶液中に溶解し、好ましくは塩感応性高分子化合物0.1〜20質量%が溶解するが、水中には不溶である高分子化合物をいう。
塩感応性高分子化合物としては、下記(I)〜(II)の塩感応性を有する化合物又は組み合わせが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(I)1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物
(II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせ
(I)1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物としては、スルホベタイン系高分子化合物、カルボキシベタイン系高分子化合物、ホスホベタイン系高分子化合物又はアニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体が挙げられる。
スルホベタイン系塩感応性高分子化合物としては、スルホベタイン基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体が挙げられ、具体的には、(1).(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体の重合体、(2).(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体、(3).(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c1)上記(a1)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体の共重合体が挙げられる。
カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物としては、カルボキシベタイン基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体が挙げられ、具体的には、(1).(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体の重合体、(2).(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体、(3).(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c2)上記(a2)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体の共重合体が挙げられる。
ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物としては、ホスホベタイン基含有ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体が挙げられ、具体的には、(1).(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体の重合体、(2).(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体、(3).(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c3)上記(a3)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体の共重合体が挙げられる。
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体、(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体とは、それぞれ、単量体中にアニオン性であるスルホン酸基又はその塩、カルボン酸基又はその塩、リン酸基又はその塩と、カチオン性基との両者を有するものである。カチオン性基としてはアミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等を挙げることができる。(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体、及び(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。以下、(a1)、(a2)及び(a3)を総称する場合(a)、(c1)、(c2)及び(c3)を総称する場合(c)と示す。
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体としては、下記一般式(1−(1))で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005071613
(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R3,R4は独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R5は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基、又は置換されていてもよいフェニレン基、Aは酸素原子又はNHを示し、X1はスルホン酸アニオンを示す。)
一般式(1−(1))で表される化合物としては、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムブタンスルホネート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムスルホネート等が挙げられる。
一般式(1−(1))の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のスルホベタイン化により合成することができる。スルホベタイン化は、該3級アミノ基含有ビニル単量体と、2−ブロモエタンスルホン酸塩等のハロスルホン酸塩、又は1,3−プロパンサルトンや1,4−ブタンサルトン等のサルトン類等との反応によって得ることができる。本発明においては、反応後速やかに進行し塩を副生しない点から、サルトン類との反応が好ましい。
上記3級アミノ基含有ビニル単量体としては、具体的には、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルとはアクリル及び/又はメタクリルを示す。
(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体としては、下記一般式(1−(2))で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005071613
(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R3,R4は独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R5は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基、又は置換されていてもよいフェニレン基、Aは酸素原子又はNHを示し、X2はカルボン酸アニオンを示す。)
一般式(1−(2))で表される化合物としては、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエタンカルボキシレート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンカルボキシレート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンカルボキシレート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムブタンカルボキシレート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムスカルボキシレート等が挙げられる。
一般式(1−(2))の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のカルボキシベタイン化により合成することができる。カルボキシベタイン化は、該3級アミノ基含有ビニル単量体と、モノクロロ酢酸塩等のハロカルボン酸塩、又はβ−ラクトンやγ−ラクトン等のラクトン類との反応によって得ることができる。本発明においては、反応後速やかに進行し塩を副生しない点から、ラクトン類との反応が好ましい。
(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体としては、下記一般式(1−(3))で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005071613
(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R3,R4は独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R5は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基、又は置換されていてもよいフェニレン基、Aは酸素原子又はNHを示し、X3はリン酸アニオンを示す。)
一般式(1−(3))で表される化合物としては、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエタンホスフェート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンホスフェート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンホスフェート、3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムブタンホスフェート、3−ジメチル(アクリロイルオキシエチル)アンモニウムスホスフェート等が挙げられる。
一般式(1−(3))の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のホスホベタイン化により合成することができる。ホスホベタイン化は、該3級アミノ基含有ビニル単量体と、ω−ブロモアルキルホスフェートやω−ブロモアルキルホスフィネート等のハロアルキルホスフェート類、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン等のハロホスホラン類、又は2−ブロモエチルジクロロホスフェート等のハロアルキルジハロホスフェート類との反応によって得ることができる。
(b)疎水性基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物又はシリコーンマクロモノマー等の疎水性重合体を含有するマクロモノマーが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
Figure 0005071613
(式中、R1,Aは上記と同様であり、R6は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を示す。)
上記一般式(2)で示される化合物の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
塩感応性高分子化合物としては、塩感応性の機能をさらに発揮せしめる点から、さらに、(c)上記(a)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体を含む単量体組み合わせの共重合体であることが好ましい。このような単量体としては、特に限定されるものではないが、合成される共重合体の溶解性のコントロールや担持、付着機能の調整等の目的に応じて使用することができ、例えば、親水性基含有ビニル単量体や架橋性単量体等を使用することができる。
親水性基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、メタンスルホン酸(メタ)アクリレート等のアニオン性基を有するもの、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、塩化トリエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、塩化トリメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、塩化トリエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、等の4級アンモニウム基を有するもの、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基を有するもの、(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するもの、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するもの、ビニルピロリドン、ビニルピリジン又は下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体等を挙げることができる。
Figure 0005071613
(式中、R7は水素原子又はメチル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、BOはエチレンオキシ基、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とからなるアルキレンオキシ基を示し、nはBOの平均付加モル数であり、4〜50の数を示す。)
架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの(c)単量体としては、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい(c)単量体としては、塩感応性の機能を損なうことなく、共重合体の溶解性コントロールが容易である点から、親水性基含有ビニル単量体が好ましく、上記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体がより好ましく、特にエチレンオキサイド基含有ビニル単量体が好ましい。
本発明のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物、ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物は、上記組み合わせの単量体の混合物を後述する製法等で共重合することにより得ることができる。(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体又は(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体の重合体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体の場合、共重合比は、本発明の目的に適用しうる塩感応性を発現させる点から、上記(b)単量体と上記(a)単量体との質量比〔b〕/〔a〕が0.01〜5であることが好ましく、より好ましくは0.03〜3である。この〔b〕/〔a〕の比が上記0.01〜5の範囲外になると、電解質水溶液に溶解できないか、溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。
(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体、(a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体又は(a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体の重合体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c)上記(a)及び(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体の共重合体の場合、本発明の目的に適用しうる塩感応性をさらに発現させる点から、〔b〕/〔a〕が0.03〜3、〔c〕/〔a〕が0.01〜1が好ましい。〔b〕/〔a〕及び〔c〕/〔a〕が上記各範囲(0.01〜5、0.01〜2)外となると、電解質水溶液に溶解できないか、溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。この中でも0.5〜10質量%の電解質水溶液中に、塩感応性高分子化合物0.1〜10質量%が溶解し、水難溶性有効成分の分散を可能とし、水で希釈することで析出し水難溶性有効成分と共に対象面に付着する特徴を持つものが好ましい。
(d)アニオン性基含有ビニル単量体と(e)カチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体について説明する。(d)アニオン性基含有ビニル単量体としては、カルボン酸、スルホン酸等の官能基を有するビニル単量体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸及びその塩、無水マレイン酸、その加水分解物及び加アルコール分解物、ハーフエステル及びの塩、クロトン酸及びその塩、アシッドホスホオキシ(アルキル)(メタ)アクリレート及びその塩、アシッドホスホオキシ(ポリオキシアルキレン)(メタ)アクリレート及びその塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。この中でも、(メタ)アクリル酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(e)カチオン性基含有ビニル単量体としては、3級又は4級アミノ基を有するビニル単量体が挙げられる。具体的には、下記一般式(4)又は(5)で表される少なくとも1種のカチオン性又はカチオン化可能な官能基を有するモノエチレン性ビニル単量体が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
Figure 0005071613
(式中、R9は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R10は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R11,R12は独立に、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。)
一般式(4)で示すビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。一般式(4)で表されるビニル単量体は、重合前又は重合後に他の化合物と反応させてもよい。反応例としては、臭化ブロム等のハロゲン化アルキルによるカチオン化が挙げられる。
Figure 0005071613
(式中、R9は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R10は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R11,R12及びR13は独立に、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Zはハロゲン、OH、1/2HSO4、1/3PO4、HCO2又はCH3CO2を示す。)
一般式(5)で表されるビニル単量体として、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチル硫酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチルクロライド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチル硫酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルメチルリン酸、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエチルリン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチルクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチル硫酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルリン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエチルリン酸等が挙げられる。この中で、メタクリル酸ジメチルアミノエチルクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドクロライドが好ましい。
アニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体は、(1)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と(e)カチオン性基含有ビニル単量体との共重合体、(2)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体、(3)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(f)アニオン性基含有ビニル単量体、カチオン性基含有ビニル単量体及び上記(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体の共重合体が挙げられる。
(b)疎水性基含有ビニル単量体としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物又はシリコーンマクロモノマー等の疎水性重合体を含有するマクロモノマーが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
Figure 0005071613
(式中、R1,Aは上記と同様であり、R6は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基もしくはベンジル基を示す。)
上記一般式(2)で示される化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(f)アニオン性基含有ビニル単量体、カチオン性基含有ビニル単量体及び上記(b)単量体と共重合可能なビニル単量体としては、(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体、架橋性単量体が挙げられる。
Figure 0005071613
(式中、R7は水素原子又はメチル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、BOはエチレンオキシ基、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とからなるアルキレンオキシ基を示し、nはBOの平均付加モル数であり、4〜50の数を示す。)
架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの(f)単量体としては、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい(f)単量体としては、塩感応性の機能を損なうことなく、共重合体の溶解性コントロールが容易である点から、親水性基含有ビニル単量体が好ましく、上記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン基含有ビニル単量体がより好ましく、特にエチレンオキサイド基含有ビニル単量体が好ましい。
(3)(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(f)アニオン性基含有ビニル単量体、カチオン性基含有ビニル単量体及び上記(b)単量体と共重合可能なビニル単量体とを含む単量体の共重合体の場合、本発明の目的に適用しうる塩感応性をさらに発現させる点から、上記(b)単量体と、(d)アニオン性基含有ビニル単量体と、(e)カチオン性基含有ビニル単量体との合計((d)+(e))との質量比〔b〕/〔(d)+(e)〕が0.01〜5、及び(f)単量体と((d)+(e))との質量比〔f〕/〔(d)+(e)〕が0.01〜2の範囲内が好ましい。より好ましくは、〔b〕/〔(d)+(e)〕が0.03〜3、〔f〕/〔(d)+(e)〕が0.01〜1である。〔b〕/〔(d)+(e)〕及び〔f〕/〔(d)+(e)〕が上記各範囲(0.01〜5、0.01〜2)外となると、電解質水溶液に溶解できないか、溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。この中でも0.5〜10質量%の電解質水溶液中に、塩感応性高分子化合物0.1〜10質量%が溶解し、水難溶性有効成分の分散を可能とし、水で希釈することで析出し水難溶性有効成分と共に対象面に付着する特徴を持つものが好ましい。
本発明において、得られる共重合体の分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量で1000〜100万、好ましくは、疎水性有機物質の担持性、単独又は担持した状態での付着性の点から、1万〜50万の範囲にあるものが好ましい。なお、重量平均分子量の測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、スルホベタイン化、カルボシキベタイン化、スルホベタイン化等の変性前の重合体を試料とし、0.42質量%トリエチルアミンを含むテトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレン標準にて換算して分子量を算出した。
本発明の共重合体の製造方法は特に限定されず、上記単量体の混合物を、溶液重合、乳化重合、沈殿重合等の各種の方法を用いることにより共重合して製造することができる。溶液重合を行う場合は、性質の異なる複数の単量体を溶解するための重合溶媒が用いられる。このようなものとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が使用される。また、重合開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸カリウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物を用いることができる。さらに、開始剤の使用量も特に限定されず、通常、全単量体量に対して、0.1〜10モル%である。重合温度は、重合方法や用いる開始剤の種類等により異なるが、通常、50〜100℃であり、重合時間は、2〜10時間である。なお、本発明の共重合体は、使用する開始剤の量、重合溶媒の種類、重合時のモノマー濃度等の重合条件を調整することで、分子量を制御することができる。
本発明のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物及びホスホベタイン系塩感応性高分子化合物は、上述の如く、(a)単量体、(a)及び(b)単量体、さらに好ましくはこれらと共重合可能な(c)単量体を上記重合方法等に従って重合することにより製造することができるが、(a)単量体のうち上記一般式(1)〜(3)で示される単量体に関しては、前駆体である3級アミノ基含有ビニル単量体を(b)単量体、必要に応じてさらに(c)単量体と共重合したのち、共重合体中3級アミノ基部をスルホベタイン化、カルボキシベタイン化又はホスホベタイン化することで製造することもできる。
とりわけ、(c)単量体の一部又は全部として3級アミノ基を有するビニル単量体を選択し、かつ(a)単量体が該3級アミノ基含有単量体のスルホベタイン化、カルボキシベタイン化又はホスホベタイン化反応により得られるものである場合には、最終的に得られる高分子化合物中におけるそれらの構成比が所望となるように、共重合体中該3級アミノ基を部分的にスルホベタイン化、カルボキシベタイン化又はホスホベタイン化反応することで、所望の構成比からなる目的のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物、ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物を得ることができる。
本発明の塩感応性高分子化合物として、(I)1分子中にアニオン性解離基とカチオン性解離基とを有する両性高分子化合物を用いる場合、その含有量は、付着化組成物中0.1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
(II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせは、上記塩感応性を有するものである。(i)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、(ii)カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との質量比(i)/(ii)は、1/99〜99/1の範囲が好ましく、より好ましくは5/95〜95/5であり、さらに好ましくは1/2〜2/1である。さらに、タンパク質を含まない場合は、電荷比でアニオン/カチオンが0.01〜100の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは0.5〜5の範囲のものが好ましい。電荷の比率は、高分子化合物を構成する荷電性単量体のモル数を高分子1単位質量で割ったものが、当該高分子化合物の電荷として算出され、混合するそれぞれの高分子化合物について、電荷と混合質量比を掛け合わせたもの(総電荷数)の比率が、混合時の電荷比である。
アニオン性高分子化合物としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、カルボキシビニルポリマー等のカルボン酸含有共重合体、アクリル樹脂、硫酸含有共重合ポリマー、スルホン酸含有共重合ポリマー、リン酸含有共重合ポリマー等のアニオンポリマー及びその塩が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、カルボキシビニルポリマー、エチレン無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、n−ブチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、イソプロピル無水マレイン酸共重合体及びそれらの開環体、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、ポリビニル硫酸、グリオキシル酸による部分アセタール化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、シェラック、カラギーナン、ペクチン等が挙げられる。また、これらの塩、例えば、ナトリウム、カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、本発明に用いるアニオン性高分子化合物としてはポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質とは、等電点がpH7より酸性側にあるタンパク質及び糖タンパク質である。酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質としては、アルブミン、グリニシン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、ポリグルタミン酸ナトリウム、ムチン、マリンムチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマンタン硫酸、ヘパリン及びこれらの塩等のムコ多糖が挙げられる。これらの天然高分子化合物は、酵素又は酸により加水分解してから用いてもよい。酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質の中ではムチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びその塩が好ましい。
本発明に用いられるカチオン性高分子化合物としては、カチオン化セルロース、ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとエチレン性不飽和炭化水素基を有する重合可能な単量体とのコポリマー、カチオン化ポリビニルピロリドン、カチオン化ポリアミド、カチオン化ポリメタクリレート、カチオン化ポリアクリルアミド、カチオン化メタクリレートとアクリルアミドとのコポリマー、カチオン化メタクリレートとメタクリレートのコポリマー、ポリエチレンイミド、カチオン化デンプン、カチオン化アミロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローストビーンガム、カチオン化寒天、キチン、キトサン及びこれらの変性物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カチオン化セルロース、ポリリジンが好ましい。
カチオン化セルロースとしては、カチオン化度が0.01〜1で、粘度が100〜3,000mPa・s(カチオン化セルロース1質量%水溶液、B型粘度計、25℃、No.3ローターで30rpm・1分で測定)のカチオン化セルロースが好ましい。カチオン化セルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロースにジメチルジアリルアンモニウム塩をグラフト重合したヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩(日本エヌエスシー(株)製のセルコートL−200、セルコートH−100等)、ヒドロキシエチルセルロースに2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを結合した塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース(ライオン(株)製のレオガードMGP、レオガードHLP、レオガードGPS、レオガードKGP、レオガードG、レオガードGP、レオガードMLP)等が挙げられる。この中でも、レオガードGP(カチオン化度0.4、分子量約500,000)が好ましい。
塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質とは、等電点がpH7より塩基性側にあるタンパク質及び糖タンパク質である。塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質としては、ラクトフェリン、リゾチーム、ポリリジンが挙げられる。これらの天然高分子化合物は、酵素又は酸により加水分解してから用いてもよい。塩基性タンパク質、塩基性糖タンパク質の中ではラクトフェリンが好ましい。
アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせの場合、ポリアクリル酸ナトリウムとカチオン化セルロース、ムチンとラクトフェリン、アルギン酸ナトリウムとポリリジンの組み合わせが好ましい。
塩感応性高分子化合物として、(II)アニオン性高分子化合物、酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上と、カチオン性高分子化合物、塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせを用いる場合、その合計含有量は、付着化組成物中0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.003〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。この範囲で、より十分な付着効果と、水難溶性有効成分の十分な機能発揮が得られる。
電解質
塩感応性高分子化合物を含有する電解質水溶液に用いられる電解質は、水に溶解してイオンを形成するものであれば、特に限定されることはなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、一価又は多価金属塩が挙げられ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム等のような無機電解質が好適に使用される。
電解質の含有量は、塩感応性高分子化合物が溶解できれば特に限定されないが、付着化組成物中0.5〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは1〜10質量%である。この濃度が0.5質量%未満では、本発明の共重合体や組み合わせの溶解が困難となる場合があり、また、20質量%を超えると塩析する場合がある。
水難溶性有効成分
本発明の水難溶性有効成分は特に制限されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、白色化剤、口腔用有効成分、殺菌剤、フケ防止剤等が挙げられる。
白色化剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムが挙げられる。この中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が好ましい。白色化剤を用いた場合、本発明の付着化組成物は白色化組成物として好適である。
白色化剤の平均粒子径は、0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。平均粒子径が0.005μm未満の場合には十分に光を散乱することができず、白色化効果が十分得られない場合がある。平均粒子径が5μmを超えると、硬表面への固定性が十分でなく、白色化効果が持続しない場合がある。なお、平均粒子径の測定方法は、マイクロトラック粒度分析計(日機装(株))による50%粒径の測定値である。
白色化剤としての金属酸化物の表面処理は特に制限されないが、金属酸化物の触媒活性を抑制する目的で二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウムで被覆したものも好適に用いられる。
本発明の白色化剤の含有量は、硬表面に十分な量を付着することができれば特に制限されないが、付着化組成物中0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%である。0.1質量%未満の場合には、十分な白色化効果を得ることができない場合があり、50質量%を超える場合には、適用形態によっては使用性の悪い組成物になってしまう場合がある。
口腔用有効成分としては、う蝕予防有効成分として一般に用いられるフッ素イオン源の多価金属塩が挙げられる。これらは水に溶けにくいので本発明の有効成分として用いることができる。フッ素イオン源の多価金属塩としては、フッ化カルシウム、モノフルオロリン酸カルシウム、フッ化すず等が挙げられる。また、ポリフェノール類(グルコシルトランスフェラーゼ防止活性阻害作用)等の酵素防止剤、インドメタシン、グリチルリチン酸ジカリウム等の抗炎症剤等、4−イソプロピル−3−メチルフェノール(以下、IPMPと略す場合がある)、トリクロサン、クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム等の殺菌剤等が挙げられる。その他、トコフェロール、オウゴン、オオバコ、ローズマリー、チョウジ、タイム等の生薬抽出物が挙げられる。これらの中でも、IPMP、フッ化カルシウム、モノフルオロリン酸カルシウム、フッ化すずが好ましい。口腔用有効成分を用いた場合、本発明の付着化組成物は口腔用組成物として好適である。
口腔用有効成分の含有量は、付着化組成物中0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
なお、4−イソプロピル−3−メチルフェノール(IPMP)、トリクロサン、クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム等の殺菌剤は、対象面が布の場合等は殺菌剤組成物としても好適である。
フケ防止剤としては、ビス−[1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオネート]ジンク(以下ジンクピリチオン)や1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4,−トリメチルペンチル)−2(1H)−ピリドンモノエタノールアミン(以下ピロクトンオラミン)、6−シクロへキシル−1−ヒドロキシ−4−メチル−2(1H)−ピリドンモノエタノールアミン(以下シクロピロックスオラミン)が挙げられる。フケ防止剤を用いた場合、本発明の付着化組成物は毛髪化粧料として好適である。
フケ防止剤の含有量は、付着化組成物中0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含む水難溶性有効成分を対象面に高効率に付着させる組成物である。水難溶性有効成分は、電解質水溶液に分散されていてもよいし、希釈に用いられる水に配合され、電解質水溶液を第1剤、水難溶性有効成分を第2剤とする2剤式に分けてもよい。なお、水難溶性有効成分が希釈に用いられる水に配合され、電解質水溶液と水難溶性有効成分が2剤に分かれている場合の水難溶性有効成分の上記含有量(質量%)は、前記水難溶性有効成分を希釈する水の量を含まない水難溶性有効成分を高効率に付着させる組成物全量に対するものとする。
希釈は水で行うが、水道水、下水、雨水、唾液、汗、涙等の体液であってもよいが、電解質濃度が0.5質量%未満のものを使用する。希釈は塩感応性高分子化合物や電解質の濃度によって適宜選定され、塩感応性高分子化合物が析出するまで行うが、通常、付着化組成物1に対して、水を1〜10(質量比)である。希釈水に電解質を含む場合、組成物と希釈する水の組み合わせによって適宜選定され、塩感応性高分子化合物が析出するまで行うが、組成物中の電解質濃度と希釈する水中の電解質濃度の比が2倍以上(質量比)としてもよい。
本発明の付着化組成物、塩感応性高分子化合物を含有する電解質水溶液以外に、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を含むことができるが、この場合、付着化組成物中0〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜20質量%である。50質量%を超えると、塩感応性を示さない場合がある。
本発明の付着化組成物には、上記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で、乳化、分散等の目的で、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤、その他有効成分、pH調整剤等の成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウム等のN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン等のN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
その他の有効成分としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディムスターゼ等の酵素、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の水溶性ポリリン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルレチン酸、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビサボロール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、アスコルビン酸及びその塩類が挙げられる。
さらに、メントール、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油等の香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類等の防腐油、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、ベンガラ等の色素又は着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテーム等の甘味剤等を配合し得る。
本発明の付着化組成物の25℃におけるpHは、pH5.5〜9の範囲が好適であり、pH調整剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合しうる。
本発明の付着化組成物は、塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含む付着化組成物であって、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させるものである。これにより、水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に水難溶性有効成分を高効率に付着させることができる。これは、本発明の塩感応性高分子化合物が、電解質水溶液中で溶解する一方、水中には不溶であるという性質により達成できるものである。
具体的には、例えば本発明の塩感応性高分子化合物を、電解質を含有する電解質水溶液中に溶解しておき、ここに水難溶性有効成分を分散させたのち、単に水で希釈するという安全かつ簡便な方法で、効率よく水難溶性有効成分を担持した状態で塩感応性高分子化合物を析出させられるものである。また、上記溶解し、水で希釈して析出する操作により、水難溶性有効成分と塩感応性高分子化合物とを水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させることができる。
水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に、水難溶性有効成分を担持した塩感応性高分子化合物を析出・付着させる方法としては、塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液(以下、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液)及び水難溶性有効成分を含む溶液を水で希釈した後、対象面を処理してもよく、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液及び水難溶性有効成分を含む溶液で対象面を処理した後、さらに水で対象面を処理してもよい。さらに、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液で処理した後、水難溶性有効成分含有水溶液で処理してもよく、塩感応性高分子化合物の電解質水溶液で処理した後、水難溶性有効成分で処理し、さらに水で処理してもよい。
対象面としては、塩感応性高分子化合物の析出物が付着するものであれば特に限定されない。例えば、水難溶性有効成分の付着・滞留を目的とする口腔粘膜、皮膚、毛髪、歯牙、つめ、木綿、絹、麻、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、レーヨン、キュプラ等の布帛、金属、プラスチック、ゴム、板、ガラス、木材、コンクリート、鉱物、岩、大理石、石膏、セラミック等の硬質表面等が挙げられる。この中でも安全かつ簡便に水難溶性有効成分の付着・滞留ができることから、口腔粘膜、皮膚、毛髪、歯牙、つめ等に用いることが好ましく、特に、口腔粘膜、歯牙等の口腔内を対象面とすることが好ましい。
対象面と、水難溶性有効成分と、塩感応性高分子化合物との好ましい組み合わせとしては、白色化剤とともにスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、カルボキシベタイン系塩感応性高分子化合物又はホスホベタイン系塩感応性高分子化合物を、歯牙に析出・付着する組み合わせ、殺菌剤とともにスルホベタイン系塩感応性高分子化合物、ホスホベタイン系塩感応性高分子化合物又はアニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体を、布帛に析出・付着する組み合わせ、口腔用有効成分とともにコンドロイチン硫酸ナトリウムとラクトフェリンとの組み合わせ、アルギン酸ナトリウムとポリリジンとの組み合わせ、ムチンとポリリジンとの組み合わせを、口腔内(歯牙・口腔粘膜)に析出・付着する組み合わせ等が挙げられる。
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
[調製例1]
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(以下、DMAPSと略す)のホモポリマー(pDMAPS)の調製(スルホベタイン系高分子化合物)
DMAPS単量体をJournal of Applied Polymer Science,30(1985),4697.に記載の方法と同様にして、ジメチルアミノエチルメタクリレートと1,3−プロパンサルトンと反応させることで合成した。撹拌機、還流冷却管、温度計、モノマー滴下口、開始剤滴下口及び窒素の導入管を備えた500mLのセパラブルフラスコに、メタノール105.1gを加え、75℃の湯浴で加温を始めるとともに、窒素導入管より窒素の導入を開始した。
一方、500mL容のビーカーに、上記DMAPS166.3g、メタノール127.5gを秤取り、かき混ぜてモノマー溶液を調製した。また、100mLのビーカーに2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1.7gを秤取り、メタノール25.8gを加えて溶解し、開始剤溶液を調製した。
次に、前記セパラブルフラスコの内温が65℃になった時点で、滴下ポンプを用いて、開始剤溶液、モノマー溶液を2時間かけて添加し、さらに5時間撹拌を続け、重合を終了した。重合溶媒を除去、乾燥することで、共重合体を得た。重量平均分子量は5万であった。なお、調製例1〜4の重量平均分子量は、スルホベタイン化前の重合体を試料とし、0.42質量%トリエチルアミンを含むテトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレン標準にて換算して分子量を算出した。
[調製例2]
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエタンカルボキシレート(以下、DMAPCと略す)のホモポリマー(pDMAPC)の調製(カルボキシベタイン系高分子化合物)
DMAPC単量体を Chemical Review,(2002)102,4177−4189.に記載の方法と同様にして、ジメチルアミノエチルメタクリレートとβ−ラクトンと反応させることで合成した。重量平均分子量は5万であった。
[調製例3]
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエタンホスフェート(以下、DMAPPと略す)のホモポリマー(pDMAPP)の調製(ホスホベタイン系高分子化合物)
DMAPP単量体を Chemical Review,(2002)102,4177−4189.に記載の方法と同様にして、ジメチルアミノエチルメタクリレートとジエトキシ−ω−ブロモエチルホスフェートと反応させることで合成した。重量平均分子量は5万であった。
調製例1〜3で得られたスルホベタイン系高分子化合物、カルボキシベタイン系高分子化合物、ホスホベタイン系高分子化合物の構造単位を、それぞれ下記(6)、(7)、(8)に示す。
Figure 0005071613
[調製例4]
DMAPS、ラウリルメタクリレート(以下、LMAと略す)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(下記式(9)で表される単量体p=9、以下M90Gと略す)の共重合体(DMAPS/LMA/M90G)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計、モノマー滴下口、開始剤滴下口及び窒素の導入管を備え
た1000mLのセパラブルフラスコに、エタノール155.1gを加え、85℃の湯浴
で加温を始めるとともに、窒素導入管より窒素の導入を開始した。
一方、300mL容のビーカーに、(a)スルホベタイン基含有ビニル単量体の前駆体
としてジメチルアミノエチルメタクリレート85.6g、(b)疎水性基含有ビニル単量体としてラウリルメタクリレート(LMA)47.4g、(a)及び(b)と共重合可能な(c)ビニル単量体として、M90G7g、エタノール77.5gを秤取り、かき混ぜて均一なモノマー溶液を調製した。
また、100mLのビーカーに2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1.4
gを秤取り、エタノール25.8gを加えて溶解し、開始剤溶液を調製した。
次に、前記セパラブルフラスコの内温が78℃になった時点で、滴下ポンプを用いて、
開始剤溶液、モノマー溶液を2時間かけて添加し、さらに5時間撹拌を続け、重合を終了した。得られた共重合体溶液をエタノールで該共重合体の質量濃度が15%になるように希釈し、液温25℃で、1,3-プロパンサルトン66.5gを1時間かけて添加し、35℃に昇温後、4時間反応を継続した。冷却後、反応溶媒を除去、乾燥することで、共重合体を得た。該共重合体の〔b〕/〔a〕(質量比)は、0.31、〔c〕/〔a〕(質
量比)は0.05であり、重量平均分子量は7万であった。
なお、該構成単量体(a)は、下記式(10)で示されるものである。
Figure 0005071613
[調製例5]
DMAPC、LMA及びM90Gの共重合体(DMAPC/LMA/M90G)の調製
調製例4におけるDMAPSの代わりに、DMAPCを使用する以外は、上記調製例4と同様にして共重合体を得た。重量平均分子量は7万であった。
[調製例6]
DMAPP、LMA及びM90Gの共重合体(DMAPP/LMA/M90G)の調製
調製例4におけるDMAPSの代わりに、DMAPPを使用する以外は、上記調製例4と同様にして共重合体を得た。重量平均分子量は7万であった。
[調製例7]
DMAPSと、ベンジルメタクリレート(以下、BzMAと略す)と、M90Gとの共重合体(DMAPS/BzMA/M90G)の調製
調製例4におけるラウリルメタクリレート(LMA)の代わりにベンジルメタクリレート(BzMA)を使用する以外は上記調製例4と同様にして共重合体を得た。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は、0.31、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.05であり、重量平均分子量は7万であった。
[調製例8]
DMAPC、BzMA及びM90Gの共重合体(DMAPC/BzMA/M90G)の調製
調製例7におけるDMAPSの代わりに、DMAPCを使用する以外は、上記調製例7と同様にして共重合体を得た。重量平均分子量は7万であった。
[調製例9]
DMAPP、BzMA及びM90Gの共重合体(DMAPP/BzMA/M90G)の調製
調製例7におけるDMAPSの代わりに、DMAPPを使用する以外は、上記調製例7と同様にして共重合体を得た。重量平均分子量は7万であった。
[調製例10]
DMAPSと、n−ヘキシルメタクリレート(以下nHMAと略す)と、M90Gとの共重合体(DMAPS/nHMA/M90G)の調製
調製例4におけるラウリルメタクリレート(LMA)の代わりにn−ヘキシルメタクリレート(nHMA)を使用する以外は上記調製例4と同様にして共重合体を得た。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は、0.31、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.05であり、重量平均分子量は7万であった。
[調製例11]
DMAPC、nHMA及びM90G)の共重合体(DMAPC/nHMA/M90G)の調製
調製例10におけるDMAPSの代わりに、DMAPCを使用する以外は、上記調製例10と同様にして共重合体を得た。重量平均分子量は7万であった。
[調製例12]
DMAPP、nHMA及びM90Gの共重合体(DMAPP/nHMA/M90G)の調製
調製例10におけるDMAPSの代わりに、DMAPPを使用する以外は、上記調製例10と同様にして共重合体を得た。重量平均分子量は7万であった。
[調製例13]
アクリル酸(以下、AAcと略す)、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート(以下、DMCと略す)及びn−ヘキシルアクリレート(以下、nHAと略す)の共重合体(AAc/DMC/nHA)の共重合体の調製
冷却還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、アクリル酸(AAc)11.5g、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート(DMC)33.2g、n−ヘキシルアクリレート(nHA)12.5g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.31g、エチルアルコール100gを仕込み、窒素を吹き込みながら、室温で30分撹拌した。反応系を75℃に昇温し6時間反応させた。生成物を反応器から取り出し、溶媒を滅圧濃縮して、除去することにより高分子の固体を得た。この固体を水に溶解させ、7日間透析した。その水溶液を濃縮し、凍結乾燥してアニオン性基含有ビニル単量体とカチオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体49gを得た。得られた共重合体の重量平均分子量は20万であった。
[調製例14]
アクリル酸(AAc)、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート(DMC)及びラウリルアクリレート(以下、nLAと略す)の共重合体(AAc/DMC/nLA)の調製
調製例13の「アクリル酸(AAc)11.5g、塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート(DMC)33.2g、n−ヘキシルアクリレート(nHA)12.5g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.31g」の代わりに、「AAc11.5g、DMC41.4g、nLA16.5g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(下記式(9)で表される単量体p=23、以下、M230Gと略す)10.7g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.48g」を使用する以外は、調製例13と同様に反応、精製して両性両親媒性高分子58g得た。得られた高分子の重量平均分子量は18万であった。
調製例1〜14で得られた共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム(日本純薬(株)製:アロンビスM)とカチオン化セルロース(ライオン化学(株)製:レオガードGP(カチオン化度0.4、分子量約50万))を、ポリアクリル酸ナトリウム/カチオン化セルロース(質量比)=3/1、電荷比率アニオン/カチオン=1.1の混合物、カチオン化セルロース(ライオン化学(株)製:レオガードGP(カチオン化度0.4、分子量約50万))、ポリアクリル酸ナトリウム(日本純薬(株)製:アロンビスM)、ポリビニルアルコール((株)クラレ製:PVA235)、及び塩化ジメチルジアリルアンモニウム含有ポリマー(オンデオ・ナルコ社製:マーコート100(分子量20万〜28万))について、下記方法で塩感応性を評価した。結果を表1に示す。
(i)ポリアクリル酸ナトリウム(日本純薬(株)製:アロンビスM)、アルギン酸ナトリウム(純正化学(株)製:試薬一級)、キサンタンガム(大日本製薬(株)製:エコーガムRD/ケトロールRD)、ムチン(MPバイオメディカルス製:ムチン)、コンドロイチン硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)、ヒアルロン酸ナトリウム((株)資生堂製:バイオヒアルロン酸ナトリウム(SZE))、カゼイン(OXID製:カゼイン加水分解物)と、(ii)カチオン化セルロース(ライオン化学(株)製:レオガードGP)、カチオン化セルロース(日本エヌエスシー(株)製:セルコートL200)、ポリリジン(チッソ(株)製:ε−ポリリジン)、ラクトフェリン(和光純薬(株)製:ラクトフェリン、牛乳製)、リゾチーム(和光純薬(株)製:リゾチーム、卵白由来)とを、表2に記載の比率で混合し、下記方法で塩感応性を評価した。結果を表2に示す。
〈塩感応性評価〉
被験高分子化合物0.1gをサンプル瓶にとり、そこに9.9gの水又は2%塩化ナトリウム水溶液を加え、室温で1.5cmのスターラーバーを用いて5時間撹拌した。1分間静置した後の各液の外観を目視で評価し、水又は2%塩化ナトリウム水溶液に対する各高分子化合物の溶解性を下記評価基準で判断した。
〈溶解性〉
○:ポリマーが溶けて液が透明
×:ポリマーが不溶で沈殿もしくは液が白濁又はゲル化
〈塩感応性〉
塩感応性 :水に対する溶解性は×、2%塩化ナトリウム水溶液に対する溶解性は○の もの
非塩感応性:上記塩感応性以外の挙動を示すもの
Figure 0005071613
Figure 0005071613
[実施例1〜8、参考例1〜9、比較例1〜5]
調製例で得られた共重合体及び表3〜5に記載の高分子化合物を用いて、表3〜5に示す組成の高分子化合物含有電解質水溶液と、白色化剤TiO2(平均粒子径0.25μm)溶液を調製した。得られた溶液について下記方法で歯牙白色化及び歯牙白色化持続性を評価した。
〈歯牙白色化及び歯牙白色化持続性評価方法〉
紅茶による着色汚れの付着したハイドロキシアパタイト板(半径0.35cm×高さ0.35cm),以下、HAP板)を、高分子化合物含有電解質水溶液40mLに、室温で10分間浸漬した。浸漬後のHAP板を、スターラーバーで撹拌されているTiO2溶液40mLに、室温で10分間浸漬した。これらの浸漬操作を1セットとして3回繰り返した。その後、色差を測定する板面の裏側を、イオン交換水を5秒間流して余分なTiO2を除去して自然乾燥し、白色化処理後のHAP板を得た。白色化処理前後のHAP板の色差Labを測定し、下記式に基づいて歯牙白色化を算出した。次に上記処理後のHAP板を、1%ムチン水溶液中で1時間撹拌浸漬後の色差Labを測定し、下記式に基づいて歯牙白色化持続性を評価した。
歯牙白色化 :ΔEa=((L1−L02+(a1−a02+(b1−b021/2
歯牙白色化持続性:ΔEb=((L2−L02+(a2−a02+(b2−b021/2
なお、L0、a0、b0は、白色化処理前の初期Lab値、L1、a1、b1は、白色化処理後のLab値、L2、a2、b2は1%ムチン水溶液浸漬後のLab値を示す。
上記で得られたΔEa及びΔEb値から、下記評価基準に基づいて歯牙白色化効果、歯牙白色化持続性を評価した。
〈歯牙白色化〉
◎:ΔEaが7以上
○:ΔEaが5以上7未満
△:ΔEaが3以上5未満
×:ΔEaが3未満
〈白色化持続性〉
◎:ΔEbが7以上
○:ΔEbが5以上7未満
△:ΔEbが3以上5未満
×:ΔEbが3未満
〈FRP板白色化及びFRP板白色化持続性評価方法〉
上記評価方法において、HAP板をガラス繊維強化樹脂(0.4cm×0.4cm×0.2cm),以下FRP板)にした以外は同様の方法で、FRP板白色化及びFRP板白色化持続性を評価した。
Figure 0005071613
Figure 0005071613
Figure 0005071613
上記の結果から、本発明の白色化組成物は、対象表面に対する白色化効果及び効果の持続性が高いことが明らかになった。
[実施例9〜16、参考例10〜15、比較例6]
調製例で得られた共重合体及び表6,7に記載の高分子化合物を用いて、表6,7に示す組成の高分子化合物5%含有塩化ナトリウム0.5%水溶液に4−イソプロピル−3−メチルフェノール(IPMP)を0.7%溶解した溶液、カチオン界面活性剤であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライド0.05mol/L(以下、STACと略す)にIPMP0.7%を可溶化した溶液を調製した。この溶液2mLを、綿布0.5g(4cm×4cm)1枚を浸漬した純水及び0.5%の塩化ナトリウム水溶液48mL中に添加し、撹拌した。添加2時間分後に純水及び0.5%の塩化ナトリウム水溶液中のIPMP量をそれぞれ吸光度測定により定量し、綿布に対するIPMP付着量(EIPMP)を算出した。得られた付着量から、純水中のIPMP付着量/0.5%の塩化ナトリウム水溶液中のIPMP付着量で表される比率(AIPMP)を算出し、下記評価基準で、綿布に対するIPMP付着効果を評価した。
<綿布に対するIPMP付着効果>
◎:AIPMPが5以上
○:AIPMPが2以上5未満
△:AIPMPが1以上2未満
×:AIPMPが1未満
次に、IPMPを付着させた綿布を、純水100mL中に投入し、6時間撹拌後に純水中に溶出したIPMP量を定量した。付着量(EIPMP)から溶出量を差し引いたIPMP残存量(RIPMP)を算出し、付着量との比率から得られるIPMP残存率(%)=RIPMP/EIPMP×100))を算出し、下記評価基準で、綿布に対するIPMP付着持続性を評価した。
<綿布に対するIPMP付着持続性>
◎:IPMP残存率が50%以上
○:IPMP残存率が20%以上50%未満
△:IPMP残存率が10%以上20%未満
×:IPMP残存率が10%未満
なお、IPMPの定量は、分光光度計(島津製作所製、UV−260)を用い、278nmで行った。吸光度とIPMP濃度の検量線は、吸光度2以下の濃度で行い、IPMPの濃度を算出した。高分子化合物共存時は、サンプル溶液1mLに9mLのエタノールを添加し、超音波発生装置内に20分間置いて、IPMPを抽出してから測定を行った。
Figure 0005071613
Figure 0005071613
本発明のIPMP配合組成物は、綿布表面に対するIPMP付着及び付着持続性が高いことが明らかになった。
[実施例17〜31、参考例16〜22、比較例7〜9]
調製例で得られた共重合体及び表8,9に記載の高分子化合物を用いて、高分子化合物含有(1%又は5%)塩化ナトリウム1%水溶液に、モノフルオロリン酸カルシウム1%を分散させ、表8,9に記載の溶液を調製し試料とした。この溶液及び塩化ナトリウム1%水溶液にモノフルオロリン酸カルシウム1%を分散させた溶液(ブランク)0.5g中にコラーゲンシート(ニッピコラーゲンシート工業製、ニッピ・コラーゲン・ケーシング)20mgを浸漬させ、緩衝液(塩化カリウム50mmol/L、KH2PO41mmol/L、塩化カルシウム1mmol/L、塩化マグネシウム0.1mmol/L)1.5g、ピロリン酸0.01mmol/Lを添加して希釈し、室温にて2時間回転処理した。処理後のコラーゲンシートを取り出し、コラーゲンシートに1mLの6mol/L過塩素酸を加え、100℃、10分加熱、水冷処理して分解させた。得られたコラーゲンシート分解液0.1gを1%塩化ナトリウム水溶液3.9gで希釈し、さらに、得られた希釈後の液0.2gを1mol/Lクエン酸カリウム緩衝液(pH5.5)0.8gで希釈した後、フッ素電極にて、分解液中のフッ素量を定量し、コラーゲンシートに対するモノフルオロリン酸カルシウムの付着量(Ef)を算出した。得られた付着量から、試料のフッ素付着量/ブランクのフッ素付着量で表される比率(Af)を算出し、下記評価基準で、コラーゲンシートに対するモノフルオロリン酸カルシウム付着効果を評価した。
<コラーゲンシートに対するモノフルオロリン酸カルシウム付着効果>
◎:Afが2以上
○:Afが1以上2未満
×:Afが1未満
次に、フッ素を付着させたコラーゲンシートを、純水2mL中に投入し、1時間浸漬したのちに、溶出したフッ素量を定量した。付着量(Ef)から溶出量を差し引いたフッ素残存量(Rf)を算出し、付着量との比率から得られるフッ素残存率(%)=Rf/Ef×100)を算出し、下記評価基準で、コラーゲンシートに対するモノフルオロリン酸カルシウム付着持続性を評価した。
<コラーゲンシートに対するモノフルオロリン酸カルシウム付着持続性>
◎:フッ素残存率が50%以上
○:フッ素残存率が20%以上50%未満
△:フッ素残存率が10%以上20%未満
×:フッ素残存率が10%未満
なお、フッ素の定量は、サンプル溶液0.4mLにクエン酸緩衝液(クエン酸カリウム1M、pH=5.5)1.6mLを加えフッ素電極により測定した。
上記評価方法において、コラーゲンシートをHAP板(半径0.35cm×高さ0.35cm)にした以外は同様の方法で、HAP板に対するモノフルオロリン酸カルシウム付着及び持続性を評価した。結果を表中に併記する。
Figure 0005071613
Figure 0005071613
本発明のモノフルオロリン酸カルシウム配合組成物は、コラーゲン及びHAP表面に対するモノフルオロリン酸カルシウム付着及び付着持続性が高いことが明らかになった。

Claims (9)

  1. 塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させる水難溶性有効成分の付着化組成物であって、上記塩感応性高分子化合物が、(II)下記(1)〜(3)から選ばれる組み合わせである、水難溶性有効成分の付着化組成物。
    (1)(i−1)アニオン性高分子化合物と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質との組み合わせ、
    (2)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−2)カチオン性高分子化合物との組み合わせ、
    (3)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質
  2. (i−2)酸性のタンパク質が、アルブミン、グリニシン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン及びポリグルタミン酸ナトリウム、並びにムチン、マリンムチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマンタン硫酸、ヘパリン及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、(ii−1)塩基性のタンパク質が、ラクトフェリン、リゾチーム及びポリリジンから選ばれる1種以上である請求項記載の組成物。
  3. 上記(i)((i−1)アニオン性高分子化合物又は(i−2)酸性のタンパク質)と、(ii)((ii−1)塩基性のタンパク質又は(ii−2)カチオン性高分子化合物)との質量比(i)/(ii)が、1/99〜99/1である請求項又は記載の組成物。
  4. 塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含み、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、対象面に析出・付着させる水難溶性有効成分の付着化組成物であって、上記塩感応性高分子化合物が(I)下記共重合体であって、(b)単量体と(a)単量体の質量比〔b〕/〔a〕が0.03〜3、(c)単量体と(a)単量体の質量比〔c〕/〔a〕が0.01〜1である、水難溶性有効成分の付着化組成物。
    (a)下記(a1)〜(a3)から選ばれる単量体と、
    (a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体
    (a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体
    (a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体
    (b)ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる疎水性基含有ビニル単量体と、
    (c)親水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体
  5. 塩感応性高分子化合物が、(a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体と、(b)疎水性基含有ビニル単量体と、(c)親水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体であることを特徴とする請求項記載の組成物。
  6. (c)親水性基含有ビニル単量体が、エチレンオキサイド基含有ビニル単量体であることを特徴とする請求項4又は5記載の組成物。
  7. 対象面が口腔内である請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
  8. 水難溶性有効成分が、平均粒子径0.01〜1μmの金属酸化物からなる白色化剤である請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
  9. 塩感応性高分子化合物を溶解し、水で希釈されることにより該塩感応性高分子化合物が析出する電解質水溶液と、水難溶性有効成分とを含む組成物を、水で希釈することにより水難溶性有効成分とともに塩感応性高分子化合物を、水難溶性有効成分を付着させるべき対象面に析出・付着させる水難溶性有効成分の付着方法であって、上記塩感応性高分子化合物が、下記(I)又は(II)である付着方法。
    (I)共重合体
    (a)下記(a1)〜(a3)から選ばれる単量体と、
    (a1)スルホベタイン基含有ビニル単量体
    (a2)カルボキシベタイン基含有ビニル単量体
    (a3)ホスホベタイン基含有ビニル単量体
    (b)ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる疎水性基含有ビニル単量体と、
    (c)親水性基含有ビニル単量体とを含む単量体の共重合体であって、(b)単量体と(a)単量体の質量比〔b〕/〔a〕が0.03〜3、(c)単量体と(a)単量体の質量比〔c〕/〔a〕が0.01〜1である共重合体。
    (II)下記(1)〜(3)から選ばれる組み合わせ
    (1)(i−1)アニオン性高分子化合物と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質との組み合わせ、
    (2)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−2)カチオン性高分子化合物との組み合わせ、
    (3)(i−2)酸性タンパク質及び酸性糖タンパク質から選ばれる酸性のタンパク質と、(ii−1)塩基性タンパク質及び塩基性糖タンパク質から選ばれる塩基性のタンパク質
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