以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、本明細書及び図面において「電力カラーリング」は「電力由来管理」と同様の意味で用いている。図1は、電力カラーリングシステム(電力由来管理システム)100の一例を示す図である。電力カラーリングシステム100は、複数の電源P1〜P3(以下、電源Pと総称する場合がある)と複数の負荷L1、L2(以下、負荷Lと総称する場合がある)とを含む配電系統を対象にして、電力カラーリングの管理を行うシステムである。ここで、電力カラーリングとは、仮想的に電力に情報を付加することである。情報の例として、例えば、誰がいつ発電した電力であるかを示す情報、誰がいつどこで消費した電力であるかを示す情報、再生可能エネルギー由来の電力であることを示す情報等が挙げられる。
本実施形態では、それぞれの電源Pが供給している電力量と、それぞれの負荷Lが使用している電力量を計量し、その需給のバランスに矛盾がないように、且つ、所定条件を満たすように、仮想的な電力量の需給の按分を行い、時間経過を意識した管理を行う。なお、電力カラーリングシステム100は、本発明における「電力由来管理システム」の一例である。また、電源Pは、本発明における「電力供給リソース」の一例である。また、負荷Lは、本発明における「電力需要リソース」の一例である。また、電力カラーリングの管理は、本発明における「複数の電力供給リソースと複数の電力需要リソースとを含む配電系統を対象にして、前記電力需要リソースに供給される電力がいずれの前記電力供給リソースに由来する電力であるかを管理する」ことの一例である。
電力カラーリングシステム100は、複数の計量システムW1〜W5(以下、計量システムWと総称する場合がある)と、電力カラーリングサーバ110と、出力装置130とを備える。電力カラーリングサーバ110は、計量システムW及び出力装置130と通信接続されている。電源Pから供給された電力量、及び負荷Lに供給された電力量は、何らかの計量システムWによって計量される。本実施形態では、電源P1〜P3から供給された電力量が計量システムW1〜W3によってそれぞれ計量され、負荷L1、L2に供給された電力量が計量システムW4、W5によって計量される。
計量システムWは、例えば、検定付計量メーターを電源P、負荷Lに使用するケース、その他簡易型の計量器を使用するケース、あるいは、このような計量器類を代表的な場所に使用し、演算アルゴリズムにより電源P、負荷Lごとの需給電力量を特定するケースのような各種ケースが想定されるが、本実施形態では計量の方法については特定しない。
図1は、これらの手法によって計量システムWから得られる電源P、負荷Lごとの需給電力量を個々の計量システムWで得られたように表現したものである。ここで、計量システムWが、計量器類を代表的な場所に使用し、演算アルゴリズムにより電源P、負荷Lごとの需給電力量を特定するシステムである場合、アルゴリズムの計算において特定期間における需給の電力量が一致すれば、この配電系統における損失はゼロであるとして近似的な計量計算を行うことが可能である。しかしながら、検定付計量メーターを電源P、負荷Lに使用するケース、及びその他簡易型の計量器を使用するケースでは必ず損失分が生じる。ここで注意すべき点としては、本実施形態で問題とする損失はあくまで配電系統内での電源Pの送電端から負荷Lの受電端までの間における損失とし、電源P、負荷L内で生じる損失は検討の範囲外とする。但し、配電系統内に蓄電池が存在する場合は充電〜放電に至る間で発生する損失は把握する必要がある。損失の具体的な管理については後述する。ここで、特定期間とは、カラーリングした電力の移動量を、取引を意識して管理する期間であり、例えば、1時間あるいは1日といった程度の時間である。
電力カラーリングサーバ110は、電源Pと負荷Lとを含む配電系統を対象にして、電力カラーリングの管理を行う装置である。電力カラーリングサーバ110は、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を算出する電力量積算部114を少なくとも備える。ここで、単位時間とは、需給バランスを意識しながら電力量のカラーリングの処理を実施して記録する期間であり、特定期間よりも短く、例えば、1分あるいは10分といった程度の時間である。
ここで、図1のように負荷Lに3つの電源Pから電力量が供給されている場合を考える。例えば、電源P1から「12kWh」の電力量が供給され、電源P2から「15kWh」の電力量が供給され、電源P3から「33kWh」の電力量が供給されたと仮定し、負荷L1に「40kWh」の電力量が供給され、負荷L2に「20kWh」の電力量が供給されたと仮定すると、需給がバランスする。しかしながら、例えば負荷L1に注目すると、「40kWh」の電力量が各電源Pからどのような割合で供給されたかは厳密には分からない。
そこで、電力カラーリングシステム100では、電源Pから供給された電力量と、負荷Lに供給された電力量とを計量して、実計量値の関係に矛盾が生じない範囲で当事者間の合意が得られる給電条件を定めた上で、仮想的な電力量の需給の按分を行う。この電力移動は仮想的なものであるが、当事者が納得済みの電力給電量として扱う。給電条件としては、負荷L1に供給される電力に注目すると、例えば、電源P1から「10kWh」、電源P2から「15kWh」を供給し、残りを電源P3から供給するという条件、電源P1からの供給電力を100%、残りを電源P3から供給するという条件、電源P1と電源P2と電源P3とが配電系統に供給する電力量の比と同比で3つの電源から負荷L1へ供給されるという条件等、様々な条件が考えられる。
電力カラーリングシステム100は、実計量値の関係に矛盾が生じないことを当事者が検証、納得できるようにするための仕組みであり、この管理を、電力カラーリングサーバ110を用意して当事者が確認できるようにして行う。電力カラーリングサーバ110は、このような管理を具体化するために、実際の配電系統を仮想給電モデルに置き換えて処理を行う。電力カラーリングサーバ110は、仮想給電モデルとして、一の電源Pと一の負荷Lとが、仮想的な電力ケーブルで接続された仮想給電路を定義する。仮想給電路は、電源P、負荷Lといったリソースの種類と、給電条件とに従って、電力の移動の方向と、電力量が決まる。電力カラーリングサーバ110は、仮想給電路には電力の移動量を計量する仮想的な電力量計が設けられていると仮定して、単位時間ごとの電力の移動量を記録する。
また、電力カラーリングサーバ110は、仮想給電路について、給電元のリソースと給電先のリソースが何であるかを定義する情報と、給電条件とを定義する情報とを参照して処理を行う。例えば、上述した例において、配電系統の電源Pから負荷L1に対する給電に注目し、これを仮想給電モデル化して電力移動の管理を行う場合を説明する。なお、給電条件としては、各負荷に供給される電力は、電源P1と電源P2と電源P3とが配電系統に供給する電力比で按分されるという条件で合意が得られているとする。
このような給電条件では、負荷L1に供給される単位時間の電力量は、電源P1と電源P2と電源P3とから配電系統へそれぞれ供給される「12kWh」、「15kWh」、「33kWh」の電力量の比4:5:11で按分される。この按分の結果、負荷L1に供給される「40kWh」は、電源P1、電源P2、電源P3からそれぞれ「8kWh」、「10kWh」、「22kWh」が供給されていることになる。
入力装置120は、電力カラーリングサーバ110にデータ、情報、指示等を与えるための装置である。一般的には人間が操作して入力を行う装置のことを指し、典型的には、人間の手指の動きや打鍵を特定の信号に変換して電力カラーリングサーバ110に伝える、キーボード、マウス、タッチパネル等が該当する。また、広義には、ビデオカメラ、マイク、イメージスキャナ等、外界の情報を画像、音声、動画等の形で取り込んで、デジタルデータに変換して電力カラーリングサーバ110に伝える装置も含まれる。更に広義には、直接は人間の指示に拠らず、自動的に外界の情報を取り込んで電力カラーリングサーバ110に伝えるセンサーシステム等を含める場合もある。
出力装置130は、電力カラーリングサーバ110からデータ、情報を受け取って、人間に認識できる形で提示する装置である。典型的には、画面表示を行うディスプレイ及びプロジェクタ、紙等に印字、印刷を行うプリンタ及びプロッタ、音声を発するスピーカー及びイヤホン等が含まれる。
図2は、電力カラーリングサーバ110の機能ブロック構成の一例を示す。電力カラーリングサーバ110は、電力量取得部111と、電力量算出部112と、情報入力受付部113と、電力量積算部114と、情報出力部115と、条件格納部116と、タイムテーブル格納部117とを備える。電力量取得部111は、電源Pから供給された電力量の実測値を取得する。また、電力量取得部111は、負荷Lに供給された電力量の実測値を取得する。
電力量算出部112は、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値と、予め定められた給電条件とに基づいて、負荷Lの各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想給電路にて接続されていると仮定して、仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量を算出する。例えば、電力量算出部112は、給電条件として、電源Pに係る当事者と、負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する条件に基づいて、仮想的な電力量を算出する。また、例えば、電力量算出部112は、給電条件として、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とのバランスをとった需給の按分条件に基づいて、仮想的な電力量を算出する。
情報入力受付部113は、入力装置120を利用した情報の入力を受け付ける。電力量積算部114は、負荷Lの各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想給電路にて接続されていると仮定して、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想給電路ごとに算出する。例えば、電力量積算部114は、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、電力量算出部112が算出した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想給電路ごとに算出する。情報出力部115は、出力装置130に対して情報を出力する。条件格納部116には、リソースが何であるかの定義の情報と、給電条件の情報とが格納される。タイムテーブル格納部117には、仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量が時系列に記録されたタイムテーブルが格納される。
図3は、電力カラーリングサーバ110がタイムテーブルに情報を記録する動作の一例を示すフローチャートである。図4は、図1に示す配電系統に対応する仮想給電モデルの一例を示す図である。図5は、タイムテーブルの一例を示す図である。図3の動作フローの説明では、適宜、図1、図2、図4及び図5を参照する。
電力カラーリングサーバ110は、図1に示す配電系統に対応する仮想給電モデルとして、図4に示すモデルを仮定し、図3に示す処理を実行する。この仮想給電モデルは、負荷L1に対して電源P1〜P3がそれぞれ個別の仮想給電路A〜Cにて接続され、負荷L2に対して電源P1〜P3がそれぞれ個別の仮想給電路D〜Fにて接続されていると仮定している。この例では、電源P1から供給される単位時間の電力量を「12kWh」とし、電源P2から供給される単位時間の電力量を「15kWh」とする。また、負荷L1の消費電力、即ち、負荷L1に供給される単位時間の電力量は「20kWh」〜「40kWh」で変動し、負荷L2の単位時間の消費電力は「20kWh」で一定とする。
この例では、電源P1と電源P2を供給電力が一定の分散電源とし、電源P3は系統電源として配電系統の需給バランスの調整を担うものとする。また、電源Pに係る当事者と、負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する給電条件として「各負荷に供給される電力は、電源P1と電源P2と電源P3とが配電系統に供給する電力比で按分される」という条件を想定する。まず、電力カラーリングサーバ110の電力量取得部111は、電源Pから供給された電力量の実測値を取得すると共に、負荷Lに供給された電力量の実測値を取得する(ステップS101)。
初めて実行されるステップS101の処理では、電力量取得部111は、現在時刻(t1)までの単位時間において、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とを取得する。例えば、電力量取得部111は、電源P1から供給された単位時間の電力量の実測値を計量システムW1から取得する。この例では、計量システムW1から取得した単位時間の電力量の実測値は「12kWh」となる。また、電力量取得部111は、電源P2から供給された単位時間の電力量の実測値を計量システムW2から取得する。この例では、計量システムW2から取得した単位時間の電力量の実測値は「15kWh」となる。また、電力量取得部111は、電源P3から供給された単位時間の電力量の実測値を計量システムW3から取得する。ここで、計量システムW3から取得した単位時間の電力量の実測値は「33kWh」であったと仮定する。また、電力量取得部111は、負荷L1に供給された単位時間の電力量の実測値を計量システムW4から取得する。ここで、計量システムW4から取得した単位時間の電力量の実測値は「40kWh」であったと仮定する。また、電力量取得部111は、負荷L2に供給された単位時間の電力量の実測値を計量システムW5から取得する。この例では、計量システムW5から取得した単位時間の電力量の実測値は「20kWh」となる。そして、電力量取得部111は、電源Pから供給された単位時間の電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とを、電力量算出部112へ送る。
電力カラーリングサーバ110の電力量算出部112は、電力量取得部111から送られた、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とを受け取ると、これら実測値と、予め定められた給電条件とに基づいて、負荷Lの各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想給電路にて接続されていると仮定して、現在時刻(t1)までの単位時間において、仮想給電路を移動した仮想的な電力量を算出する(ステップS102)。
ステップS102の処理では、電力量算出部112は、まず、リソースが何であるかの定義の情報を条件格納部116から読み出し、この情報に基づいて、いずれのリソースが電源P、負荷Lであるかを特定する。そして、電力量算出部112は、負荷Lの各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別に接続されるように仮想給電路を規定する。この例では、電力量算出部112は、図4に示す仮想給電路A〜Fを規定する。このとき、仮想給電路にて接続される2つのリソースのいずれが電源Pであるかにより、仮想給電路にて電力が仮想的に移動する向きも決定する。
また、電力量算出部112は、給電条件の情報を条件格納部116から読み出し、仮想給電路を移動した仮想的な電力量を算出するために使用する給電条件として規定する。この例では、電源Pに係る当事者と、負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する給電条件として「各負荷に供給される電力は、電源P1と電源P2と電源P3とが配電系統に供給する電力比で按分される」という条件を読み出す。電力量算出部112は、給電条件として、このような当事者間の契約内容を充足する条件と、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とのバランスをとった需給の按分条件とを規定する。
そして、電力量算出部112は、このように条件格納部116から読み出した条件と、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とに基づいて、現在時刻(t1)までの単位時間において、仮想給電路を移動した仮想的な電力量を算出する。この例では、「各負荷に供給される電力は、電源P1と電源P2と電源P3とが配電系統に供給する電力比で按分される」という条件に従うため、負荷L1に供給される電力量「40kWh」のうち、電源P1に接続された仮想給電路Aにて移動する仮想的な電力量は、「40kWh×12kWh/(12kWh+15kWh+33kWh)=8kWh」となる。また、電源P2に接続された仮想給電路Bにて移動する仮想的な電力量は、「40kWh×15kWh/(12kWh+15kWh+33kWh)=10kWh」となる。また、電源P3に接続された仮想給電路Cにて移動する仮想的な電力量は、「40kWh×33kWh/(12kWh+15kWh+33kWh)=22kWh」となる。また、負荷L2に供給される電力量「20kWh」のうち、電源P1に接続された仮想給電路Dにて移動する仮想的な電力量は、「20kWh×12kWh/(12kWh+15kWh+33kWh)=4kWh」となる。また、電源P2に接続された仮想給電路Bにて移動する仮想的な電力量は、「20kWh×15kWh/(12kWh+15kWh+33kWh)=5kWh」となる。また、電源P3に接続された仮想給電路Cにて移動する仮想的な電力量は、「20kWh×33kWh/(12kWh+15kWh+33kWh)=11kWh」となる。
そして、電力量算出部112は、このように算出した現在時刻(t1)までの単位時間において、仮想給電路を移動した仮想的な電力量を、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルに記録することにより、タイムテーブルを更新する(ステップS103)。
電力カラーリングサーバ110は、タイムテーブルを更新すると、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104の処理では、所定の終了条件として、例えば、終了時刻に達したこと、最初にステップS101の処理を実行してから所定期間が経過したこと、タイムテーブルの更新を所定回数行ったこと、電源Pから供給された電力量の実測値と負荷Lに供給された電力量の実測値とが共にゼロになったこと、電源Pから供給された電力量の実測値と負荷Lに供給された電力量の実測値とが共にゼロになってから所定期間が経過したこと、等の条件が成立したか否かを判定すればよい。なお、電力カラーリングサーバ110は、これらの条件のうち、いずれか一つの条件を所定条件としてもよいし、複数の条件の組み合わせを所定条件としてもよい。また、電力カラーリングサーバ110は、終了する条件を有さず、システム起動中は単位時間ごとの一連の処理を繰り返してもよい。
ステップS104にて所定の終了条件が成立していない場合(ステップS104;NO)、電力カラーリングサーバ110は、ステップS101にて電力量の実測値を取得してから単位時間が経過したか否かを判定する(ステップS106)。例えば、電力カラーリングサーバ110は、ステップS101にて電力量の実測値を取得したことに応じて、RAM等の所定領域に設けられた単位時間計測タイマをスタートし、単位時間計測タイマのタイマ値が単位時間に対応する所定値となったことにより、単位時間が経過したと判定すればよい。
ステップS105にて単位時間が経過していない場合(ステップS105;NO)、電力カラーリングサーバ110は、単位時間が経過するまで待機する。一方、ステップS105にて単位時間が経過した場合(ステップS105;YES)、電力カラーリングサーバ110は、ステップS101以降の処理を再度実行する。そして、ステップS104にて所定の終了条件が成立した場合(ステップS104;YES)、電力カラーリングサーバ110は、タイムテーブルに情報を記録する動作を終了する。
このようにして、電力カラーリングサーバ110のタイムテーブル格納部117には、図5に示すようなタイムテーブルが格納される。なお、単位時間よりも長い特定期間の電力の移動量については、タイムテーブルの仮想給電量の積算値を求めることになる。図5に示すタイムテーブルの需給バランスを参照すると、特定期間t1からt10にわたって単位時間ごとに、電源Pから供給された電力量の実測値の小計と、負荷Lに供給された電力量の実測値の小計とが等しく、需給のバランスがとれていることが分かる。また、仮想給電路を移動した仮想的な電力量の小計が、電源Pから供給された電力量の実測値の小計と一致しており、矛盾が生じていないことが分かる。なお、図5に示すタイムテーブルでは、特定期間t1〜t10における仮想給電量の小計の積算値について、小数点2桁まで表示している。
図6は、電力カラーリングサーバ110が特定期間の電力カラーリング情報を出力する動作の一例を示すフローチャートである。図7は、電力カラーリングサーバ110が出力する特定期間の電力カラーリング情報の一例を示す図である。図6の動作フローの説明では、適宜、図1から図5、図7を参照する。電力カラーリングサーバ110の情報入力受付部113は、入力装置120を利用した情報の入力を受け付けると、その情報が、特定期間の電力カラーリング情報の出力指示であるか否かを判定する(ステップS201)。ステップS201にて特定期間の電力カラーリング情報の出力指示でない場合(ステップS201;NO)、電力カラーリングサーバ110は、ステップS202、S203の処理を行わずに処理を終了する。一方、特定期間の電力カラーリング情報の出力指示であった場合(ステップS201;YES)、電力カラーリングサーバ110の情報入力受付部113は、その旨を電力量積算部114へ通知する。
電力カラーリングサーバ110の電力量積算部114は、情報入力受付部113からの通知を受けると、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量を算出する(ステップS202)。ステップS202の処理では、電力量積算部114は、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、特定期間に仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想給電路ごとに算出する。一例として、電力量積算部114は、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、電力量算出部112が算出した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想給電路ごとに算出する。
本実施形態では、上述したように、タイムテーブル格納部117に格納されたタイムテーブルに、電力量算出部112が算出した単位時間ごとの仮想的な電力量が記録されている。そこで、電力量積算部114は、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルを読み出し、タイムテーブルに記録されている情報に基づいて、特定期間に仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想給電路ごとに算出する。ここで、特定期間は、電力カラーリング情報の出力指示にて指定された期間であってもよいし、予め定められた期間であってもよいし、前回の電力カラーリング情報の出力を行ってから現在までの期間であってもよいし、タイムテーブルに記録された期間であってもよい。この例では、図5のタイムテーブルに示す全期間、即ち、t1〜t10の期間を特定期間とする。その場合、仮想給電路Aを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値は「72.33kWh」となり、仮想給電路Bを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値は「90.41kWh」となり、仮想給電路Cを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値は「147.26kWh」となり、仮想給電路Dを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値は「47.67kWh」となり、仮想給電路Eを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値は「59.59kWh」となり、仮想給電路Fを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値は「92.74kWh」となる。電力量積算部114は、このように算出した特定期間に仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値の情報を、情報出力部115へ送る。
電力カラーリングサーバ110の情報出力部115は、電力量積算部114から送られた情報を受け取ると、特定期間に仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値の情報を利用して、電力カラーリング情報を生成して出力する(ステップS203)。ステップS203の処理では、情報出力部115は、図7に示すように、特定期間に仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として示す電力カラーリング情報を生成する。例えば、情報出力部115は、仮想給電路Aを移動した単位時間ごと(t1〜t10)の仮想的な電力量の積算値「72.33kWh」を、負荷L1に対して電源P1から供給された電力量として示す電力カラーリング情報を生成する。
ところで、上述したように、蓄電池は、電力カラーリングの管理が必須となるリソースである。蓄電池は、充電された電力量が蓄電池内に蓄電され、充放電によってこの蓄電量が変化する。この変化する蓄電量をカラーリングして管理する必要がある。ここで、蓄電量とは、蓄電されている電力量である。
図8は、蓄電池BTを更に含む配電系統を対象にして電力カラーリングの管理を行う電力カラーリングシステム100の一例を示す図である。ここで、蓄電池BTとは、電力供給リソースとしても電力需要リソースとしても機能するリソースである。即ち、蓄電池BTは、電力需要リソースとして機能する場合、電源Pから供給された電力を充電し、電力供給リソースとして機能する場合、充電された電力を負荷Lに放電する。なお、蓄電池BTは、本発明における「充放電リソース」の一例である。図8に示す電力カラーリングシステム100は、計量システムW6、W7を更に備える。計量システムW6は、蓄電池BTに充電された電力量を計量する。計量システムW7は、蓄電池BTから放電された電力量を計量する。電力カラーリングサーバ110は、計量システムW6、W7とも通信接続されると共に、蓄電池BTのバッテリーマネジメントユニットとも通信接続される。
電力カラーリングサーバ110は、電力量の実計量値と仮想給電量との関係に蓄電池BTの蓄電量を加え、これらを同一タイムテーブル上で相互の変化が分かるように時系列に記録する。現在の蓄電量を把握するためには、例えば、充放電の電力量の実計量値の増減変化分を時系列に管理して過去からの積算値を算出する方法と、蓄電池BTのバッテリーマネジメントシステムから蓄電量を示す情報を得る方法とが考えられる。蓄電量を充電時の電力供給リソースの由来によってカラーリングするためには前者の方法による管理が必須であるが、蓄電池BTの蓄電量の値を得るだけであれば後者の方法による管理としてもよい。但し、両方法を共に採用する場合、両方法から得られる値は異なるため、整合を図るようにする。
以下の説明では、カタログ、スペック上での電池容量を「定格電力量」又は「初期状態の満充電容量」と称する。また、実際に蓄電池BTを満充電した際に蓄電されるであろう電力量を「満充電容量」と称する。満充電容量は、経年劣化により変化し、定格電力量とは一致しない。また、蓄電の上限を「充電の上限値」と称する。充電の上限値は、蓄電池BTによる制限で主に寿命を考慮した現実の値を指す場合と、蓄電池BTの利用者が経済性、契約、制御方式等によって定めるアプリケーション上の値を指す場合とがある。また、蓄電の下限を「放電の下限値」と称する。放電の下限値も、充電の上限値と同様、蓄電池BTによる制限で主に寿命を考慮した現実の値を指す場合と、蓄電池BTの利用者が経済性、契約、制御方式等によって定めるアプリケーション上の値を指す場合とがある。また、蓄電されている電力量を「蓄電量」と称する。また、アプリケーション上の充電の上限値に基づいて決定されるアプリケーション上の蓄電の空き容量を「空き容量」と称する。また、アプリケーション上の放電の下限値に基づいて決定されるアプリケーション上の放電可能な電力量を「放電可能蓄電量」と称する。
蓄電池BTのバッテリーマネジメントシステムから取得できる情報には、SOH(State of Health)と、SOC(State of Charge)とがある。SOHは、現在の満充電容量を初期状態の満充電容量に対する割合で示したものであり、電池の劣化度を示す。SOCは、現在の蓄電量を満充電容量に対する割合で示したものであるが、初期状態の満充電容量に対する割合で示す場合もある。蓄電池BTのバッテリーマネジメントシステムから取得できる蓄電量に関する情報は、バッテリーマネジメントシステムの仕様により情報取得の方法や、その扱いが異なる。例えば、蓄電池BTの初期状態の満充電容量に対するSOCが得られる場合、電力カラーリングサーバ110は、蓄電池BTのメーカーからの提示等に基づいて初期状態の満充電容量を定義して蓄電量を算出する。
また、例えば、満充電容量に対するSOCが得られる場合、電力カラーリングサーバ110は、満充電容量を何らかの手段で特定して蓄電量を算出する。例えば、SOHが得られる場合には、SOHに基づいて現在の満充電容量を算出して蓄電量を算出する。SOHが得られない場合には、定期的なテスト運転での実測や、通常運転中のデータを利用して推測により満充電容量を特定する必要がある。例えば、2つの時点の蓄電量WH1、WH2と、その2つの時点のSOC1、SOC2とに基づいて、WH2−WH1=満充電容量×(SOC2−SOC1)により特定することができる。
電力カラーリングサーバ110は、仮想給電モデルとして、充電時、即ち、蓄電池BTが電力需要リソースとして機能する場合、電力カラーリングサーバ110は、電源Pから負荷Lへの給電の場合と同様に仮想充電路を定義し、予め定められた充電条件に従って、電力供給リソース由来ごとの充電量を管理する。ここで、充電量とは、充電に供された電力量である。
負荷Lの場合と異なるのは、給電された電力が消費されずに蓄積される点である。そして、電力カラーリングサーバ110は、蓄電池BTの蓄電量を充電時の電力供給リソース由来に基づく蓄電領域に蓄電されていると仮定して管理する。そして、放電時、即ち、蓄電池BTが電力供給リソースとして機能する場合、電力カラーリングサーバ110は、電源Pから負荷Lへの給電の場合と同様に仮想放電路を定義し、予め定められた放電条件に従って、電力供給リソース由来ごとの蓄電領域から供給先に電力が移動することを時系列に管理する。電力カラーリングサーバ110は、実計量値と、仮想充電量と、仮想放電量と、電力供給リソース由来別の蓄電量とについて、単位時間ごとの変化をタイムテーブルに記録する。このタイムテーブルは、上述した電源Pから負荷Lへの給電の管理と同様に扱うことができる。
図9は、蓄電池BTを更に含む配電系統を対象にして電力カラーリングの管理を行う電力カラーリングサーバ110の機能ブロック構成の一例を示す。この例の電力カラーリングサーバ110は、充電量算出部211と、放電量算出部212と、蓄電量算出部213と、充電量積算部214とを更に備える。
充電量算出部211は、電源Pから供給された電力量の実測値と、蓄電池BTに充電された電力量の実測値と、予め定められた充電条件とに基づいて、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域にそれぞれ蓄電されていると仮定すると共に、蓄電領域の各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想充電路にて接続されていると仮定して、仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な充電量を算出する。これは、上述した負荷Lと電源Pの仮想給電路において、負荷Lを蓄電領域に置き換えたモデルと同様である。例えば、充電量算出部211は、充電条件として、電源Pに係る当事者と、蓄電池BTに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する条件に基づいて、単位時間ごとの仮想的な充電量を算出する。また、例えば、充電量算出部211は、充電条件として、電源Pから供給された電力量の実測値と、蓄電池BTに充電された電力量の実測値とのバランスをとった需給の按分条件に基づいて、仮想的な充電量を算出する。
放電量算出部212は、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値と、予め定められた放電条件とに基づいて、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域にそれぞれ蓄電されていると仮定すると共に、負荷Lの各々に対して複数の蓄電領域がそれぞれ個別の仮想放電路にて更に接続されていると仮定して、仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な放電量を算出する。これは、上述した負荷Lと電源Pの仮想給電路において、電源Pを蓄電領域に置き換えたモデルに似ている。異なる点としては、上述した電源Pにはそれぞれに実測値が計量されるが、蓄電領域からの放電については複数の蓄電領域が仮想的なものであるため、これらを合算した放電電力量としての実測値しか存在しないことである。例えば、放電量算出部212は、放電条件として、蓄電池BTに係る当事者と、負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する条件に基づいて、仮想的な放電量を算出する。また、例えば、放電量算出部212は、放電条件として、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とのバランスをとった需給の按分条件、及び複数の蓄電領域ごとの按分条件に基づいて、仮想的な放電量を算出する。
蓄電量算出部213は、充電量算出部211が算出した単位時間ごとの充電量と、放電量算出部212が算出した単位時間ごとの放電量とに基づいて、蓄電池BTに対して複数の電源Pからそれぞれ充電されて蓄電されている蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を算出する。蓄電量の算出方法は、現在時点の充電量を正の値とし、放電量を負の値としてタイムテーブルの直前の単位時間の蓄電量に加算して現在時点の蓄電量を求める。タイムテーブル格納部117には、単位時間ごとの複数の蓄電領域の仮想的な蓄電量が時系列に記録されたタイムテーブルが格納される。また、蓄電量算出部はタイムテーブルの初期において、蓄電領域の各々に対して積算処理の起点となる蓄電量の初期値を設定する。この初期値は入力装置120から人為的操作で数値を入力して情報入力受付部113を介して取得する方法、蓄電池BTのバッテリーマネジメントユニットとの通信接続により得られる蓄電池情報から蓄電量全体の蓄電量を算出し、これを蓄電領域に定められた比で按分する方法等がある。
充電量積算部214は、蓄電領域の各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想充電路にて接続されていると仮定して、蓄電池BTの充電のために特定期間に複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想充電路ごとに算出する。例えば、充電量積算部214は、特定期間に蓄電池BTに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、充電量算出部211が算出した単位時間ごとの仮想的な充電量の積算値を仮想充電路ごとに算出する。
この例の電力量積算部114は、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域にそれぞれ蓄電されていると仮定すると共に、負荷Lの各々に対して複数の蓄電領域がそれぞれ個別の仮想放電路にて更に接続されていると仮定して、特定期間に負荷Lに対して蓄電池BTからの放電により供給された電力量として、仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想放電路ごとに算出する。例えば、電力量積算部114は、特定期間に負荷Lに対して蓄電池BTから供給された電力量として、放電量算出部212が算出した単位時間ごとの仮想的な放電量の積算値を仮想放電路ごとに算出する。この例の条件格納部116には、充電条件の情報と、放電条件の情報とが更に格納される。タイムテーブル格納部117には、仮想充電路及び仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量が時系列に記録されたタイムテーブルが格納される。
図10は、電力カラーリングサーバ110がタイムテーブルに蓄電池BTの充電に伴う情報を記録する動作の一例を示すフローチャートである。図12は、図8に示す配電系統のうち、蓄電池BTの充放電に係る仮想給電モデルの一例を示す図である。図13は、蓄電池BTの充放電に伴う情報が記録されたタイムテーブルの一例を示す図である。図10の動作フローの説明では、適宜、図1から図9、図12、図13を参照する。
電力カラーリングサーバ110は、図8に示す配電系統のうち、蓄電池BTの充放電に係る仮想給電モデルとして、図12に示すモデルを仮定し、図10に示す処理を実行する。この仮想給電モデルは、電源P1から供給された電力が蓄電池BTの蓄電領域B1に蓄電され、電源P2から供給された電力が蓄電池BTの蓄電領域B2に蓄電され、電源P3から供給された電力が蓄電池BTの蓄電領域B3に蓄電されると仮定している。また、電源P1と蓄電領域B1とが仮想充電路Gにて接続され、電源P2と蓄電領域B2とが仮想充電路Hにて接続され、電源P3と蓄電領域B3とが仮想充電路Iにて接続されていると仮定している。また、負荷L1に対して蓄電領域B1〜B3がそれぞれ個別の仮想放電路J〜Lにて接続され、負荷L2に対して蓄電領域B1〜B3がそれぞれ個別の仮想放電路M〜Oにて接続されていると仮定している。
この例では、蓄電池BTに充電される単位時間の充電量を「9kWh」とする。また、時刻t1において、電源P1由来の電力、電源P2由来の電力、電源P3由来の電力が共に「10kWh」蓄電されているとする。この例では、電源Pに係る当事者と、蓄電池BTに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する充電条件として「t3からt5の期間に充電を行う」という条件と、「電源P1〜P3からそれぞれ平等に充電される」という条件とを想定する。まず、電力カラーリングサーバ110の電力量取得部111は、電源Pから供給された電力量の実測値を取得すると共に、蓄電池BTに充電された電力量の実測値を取得する(ステップS301)。
初めて実行されるステップS301の処理では、電力量取得部111は、現在時刻(t3)までの単位時間において、電源Pから供給された電力量の実測値と、蓄電池BTに充電された電力量の実測値とを取得する。例えば、電力量取得部111は、電源P1〜P3から供給された電力量の実測値を計量システムW1〜W3から取得する。この例では、計量システムW1〜W3から取得した単位時間の電力量の実測値はそれぞれ「3kWh」となる。また、電力量取得部111は、蓄電池BTに充電された電力量の実測値を計量システムW6から取得する。この例では、計量システムW6から取得した単位時間の電力量の実測値は「9kWh」となる。そして、電力量取得部111は、電源Pから供給された単位時間の電力量の実測値と、蓄電池BTに充電された単位時間の電力量の実測値とを、充電量算出部211へ送る。
電力カラーリングサーバ110の充電量算出部211は、電力量取得部111から送られた、電源Pから供給された電力量の実測値と、蓄電池BTに充電された電力量の実測値とを受け取ると、これら実測値と、予め定められた充電条件とに基づいて、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域にそれぞれ蓄電されていると仮定すると共に、蓄電領域の各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想充電路にて接続されていると仮定して、現在時刻(t3)までの単位時間において、仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な充電量を算出する(ステップS302)。
ステップS302の処理では、充電量算出部211は、まず、リソースが何であるかの定義の情報を条件格納部116から読み出し、この情報に基づいて、いずれのリソースが電源P、蓄電池BTであるかを特定する。そして、充電量算出部211は、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域を規定する。この例では、充電量算出部211は、図12に示す蓄電領域B1〜B3を規定する。また、充電量算出部211は、蓄電領域B1〜B3の各々に対して複数の電源Pがそれぞれ個別に接続されるように仮想充電路を規定する。この例では、充電量算出部211は、図12に示す仮想充電路G〜Iを規定する。このとき、仮想充電路にて接続される2つのリソースのいずれが電源Pであるかにより、仮想充電路にて電力が仮想的に移動する向きも決定する。
また、充電量算出部211は、充電条件の情報を条件格納部116から読み出し、仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量を算出するための充電条件として規定する。この例では、電源Pに係る当事者と、蓄電池BTに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する充電条件として「t3からt5の期間に充電を行う」という条件と、「電源P1〜P3からそれぞれ平等に充電される」という条件とを読み出す。充電量算出部211は、充電条件として、このような当事者間の契約内容を充足する条件と、電源Pから供給された電力量の実測値と、蓄電池BTに供給された電力量の実測値とのバランスをとった需給の按分条件とを規定する。
そして、充電量算出部211は、このように条件格納部116から読み出した条件と、電源Pから供給された電力量の実測値と、蓄電池BTに充電された電力量の実測値とに基づいて、現在時刻(t3)までの単位時間において、仮想充電路を移動した仮想的な電力量を算出する。この例では、「電源P1〜P3からそれぞれ平等に充電される」という条件に従うため、蓄電池BTに供給された電力量「9kWh」のうち、蓄電領域B1〜B3に個別に接続された仮想充電路G〜Iにて移動した仮想的な電力量は、それぞれ「9/3=3kWh」となる。
そして、充電量算出部211は、このように算出した現在時刻(t3)までの単位時間において、仮想充電路を移動した仮想的な電力量を、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルに記録することにより、タイムテーブルを更新する(ステップS303)。タイムテーブルが更新されると、電力カラーリングサーバ110の蓄電量算出部213は、充電量算出部211が算出した充電量に基づいて、蓄電池BTに対して複数の電源Pからそれぞれ充電されて蓄電されている電力量として、現在時刻(t3)における複数の蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を算出する(ステップS304)。
ステップS304の処理では、蓄電量算出部213は、例えばタイムテーブルへの記録を開始したときの蓄電量を初期値として、単位時間ごとに充電量算出部211が算出した充電量を正の数値として前回の単位時間の値に積算することにより、現在時刻における複数の蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を算出する。そして、蓄電量算出部213は、算出した蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルに記録することにより、タイムテーブルを更新する(ステップS305)。
電力カラーリングサーバ110は、蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を記録することによりタイムテーブルを更新すると、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS306)。ステップS306の処理では、所定の終了条件として、例えば、終了時刻に達したこと、最初にステップS301の処理を実行してから所定時間が経過したこと、蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を記録することによるタイムテーブルの更新を複数回行ったこと、電源Pから供給された電力量の実測値と蓄電池BTに充電された電力量の実測値とが共にゼロとなったこと、等の条件が成立したか否かを判定すればよい。なお、電力カラーリングサーバ110は、これらの条件のうち、いずれか一つの条件を所定条件としてもよいし、複数の条件の組み合わせを所定条件としてもよい。
ステップS306にて所定の終了条件が成立していない場合(ステップS306;NO)、電力カラーリングサーバ110は、上述した図3のステップS105の処理と同様の方法により、ステップS301にて電力量の実測値を取得してから単位時間が経過したか否かを判定する(ステップS307)。ステップS307にて単位時間が経過していない場合(ステップS307;NO)、電力カラーリングサーバ110は、単位時間が経過するまで待機する。一方、ステップS307にて単位時間が経過した場合(ステップS307;YES)、電力カラーリングサーバ110は、ステップS301以降の処理を再度実行する。そして、ステップS306にて所定の終了条件が成立した場合(ステップS306;YES)、電力カラーリングサーバ110は、タイムテーブルに蓄電池BTの充電に伴う情報を記録する動作を終了する。
このようにして、電力カラーリングサーバ110のタイムテーブル格納部117には、図13に示すようなタイムテーブルが格納される。タイムテーブルには、充電が行われる単位時間t3からt5において上述した処理の結果が反映されている。なお、単位時間よりも長い特定期間の電力の移動量については、タイムテーブルの仮想充電路の積算値を求めることになる。図13に示すタイムテーブルを参照すると、単位時間ごとに仮想充電路を移動した仮想的な電力量の小計が、電源Pから供給された電力量の実測値の小計と一致しており、矛盾が生じていないことが分かる。
図11は、電力カラーリングサーバ110がタイムテーブルに蓄電池BTの放電に伴う情報を記録する動作の一例を示すフローチャートである。図11の動作フローの説明では、適宜、図1から図10、図12、図13を参照する。電力カラーリングサーバ110は、図8に示す配電系統のうち、蓄電池BTの充放電に係る仮想給電モデルとして、図12に示すモデルを仮定し、図11に示す処理を実行する。この例では、蓄電池BTから放電される単位時間の放電量を「6kWh」とする。また、時刻t7において、電源P1由来の電力、電源P2由来の電力、電源P3由来の電力が共に「19kWh」蓄電されているとする。この例では、蓄電池BTに係る当事者と、負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する放電条件として「t8からt10の期間に放電を行う」という条件と、「蓄電池の放電によって負荷Lに供給される電力は蓄電領域ごとの蓄電量の比で按分される」という条件とを想定する。
まず、電力カラーリングサーバ110の電力量取得部111は、蓄電池BTから放電された電力量の実測値を取得すると共に、負荷Lに給電された電力量の実測値を取得する(ステップS401)。初めて実行されるステップS401の処理では、電力量取得部111は、現在時刻(t8)までの単位時間において、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とを取得する。例えば、電力量取得部111は、蓄電池BTから放電された電力量の実測値を計量システムW7から取得する。この例では、蓄電池BTから放電される単位時間の放電量を「6kWh」としているため、計量システムW7から取得した電力量の実測値は「6kWh」となる。また、電力量取得部111は、負荷L1、L2に給電された電力量の実測値を計量システムW4、W5から取得する。この例では、負荷L1と負荷L2とに1:1の比で放電するため、計量システムW4、W5から取得した電力量の実測値はそれぞれ「3kWh」となる。そして、電力量取得部111は、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とを、放電量算出部212へ送る。
電力カラーリングサーバ110の放電量算出部212は、電力量取得部111から送られた、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と、負荷Lに給電された電力量の実測値とを受け取ると、これら実測値と、予め定められた放電条件とに基づいて、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域にそれぞれ蓄電されていると仮定すると共に、負荷Lの各々に対して複数の蓄電領域がそれぞれ個別の仮想放電路にて更に接続されていると仮定して、仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な放電量を算出する(ステップS402)。
ステップS402の処理では、放電量算出部212は、まず、リソースが何であるかの定義の情報を条件格納部116から読み出し、この情報に基づいて、いずれのリソースが蓄電池BT、負荷Lであるかを特定する。そして、放電量算出部212は、蓄電池BTに充電された電力がいずれの電源Pに由来する電力であるか識別可能に複数の蓄電領域を規定する。この例では、既に、図12に示す蓄電領域B1〜B3が規定されているとする。また、放電量算出部212は、負荷Lの各々に対して蓄電領域B1〜B3がそれぞれ個別に接続されるように仮想放電路を規定する。この例では、放電量算出部212は、図12に示す仮想放電路J〜Oを規定する。このとき、仮想放電路にて接続される2つのリソースのいずれが負荷Lであるかにより、仮想放電路にて電力が仮想的に移動する向きも決定する。
また、放電量算出部212は、放電条件の情報を条件格納部116から読み出し、仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量を算出するための放電条件として規定する。この例では、蓄電池BTに係る当事者と、負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する充電条件として「t8からt10の期間に放電を行う」という条件と、「蓄電池の放電によって負荷Lに供給される電力は蓄電領域ごとの蓄電量の比で按分される」という条件とを規定する。
そして、放電量算出部212は、このように条件格納部116から読み出した条件と、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値とに基づいて、現在時刻(t8)までの単位時間において、仮想放電路を移動した仮想的な電力量を算出する。この例では、「蓄電池の放電によって負荷Lに供給される電力は蓄電領域ごとの蓄電量の比で按分される」という条件に従うため、負荷L1、負荷L2にそれぞれ供給された電力量「3kWh」のうち、蓄電領域B1〜B3に個別に接続された仮想放電路J〜Oにて移動した単位時間ごとの仮想的な電力量は、3つの蓄電領域の蓄電量が1:1:1であることにより、それぞれ「3/3=1kWh」となる。
そして、放電量算出部212は、このように算出した現在時刻(t8)までの単位時間において、仮想放電路を移動した仮想的な電力量を、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルに記録することにより、タイムテーブルを更新する(ステップS403)。タイムテーブルが更新されると、電力カラーリングサーバ110の蓄電量算出部213は、放電量算出部212が算出した放電量に基づいて、蓄電池BTに対して複数の電源Pからそれぞれ充電されて蓄電されている電力量として、現在時刻(t8)における複数の蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を算出する(ステップS404)。
ステップS404の処理では、蓄電量算出部213は、例えばタイムテーブルへの記録を開始したときの蓄電量を初期値として、単位時間ごとに放電量算出部212が算出した放電量を負の値として前回値に積算することにより、現在時刻における複数の蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を算出する。そして、蓄電量算出部213は、算出した蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルに記録することにより、タイムテーブルを更新する(ステップS405)。
電力カラーリングサーバ110は、蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を記録することによりタイムテーブルを更新すると、所定の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS406)。ステップS406の処理では、所定の終了条件として、例えば、終了時刻に達したこと、最初にステップS401の処理を実行してから所定時間が経過したこと、蓄電領域ごとの仮想的な蓄電量を記録することによるタイムテーブルの更新を複数回行ったこと、蓄電池BTから放電された電力量の実測値と負荷Lに供給された電力量の実測値とが共にゼロとなったこと、等の条件が成立したか否かを判定すればよい。なお、電力カラーリングサーバ110は、これらの条件のうち、いずれか一つの条件を所定条件としてもよいし、複数の条件の組み合わせを所定条件としてもよい。
ステップS406にて所定の終了条件が成立していない場合(ステップS406;NO)、電力カラーリングサーバ110は、上述した図3のステップS105の処理と同様の方法により、ステップS401にて電力量の実測値を取得してから単位時間が経過したか否かを判定する(ステップS407)。ステップS407にて単位時間が経過していない場合(ステップS407;NO)、電力カラーリングサーバ110は、単位時間が経過するまで待機する。一方、ステップS407にて単位時間が経過した場合(ステップS407;YES)、電力カラーリングサーバ110は、ステップS401以降の処理を再度実行する。そして、ステップS406にて所定の終了条件が成立した場合(ステップS406;YES)、電力カラーリングサーバ110は、タイムテーブルに蓄電池BTの充電に伴う情報を記録する動作を終了する。
このようにして、電力カラーリングサーバ110のタイムテーブル格納部117には、図13に示すようなタイムテーブルが格納される。なお、単位時間よりも長い特定期間の電力の移動量については、タイムテーブルの仮想放電路の積算値を求めることになる。図13に示すタイムテーブルを参照すると、単位時間ごとについて仮想放電路を移動した仮想的な電力量の小計が、負荷Lに供給された電力量の実測値の小計と一致しており、矛盾が生じていないことが分かる。
図14は、電力カラーリングサーバ110が特定期間の蓄電池BTの充放電に係る電力カラーリング情報を出力する動作の一例を示すフローチャートである。図15は、電力カラーリングサーバ110が出力する特定期間の蓄電池BTの充放電に係る電力カラーリング情報の一例を示す図である。図14の動作フローの説明では、適宜、図1から図13、図15を参照する。
電力カラーリングサーバ110の情報入力受付部113は、入力装置120を利用した情報の入力を受け付けると、その情報が、特定期間の蓄電池BTの充放電に係る電力カラーリング情報の出力指示であるか否かを判定する(ステップS501)。ステップS501にて特定期間の蓄電池BTの充放電に係る電力カラーリング情報の出力指示でない場合(ステップS501;NO)、電力カラーリングサーバ110は、ステップS502〜S504の処理を行わずに処理を終了する。一方、特定期間の蓄電池BTの充放電に係る電力カラーリング情報の出力指示であった場合(ステップS501;YES)、電力カラーリングサーバ110の情報入力受付部113は、その旨を充電量積算部214及び電力量積算部114へ通知する。
電力カラーリングサーバ110の充電量積算部214は、情報入力受付部113からの通知を受けると、特定期間に蓄電池BTの充電のために複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量を算出する(ステップS502)。ステップS502の処理では、充電量積算部214は、特定期間に蓄電池BTの充電のために複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、特定期間に仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想充電路ごとに算出する。一例として、充電量積算部214は、特定期間に蓄電池BTの充電のために複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、充電量算出部211が算出した仮想的な充電量の積算値を仮想充電路ごとに算出する。
本実施形態では、上述したように、タイムテーブル格納部117に格納されたタイムテーブルに、充電量算出部211が算出した単位時間ごとの仮想的な電力量が記録されている。そこで、充電量積算部214は、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルを読み出し、タイムテーブルに記録されている情報に基づいて、特定期間に仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想充電路ごとに算出する。ここで、特定期間は、電力カラーリング情報の出力指示にて指定された期間であってもよいし、予め定められた期間であってもよいし、前回の電力カラーリング情報の出力を行ってから現在までの期間であってもよいし、タイムテーブルに記録された期間であってもよい。この例では、図13のタイムテーブルに示す全期間、即ち、t1〜t11の期間を特定期間とする。その場合、仮想充電路G〜Iを移動した単位時間ごと(t1〜t11)の仮想的な電力量の積算値はそれぞれ「9kWh」となる。充電量積算部214は、このように算出した特定期間に仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値の情報を、情報出力部115へ送る。
また、電力カラーリングサーバ110の電力量積算部114は、情報入力受付部113からの通知を受けると、特定期間に負荷Lに対して蓄電池BTからの放電により供給された電力量を算出する(ステップS503)。ステップS503の処理では、電力量積算部114は、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、特定期間に仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想放電路ごとに算出する。一例として、電力量積算部114は、特定期間に負荷Lに対して複数の電源Pからそれぞれ供給された電力量として、電力量算出部112が算出した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想放電路ごとに算出する。
電力量積算部114は、タイムテーブル格納部117に格納されているタイムテーブルを読み出し、タイムテーブルに記録されている情報に基づいて、特定期間に仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想放電路ごとに算出する。ここで、特定期間は、電力カラーリング情報の出力指示にて指定された期間であってもよいし、予め定められた期間であってもよいし、前回の電力カラーリング情報の出力を行ってから現在までの期間であってもよいし、タイムテーブルに記録された期間であってもよい。この例では、図13のタイムテーブルに示す全期間、即ち、t1〜t11の期間を特定期間とする。その場合、仮想放電路J〜Oを移動した単位時間ごと(t1〜t11)の仮想的な電力量の積算値はそれぞれ「3kWh」となる。充電量積算部214は、このように算出した特定期間に仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値の情報を、情報出力部115へ送る。
電力カラーリングサーバ110の情報出力部115は、充電量積算部214及び電力量積算部114から送られた情報を受け取ると、特定期間に仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値の情報と、特定期間に仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値の情報とを利用して、電力カラーリング情報を生成して出力する(ステップS504)。ステップS504の処理では、情報出力部115は、図15に示すように、特定期間に仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を、特定期間に蓄電池BTに対して複数の電源Pからそれぞれ充電された電力量として示し、特定期間に仮想放電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を、特定期間に負荷Lに対して蓄電池BTから放電された電力由来ごとの電力量として示す電力カラーリング情報を生成する。例えば、情報出力部115は、仮想充電路Gを移動した単位時間ごと(t1〜t11)の仮想的な電力量の積算値「9kWh」を、蓄電池BTに対して電源P1から充電された電力量として示し、仮想放電路Jを移動した単位時間ごと(t1〜t11)の仮想的な電力量の積算値「3kWh」を、負荷L1に対して蓄電池BTから放電された電力量として示す電力カラーリング情報を生成する。
次に、電力カラーリングシステム100における、配電系統内における損失に係る処理について説明する。例えば、図1に示す電源P1〜P3から供給された電力量の実測値が「47kWh」で、負荷L1、L2に供給された電力量の実測値が「45kWh」であったと仮定する。その場合、「2kWh」の電力量が配電系統内で損失していることになる。このような損失について、電力カラーリングシステム100では、損失した電力を消費する仮想的な負荷LXを定義し、損失分の「2kWh」の電力量が負荷LXに供給される、という仮想給電モデルを仮定して処理を行う。
例えば、電力カラーリングサーバ110は、上記した実施形態における電力量積算部114と同様の処理を行う機能ブロック構成として、仮想的な負荷LXに対して複数の電源Pがそれぞれ個別の仮想給電路にて接続されていると仮定して、特定期間に配電系統において損失した電力量として、仮想的な負荷LXに接続された仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を算出する損失量積算部を備えていればよい。
また、例えば、電力カラーリングサーバ110は、上記した実施形態における電力量算出部112と同様の処理を行う機能ブロック構成として、電源Pから供給された電力量の実測値と、負荷Lに供給された電力量の実測値と、予め定められた損失条件とに基づいて、仮想的な負荷LXに接続された仮想給電路を移動した単位時間ごとの仮想的な電力量を算出する損失量算出部を更に備えていてもよい。その場合、上記した損失量積算部は、特定期間に配電系統において損失した電力量として、損失量算出部が算出した単位時間ごとの仮想的な電力量の積算値を仮想的な負荷LXに接続された仮想給電路ごとに算出すればよい。損失量算出部は、損失条件として、例えば、電源Pに係る当事者と負荷Lに係る当事者との合意によって成立した契約内容を充足する条件と、電源Pから供給された電力量の実測値と負荷Lに供給された電力量の実測値とのバランスをとった需給の按分条件とに基づいて、単位時間ごとの仮想的な電力量を算出すればよい。
次に、電力カラーリングシステム100における、配電系統内の蓄電池BTにおける損失に係る処理について説明する。蓄電池の充放電により出し入れした電力量の一部は蓄電池内部の化学反応に起因する損失や電気抵抗やPCSの効率などの電気的損失により失われる。これらの損失を一定期間においてそれぞれに計測して蓄電池システム全体として積み上げることは困難であった。ここで、一定期間とは、蓄電池の充放電損失や電池の劣化や自己放電等による損失を把握するための期間であり、電池の種類や特性に応じて決定されればよく、上述した特定期間と同じ期間であってもよいし、特定期間よりも長い、例えば、1か月といった程度の時間であってもよい。
電力カラーリングサーバ110は、充放電の電力量実測値をもとにして蓄電量算出部213が算出する蓄電量値と、蓄電池BTのバッテリーマネジメントユニットから得られる情報から得られる蓄電量値の2つの蓄電量を示す情報とを比較することで蓄電池システムによるエネルギー損失を把握する。以降の説明において2つの蓄電量を示す情報を区別するために前者を「充放電量による蓄電量」、後者を「電池特性による蓄電量」と称する。基本的な考え方は「電池特性による蓄電量」を真とし、定期的に「電池特性による蓄電量」と「充放電量による蓄電量」の差分を計算してこれを損失として計上すると同時に「充放電量による蓄電量」から損失分を差し引いて補正するように処理する。
蓄電池の種類やメーカーにより「蓄電池内部の蓄電量」を取得する方法は異なる。蓄電池のバッテリーマネジメントユニットから蓄電量値として取得できる場合はその値を利用できるが、SOC値と満充電容量の情報を取得して蓄電量値を算出する場合もある。また、バッテリーマネジメントユニットからSOC値は取得できるが満充電容量は取得できない場合もある。この場合は満充電容量を他の手段で取得あるいは定義することになる。一般的にはカタログスペックによる定格容量値をシステムに定義して利用するが、長期間使用による蓄電池の劣化にともなって満充電容量が減少するために、比較的に長い期間で定期的な実測に基づく満充電容量の再定義が必要となる。本実施形態では「電池特性による蓄電量」を把握する方法については特定しない。
把握した損失分は、一定期間ごとに仮想的な負荷LYに放電して消費されると考える。これによって、その都度、蓄電量が損失分だけ減少する。このようにして、蓄電池BTの損失を除外した蓄電量を管理する。この一定期間は「電池特性による蓄電量」の把握の方法によって異なるものになる。
例えば、上記した損失量積算部は、一定期間ごとに「電池特性による蓄電量」と「充放電量による蓄電量」の差分を計算して損失電力量とする。損失電力量は蓄電池BTの内部から仮想的に負荷LYに対して供給されて消費されたとし、その損失電力量が複数の蓄電領域の蓄電量の比で按分されて蓄電領域ごと蓄電量から差し引かれるようにする。
図16は、電力カラーリングサーバ110がタイムテーブルに蓄電池BTの損失に伴う情報を記録する動作の一例を示すフローチャートである。この例では、単位時間より長い期間での一定期間で次の一連の処理を実行する。ステップS601で蓄電池BTのバッテリーマネジメントユニットから「電池特性による蓄電量」を取得し、ステップS602で蓄電量算出部から蓄電領域ごとの蓄電量を取得してこれを合算して「充放電量による蓄電量」を算出する。ステップS603で「電池特性による蓄電量」と「充放電量による蓄電量」の差分を計算する。この差分値を蓄電池損失とし、ステップS604で蓄電池BTの蓄電領域ごとの蓄電量の比で按分計算する。ステップS605で蓄電領域ごとに按分した損失量を蓄電量から差し引いて損失分を差し引いた新しい蓄電量を算出する。ステップS606で算出結果の損失量と蓄電領域ごとの新しい蓄電量をタイムテーブルに記録する。
次に複雑な配電系統の仮想給電モデルの作成方法について説明する。
図8の配電系統の全体に加えて、配電系統内の損失と蓄電池の損失を別々に把握するモデルを例にして説明する。この場合は、電源P1〜P3と負荷L1,L2と蓄電池BTと配電系統の損失を消費する仮想的な負荷LX1と蓄電池の損失を消費する仮想的な負荷LX2のリソースからなる。このようなリソースの数が多い配電系統の仮想給電モデルを図で表現すると図17のように電力供給リソースと電力需要リソースを乗じた数の仮想給電路が生じて極めて複雑な図になる。このような場合には、電力供給リソースと電力需要リソースを縦横に配したマトリックスの交点を仮想給電路としてそれぞれに給電条件を定義する。電力供給リソースと電力需要リソースにはリソース個々に計量システムWが1:1で対応する。損失を消費する仮想的な負荷LXは電力需要リソースに含む。蓄電池BTは一般的には充電と放電を同時にできないのでマトリックスの充電と放電の交点の仮想給電路は存在せず、給電条件の定義も存在しない。負荷LXに対応する計量システムWの実態は存在しないが、その代わりに損失量積算部が算出する電力量値を使用する。図18は図17をマトリックスで表現した図である。
給電条件は実計量値の関係に矛盾が生じない範囲で当事者間の合意が得られるように任意に定義できるが、誤った定義をすると需給の関係に矛盾が生じることもある。本実施形態では、需給のバランスに矛盾が生じない標準仮想給電モデルを自動的に生成するようにする。上述したように、電力供給リソースと電力需要リソースのそれぞれに計量システムWを1:1で対応するようにリンク情報を定義することによって自動的に電力供給リソースと電力需要リソースを縦横に配置して図18のマトリックスを生成し、マトリックスの各交点の要素に標準給電条件を自動的に設定する。電力カラーリングサーバ110は、このようなマトリックスを生成する機能、及びマトリックスの各交点の要素に標準給電条件を自動的に設定する機能を備えてもよく、例えば、情報出力部115が出力装置130に対して情報を出力する際に、マトリックスを生成し、さらにマトリックスの各交点の要素に標準給電条件を設定したうえで出力してもよい。また、例えば、マトリックスを生成し、かつ、マトリックスの各交点の要素に標準給電条件を設定するための専用のマトリックス生成部などが電力カラーリングサーバ110に設けられてもよい。
標準給電条件は、第1条件として「各電力需要リソースに供給される電力量は、それにつながる複数の仮想給電路の起点となる電力供給リソースによって按分され、その按分比は電力給電リソースが当該配電系統に供給する電力量の比になる」と定める。蓄電池BTが電力供給リソースに含まれない場合は、第1の条件から仮想給電路ごとに条件式を設定する。蓄電池BTが電力供給リソースになる場合は、蓄電領域を考慮せずに電源リソースの一つとして前述の第1条件に当てはめ、さらに「蓄電池BTに蓄電されている蓄電領域ごとの蓄電量の比で按分する」という第2条件を組み合わせて各仮想放電路ごとに条件式を設定する。
例えば、図17または図18において、仮想給電路Dを移動した仮想的な電力量を与える給電条件式は「D=Wh5×Wh1/(Wh1+Wh2+Wh3+Wh7)」となり、仮想給電路Rの給電条件式は「R=LX×Wh3/(Wh1+Wh2+Wh3+Wh7)」となる。LXの値は需給のバランス条件より、「LX=(Wh1+Wh2+Wh3+Wh7)−(Wh4+Wh5+Wh6)で求められる。また、蓄電池BTが起点となる放電の例として仮想給電路Jは第1条件が「(Wh4×Wh7/(Wh1+Wh2+Wh3+Wh7))」となり、その時の蓄電池BTの電源P1由来と電源P2由来と電源P3由来の蓄電領域それぞれの蓄電量がB1、B2、B3とすると、第2条件は「B1/(B1+B2+B3)」となるので、2つの条件により仮想給電路Jを移動した仮想的な電力量を与える給電条件式は「J=(Wh4×Wh7/(Wh1+Wh2+Wh3+Wh7))×(B1/(B1+B2+B3))」となる。このようにして、すべての仮想給電路の給電条件を定義する。
図19は、電力カラーリングサーバ110が給電条件を自動的に設定する上記動作の一例を示すフローチャートである。
図20〜図22は、図18のマトリックスのすべての仮想給電路の条件式を上記のように設定した場合のタイムテーブルの例である。なお、図20〜図22は、分割して示されているが、図20〜図22に記載された内容を合わせて1つのタイムテーブルを形成する。以下、1つのタイムテーブルとして説明する。電源P1とP2は分散電源で、それぞれ単位時間当たり12kWh、15kWhの一定出力で運転し、電源P3は配電系統の需給がバランスするように系統からの買電によって電力が供給される。蓄電池は単位時間t3からt5において9kWhずつ充電し、単位時間t8からt10において6kWhずつ放電する。需給のバランスより損失分が発生していることが分かっているものとし、単位時間t1で2kWh、t2からt10の各単位時間当たり1kWhの損失があるとする。t1からt10の期間を計量の特定期間とし、蓄電池損失の把握のための一定期間も特定期間と同じとする。図20〜図22に示すタイムテーブルを参照すると、単位時間ごとについて蓄電池BTの充放電含めて供給された電力量の実績値合計と、負荷での消費及び蓄電池への充電の電力量の実績値合計とが一致して需給がバランスしていることを示し、さらに、両実績値合計値が仮想放電路を移動した仮想的な電力量の配電系統損失を含めた合計値と一致しており、矛盾が生じていないことが分かる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上記した実施形態では、電力カラーリングサーバ110が、一の配電系統を対象にして電力カラーリングを行う電力カラーリングシステム100について説明した。しかしながら、電力カラーリングシステム100は、複数の配電系統を対象にして電力カラーリングを行うこともできる。その場合、一の配電系統における電力量の実測値を収集するクライアント装置を配電系統ごとに設け、クライアント装置とインターネット等の通信回線を介して通信接続される電力カラーリングサーバ110が、クライアント装置にて収集された電力量の実測値に基づいて、上記した実施形態と同様の電力カラーリングを行うようにしてもよい。このような構成によれば、例えば、地理的に離れた複数のビル、工場、地域を対象にした電力カラーリングを行うこともできる。
また、上記した実施形態では、蓄電池BTを含む配電系統を対象にした電力カラーリングについて分かり易く説明するために、負荷Lへの電力供給を考慮しない例について説明した。しかしながら、電源Pから供給される電力が負荷Lに供給されると共に蓄電池BTにも充電され、電源Pから供給される電力と蓄電池BTから放電される電力とが負荷Lに供給されるような配電系統を対象に電力カラーリングを行うようにしてもよい。
また、上記した実施形態では、充電量算出部211が仮想充電路を移動した単位時間ごとの仮想的な充電量を算出する例について説明した。しかしながら、蓄電池BTへの充電は、上述したように、負荷Lと電源Pの仮想給電路において、負荷Lを蓄電領域に置き換えたモデルと同様であることから、電力量算出部112が充電量算出部211として説明した機能を兼ね備えていてもよい。
また、上記した実施形態では、電力系統からの買電による順方向の潮流の場合だけを説明した。しかしながら、蓄電池の放電と分散電源からの給電が需要を上回る場合は電力系統への逆潮流が発生する場合もある。逆潮流がある場合は、系統との連系点の計量システムは買電と売電の双方向の電力量を個々に計量できるようにし、逆潮流の電力量は仮想的な系統側の負荷Lに供給したとして仮想給電路を設定することによって電力カラーリングを行うことができる。
また、上記した実施形態では、需給のバランスに矛盾が生じない標準仮想給電モデルを自動的に生成することを説明した。生成した仮想放電路ごとの条件式は条件格納部116に格納される。しかしながら、標準仮想給電モデルを自動生成する機能は、条件格納部116が兼ね備えてもよいし、外部のシステムで実施して情報入力受付部113が取得するようにしてもよい。
また、特許請求の範囲、明細書及び図面中において示したシステム、方法、装置、プログラム及び記録媒体における動作、ステップ等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味しない。