JP2018183749A - ゼオライト成型体及び低級オレフィンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動層反応の触媒として、衝突耐久性に優れ、エチレンなどの炭化水素原料からプロピレンの製造における選択性が向上し、且つ該選択性が長時間安定的に継続するゼオライト成型体を提供。【解決手段】8員環構造ゼオライトとアルミナを含有するゼオライト成型体。即ち8員環構造のゼオライトと、アルミナ粉末又はアルミナゾルとを液状媒体中で混合し、固体成分が分散したスラリーを製造し、このスラリーを噴霧乾燥して成形体である乾燥粉体のゼオライトを得る方法。8員環構造ゼオライトがCHA型ゼオライトであり、少なくとも一部がシリル化処理されており、その平均粒径が0.1〜50μmであり、安息角が20〜35°であり、嵩密度が0.5〜1.3g/cm3であることが好ましい、ゼオライト成型体。【選択図】なし

Description

本発明は、流動層反応の触媒として使用される、低級オレフィンを製造するためのゼオライト成型体、及びエチレンなどの低級炭化水素を原料としたプロピレンを製造する方法に関する。
流動層反応においては、通常、触媒を充填した反応器の下部から反応ガスを供給し、そのガス流れによって反応器内で触媒粒子が流動し、触媒粒子と反応ガスとが接触することで反応が進行する。ここで、流動層反応に用いられる触媒としては、化学的な性能のみならず、粒子の形状、大きさ、分布、流動性、強度等の、流動層反応に好適な物理的特性を備えていることが求められる。
流動層反応プロセスにおいて、触媒の流動に伴い、触媒粒子間、触媒粒子と反応器、触媒粒子と反応ガスとの衝突や接触による触媒粒子の摩耗や破砕が発生すると、触媒粒子の流動性低下や破砕粒子の飛散が発生するため、流動層反応触媒の性状としては、摩耗や破砕に耐えうるのに充分な機械的強度も求められる。
すなわち、流動層反応に用いる触媒としては、触媒粒子間、触媒粒子と反応器、触媒粒子と反応ガス、との衝突や接触に耐え得る機械的強度(耐摩耗性)を有することが必要である。こうした特性を付与するため、金属、複合酸化物、ゼオライト等の触媒活性成分をシリカ等の担体成分やバインダーとともに成型し、その成型体を焼成する方法が知られている。例えば、特許文献1には、プロピレンを製造する触媒としてゼオライト、シリカ及びリンを特定比率で含有するシリカ成型体が記載されている。特許文献2には、ゼオライトとリン酸アルミニウム含有結合剤とマトリックスからなるゼオライト含有触媒が記載されている。また、特許文献3にはプロピレン製造用触媒としてシリル化処理されたゼオライトが記載されている。さらに、特許文献4には、シリル化されたゼオライトに、リン、ホウ素、及びシリカゾルを添加してゼオライト成型体を形成することが記載されている。
特開2009−221030号公報 特開平4−354541号公報 特開2013−75276号公報 特開2016−175038号公報
しかしながら、これら従前知られた技術、例えば特許文献1、特許文献3では衝突耐久性の低い成型体しか得られておらず、また、特許文献2においては、ゼオライト(ZSM−5)/シリカスラリーとリン酸アルミニウム結合剤からは耐摩耗性の低い、柔らかい触媒しか得られないという問題がある。更に、特許文献1乃至3すべて、プロピレンの製造において、反応の初期から数十時間にわたる長期間、プロピレンの選択率が高レベルに維持できないという問題があった。また、特許文献4に記載のゼオライト成型体の場合、耐摩耗性の向上は見られる一方で、プロピレンの選択率が十分ではなく、また、時間経過に伴いプロピレンの選択率も低下する場合があることが判明した。
上記状況に鑑み、本発明は、流動層反応の触媒として、衝突耐久性に優れ、プロピレンの製造における選択性が向上し、且つ該選択性が長時間安定的に継続するゼオライト成型体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プロピレン製造における流動層反応用の触媒として8員環構造ゼオライト及びアルミナを含んで構成されるゼオライト成型体を用いることで、高い流動性、衝突耐久性、プロピレン製造における選択性、及び安定性その持続性を有することを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下である。
[1]8員環構造ゼオライトとアルミナを含有するゼオライト成型体。
[2]前記8員環構造ゼオライト質量に対するアルミナの質量比が、10以下である[1]に記載のゼオライト成型体。
[3]蒸気圧相当量の水分を含む空気を5.0L/50秒で2時間送風してゼオライト触媒を金属板に衝突させた際に粉砕されるゼオライト成型体の割合が、3質量%以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のゼオライト成型体。
[4]前記8員環構造ゼオライトがCHA型ゼオライトである[1]〜[3]のいずれかに記載のゼオライト成型体。
[5]前記8員環構造ゼオライトの少なくとも一部がシリル化処理されていることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のゼオライト成型体。
[6]前記8員環構造ゼオライトの平均粒子径が0.1〜50μmのゼオライトであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のゼオライト成型体。
[7]安息角が20〜35°である、[1]〜[6]のいずれかに記載のゼオライト成型体。
[8]嵩密度が0.5〜1.3g/cmである、[1]〜[7]のいずれかに記載のゼオライト成型体。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載のゼオライト成型体と、エチレン、エタノール、メタノール、及びジメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する炭化水素原料とを接触させる工程を含む、低級オレフィンの製造方法。
本発明のゼオライト成型体は、優れた衝突耐久性を有し、活性密度が高いゼオライト成型体であり、流動層反応用の触媒としての好適な物性を有しているため、流動層反応によりエチレンなどの炭化水素原料からプロピレンを製造する際の触媒として用いることで、プロピレンを高転化率で収率良くかつ長期間に渡り安定的に製造することができる。
以下本発明をさらに詳しく説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書中でアルミナは、ゼオライトと共にゼオライト成型体を構成する構成要素である。
[ゼオライト成型体]
本発明のゼオライト成型体は、8員環構造ゼオライト(酸素8員環構造ゼオライト)と、アルミナと、を含有する。
ゼオライトの成型体を得るにはゼオライトのみを成型しても触媒強度が不足し、一般的に現実的ではない。そこで、結合剤と呼ばれるバインダーを用いるのが一般的である。特に、プロピレン製造反応用の触媒としてはシリカバインダーを用いるのが一般的である。この理由としては、シリカバインダーのシリカは、プロピレン製造反応において不活性な物質であり、反応への悪影響が殆どないからである。
一方、シリカは極性が低く、ゼオライト粒子を結合させる力が弱く、得られるゼオライト成型体の触媒強度は弱くなる傾向がある。そのため、公知の特許文献1又は特許文献4に記載されるように、リン酸などの鉱酸類を添加し、成型体の触媒強度を高める必要があ
る。しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1又は特許文献4に記載される、リン酸等を添加したゼオライト成型体は、該成型体の強度は高くなる一方で、触媒性能が低下してしまう場合があることが判明した。
一方、結合剤としては、上述のシリカバインダー以外にも、例えば、米国特許第4456780号及び日本国特許第5700376号に記載されるように、MFI等の0.55nm程度の中細孔径ゼオライト、又はFAU等の0.7nmを超える大細孔径ゼオライトにおいて、アルミナバインダーを使用した例も報告されている。アルミナバインダーは極性が高く、ゼオライト粒子を結合させる力が強い。そのため、十分な触媒強度を有するゼオライト成型体が得られやすい傾向がある。
しかしながら、アルミナバインダー中のアルミナは多くの場合、ベーマイトとして存在し、アルミニウム元素は酸性質を有する。そのため、これらのアルミニウム元素が、ゼオライト骨格内のアルミニウムサイトに移動し、強い酸性質を示すようになる。このため、ゼオライト成型体を触媒としてプロピレンを製造する際には、アルミニウム元素の移動により生じた新たな酸性質により、コーク生成が加速され触媒寿命が短くなる、或いはプロピレン収率を下げるような悪影響を及ぼす副反応が起きると考えられている。そのため、MFI等の0.55nm程度の中間細孔径ゼオライト、又はFAU等の0.7nmを超える大細孔径ゼオライトにアルミナバインダーを使用したゼオライト成型体は、プロピレン製造反応に使用する前にスチーミング処理等の前処理を行い、アルミニウムの酸性質を抑える必要があった。
しかしながら、本発明者らの検討によると、スチーミング処理はゼオライト骨格構造に少なからずダメージを与える処理であり、得られるゼオライト成型体の触媒性能を低下させてしまう傾向があり、さらには、酸性質の抑制処理のためのコストがかかるといった課題が存在することが判明した。従って、当該課題を考慮すると、ゼオライト成型体において、結合剤としてアルミナバインダーを使用することは好ましくないと考えられるが、本発明者らの検討によると、驚くことに、8員環構造ゼオライトにおいては、結合剤としてアルミナバインダーを用いても、スチーミング処理を施すことなく、触媒性能の低下を抑えたゼオライト成型体を提供できることが判明した。この理由は明らかではないが、8員環構造ゼオライトの細孔径に由来するものと考えられる。すなわち、8員環構造ゼオライトの細孔径は0.38nm程度であり、MFI又はFAU等のゼオライトの細孔径と比較してもかなり小さい。そのため、アルミナバインダーからゼオライト骨格内へのアルミニウム元素が入り込む量を抑えることができ、その結果、スチーミング処理等のバインダー由来の酸性質の追加的抑制処理を施すことなく、触媒性能の低下が少ない触媒寿命の長い、且つ触媒強度の十分なゼオライト成型体を提供できるものと考えられる。
本発明に係るゼオライト成型体中、8員環構造のゼオライト質量に対するアルミナの質量比(アルミナ/ゼオライト)は特段の制限は無いが、優れた衝突耐久性を維持するために、10以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。また、0より大きく、0.2以上であることが好ましく、0.33以上であることがより好ましい。
また、本発明に係るゼオライト成型体を構成するゼオライトは、後述するように好ましくは、アルミノシリケート又はシリコアルミノフォスフェートである。
ゼオライト成型体を構成するゼオライトは、アルミノシリケートの場合、ゼオライト成型体全体のSiOに対するAl質量比は、特段の制限はないが、好ましくは0.1〜30であり、さらに好ましくは0.15〜20であり、特に好ましくは0.2〜15である。
一方、ゼオライト成型体を構成するゼオライトが、シリコアルミノフォスフェートの場合、ゼオライト成型体全体のSiOに対するAl質量比は、特段の制限はないが、好ましくは1〜300であり、さらに好ましくは3〜200であり、特に好ましくは8〜150である。SiO/Al質量比が小さすぎると、プロピレンの製造における選択性が低下する場合がある。大きすぎると、ゼオライト成型体の摩耗損失が大きくなる傾向にある。なお、ここで言うAlは、ゼオライト中のAl及びゼオライト形成体を構成するアルミナバインダー中のAlの両方を含むものであるが、助剤として添加した粘土鉱物を構成するAlは含まないものとする。
ここで、ゼオライト成型体のSiO/Alモル比は、ゼオライト成型体をアルカリ水溶液に溶解し、得られた溶液をプラズマ発光分光分析法により分析することにより求めることができる。
上述の通り、本発明に係るゼオライト成型体に含まれるゼオライトは8員環構造ゼオライト(酸素8員環構造ゼオライト)である。この8員環構造ゼオライトはゼオライトのもつ細孔がTO単位(TはSi、P、Ge、Al、Ga等)8個からなる環構造を意味する。このような構造を取ることにより、ゼオライトの細孔径がプロピレン選択率を高くできる範囲になると考えられる。
このように細孔が酸素8員環で構成されているゼオライトの骨格構造としては、International Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AEI、AFX、CAS、CHA、DDR、ERI、ESV、GIS、GOO、ITE、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、等が挙げられる。
これらのうち、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、LEV、RHO、RTHが好ましく、CHA又はAEI、ERIがさらに好ましく、中でもCHA構造が特に好ましい。
CHA構造のゼオライトとしては、構成元素がケイ素及びアルミニウムからなるアルミノシリケート、アルミニウム及びリンからなるアルミノホスフェート(ALPO)、ケイ素、アルミニウム及びリンからなるシリコアルミノホスフェート(SAPO)等が挙げられる。この中でもアルミノシリケート、又はシリコアルミノホスフェートが好ましく、アルミノシリケートがより好ましい。
上記ゼオライトの細孔(チャネル)の径は、一般には前記のInternational Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystalloghaphic free diameter of the channels)で示され、その好ましい範囲は、上限が0.5nm以下、より好ましくは0.4nm以下で、下限は0.2nm以上、より好ましくは0.3nm以上である。
ゼオライトの細孔径が0.5nmを超えると、プロピレン以外の副生成物(ブテン、ペンテン等)が多くなって、選択率が低下する傾向となる。一方、細孔径が0.2nm未満ではこの細孔をエチレンもプロピレンも通過できなくなってエチレンと触媒活性点との接触頻度が少なくなって反応速度が低下する傾向となる。
細孔径を上記範囲とすることにより、副反応が抑えられプロピレンの選択率を高くすることができる。
8員環構造ゼオライトの平均粒子径は、0.05μm〜50μmであることが好ましく、0.1μm〜50μmであることも好ましく、0.3μm〜20μmであることがより好ましく、0.5μm〜4μmであることが更に好ましい。
該ゼオライトの平均粒子径が大きすぎると、ゼオライト成型体の衝突耐久性が低下する傾向がある。該ゼオライトの平均粒子径が小さすぎると、ゼオライトの結晶性が低下し、ゼオライト成型体の触媒活性が低下する傾向となる。平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定することができる。なお、ここでいう平均粒子径とは、上記分析計により紛体状のゼオライトの粒度分布(一定粒度区間内にある粒子の割合)を測定し、その全体積を100%として粒度分布の累積を求め、累積が50%となる点の粒径、すなわち、累積平均径(中心径、Median径)を意味する。
本発明のゼオライト成型体に含まれる8員環構造ゼオライトは凝集型でも非凝集型でもよい。
本発明のゼオライト成型体に含まれる8員環構造ゼオライトは、後述の通り、シリル化処理されたゼオライトであることが好ましい。シリル化処理された8員環構造ゼオライトを含むゼオライト成型体とすることによりプロピレンの製造における選択性がより向上した触媒として作用することが可能となる。
また本発明のゼオライト成型体を触媒とする場合は、通常、プロトン交換型となるが、その一部がナトリウム、カリウム等の長周期型周期表第1族元素(水素を除く)やマグネシウム、カルシウム等の長周期型周期表第2族元素に交換されていてもよい。
なお、本発明に用いるゼオライトは、一般に用いられる水熱合成法により調製することが可能である。また水熱合成法にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸等で組成を変えたものも使用できる。
上記アルミナバインダーはアルミニウムの酸化物及び水酸化物の少なくとも1つを含有する。ここで、アルミニウムの酸化物及び水酸化物の少なくとも1つとしては、例えば、γ−アルミナ、ベーマイトなどの粉末アルミナ、水酸化アルミニウム及びアルミナゾルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記粉末アルミナ、アルミナゾル中のアルミナの平均粒子径は、ゼオライト成型体の耐摩耗性や嵩密度に密接に関連し、特にスラリー中での平均粒子径が重要である。スラリー中での平均粒子径がある程度小さいほど、ゼオライト粒子とアルミナの充填状態がより均一で緻密になって、ゼオライト成型体の耐摩耗性が向上し、嵩密度も適度となる傾向にある。好ましいスラリー中の平均粒子径は、10nm〜300nm、より好ましくは10〜200nmである。
また、本発明に係るゼオライト成型体は、8員環構造ゼオライトとアルミナ以外にも、他の助剤類を含有していてもよい。例えば、ゼオライト成型体は、カオリン等の粘土鉱物、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア等を含んでいてもよい。これらの含有量は成型体全体の質量に対して70質量%以下であることが好ましく、50質量%であることがより好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
また、本発明のアルミナ成型体はリン及び/又はホウ素を含有していてもよい。
アルミナ成型体を構成するゼオライトの質量に対するリンとホウ素の合計質量は特段の制限はないが、好ましくは0質量%〜7.5質量%であり、さらに好ましくは0質量%〜5.0質量%であり、特に好ましくは0質量%〜3.0質量%である。前記質量比が大きすぎると流動性が低下し、また触媒の活性、触媒寿命が低下する傾向がある。
前記質量比はゼオライト成型体をアルカリ水溶液に溶解し、得られた溶液をプラズマ発光分光分析法により、ケイ素、アルミニウム、リン及びホウ素それぞれを定量分析するこ
とにより求めることができる。
また、ゼオライト成型体がリン及びホウ素を含有する場合、ゼオライト成型体中のリンとホウ素の合計質量に対するホウ素の質量は好ましくは30質量%〜80質量%であり、さらに好ましくは35質量%〜75質量%であり、特に好ましくは40質量%〜75質量%である。前記質量比が小さすぎると、リンが反応性能に影響を及ぼしプロピレンの選択性が低下する傾向にあり、大きすぎるとゼオライト成型体の形状が悪化して流動性が低下する可能性がある。
また、蒸気圧相当量の水分を含む空気を5.0L/50秒で2時間送風してゼオライト触媒を金属板に衝突させた際に粉砕されるゼオライト成型体の割合(以下、磨耗損失と称す)は、小さいほど衝突耐久性に優れていることを意味する。なかでも、ゼオライト成型体の磨耗損失が3質量%以下であると、摩耗や破損の極めて少ない、衝突耐久性に優れ、機械的強度に優れたプロピレン製造反応時のロスが少ないゼオライト成型体となり、流動床用触媒として好適に用いることができる。なかでも、ゼオライト成型体の磨耗損失は2.5質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のゼオライト成型体は、安息角が、好ましくは20°〜35°であり、より好ましくは22°〜34°であり、更に好ましくは24°〜33°であり、特に好ましくは25°〜32°である。安息角が小さすぎると、流動性が過剰となるため、取り扱い性が悪化する傾向にあり、大きすぎると、流動性が低下しゼオライト成型体間のブリッジングが発生し易くなる傾向にある。
嵩密度は、ゼオライト成型体の球状度又は流動状態の指標として重要である。本発明のゼオライト成型体は、嵩密度が、好ましくは0.50g/cm〜1.30g/cm、より好ましくは0.53g/cm〜1.25g/cm、特に好ましくは0.55g/cm〜1.20g/cmである。前記範囲内の嵩密度を有するゼオライト成型体は、流動層反応における触媒として用いた際に、反応ガス線速が向上し、触媒粒子と反応ガスとの物質移動・熱伝達がより良好となる傾向にある。嵩密度が小さすぎると、歪な形状の触媒粒子や、割れ、欠け、中空の触媒粒子の割合が多くなる傾向にあり、大きすぎると、比表面積が低下し触媒としての化学的性能が不充分となる傾向にある。
[ゼオライト成型体の製造方法]
本発明のゼオライト成型体は、特段の制限はないが、(i)原料混合物の調製工程と、(ii)乾燥工程と、により製造することができる。
[工程(i):原料混合物の調製工程]
原料調製工程では、原材料として固体成分である、8員環構造のゼオライトと、アルミナ粉末又はアルミナゾルと、を液状媒体中で混合し、固体成分が分散したスラリーを製造する。なお、液状媒体は、水が好ましい。なお、助剤類を含有するゼオライト成型体を製造する場合、上述の原材料に助剤類を加えて、液状媒体中で分散又は溶解させてスラリーを形成すればよい。同様に、ゼオライト成型体中に、リン及び/又はホウ素を含有するゼオライト成型体を製造する場合、上述の原材料に、リン化合物及び/又はホウ素化合物を加えて、液状媒体中で分散又は混合させてスラリーを形成すればよい。
以下、液状媒体として水を用いた場合を例にとって説明する。
固体成分であるアルミナは、アルミナ粉体である場合は水に分散させたアルミナゾルとして取り扱うことが混合性も良好となり好ましい。固体成分である8員環構造ゼオライトは、粉体のままでも、水又はアルミナゾルの一部に分散・懸濁させたスラリーとして用いても構わない。更に、原材料として、助剤類、リン化合物、ホウ素化合物等を追加する場
合、これらはそのまま用いても、予め水などに溶解・分散させた上で用いてもよい。
アルミナ粉末、又はアルミナゾルは、酢酸、塩酸、硝酸等で安定化させた粉末状アルミナ、又はアルミナゾルを用いることができる。好ましくは酢酸で安定化させた粉末状アルミナ、又はアルミナゾルである。また、粉末状アルミナ、又はアルミナゾルは、アルミノシリケート、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、カオリン、珪藻土等とともに用いることができ、これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
助剤類としては、特段の制限はないが、上記で挙げた助剤類が挙げられる。
リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、過リン酸アンモニウム、次亜リン酸アンモニウム、五酸化リン、ホスフィン類等を用いることができる。好ましくは、リン酸、リン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸、ポリリン酸等の水溶性のリン化合物であり、より好ましくはリン酸である。これらは単独、混合物、又は水溶液等として用いることができる。
ホウ素化合物としては、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、三臭化ホウ素、三酸化二ホウ素、三フッ化ホウ素、リン酸ホウ素、けい化ホウ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素等を用いることができる。好ましくは、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、三臭化ホウ素、三酸化二ホウ素、三フッ化ホウ素等の水溶性のホウ素化合物であり、より好ましくはホウ酸である。これらは単独、混合物、又は水溶液等として用いることができる。
ゼオライト成型体の原料混合物を調製する際の、上記原料の混合順序としては特に制限されない。アルミナゾルにゼオライトを添加し、その混合物にリン化合物、ホウ素化合物を加えてもよく、また、予め水によく分散させた粉末状アルミナスラリーにリン化合物、ホウ素化合物を添加し、その混合物にゼオライトを加えてもよい。また8員環構造ゼオライトは、8員環構造ゼオライト粉体、水に8員環構造ゼオライトを分散・懸濁させたスラリー、又は、アルミナゾルの一部に8員環構造ゼオライトを分散・懸濁させたスラリーとして用いることが好ましい。リン化合物、ホウ素化合物はそのまま用いてもよく、あらかじめ水などに分散させて用いてもよい。
また、原料混合物中には、原料混合物のpHを好適に調整するため酸を適宜加えてもよい。この場合、用いることができる酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、好ましくは硝酸である。原料混合物のpHは、好ましくは0.5〜10であり、より好ましくは0.5〜4である。これらの原料は、一般に撹拌機を備えた槽状の容器に投入され、撹拌・混合が行われて、均一なスラリーが調製される。
原料混合物の固形分質量濃度は、特段の制限はないが、好ましくは5質量%〜70質量%、より好ましくは10質量%〜50質量%である。
上記の濃度範囲とすることで、混合・撹拌を適切に行うことができ、またスラリーの取扱い性も良くなる。
原料混合物の攪拌時間としては、好ましくは0.5時間〜50時間、より好ましくは1時間〜5時間である。攪拌時の混合物の温度としては、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは15℃〜70℃、さらに好ましくは15℃〜40℃である。必要に応じて加熱することによって、原料混合物の粘度を上げてもよい。
また、ゼオライト成型体の形状をより真球状にする目的で、原料混合物の表面張力を調整する界面活性剤を加えてもよい。
[工程(ii):乾燥工程]
乾燥工程は、上記原料混合物の調製工程で製造したスラリーを噴霧乾燥して乾燥粉体を得る工程である。
原料調製工程で製造されたスラリーは調製後直ちに噴霧乾燥しても、あるいは調製後に8員環構造ゼオライトへの助剤等の吸着量を制御するために所定時間混合・撹拌を行った後に噴霧乾燥してもよい。
噴霧乾燥工程におけるスラリーの噴霧は、回転円盤方式、二流体ノズル方式又は高圧ノズル方式等の方法を採用することができるが、回転円盤方式又は二流体ノズル方式で行うことが好ましい。
乾燥熱源は、水蒸気や電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。乾燥機入口の乾燥気流の温度(以下「入口温度」と記す)は、100℃を超えて400℃以下とすることが好ましい。より好ましい入口温度は150℃〜350℃である。
乾燥気流の流通方式は並流(パラレルフロー)方式でも、向流(カウンターフロー)方式でもよいが、乾燥効率や乾燥機内壁への付着防止等の観点から、並流(パラレルフロー)方式が好ましい。
また、乾燥機出口の乾燥気流の温度(以下「出口温度」と記す)は、80℃を超えて250℃以下とすることが好ましく、より好ましくは85℃〜200℃である。なお、当然のことながら、入口温度は出口温度より高くなる。
乾燥機入口温度又は出口温度が上記範囲よりも低い場合は、乾燥が不十分となって乾燥機内壁に付着物ができたり、あるいは粒子が相互に融着したような異形粒子が生成したり、あるいは得られる粒子の強度が不十分となって、使用時に粉化が著しくなることがある。一方、上記範囲を超えて乾燥機の入口温度又は出口温度が上記範囲を超えて高い場合は、エネルギー的に不利となる。
上記入口温度と出口温度との温度差(△t)は、50℃を超えて300℃以下であることが好ましく、より好ましい温度差は60℃〜250℃である。この温度差が50℃以下では乾燥効率が低く、設備能力を十分活用できないという問題点があり、一方300℃を超える場合は、触媒の熱履歴が過剰となって、得られる触媒が流動に適さない形状になる恐れがある。
乾燥を良好に行い、流動床反応器に用いるために好適な形状及び強度の触媒粒子とするために、噴霧乾燥工程における供給スラリー中の水分と乾燥気流との質量比率は、0.005〜0.2となるように乾燥を行う必要がある。この範囲未満では乾燥気流が多量に必要となりエネルギー効率が低下し、この範囲を超えて水分量が多くなると乾燥が十分進まず、乾燥機内への付着生成や、得られる粒子の強度不足などの問題が発生することがある。
噴霧乾燥を行う装置の形状に特に制限はないが、一般には上部が円筒形の直胴部となり、下部が逆円錐状のコーン部となる形状のものが、乾燥粒子が取り出しやすく、また噴霧液滴の乾燥もしやすいので好ましい。またその垂直方向の最大長と水平方向の最大長の比(垂直方向最大長/水平方向最大長)の範囲(以下「L/D」と記す)は、0.1〜10である。L/Dがこの範囲を外れると設備の製造が難しくなったり、運転や設備の保守・管理に手間が掛かったりするようになる。
従来法において、スラリーを噴霧乾燥する際に、乾燥された粉体粒子の破壊や粒子表面の開孔、陥没が生じ、形状が不定で脆弱な粒子となる場合があることが知られている。これは、液滴からの液体の蒸発により液滴が収縮する一方、液滴表面の固化が進行して、液
滴内部の液体の圧が高くなり、突沸するような形での蒸発が起こって粉体粒子の破壊(割れ、欠け)や粉体粒子表面の開孔が生じたり、粉体粒子の表面が陥没したりするためであると考えられている。
本発明においては、特定の原材料及び組成のスラリーを所定の条件で噴霧乾燥を行うため、8員環構造ゼオライトとアルミナゾル中のアルミナ粒子とが緊密に接触して噴霧乾燥された触媒粒子全体の強度が向上するため、上記のような問題が起きにくくなる。
[工程:焼成工程]
本発明のゼオライト成型体の製造方法においては、より衝突耐久性の高いゼオライト成型体を得ることを目的として、必要に応じて、前記乾燥粉体を焼成する工程をさらに含んでもよい。
焼成工程は上記噴霧乾燥工程で得られた乾燥粉体を加熱して、ゼオラオイト成型体を賦活したり、また粒子の硬度を向上して衝突耐久性を付与したりする工程である。
焼成工程は、マッフル炉、回転炉、トンネル炉、管状炉、又は流動焼成炉などを用いて行うことができる。
焼成温度は400℃〜900℃であり、好ましくは450℃〜800℃、より好ましくは500℃〜700℃である。焼成温度が上記範囲未満では触媒の活性化が不十分となって、プロピレンの選択率が不足したり、エチレンの転化率が低下したりすることがある。焼成温度が上記範囲を超えて高くなると、賦活効果の向上は見られず、一方でゼオライト結晶の崩壊等が起きて、触媒性能が低下してしまうことがある。
焼成時間は0.1時間〜10時間である。焼成時間が0.1時間未満では十分な焼成効果が得られないことがある、一方焼成時間が10時間を超えても触媒性能の向上は見られず、生産性が低下することとなる。
焼成工程は、酸素雰囲気下、大気雰囲気下、イナート雰囲気下、及び真空下等のいずれの条件下でも実施することができる。
焼成工程は反復して実施してもよい。
また、製造されたゼオライト成型体におけるアルミナ/8員環ゼオライト質量比率及びSiO/Alモル比は、いずれも概ね仕込みの組成を維持する。
[工程:シリル化処理工程]
本発明のゼオライト成型体の製造方法においては、プロピレンの製造における選択性の向上を目的として8員環構造ゼオライトを予め、シリル化処理する工程をさらに含んでもよい。
シリル化処理はアルコキシシランを用いる液相シリル化やクロロシランを用いる気相シリル化があるが、いずれも常法に従って行えばよい。
例えば液相シリル化は、テトラエトキシシラン等を所望の溶媒に溶解するかまたはそのまま8員環構造ゼオライトに対して0.1〜3質量倍程度添加し、20℃〜140℃で0.5時間〜24時間程度処理することで行うことができる。処理後、ろ過・洗浄を行い、次いで乾燥することによりシリル化処理されたゼオライトを得ることができる。
また気相シリル化はテトラクロロシラン等を用いて、20℃〜400℃程度の条件で8員環構造ゼオライトに対して蒸着シリカ量が1質量%〜20質量%程度となるように行い、シリル化処理された8員環構造ゼオライトとすることができる。
シリル化処理された8員環構造ゼオライト中のSiO/Alモル比はアルミノシリケートの場合、15〜2000であり、好ましくは25〜1500であり、より好ましくは25〜1200、更に好ましくは30〜1000である。シリコアルミノフォスフェートの場合、0.2〜100であり、好ましくは0.25〜80であり、より好ましく
は0.25〜50である。ここで、シリル化処理された8員環構造ゼオライトのSiO/Alモル比は、シリル化処理された8員環構造ゼオライトをアルカリ水溶液に溶解し、得られた溶液をプラズマ発光分光分析法により分析することにより求めることができる。
尚、8員環構造ゼオライトがシリル化処理されている場合の該8員環構造ゼオライトの平均粒径も、上述した好ましい8員環構造ゼオライトの平均粒径と同様に、好ましくは0.05μm〜50μm、より好ましくは0.3μm〜20μm、さらに好ましくは0.5μm〜4μmである。シリル化処理された8員環構造ゼオライトの平均粒径を前記範囲とすることにより、衝突耐久性、触媒活性に優れるゼオライト成型体とすることができる。前記平均粒径に調整するためには、例えばシリル化処理工程によりシリル化処理された8員環構造ゼオライトを粉砕する方法、ゼオライトを粉砕した後にシリル化処理する方法が挙げられるが、平均粒径の調整が可能であれば前記二方法のどちらか又は併用により行っても構わない。
<プロピレンの製造方法>
上記製造方法で製造したゼオライト成型体は、本質的に、種々の炭素数2〜4の低級オレフィンから炭素数の異なる低級オレフィンを製造するに適した触媒となる。よって、特に限定はされないが、本発明方法で製造したゼオライト成型体を触媒として用いて、顕著な効果が発現した触媒反応例として、エチレン及び/又はエタノール、メタノール、ジメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する炭化水素原料からプロピレンを製造する方法について、エチレンを主原料とした例を以下に簡単に説明する。
1.原料
上記の通り、本発明のゼオライト成型体を触媒として用いてプロピレンを製造するための原料としてエチレンが挙げられる。
触媒に供給される仕込原料中の炭化水素化合物を基準としたエチレン換算含有率は特に限定されないが、生産性の観点から、エチレン換算含有率が20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。
上記仕込み原料中には、エチレンの他に、メタン、エタン、プロパン等のアルカン類及びプロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィン類等が含まれていてもよく、この他にもアセチレン等のアルキン類、エタノール、メタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類等が含まれていてもよい。
その他、水(水蒸気)、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等も、本発明の触媒の性能を阻害しない限り、含まれていてもよい。
2.プロピレンの製造方法
本発明のゼオライト成型体を使用してプロピレンを製造するに際しては、該ゼオライト成型体を装入した流動床反応器に上記のエチレン又はエチレンを含有する原料混合物を供給して、接触的にエチレンをプロピレンに転化する方法を用いるのが好ましい。
以下に本ゼオライト成型体を用いたプロピレンの製造方法について説明する。
(1)ゼオライト成型体の水蒸気処理
エチレンの供給を開始する前に、例えば、本発明のゼオライト成型体を300℃〜900℃の温度で水蒸気分圧0.01気圧以上の条件で水蒸気処理することができる。この水蒸気の存在下での加熱処理では、水蒸気以外のガス成分として窒素及び/又は酸素等を含んでいてもよい。
水蒸気処理を行うことにより、本発明のゼオライト成型体を用いたプロピレンの製造において、ゼオライト成型体への炭素質成分の沈着(コーキング)によるゼオライト成型体の劣化を抑制することができ、プロピレン収率・収量が向上する場合がある。
(2)反応条件
本発明のゼオライト成型体を用いるプロピレンの製造方法における反応温度は、好ましくは300℃〜500℃の範囲で、300℃〜400℃の範囲であることがより好ましい。また反応圧力は、好ましくは、0.01MPa〜1MPa(絶対圧)の範囲で、0.1MPa〜0.7MPa(絶対圧)の範囲であることがより好ましい。
反応器へのエチレンの供給速度は、本発明のゼオライト成型体の質量基準(g−zeo)の空間速度(WHSV)として、好ましくは1〜100mmol/(g−zeo・h)であり、5〜70mmol/(g−zeo・h)とすることがより好ましい。
上記の条件で、流動床反応器におけるガスの流通速度を、0.1m/秒〜1.5m/秒、好ましくは0.1m/秒〜1.0m/秒、より好ましくは0.2m/秒〜1.0m/秒の範囲とすることにより、プロピレンを効率よく安定に製造することができる。
(3)流動床反応器
本発明のゼオライト成型体を用いるプロピレンの製造方法においては、反応器として流動床反応器を用いることが好ましい。
流動床反応器としてはフルードベッド型反応器とライザー型反応器とがあり、そのいずれも用いることができるが、ゼオライト成型体の分離・回収やプロピレンを効率よく安定に製造する観点から、フルードベッド型反応器を用いることが好ましい。
フルードベッド型反応器の構造としては、原料ガス供給のためのガス分散管を反応器底部及び/又は反応器下部に有し、ゼオライト成型体の濃厚層と希薄層に必要に応じて徐熱用の冷却コイルを有し、また、反応ガスとゼオライト成型体を分離するためのサイクロンを反応器内の上部に有する反応器が挙げられる。また、サイクロンは反応器の外部に設置することもできる。
(4)エチレン転化率
本発明のゼオライト成型体を用いるプロピレンの製造方法におけるエチレンの転化率はガスクロマトグラフィーを用いて生成物を分析し、下記式(1)によって求めることができる。
エチレン転化率(%)=〔[反応器入口エチレン(モル)−反応器出口エチレン(モ
ル)]/反応器入口エチレン(モル)〕×100 (1)
(5)プロピレンの選択率
本発明のゼオライト成型体を用いるプロピレンの製造方法において、プロピレンの選択率はガスクロマトグラフィーを用いて分析し、下記式(2)によって求めることができる。
プロピレン選択率(%)=〔反応器出口プロピレン由来カーボン(モル)/[反応器出口総カーボン(モル)−反応器出口エチレン由来カーボン(モル)]〕×100 (2)
(6)プロピレンの収率
プロピレンの収率は、前記エチレン転化率と、生成したプロピレンの選択率との積により求められ、次の式(3)により算出できる。
プロピレン収率(%)=
(エチレン転化率(%)×プロピレン選択率(%))/100 (3)
(6)原料の回収・再使用
本発明のゼオライト成型体を用いるプロピレンの製造方法においては、反応器からの流
出ガスからプロピレンを分離した後のガス流は一部の高沸点成分を除去した上で、反応器に循環して再使用することが好ましい。
流動床反応器の流出ガスからプロピレンを分離する方法としては、蒸留分離等を用いればよく、またプロピレンを分離した後のガス流はエチレン等の低沸成分及びブテン等の高沸成分を含んでいるので、これらは一部の更に沸点の高い成分を除去した上で原料ガスの一部として上記流動床反応器に循環・再使用することが効率的である。
なお、再使用する量や比率については特に限定されず、プロピレンの生産量に応じて調整すれば十分である。
以下に実施例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[各種物性の測定方法]
各種物性の測定方法は下記の通りである。
(1)ゼオライト成型体の摩耗損失
ゼオライト成形体の耐摩耗性の指標である摩耗損失は、噴霧式流動装置を用いて測定した。噴霧式流動装置は、ガス導入口に0.7mm孔一個を有するオリフィスを設置した内径37.1mm長さ700mmの「粉体上昇部」、内径133.8mm長さ580mmの「粉体分離部」、「微粉末捕集部」とからなる。「粉体上昇部」にはオリフィスから10mmの位置に20mm径で60°に開いたコーン状の「金属遮蔽部」を設置する。「粉体分離部」に140℃で乾燥させたゼオライト成型体25cc(仕込み重量(A))を投入し、次いで「ガス導入口」より蒸気圧相当量の水分を含む空気を5.0L/50秒で2時
間送風し、ゼオライト成型体を流動させる。流動したゼオライト成型体は「金属遮蔽部」に衝突し、その一部は破砕され微粉となる。微粉となったゼオライト成型体は「微粉末捕集部」に回収される。回収された微粉末ゼオライト成型体重量(B)を測定し、下式に従って、摩耗損失を求めた。
摩耗損失(質量%)=B/A×100
尚、摩耗損失が小さいほど衝突耐久性が良好である。
(2)ゼオライト成型体の嵩密度
JIS規格Z−2504かさ比重測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用い、付属のマニュアルに従い、ゼオライト成型体の嵩密度を測定した。
(3)ゼオライト成型体の安息角
ゼオライト成型体の安息角は、三輪式円筒回転形流動表面角測定器(筒井理化学器械株式会社製)を用い、回転数10rpmで、造粒便覧(日本紛体工業協会編、オーム社)に記載されている傾斜角法を用いて測定した。
(4)エチレン転化率、プロピレン選択率、プロピレン収率
上述の方法により算出した。
[触媒の調製方法]
(1)シリル化処理ゼオライト
米国特許第4,544,538号公報に記載の方法で合成したCHA構造を有するプロトン型のアルミノシリケート(SiO/Al=25、ゼオライト)5.0kgにトルエン43.0kgを加え、室温で1時間撹拌した。その後、テトラエトキシシラン2.97kgを加え、70℃で3時間加熱することでシリル化処理を行った。処理後、ろ過・洗浄を行い、得られたアルミノシリケートを80℃で減圧乾燥した。
次いで、上記でシリル化処理されたゼオライトをジェットミルにて解砕した。解砕したゼオライトをレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定したところ、平均粒子径は2.6μmであった。以下、前記解砕したゼオライトをゼオライト1と称する。
(実施例1)
前記「ゼオライト1」をアルミナバインダーとしてCataloid AP−1(日揮触媒化成社製、アルミ濃度 71.0質量%)を予め水に分散させたスラリーに添加してスラリーを調製し、プリス社製スプレードライヤー(TR160、噴霧方式:回転円盤式)を使用して入口ガス温度150℃、出口ガス温度90℃の条件で噴霧乾燥を行った後、550℃で8時間焼成を行い、ゼオライト成型体1を調製した。得られたゼオライト形成体1の摩耗損失、嵩密度及び安息角を上記の測定方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
次いで、固定床流通反応装置を用い、ステンレス製反応管に前記ゼオライト成型体1を充填した。エチレンの空間速度がゼオライト質量基準で50mmol/(g−zeo・h)、水素の空間速度がゼオライト質量基準で50mmol/(g−zeo・h)になるように反応器に供給し反応・再生繰り返し評価を行った。反応積算時間が20時間に到達した時の生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレン転化率は89.1%、プロピレン選択率は80.4%、プロピレン収率は71.6%であった。反応積算時間が400時間に到達した時の生成物を分析したところ、エチレン転化率は81.0%、プロピレン選択率は83.3%、プロピレン収率は67.5%であった。
(実施例2)
前記「ゼオライト1」をアルミナバインダーとしてアルミゾル−A2(川研ファインケミカル社製、アルミナ濃度 9.9質量%)に添加してスラリーを調製したこと以外は上記実施例1と同様にして噴霧乾燥及び焼成を行ってゼオライト成型体2を調製し、同様の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
ゼオライト成型体1の代わりに、ゼオライト成型体2を用いた以外は、実施例1と同一の条件でプロピレン製造の反応・再生繰り返し評価を行った。反応積算時間が20時間に到達した時の生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレン転化率は90.0%、プロピレン選択率は81.8%、収率は73.6%であった。反応積算時間が400時間に到達した時の生成物を分析したところ、エチレン転化率は84.9%、プロピレン選択率は84.4%、プロピレン収率は71.7%であった。
(比較例1)
前記「ゼオライト1」にシリカゾルとしてスノーテックスNXS(日産化学工業株式会社製、スラリー濃度 14.5質量%)、リン酸(和光純薬工業株式会社、試薬特級)、及びホウ酸(和光純薬工業株式会社、試薬特級)を添加してスラリーを調製し、ニロアトマイザー社製モービルマイナー型スプレードライヤー(噴霧乾燥方式:回転円盤式)を使用して入口ガス温度250℃、出口ガス温度150℃の条件で噴霧乾燥を行った後、550℃で8時間焼成を行い、ゼオライト成型体3を調製した。得られたゼオライト形成体3の摩耗損失、嵩密度及び安息角を上記の測定方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。次いで、固定床流通反応装置を用い、ステンレス製反応管に前記ゼオライト成型体3を充填した。エチレンの空間速度がゼオライト質量基準で35mmol/(g−zeo・h)、水素の空間速度がゼオライト質量基準で35mmol/(g−zeo・h)になるように反応器に供給し反応・再生繰り返し評価を行った。反応積算時間が20時間に到達した時の生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレン転化率は89.4%、プロピレン選択率は86.1%、プロピレン収率は77.0%であった。反応積算時間が400時間に到達した時の生成物を分析したところ、エチレン転化率は69.5%、プロピレン選択率は88.8%、プロピレン収率は61.7%であった。
(比較例2)
前記「ゼオライト1」にシリカゾルとしてスノーテックスNXS(日産化学工業株式会社製、スラリー濃度 14.5質量%)、リン酸(和光純薬工業株式会社、試薬特級)、及びホウ酸(和光純薬工業株式会社、試薬特級)を添加してスラリーを調製し、ニロアトマイザー社製モービルマイナー型スプレードライヤー(噴霧乾燥方式:回転円盤式)を使用して入口ガス温度250℃、出口ガス温度150℃の条件で噴霧乾燥を行った後、550℃で8時間焼成を行い、ゼオライト成型体4を調製した。得られたゼオライト形成体4の摩耗損失、嵩密度及び安息角を上記の測定方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
次いで、固定床流通反応装置を用い、ステンレス製反応管に前記ゼオライト成型体4を充填した。エチレンの空間速度がゼオライト質量基準で35mmol/(g−zeo・h)、水素の空間速度がゼオライト質量基準で35mmol/(g−zeo・h)になるように反応器に供給し反応・再生繰り返し評価を行った。反応積算時間が20時間に到達した時の生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレン転化率は92.5%、プロピレン選択率は74.5%、プロピレン収率は78.2%であった。反応積算時間が400時間に到達した時の生成物を分析したところ、エチレン転化率は85.9%、プロピレン選択率は78.9%、プロピレン収率は67.8%であった。
表1から以下の諸点が判明した。
(1)本願に規定する要件を満たす実施例1、2のそれぞれのゼオライト成型体は摩耗損失が少ない。すなわち、衝突耐久性に優れる。更に、安息角は特定の範囲内であるので、流動性が良好であり、取り扱いやすい。加えて、嵩密度は特定の範囲内であるので、流動層反応における触媒として使用した場合には有効な性能を有する。実施例1、2のプロピレンの製造の結果をみても、高いプロピレン選択率、高い生産性を達成し、かつ長時間にわたって性能を維持しており、流動床型の反応器に好適に使用できる。
(2)一方、本願に規定する要件を満たしていない比較例1、2においては衝突耐久性と
安定かつ高いプロプレン生産性が両立していない。すなわち、比較例1においては摩耗損失の値は小さいものの、プロピレンの製造においては含有する多量のリン酸が反応を阻害するため、触媒としての性能低下が起こり、長時間にわたる触媒性能の安定維持ができない。また、比較例2においては含有するリン酸、ホウ酸量が少なくプロピレン製造において反応の阻害の程度は少なく、かなり安定した触媒性能が得られる一方で、含有するリン酸、ホウ酸量が少ないため摩耗損失の値が大きく、衝突耐久性を有さない。それは流動床型反応器におけるプロピレン製造において、短時間でゼオライト成型体が微小化し、触媒としての性能低下を引き起こす、又は反応系外に排出されることが容易に予想される。従って、流動床型の反応器に使用することが困難であると考えられる。
本発明のゼオライト成型体及びゼオライト成型体の製造方法により得られるゼオライト成型体は、衝突耐久性に優れ、形状が良好であり、且つプロピレンの製造における選択性、生産性が向上し、しかも該選択性、生産性が長時間安定的に継続しているのであるから、エチレンを原料として高い選択率で流動床反応器を用いて、高い生産性でプロピレンを工業的に製造することができる触媒として有用である。

Claims (9)

  1. 8員環構造ゼオライトとアルミナを含有するゼオライト成型体。
  2. 前記8員環構造ゼオライト質量に対するアルミナの質量比が、10以下である請求項1に記載のゼオライト成型体。
  3. 蒸気圧相当量の水分を含む空気を5.0L/50秒で2時間送風してゼオライト触媒を金属板に衝突させた際に粉砕されるゼオライト成型体の割合が、3質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライト成型体。
  4. 前記8員環構造ゼオライトがCHA型ゼオライトである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライト成型体。
  5. 前記8員環構造ゼオライトの少なくとも一部がシリル化処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゼオライト成型体。
  6. 前記8員環構造ゼオライトの平均粒子径が0.1〜50μmのゼオライトであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のゼオライト成型体。
  7. 安息角が20〜35°である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゼオライト成型体。
  8. 嵩密度が0.5〜1.3g/cmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のゼオライト成型体。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のゼオライト成型体と、エチレン、エタノール、メタノール、及びジメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する炭化水素原料とを接触させる工程を含む、低級オレフィンの製造方法。
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