以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
以下の各実施形態では、照明装置10が車両5に設けられ、車両5外の被照明領域Zを照明する装置として使用される例について説明するが、照明装置10の適用対象や使用態様はここで説明する例に限定されない。例えば、車両以外の乗り物(例えば船舶や航空機など)やその他の機器に搭載される照明装置として、以下の各実施形態に係る照明装置10を採用することが可能である。照明装置10が車両5に設けられる場合、照明装置10は、ヘッドライトやテールライト等の車両用ライトとして用いることもできるし、車両用ライトとは別の照明装置として用いることもできる。
[第1の実施形態]
図1〜図4Cは、本発明の第1の実施形態について説明するための図であって、このうち図1は、本実施の形態の照明装置10の全体構成を概略的に示す斜視図であり、図2Aは、図1の照明装置10を示す側面図であり、図2Bは、図1の照明装置10を示す上面図である。とりわけ、図1〜図2Bは、後述する各整形光学素子31,32がコリメート位置にある状態において、照明装置10を示している。
図1〜図2Bに示す照明装置10は、光を出射する光源15と、光源15から出射した光を回折する回折光学素子20と、を有している。照明装置10は、光源15から出射した光の光路に沿って、光源15と回折光学素子20との間に、整形光学系30を有している。図示された例において、光源15から出射した光は、整形光学系30及び回折光学素子20を経て、被照明領域Zに向かう。以下、照明装置10の各構成要素について、順に説明していく。
光源15は、被照明領域Zを照明する照明光の元となる光を出射する装置である。光源15としては、種々の型式の光源を用いることができる。一例として、コヒーレント光を出射する光源、例えばレーザ光源を、光源15として用いることができる。レーザ光源から出射するレーザ光は、直進性に優れ、被照明領域Zを高精度に照明するための光として好適である。
図示された光源15は、単一のレーザ光源を含んでいる。したがって、図示された例では、光源15から発振されるレーザ光の波長域に対応した色で、被照明領域Zが照明される。被照明領域Zを所望の色に照明することができるよう、光源15が複数のレーザ光源を含み、各レーザ光源から出射した光が重ね合わされた後、整形光学系30及び回折光学素子20に向かうようにしてもよいし、各レーザ光源から出射した光が当該レーザ光源に対応して設けられた整形光学系30及び回折光学素子20を経て、その後に被照明領域Z上で重ね合わされてもよい。このような例において、光源15に含まれる複数のレーザ光源は、異なる波長域の光を出射するだけでなく、同一の波長域の光を出射するようにしてもよい。光源15が同一の波長域の光を出射するレーザ光源を含むことで、被照明領域Zを明るく照明することが可能となる。
光源15は、図示しない制御装置によって、その発光のオン及びオフ(すなわち点灯及び消灯)が制御可能に構成されてもよい。照明装置10に複数の光源15が設けられる場合には、光源15毎に発光のオン及びオフが制御され、光源15間で発光の有無が相互に関連づけられてもよい。また光源15の発光を制御する代わりに、又は光源15の発光の制御に加え、シャッタを光源15と整形光学系30との間に設置し、当該シャッタの開閉を制御装置により制御してもよい。
次に、回折光学素子20について説明する。回折光学素子20は、光源15から出射した光に対して回折作用を及ぼす素子である。図示された回折光学素子20は、光源15からの光を回折して、被照明領域Zに向ける。したがって、被照明領域Zは、回折光学素子20での回折光によって、照明されることになる。
一例として、回折光学素子20は、干渉縞パターンを記録されたホログラム記録媒体として構成される。干渉縞パターンを種々に調整することで、回折光学素子20で回折される光の進行方向、言い換えると、回折光学素子20で拡散される光の進行方向を、制御することができる。
回折光学素子20は、例えば実物の散乱板からの散乱光を物体光として用いて作製することができる。より具体的には、回折光学素子20の母体であるホログラム感光材料に、互いに干渉性を有するコヒーレント光からなる参照光と物体光とを照射すると、これらの光の干渉による干渉縞がホログラム感光材料に形成されて、回折光学素子20が作製される。参照光としては、コヒーレント光であるレーザ光が用いられ、物体光としては、例えば安価に入手可能な等方散乱板からの散乱光が用いられる。
回折光学素子20を作製する際に用いた参照光の光路を逆向きに進むよう回折光学素子20に向けてレーザ光を照射することで、回折光学素子20を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板の配置位置に、散乱板の再生像が生成される。回折光学素子20を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板が均一な面散乱をしていれば、回折光学素子20により得られる散乱板の再生像も、均一な面照明となり、この散乱板の再生像が生成される領域を被照明領域Zとすることができる。
また、回折光学素子20に形成される複雑な干渉縞のパターンは、現実の物体光と参照光を用いて形成する代わりに、予定した再生照明光の波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計することが可能である。このようにして得られた回折光学素子20は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とも呼ばれる。例えば、照明装置10が地面上や水面上の一定の大きさを有した被照明領域Zを照明することに用いられる場合、物体光を生成することが困難であり、計算機合成ホログラムを回折光学素子20として用いることが好適である。
また、回折光学素子20上の各点における拡散角度特性が同じであるフーリエ変換ホログラムを計算機合成により形成してもよい。さらに、回折光学素子20の下流側にレンズなどの光学部材を設けて、被照明領域Zの形状を調整してもよい。
回折光学素子20の具体的な形態としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム記録媒体でもよいし、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラム記録媒体でもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体でもよい。また、回折光学素子20は、透過型の回折光学素子であってもよいし、反射型の回折光学素子であってもよい。本実施形態では、回折光学素子20が透過型の回折光学素子である例を示している。
次に、整形光学系30について説明する。整形光学系30は、光源15から出射したレーザ光を整形する。言い換えると、整形光学系30は、レーザ光の光軸に直交する断面での形状や、レーザ光の光束の立体的な形状を整形する。ここで、「光軸」とは、対象となる光または光束が通過する領域の中心をたどる光路に沿った方向のことである。図1〜図2Bに示された例において、整形光学系30は、レーザ光源から出射したレーザ光を拡幅した平行光束に整形する。図示された例では、整形光学系30は、光源15から出射したレーザ光の光路に沿った順に、レンズ35、第1整形光学素子31及び第2整形光学素子32を有している。レンズ35は、光源15から出射したレーザ光を発散光束に整形するレンズである。
整形光学素子31,32は、レンズ35で生成された発散光束を平行光束へとコリメートする光学素子である。整形光学素子31,32は、いずれもシリンドリカルレンズ、とりわけシリンドリカル凸レンズ、からなる。図示された例では、第1整形光学素子31は、光源15から出射しレンズ35で発散光束に整形された光の光軸に直交する第1方向(図示された例では水平方向)d1における、当該光の形状を整形する。また、第2整形光学素子32は、第1整形光学素子31で整形された光の光軸及び第1方向d1に直交する第2方向d2における、当該光の形状を整形する。
図1〜図2Bに示された例では、第1整形光学素子31及び第2整形光学素子32は、いずれも光源15から出射した光を平行光に整形するコリメート位置に配置されている。この場合、第1整形光学素子31は、光源15から出射しレンズ35で発散光束に整形された光の第1方向d1における形状を平行光に整形し、第2整形光学素子32は、第1整形光学素子31で整形された光の第2方向d2における形状を平行光に整形する。これにより、光源15から出射しレンズ35で発散光束に整形された光は、第1方向d1及び第2方向d2の両方において平行光化されて、回折光学素子20へ向かう。したがって、各整形光学素子31,32がコリメート位置にあるとは、整形光学素子31,32が、光源15から出射した光の第1方向d1及び第2方向d2のうちの少なくとも一方における形状を平行光に整形し得る位置にあることを指す。具体的には、レンズ35によって作られる光の発散点が各整形光学素子31,32の焦点に位置するときに、各整形光学素子31,32はコリメート位置にある。
本実施形態の照明装置10では、第1整形光学素子31及び第2整形光学素子32の少なくとも一方は、光源15から出射した光を平行光に整形するコリメート位置と、光源15から出射した光を非平行光に整形する非コリメート位置と、の間で移動可能に構成される。好ましくは、第1整形光学素子31及び第2整形光学素子32の両方が、それぞれコリメート位置と非コリメート位置との間で移動可能に構成される。さらに好ましくは、第1整形光学素子31及び第2整形光学素子32が、コリメート位置と非コリメート位置との間でそれぞれ独立して移動可能に構成される。各整形光学素子31,32が非コリメート位置にあるとは、整形光学素子31,32が、光源15から出射した光を非平行光に整形する位置にあることを指す。言い換えると、各整形光学素子31,32が非コリメート位置にあるとは、整形光学素子31,32が、光源15から出射した光の第1方向d1及び第2方向d2のうちのいずれの方向の形状も平行光にならない位置にあることを指す。具体的には、レンズ35によって作られる光の発散点が各整形光学素子31,32の焦点に位置しないときに、各整形光学素子31,32は非コリメート位置にある。
整形光学素子31,32のコリメート位置と非コリメート位置との間の移動は、図示しない制御装置により制御され得る。整形光学素子31,32は、コリメート位置と所定の非コリメート位置とのいずれかに択一的に位置するように、すなわちコリメート位置と所定の非コリメート位置とのいずれかでのみ停止するように、制御されてもよい。また、整形光学素子31,32は、コリメート位置、所定の非コリメート位置、又は、コリメート位置と所定の非コリメート位置との間の任意の位置で停止するように制御されてもよい。
次に、以上に説明した構成からなる本実施形態の照明装置10の動作及び作用について説明する。図3は、図2Aに対応する図であって、照明装置10の動作について説明するための図であり、図4A〜図4Cは、の照明装置10の作用を説明するための図であって、照明装置10と被照明領域Zとを示す斜視図である。
光源15から出射した光(レーザ光)は、整形光学系30に入射する。具体的には、光源15から出射した光は、整形光学系30のレンズ35に入射する。レンズ35は、光源15から出射した光を発散させて発散光束に整形する。レンズ35から出射した光は、第1整形光学素子31に入射する。第1整形光学素子31がコリメート位置に配置されている場合、図1及び図2Bに示されているように、第1整形光学素子31は、レンズ35で発散光束に整形された光の第1方向d1における形状を平行光に整形する。第1整形光学素子31から出射した光は、第2整形光学素子32に入射する。第2整形光学素子32がコリメート位置に配置されている場合、図1及び図2Aに示されているように、第2整形光学素子32は、第1整形光学素子31で整形された光の第2方向d2における形状を平行光に整形する。第2整形光学素子32から出射した光、すなわち整形光学系30から出射した光は、第1方向d1及び第2方向d2の両方において平行光化されて、回折光学素子20に入射する。
回折光学素子20は、整形光学系30(第2整形光学素子32)からの光を回折して、被照明領域Zに向ける。言い換えると、回折光学素子20で回折された回折光は、被照明領域Zに入射し、当該被照明領域Zを照明する。整形光学素子31,32がいずれもコリメート位置に配置されている場合、整形光学系30からの光は、平行光として回折光学素子20に入射する。すなわち、整形光学系30から出射した光は、回折光学素子20の板面に対して同一の角度を有して、回折光学素子20に入射する。このとき、回折光学素子20で回折された回折光は、回折光学素子20に記録された干渉縞パターンに応じた所定の角度範囲を有した照明光として回折光学素子20から出射し、被照明領域Zに入射する。図4Aには、整形光学素子31,32がいずれもコリメート位置に配置されている場合に、所定の角度範囲を有して出射した照明光が、第1方向d1と平行をなすx方向に沿った幅Wx1及びx方向と直交するy方向に沿った幅Wy1を有する被照明領域Z1に入射する例が示されている。なお、x方向及びy方向と直交する方向をz方向とする。すなわち、図示された被照明領域Z1は、x方向に沿った幅Wx1及びy方向に沿った幅Wy1を有する領域である。なお、照明装置10が路面等の水平面を照明する場合、すなわち被照明領域Z(Z1)が水平面に配置される場合、x方向及びy方向は、いずれも水平方向と平行をなす。すなわち、照明装置10が路面等の水平面を照明する場合は、y方向は、x方向と直交し且つ水平方向と平行をなす方向と一致する。
図3には、整形光学素子が非コリメート位置に移動された例として、第2整形光学素子32が光源15側(第1整形光学素子31側)に所定の距離だけ移動され、これにより第2整形光学素子32が非コリメート位置に配置された例が示されている。図3において、コリメート位置に配置されている場合の第2整形光学素子32が破線で示され、この場合の第2整形光学素子32から回折光学素子20へ向かう光の一部の光路が、矢印付きの破線で示されている。
図3に示された例では、第2整形光学素子32が光源15側に所定の距離だけ移動されることにより、第2整形光学素子32の光源15側の焦点が、レンズ35によって作られる光の発散点からずれて、とりわけレンズ35によって作られる光の発散点よりも光源15側にずれて、位置するようになる。したがって、第1整形光学素子31から出射した光は、第2整形光学素子32において第2方向d2における形状が、第2整形光学素子32から離れるにしたがって拡散する形状に整形されて、第2整形光学素子32から回折光学素子20に向けて出射する。この場合、整形光学系30(第2整形光学素子32)から出射した光は、回折光学素子20の板面に対して、第2方向d2においてある角度範囲を有した非平行の光として回折光学素子20に入射する。ここで、回折光学素子20においては、回折光学素子20へ入射した光は、当該回折光学素子20で回折され、当該光の回折光学素子20への入射角度に応じた角度で当該回折光学素子20から出射する。したがって、第2方向d2においてある角度範囲を有した非平行の光として回折光学素子20に入射した光は、当該角度範囲に応じて第2方向d2において拡開された角度範囲を有して当該回折光学素子20から出射する。すなわち、第2整形光学素子32がコリメート位置に配置されている場合の、回折光学素子20から出射する回折光の第2方向d2における角度範囲と比較して、第2整形光学素子32が非コリメート位置に配置されている場合の、回折光学素子20から出射する回折光の第2方向d2における角度範囲は、広くなる。これにより、図4Bに示されているように、第2整形光学素子32が非コリメート位置に配置されている場合の、被照明領域Z2のy方向に沿った幅Wy2は、第2整形光学素子32がコリメート位置に配置されている場合の、被照明領域Z1のy方向に沿った幅Wy1よりも大きくなる。
このようにして、光源15から出射して回折光学素子20へ向かう光を第2方向d2において整形する第2整形光学素子32を、コリメート位置から非コリメート位置へ移動させることにより、回折光学素子20から出射して被照明領域Zを照明する照明光の第2方向d2における出射角度範囲を大きくし、これにともなって被照明領域Z2の幅Wy2を大きくすることができる。
なお、上記では、第2整形光学素子32が光源15側に所定の距離だけ移動され、これにより第2整形光学素子32が非コリメート位置に配置された例について説明したが、これに限られず、第2整形光学素子32が光源15と反対側(回折光学素子20側)に所定の距離だけ移動され、これにより第2整形光学素子32が非コリメート位置に配置されるようにしてもよい。この場合、第2整形光学素子32の光源15側の焦点が、レンズ35によって作られる光の発散点よりも光源15と反対側にずれて位置するようになる。したがって、第1整形光学素子31から出射した光は、第2整形光学素子32において第2方向d2における形状が、第2整形光学素子32から離れるにしたがって縮小する形状に整形されて、第2整形光学素子32から回折光学素子20に向けて出射する。この場合、整形光学系30(第2整形光学素子32)から出射した光は、回折光学素子20の板面に対して、第2方向d2においてある角度範囲を有した非平行の光として回折光学素子20に入射する。したがって、図4Bに示したように、第2整形光学素子32が光源15と反対側の非コリメート位置に配置されている場合の、被照明領域Z2のy方向に沿った幅Wy2は、第2整形光学素子32がコリメート位置に配置されている場合の、被照明領域Z1のy方向に沿った幅Wy1よりも大きくなる。
以上に説明した照明装置10では、第2整形光学素子32がコリメート位置にある状態で光源15を消灯し、第2整形光学素子32をコリメート位置から非コリメート位置へ移動させ、その後光源15を点灯すると、被照明領域Zのy方向に沿った幅が相対的に小さい幅Wy1から相対的に大きい幅Wy2へ切り替わるように視認される表示が可能になる。逆に、第2整形光学素子32が非コリメート位置にある状態で光源15を消灯し、第2整形光学素子32を非コリメート位置からコリメート位置へ移動させ、その後光源15を点灯すると、被照明領域Zのy方向に沿った幅が相対的に大きい幅Wy2から相対的に小さい幅Wy1へ切り替わるように視認される表示が可能になる。また、光源15を点灯したまま第2整形光学素子32をコリメート位置から非コリメート位置へ比較的早い速度で移動させても、同様の表示が可能になる。
また、光源15を点灯したまま第2整形光学素子32をコリメート位置から非コリメート位置へ比較的遅い速度で移動させると、被照明領域Zのy方向に沿った幅が相対的に小さい幅Wy1から相対的に大きい幅Wy2へ連続的に拡大するように視認される表示が可能になる。逆に、光源15を点灯したまま第2整形光学素子32を非コリメート位置からコリメート位置へ移動させると、被照明領域Zのy方向に沿った幅が相対的に大きい幅Wy2から相対的に小さい幅Wy1へ連続的に縮小するように視認される表示が可能になる。
同様に、光源15から出射して回折光学素子20へ向かう光を第1方向d1において整形する第1整形光学素子31を、コリメート位置から、当該コリメート位置に対して光源15側又は光源15と反対側に所定の距離だけ離れた非コリメート位置へ移動させると、図4Cに示されているように、第1整形光学素子31が非コリメート位置に配置されている場合の、被照明領域Z3のx方向に沿った幅Wx2は、第1整形光学素子31がコリメート位置に配置されている場合の、被照明領域Z1のx方向に沿った幅Wx1よりも大きくなる。
この場合、第1整形光学素子31がコリメート位置にある状態で光源15を消灯し、第1整形光学素子31をコリメート位置から非コリメート位置へ移動させ、その後光源15を点灯すると、被照明領域Zのx方向に沿った幅が相対的に小さい幅Wx1から相対的に大きい幅Wx2へ切り替わるように視認される表示が可能になる。逆に、第1整形光学素子31が非コリメート位置にある状態で光源15を消灯し、第1整形光学素子31を非コリメート位置からコリメート位置へ移動させ、その後光源15を点灯すると、被照明領域Zのx方向に沿った幅が相対的に大きい幅Wx2から相対的に小さい幅Wx1へ切り替わるように視認される表示が可能になる。また、光源15を点灯したまま第1整形光学素子31をコリメート位置から非コリメート位置へ比較的早い速度で移動させても、同様の表示が可能になる。
また、光源15を点灯したまま第1整形光学素子31をコリメート位置から非コリメート位置へ比較的遅い速度で移動させると、被照明領域Zのx方向に沿った幅が相対的に小さい幅Wx1から相対的に大きい幅Wx2へ連続的に拡大するように視認される表示が可能になる。逆に、光源15を点灯したまま第1整形光学素子31を非コリメート位置からコリメート位置へ移動させると、被照明領域Zのx方向に沿った幅が相対的に大きい幅Wx2から相対的に小さい幅Wx1へ連続的に縮小するように視認される表示が可能になる。
したがって、照明装置10の第2整形光学素子32を、コリメート位置と非コリメート位置との間で移動可能とすることにより、照明装置10により照明される被照明領域Zの、新たな表示形態を提供することができる。
なお、図4A〜図4Cに示された例では、被照明領域Zを矩形の領域として示しているが、これに限られず、被照明領域Zは任意の形状を有することができる。例えば、被照明領域Zは、各種の図形、絵、写真、模様、文字、記号等、又はこれらの任意の組み合わせ、が観察者から視認され得るように形成されることができる。照明装置10が車両5に設けられる場合、被照明領域Zを視認する観察者は、当該車両5内の乗員であってもよいし、他の車両の乗員や歩行者等の、当該車両5外の者であってもよい。
本実施形態の照明装置10は、被照明領域Zを照明する照明装置10であって、光源15と、光源15から出射した光を回折する回折光学素子20と、光源15と回折光学素子20との間に設けられ、光源15から出射した光を整形する整形光学素子31,32と、を備え、整形光学素子31,32は、光源15から出射した光を平行光に整形するコリメート位置と、光源15から出射した光を非平行光に整形する非コリメート位置と、の間で移動可能である。
このような照明装置10によれば、照明装置10の第2整形光学素子32を、コリメート位置と非コリメート位置との間で移動可能とすることにより、照明装置10により照明される被照明領域Zの、新たな表示形態を提供することができる。
本実施形態の照明装置10において、整形光学素子31,32はシリンドリカルレンズである。
このような照明装置10によれば、整形光学素子31,32を簡易な構成とすることができ、照明装置10の全体の構成の簡素化及び軽量化を図ることができる。また、これにより照明装置10のコストダウンを図ることができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。図5は、第2の実施形態を説明するための図であって、照明装置10を示す側面図であり、図6は、図5の照明装置10の動作について説明するための図である。
図5及び図6に示された例において、整形光学系30は、光源15から出射したレーザ光の光路に沿った順に、レンズ35及び整形光学素子37を有している。整形光学素子37は、レンズ35で生成された発散光束を平行光束へとコリメートする光学素子である。このような整形光学素子37は、例えば凸レンズで構成され得る。また、整形光学素子37は、シリンドリカルレンズ、とりわけ上述の第1の実施形態における整形光学素子31,32のような2つのシリンドリカルレンズの組み合わせ、で構成されてもよい。
図5及び図6に示された照明装置10は、光拡散素子40を更に備えている。光拡散素子40は、当該光拡散素子40の板面に対する一方側から他方側へ透過する光を、異方性拡散することができる光学素子である。このような光拡散素子40としては、例えば、一対の主面を有する板状部材の少なくとも一方の主面に、その板面と平行な一方向に沿って配列され、板面と平行且つ当該一方向と直交する方向に延びる、多数の線状の凸部又は凹部が設けられたものを用いることができる。
本実施形態では、光拡散素子40が、整形光学素子37と回折光学素子20との間の光路に挿入され、整形光学素子37からの光を拡散して回折光学素子20へ向ける挿入位置と、当該挿入位置から退避した退避位置と、の間で移動可能とされている。これにより、光拡散素子40は、挿入位置において、整形光学素子37から当該光拡散素子40に入射した光を、整形光学素子37から出射した光の光軸と直交するいずれかの方向において拡散して、回折光学素子20へ向けて出射することができる。光拡散素子40の、挿入位置と退避位置との間の移動は、図示しない制御装置により制御され得る。
次に、以上に説明した構成からなる本実施形態の照明装置10の動作及び作用について説明する。
図5は、光拡散素子40が退避位置に配置されている状態において照明装置10を示している。図示された例では、光源15から出射しレンズ35で発散光束に整形された光は、整形光学素子37で平行光に整形されて、整形光学素子37から光拡散素子40へ向けて出射する。整形光学系30(整形光学素子37)からの光は、平行光として回折光学素子20に入射する。したがって、第1実施形態において整形光学素子31,32がコリメート位置に配置されている場合と同様に、回折光学素子20に入射した光は、当該回折光学素子20で回折され、第1方向d1と平行をなすx方向に沿った幅Wx1及びx方向と直交するy方向に沿った幅Wy1を有する被照明領域Z1に入射する(図4A参照)。
図6は、光拡散素子40が退避位置から挿入位置に移動された状態において照明装置10を示している。図6において、退避位置に配置されている場合の光拡散素子40が破線で示されている。図示された例において、光拡散素子40が、整形光学素子37から出射した平行光を第2方向d2において拡散可能な向きで、挿入位置に配置された場合、整形光学素子37から出射し光拡散素子40で拡散された光は、回折光学素子20の板面に対して、第2方向d2においてある角度範囲を有した非平行の光として回折光学素子20に入射する。したがって、光拡散素子40が挿入位置に配置されている場合の、被照明領域Z2のy方向に沿った幅Wy2は、光拡散素子40が退避位置に配置されている場合の、被照明領域Z1のy方向に沿った幅Wy1よりも大きくなる(図4B参照)。
また、光拡散素子40が、整形光学素子37から出射した平行光を第1方向d1において拡散可能な向きで、挿入位置に配置された場合、整形光学素子37から出射し光拡散素子40で拡散された光は、回折光学素子20の板面に対して、第1方向d1においてある角度範囲を有した非平行の光として回折光学素子20に入射する。したがって、光拡散素子40が挿入位置に配置されている場合の、被照明領域Z3のx方向に沿った幅Wx2は、光拡散素子40が退避位置に配置されている場合の、被照明領域Z1のx方向に沿った幅Wx1よりも大きくなる(図4C参照)。
したがって、本実施形態においても、照明装置10が、挿入位置と退避位置との間で移動可能である光拡散素子40を有していることにより、上述した第1の実施形態と同様に、照明装置10により照明される被照明領域Zの、新たな表示形態を提供することができる。
本実施形態の照明装置10は、被照明領域Zを照明する照明装置10であって、光源15と、光源15から出射した光を回折する回折光学素子20と、光源15と回折光学素子20との間に設けられ、光源15から出射した光を平行光に整形する整形光学素子37と、光拡散素子40と、を備え、光拡散素子40は、整形光学素子37と回折光学素子20との間の光路に挿入され、整形光学素子37からの光を拡散して回折光学素子20へ向ける挿入位置と、挿入位置から退避した退避位置と、の間で移動可能である。
このような照明装置10によれば、挿入位置と退避位置との間で移動可能である光拡散素子40を有していることにより、照明装置10により照明される被照明領域Zの、新たな表示形態を提供することができる。
図7A〜図9Bを参照して、本発明の照明装置10の適用例について説明する。
図7A及び図7Bは、照明装置10の一適用例を説明するための図である。図示された例では、照明装置10は車両5のヘッドライトを構成している。そのため、車両5の前面の左右両側部にそれぞれ照明装置10が配置されている。整形光学素子31,32がコリメート位置に配置されている場合、又は、光拡散素子40が退避位置に配置されている場合、被照明領域Zは、図4Aを参照して説明した被照明領域Z1で形成される。図7Aに、この場合の被照明領域Z1が示されている。被照明領域Z1は、各照明装置10から、それぞれ車両5の前方の路面に向かって延びるように形成される。図4Aのy方向は車両5の前後方向に一致し、x方向は車両5の左右方向に一致し、z方向は鉛直方向に一致する。
図7Aに示された例において、第2整形光学素子32が非コリメート位置に移動された場合、又は、光拡散素子40が整形光学素子37から出射した平行光を第2方向d2において拡散可能な向きで挿入位置に配置された場合、被照明領域Zは、図4Bを参照して説明した被照明領域Z2で形成される。図7Bに示すように、被照明領域Z2は、各照明装置10から、それぞれ車両5の前方の路面に向かって、図7Aに示した例における被照明領域Z1よりも長く延びるようになる。これにより、図7Aに示した被照明領域Z1と比較して、車両5の前方の路面を遠くまで照明することが可能になる。
図8A及び図8Bは、照明装置10の他の適用例を説明するための図である。図示された例では、照明装置10は車両5の後部に設けられ、被照明領域Zは、車両5の後方の路面上に形成される。整形光学素子31,32がコリメート位置に配置されている場合、又は、光拡散素子40が退避位置に配置されている場合、被照明領域Zは、図4Aを参照して説明した被照明領域Z1で形成される。図8Aに、この場合の被照明領域Z1が示されている。図4Aのy方向は車両5の前後方向に一致し、x方向は車両5の左右方向に一致し、z方向は鉛直方向に一致する。
図8Aに示された例において、第1整形光学素子31が非コリメート位置に移動された場合、又は、光拡散素子40が整形光学素子37から出射した平行光を第1方向d1において拡散可能な向きで挿入位置に配置された場合、被照明領域Zは、図4Cを参照して説明した被照明領域Z3で形成される。図8Bに示すように、被照明領域Z3は、車両5の後方において、路面上に車両5の左右方向(幅方向)に延びる帯状の図形が視認され得るように、被照明領域Z3を形成することができる。
一例として、信号待ち等による車両5の停止時において、車両5の後方の路面上にこのような被照明領域Zを形成することにより、車両5の後方に位置する車両に対して、適切な車間距離を保持可能な停止位置の目安を示すことができる。また、この被照明領域Zに、「STOP」等のメッセージを含ませることも効果的である。このような表示は、後方車両の運転者の目を引き付ける。したがって、追突事故の発生を抑制することができ、これにより交通の安全に寄与し得る。
図9A及び図9Bは、照明装置10のさらに他の適用例を説明するための図である。図示された例では、照明装置10は車両5の前部に設けられ、被照明領域Zは、車両5の前方の路面上に形成される。整形光学素子31,32がコリメート位置に配置されている場合、又は、光拡散素子40が退避位置に配置されている場合、被照明領域Zは、図4Aを参照して説明した被照明領域Z1で形成される。図9Aに、この場合の被照明領域Z1が示されている。図4Aのy方向は車両5の前後方向に一致し、x方向は車両5の左右方向に一致し、z方向は鉛直方向に一致する。
図9Aに示された例において、第1整形光学素子31が非コリメート位置に移動された場合、又は、光拡散素子40が整形光学素子37から出射した平行光を第1方向d1において拡散可能な向きで挿入位置に配置された場合、被照明領域Zは、図4Cを参照して説明した被照明領域Z3で形成される。図9Bに示すように、被照明領域Z3は、車両5の前方において、路面上に車両5の左右方向(幅方向)に延びる帯状の図形が視認され得るように、被照明領域Z3を形成することができる。
一例として、車両5の走行中、例えば停止のための減速中、において、車両5の前方の路面上にこのような被照明領域Zを形成することにより、車両5の速度に応じた制動距離の目安を示すことができる。この場合、車両5の前方を走行する車両よりも手前の路面上に被照明領域Zが形成されているときに、車両5と前方を走行する車両との間に適切な車間距離が保持されているものと判断することができる。これにより、車両5の運転者は、被照明領域Zの形成位置に応じて車速を制御することが可能になる。したがって、この場合にも追突事故の発生を抑制することができ、これにより交通の安全に寄与し得る。
また、他の例として、車両5が走行している道路を横切ろうとする歩行者等の手前で停車し、運転者の操作により車両5の前方の路面上にこのような被照明領域Zを形成することで、当該歩行者等に対して道路を横切ってもよい旨の意思を示す表示を行うことができる。また、この被照明領域Zに、「お先にどうぞ」等のメッセージを含ませることも効果的である。これにより、当該歩行者等に対して道路を横切ってもよい旨の意思を、車両5の運転者が身振り手振りで示す必要がなくなり、車両5の運転者から歩行者等への迅速な意思疎通が可能になる。したがって、歩行者等の横断のための所要時間を減少させ、これにより歩行者等の横断に起因して渋滞が生じることを抑制することができる。
上述の各適用例において、例えば光源15を点灯したまま第1整形光学素子31をコリメート位置から非コリメート位置へ比較的遅い速度で移動させることにより、被照明領域Zのx方向又はy方向に沿った幅が相対的に小さい幅Wx1又はWy1から相対的に大きい幅Wx2又はWy2へ連続的に拡大するような表示ができる。また、光源15を点灯したまま第1整形光学素子31を非コリメート位置からコリメート位置へ比較的遅い速度で移動させることにより、被照明領域Zのx方向又はy方向に沿った幅が相対的に大きい幅Wx2又はWy2から相対的に小さい幅Wx1又はWy1へ連続的に拡大するような表示ができる。このような被照明領域Zの表示は従来存在しておらず、斬新なものである。とりわけ図8A〜9Bを参照して説明した適用例では、車両5の後方又は前方の路面上に、何もないところに、左右に広がるようにして被照明領域Zが突然現れるような表示を行うこともでき、意匠性の高い表示が可能になる。