本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(受圧板の概略構成)
はじめに、図1を参照して、本実施の形態に係る受圧板の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る受圧板1の設置状態を模式的に示す断面図である。図1の矢印Aは、地山の傾斜方向下方側を示す。地山の法面91と平行な面上において地山の傾斜方向と直交(交差)する方向を、以下「左右方向」という。
受圧板1は、グラウンドアンカー92の緊張力を地山の法面91に伝達するために、グラウンドアンカー92の頭部93と法面91との間に設置される構造物である。グラウンドアンカー92は、水平面(図1において一点鎖線で示す)に対し所定の角度θとなるように、地山に差し込まれている。所定の角度θは、典型的には30°〜40°である。
受圧板1は、平面視矩形形状のコンクリート製の受圧板であり、現場にて成形される。受圧板1は、主に、複数の鉄筋が組まれて形成された鉄筋骨組み構造10と、鉄筋骨組み構造10を取り囲む型枠80と、型枠80内に打設されたコンクリート11とで構成される。ここでのコンクリート11は、モルタルまたはコンクリートなど、セメントを含む液状材料が固化した固形物である。
(鉄筋骨組み構造の概要)
図2および図3を参照して、受圧板1の鉄筋骨組み構造10の概要について説明する。図2は、受圧板1の鉄筋骨組み構造10を模式的に示す平面図であり、図3は、受圧板1の鉄筋骨組み構造10を模式的に示す側面図である。
鉄筋骨組み構造10は、平面視において正方形(矩形)形状であり、4つのコーナー部C1〜C4を有する。鉄筋骨組み構造10は、各コーナー部に配置された鉄筋保持具40と、鉄筋保持具40に支持された2段の格子状の鉄筋枠体20,30とを含む。平面視における鉄筋枠体20,30の一辺方向をX方向、他辺方向をY方向という。また、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向という。Z方向は、法面91に対する角度が略90°の方向である。以下の説明において、Z方向を上下方向ともいう。
2段に組まれた鉄筋枠体20,30の中央には、箱抜き管94を受入れるための中央空間12が形成される。箱抜き管94は、グラウンドアンカー92挿通用の筒体である。鉄筋枠体20,30の平面に対する箱抜き管94の角度を調整することで、法面91へのグラウンドアンカー92の差し込み角度が定められる。
なお、図2に示されるように、鉄筋枠体20,30は、平面視正方形状の型枠80により取り囲まれており、この型枠80内にモルタルが吹き付けられることで、受圧板1が形成される。
(各鉄筋枠体の構成)
図2および図3を参照して、鉄筋枠体20,30の構成について説明する。
上段の鉄筋枠体30は、X方向に延びる2本の鉄筋(第3の鉄筋)31と、Y方向に延びる2本の鉄筋(第4の鉄筋)32とを含む。鉄筋31,32それぞれの端部が互いに交差するように配置されることで、鉄筋枠体30の外周枠が形成される。以下の説明において、これらの鉄筋31,32を外側鉄筋31,32という。
各コーナー部において互いに交差する外側鉄筋31の一方端部および外側鉄筋32の一方端部は、共通の鉄筋保持具40により保持される。Y方向に延びる外側鉄筋32は、X方向に延びる外側鉄筋31よりも鉄筋1本分、高い位置に保持される。なお、各コーナー部において、X方向に延びる外側鉄筋の端部とY方向に延びる外側鉄筋の端部とは、実際に交差していなくてもよく、近接した位置において交差状態で配置されていればよい。
上段の鉄筋枠体30は、外側鉄筋31,32に下方から支持されて互いに交差する複数の鉄筋33,34をさらに含む。以下の説明において、これらの鉄筋33,34を主筋33,34という。
複数の主筋33は、Y方向に延びて、2本の外側鉄筋31の上に架け渡される。各主筋33の両端部は、外側鉄筋31と連結される。主筋33は、Y方向の外側鉄筋32と略同じ高さに配置される。複数の主筋34は、X方向に延びて、2本の外側鉄筋32の上に架け渡される。各主筋34の両端部は、外側鉄筋31と連結される。主筋34は、主筋33の上に載置される。
本実施の形態では、主筋33,34は、4本ずつ配置される。4本の主筋33は、鉄筋骨組み構造10の中心を通りY方向に延びる中心線L1に対し、2本ずつ対称に配置されている。中心線L1に近い2つの主筋33間の間隔D1よりも、中心線L1から遠い主筋33とそれに隣接する主筋33との間の間隔D2の方が小さい。また、中心線L1から遠い主筋33と外側鉄筋32との間の間隔D3は、間隔D1よりも大きい。
4本の主筋34は、鉄筋骨組み構造10の中心を通りX方向に延びる中心線L2に対し、2本ずつ対称に配置されている。4本の主筋34は、主筋33と同様の間隔で配置される。つまり、中心線L2に近い2つの主筋34間の間隔D4よりも、中心線L2から遠い主筋34とそれに隣接する主筋34との間の間隔D5の方が小さい。また、中心線L2から遠い主筋34と外側鉄筋31との間の間隔D6は、間隔D4よりも大きい。
下段の鉄筋枠体20の構成も、上段の鉄筋枠体30の構成と同じである。すなわち、X方向に延びる2本の鉄筋(第1の鉄筋)21と、Y方向に延びる2本の鉄筋(第2の鉄筋)22とを含む。鉄筋21,22それぞれの端部が互いに交差するように配置されることで、鉄筋枠体20の外周枠が形成される。以下の説明において、これらの鉄筋21,22を外側鉄筋21,22という。
各コーナー部において互いに交差する外側鉄筋21の一方端部および外側鉄筋22の一方端部は、上段の外側鉄筋31,32の端部を保持する鉄筋保持具と共通の鉄筋保持具40により保持される。Y方向に延びる外側鉄筋22は、X方向に延びる外側鉄筋21よりも鉄筋1本分、高い位置に保持される。
上段の鉄筋枠体20は、外側鉄筋21,22に下方から支持されて互いに交差する複数の鉄筋23,24をさらに含む。以下の説明において、これらの鉄筋23,24を主筋23,24という。
複数の主筋23は、Y方向に延びて、2本の外側鉄筋21の上に架け渡される。各主筋23の両端部は、外側鉄筋21と連結される。主筋23は、Y方向の外側鉄筋22と略同じ高さに配置される。複数の主筋24は、X方向に延びて、2本の外側鉄筋22の上に架け渡される。各主筋24の両端部は、外側鉄筋31と連結される。主筋24は、主筋23の上に載置される。
主筋23,24の個数および配置間隔は、上述の主筋33,34の個数および配置間隔と同じである。
上記のように、下段および上段の双方において、複数の鉄筋がX方向およびY方向に組まれる。なお、鉄筋骨組み構造10は、外側鉄筋および主筋に加え、後述するスターラップ筋(あばら筋)を含む。スターラップ筋は、主筋23,24,33,34よりも細い鉄筋である。
(鉄筋保持具の構成)
図4〜図6をさらに参照して、各コーナー部に配置される鉄筋保持具40の構成について説明する。図4は、鉄筋保持具40を示す斜視図である。図5は鉄筋保持具40を示す正面図であり、図4の矢印V方向から見た図である。図6は鉄筋保持具40を示す側面図であり、図4の矢印VI方向から見た図である。
鉄筋保持具40は、基板部41と、下側支持部42と、上側支持部43と、棒部材としてのボルト44と、間隔保持部材45,46とを含む。鉄筋保持具40は、金属により形成される。
基板部41は、地山の法面91に載置される薄板状の部材である。基板部41は、地山への固定のための棒状の固定部材(アンカーボルト)を貫通させる貫通孔41aを有している。固定部材が貫通孔41aを貫通して地山に差し込まれることで、法面91の傾斜角度が大きい場合であっても、鉄筋保持具40を安定的に設置できる。
下側支持部42は、基板部41よりも上方に離れて位置し、下段の鉄筋枠体20を支持する部材である。下側支持部42は、基板部41と平行に配置された下側プレート48と、下側プレート48上に固定された2つの受入れ部51,52とを有する。下側プレート48は、長方形状であり、その長手方向一方端部(図4において右側)に受入れ部51が設けられ、その長手方向他方端部(図4において左側)に受入れ部52が設けられる。
各受入れ部51,52は、略U字状断面を有しており、底部と、底部に連結された一対の側部とで構成される。これにより、一対の側部により区画されて一方向に延びる受入れ溝が形成される。受入れ部51の受入れ溝が延びる方向と、受入れ部51の受入れ溝が延びる方向とは、互いに直交する。具体的には、受入れ部51の受入れ溝は、下側プレート48の長手方向に沿って延び、受入れ部52の受入れ溝は、下側プレート48の長手方向に直交する方向(以下「短手方向」という)に沿って延びる。
上側支持部43は、下側支持部42よりも上方に離れて位置し、上段の鉄筋枠体30を支持する部材である。上側支持部43は、基板部41および下側プレート48と平行に配置された上側プレート49と、上側プレート49上に固定された2つの受入れ部53,54とを有する。上側プレート49は、長方形状であり、その長手方向一方端部(図4において右側)に受入れ部53が設けられ、その長手方向他方端部(図4において左側)に受入れ部54が設けられる。
各受入れ部53,54もまた、略U字状断面を有しており、底部と、底部に連結された一対の側部とで構成される。受入れ部53の受入れ溝が延びる方向と、受入れ部54の受入れ溝が延びる方向とは、互いに直交する。具体的には、受入れ部53の受入れ溝は、上側プレート49の長手方向に沿って延び、受入れ部54の受入れ溝は、上側プレート49の短手方向に沿って延びる。
下側支持部42および上側支持部43の受入れ部51〜54の側部は、板バネを構成し、無負荷状態において若干内側に傾斜している。側部の上端部は外側に向かって斜めに折り曲げられているため、受入れ部51〜54の上方から外側鉄筋をスムーズに嵌め入れることができる。図示されるように、各受入れ部51〜54の内側面(側部の内側の面)には、受け入れた外側鉄筋の抜け防止のための爪58が設けられていることが望ましい。
ボルト44は、基板部41上に立設され、下側支持部42および上側支持部43を貫通して上方に延びる。具体的には、ボルト44は、下側プレート48の貫通孔48aおよび上側プレート49の貫通孔49aを貫通する。なお、基板部41は、下側プレート48および上側プレート49と同じ長方形状であり、ボルト44の下端は基板部41の中央に固定される。上述した基板部41の貫通孔41aは、基板部41の長手方向一方端部に設けられる。
ボルト44に螺合するナット47a,47bにより、下側支持部42がボルト44に固定される。これに対し、上側支持部43は、ボルト44に直接固定される構成ではなく、下側支持部42および間隔保持部材45,46を介して、間接的にボルト44に固定される。
間隔保持部材45,46は、下側支持部42と上側支持部43との間の間隔を一定の間隔に保持する部材である。本実施の形態では、間隔保持部材45,46は、下側プレート48と上側プレート49との間を延びる、同じ長さの棒状部材である。間隔保持部材45,46の下端が下側プレート48に接続され、間隔保持部材45,46の上端が上側プレート49に接続される。間隔保持部材45,46は、たとえばボルトであり、ボルトに螺合するナットによって、上下のプレートに接続可能である。
間隔保持部材45は、下側プレート48および上側プレート49の長手方向一方端部に接続され、間隔保持部材46は、下側プレート48および上側プレート49の長手方向他方端部に接続される。これにより、下側プレート48の長手方向と上側プレート49の長手方向とが一致する。そのため、下側プレート48上の受入れ部51および上側プレート49上の受入れ部53の受入れ溝の延びる方向が共通の方向(X方向またはY方向)となり、下側プレート48上の受入れ部52および上側プレート49上の受入れ部54の受入れ溝の延びる方向が共通の方向(Y方向またはX方向)となる。
本実施の形態において、下側支持部42は、Z方向(ボルト44の延びる方向)に沿って位置調整可能にボルト44に取付けられている。つまり、基板部41と下側支持部42との間隔を調整することができる。
下側支持部42と上側支持部43とは間隔保持部材45,46によって一定の間隔に保持されているため、下側支持部42の下のナット47aの位置を変えることにより、下側支持部42と上側支持部43とを同時に高さ調整することができる。
このように、下側プレート48との間隔を一定に保持した状態で上側プレート49の相対高さが変えられるため、上側プレート49の貫通孔49aの径は、ボルト44の頭部44aの径よりも大きくてよい。なお、上側プレート49は、貫通孔49aに代えて、ボルト44が貫通可能な切欠き部を有していてもよい。あるいは、ボルト44による高さ調整範囲が比較的小さい場合などには、上側プレート49を貫通しなくてもよい。つまり、ボルト44は、少なくも下側支持部42の下側プレート48を貫通して延びていればよい。
このように、鉄筋保持具40ごとに、下側支持部42および上側支持部43のZ方向位置が調整可能であるため、法面91が比較的大きな凹凸を有している場合にも対応できる。具体的には、法面91の凹部に設置する鉄筋保持具40においては、基板部41と下側支持部42との間隔を比較的大きくし、法面91の凸部に設置する鉄筋保持具40においては、基板部41と下側支持部42との間隔を比較的小さくすることで、法面91の凹凸を吸収することができる。その結果、法面91の面形状に合わせて適切に鉄筋骨組み構造10を組むことができる。
下側支持部42および上側支持部43は、ボルト44を中心にして回転可能である。そのため、鉄筋保持具40が設置されるコーナー部C1〜C4ごとに、基板部41に対する下側支持部42および上側支持部43の向きを調整することができる。したがって、同一の構成および構造の鉄筋保持具40に、各コーナー部C1〜C4において互いに直交する(直交状態で配置される)外側鉄筋を保持させることができる。
具体的には、鉄筋保持具40が、図2のコーナー部C1に配置される場合、たとえば、下側プレート48および上側プレート49の長手方向がX方向に設定される。この場合、受入れ部51,53には、X方向に延びる外側鉄筋21,31の端部がそれぞれ受入れられる。受入れ部52,54には、Y方向に延びる外側鉄筋22,32の端部がそれぞれ受入れられる。
これに対し、鉄筋保持具40が、図2のコーナー部C2に配置される場合、たとえば、下側プレート48および上側プレート49の長手方向がY方向に設定される。この場合、受入れ部51,53には、Y方向に延びる外側鉄筋22,32の端部がそれぞれ受入れられる。受入れ部52,54には、X方向に延びる外側鉄筋21,31の端部がそれぞれ受入れられる。
上述のように、本実施の形態では、上側プレート49の上面に、受入れ部53,54が段差なく固定されている。下側プレート48の受入れ部51,52も同様である。そのため、Y方向に延びる外側鉄筋22,32の端部には、同一方向に延びる長さの短い鉄筋が固定され、この短い鉄筋が、Y方向の受入れ部に嵌め入れられる。外側鉄筋22,32の端部に固定された短い鉄筋を、ここでは被受入れ部22a,32aという。
図7は、たとえばコーナー部C2に位置する上段の外側鉄筋32と受入れ部53との連結構造を模式的に示す図である。図7に示されるように、外側鉄筋32の端部には、外側鉄筋32と同一方向に延びる短い鉄筋、すなわち被受入れ部32aが溶接固定されている。被受入れ部32aの径は外側鉄筋32の径と同じである。被受入れ部32aが受入れ部53に嵌め入れられることで、外側鉄筋32を鉄筋保持具40に保持させることができる。
図示しない変形例として、受入れ部51,52の底部に鉄筋1本分の段差を設けてもよい。受入れ部53,54も同様である。本実施の形態に係る鉄筋保持具40は、受入れ部51,52および受入れ部53,54の底部に段差を設けていないため、法面91への設置時のバランスを良好とすることができる。また、同じ構造の鉄筋保持具40を、全てのコーナー部C1〜C4に使うことができるため、施工性が向上するとともに、鉄筋保持具の製造コストを抑えることができる。
(外側鉄筋と主筋との連結)
図8を参照して、互いに交差する外側鉄筋と主筋との連結方法について説明する。図8は、外側鉄筋に固定された連結具55を示す図である。図8では、一例として、X方向に延びる上段の外側鉄筋31に設けられた連結具55が示されているが、他の外側鉄筋も同様である。つまり、下段の外側鉄筋21,22および上段の外側鉄筋31,32の全てに、予め連結具55が取り付けられている。
図2および図3に示されるように、外側鉄筋31の上に複数の主筋33の端部が載せられる。各主筋33は、連結具55により外側鉄筋31に連結される。
連結具55は、たとえば、平坦な上面を有する下地金具57と、下地金具57の上面に固定された略U字状断面の受入れ凹部56とを含む。下地金具57は、外側鉄筋31に予め溶接固定されている。受入れ凹部56の構成は、上述の受入れ部51〜54の構成と同じであってもよい。受入れ凹部56は、その受入れ溝が、取り付け対象の外側鉄筋31と直交する方向(Y方向)に延びるように、下地金具57に溶接固定される。
外側鉄筋31には、その上に重ねられる主筋33の個数分だけ、連結具55が固定されている。これにより、外側鉄筋31に固定された連結具55の受入れ凹部56に、主筋33の端部を嵌め入れるだけで、結束することなく両者の連結が可能となる。したがって、外側鉄筋31と主筋33との連結を、容易かつ正確に行うことができる。
このように、外側鉄筋21,22,31,32の全てに連結具55を予め固定しておくことで、下段および上段の双方において、複数の鉄筋を簡単に組み立てることができる。
(スターラップ筋の配置)
図9および図10を参照して、スターラップ筋25の配置例について説明する。図9は、スターラップ筋25の配置構造を模式的に示す平面図である。図10は、図9のX−X線に沿うスターラップ筋25の配置構造を模式的に示す断面図である。
図9に示されるように、鉄筋骨組み構造10は、たとえば8個のスターラップ筋25を含む。各スターラップ筋25は、同一方向に延びる上段4本、下段4本の主筋を取り囲むように配置される。各スターラップ筋25は、典型的には、下向きのU字状部材と上向きのU字状部材との組み合わせにより構成される。
スターラップ筋25は、鉄筋骨組み構造10の各辺を構成する上下の外側鉄筋と、これらの外側鉄筋と平行な(直近の)上下の主筋との間の領域AR1〜AR4ごとに、配置される。図9には、外側鉄筋22,32と主筋23,33との間に形成される2個の領域AR1,AR2と、外側鉄筋21,31と主筋24,34との間に形成される2個の領域AR3,AR4とが示されている。
各領域AR1〜AR4に位置する上下8本の主筋に対し、スターラップ筋25が巻き付けられる。本実施の形態では、各領域AR1〜AR4において、2個(複数)のスターラップ筋25が互いに間隔をあけて取り付けられる。これにより、図9に示されるように、主筋23,24,33,34およびスターラップ筋25によって、十字状に鉄筋が組まれる。
この場合、図9に示されるように、コーナー部C1〜C4付近には、主筋23,24,33,34およびスターラップ筋25の無い空間部S1〜S4が形成される。この状態で、モルタルを吹き付けて受圧板を形成すると、時間の経過とともに空間部S1〜S4にクラック(ひび割れ)が発生するおそれがある。
そこで、本実施の形態では、これらの空間部S1〜S4に、クラック防止金具が配置される。
(クラック防止金具)
図11および図12を参照して、クラック防止金具60について説明する。図11は、クラック防止金具60を示す透視図である。図12は、鉄筋骨組み構造10の空間部S1にクラック防止金具60が配置された状態を模式的に示す平面図である。
クラック防止金具60は、各空間部において、上下に2個ずつ配置される。つまり、クラック防止金具60は、上段の鉄筋枠体30を構成する鉄筋、および、下段の鉄筋枠体20を構成する鉄筋に、それぞれ取り付けられる。ここでは、一例として、上段の鉄筋枠体30を構成する鉄筋へのクラック防止金具60の取り付け態様について説明する。
クラック防止金具60は、複数の棒材61と、棒材61に直交する複数の棒材62とにより構成されている。棒材61および棒材62は、鉄筋よりも十分に小径であり、軽量の金属により形成される。棒材61と棒材62とは、互いに溶接固定されている。棒材61の一方端部および他方端部には、外側鉄筋31、および、外側鉄筋31よりも高い位置の主筋34にそれぞれ掛止する掛止部63,64が設けられる。
掛止部63は、たとえばL字状に形成される。掛止部63は、クラック防止金具60を取り付ける際に、外側鉄筋31に引っ掛けられる。掛止部64は、たとえば逆U字状に形成される。掛止部64は、掛止部63が外側鉄筋31に引っ掛けられた状態で、上方から主筋34に嵌め入れられる。
棒材62は、一端から他端まで真っ直ぐ延びる形状であり、同じ高さの外側鉄筋32および主筋33に架け渡される。隣り合う棒材61間、および、隣り合う棒材62間には、スターラップ筋25が配置されるため、棒材62に掛止部を設けなくても、クラック防止金具60の位置ずれを抑制することができる。
このように、クラック防止金具60は、棒材61の両端部に設けられた掛止部63,64を有するため、空間部S1を取り囲む鉄筋に、クラック防止金具60を簡単に取り付けることができる。また、モルタルを吹き付ける際に、クラック防止金具60が外れたり動いたりすることを防止することができる。
このようなクラック防止金具60を、各空間部S1〜S4に2段ずつ配置することにより、鉄筋骨組み構造10に必要な鉄筋の量を減らしつつ、受圧板に生じ得るクラックを防止することができる。
なお、クラック防止金具60の位置ずれをより十分に抑制するために、棒材62の一方端部および他方端部にも、外側鉄筋32および主筋33にそれぞれ掛止する掛止部が設けられていてもよい。
また、掛止部63,64は、全数の棒材61のうちの少なくとも1本に設けられていればよい。
(受圧板の成形方法)
図13を参照して、受圧板1の成形方法について説明する。図13は、受圧板1の成形方法を示すフローチャートである。
はじめに、図4〜図6に示した4個の鉄筋保持具40を法面91に設置する(工程P1)。隣り合う鉄筋保持具40間の間隔は、受圧板1の面積の大きさに応じて定められる。各鉄筋保持具40は、基板部41の貫通孔41aにアンカーボルト等が打ち込まれることで、法面91に安定的に固定される。
次に、図2および図3に示したように、外側鉄筋21,22,31,32を配置する(工程P2)。具体的には、各鉄筋保持具40の下側支持部42の受入れ部51,52に、外側鉄筋21,22の端部が嵌め入れられることにより、下段の外周枠となる外側鉄筋21,22が正方形状(矩形枠状)に組まれる。各鉄筋保持具40の上側支持部43の受入れ部53,54に、外側鉄筋31,32の端部が嵌め入れられることにより、上段の外周枠となる外側鉄筋31,32が正方形状に組まれる。
外側鉄筋が上下2段に組まれると、図2および図3に示したように、主筋23,24,33,34を配置する(工程P3)。具体的には、下段の外側鉄筋21,22に取り付けられた連結具55に主筋23,24を連結することで、下段の主筋23,24が格子状に組まれる。同様に、上段の外側鉄筋31,32に取り付けられた連結具55に主筋33,34を連結することで、下段の主筋33,34が格子状に組まれる。
続いて、図9および図10に示したように、複数のスターラップ筋25を配置する(工程P4)。具体的には、領域AR1,AR2においてY方向に延びる上下2段の主筋24,34、および、領域AR3,AR4においてX方向に延びる上下2段の主筋23,33に、スターラップ筋25が巻き付けられる。
スターラップ筋25を配置した後に、図11に示したクラック防止金具60を、スターラップ筋25の無い四隅の空間部S1〜S4に配置する(工程P5)。上述したように、クラック防止金具60は、下段の鉄筋および上段の鉄筋それぞれに取り付けられる。クラック防止金具60が鉄筋に取り付けられると、鉄筋骨組み構造10が完成する。
鉄筋骨組み構造10が完成すると、鉄筋骨組み構造10の中央空間12に、図1に示した箱抜き管94を設置する(工程P6)。法面91に対する箱抜き管94の姿勢は、水平面に対する法面91の角度に応じて異なる。箱抜き管94の設置は、主筋の組立が完了していれば可能であるため、たとえばクラック防止金具60の取り付け前に行われてもよい。
本実施の形態では、箱抜き管94を所望の角度に保持するための箱抜き管保持具が用いられるが、これについては後述する。
次に、鉄筋骨組み構造10を取り囲むように、矩形状の型枠80を配置する(工程P7)。図2に示されるように、型枠80の各面は、外側鉄筋から一定の間隔D7で配置される金網81により構成される。型枠80の配置工程については他図を挙げて後述する。
その後、防水剤を含めたモルタルを型枠80内に吹き付けて打設する(工程P8)。本実施の形態では、防水剤を含めたモルタル(またはコンクリート)を型枠80内に吹き付けることにより、受圧板1を構成するコンクリート11の防水性を容易に向上させることができる。モルタルに加える防水剤としては、たとえば、セメント防水・防湿用のマノール(登録商標)防水剤を採用することができる。
型枠80内のモルタルが硬化すると、箱抜き管94の中にグラウンドアンカー92を施工する(工程P9)。これにより、図1に示した受圧板1が完成する。
(型枠の配置方法)
図13の工程P7において行われる型枠80の配置方法について、図14および図15を参照しながら説明する。図14は、型枠80の一つの面を構成する金網81を内面側から見た斜視図である。図15は、金網81に取り付けられた係合部材82の動作を模式的に示す断面図である。なお、図14では、係合部材82の理解を容易にするために、金網81の網目を大きく示している。また、金網81の具体的な形状は特に限定されない。
工程P7において、作業者は、外側鉄筋よりも外側の位置に、外側鉄筋に対面するように金網81を仮置きする。図14に示されるように、本実施の形態では、金網81の内面側に、下段の外側鉄筋に係合する下段係合部材82Aと、上段の外側鉄筋に係合する上段係合部材82Bとが予め取り付けられている。
下段係合部材82Aは、金網81の長手方向(X方向またはY方向)に沿って互いに間隔をあけて設けられた複数の間隔保持部83と、複数の間隔保持部83の全てを連結する連結部84とで構成される。各間隔保持部83は、棒材により構成され、金網81に取り付けられた基端部を中心として上下方向に回動可能に固定される。各間隔保持部83の先端部は、下向きに折り曲げられて、L字状に形成される。連結部84は、金網81の長手方向に沿って延在する1本の棒状材または紐状材により構成される。
上段係合部材82Bも同様に、金網81の長手方向に沿って互いに間隔をあけて設けられた複数の間隔保持部85と、複数の間隔保持部85全てを連結する連結部86とで構成される。各間隔保持部85は、棒材により構成され、金網81に取り付けられた基端部を中心として上下方向に回動可能に固定される。各間隔保持部85の先端部は、下向きに折り曲げられて、L字状に形成される。連結部86は、金網81の長手方向に沿って延在する1本の棒状材または紐状材により構成される。
各金網81に、このような係合部材82A,82Bが予め取り付けられているため、型枠配置工程において、作業者は、金網81を仮置きした後、下段の連結部84を操作するだけで、全ての間隔保持部83を同時に下段の外側鉄筋21(または22)に引っ掛けることができる。また、上段も同様に、上段の連結部86を操作するだけで、全ての間隔保持部85を同時に上段の外側鉄筋31(または32)に引っ掛けることができる。
間隔保持部83,85が外側鉄筋21,31にそれぞれ引っ掛けられると、金網81は、外側鉄筋21,31との間の距離を所定の間隔D7に保持した状態で位置決め(本置き)される。
このように、本実施の形態によれば、一度に複数の間隔保持部を外側鉄筋に引っ掛けることができるため、金網81の設置を、容易かつ正確に行うことが可能となる。また、間隔保持部83,85の先端部がL字状に形成されているため、結束線等による固定も行い易い。
なお、下段の連結部84と上段の連結部86とを連結することによって、一同の操作で下段および上段全ての間隔保持部83,85を外側鉄筋21,31に引っ掛けるようにしてもよい。
あるいは、本実施の形態では、各段において全ての間隔保持部が連結部により連結されることとしたが、各段において一部(複数)の間隔保持部だけを連結部により連結してもよい。
以上説明したように、本実施の形態の鉄筋骨組み構造10の組立方法および型枠80の配置方法によれば、現場での作業を省力化することが可能となる。
(箱抜き管の固定について)
図13の工程P6において行われる箱抜き管94の設置方法について、図16〜図18を参照して説明する。図16は、箱抜き管94を保持するための箱抜き管保持具70を示す斜視図である。図17は、箱抜き管保持具70が主筋に取り付けられた状態を模式的に示す平面図である。図18は、箱抜き管保持具70が主筋に取り付けられた状態を模式的に示す断面図である。図18には、地山の傾斜方向Aに沿って、図17のXVIII−XVIII線で切断された断面図が示されている。なお、ここでは、地山の傾斜方向Aが鉄筋骨組み構造10のY方向に沿う方向であると仮定する。
箱抜き管保持具70は、下段の鉄筋(主筋23,24)に保持される第1金具71と、上段の鉄筋(主筋33,34)に保持される第2金具72とを含む。第1金具71および第2金具72は、互いに独立した金具である。
下段用の第1金具71は、地山の傾斜方向A(Y方向)に沿って延びる2本の棒材(第1棒材)73と、棒材73に交差する方向、すなわち地山の左右方向(X方向)に沿って延びる2本の棒材(第2棒材)74とで構成される。各棒材73,74は、鉄筋よりも十分に小径であり、軽量の金属により形成される。後述する棒材74,75も同様である。2本の棒材73と2本の棒材74とは溶接等により接続されている。
2本の棒材73と2本の棒材74に四方が囲まれる四角形の領域710は、箱抜き管94が配置される領域であり、骨組み構造10の中央空間12内に位置する。2本の棒材73間の間隔と、2本の棒材24間の間隔とは、互いに略等しく、領域710は正方形状である。領域710の各辺の寸法(棒材間の間隔)は、典型的には、箱抜き管94の外径寸法と略等しい。これにより、箱抜き管94の一部(相対的に下方部分)が、棒材73,74に保持される。
各棒材73は、4つの下段掛止部73a〜73dを有している。下段掛止部73a〜73dは、地山の傾斜方向Aに沿って上方側から順に設けられており、X方向に延びる4本の主筋34にそれぞれ引っ掛けられる。これにより、第1金具71の傾斜方向Aに沿う移動が規制される。
2本の棒材74は、傾斜方向Aにおいて上から2番目の下段掛止部73bと上から3番目の下段掛止部73cとの間に位置する。言い換えると、下段掛止部73a〜73dのうち比較的上方側の2つの下段掛止部73a,73bが、2本の棒材74よりも上方側に設けられ、比較的下方側の2つの下段掛止部73c,73dが、2本の棒材74よりも下方側に設けられる。2つの下段掛止部73b,73c間の間隔は、2つの主筋24(34)間の間隔D4と同じである。
地山の傾斜角度に応じて、棒材74から下段掛止部73a〜73dそれぞれの距離が規定されている。図示した例では、各棒材73において、下段掛止部73bとその直近の棒材74との間隔D13は、下段掛止部73cとその直近の棒材74との間隔D14よりも大きい。
各棒材74は、4つの下段補助掛止部74a〜74dを有している。下段補助掛止部74a〜74dは、たとえば左側から順に設けられており、Y方向に延びる4本の主筋33にそれぞれ引っ掛けられる。これにより、第1金具71の左右方向に沿う移動が規制される。
2本の棒材73は、下段補助掛止部74bと74cとの間に位置する。2つの下段補助掛止部74b,74c間の間隔は、2つの主筋23(33)間の間隔D1(図1)と同じである。下段補助掛止部74a〜74dの位置は、地山の傾斜角度に関わらず固定の位置である。つまり、下段補助掛止部74a〜74dは、棒材73からそれぞれ一定距離だけ離れて配置される。各棒材74において、たとえば、下段補助掛止部74bとその直近の棒材73との間隔D11、および、下段補助掛止部74cとその直近の棒材73との間隔D12は、略同じである。
下段掛止部73a〜73dおよび下段補助掛止部74a〜74dの形状は、たとえば略逆U字形状である。これにより、主筋23,24を下段掛止部73a〜73dおよび下段補助掛止部74a〜74dに嵌合させることができる。したがって、第1金具71を上から簡単に主筋23,24に取り付けることができる。なお、これら掛止部の形態は、各棒材がたとえば折り曲げ加工されて形成される形態に限定されず、各棒材に別部材を連結することによって形成される形態であってもよい。
上段用の第2金具72の構成は、下段用の第1金具71の構成と殆ど同じである。第2金具72は、地山の傾斜方向A(Y方向)に沿って延びる2本の棒材(第3棒材)75と、棒材75に交差する方向、すなわち左右方向(X方向)に沿って延びる2本の棒材(第4棒材)76とで構成される。2本の棒材75と2本の棒材76とは溶接等により接続されている。
2本の棒材75と2本の棒材76に四方が囲まれる四角形の領域720は、箱抜き管94が配置される領域であり、骨組み構造10の中央空間12内に位置する。2本の棒材75間の間隔と、2本の棒材26間の間隔とは、互いに略等しく、領域720は正方形状である。領域720の各辺の寸法(棒材間の間隔)は、典型的には、箱抜き管94の外径寸法と略等しい。これにより、箱抜き管94の一部(相対的に上方部分)が、棒材75,76に保持される。
各棒材75は、4つの上段掛止部75a〜75dを有している。上段掛止部75a〜75dは、地山の傾斜方向Aに沿って上方側から順に設けられており、X方向に延びる4本の主筋24にそれぞれ引っ掛けられる。これにより、第2金具72の傾斜方向Aに沿う移動が規制される。
地山の傾斜角度に応じて、棒材76から上段掛止部75a〜75dそれぞれの距離が規定されている。図示した例では、各棒材75において、上段掛止部75bとその直近の棒材76との間隔D23は、上段掛止部75cとその直近の棒材76との間隔D24よりも大きい。
各棒材76は、4つの上段補助掛止部76a〜76dを有している。上段補助掛止部76a〜76dは、たとえば左側から順に設けられており、Y方向に延びる4本の主筋23にそれぞれ引っ掛けられる。これにより、第2金具72の左右方向に沿う移動が規制される。
2本の棒材75は、上段補助掛止部76bと76cとの間に位置する。上段補助掛止部76a〜76dの位置は、地山の傾斜角度に関わらず固定の位置である。つまり、上段補助掛止部76a〜76dは、棒材75からそれぞれ一定距離だけ離れて配置される。各棒材76において、たとえば、上段補助掛止部76bとその直近の棒材75との間隔D21、および、上段補助掛止部76cとその直近の棒材75との間隔D22は、略同じである。
上段掛止部75a〜75dおよび上段補助掛止部76a〜76dの形状は、たとえば略逆U字形状である。これにより、主筋33,34を上段掛止部75a〜75dおよび上段補助掛止部76a〜76dに嵌合させることができる。したがって、第2金具72を上から簡単に主筋33,34に取り付けることができる。
なお、第1金具71の棒材73は、4つの下段掛止部73a〜73dを有することとするが、交差する2本の棒材74よりも上方側および下方側に少なくとも1つずつ設けられていればよい。つまり、棒材73は、少なくとも2つの下段掛止部を有していればよい。第2金具72の棒材75も同様である。
また、第1金具71の棒材74は、4つの下段補助掛止部74a〜74dを有することとするが、交差する2本の棒材73よりも左側および右側に少なくとも1つずつ設けられていればよい。つまり、棒材74は、少なくとも2つの下段補助掛止部を有していればよい。あるいは、棒材74は、1つの下段補助掛止部のみを有していてもよい。第2金具72の棒材76も同様である。
本実施の形態において、地山の左右方向において、下段側の間隔D11,D12と上段側の間隔D21,D22とは略同じである。そのため、第1金具71を主筋23,24に取り付け、第2金具72を主筋33,34に取り付けた場合、図17に示されるように、地山の傾斜方向Aに沿って延びる下段の棒材73および上段の棒材75は、地山の法面91に直交する方向から見て上下に重なるように配置される。つまり、地山の左右方向において、棒材73の位置と棒材75の位置とは略同じである。なお、図17では、理解の容易のために、棒材73の位置と棒材75の位置とを若干ずらして示している。
これに対し、本実施の形態において、地山の傾斜方向Aにおいて、下段側の間隔D13よりも上段側の間隔D23の方が大きく、その分だけ、下段側の間隔D14よりも上段側の間隔D24の方が小さい。そのため、図17および図18に示されるように、地山の左右方向に延びる下段の棒材74および上段の棒材76の位置は、上下に重ならずにずれている。
これにより、地山の法面91に直交する方向から見て、下段の棒材73,74により形成される四角形の領域710を、上段の棒材75,76により形成される四角形の領域720よりも相対的に傾斜方向上方側に位置させることができる。
なお、第1金具71および第2金具72を取り付ける際に、地山の傾斜方向Aにおいて逆向きとなることを避けるために、傾斜方向一方側(たとえば相対的に下方側)に位置して地山の左右方向に延びる棒材74,76が、着色などによる印を有していることが望ましい。これにより、下段用の2本の棒材74のうちの1本、および、上段用の2本の棒材76のうちの1本が、印によって残りの棒材74,76と識別可能となるため、第1金具71および第2金具72の向きを容易に合わせることができる。
第1金具71の領域710および第2金具72の領域720を貫通して配置される箱抜き管94の軸線と水平面との角度が、所定の角度θとなるように、地山の傾斜方向Aに沿う間隔D13,D14,D23,D24が定められる。箱抜き管保持具の他の例を図19および図20に示す。
図19に示される箱抜き管保持具70Aは、下段掛止部73bと棒材74との間隔D13、および、上段掛止部75bと棒材76との間隔D23が、略同じである。同様に、下段掛止部73cと棒材74との間隔D14、および、上段掛止部75cと棒材76との間隔D24が、略同じである。この場合、地山の法面91に直交する方向から見て、下段の棒材73,74により形成される四角形の領域710と、上段の棒材75,76により形成される四角形の領域720とが、上下に重なる。そのため、法面91に対して垂直に箱抜き管94を位置決めすることができる。
図20に示される箱抜き管保持具70Bは、本実施の形態の箱抜き管保持具70とは反対に、下段掛止部73bと棒材74との間隔D13の方が、上段掛止部75bと棒材76との間隔D23よりも大きく、下段掛止部73cと棒材74との間隔D14の方が上段掛止部75cと棒材76との間隔D24よりも小さい。この場合、地山の法面91に直交する方向から見て、下段の棒材73,74により形成される四角形の領域710を、上段の棒材75,76により形成される四角形の領域720よりも相対的に傾斜方向下方側に位置させることができる。
上述のように、下段側の棒材73,74の連結箇所および上段側の棒材75,76の連結箇所を調整するだけで、傾斜の緩急に関わらず、箱抜き管94を適正な姿勢で保持することができる。すなわち、第1金具71において、地山の傾斜方向に沿って隣り合う2つの下段掛止部73b,73c間における2本の棒材74の連結位置を、棒材74間の間隔を一定(図16に示す間隔D30)としたまま調整し、第2金具72においても、地山の傾斜方向に沿って隣り合う2つの上段掛止部75b,75c間における2本の棒材76の連結位置を、棒材76間の間隔を一定(図16に示す間隔D30)としたまま調整することで、様々な傾斜の地山に対応可能である。
以上説明したように、下段用の第1金具および上段用の第2金具を含む箱抜き管保持具を用いることにより、箱抜き管94を法面91に対して適切な姿勢で、つまり適正な角度で保持することができる。その結果、法面91の傾斜角度に応じて、グラウンドアンカー92の地山への打ち込みを容易かつ正確に行うことができる。
(変形例)
本実施の形態では、鉄筋骨組み構造10のコーナー部C1〜C4付近の空間部S1〜S4(図9)に、図11に示したクラック防止金具60を配置することとしたが、クラック防止金具60に代えて鉄筋を配置してもよい。
図21は、鉄筋骨組み構造10の空間部S1に複数の補強用鉄筋65,66が配置された状態を模式的に示す平面図である。補強用鉄筋65,66は、各空間部において、たとえば下段の鉄筋(外側鉄筋21,22および主筋23,24)にのみ取り付けられる。
図21に示されるように、補強用鉄筋65,66は、下段の鉄筋に対し、斜めに取り付けられている。つまり、補強用鉄筋65,66は、互いに交差する主筋23,24に跨って配置されている。そのため、鉄筋骨組み構造10の中央空間12(図9)に比較的近い側の補強用鉄筋65よりも、中央空間12から比較的遠い側の補強用鉄筋66の方が長い。
図22は、比較的短い補強用鉄筋65の形状を示す側面図である。図22に示されるように、補強用鉄筋65の両端部は下方に折り曲げられている。これにより、互いに交差する主筋23,24に対し補強用鉄筋65を上から嵌め込むことができるため、補強用鉄筋65の位置決めを容易に行うことができる。位置決め後の補強用鉄筋65は、結束線によって主筋23,24に結束される。
図23は、比較的長い補強用鉄筋66の形状を示す側面図である。図23に示されるように、補強用鉄筋66は片方の端部のみ下方に折り曲げられている。このような形状は、補強用鉄筋66の嵌め込み時にスターラップ筋25への干渉が生じ得る場合に有効である。補強用鉄筋66についても、位置決め後に主筋23,24に結束される。
このように、本変形例では、複数の補強用鉄筋65,66が下段の主筋23,24に斜めに取り付けられる。これにより、鉄筋骨組み構造10の中央空間12から各コーナー部C1〜C4へと向かうクラック方向に直交(交差)するように補強用鉄筋65,66が配置されるため、鉄筋骨組み構造10の空間部S1〜S4に生じ得るクラックをより確実に防止することができる。
なお、図21において想像線で示すように、下段の外側鉄筋21,22に対しても比較的短い補強用鉄筋67が取り付けられてもよい。あるいは、下段の鉄筋に対し、補強用鉄筋が1本だけ設けられていてもよい。
あるいは、上段の鉄筋に対しても少なくとも1本の補強用鉄筋が取り付けられてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。