以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。本実施形態の車両用ロック装置は、車両ボディに対して開閉可能に支持される開閉体(ドアやトランクリッド)に対するロック及びロック解除を行うものであり、以下の説明では特に、車両の後面部分に設けられるバックドア(後部ドア)用のロック装置として適用した場合を説明する。
車両ボディ(図示略)にストライカSが設けられ、車両ボディに対して開閉可能なバックドア(図示略)にロック装置10が取り付けられている。図中に示す両矢線T、両矢線W、両矢線Hはそれぞれ、ロック装置10が取り付けられるバックドアの厚さ方向(バックドアを閉じた状態での車両前後方向)、横幅方向(車幅方向)、高さ方向(バックドアを閉じた状態での車両上下方向)を示している。高さ方向Hのうち、バックドアを閉じた状態での車両上方をU、車両下方をDで図中に表している。なお、本実施形態とは逆に、車両ボディにロック装置10が設けられ、バックドア(開閉体)にストライカSが設けられている形態にも、本発明は適用が可能である。
ロック装置10は、ストライカSの保持及び保持解除を行うラッチユニット10Aと、ラッチユニット10Aに対してストライカSの保持解除動作を行わせる駆動ユニット10Bとを備え、ラッチユニット10Aと駆動ユニット10Bとが連結されている。
ラッチユニット10Aは、バックドアに対して固定的に取り付けられるベースプレート11を備えている。ベースプレート11は、互いに非平行な板状をなす底板部11a及びフランジ部11bを有し、底板部11aとフランジ部11bを一対の側壁部11c,11dで接続している。つまり、底板部11aと一対の側壁部11c,11dとに囲まれる収容スペースがあり、この収容スペースの外縁にフランジ部11bが位置している。フランジ部11bに複数のネジ座11eが設けられ、各ネジ座11eに挿通される固定ネジ(図示略)と固定ネジが螺合するナット(図示略)を用いて、ベースプレート11をバックドアに締結固定することができる。バックドアを閉じた状態で、フランジ部11bが概ね水平を向く。
ベースプレート11の底板部11aは、バックドアの厚さ方向Tに進むにつれてフランジ部11bからの距離を変化させる傾斜を有している。底板部11aのうちフランジ部11bからの距離が大きい側の縁部には、ストライカSが進入可能なストライカ進入溝11fが形成されている。ストライカ進入溝11fを挟んで2つの軸支持穴が形成されており、一方の軸支持穴に軸ピン12が挿入され、他方の軸支持穴に軸ピン13が挿入されている。軸ピン12はラッチ14に形成した軸穴に挿通され、ラッチ14は軸ピン12を中心として回転可能に支持されている。軸ピン13はポール15に形成した軸穴に挿通され、ポール15は軸ピン13を中心して回転可能に支持されている。
ラッチ14は、軸ピン12を中心とする略半径方向に向けて形成されたストライカ保持溝14aを備えている。ストライカ保持溝14aはストライカSの直径に対応する幅を有しており、ストライカ保持溝14a内にストライカSが進入可能である。ラッチ14の外周部分には、軸ピン12を中心とする回転方向においてストライカ保持溝14aと位置を異ならせて、ハーフロック保持部14bとフルロック保持部14cが形成されている。ハーフロック保持部14bとフルロック保持部14cはそれぞれ、概ねラッチ14の回転半径方向に延びる係合面を有している。
ラッチ14は、ラッチ付勢バネ(図示略)によって、図1ないし図6における反時計方向に向けて回動付勢されている。ラッチ14は、ベースプレート11に設けた規制縁部11gに当接することで付勢方向への回転が規制され、このときのラッチ14の位置をオープン位置(図1及び図2、図13ないし図16)とする。オープン位置に向かうラッチ14の回転方向をオープン方向とし、オープン方向と反対へのラッチ14の回転方向を引き込み方向とする。ラッチ14は、ラッチ付勢バネによる付勢力に抗してオープン位置から引き込み方向に回転することで、ハーフロック位置(図3及び図4)、フルロック位置(図7及び図8、図11及び図12)、オーバーストローク位置(図9及び図10)へ順次進むことができる。
ポール15は、軸ピン13を中心とする回転方向において位置を異ならせてラッチ係合部15aとオープンアーム15bを有している。オープンアーム15bから戻り規制突起15cが突出している。ポール15の側面にはストッパ面15dとストッパ凸部15eが形成されている。
ポール15は、ポール付勢バネ(図示略)によって、図1ないし図16における時計方向に向けて回動付勢されている。ポール15は、ベースプレート11の側壁部11cに対してストッパ面15dが当接することで付勢方向への回転が規制され、このときのポール15の位置をフルロック保持位置(図7ないし図12)とする。フルロック保持位置に向かうポール15の回転方向をロック方向とし、ロック方向と反対へのポール15の回転方向をロック解除方向とする。ポール15は、ポール付勢バネによる付勢力に抗してフルロック保持位置からロック解除方向に回転することが可能であり、ベースプレート11の側壁部11cに対してストッパ凸部15eが当接するオーバーストローク位置(図15及び図16)まで回転することができる。
ポール15のフルロック保持位置では、ラッチ係合部15aがラッチ14のフルロック保持部14cの移動軌跡(軸ピン12を中心とする回転軌跡)上に位置する。この状態では、フルロック保持部14cの係合面(回転方向の端面)に対してラッチ係合部15aが当接することで、フルロック位置よりもオープン方向へのラッチ14の回転を規制する(図7及び図8参照)。
ポール15はさらに、フルロック保持位置とオーバーストローク位置の間にハーフロック保持位置(図3及び図4)とロック解除位置(図1、図2、図13及び図14)を有している。ハーフロック保持位置では、ラッチ係合部15aがラッチ14のハーフロック保持部14bの移動軌跡(軸ピン12を中心とする回転軌跡)上に位置する。この状態では、ハーフロック保持部14bの係合面(回転方向の端面)に対してラッチ係合部15aが当接することで、ハーフロック位置よりもオープン方向へのラッチ14の回転を規制する。このときポール15は、ハーフロック位置から引き込み方向(フルロック位置)へのラッチ14の回転は規制しない。
つまり、ポール15のフルロック保持位置は、ロック装置10がストライカSをストライカ進入溝11fの奥部まで引き込んだフルロック状態を維持させる位置であり、ポール15のハーフロック保持位置は、ロック装置10がストライカSをストライカ進入溝11fの途中まで引き込んだハーフロック状態を維持させる位置である。ポール15において、ハーフロック位置よりもロック解除方向に進んだロック解除位置(図1、図2、図13及び図14)は、ポール15のラッチ係合部15aがラッチ14(特にハーフロック保持部14bとフルロック保持部14c)の移動軌跡上から完全に退避する位置であり、ポール15がロック解除位置まで達すると、ラッチ14はポール15による制限を受けずにオープン位置まで回転可能になる。
駆動ユニット10Bは、ケース20内に、モータ21、ウォームホイール22、中継レバー23及び検知スイッチ24を備えている。ケース20は高さ方向H及び横幅方向Wに広がりを持つ支持壁部20aを有しており、支持壁部20a上に軸ピン25と軸ピン26が立設されている。軸ピン25と軸ピン26は略平行な関係にある。
ケース20は、図示を省略する電子制御ユニットを接続可能なソケット20bを有し、モータ21と検知スイッチ24はソケット20b内の端子を通して電子制御ユニットに接続される。電子制御ユニットは、モータ21の駆動制御を行うと共に、検知スイッチ24のオンオフ状態を検出する。
ウォームホイール22は軸ピン25を中心として回転可能にケース20内に支持されている。モータ21から突出してウォームホイール22に噛み合うウォーム27を有し、モータ21によってウォーム27を回転駆動させると、ウォームホイール22が軸ピン25を中心として回転する。ウォームホイール22は、回転方向に進むにつれて半径方向の位置を変化させる形状の偏心カム22aを有している。
中継レバー23は軸ピン26を中心として回転可能にケース20内に支持されている。中継レバー23は、モータ21の駆動に応じてポール15の回転位置を制御するオープンレバーと、検知スイッチ24に接触してオンオフを制御するスイッチレバーを一体に構成したものである。中継レバー23は、軸ピン26に軸支される中心部分からそれぞれ異なる方向に延設される第1アーム30、第2アーム31、第3アーム(回転制限部)32及び第4アーム33を有している。
第1アーム30は軸ピン26による支持位置から概ね高さ方向Hの上方に延びており、第1アーム30の先端付近がウォームホイール22に設けた偏心カム22aの回転軌跡上に位置する。そのため、ウォームホイール22が回転すると偏心カム22aによって第1アーム30の先端付近が押圧されて、中継レバー23が軸ピン26を中心として回転(揺動)される。
第2アーム31と第3アーム32は、軸ピン26による支持位置から概ね高さ方向Hの下方に延びており、互いに横幅方向Wに離間している。ラッチユニット10Aと駆動ユニット10Bを組み合わせた状態で、第2アーム31と第3アーム32の間に、ポール15のオープンアーム15bと戻り規制突起15cが位置する。第2アーム31はオープンアーム15bの側部に当接可能で、第3アーム32は戻り規制突起15cに当接可能である。
第4アーム33は軸ピン26による支持位置から概ね横幅方向Wに延びており、検知スイッチ24を押圧可能な位置に第4アーム33の先端が位置している。
検知スイッチ24は、一対の板バネである第1スイッチ片28と第2スイッチ片29を有するリーフスイッチである。第1スイッチ片28と第2スイッチ片29はそれぞれ金属板で形成されており、先端を固定しない片持ち状態でケース20内に支持され、板厚方向に弾性変形して互いに接触または離間する。ソケット20bに接続する電子制御ユニット(図示略)によって、第1スイッチ片28と第2スイッチ片29の接触する導通状態がスイッチオン、第1スイッチ片28と第2スイッチ片29が離間した非導通状態がスイッチオフとして検出される。
図18に示すように、第1スイッチ片28の先端は、山形に屈曲して第2スイッチ片29に向けて延びる屈曲部28aとなっており、屈曲部28aの端部が第2スイッチ片29に対して接離する。ケース20内には、第2スイッチ片29の先端付近が当接可能なストッパ20cが設けられている。第2スイッチ片29は、ストッパ20cに当接することにより、第1スイッチ片28へ接近する方向への移動(変形)が規制される。第1スイッチ片28は、外力を付与しない状態で、第2スイッチ片29から離間する状態(すなわちスイッチオフ状態)を維持する。
図19及び図20に示すように、第2スイッチ片29は、バックドアの厚さ方向Tに離間して位置する一対の接片を有しており、該一対の接片の間にスリット29aが形成されている。第1スイッチ片28における屈曲部28aの先端は、第2スイッチ片29のスリット29aに頂点が進入する三角形状になっている。
中継レバー23の第4アーム33は、第1スイッチ片28の屈曲部28aに当接するスイッチ操作面33aを有している。スイッチ操作面33aは凸状の湾曲面であり、軸ピン27の軸線を中心とする単純な円筒面とは異なる所定のカム形状を含んでいる。屈曲部28aに対するスイッチ操作面33aの当接状態の変化によって、第1スイッチ片28に対する押圧量が変化し、検知スイッチ24のオンオフ状態を変化させることができる。
また、第2スイッチ片29から離間する状態を基準とする第1スイッチ片28がスイッチ操作面33aを押圧する力によって、中継レバー23に対しては、図1ないし図16の反時計方向への付勢力が作用する。この第1スイッチ片28の付勢力による中継レバー23の回転方向をスイッチオフ方向とし、その逆(図1ないし図16の時計方向)の中継レバー23の回転方向をスイッチオン方向とする。
図18ないし図20に示すように、中継レバー23の第4アーム33は、スイッチ操作面33aに隣接する位置に蓋部33bを有している。スイッチ操作面33aが屈曲部28aに接触する状態で、蓋部33bが屈曲部28aの側方を部分的に覆って、厚さ方向T(支持壁部20aから離れる方向)への第1スイッチ片28の移動を制限する。つまり、スイッチオン状態での第1スイッチ片28の位置ずれを抑えて、検知スイッチ24での誤検出を防止する。
ラッチユニット10Aと駆動ユニット10Bは、図1ないし図16に示す内部構造をそれぞれ覆った上で結合される。具体的には、図17に示すように、ラッチユニット10Aにおいてはベースプレート11上に中間フレーム40が載せられ、中間フレーム40を挟んでベースプレート11と結合プレート41が締結固定される。駆動ユニット10Bにおいては、ケース20の開口部分がカバー42で塞がれる。そして、ケース20の下端部をベースプレート11のフランジ部11bに当接させつつ、結合プレート41をケース20及びカバー42に対してねじ止めすることにより、ラッチユニット10Aと駆動ユニット10Bが組み合わされたロック装置10の完成状態となる。
ラッチユニット10Aと駆動ユニット10Bを組み合わせると、中継レバー23における第2アーム31と第3アーム32の間にポール15のオープンアーム15bと戻り規制突起15cが位置する関係になり、中継レバー23がポール15と連動する状態になる。
以上の構成を有するロック装置10は、次のように動作する。図1及び図2は、ロック装置10がストライカSの保持を行っていない初期状態(アンロック状態)を示している。ラッチ14はオープン位置にあり、ストライカ保持溝14a内にストライカSを保持していない。すなわちバックドアが閉じられていない。ポール15は、ラッチ係合部15aの側面がハーフロック保持部14bの側面(ラッチ14の外周面)に当接してハーフロック保持位置及びフルロック保持位置への回転が規制され、ロック解除位置に保持されている。
初期状態における中継レバー23は、第3アーム32が戻り規制突起15cに当接することで、第1スイッチ片28により付勢されるスイッチオフ方向(図1の反時計方向)への回転が規制されており、スイッチ操作面33aが屈曲部28aを押圧して検知スイッチ24をスイッチオン状態にさせている。中継レバー23の第1アーム30は偏心カム22aに当接しておらず、戻り規制突起15cと第3アーム32の当接によって中継レバー23の位置が決まっている。ポール15のオープンアーム15bと中継レバー23の第2アーム31は離間している。
バックドアを閉じると、ストライカ保持溝14aとストライカ進入溝11fの開口部分にストライカSが進入する。ラッチ14がオープン位置にある状態で、ストライカ保持溝14aの内面はストライカ進入溝11fへのストライカSの進入方向に対して交差する関係にあり(図2参照)、ストライカSはストライカ保持溝14a内に進入しながらストライカ保持溝14aの内面を押圧する。これにより、不図示のラッチ付勢バネの付勢力に抗して、ラッチ14がオープン位置から引き込み方向(図2の時計方向)に回転を開始する。
ラッチ14が引き込み方向に所定量回転すると、図3及び図4に示すハーフロック状態になる。ハーフロック状態では、不図示のポール付勢バネの付勢力によって、ポール15が初期状態よりもロック方向に回転してハーフロック保持位置になり、ラッチ係合部15aをハーフロック保持部14bに係合させる。この係合によって、ラッチ14がハーフロック位置に保持されてオープン方向への回転が規制される。ラッチ係合部15aの側面がフルロック保持部14cの側面に当接することによって、ロック方向へのポール15の回転は途中までで制限される。
初期状態からハーフロック状態になるとき中継レバー23は、第1スイッチ片28から受ける押圧力によって、ポール15の回転による戻り規制突起15cの移動に第3アーム32を追随させて僅かにスイッチオフ方向に回転する。しかし、ポール15のロック方向への回転が途中までで制限されていることと、スイッチ操作面33aが屈曲部28aへの押圧を維持する所定のカム面形状を有していることにより、スイッチ操作面33aが依然として屈曲部28aを押圧して第2スイッチ片29に接触(検知スイッチ24のスイッチオン)させている状態が維持される。このとき第1アーム30は偏心カム22aに当接しておらず、戻り規制突起15cと第3アーム32の当接によって中継レバー23の位置が決まっている。つまり、戻り規制突起15cと第3アーム32は、ロック方向へのポール15の回転よりもスイッチオフ方向への中継レバー23の回転が大きくならないように回転量を制限している。
図5及び図6は、ハーフロック状態からさらにラッチ14が引き込み方向に回転した状態を示している。ポール15はラッチ係合部15aがフルロック保持部14cの側面に押圧されてロック解除方向へ押し込まれ、戻り規制突起15cが第3アーム32を押し込んで中継レバー23をスイッチオン方向へ回転させている。従って、スイッチ操作面33aが屈曲部28aを押圧して第2スイッチ片29に接触(検知スイッチ24のスイッチオン)させている状態が維持される。なお、このとき第1スイッチ片28に対して過剰な押圧力が加わらないように、スイッチ操作面33aの形状が設定されている。また第1アーム30は偏心カム22aに当接していない。
図7及び図8は、ラッチ14がフルロック位置まで達したフルロック状態を示している。フルロック状態では、不図示のポール付勢バネのバネ付勢力によって、ポール15がハーフロック状態よりもさらにロック方向に回転してフルロック保持位置になり、ラッチ係合部15aをフルロック保持部14cに係合させる。この係合によって、オープン方向へのラッチ14の回転が規制される。ラッチ14のストライカ保持溝14aがベースプレート11のストライカ進入溝11fに対して略直交する状態になり、ストライカ進入溝11f及びストライカ保持溝14aからのストライカSの離脱をラッチ14が規制する。ポール15はストッパ面15dがベースプレート11の側壁部11cに当接することで、フルロック保持位置よりもロック方向への回転が規制される。
フルロック保持位置までポール15が回転すると、ポール15の戻り規制突起15cが中継レバー23の第3アーム32から離れる(図8に示す隙間M1が形成される)。また、ポール15のオープンアーム15bと中継レバー23の第2アーム31は離間した状態を維持する(図7及び図8に示す隙間M2が形成される)。そのため、中継レバー23の位置にポール15が関与しなくなる。
ポール15による保持が解除された中継レバー23は、第1スイッチ片28を押圧する状態を解除する。すると、第1スイッチ片28がバネの復元力によって屈曲部28aを第2スイッチ片29から離間させ(図7及び図19に示す隙間M3が形成され)、検知スイッチ24がスイッチオフ状態になる(図18及び図19参照)。中継レバー23は第1スイッチ片28によって押圧されてスイッチオフ方向へ回転し、第1アーム30の先端付近を偏心カム22aに当接させてそれ以上のスイッチオフ方向への回転が規制される。この状態で、図18に示すように、中継レバー23のスイッチ操作面33aの端部付近が屈曲部28aに対面する。
検知スイッチ24がスイッチオフになると、ロック装置10がフルロック状態になった(すなわちバックドアが閉状態になった)と電子制御ユニットによって検知される。検知スイッチ24がスイッチオン状態からスイッチオフ状態になるタイミングは、ポール15がフルロック保持位置に回転してラッチ係合部15aがラッチ14のフルロック保持部14cに係合する瞬間である。すなわち、ポール15によってラッチ14をフルロック位置に保持させる実際のフルロック状態への移行と一致するタイミングで、フルロック状態の検知(検知スイッチ24のスイッチオフ)が行われる。
図9及び図10に示すように、ラッチ14は、フルロック位置よりもさらに引き込み方向に進んだオーバーストローク位置まで回転可能である。ラッチ14にオーバーストローク位置を設定することで、ロック装置10における部品や組み付けの誤差を吸収して確実なロック動作を実現することができる。ラッチ14は、ストライカSの勢いによってオーバーストローク位置まで回転した後で、ラッチ付勢バネ(図示略)の付勢力によってオープン方向に戻り、フルロック保持部14cがラッチ係合部15aに当接してフルロック位置で停止される(図7及び図8)。
ラッチ14がオーバーストローク位置に回転すると、フルロック保持部14cがラッチ係合部15aから離れる。ポール15は、ストッパ面15dと側壁部11cの当接によってフルロック保持位置よりもロック方向への回転が制限されるため、ラッチ係合部15aからフルロック保持部14cが離れてもラッチ14には追随せずにフルロック保持位置を維持する。従って、検知スイッチ24のスイッチオフ状態には変化がなく(図9及び図19に示す隙間M3が維持され)、依然としてフルロック状態であると検知される。このように、ポール15の位置を基準として検知スイッチ24の検知を行うようにしたことで、ラッチ14のフルロック位置とオーバーストローク位置の間の位置変化に影響を受けずに、高精度で安定したフルロック状態の検知を実現することができる。
図11及び図12は、フルロック状態からモータ21を駆動してロック解除動作を開始させた直後の状態を示している。ウォーム27から駆動力が伝達されたウォームホイール22の回転によって、偏心カム22aが第1アーム30を押圧して中継レバー23がスイッチオン方向に僅かに回転することで、フルロック状態で存在していた第2アーム31とオープンアーム15bの隙間M2(図7及び図8)がなくなり、中継レバー23からポール15への回転伝達が行われる状態になる。
図11及び図12の状態は、第2アーム31がオープンアーム15bに当接した瞬間を示しており、ポール15はフルロック保持位置からロック解除方向への回転を開始していない。そして、検知スイッチ24はフルロック状態に引き続いてスイッチオフ状態を維持しており、ラッチ係合部15aがフルロック保持部14cを係止しているフルロック状態を反映した検知結果が得られる。
このときの検知スイッチ24の状態を図20に示した。中継レバー23がスイッチオン方向に僅かに回転することにより、スイッチ操作面33aが第1スイッチ片28を押圧し、屈曲部28aがフルロック状態(隙間M3がある状態)よりも第2スイッチ片29に接近する。ここで、図20に示すように、屈曲部28aの三角状に形成された先端の頂点部分が、第2スイッチ片29のスリット29aに進入するため、屈曲部28aの先端の頂点を挟む2つの辺と、第2スイッチ片29のうちスリット29aの両縁部分との間に隙間M4がある。すなわち、屈曲部28aは第2スイッチ片29に接触せず、スイッチオフ状態が維持される。比較として、図19に、フルロック状態における、屈曲部28aの先端の頂点を挟む2つの辺と、第2スイッチ片29のスリット29aの両縁部分との間における隙間M5を示した。隙間M5は隙間M3及び隙間M4よりも大きく、隙間M5と隙間M3の差が、中継レバー23がフルロック状態からスイッチオン方向に回転してもスイッチオフ状態が維持されるマージンとなっている。
図11及び図12の状態からモータ21の駆動(ロック解除動作)を継続すると、偏心カム22aが第1アーム30を押圧して中継レバー23がスイッチオン方向にさらに回転し、第2アーム31がオープンアーム15bを押圧することによって、ポール付勢バネ(図示略)の付勢力に抗してポール15がロック解除方向へ回転する。
図13及び図14は、モータ21の駆動によって、ラッチ係合部15aがフルロック保持部14cに対する係止を解除するロック解除位置までポール15が回転した状態を示している。ラッチ14に対するポール15による回転規制が解除されることにより、ラッチ14がラッチ付勢バネ(図示略)の付勢力によってフルロック位置からオープン位置まで回転して、ストライカ保持溝14aからストライカSをリリースする。
図13及び図14に示すように、中継レバー23がポール15をロック解除位置まで回転させるときに、第4アーム33におけるスイッチ操作面33aが、第1スイッチ片28の負荷に抗して屈曲部28aを押し込んで第2スイッチ片29に接触させ、検知スイッチ24がスイッチオフ状態(図11、図12及び図20)からスイッチオン状態に切り替わる。このスイッチオン状態への切り替わりで、ロック装置10がフルロック状態を解除した(すなわちバックドアが開状態になった)と電子制御ユニットによって検知される。この検知のタイミングは、ポール15がラッチ14に対する係止を解除するタイミングと略一致するため、実際の機構的なロック解除と電気的な検知(検知スイッチ24のスイッチオン)のタイミングが整合する。
図15及び図16に示すように、確実なロック解除を行わせるために、中継レバー23は、ポール15をロック解除位置(図13及び図14)よりもさらにロック解除方向に進んだオーバーストローク位置まで回転させる。ポール15に設けたストッパ凸部15eがベースプレート11の側壁部11cに当接することで、それ以上のロック解除方向へのポール15の回動が制限される。ポール15がオーバーストローク位置まで回転した状態でも引き続いて、検知スイッチ24のスイッチオン状態が維持される。ポール15をオーバーストローク位置まで回転させるために、図13及び図14のロック解除状態よりもさらに中継レバー23がスイッチオン方向に回転される。このとき第1スイッチ片28に対して過剰な押圧力が加わらないように、スイッチ操作面33aの形状が設定されている。具体的には、この部分でのスイッチ操作面33aを、軸ピン26の軸線を中心とする円筒形状にすることで、中継レバー23が回転しても第1スイッチ片28への押圧状態を変化させないようにできる。
図15及び図16の状態からウォームホイール22の回転を継続して偏心カム22aが第1アーム30を押圧する位置を通過すると、中継レバー23の第2アーム31によるオープンアーム15bの押圧が解除される。すると、ポール15がポール付勢バネ(図示略)の付勢力でロック方向に回転する。この状態でラッチ14は既にオープン位置まで回転しており、ラッチ14(ハーフロック保持部14b)の外周部にポール15(ラッチ係合部15a)が当接することでポール15のロック方向への回転が規制される(図1及び図2参照)。ウォームホイール22が図1及び図2に示す位置まで達したらモータ21の駆動を停止して、ロック装置10が初期状態(図1及び図2)に戻る。
以上のように、本実施形態のロック装置10では、ラッチ14の位置に依存せずにポール15の回転位置のみを検出することによって、バックドアが閉じられた閉状態と、バックドアが開かれた開状態とを検知している。より詳しくは、フルロック位置にあるラッチ14に対してポール15が係合している状態(ポール15がフルロック保持位置にある状態)では、検知スイッチ24のスイッチオフが維持されてバックドアの閉状態を検知し、ポール15のその他の状態(ポール15がフルロック保持位置よりもロック解除方向に位置する状態)では、検知スイッチ24がスイッチオンになってバックドアの開状態を常時検知する。そして、ポール15の回転位置のみを検出対象とすることで、ラッチ14の回転位置の影響を受けずに、ラッチユニット10Aにおける実際の動作状態に対応する確実な検知を実現することができる。
例えば、仮にラッチ14の回転によってフルロック状態を検知しようとすると、ラッチ14には、フルロック位置(図7及び図8)から正逆の回転方向にハーフロック位置(図3及び図4)やオーバーストローク位置(図9及び図10)があるため、実際にフルロック状態になった瞬間での正確な検知が難しい。これに対して本実施形態では、バックドアの閉成動作において、ラッチ14のフルロック位置からのオープン方向の回転を規制するフルロック保持位置にポール15が回転する動作に応じて検知スイッチ24を切り替えさせる(スイッチオンからスイッチオフにさせる)ため、正確なフルロック状態の検知が可能である。
また、バックドアを閉じた状態で押さえながらラッチ14に対するポール15の係合解除(モータ21の駆動)を行わせるようなイレギュラーな操作を行った場合、バックドア自体は開放されないが、ラッチ14に対するポール15による保持解除が生じた状態になる。仮に、ラッチ14によってバックドアの開状態を検知する構成であると、バックドアを押さえていることによってラッチ14はオープン方向に回転していないので、この状態はドア閉状態であると検知される。しかし、ポール15によるロックは既に解除されており、バックドアに対する押さえを解除するとバックドアは開く(ロック装置10が図1及び図2の初期状態に戻る)ため、この状態をドア閉状態であると検知してしまうと、実際のロック装置10の状態に整合しなくなってしまう。これに対して本実施形態では、フルロック状態からポール15を係合解除方向に回転させる動作に応じて検知スイッチ24がスイッチオンになってバックドアの開状態を検知するので、イレギュラー操作が解消されたときの実際の状態に即した検知が可能である。
ラッチ14の回転位置を用いずにポール15の回転位置のみによってバックドアの閉状態と開状態を検知することを実現する場合、検知スイッチ24のようなスイッチに対してポール15が直接に接触してスイッチ動作を行わせる構成を採用することも想定される。しかし、バックドアの基本的な形状の制約として、ドアの厚さ方向Tにはサイズやスペースが制約されやすい。図2などに示すように、ポール15は概ね厚さ方向Tに長手方向を向けて配置されているため、ロック装置10におけるレイアウトとして、スイッチを直接に操作させるためにポール15を厚さ方向Tに延長させることが難しい。
また、ポール15を直接にスイッチに当接させる別の構成として、検知スイッチ24を構成する第1スイッチ片28や第2スイッチ片29をラッチユニット10A内に入るまで延長することも想定される。しかし、片持ち状のリーフスプリングである検知スイッチ24を駆動ユニット10Bから突出させると、ラッチユニット10Aと駆動ユニット10Bを組み合わせる前の段階や組み合わせの作業時に、検知スイッチ24における変形等が生じるリスクがある。
こうした構成と異なり、本実施形態では、ポール15を厚さ方向Tに延長することなく、かつ検知スイッチ24の長さを駆動ユニット10Bのケース20内に収まる短さに抑えつつ、駆動ユニット10B側に設けた中継レバー23を介して検知スイッチ24のオンオフ操作を行わせている。中継レバー23は、第1アーム30、第2アーム31及び第2アーム32が概ね高さ方向Hに延び、第4アーム33が概ね横幅方向Wに延びる形状であるため、厚さ方向Tにおける配置スペースの制約を受けずに大きさを設定可能である。
特に、駆動ユニット10Bは、モータ21とウォームホイール22が横幅方向Wに並び、ウォームホイール22とポール15を結ぶ高さ方向Hに中継レバー23(第1アーム30、第2アーム31及び第2アーム32)が延びているレイアウトであるため、ケース20内においてモータ21の下方にスペースが得られる。このスペースに検知スイッチ24を配すると共に、検知スイッチ24を押圧操作するスイッチレバーとして機能する第4アーム33を延設させたので、検知スイッチ24とその操作手段(第4アーム33)をスペース効率良く収めることができる。
しかも、スイッチレバーとして機能する第4アーム33を、ポール15をロック解除操作するオープンレバーとして機能する第1アーム30や第2アーム31と一体化して中継レバー23を構成したため、部品点数の増加を抑えて簡略な構成にすることができる。スイッチレバーとオープンレバーを一体化することで、複数のレバー間での精度誤差も生じることがなく、高精度なスイッチ操作にも寄与する。
中継レバー23は、軸ピン26で支持される中心部分から、第2アーム31と第3アーム32が高さ方向Hの下方に延び、これと略垂直な横幅方向Wに第4アーム30が延びている。他のアーム31,32及び33に比して最も長い第1アーム30は、概ね高さ方向Hの下方に延びているが、第2アーム31及び第3アーム32と直線状に並ぶのではなく、軸ピン26から離れて先端側に進むにつれて、横幅方向Wにおいて第4アーム30から離れる方向に傾きを有している。このような4つのアームの延設方向及び長さの関係によって、中継レバー23は軸ピン26で支持される中心部分付近に重心が位置しており、駆動する際の負荷が小さく、かつ検知スイッチ24に対して余分な負荷変動を与えることがない。
また、厚さ方向Tにおける長さの制約を受けるポール15に比して、各アームの長さ設定等に関する制約が少ない中継レバー23の方が、第4アーム33の回転移動量(スイッチを押圧する部分の移動量)を大きくさせやすい。具体的には、ロック装置10が先に述べた動作を行う際に、ポール15におけるオープンアーム15bや戻り規制突起15cの先端部分の回転移動量よりも、中継レバー23における第4アーム33の先端部分(スイッチ操作面33a)の回転移動量の方が大きくなっている。これにより、中継レバー23によって高精度に検知スイッチ24のオンオフを制御することができる。
第1スイッチ片28は第2スイッチ片29から離間するスイッチオフ方向への付勢力を中継レバー23に対して付与している。中継レバー23は、第3アーム32を戻り規制突起15cに当接させてポール15による回転規制を受けることで、第1スイッチ片28からの付勢力に抗して検知スイッチ24をスイッチオン状態にさせる。また、中継レバー23は、モータ21の駆動によってポール15をロック解除方向に押圧するときの回転によって第1スイッチ片28への押圧を解除して、検知スイッチ24をスイッチオフ状態にさせる。そのため、中継レバー23を回転付勢するための独自の(第1スイッチ片28以外の)付勢手段等を設けることなく、部品点数の少ない簡単な構成で検知スイッチ24を制御することができる。
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。
上述のように、ロック装置10のレイアウト等の条件を考慮すると、ポール15と検知スイッチ24の間に中継レバー23を介在させることが好ましいが、本発明はポールとスイッチが直接に当接する構成を排除するものではない。一例として、実施形態のロック装置10とは異なり、ポール15のオープンアーム15b周りにスペースの余裕がある場合には、当該スペースに検知スイッチを配して、オープンアーム15bが直接に検知スイッチを押圧するように構成してもよい。
実施形態では、検知スイッチ24の第1スイッチ片28(屈曲部28a)が、中継レバー23の第4アーム33(スイッチ操作面33a)に常時当接して付勢力を付与するものとしたが、スイッチオフ状態になるときにスイッチ操作部分がスイッチから離間するような構成にすることも可能である。
実施形態では一対の板バネを用いるリーフスイッチからなる検知スイッチ24を用いているが、これ以外にも、マイクロスイッチやタクトスイッチ等、任意のタイプのスイッチを用いることも可能である。
また、リーフスイッチを用いる場合、実施形態の第1スイッチ片28に相当する一対の板バネの一方のみを弾性変形可能にし、実施形態の第2スイッチ片29に相当する他方の板バネを固定的に支持させることも可能である。つまり、実施形態の第2スイッチ片29はケース20のストッパ20cに当接する方向にのみ移動が制限されているが、これと逆方向への移動も規制されるように第2スイッチ片29を支持してもよい。
実施形態の中継レバー23は、ロック解除時にモータ21によって駆動されるものであるが、モータ21による電動駆動系に加えて、あるいはモータ21による電動駆動系を省略して、ワイヤ等を介して中継レバー23を操作可能に構成することも可能である。
実施形態のロック装置10は車両のバックドアの保持及び保持解除用のものとしたが、バックドア以外のドア(サイドドア等)やトランクリッド等、車両における開閉体全般のロック装置に本発明を用いることができる。