JP2018183108A - 酵母の培養方法及びエタノール生産方法 - Google Patents

酵母の培養方法及びエタノール生産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率を改善させる新たな手段を提供すること。【解決手段】カンジダ・インターメディアに属し、グルコース及びキシロースの共存下でエタノール生産能を有する酵母を、酸素移動容量係数kLaが12.5〜28(h-1)の範囲となる好気的条件で培養する好気培養工程を含む、酵母の培養方法。【選択図】なし

Description

本発明は、酵母の培養方法及びエタノール生産方法に関する。
近年、セルロース系バイオマスを出発物質とする微生物の発酵によるエタノール生産が注目されている。特に最近では、未利用バイオマスを有効活用するために、バガス(サトウキビの搾りかす)、コーンストーバー(トウモロコシの芯、茎、葉)、ワラ類のような農業廃棄物や木材、紙類をセルロース系バイオマスとしてエタノール生産に利用することが検討されている。
セルロース系バイオマスを用いてエタノールを生産するためには、セルロース系バイオマスに含まれるセルロースやヘミセルロース、これらの一部分解物である多糖類を加水分解し、六炭糖であるグルコース、マンノース及びガラクトースや五炭糖であるキシロースを主成分とする糖化液(発酵用液)を得て、この糖化液中の糖を微生物の発酵に供する必要がある。しかしながら、キシロースはエタノール発酵しにくいものとして知られており、実際、グルコースを原料とした場合にエタノール生産効率を改善できるものとして知られるサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いても、キシロースからはエタノールを生産できなかった。また、キシロースからエタノールを生産できる酵母として、クルイベロマイセス・セロビオボラス(Kluyveromyces cellobiovorus、現在ではカンジダ・インターメディア(Candida intermedia)に分類される)が報告されているが(非特許文献1、特許文献1)、そのエタノール生産能は十分といえるものではなかった。
一方で、原料とする発酵用液がグルコースを含む場合には、発酵に供した微生物にエタノールが蓄積して、エタノール発酵が阻害されることがあった(非特許文献2、3)。この現象は、グルコース阻害(グルコースリプレッション)と呼ばれている。
前述のとおり、キシロースはそもそもエタノール発酵しにくいものであるが、グルコース阻害は、セルロース系バイオマスから得た糖化液のような、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液中のキシロースをより一層消費しにくくする。そして、このような発酵液中ではグルコースを完全に消費した後でなければキシロースが消費されないという序列があるため、グルコースの消費がグルコース阻害により停止してしまうと、キシロースの発酵が進行しなくなるという問題があった(非特許文献3)。
特開昭58−28289号公報 特開2013−94123号公報 特開2014−176351号公報 特開2015−80416号公報
Morikawa Y.et al「Ethanol productions from d-xylose and cellobiose by Kluyveromyces cellobiovorus」 Biotechnology and bioengineering、1985年、第27巻、第4号、p.509−513 K.-D. Entian 「Glucose repression:a complex regulatory system in yeast」 Microbiological Science、第3巻、p.366−371 TW.Jeffries、YS.Jin 「Ethanol and thermotlerance in the bioconversion of xylose by yeasts」、Adv.Appl.Microbiol.2000年、第47巻、p.221−268.
そのため、グルコース及びキシロースの共存下でもエタノールを効率良く生産できる酵母として、カンジダ・インターメディア 4−6−4T2株が提案されている(特許文献2)。また、この酵母のエタノール生産能を改善させるために、エタノール生産に供する前に、キシロースやスクロース、マルトースの存在下で酵母を前培養しておくことが提案されているが(特許文献3、4)、エタノール生産効率を更に改善させるためには、これらキシロース等を用いるのみでは限界があり、培養の規模等によってはエタノール生産効率を再現性良く改善させるのが難しい場合もあった。また、前述のようなグルコース阻害の影響などがあり、どのような条件で前培養した場合に、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率が改善されるか予測するのが困難なのが現状であった。
本発明は、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率を改善させる新たな手段を提供することに関する。
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、カンジダ・インターメディアに属し、グルコース及びキシロースの共存下でエタノール生産能を有する酵母を、酸素移動容量係数kLaが12.5〜28(h-1)という特定の範囲となる好気的条件で前培養することによって、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率を改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
〔1〕 カンジダ・インターメディアに属し、グルコース及びキシロースの共存下でエタノール生産能を有する酵母を、酸素移動容量係数kLaが12.5〜28(h-1)の範囲となる好気的条件で培養する好気培養工程を含む、酵母の培養方法。
〔2〕 前記酵母が、カンジダ・インターメディア 4−6−4T2株である、前記〔1〕に記載の培養方法。
〔3〕 前記好気培養工程を、グルコース、マルトース及びスクロースから選ばれる1種又は2種以上と、キシロース、ガラクトース及びマンノースから選ばれる1種又は2種以上とを含有する培地で行う、前記〔1〕又は〔2〕に記載の培養方法。
〔4〕 前記好気培養工程で培養した酵母を嫌気的条件で培養する嫌気培養工程を更に含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の培養方法。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の培養方法で酵母を培養した後、当該方法で培養された酵母の存在下で、グルコース及びキシロースを含有する発酵用液を発酵させる、エタノールの生産方法。
本発明の培養方法で培養された酵母を用いることにより、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率を改善できる。
したがって、本発明のエタノール生産方法によれば、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液からエタノールを効率良く生産することができる。
<培養方法>
(好気培養工程)
本発明の培養方法は、カンジダ・インターメディア(Candida intermedia)に属し、グルコース及びキシロースの共存下でエタノール生産能を有する酵母を、酸素移動容量係数kLaが12.5〜28(h-1)の範囲となる好気的条件で培養する好気培養工程を含むものである。酸素移動容量係数kLaを12.5〜28(h-1)の範囲とすることによって、上記酵母のエタノール生産能が改善され、酸素移動容量係数kLaが12.5(h-1)未満又は28(h-1)超の場合は、上記酵母のエタノール生産能を十分に改善することができない。
上記酵母としては、例えば、カンジダ・インターメディア 4−6−4T2株、カンジダ・インターメディア NBRC10601株、カンジダ・インターメディア ATCC60381株が挙げられる。これらの中でも、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、カンジダ・インターメディア 4−6−4T2株が特に好ましい。
なお、カンジダ・インターメディア 4−6−4T2株等は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)に寄託されている。
上記酵母の初発濃度としては、培地中、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0002〜0.5%(w/v)がより好ましい。
ここで、酸素移動容量係数kLaは、培養系の液相への酸素供給能力の指標であり、生物工学実験書(日本生物工学会編 培風館(1992))等に記載の方法で測定できる。具体的には、窒素等で脱気した消泡剤入りの純水にエアレーション(通気)して、これによって変化する溶存酸素濃度と時間から、下記式(I)にしたがって、その培養系におけるkLaを算出できる。
La (h-1) = [1/(T2−T1)]×ln[(C0−C1)/(C0−C2)] ・・・(I)
上記式(I)中、C0は、飽和溶存酸素濃度(ppm)を意味し、T1及びT2は、通気開始から経過した時間(h)を意味し、C1は、通気開始からT1時間経過後の溶存酸素濃度(ppm)を意味し、C2は、通気開始からT2時間経過後の溶存酸素濃度(ppm)を意味する。
Laは、12.5(h-1)以上であるが、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、好ましくは15(h-1)以上、より好ましくは17(h-1)以上、特に好ましくは18(h-1)以上である。また、28(h-1)以下であるが、上記と同様の観点から、好ましくは26(h-1)以下、より好ましくは25(h-1)以下、更に好ましくは23(h-1)以下、更に好ましくは21(h-1)以下、特に好ましくは20(h-1)以下である。
好気培養工程における撹拌手段としては、特に限定されないが、ピッチパドル羽根、アンカー翼、ディスクタービン羽根、プロペラ状羽根、らせん状羽根、門形翼、スターラー等が挙げられる。
また、好気培養工程における撹拌回転数は、培養装置の内容積や撹拌手段の種類に応じて適宜設定すればよいが、10〜1000rpmが好ましく、20〜800rpmがより好ましい。特に、培養装置として内容積1〜5L程度の装置を使用し、且つ撹拌手段としてディスクタービン羽根を使用する場合は、100〜600rpmが更に好ましい。一方、培養装置として内容積20〜40L程度の装置を使用し、且つ撹拌手段としてディスクタービン羽根を使用する場合は、100〜400rpmが更に好ましい。
空気供給速度としては、0.01〜5vvm(volume per volume per minute)が好ましく、0.02〜2.5vvmがより好ましい。
好気培養工程は、公知の培地を用いて行うことができるが、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、グルコース、マルトース及びスクロースから選ばれる1種又は2種以上(以下、糖類Aとも称する)と、キシロース、ガラクトース及びマンノースから選ばれる1種又は2種以上(以下、糖類Bとも称する)とを含有する培地で行うのが好ましく、グルコースとキシロースを含有する培地で行うのがより好ましい。グルコースとキシロースを含有する培地を用いることによって、発酵工程でのエタノール生産効率やキシロース消費率を大幅に改善できる。
糖類Aの初発濃度としては、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、培地中、0.1〜10%(w/v)が好ましく、0.25〜5%(w/v)がより好ましい。糖類Aとしてグルコースを用いる場合、グルコースの初発濃度としては、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、培地中、0.1〜10%(w/v)が好ましく、0.25〜5%(w/v)がより好ましく、0.75〜2.5%(w/v)が特に好ましい。
糖類Bの初発濃度としては、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、培地中、0.1〜10%(w/v)が好ましく、0.15〜7.5%(w/v)がより好ましい。糖類Bとしてキシロースを用いる場合、キシロースの初発濃度としては、グルコース及びキシロース共存下におけるエタノール生産効率の観点から、培地中、0.1〜10%(w/v)が好ましく、0.15〜7.5%(w/v)がより好ましく、0.2〜5%(w/v)が特に好ましい。
また、上記糖類の初発濃度の合計は、培地中、好ましくは0.2〜20%(w/v)、より好ましくは0.4〜12.5%(w/v)である。
なお、糖類A、糖類Bとして、糖類A、糖類Bそのものを添加してもよいし、糖類A、糖類B又はこれら両方を含有するセルロース系バイオマスの糖化液を添加してもよい。糖化液は、例えば、セルロース系バイオマスを酵素法や希硫酸法等で加水分解することによって得ることができる。セルロース系バイオマスは特に限定されるものではなく、例えば、農業残渣(稲ワラ、麦ワラ、バガス(サトウキビの搾りかす)、コーンストーバー(トウモロコシの芯、茎、葉)等)、林業残渣(材木等)等から得られるセルロース系バイオマスが挙げられる。
また、培地には、上記成分の他に、生育に適したアミノ酸、尿素、無機窒素塩、有機窒素塩、ポリペプトン、アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース等の窒素源;酵母エキス等を添加してもよい。
また、好気培養工程の培養温度は、好ましくは10〜37℃、より好ましくは25〜32℃である。好気培養工程の初発pH(30℃)は、好ましくは3〜8、より好ましくは3.5〜7.5である。好気培養工程の培養時間は、好ましくは2〜72時間、より好ましくは5〜60時間である。
好気培養工程で得られる培養液中、上記酵母の濃度は、エタノール生産効率の観点から、好ましくは0.1〜1.5%(w/v)、より好ましくは0.15〜1%(w/v)、特に好ましくは0.2〜0.8%(w/v)である。
また、上記糖類Aとしてグルコースを用いた場合において、好気培養工程で得られる培養液中、グルコースの濃度は、エタノール生産効率の観点から、好ましくは8%(w/v)以下、より好ましくは4%(w/v)以下、特に好ましくは2%(w/v)以下である。
また、上記糖類Bとしてキシロースを用いた場合において、好気培養工程で得られる培養液中、キシロースの濃度は、エタノール生産効率の観点から、好ましくは8%(w/v)以下、より好ましくは6%(w/v)以下、特に好ましくは4%(w/v)以下である。
なお、これら酵母等の濃度は、吸光光度計(濁度)、高速液体クロマトグラフィー等により測定することができる。
(嫌気培養工程)
本発明の培養方法としては、上記好気培養工程で培養した酵母を嫌気的条件で培養する嫌気培養工程を更に含むものが好ましい。従来、上記酵母の前培養は好気的条件で行われていたが、本発明者らの検討により、上記好気培養工程の後に嫌気的条件で培養することによって、意外にも、前述のようにグルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率が改善されるだけでなく、キシロース消費率が改善され、且つキシリトール、アラビノースをはじめとする副生成物の生成を低減することもできることがわかった。
嫌気培養工程の手法は、例えば、好気・嫌気兼用の培養装置で好気培養工程を行っておき、好気培養工程が終了した後、通気を停止して嫌気的条件とし、そのまま培養を続ける手法の他、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、その他不活性ガスで系内を置換する手法が挙げられる。
嫌気培養工程の培養温度は、好ましくは10〜37℃、より好ましくは25〜32℃である。嫌気培養工程の培養時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは2〜30時間である。
なお、好気培養工程、嫌気培養工程における培養方式としては、バッチ培養が好ましい。また、好気培養工程、嫌気培養工程は、ジャーファーメンター等の公知の培養装置を使用して行うことができる。また、培養槽の内容積、培地の使用量は特に限定されるものではなく、培養槽の内容積は、例えば、1L〜10000kLであり、培地の使用量は、例えば、培養槽の内容積に対して30〜80%(v/v)である。
嫌気培養工程で得られる培養液中、上記酵母の濃度は、エタノール生産効率の観点から、好ましくは0.1〜1.5%(w/v)、より好ましくは0.15〜1%(w/v)、特に好ましくは0.2〜0.8%(w/v)である。
また、上記糖類Aとしてグルコースを用いた場合において、嫌気培養工程で得られる培養液中、グルコースの濃度は、エタノール生産効率の観点から、好ましくは8%(w/v)以下、より好ましくは4%(w/v)以下、特に好ましくは2%(w/v)以下である。
また、上記糖類Bとしてキシロースを用いた場合において、嫌気培養工程で得られる培養液中、キシロースの濃度は、エタノール生産効率の観点から、好ましくは4%(w/v)以下、より好ましくは3%(w/v)以下、特に好ましくは2%(w/v)以下である。
なお、これら酵母等の濃度は、吸光光度計(濁度)、高速液体クロマトグラフィー等により測定することができる。
そして、本発明の培養方法で培養された酵母を用いることにより、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率を改善できる。また、本発明の培養方法は操作が簡便であり、培養槽のスケールを問わずエタノール生産効率を再現性良く改善できる。
<エタノール生産方法>
本発明のエタノール生産方法は、本発明の培養方法で酵母を培養した後、当該方法で培養された酵母の存在下で、グルコース及びキシロースを含有する発酵用液を発酵させること(以下、この工程を発酵工程とも称する)を特徴とするものである。
(発酵工程)
上記酵母は、本発明の培養方法で培養されたもの(培養物)をそのまま使用しても、遠心分離、ろ過等により培養物から分離・回収してから使用してもよいが、培養物から分離・回収してから使用するのが好ましい。
上記酵母の使用量は、系内の液相総量に対して、乾燥菌体重量換算で、0.01〜10%(w/v)が好ましく、0.1〜5%(w/v)がより好ましい。
また、発酵工程は、回分式発酵法で行ってもよいし連続式発酵法で行ってもよい。回分式発酵法で発酵する場合に、酵母の濃度を上記範囲にするためには、上記濃度範囲になるように系内に添加すればよい。一方、連続式発酵法の場合には、上記濃度範囲になるように系内に添加するか、或いは上記濃度範囲になるように、発酵用液の供給速度等の条件を適宜調整してもよい。
本発明で用いる発酵用液は、グルコース及びキシロースの両方を含有するものであれば特に限定されるものではなく、マンノース、ガラクトース等の他の単糖類やスクロース、マルトース等の二糖類等を含んでいてもよい。また、グルコース及びキシロースを含むものであれば、セルロース系バイオマスの糖化液やその精製物を発酵用液として用いることもできる。セルロース系バイオマスの糖化液としては、上記好気培養工程で挙げたものと同様のものが挙げられる。
発酵用液に含まれるグルコースの含有量としては、エタノール生産効率の観点から、発酵用液全量に対して、0.1〜17.5%(w/v)が好ましく、1〜14%(w/v)がより好ましい。
また、発酵用液に含まれるキシロースの含有量としては、エタノール生産効率の観点から、発酵用液全量に対して、0.1〜15%(w/v)が好ましく、0.5〜10%(w/v)がより好ましい。
また、発酵用液に含まれるグルコースとキシロースの合計含有量に占めるグルコースの含有割合としては、エタノール生産効率の観点から、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、55〜70質量%が特に好ましい。
また、発酵用液に含まれる糖類の合計含有量に占めるグルコースとキシロースの合計含有割合としては、エタノール生産効率の観点から、60〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。
また、発酵用液に含まれる糖類の合計含有量としては、エタノール生産効率の観点からは、発酵用液全量に対して、1〜20%(w/v)が好ましく、2.5〜15%(w/v)がより好ましい。なお、本発明のエタノール生産方法によれば、8%(w/v)未満(好ましくは7%(w/v)以下)といった糖類が低含量の発酵用液を用いた場合であっても、エタノールを効率良く生産できる。
また、発酵用液のpH(30℃)は、好ましくは3.5〜7、より好ましくは4〜6.5である。本発明によれば、斯様な低pH領域の発酵用液であってもエタノール生産が可能である。
また、発酵工程の発酵温度は、好ましくは20〜40℃であり、発酵時間は、好ましくは5〜96時間である。また、発酵に際しては撹拌するのが好ましく、その回転数としては、10〜1000rpmが好ましい。
なお、エタノールの回収は、蒸留等の通常の手段で行えばよい。
そして、本発明のエタノール生産方法によれば、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液から、短時間で効率良くエタノールを生産できる。また、広範囲の反応スケールに適用でき、従来では困難であった高いエタノール濃度まで発酵させることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例におけるkLaの測定方法は以下に示すとおりである。
(酸素移動容量係数kLaの測定方法)
消泡剤(sigma−aldrich社製antifoam204)を純水に200μL/L添加した水溶液を窒素で脱気し、実施例、比較例の培養液と等量使用して、溶存酸素電極(メトラートレド社製)にて、実施例、比較例の培養条件におけるC1、C2及びこれら濃度に到達するのに要する時間を見積もり、下記式(II)によりkLaを算出した。
La (h-1) = [1/(T2−T1)]×ln[(C0−C1)/(C0−C2)] ・・・(II)
上記式(II)中、C0は、飽和溶存酸素濃度(ppm)を意味し、T1及びT2は、それぞれ、通気開始から溶存酸素濃度(ppm)がC1、C2に到達するまでに経過した時間(h)を意味する。なお、C1=2ppm、C2=3ppmに設定したときに算出されるkLa、C1=3ppm、C2=4ppmに設定したときに算出されるkLa、及びC1=4ppm、C2=5ppmに設定したときに算出されるkLaの3つのkLaの平均値を、実施例、比較例におけるkLaとして算出した。
(実施例1 前培養)
2Lジャーファーメンター(三ツワフロンテック製CLN−2000型)に入れた1LのYNB培地(酵母エキス:1%(w/v)、アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース:2%(w/v)、グルコース:1%(w/v)、キシロース:4%(w/v))に、初期ODが約0.16になるように4−6−4T2株を植菌し、温度30℃、空気供給速度0.1L/minにて、撹拌羽根の回転数を370rpmに設定して24時間培養を行った。この培養におけるkLaは、15.4であった。また、24時間経過時の培養液を一部秤取り、この培養液中の表1に示す各成分の濃度を、高速液体クロマトグラフィー(アジレント社製)及び吸光光度計(島津製作所製)を用いて測定・算出した。次に、培養開始から24時間経過後に通気を停止し、通気を停止した状態で24時間嫌気培養を続けた後、培養を停止した。また、この培養液を一部秤取り、培養液中の表2に示す各成分の濃度を、高速液体クロマトグラフィー(アジレント社製)及び吸光光度計(島津製作所製)を用いて測定・算出した。
(実施例2 前培養)
撹拌羽根の回転数を380rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして前培養を行った。なお、kLaは、19.0であった。
(実施例3 前培養)
撹拌羽根の回転数を390rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして前培養を行った。なお、kLaは、21.0であった。
(実施例4 前培養)
撹拌羽根の回転数を400rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして前培養を行った。なお、kLaは、24.8であった。
(比較例1 前培養)
撹拌羽根の回転数を350rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして前培養を行った。なお、kLaは、10.0であった。
(比較例2 前培養)
撹拌羽根の回転数を410rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして前培養を行った。なお、kLaは、30.2であった。
実施例1〜4、比較例1〜2で測定・算出した培養液中の各成分の濃度を以下の表1、2に示す。
Figure 2018183108
Figure 2018183108
〔試験例1 エタノールの生産〕
実施例1〜4及び比較例1〜2の前培養で得られた培養液から菌体を遠心分離(896〜1519G、2min)により回収し、菌体量が乾燥菌体重量換算で1%(w/v)となるように、糖液に懸濁した。糖液は、8%(w/v)グルコース及び4%(w/v)キシロースを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH5.0)を使用した。なお、菌体の乾燥菌体重量は、以下の関係式より求めた。
乾燥菌体重量(g/mL) = 0.00032×(OD660)−0.00017
次いで、上記で得た懸濁液100mLを200mL三角フラスコに入れ、30℃、120rpm(回転振盪)で48時間発酵を行った。発酵終了後、高速液体クロマトグラフィー(アジレント社製)を用いてエタノール濃度を測定し、このエタノール濃度と糖液中の糖濃度より、下記式に従いエタノール収率を算出した。結果を表3に示す。
エタノール収率(%) = {エタノール濃度/(糖液中のグルコース濃度+キシロース濃度)}/0.51×100
Figure 2018183108
表3に示すように、実施例1〜4の培養方法で前培養した4−6−4T2株を用いた場合に、高いエタノール収率が得られた。
この結果から、カンジダ・インターメディアに属し、グルコース及びキシロースの共存下でエタノール生産能を有する酵母を、酸素移動容量係数kLaが12.5〜28(h-1)の範囲となる好気的条件で前培養したものを用いることによって、グルコース及びキシロースの両方を含有する発酵用液を原料とした場合のエタノール生産効率を改善できることがわかった。
〔試験例2 エタノールの生産〕
実施例1〜2の前培養で得られた培養液を使用して、試験例1と同様にして発酵を行い、エタノール収率を算出した。ただし、菌体量は乾燥菌体重量換算で0.25%(w/v)となるようにし、糖液は、3%(w/v)グルコース及び2%(w/v)キシロースを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)を使用した。結果を表4に示す。
Figure 2018183108
(実施例5 前培養)
2Lジャーファーメンター(三ツワフロンテック製CLN−2000型)に入れた1LのYNB培地(酵母エキス:1%(w/v)、アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース:2%(w/v)、グルコース:1%(w/v)、キシロース:4%(w/v))に、初期ODが約0.16になるように4−6−4T2株を植菌し、温度30℃、空気供給速度0.1L/minにて、撹拌羽根の回転数を400rpmに設定して24時間培養を行った後、通気を停止した。この培養におけるkLaは、24.8であった。次に、通気を停止した状態で24時間嫌気培養を続けた後、培養を停止した。
(実施例6 前培養)
2Lジャーファーメンター(三ツワフロンテック製CLN−2000型)に入れた1LのYNB培地(酵母エキス:1%(w/v)、アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース:2%(w/v)、グルコース:1%(w/v)、キシロース:4%(w/v))に、初期ODが約0.16になるように4−6−4T2株を植菌し、温度30℃、空気供給速度0.1L/minにて、撹拌羽根の回転数を400rpmに設定して48時間培養を行った後、培養を停止した。この培養におけるkLaは、24.8であった。
〔試験例3 エタノールの生産〕
実施例5、6の前培養で得られた培養液を使用して、試験例1と同様にして発酵を行った。発酵終了後、高速液体クロマトグラフィー(アジレント社製)を用いて表5に示す各成分の濃度の測定を行い、試験例1と同様の方法でエタノール収率を算出した。ただし、糖液は、7.6%(w/v)グルコース及び3.9%(w/v)キシロースを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH5.0)を使用した。結果を表5に示す。
Figure 2018183108
表5に示すように、実施例5、6の培養方法で前培養した4−6−4T2株を用いて発酵を行うことによって、高いエタノール収率が得られた。
また、実施例5の培養方法で前培養した4−6−4T2株を用いた場合、発酵時にキシロースをより消費しやすく、また、副生成物(キシリトール、アラビノース)が生成しにくかった。

Claims (5)

  1. カンジダ・インターメディアに属し、グルコース及びキシロースの共存下でエタノール生産能を有する酵母を、酸素移動容量係数kLaが12.5〜28(h-1)の範囲となる好気的条件で培養する好気培養工程を含む、酵母の培養方法。
  2. 前記酵母が、カンジダ・インターメディア 4−6−4T2株である、請求項1に記載の培養方法。
  3. 前記好気培養工程を、グルコース、マルトース及びスクロースから選ばれる1種又は2種以上と、キシロース、ガラクトース及びマンノースから選ばれる1種又は2種以上とを含有する培地で行う、請求項1又は2に記載の培養方法。
  4. 前記好気培養工程で培養した酵母を嫌気的条件で培養する嫌気培養工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の培養方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の培養方法で酵母を培養した後、当該方法で培養された酵母の存在下で、グルコース及びキシロースを含有する発酵用液を発酵させる、エタノールの生産方法。
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