JP2018187225A - ガイドワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】狭窄部に対する通過性を向上させることができるとともに、ガイドワイヤの操作性を維持することができるガイドワイヤを提供すること。
【解決手段】ガイドワイヤ1は、長尺のワイヤ本体10と、ワイヤ本体10の先端部の外周に配置されワイヤ本体10の先端部を覆う管腔体4と、を備える。管腔体4の軸11に交差する切断面においてみたときに、管腔体4は、管腔体4の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に開口幅に応じた変形を生ずるとともに狭窄部を通過した後に変形の前の形状に戻る。
【選択図】図1
【解決手段】ガイドワイヤ1は、長尺のワイヤ本体10と、ワイヤ本体10の先端部の外周に配置されワイヤ本体10の先端部を覆う管腔体4と、を備える。管腔体4の軸11に交差する切断面においてみたときに、管腔体4は、管腔体4の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に開口幅に応じた変形を生ずるとともに狭窄部を通過した後に変形の前の形状に戻る。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガイドワイヤに関し、例えば血管や胆管などの生体管腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤに関する。
ガイドワイヤは、例えばPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)のような、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するために使用される。PTCAに用いられるガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端を例えばバルーンカテーテルの先端から突出させた状態で、バルーンカテーテルと共に目的部位である冠状動脈の狭窄部付近まで挿入され、バルーンカテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
また、PTA(Percutaneous Transluminal Angioplasty)の場合においても、フェモラール、イリアック、リーナル、シャントなどの末梢血管の狭窄・閉塞部位を再開通させるために、PTCAと同じように、ガイドワイヤは、バルーンカテーテルを狭窄部まで誘導する。
さらに、ガイドワイヤは、胆管や膵管の病変部治療において、例えば次のような方法において、胆管、膵管病変部付近まで各治療デバイスを誘導するために使用される。
1.ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)
内視鏡を十二指腸の下行部まで挿入し、その内視鏡でVator乳頭を正面に見ながら、造影カニューレを胆管、膵管に挿入し、造影剤を注入しX線撮影する方法。
2.EST(endoscopic sphincterotomy)
十二指腸乳頭開口部に切開用のパピロトームを挿入し、高周波で乳頭括約筋を切開する方法。
3.EPBD(endoscopic papillary balloon dilation)
内視鏡を経由して乳頭をバルーンで拡張し、胆管胆石を廃除する方法。
1.ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)
内視鏡を十二指腸の下行部まで挿入し、その内視鏡でVator乳頭を正面に見ながら、造影カニューレを胆管、膵管に挿入し、造影剤を注入しX線撮影する方法。
2.EST(endoscopic sphincterotomy)
十二指腸乳頭開口部に切開用のパピロトームを挿入し、高周波で乳頭括約筋を切開する方法。
3.EPBD(endoscopic papillary balloon dilation)
内視鏡を経由して乳頭をバルーンで拡張し、胆管胆石を廃除する方法。
例えばプラーク性病変や石灰化病変などによる狭窄部が生体管腔内に存在する場合には、狭窄部を広げることが困難であり、ガイドワイヤが狭窄部を通過することが困難であることがある。ここで、特許文献1には、コイルスプリングが楕円形コイルまたは長円形コイルからなる医療用ガイドワイヤが開示されている。特許文献1に記載された医療用ガイドワイヤは、先端部位を楕円・長円の短径方向の一軸方向に曲げ易くすると共に、その一軸方向以外の方向に応分の曲げ剛性を付与している。
しかし、特許文献1に記載された医療用ガイドワイヤでは、コイルスプリングが楕円形コイルまたは長円形コイルからなるため、血管・分岐血管への挿入性が向上する一方で、ガイドワイヤの操作性(押し込み性、トルク伝達性等)が低下するおそれがある。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、狭窄部に対する通過性を向上させることができるとともに、ガイドワイヤの操作性を維持することができるガイドワイヤを提供することを目的とする。
前記課題は、長尺のワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の先端部の外周に配置され前記先端部を覆う管腔体と、を備え、前記管腔体の軸に交差する切断面においてみたときに、前記管腔体は、前記管腔体の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に前記開口幅に応じた変形を生ずるとともに前記狭窄部を通過した後に前記変形の前の形状に戻ることを特徴とする本発明のガイドワイヤにより解決される。
前記構成によれば、管腔体の軸に交差する切断面においてみたときに、管腔体は、管腔体の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に、狭窄部の開口幅に応じた変形を生ずる。そのため、狭窄部の開口幅が管腔体の外径よりも小さい場合であっても、ガイドワイヤは、管腔体が狭窄部の開口幅に応じて変形することにより、狭窄部を比較的容易に通過することができる。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤの通過性が向上する。また、管腔体は、狭窄部を通過した後に変形前の形状に戻る。つまり、管腔体は、狭窄部の開口幅に応じた形状を常に有しているわけではなく、狭窄部を通過する際に変形し、狭窄部を通過した後には変形前の形状に戻る。これにより、ガイドワイヤの操作性(押し込み性、トルク伝達性等)が維持される。
好ましくは、前記管腔体は、前記軸方向に沿って設けられ前記切断面において他の部分よりも前記変形を生じやすい変形部を有することを特徴とする。
前記構成によれば、管腔体の軸に交差する切断面において他の部分よりも変形を生じやすい変形部が、管腔体の軸に沿って設けられている。そのため、管腔体は、狭窄部を通過する際に変形部において変形しやすい。すなわち、管腔体は、狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤの通過性がさらに向上する。
好ましくは、前記変形部の剛性は、前記他の部分の剛性よりも低いことを特徴とする。
前記構成によれば、変形部の剛性が他の部分の剛性よりも低いため、管腔体の軸に交差する切断面において、管腔体は、変形部において変形し扁平な形状になりやすい。
好ましくは、前記変形部のうちの少なくとも一部の肉厚は、前記他の部分の肉厚よりも薄いことを特徴とする。
前記構成によれば、変形部のうちの少なくとも一部の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄いため、管腔体の軸に交差する切断面において、管腔体は、変形部において変形し扁平な形状になりやすい。
好ましくは、前記変形部は、前記管腔体の外面から前記管腔体の内側に向かって窪んだ凹部であることを特徴とする。
前記構成によれば、変形部は、管腔体の外面から管腔体の内側に向かって窪んだ凹部として設けられている。そのため、変形部の両側に配置された他の部分は、変形部に向かって互いに接近する。これにより、管腔体の軸に交差する切断面において、管腔体は、扁平な形状になりやすい。
好ましくは、前記変形部が前記変形を生ずるときの変形量は、先端から基端に向かって漸減することを特徴とする。
前記構成によれば、変形部が変形するときの変形量は、先端において相対的に大きく、基端において相対的に小さい。そのため、ガイドワイヤの先端が狭窄部に進入するときの進入性が向上する。また、管腔体の基端における変形が抑えられる。これにより、ガイドワイヤの先端部の柔軟性が向上するとともに、ガイドワイヤの押し込み性が維持される。
好ましくは、前記管腔体は、周方向に沿って互いに離れた位置に設けられた複数の前記変形部を有することを特徴とする。
前記構成によれば、複数の変形部が管腔体の周方向に沿って互いに離れた位置に設けられているため、管腔体は、複数の変形部において変形し扁平な形状になりやすい。
好ましくは、前記複数の変形部は、前記周方向に沿って互いに対向する位置に設けられたことを特徴とする。
前記構成によれば、複数の変形部が管腔体の周方向に沿って互いに対向する位置に設けられているため、管腔体は、互いに対向する複数の変形部において変形し、より確実に扁平な形状になる。
好ましくは、前記管腔体は、素線が螺旋状に巻回されて形成されたコイルであることを特徴とする。
前記構成によれば、管腔体は、素線が螺旋状に巻回されて形成されたコイルとして設けられている。そのため、管腔体が例えば生体管腔内の壁面などに接触したときに、互いに隣り合う素線同士は、離れて広がることができる。これにより、ガイドワイヤの先端部における柔軟性が向上する。
好ましくは、前記ワイヤ本体の先端部は、前記軸から離れた位置に固定されたことを特徴とする。
前記構成によれば、ワイヤ本体の先端部は、管腔体の軸から離れた位置に固定されている。すなわち、ワイヤ本体の先端部は、管腔体の軸(中心)から偏心した位置に固定されている。そのため、ワイヤ本体の先端部が固定された部分以外の部分では、コイルは、互いに隣り合う素線同士が離れることにより曲がりやすい。すなわち、ガイドワイヤは、ワイヤ本体の先端部が固定された部分の方向に曲がりやすい。そのため、術者は、例えばワイヤ本体の先端部が平板状(リボン状)を呈していなくとも、ガイドワイヤの先端部を所望の形状(ワイヤ本体の先端部が固定された部分の方向に曲がった形状)に容易に変形(リシェイプ:形状付け)することができる。そして、術者は、所望の形状に変形させたガイドワイヤの先端部を狭窄部における開口部分に向かって移動させることで、ガイドワイヤの先端部を狭窄部に対して容易に通過させることができる。すなわち、狭窄部に対するガイドワイヤの通過性が向上する。また、ガイドワイヤの先端部が形状付けされると、ガイドワイヤに対して基端側から伝達されたトルク(回転力)は、管腔体の軸から偏心した部分(ワイヤ本体の先端部が固定された部分)に伝達される。このとき、ガイドワイヤの中心軸からより離れた部位で力が伝わる(中心軸からワイヤ本体の先端部が固定された部分までの回転半径が大きくなる)ため、ガイドワイヤの形状付けされた方向へのトルク伝達性が向上する。これにより、主管血管と側枝血管との間の角度(分岐角度)が比較的大きい場合であっても、ガイドワイヤの先端部は、側枝血管に入りやすくなり、血管の分岐部における血管選択性が向上する。
好ましくは、前記ワイヤ本体の先端部は、前記他の部分に固定されたことを特徴とする。
前記構成によれば、ワイヤ本体の先端部は、管腔体の変形部とは異なる他の部分に固定されている。そのため、管腔体が狭窄部を通過する際の管腔体の変形がワイヤ本体の先端部の固定部分により阻害されることは、抑制される。これにより、管腔体は、ワイヤ本体の先端部の固定部分(他の部分)とは異なる変形部において変形し、より確実に扁平な形状になる。
本発明によれば、狭窄部に対する通過性を向上させることができるとともに、ガイドワイヤの操作性を維持することができるガイドワイヤを提供することができる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤを表す断面図である。
なお、図1は、本実施形態に係るガイドワイヤのコイルが変形していないときの状態を表す断面図である。図2は、本実施形態のガイドワイヤのコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
なお、図1は、本実施形態に係るガイドワイヤのコイルが変形していないときの状態を表す断面図である。図2は、本実施形態のガイドワイヤのコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
本願明細書では、管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称する。具体的には、図1、図2、図10および図11において、左側を「先端」若しくは「先端側」、右側を「基端」若しくは「基端側」と称する。また、図1、図2、図10および図11では、理解を容易にするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示している。つまり、長さ方向と太さ方向との比率は、実際とは異なる。
ガイドワイヤ1は、カテーテル(内視鏡も含む)の管腔に挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤである。ガイドワイヤ1は、冠動脈貫通用カテーテルなどと併用されてもよい。図1に表したガイドワイヤ1は、ワイヤ本体10と、ワイヤ本体10の先端部に設置されたコイル(管腔体)4と、を備える。コイル4は、ワイヤ本体10の先端部の外周に配置され、ワイヤ本体10の先端部を覆っている。なお、管腔体としては、螺旋状のコイルだけではなく、例えばパイプなどが挙げられる。以下の説明では、説明の便宜上、管腔体が螺旋状のコイルである場合を例に挙げる。すなわち、本実施形態のコイル4は、本発明の「管腔体」に相当する。
ワイヤ本体10は、可撓性を有する長尺のワイヤであり、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3と、を有する。第1ワイヤ2および第2ワイヤ3は、好ましくは溶接により互いに接合(連結)されている。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、好ましくは例えば約200〜5000mm程度である。
第1ワイヤ2は、柔軟性または弾性を有する線材で形成されている。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、好ましくは例えば約20〜1000mm程度である。
本実施形態では、第1ワイヤ2は、第1径一定部21と、第1テーパ部22と、第2径一定部23と、第2テーパ部24と、第3径一定部25と、を有する。第1径一定部21の外径(直径)は、ほぼ一定である。第2径一定部23は、第1径一定部21よりも先端側に位置している。第2径一定部23の外径(直径)は、第1径一定部21の外径よりも小さく、ほぼ一定である。第1テーパ部22は、第1径一定部21と第2径一定部23との間に位置しており、第1径一定部21と第2径一定部23とに接続されている。第1テーパ部22の外径(直径)は、先端方向に向かって漸減している。第3径一定部25は、第1径一定部21よりも基端側に位置している。第3径一定部25の外径(直径)は、第1径一定部21の外径よりも大きく、ほぼ一定である。第2テーパ部24は、第1径一定部21と第3径一定部25との間に位置しており、第1径一定部21と第3径一定部25とに接続されている。第2テーパ部24の外径(直径)は、先端方向に向かって漸減している。第3径一定部25、第2テーパ部24、第1径一定部21、第1テーパ部22、および第2径一定部23は、第1ワイヤ2の基端側から先端側に向かってこの順に配置されている。なお、第1ワイヤ2の形状は、これだけには限定されない。例えば、第3径一定部23の先端部には、平板状に形成された平板部が設けられていてもよい。
第1ワイヤ2では、第1テーパ部22を介して第2径一定部23と第1径一定部21とが形成され、第2テーパ部24を介して第1径一定部21と第3径一定部25とが形成されていることにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)は、先端方向に向かって徐々に減少する。その結果、ガイドワイヤ1は、先端部において良好な柔軟性を得て、血管等への追従性、安全性を向上させると共に、折れ曲がり等を防止することができる。
第1テーパ部22および第2テーパ部24のテーパ角度(外径の減少率)は、ワイヤ本体10の長手方向に沿って一定でもよく、長手方向に沿って変化してもよい。例えば、テーパ角度が比較的大きい箇所と、テーパ角度が比較的小さい箇所と、が複数回交互に繰り返して形成されていてもよい。
第1ワイヤ2の基端(第3径一定部25の基端)には、第2ワイヤ3の先端が好ましくは溶接により接続(連結)されている。つまり、第2ワイヤ3は、接合部(接合面)6において第1ワイヤ2に接続(連結)されている。第2ワイヤ3は、柔軟性または弾性を有する線材で形成されている。
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接方法としては、特に限定されず、例えば、摩擦圧接、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接やアプセット溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられる。これらの中において、突き合わせ抵抗溶接は、比較的簡単で高い接合強度が得られることから好ましい。
本実施形態では、第2ワイヤ3の外径(直径)は、長手方向に沿ってほぼ一定である。第2ワイヤ3の外径は、第1ワイヤ2の第3径一定部25の外径とほぼ等しい。これにより、第1ワイヤ2の第3径一定部25の基端と、第2ワイヤ3の先端と、が接合された際、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との間の外径差による段差は、接合部6の外周にほとんど生じない。これにより、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合部6において、連続した面が構成される。
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2の第1径一定部21の外径よりも大きい外径を有する。第2ワイヤ3の外径は、例えば、第1ワイヤ2の第1径一定部21の外径の1.02〜5倍程度である。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であることが好ましく、1400〜3000mm程度であることがより好ましい。
第1ワイヤ2の平均外径は、第2ワイヤ3の平均外径よりも小さい。これにより、ガイドワイヤ1は、先端側に配置された第1ワイヤ2上では柔軟性に富んだ性質を有し、基端側に配置された第2ワイヤ3上では剛性が比較的高い性質を有する。そのため、ガイドワイヤ1は、先端部の柔軟性と、優れた操作性(押し込み性、トルク伝達性等)と、を両立することができる。
第1ワイヤ2および第2ワイヤ3の構成材料としては、特に限定されず、それぞれ、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUSの全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)などの各種金属材料が挙げられる。そのなかでも、第1ワイヤ2および第2ワイヤ3の構成材料は、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)であることが好ましく、より好ましくは超弾性合金である。
超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに、復元性を有し、曲がり癖が付き難い性質を有する。そのため、第1ワイヤ2の材料として超弾性合金が使用されることにより、ガイドワイヤ1は、先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性とを得ることができる。また、複雑に湾曲・屈曲する血管等に対する追従性が向上し、ガイドワイヤ1は、より優れた操作性を得ることができる。第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に備わる復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下が防止される。
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含まれ、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含まれる。また、擬弾性合金には、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。なお、Ni−Ti系合金に代表される超弾性合金は、後述する樹脂被覆層8、9との密着性にも優れている。
コバルト系合金は、ワイヤとして使用されたときに高い弾性率を有し、かつ適度な弾性限度を有している。このため、コバルト系合金で構成されたワイヤは、トルク伝達性に優れ、座屈等の問題が極めて生じ難い。コバルト系合金は、構成元素としてCoを含むものであれば、いかなるものであってもよいが、Coを主成分として含むもの(Co基合金:合金を構成する元素中で、Coの含有率が重量比で最も多い合金)が好ましく、Co−Ni−Cr系合金であることがより好ましい。このような組成の合金が用いられることにより、前述した効果がさらに顕著なものとなる。また、このような組成の合金は、高い弾性係数を有し、かつ高弾性限度としても冷間成形可能で、高弾性限度を有する。これにより、ワイヤの座屈の発生が十分に防止されつつ、ワイヤの小径化が可能である。また、ワイヤは、所定部位の挿入に対して十分な柔軟性と剛性とを備えることができる。
Co−Ni−Cr系合金は、例えば、28〜50wt%Co−10〜30wt%Ni−10〜30wt%Cr−残部Feの組成からなる合金や、その一部が他の元素(置換元素)で置換された合金等であることが好ましい。置換元素の含有は、その種類に応じた固有の効果を発揮する。例えば、置換元素として、Ti、Nb、Ta、Be、Moから選択される少なくとも1種が含まれることにより、第2ワイヤ3の強度のさらなる向上等が図られる。なお、Co、Ni、Cr以外の元素が含まれる場合、置換元素全体の含有量は30wt%以下であることが好ましい。
また、Co、Ni、Crの一部は、他の元素で置換されてもよい。例えば、Niの一部がMnで置換されてもよい。これにより、例えば、加工性のさらなる改善等が図られる。また、Crの一部がMoおよびWの少なくともいずれかで置換されてもよい。これにより、弾性限度のさらなる改善等が図られる。コバルト系合金は、Co−Ni−Cr系合金の中でも、Moを含む、Co−Ni−Cr−Mo系合金であることが特に好ましい。
Co−Ni−Cr系合金の具体的な組成としては、例えば、(1)40wt%Co−22wt%Ni−25wt%Cr−2wt%Mn−0.17wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、(2)40wt%Co−15wt%Ni−20wt%Cr−2wt%Mn−7wt%Mo−0.15wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、(3)42wt%Co−13wt%Ni−20wt%Cr−1.6wt%Mn−2wt%Mo−2.8wt%W−0.2wt%C−0.04wt%Be−残部Fe、(4)45wt%Co−21wt%Ni−18wt%Cr−1wt%Mn−4wt%Mo−1wt%Ti−0.02wt%C−0.3wt%Be−残部Fe、(5)34wt%Co−21wt%Ni−14wt%Cr−0.5wt%Mn−6wt%Mo−2.5wt%Nb−0.5wt%Ta−残部Fe等が挙げられる。本発明でいうCo−Ni−Cr系合金とは、これらの合金を包含する概念である。
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは、互いに異なる材料で構成されていてもよく、同一または同種の金属材料で構成されていてもよい。ここで、「同種」とは、合金において主とする金属材料が等しいことをいう。これにより、接合部6の接合強度がより高くなり、接合部6の外径が小さくても、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との離脱等が生ずることが抑えられ、優れたトルク伝達性等が発揮される。
この場合、第1ワイヤ2および第2ワイヤ3は、それぞれ、前述した超弾性合金で構成されていることが好ましく、その中でもNi−Ti系合金で構成されていることがより好ましい。これにより、ワイヤ本体10の先端側において優れた柔軟性が確保されるとともに、ワイヤ本体10の基端側の部分では、十分な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が確保される。その結果、ガイドワイヤ1は、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管、胆管、膵管への追従性、安全性を向上させることができる。
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが互いに異なる材料で構成される場合、第1ワイヤ2は、前述した超弾性合金で構成されていることが好ましく、Ni−Ti系合金で構成されていることがより好ましい。第2ワイヤ3は、前述したステンレス鋼で構成されていることが好ましい。また、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とがそれぞれ、金属組成や物理的特性の異なる擬弾性合金同士、あるいはステンレス鋼同士で構成されていてもよい。
なお、上記では、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが接合された態様を例に挙げて説明したが、ワイヤ本体10は、接合部のない一部材のワイヤであってもよい。その場合のワイヤの構成材料としては、前述と同様の材料が挙げられる。ワイヤの構成材料は、ステンレス鋼、コバルト系合金、擬弾性合金であることが好ましい。
ワイヤ本体10の先端部の外周には、ワイヤ本体10の先端部を覆うようにコイル4が配置されている。コイル4の設置により、カテーテルの内壁や生体表面に対するワイヤ本体10の表面の接触面積が少なくなる。これにより、摺動抵抗が低減される。その結果、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。また、本実施形態に係るガイドワイヤ1では、管腔体は、素線41が螺旋状に巻回されて形成されたコイル4として設けられている。そのため、コイル4が例えば生体管腔内の壁面などに接触したときに、互いに隣り合う素線41同士は、離れて広がることができる。これにより、ガイドワイヤ1の先端部における柔軟性が向上する。
コイル4は、素線(細線)41が螺旋状に巻回された部材であり、第1ワイヤ2の少なくとも先端側の部分を覆うように設置されている。図1および図2に表したガイドワイヤ1では、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内側のほぼ中心部(軸11の部分)に挿通されている。また、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内面と非接触で挿通されている。すなわち、コイル4は、第1ワイヤ2から離れた状態(第1ワイヤ2と非接触の状態)で第1ワイヤ2の少なくとも先端側の部分を覆っている。
コイル4の外径(コイル外径)は、コイル4が変形していない状態において、軸11方向(長手方向)に沿ってほぼ一定であり、0.25〜0.89mm程度であることが好ましく、0.25〜0.46mm程度であることがより好ましい。本願明細書において「コイルの外径(コイル外径)」とは、コイルの素線の外径(線径)ではなく、素線が螺旋状に巻回されたコイル全体の外径をいう。コイル4の外径は、コイル4が変形していない状態において、第2ワイヤ3の直径とほぼ等しいことが好ましい。
コイル4の全長(軸11方向に沿った長さ)は、特に限定されないが、5〜500mm程度であることが好ましく、30〜300mm程度であることがより好ましい。素線41の直径(線径)は、0.23〜0.87mm程度であることが好ましく、0.23〜0.44mm程度であることがより好ましい。
本実施形態の場合、素線41の横断面の形状は、円である。但し、素線41の横断面の形状は、円だけには限定されない。素線41の横断面の形状は、例えば楕円や四角形等であってもよい。本願明細書において「素線の横断面」とは、素線の長手方向に延びる軸に対して垂直な平面で切断したときの切り口(切断面)をいう。
また、図1および図2に表したガイドワイヤ1のコイル4では、外力が付与されていない状態で、螺旋状に巻回された素線41同士が隙間なく密に配置されている。但し、素線41同士の配置形態は、これだけには限定されない。外力が付与されていない状態において、素線41同士の間に隙間が形成されていてもよい。
コイル4(素線41)の構成材料は、金属材料および樹脂材料のいずれでもよく、金属材料であることがより好ましい。コイル4に用いられる金属材料としては、第1ワイヤ2および第2ワイヤ3の構成材料で挙げた材料と同様のものが挙げられる。これらの中でも、前述した超弾性合金で構成されていることが好ましく、Ni−Ti系合金で構成されていることがより好ましい。これによれば、コイル4は、狭窄部を通過する際に変形を生じた場合であっても、狭窄部を通過した後に変形前の形状に戻ることができる。つまり、コイル4は、変形に対する復元性を得ることができる。
すなわち、図2に表したように、本実施形態のコイル4は、コイル4の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に、狭窄部の開口幅に応じた変形を生ずる。そのため、狭窄部の開口幅がコイル4の外径よりも小さい場合であっても、ガイドワイヤ1は、コイル4が狭窄部の開口幅に応じて変形することにより、狭窄部を比較的容易に通過することができる。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。また、コイル4は、狭窄部を通過した後に変形前の形状に戻る。つまり、コイル4は、狭窄部の開口幅に応じた形状を常に有しているわけではなく、狭窄部を通過する際に変形し、狭窄部を通過した後には変形前の形状に戻る。これにより、ガイドワイヤ1の操作性(押し込み性、トルク伝達性等)が維持される。コイル4の変形の詳細については、後述する。
コイル4に用いられるその他の金属材料として、例えば、コバルト系合金、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金(例えば白金−イリジウム合金)等が挙げられる。素線41が貴金属のようなX線不透過材料で構成された場合には、ガイドワイヤ1の先端部にX線造影性が得られる。これにより、術者は、X線透視下で先端部の位置を確認しつつガイドワイヤ1を生体内に挿入することができる。
コイル4(素線41)の全てがX線造影性を有さない場合には、別途X線造影性を有するマーカが設置されていてもよい。後述するように、樹脂被覆層8中にX線不透過材料によるフィラーを分散することは、その一例である。
図1および図2に表したように、コイル4は、ワイヤ本体10に対して2箇所で固定されている。すなわち、コイル4の先端部は、固定材料(固定部)51により第1ワイヤ2の先端に固定されている。コイル4の基端部は、固定材料(固定部)53により第1ワイヤ2の途中(第1径一定部21と第2テーパ部24の境界付近)に固定されている。コイル4がこのような箇所でワイヤ本体10に固定されることにより、ガイドワイヤ1の先端部(コイル4が存在する部位)の柔軟性が損なわれることなく、コイル4が確実に固定される。なお、ワイヤ本体10に対するコイル4の固定箇所および固定数は、これだけには限定されない。
固定材料51、53は、それぞれ、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料51、53は、半田には限定されず、例えば接着剤であってもよい。また、ワイヤ本体10に対するコイル4の固定方法は、固定材料による方法には限定されず、例えば溶接であってもよい。また、血管等の生体管腔の内壁の損傷を防止するために、固定材料51の先端面は、丸みを帯びていることが好ましい。
図1および図2に表したように、ワイヤ本体10は、外周面(外表面)の全部または一部を覆う被覆層として、樹脂被覆層8、9を有している。図1および図2に表したガイドワイヤ1では、樹脂被覆層8がコイル4の外周に設けられている。すなわち、コイル4の素線41は、樹脂被覆層8の内部に設けられている。また、樹脂被覆層9が第1ワイヤ2の一部および第2ワイヤ3の外周に設けられている。
樹脂被覆層8、9は、種々の目的で設けられている。一例として、樹脂被覆層8、9は、ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)を低減し、摺動性を向上させる。これにより、ガイドワイヤ1の操作性が向上する。
ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)の低減を図るためには、樹脂被覆層8、9は、以下に述べるような摩擦を低減し得る材料で構成されていることが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁とガイドワイヤ1との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好になる。また、ガイドワイヤ1の摺動抵抗が低くなることで、ガイドワイヤ1がカテーテル内で移動したり回転したりする際に、例えば接合部6付近におけるガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれがより確実に防止される。
このような摩擦を低減し得る材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、またはこれらの複合材料が挙げられる。
その中でも、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、ガイドワイヤ1とカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)がより効果的に低減され、摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好になる。また、これにより、ガイドワイヤ1がカテーテル内で移動したり回転したりする際に、例えば溶接部付近におけるガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれがより確実に防止される。
また、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、焼きつけ、吹きつけ等の方法により、樹脂材料が加熱された状態で、ワイヤ本体10への被覆が行われる。これにより、樹脂被覆層8、9は、優れた密着性を有する。
また、樹脂被覆層8、9の材料としてシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、樹脂被覆層8、9は、コイル4やワイヤ本体10に被覆される際に、加熱されなくても確実かつ強固にコイル4やワイヤ本体10に密着する。すなわち、樹脂被覆層8、9の材料としてシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)が用いられた場合には、反応硬化型の材料等の使用が可能になる。そのため、樹脂被覆層8、9は室温にて形成される。このように、室温にて樹脂被覆層8、9が形成されることにより、簡便なコーティングが可能であるとともに、接合部6における第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合強度が十分に維持された状態にてガイドワイヤ1の操作が可能になる。
また、他の一例として、樹脂被覆層8、9は、ガイドワイヤ1が血管等に挿入される際の安全性の向上を目的として設けられる。安全性の向上の目的は、基端側の樹脂被覆層9と比較して、先端側の樹脂被覆層8においてより大きい。この目的のためには、樹脂被覆層8、9は柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で形成されていることが好ましい。
このような柔軟性に富む材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性エラストマー、ラテックスゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料、またはこれらのうちに2以上を組み合わせた複合材料が挙げられる。
樹脂被覆層8、9の材料として前述した熱可塑性エラストマーや各種ゴム材料が用いられた場合には、ガイドワイヤ1の先端部の柔軟性がより向上する。そのため、血管等への挿入時に、血管内壁等が傷つけられることがより確実に防止され、安全性が極めて高くなる。
樹脂被覆層8、9のそれぞれは、2層以上の積層体であってもよい。また、樹脂被覆層8と樹脂被覆層9とは、同一材料で形成されていても、互いに異なる材料で形成されていてもよい。例えば、ガイドワイヤ1の先端側に位置する樹脂被覆層8は、前述した柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で形成される。また、ガイドワイヤ1の基端側に位置する樹脂被覆層9は、前述した摩擦を低減し得る材料で形成される。これにより、摺動性(操作性)の向上と安全性の向上の両立が図られる。
樹脂被覆層8、9の厚さは、特に限定されず、樹脂被覆層8、9の形成目的や構成材料、形成方法等を考慮して適宜設定される。通常では、樹脂被覆層8、9の厚さ(平均)は、共に1〜100μm程度であることが好ましく、1〜30μm程度であることがより好ましい。樹脂被覆層8、9の厚さが薄すぎると、樹脂被覆層8、9の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、樹脂被覆層8、9の剥離が生じるおそれがある。一方で、樹脂被覆層8、9の厚さが厚すぎると、ガイドワイヤ1の物理的特性が影響を受けるおそれがあり、また、樹脂被覆層8、9の剥離が生じるおそれがある。
なお、本実施形態では、コイル4やワイヤ本体10の外周面(表面)に、樹脂被覆層8、9の密着性を向上するための処理(粗面加工、化学処理、熱処理等)が施されていたり、樹脂被覆層8、9の密着性を向上し得る中間層が設けられたりしていてもよい。
樹脂被覆層8は、コイル4の先端(固定材料51を含む)を露出することなく覆っていることが好ましい。また、樹脂被覆層8の先端は、丸みを帯びた形状であることが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1が血管等の生体管腔内に挿入される際、生体管腔の内壁の損傷がより有効に防止され、安全性が高くなる。
また、樹脂被覆層8中には、造影性を有する材料(前記X線不透過材料等)によるフィラー(粒子)が分散されていてもよい。これにより、樹脂被覆層8に造影部が形成される。
ガイドワイヤ1の少なくとも先端部の外面には、親水性材料によるコーティングが施されていることが好ましい。例えば、ガイドワイヤ1の先端から第2テーパ部24の基端付近に至るまでの領域におけるガイドワイヤ1の外周面に、親水性材料によるコーティングが施されていることが好ましい。これにより、親水性材料が湿潤して潤滑性を生じ、ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)が低減され、摺動性が向上する。従って、ガイドワイヤ1の操作性が向上する。なお、樹脂被覆層8は、このような潤滑性を生ずるコーティング層として設けられていてもよい。
親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
このような親水性材料は、多くの場合、湿潤(吸水)により潤滑性を発揮し、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁とガイドワイヤ1との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。これにより、ガイドワイヤ1の摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好になる。
図3は、本実施形態のコイルの軸に交差する切断面における断面図である。
なお、図3(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図である。つまり、図3(a)は、本実施形態のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図3(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面である。つまり、図3(b)は、本実施形態のコイルが変形したときの状態を表す断面図であって、図2に表した切断面C3−C3よりも先端側における断面図である。図3(c)は、図2に表した切断面C3−C3における切断面である。つまり、図3(c)は、本実施形態のコイルが変形したときの状態を表す断面図であって、図2に表した切断面C2−C2よりも基端側における断面図である。
なお、図3(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図である。つまり、図3(a)は、本実施形態のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図3(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面である。つまり、図3(b)は、本実施形態のコイルが変形したときの状態を表す断面図であって、図2に表した切断面C3−C3よりも先端側における断面図である。図3(c)は、図2に表した切断面C3−C3における切断面である。つまり、図3(c)は、本実施形態のコイルが変形したときの状態を表す断面図であって、図2に表した切断面C2−C2よりも基端側における断面図である。
例えばプラーク性病変や石灰化病変などによる狭窄部が生体管腔内に存在する場合には、狭窄部を広げることが困難であり、ガイドワイヤが狭窄部を通過することが困難であることがある。
これに対して、本実施形態のコイル4は、コイル4の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に、狭窄部の開口幅に応じた変形を生ずる。また、コイル4は、狭窄部を通過した後に変形前の形状に戻る。
具体的に説明すると、図3(a)〜図3(c)に表したように、本実施形態のコイル4(素線41)は、変形部42を有する。変形部42は、コイル4の軸11(図1および図2参照)方向に沿って設けられている。また、図3(b)および図3(c)に表したように、変形部42は、コイル4の軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。本願明細書において、「他の部分」とは、コイル(素線)のうちで変形部以外の部分をいう。
変形部42には、例えば焼き鈍しなどの熱処理が施されている。そのため、変形部42の剛性は、他の部分43の剛性よりも低い。あるいは、変形部42以外の他の部分43には、例えばショットピーニングなどの加工が施されている。そのため、他の部分43の剛性は、変形部42の剛性よりも高い。言い換えれば、変形部42の剛性は、他の部分43の剛性よりも低い。
これにより、図3(b)および図3(c)に表したように、変形部42は、コイル4の軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。すなわち、コイル4は、コイル4の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。本願明細書において、コイルの変形方向に関する「指向性」とは、コイルの軸に交差する切断面において、剛性が相対的に高く変形を生じやすい部位と、剛性が相対的に低く変形を生じにくい部位と、を有するコイルの性質、あるいは、コイルの変形の生じやすさがコイルの周方向において異なる性質をいう。また、変形部42の剛性が他の部分43の剛性よりも低いため、コイル4の軸11に交差する切断面において、コイル4は、変形部42において変形し扁平な形状になりやすい。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。
図3(a)に表したように、コイル4は、狭窄部を通過した後に変形前の形状に戻る。つまり、コイル4は、狭窄部の開口幅に応じた形状を常に有しているわけではなく、狭窄部を通過する際に変形し、狭窄部を通過した後には変形前の形状に戻る。これにより、ガイドワイヤ1の操作性(押し込み性、トルク伝達性等)が維持される。
また、図3(b)および図3(c)に表したように、相対的に先端側に位置する変形部42が変形するときの変形量D1は、相対的に基端側に位置する変形部42が変形するときの変形量D2よりも大きい。そして、図2に表したように、変形部42が変形するときの変形量は、先端から基端に向かって漸減する。なお、図3(b)および図3(c)に表した二点鎖線は、コイル4が変形していないときの形状を表している。
このように、変形部42が変形するときの変形量が、先端において相対的に大きく、基端において相対的に小さいため、ガイドワイヤ1の先端が狭窄部に進入するときの進入性が向上する。また、コイル4の基端における変形が抑えられる。これにより、ガイドワイヤ1の先端部の柔軟性が向上するとともに、ガイドワイヤ1の押し込み性が維持される。
コイル4は、複数の変形部42を有する。図3(a)に表したコイル4では、2つの変形部42が、周方向に沿って互いに離れた位置に設けられ、具体的には周方向に沿って互いに対向する位置に設けられている。このように、複数の変形部42が周方向に沿って互いに離れた位置に設けられているため、コイル4は、複数の変形部42において変形し扁平な形状になりやすい。また、複数の変形部42が周方向に沿って互いに対向する位置に設けられているため、コイル4は、互いに対向する複数の変形部42において変形し、より確実に扁平な形状になる。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性がさらに向上する。
次に、本実施形態の変形例に係るコイルを、図面を参照して説明する。
なお、変形例に係るコイルの構成要素が、図1〜図3(c)に関して前述したコイル4の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
なお、変形例に係るコイルの構成要素が、図1〜図3(c)に関して前述したコイル4の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図4は、本実施形態の第1変形例に係るコイルを表す断面図である。
なお、図4(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図4(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図4(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図4(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
なお、図4(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図4(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図4(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図4(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
本変形例のコイル4A(素線41A)は、変形部42Aを有する。変形部42Aは、コイル4Aの軸11(図1および図2参照)方向に沿って設けられ、コイル4Aの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。具体的には、図4(a)に表したように、変形部42Aのうちの少なくとも一部の肉厚t1は、他の部分43の肉厚t2よりも薄い。なお、図3(a)〜図3(c)に関して前述したように、「他の部分」はコイル(素線)のうちで変形部以外の部分であるため、他の部分43の肉厚は、図4(a)に表した肉厚t2には限定されない。
例えば、変形部42Aにおける素線41Aの線径は、他の部分43における素線41Aの線径よりも小さい。この場合において、コイル4Aは、相対的に細い線径の部分と、相対的に太い線径の部分と、を有する素線41Aが巻回されることにより形成される。コイル4Aの形成後において、相対的に細い線径の部分が変形部42Aになり、相対的に太い線径の部分が他の部分43になる。あるいは、コイル4Aは、同一の線径を有する素線41Aが巻回された後に変形部42Aに相当する部分を削ることにより形成される。このようにして、他の部分43の肉厚t2よりも薄い肉厚t1を有する変形部42Aが形成される。
これにより、図4(b)に表したように、変形部42Aは、コイル4Aの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。すなわち、コイル4Aは、コイル4Aの外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。また、変形部42Aのうちの少なくとも一部の肉厚t1が他の部分43の肉厚t2よりも薄いため、コイル4Aの軸11に交差する切断面において、コイル4Aは、変形部42Aにおいて変形し扁平な形状になりやすい。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。また、他の効果についても、図3(a)〜図3(c)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図5は、本実施形態の第2変形例に係るコイルを表す断面図である。
図6は、本変形例に係るコイルの製造方法を例示する断面図である。
なお、図5(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図5(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図5(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図5(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
図6は、本変形例に係るコイルの製造方法を例示する断面図である。
なお、図5(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図5(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図5(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図5(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
本変形例のコイル4B(素線41B)は、変形部42Bを有する。変形部42Bは、コイル4Bの軸11(図1および図2参照)方向に沿って設けられ、コイル4Bの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。具体的には、図5(a)および図5(b)に表したように、変形部42Bは、溝44Bを有する。溝44Bの断面形状は、特には限定されず、直線が底部において交差する形状(V溝形状)であってもよく、底部が湾曲した形状(U溝形状)であってもよい。そのため、図5(a)に表したように、変形部42Bのうちの少なくとも一部の肉厚t3は、他の部分43の肉厚t2よりも薄い。本具体例では、変形部42Bのうちの少なくとも一部の肉厚t3は、溝44Bが設けられた部分の肉厚に相当する。
これにより、図5(b)に表したように、変形部42Bは、コイル4Bの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。すなわち、コイル4Bは、コイル4Bの外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。また、変形部42Bのうちの少なくとも一部の肉厚t3が他の部分43の肉厚t2よりも薄いため、コイル4Bの軸11に交差する切断面において、コイル4Bは、変形部42Bにおいて変形し扁平な形状になりやすい。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。また、他の効果についても、図3(a)〜図3(c)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図6(a)に表したように、コイル4Bの変形部42Bに溝44Bを形成する方法の一例としては、まず、コイル4Bの素線41Bが芯金71に巻き付けられる。続いて、図6(b)に表した治具72がコイル4Bを挟み締めることにより、コイル4Bの変形部42Bに溝44Bが形成される。
すなわち、図6(b)に表した治具72は、筒状の本体部721と、本体部721の内周面から本体部721の内側に向かって突出した突起部722と、を有する。図6(b)に表した治具72では、複数の突起部722が、本体部721の周方向に沿って互いに離れた位置に設けられ、具体的には本体部721の周方向に沿って互いに対向する位置に設けられている。本体部721は、筒状の本体部721の外側と内側とを接続する切り欠き部723を有する。切り欠き部723は、本体部721の周方向に沿って例えば複数の突起部722同士の中間位置に設けられている。
溝44Bを形成する場合には、まず、図6(b)に表した矢印A1および矢印A2のように、治具72の本体部721が切り欠き部723の両側に広げられる。続いて、治具72がコイル4Bに巻き付けられる。続いて、図6(b)に表した矢印A3および矢印A4のように、治具72の本体部721が切り欠き部723の両側から切り欠き部723に向かって押さえ付けられる。これにより、治具72がコイル4Bを挟み締める。このようにして、コイル4Bの変形部42Bに溝44Bが形成される。
突起部722の形状、設置箇所および設置数を適宜変更することにより、溝44Bの形状、形成箇所および形成数は、適宜変更されてもよい。また、図6(a)および図6(b)に関して説明したコイル4Bの製造方法(溝44Bの形成方法)は、コイル4Bの製造方法(溝44Bの形成方法)の一例であり、これだけには限定されない。
図7は、本実施形態の第3変形例に係るコイルを表す断面図である。
なお、図7(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図7(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図7(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図7(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
なお、図7(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図7(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図7(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図7(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
本変形例のコイル4C(素線41C)は、変形部42Cを有する。変形部42Cは、コイル4Cの軸11(図1および図2参照)方向に沿って設けられ、コイル4Cの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。具体的には、図7(a)および図7(b)に表したように、変形部42Cは、溝44Cを有する。溝44Cは、図5(a)および図5(b)に関して前述した溝44Bの幅よりも狭い幅を有し、細隙(スリット)として設けられている。図7(a)に表したように、変形部42Cのうちの少なくとも一部の肉厚t4は、他の部分43の肉厚t2よりも薄い。本具体例では、変形部42Cのうちの少なくとも一部の肉厚t4は、溝44Cが設けられた部分の肉厚に相当する。
これにより、図7(b)に表したように、変形部42Cは、コイル4Cの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。すなわち、コイル4Cは、コイル4Cの外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。このように、変形部が有する溝の断面形状は、特には限定されず、図6(a)および図6(b)に関して前述したV溝形状またはU溝形状であってもよく、あるいは本変形例の細隙形状(I溝形状)であってもよい。
変形部42Cのうちの少なくとも一部の肉厚t4が他の部分43の肉厚t2よりも薄いため、コイル4Cの軸11に交差する切断面において、コイル4Cは、変形部42Cにおいて変形し扁平な形状になりやすい。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。また、他の効果についても、図3(a)〜図3(c)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図8は、本実施形態の第4変形例に係るコイルを表す断面図である。
なお、図8(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図8(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図8(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図8(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
なお、図8(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図8(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図8(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図8(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
本変形例のコイル4D(素線41D)は、変形部42Dを有する。変形部42Dは、コイル4Dの軸11(図1および図2参照)方向に沿って設けられ、コイル4Dの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。具体的には、図8(a)および図8(b)に表したように、変形部42Dは、複数の溝44Dを有する。複数の溝44Dは、コイル4Dの周方向に沿って並んで配置されている。複数の溝44Dの断面形状は、特には限定されず、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。図8(a)に表したように、変形部42Dのうちの少なくとも一部の肉厚t5は、他の部分43の肉厚t2よりも薄い。本具体例では、変形部42Dのうちの少なくとも一部の肉厚t5は、複数の溝44Dが設けられた部分の肉厚に相当する。
図8(b)に表したように、変形部42Dは、周方向に沿って並んで配置された複数の溝44Dを有するため、コイル4Dの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。すなわち、コイル4Dは、コイル4Dの外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。また、変形部42Dが周方向に沿って並んで配置された複数の溝44Dを有するとともに、変形部42Dのうちの少なくとも一部の肉厚t5が他の部分43の肉厚t2よりも薄いため、コイル4Dの軸11に交差する切断面において、コイル4Dは、変形部42Dにおいて変形し扁平な形状になりやすい。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。また、他の効果についても、図3(a)〜図3(c)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図9は、本実施形態の第5変形例に係るコイルを表す断面図である。
なお、図9(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図9(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図9(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図9(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
なお、図9(a)は、図1に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。つまり、図9(a)は、本変形例のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図9(b)は、図2に表した切断面C2−C2における切断面に相当する。つまり、図9(b)は、本変形例のコイルが変形したときの状態を表す断面図である。
本変形例のコイル4E(素線41E)は、変形部42Eを有する。変形部42Eは、コイル4Eの軸11(図1および図2参照)方向に沿って設けられ、コイル4Eの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。具体的には、図9(a)および図9(b)に表したように、本変形例の変形部42Eは、コイル4Eの外面45Eからコイル4Eの内側に向かって窪んだ凹部である。すなわち、変形部42Eは、素線41Eに形成された溝ではなく、素線41Eが屈曲して形成された凹部である。
これにより、図9(b)に表したように、変形部42Eは、コイル4Eの軸11に交差する切断面において、他の部分43よりも変形を生じやすい。具体的には、図9(b)に表した矢印A5、矢印A6、矢印A7および矢印A8のように、変形部42Eの両側に配置された他の部分43が変形部42Eに向かって互いに接近することにより、変形部42Eは、他の部分43よりも変形を生じやすい。すなわち、コイル4Eは、コイル4Eの外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際の変形方向に関して指向性を有することができる。また、変形部42Eの両側に配置された他の部分43が変形部42Eに向かって互いに接近することにより、コイル4Eの軸11に交差する切断面において、コイル4Eは、変形部42Eにおいて変形し扁平な形状になりやすい。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤ1の通過性が向上する。また、他の効果についても、図3(a)〜図3(c)に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
次に、本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤを、図面を参照して説明する。
なお、第2実施形態に係るガイドワイヤ1Aの構成要素が、図1および図2に関して前述した第1実施形態に係るガイドワイヤ1の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
なお、第2実施形態に係るガイドワイヤ1Aの構成要素が、図1および図2に関して前述した第1実施形態に係るガイドワイヤ1の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図10および図11は、本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤを表す断面図である。
なお、図10は、本実施形態に係るガイドワイヤのコイルが変形(リシェイプ:形状付け)される前の状態を表す断面図である。図11は、本実施形態のガイドワイヤのコイルが変形(リシェイプ:形状付け)された後の状態を表す断面図である。
なお、図10は、本実施形態に係るガイドワイヤのコイルが変形(リシェイプ:形状付け)される前の状態を表す断面図である。図11は、本実施形態のガイドワイヤのコイルが変形(リシェイプ:形状付け)された後の状態を表す断面図である。
第1実施形態に係るガイドワイヤ1では、第1ワイヤ2の先端部は、コイル4の内側の中心部(軸11の部分)に挿通され、固定材料51の中心部(軸11の部分)に固定されている。一方で、図10に表したように、本実施形態(第2実施形態)に係るガイドワイヤ1Aでは、第1ワイヤ2Aの先端部(ワイヤ本体10の先端部)は、コイル4の内側の中心部(軸11の部分)から離れた位置に挿通され、固定材料51の中心部(軸11の部分)から離れた位置において固定材料55により固定されている。すなわち、第1ワイヤ2Aの先端部(ワイヤ本体10の先端部)は、コイル4の内側の中心部(軸11の部分)から偏心した位置において固定材料55により固定されている。この点において、第2実施形態に係るガイドワイヤ1Aは、第1実施形態に係るガイドワイヤ1とは異なる。
また、第1ワイヤ2Aは、第1径一定部21と、第1テーパ部22Aと、第2テーパ部24と、第3径一定部25と、を有する。第1テーパ部22Aは、第1径一定部21よりも先端側に位置しており、基端側において第1径一定部21に接続され、先端側において固定材料55により固定されている。すなわち、第1テーパ部22Aの先端部が、コイル4の内側の中心部(軸11の部分)から偏心した位置において固定材料55により固定されている。第1テーパ部22Aの外径(直径)は、先端方向に向かって漸減している。他の構造は、第1実施形態に係るガイドワイヤ1と同様である。
固定材料55は、半田(ろう材)で構成されている。第1ワイヤ2Aの先端部には、フラックスが設けられていてもよい。これによれば、第1ワイヤ2Aの先端部は、半田(ろう材)で構成された固定材料55により確実に固定される。なお、固定材料55は、半田には限定されず、例えば接着剤であってもよい。また、第1ワイヤ2Aの先端部の固定方法は、固定材料による方法には限定されず、例えば溶接であってもよい。
本実施形態に係るガイドワイヤ1Aでは、管腔体は、素線41が螺旋状に巻回されて形成されたコイル4として設けられている。そのため、図11に表したように、コイル4が例えば生体管腔内の壁面などに接触したときに、互いに隣り合う素線41同士は、離れて広がることができる。これにより、ガイドワイヤ1Aの先端部における柔軟性が向上する。
また、前述したように、第1ワイヤ2Aの先端部は、コイル4の軸11から偏心した位置において固定材料55により固定されている。そのため、図11に表したように、第1ワイヤ2Aの先端部が固定された部分(固定材料55が設けられた部分)以外の部分では、コイル4は、互いに隣り合う素線41同士が離れることにより曲がりやすい。すなわち、ガイドワイヤ1Aは、第1ワイヤ2Aの先端部が固定された部分の方向に曲がりやすい。そのため、術者は、例えば第1ワイヤ2Aの先端部が平板状(リボン状)を呈していなくとも、ガイドワイヤ1Aの先端部を所望の形状(第1ワイヤ2Aの先端部が固定された部分の方向に曲がった形状)に容易に変形(リシェイプ:形状付け)することができる。そして、術者は、所望の形状に変形させたガイドワイヤ1Aの先端部を狭窄部における開口部分に向かって移動させることで、ガイドワイヤ1Aの先端部を狭窄部に対して容易に通過させることができる。すなわち、狭窄部に対するガイドワイヤ1Aの通過性が向上する。
なお、図1および図2に関して前述したように、本実施形態の管腔体は、コイルには限定されず、パイプであってもよい。管腔体が可撓性を有するパイプである場合であって、例えばスリットなどの切り欠きがパイプに設けられている場合には、管腔体は、切り欠きの両側の部分が互いに離れることにより曲がりやすい。そのため、管腔体がパイプである場合であっても、管腔体がコイルである場合と同様に、術者は、ガイドワイヤの先端部を所望の形状に容易に変形することができる。これにより、狭窄部に対するガイドワイヤの通過性が向上する。
先端部が形状付けされたガイドワイヤ1Aでは、ガイドワイヤ1Aの基端側から伝達されたトルク(回転力)は、形状付けされた方向にかかりやすい。本実施形態に係るガイドワイヤ1Aでは、第1ワイヤ2Aの先端部がコイル4の軸11から偏心した位置に固定されているため、ガイドワイヤ1Aの基端側から伝達されたトルク(回転力)は、コイル4の軸11から偏心した部分(固定材料55により固定された部分)に伝達される。そのため、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aでは、第1ワイヤ2の先端部が固定材料51の中心部(コイル4の軸11の部分)に固定された場合(第1実施形態に係るガイドワイヤ1の場合)と比較して、形状付けされた方向へのトルク伝達性が向上する。これにより、ガイドワイヤ1Aの先端部が側枝血管に少し掛かった状態でガイドワイヤ1Aが押し進められた場合であっても、第1ワイヤ2の先端部が固定材料51の中心部(コイル4の軸11の部分)に固定された場合(第1実施形態に係るガイドワイヤ1の場合)と比較して、偏心した側(固定材料55により固定された側)に力がかかりやすい。そのため、ガイドワイヤ1Aの先端部は、主管血管に逃げることなく側枝血管に進入することができる。また、病変部が生体管腔内の偏った位置に存在する場合であっても、第1実施形態に係るガイドワイヤ1に関して前述したようにコイル4が扁平な形状に変形しやすいときには、第1ワイヤ2Aの先端部が偏心位置に固定されたことによる効果と、コイル4が扁平形状に変形することによる効果と、の相乗効果により、コイル4の先端部が扁平形状に変形しないガイドワイヤと比較し病変部の通過性が向上する。
さらに、図11に表したように、外観が互いに同じ先端形状(曲がり具合)になるように先端部の形状付けが行われた場合において、第1ワイヤ2Aの先端部がコイル4の軸11から偏心した位置に固定された場合(第2実施形態に係るガイドワイヤ1Aの場合)の第1ワイヤ2Aの湾曲位置は、第1ワイヤ2の先端部が固定材料51の中心部(軸11の部分)に固定された場合(第1実施形態に係るガイドワイヤ1の場合)の第1ワイヤ2の湾曲位置よりも基端側に存在する。なお、図11に表した二点鎖線の第1テーパ部22および第2径一定部23は、第1実施形態に係るガイドワイヤ1に関して前述した第1テーパ部および第2径一定部である。そうすると、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aの第1ワイヤ2Aは、第1実施形態に係るガイドワイヤ1の第1ワイヤ2と比較して、外径がより太い基端側の部分から曲がることになる。これにより、第1ワイヤがより細い外径の部分から曲がる場合と比較して、トルクが屈曲部で減衰する度合いが小さくなり、ガイドワイヤ1Aのトルク伝達性が向上する。
このように、第1ワイヤ2Aの先端部がコイル4の軸11から偏心した位置において固定材料55により固定されているため、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aのコイル4は、第1実施形態に係るガイドワイヤ1のコイル4と比較して、互いに隣り合う素線41同士が離れることにより曲がりやすい。そのため、術者がガイドワイヤ1Aの先端部の形状付けを容易に行うことができる。また、ガイドワイヤ1Aの先端部が形状付けされると、ガイドワイヤ1Aに対して基端側から伝達されたトルク(回転力)は、コイル4の軸11から偏心した部分(固定材料55により固定された部分)に伝達される。このとき、ガイドワイヤ1Aの中心軸からより離れた部位で力が伝わる(中心軸から固定材料55により固定された部分までの回転半径R1が大きくなる)ため、ガイドワイヤ1Aの形状付けされた方向へのトルク伝達性は、第1実施形態に係るガイドワイヤ1よりも向上する。これにより、主管血管と側枝血管との間の角度(分岐角度)が比較的大きい場合であっても、ガイドワイヤ1Aの先端部は、側枝血管に入りやすくなり、血管の分岐部における血管選択性が向上する。
図12は、本実施形態のコイルの軸に交差する切断面における断面図である。
なお、図12(a)は、図10に表した切断面C4−C4における断面図である。つまり、図12(a)は、本実施形態のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図12(b)は、本実施形態のコイルが変形したときの状態を表す断面図であって、図10に表した切断面C4−C4における切断面に相当する。
なお、図12(a)は、図10に表した切断面C4−C4における断面図である。つまり、図12(a)は、本実施形態のコイルが変形していない状態を表す断面図である。図12(b)は、本実施形態のコイルが変形したときの状態を表す断面図であって、図10に表した切断面C4−C4における切断面に相当する。
本実施形態のコイル4(素線41)は、変形部42を有する。変形部42は、図3(a)〜図3(c)に関して前述した通りである。第1ワイヤ2Aの先端部(ワイヤ本体10の先端部)は、他の部分43に固定されている。つまり、第1ワイヤ2Aの先端部を固定する固定材料55は、変形部42とは異なる他の部分43に設けられている。図12(a)に表したように、固定材料55は、コイル4の周方向に沿って例えば複数の変形部42同士の中間位置に設けられている。
これによれば、コイル4が狭窄部を通過する際のコイル4の変形が第1ワイヤ2Aの先端部を固定する固定材料55により阻害されることは、抑制される。すなわち、第1ワイヤ2Aの先端部を固定する固定材料55が設けられた部分の剛性は、固定材料55が設けられた部分以外の部分の剛性よりも高い。そのため、固定材料55が設けられた部分は、固定材料55が設けられた部分以外の部分と比較して変形し難い。これに対して、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aでは、固定材料55が、変形部42とは異なる他の部分43に設けられている。そのため、コイル4が狭窄部を通過する際のコイル4の変形が固定材料55により阻害されることは、抑制される。これにより、図12(b)に表したように、コイル4(素線41)が変形部42を有する場合には、コイル4は、固定材料55が設けられた部分(他の部分43)とは異なる変形部42において変形し、より確実に扁平な形状になる。また、コイル4(素線41)が変形部42を有する場合には、コイル4が狭窄部を通過する際に狭窄部の開口幅に応じた変形を生ずるとともに、第1ワイヤ2Aの先端部がコイル4の軸11から偏心した位置において固定材料55により固定されているため、狭窄部に対するガイドワイヤ1Aの通過性がさらに向上する。
なお、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aでは、変形部42を有するコイル4が例に挙げられている。但し、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aが備えるコイルは、これだけには限定されず、図4(a)〜図5(b)および図7(a)〜図9(b)に関して前述した変形例に係るコイル4A、4B、4C、4D、4Eであってもよい。この場合であっても、第1ワイヤ2Aの先端部を固定する固定材料55は、変形部42A、42B、42C、42D、42Eとは異なる他の部分43に設けられている。これにより、本実施形態に係るガイドワイヤ1Aに関して前述した効果と同様の効果が得られる。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
1、1A・・・ガイドワイヤ、 2、2A・・・第1ワイヤ、 3・・・第2ワイヤ、 4、4A、4B、4C、4D、4E・・・コイル、 6・・・接合部、 8、9・・・樹脂被覆層、 10・・・ワイヤ本体、 11・・・軸、 21・・・第1径一定部、 22、22A・・・第1テーパ部、 23・・・第2径一定部、 24・・・第2テーパ部、 25・・・第3径一定部、 41、41A、41B、41C、41D、41E・・・素線、 42、42A、42B、42C、42D、42E・・・変形部、 43・・・他の部分、 44B、44C、44D・・・溝、 45E・・・外面、 51、53、55・・・固定材料、 71・・・芯金、 72・・・治具、 721・・・本体部、 722・・・突起部、 723・・・切り欠き部、 D1、D2・・・変形量、 R1・・・回転半径、 t1、t2、t3、t4、t5・・・肉厚
Claims (11)
- 長尺のワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の先端部の外周に配置され前記先端部を覆う管腔体と、
を備え、
前記管腔体の軸に交差する切断面においてみたときに、前記管腔体は、前記管腔体の外径よりも小さい開口幅を有する狭窄部を通過する際に前記開口幅に応じた変形を生ずるとともに前記狭窄部を通過した後に前記変形の前の形状に戻ることを特徴とするガイドワイヤ。 - 前記管腔体は、前記軸方向に沿って設けられ前記切断面において他の部分よりも前記変形を生じやすい変形部を有することを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
- 前記変形部の剛性は、前記他の部分の剛性よりも低いことを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤ。
- 前記変形部のうちの少なくとも一部の肉厚は、前記他の部分の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤ。
- 前記変形部は、前記管腔体の外面から前記管腔体の内側に向かって窪んだ凹部であることを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤ。
- 前記変形部が前記変形を生ずるときの変形量は、先端から基端に向かって漸減することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記管腔体は、周方向に沿って互いに離れた位置に設けられた複数の前記変形部を有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記複数の変形部は、前記周方向に沿って互いに対向する位置に設けられたことを特徴とする請求項7に記載のガイドワイヤ。
- 前記管腔体は、素線が螺旋状に巻回されて形成されたコイルであることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記ワイヤ本体の先端部は、前記軸から離れた位置に固定されたことを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記ワイヤ本体の先端部は、前記他の部分に固定されたことを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
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