以下、図を参照しながら、この発明のシステム、装置の一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、無線LANを用いて形成される無線通信システムであって、電話通信をできるようにする電話システムに、この発明のシステム、装置を適用した場合を例にして説明する。また、以下に説明する無線通信システムにおいて用いられる無線LANは、例えば、IEEE802.11a、同802.11b/g規格に対応することができるもの、あるいは、その後継規格に対応することができるものである。もちろん、これら以外の無線通信規格であってもよい。
[無線通信システムの概要]
図1は、以下に説明する実施の形態の無線通信システムの構成例を説明するためのブロック図である。以下に説明する実施の形態の無線通信システムは、サーバ10に対し、ハブHBを介してアクセスポイント装置(図1ではAPと記載。)1が有線接続され、このアクセスポイント装置1に対して、リピータ装置(図1ではリピータと記載。)2が無線接続される構成となっている。そして、無線通信端末3が、アクセスポイント装置1とリピータ装置2とに無線接続が可能になっている。
サーバ10は、図1には図示しないが、他のIP(Internet Protocol)網に接続されており、ハブHB、アクセスポイント装置1、リピータ装置2、無線通信端末3によって形成される無線ネットワークのデフォルトゲートウェイとして用いられるものである。デフォルトゲートウェイは、所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される「出入り口」の代表となる機能を実現する。すなわち、サーバ10は、ハブHB、アクセスポイント装置1、リピータ装置2、無線通信端末3によって形成される無線通信システムであるLAN(Local Area Network)から他のネットワークへアクセスする際の出入り口となるものであり、具体的には、主装置に相当するものである。
ハブHBは、無線ネットワークにおけるいわゆる集線装置である。図1においては、ハブHBに対してアクセスポイント装置1が有線接続され、このアクセスポイント装置1に対してリピータ装置2が無線接続されている。しかし、図1には図示しないが、ハブHBに対しては、複数のアクセスポイント装置1が接続されており、この複数のアクセスポイント装置1のそれぞれに対しては、1以上のリピータ装置2が接続するようにされている。そして、図1においては、1台の無線通信端末3しか示していないが、実施には複数の無線通信端末3が、近隣のアクセスポイント装置1やリピータ装置2を通じて、通信を行うことができるようになっている。なお、小規模な無線通信システムの場合には、ハブHBは必須の構成ではない。
このように、この実施の形態の無線通信システムは、複数のアクセスポイント装置1、複数のリピータ装置2、複数の無線通信端末3を有するものである。しかし、複数のアクセスポイント装置1のそれぞれは、同様の構成を有するものであるため、それらを総称してアクセスポイント装置1と記載する。また、複数のリピータ装置2のそれぞれは、同様の構成を有するものであるため、それらを総称してリピータ装置2と記載する。また、複数の無線通信端末3のそれぞれは、同様の構成を有するものであるため、それらを総称して無線通信端末3と記載する。
アクセスポイント装置1は、無線通信端末3との間で通信を行うことにより、無線通信端末3をアクセスポイント装置1が属する無線ネットワークに接続する。すなわち、アクセスポイント装置1は、自機が属する無線ネットワークと無線通信端末3とを接続する中継機器(電波中継機器)としての機能を実現するものである。
リピータ装置2は、ハブHBに対して有線接続されるアクセスポイント装置1が設けられないために、無線通信端末3が機能できないエリアに設置され、アクセスポイント装置1と無線通信端末3との間の通信を可能にする。リピータ装置2は、アクセスポイント装置1と無線通信端末3とを接続する中継器(電波中継機器)としての機能を実現するものである。
無線通信端末3は、電話通信を可能にするための携帯型の音声端末装置として機能するものである。そして、無線通信端末3は、アクセスポイント装置1とのみ無線接続が可能な場合には、アクセスポイント装置1に無線接続し、アクセスポイント装置1及びサーバ10を通じてネットワークに接続して、他の通信端末との間で通話などを行える。この場合、無線通信端末3とアクセスポイント装置1との間とが、無線通信区間になる。つまり、無線通信区間は1つである。
また、無線通信端末3は、リピータ装置2とのみ無線接続が可能な場合には、リピータ装置2に無線接続し、リピータ装置2、アクセスポイント装置1、サーバ10を通じてネットワークに接続し、他の通信端末との間で通話などを行える。この場合、無線通信端末3とリピータ装置2との間と、リピータ装置2とアクセスポイント装置1との間とが、無線通信区間になる。つまり、無線通信区間は2つである。
そして、この実施の形態の無線通信システムにおいては、無線通信端末3がアクセスポイント装置1とリピータ装置2の両方に無線接続可能なオーバーラップ領域に位置している場合には、できるだけアクセスポイント装置1との間で無線接続を行うようにする。これにより、リピータ装置2と無線通信端末3が無線接続されることにより、無線通信区間が2つになることを抑制し、ノイズなどの影響を受ける機会を少なくして、良好に通信が行える状態を維持できるようにしている。
しかし、無線通信端末3がアクセスポイント装置1との接続を必要以上に維持しようとすると、無線通信端末3の移動時に、リピータ装置2への無線接続が遅れて通信が途絶えてしまうことにもなりかねない。逆に、無線通信端末3がリピータ装置2に接続されている場合であって、無線通信端末3の移動時に、アクセスポイント装置1への無線接続のタイミングが早すぎると、良好に通信が行えなくなる可能性がある。このため、無線通信端末3は、適切にローミング制御を行うことによって、アクセスポイント装置1からリピータ装置2への無線接続の切り替えやリピータ装置2からアクセスポイント装置1への無線接続の切り替えを適切に行うことができるようにしている。
なお、この明細書において、「ローミング」とは、無線通信端末3の接続先を、アクセスポイント装置1からリピータ装置2に切り替えて通信を継続できるようにすること、逆に、無線通信端末3の接続先を、リピータ装置2からアクセスポイント装置1に切り替えて通信を継続できるようにすることを意味する。
以下に、図1を用いて説明した無線通信システムを構成する、アクセスポイント装置1、リピータ装置2、無線通信端末3の構成と基本的な動作について説明する。なお、以下においては、アクセスポイント装置1とリピータ装置2とは、その通信機能は同程度のものであり、したがって信号の送信出力などは、ほぼ同じであるものとして説明する。
[アクセスポイント装置1の構成と動作概要]
図2は、アクセスポイント装置1を説明するためのブロック図である。図2に示すように、アクセスポイント装置1は、デフォルトゲートウェイ(サーバ10)に接続された有線LANへの接続端子101と、有線LANインターフェース(以下、有線LANI/Fと略称する。)102と、送信用処理回路103と、受信用処理回路104と、送信アンプ105と、受信アンプ106と、アンテナ共用器107と、送受信アンテナ108と、制御部110とを備えている。
接続端子101は有線LANへの接続端部を構成するものである。有線LANI/F102は、有線LANを通じて供給され、接続端子101を通じて受け付けた自機宛ての信号を、自機において処理可能な形式の信号に変換し、これを制御部110に供給する。また、有線LANI/F102は、制御部110から供給される送信すべき信号を、有線LANに送出する形式の信号に変換し、これを有線LANに送出する。
送受信アンテナ108は、無線接続される無線通信端末3やリピータ装置2との間でパケットの送受を行なうためのものである。また、アンテナ共用器107は、自機から送信する信号と自機が受信する信号とが影響を及ぼし合うことがないようにするためのものである。受信アンプ106は、受信したパケットを所定のレベルにまで増幅し、これを受信用処理回路104に供給するものである。受信用処理回路104は、受信したパケットを自機において処理可能な形式のパケットに変換し、これを制御部110に供給するものである。また、送信用処理回路103は、制御部110からのパケットから実際に送信する形式の送信用パケットを形成する。送信アンプ105は、送信用パケットを所定のレベルにまで増幅するものである。
アクセスポイント装置1では、接続端子101および有線LANI/F102を通じて得たサーバ10からの送信用パケットを、制御部110の制御に応じて送信系が機能し、無線通信端末3やリピータ装置2に対して無線送信する。ここで、送信系は、送信用処理回路103、送信アンプ105、アンテナ共用器107、送受信アンテナ108からなる部分である。
また、無線通信端末3やリピータ装置2からの信号は、このアクセスポイント装置1の受信系を通じて受信され、制御部110に供給される。ここで、受信系は、送受信アンテナ108、アンテナ共用器107、受信アンプ106、受信用処理回路104からなる部分である。制御部110は、受信したパケットを、有線LANI/F102及び接続端子101を通じて有線LANに送出し、サーバ10に送信する。
制御部110は、システムバス111を通じて各部が接続されて構成されたコンピュータ装置部である。図2に示すように、制御部110は、CPU(Central Processing Unit)112、ROM(Read only Memory)113、RAM(Random Access Memory)114、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)115を備える。また、制御部110は、パケット分解/生成部116、設定情報管理部117、端末情報管理部118を備える。
CPU112は、ROM113に記憶保持されているプログラムを実行することにより、各部を制御するための制御信号を生成して各部に供給したり、各部からの情報を処理したりするものである。ROM113は、上述のように、CPU112で実行される種々のプログラムや処理に必要となる種々のデータを記憶保持しているものである。
また、RAM114は、処理の途中結果を一時記憶するなど、主に、作業領域として用いられるものである。また、EEPROM115は、いわゆる不揮発性メモリであり、電源が落とされても保持しておくべきデータ、例えば、種々の設定パラメータや機能アップのために提供された新たなプログラムなどについても記憶保持することができるようにされている。
パケット分解/生成部116は、接続端子101および有線LANI/F102を通じて受信した自機宛てのパケットや受信系を通じて受信した自機宛てのパケットを分解して、制御部110や後述する端末情報管理部118等において利用できるようにする。また、パケット分解/生成部116は、自機から送出するデータをパケット化して送出するパケットを生成する機能を有する。なお、サーバ10と無線通信端末3やリピータ装置2との間で送受されるパケットについては、基本的にはパケットの分解や生成等を行うことなく、そのまま中継するようにされる。
設定情報管理部117は、不揮発性メモリを備え、SSID、暗号化方式などを示すセキュリティ情報、暗号化や復号化に用いられる暗号キー等からなる接続情報、その他、通信に関する種々の設定情報を記憶保持して管理する。なお、設定情報自体は例えばEEPROM115に記憶して、これを設定情報管理部117が管理するように構成することも可能である。
端末情報管理部118は、メモリを備え、当該アクセスポイント装置1との間で通信路を接続するようにしている機器のMACアドレス等を記憶保持して管理する。具体的に端末情報管理部118は、リピータ装置2等の接続機器や無線通信端末3等の配下端末となる機器が、当該アクセスポイント装置1との間に通信路を接続した場合に、これらの各機器のMACアドレス等の識別情報を管理する。これにより、自機に無線接続している機器を把握し、管理できる。
その他の機能として、制御部110は、受信したパケットがマルチキャストか、ユニキャストかを判別したり、受信したパケットの種別(音声情報、データ、制御情報等)を判別したりして、それぞれのデータを適切に処理することができるようにしている。
そして、アクセスポイント装置1は、直接に、あるいは、後述するリピータ装置2を介して、配下の無線通信端末3と通信路を接続し、当該無線通信端末3とサーバ10との間の通信を中継する機能を実現する。
[リピータ装置2の構成と動作概要]
図3は、リピータ装置2を説明するためのブロック図である。上述したように、リピータ装置2は、アクセスポイント装置1と無線通信端末3との間に介在し、無線により両者間を接続する機能を実現する。このためリピータ装置2は、送信系と受信系とからなる1つの無線通信部を備えることにより、アクセスポイント装置1とも、また、無線通信端末3とも通信路を接続することが可能である。しかし、以下においては、説明を簡単にするため、図3に示すように、リピータ装置2は、アクセスポイント装置1と無線通信を行うための第1の無線通信部210と、無線通信端末3と無線通信を行うための第2の無線通信部220とを有するものとして説明する。
すなわち、リピータ装置2は、図3に示すように、アクセスポイント装置1と無線通信を行う第1の無線通信部210と、無線通信端末3と無線通信を行う第2の無線通信部220と、制御部230とを備えて構成される。
第1の無線通信部210は、送信用処理回路211と、受信用処理回路212と、送信アンプ213と、受信アンプ214と、アンテナ共用器215と、送受信アンテナ216を備えている。第2の無線通信部220は、送信用処理回路221と、受信用処理回路222と、送信アンプ223と、受信アンプ224と、アンテナ共用器225と、送受信アンテナ226を備えている。
第1の無線通信部210の送受信アンテナ216は、無線接続されるアクセスポイント装置1との間でパケットの送受を行なうためのものである。第2の無線通信部220の送受信アンテナ226は、無線接続される無線通信端末3との間でパケットの送受を行なうためのものである。そして、第1の無線通信部210と第2の無線通信部220の対応する部分は、それぞれ同様の機能を実現する。
すなわち、アンテナ共用器215、225は、自機から送信する信号と自機が受信する信号とが影響を及ぼし合うことがないようにするためのものである。受信アンプ214、224は、受信したパケットを所定のレベルにまで増幅し、これを対応する受信用処理回路212、222に供給するものである。受信用処理回路212、222は、受信したパケットを自機において処理可能な形式のパケットに変換し、これを制御部230に供給するものである。また、送信用処理回路211、221は、制御部230からのパケットから実際に送信する形式の送信用パケットを形成する。送信アンプ213、223は、送信用パケットを所定のレベルにまで増幅するものである。
そして、第1の無線通信部210において、送信用処理回路211、送信アンプ213、アンテナ共用器215、送受信アンテナ216からなる部分が、第1の無線通信部の送信系を構成する。また、送受信アンテナ216、アンテナ共用器215、受信アンプ214、受信用処理回路212からなる部分が、第1の無線通信部210の受信系を構成する。
同様に、第2の無線通信部220において、送信用処理回路221、送信アンプ223、アンテナ共用器225、送受信アンテナ226からなる部分が、第2の無線通信部の送信系を構成する。また、送受信アンテナ226、アンテナ共用器225、受信アンプ224、受信用処理回路222からなる部分が、第2の無線通信部220の受信系を構成する。
そして、リピータ装置2では、第1の無線通信部210の受信系を通じて得たアクセスポイント装置1からの送信用パケットを、制御部230の制御に応じて、第2の無線通信部220の送信系が機能し、無線通信端末3に対して無線送信する。また、リピータ装置2では、第2の無線通信部220の受信系を通じて得た無線通信端末3からの送信用パケットを、制御部230の制御に応じて、第1の無線通信部210の送信系が機能し、アクセスポイント装置1に対して無線送信する。
制御部230は、システムバス231を通じて各部が接続されて構成されたコンピュータ装置部である。図3に示すように、制御部230は、CPU232、ROM233、RAM234、EEPROM235を備える。また、制御部230は、設定情報管理部236、端末情報管理部237を備える。CPU232、ROM233、RAM234、EEPROM235は、アクセスポイント装置1の制御部110のCPU112、ROM113、RAM114、EEPROM115と同様の機能を実現するものである。
設定情報管理部236は、不揮発性メモリを備え、SSID、暗号化方式などを示すセキュリティ情報、暗号化や復号化に用いられる暗号キー等からなる接続情報、その他、通信に関する種々の設定情報を記憶保持して管理する。なお、設定情報自体は例えばEEPROM235に記憶して、これを設定情報管理部236が管理するように構成することも可能である。
端末情報管理部237は、メモリを備え、当該リピータ装置2との間で通信路を接続するようにしている機器のMACアドレス等を記憶保持して管理する。具体的に端末情報管理部237は、アクセスポイント装置1等の接続機器や無線通信端末3等の配下端末が、当該リピータ装置2との間に通信路を接続した場合に、これらの各機器のMACアドレス等の識別情報を管理する。これにより、自機に無線接続している機器を把握し、管理できる。このような構成を有するリピータ装置2は、アクセスポイント装置1と無線通信端末3との間の通信を中継する。
[無線通信端末3の構成と動作概要]
図4は、無線通信端末3を説明するためのブロック図である。図4に示すように、無線通信端末3は、アクセスポイント装置1やリピータ装置2との間で通信を行う部分として、送受信アンテナ301、アンテナ共用器302、受信アンプ303、受信用処理回路304、送信用処理回路305、送信アンプ306を備えている。
ここで、アンテナ共用器302は、自機から送信する信号と自機が受信する信号とが影響を及ぼし合うことがないようにするためのものである。受信アンプ303は、送受信アンテナ301及びアンテナ共用器302を通じて受信したパケットを所定のレベルにまで増幅し、これを受信用処理回路304に供給するものである。
受信用処理回路304は、受信アンプ303からのパケットを自機において処理可能な形式のパケットに変換し、これを制御部320に供給するものである。また、受信用処理回路304は、送受信アンテナ301、アンテナ共用器302、受信アンプ303を通じて受信する1以上の受信信号のそれぞれの電波強度を検出し、これを制御部320に通知することができるものである。
また、送信用処理回路305は、制御部320からのパケットから実際に送信する形式の送信用パケットを形成し、これを送信アンプ306に供給する。送信アンプ306は、送信用処理回路305からの送信用パケットを所定のレベルにまで増幅する。送信アンプ306で増幅されたパケットは、アンテナ共用器302及び送受信アンテナ301を通じて送信されることになる。また、無線通信端末3は、ユーザが通話を行う部分として、音声データ入出力インターフェース(以下、音声データ入出力I/Fと略称する。)307、受話アンプ308、受話器(スピーカ)309、送話器(マイクロホン)310、送話アンプ311を備えている。
さらに、無線通信端末3は、制御部320を備えている。制御部320は、システムバス321を通じて各部が接続されて構成されたコンピュータ装置部である。図4に示すように、制御部320は、CPU322、ROM323、RAM324、EEPROM325を備える。また、制御部320は、パケット分解/生成部326、設定情報管理部327、機器別閾値管理部328、機器判別部329、タイミング検知部330、スキャン処理部331、接続処理部332を備える。CPU322、ROM323、RAM324、EEPROM325は、アクセスポイント装置1の制御部110のCPU112、ROM113、RAM114、EEPROM115と同様の機能を実現するものである。
パケット分解/生成部326は、受信系を通じて受信した自機宛てのパケットを分解して、制御部320等において利用できるようにする。受信系は、送受信アンテナ301、アンテナ共用器302、受信アンプ303、受信用処理回路304からなる部分である。また、パケット分解/生成部326は、自機からパケット化して送出するパケットを生成し、送信系を通じて送信するようにする機能を有する。送信系は、送信用処理回路305、送信アンプ306、アンテナ共用器302、送受信アンテナ301からなる部分である。
設定情報管理部327は、不揮発性メモリを備え、SSID、暗号化方式などを示すセキュリティ情報、暗号化や復号化に用いられる暗号キー等からなる接続情報、その他、通信に関する種々の設定情報を記憶保持して管理する。なお、設定情報自体は例えばEEPROM325に記憶して、これを設定情報管理部327が管理するように構成することも可能である。
機器別閾値管理部328は、不揮発性メモリを備え、アクセスポイント装置とリピータ装置に分けて、ローミング閾値としての電波強度と、接続可能閾値としての電波強度とを記憶保持して管理する。ローミング閾値は、ローミングのために無線スキャンを行い、新たな接続先となるアクセスポイント装置やリピータ装置をサーチし始めるタイミングを特定するための受信信号の電波強度の閾値である。すなわち、無線接続先からの信号(受信信号)の電波強度が、当該ローミング閾値より小さくなったら、ローミングのための無線スキャンを開始することになる。
そして、詳しくは後述もするが、ローミング閾値には、アクセスポイント装置に対する第1のローミング閾値ARと、リピータ装置2に対する第2のローミング閾値RRとがある。そして、アクセスポイント装置1に対する第1のローミング閾値ARは、リピータ装置2に対する第2のローミング閾値RRよりも低く設定される。
また、接続可能閾値は、無線通信端末が無線接続して適切に通信を行うことが可能な受信信号の電波強度の閾値であり、新たな接続先を特定して無線接続先を切り替えるための受信信号の電波強度の閾値である。したがって、ローミングのために無線スキャンを行って、受信した信号の電波強度が、接続可能閾値よりも高い場合において、その信号の送信元が新たな接続先の候補となる。そして、その接続先の候補の中でもより電波強度が高い信号の送信先を新たな接続先として特定する。そして、新たな接続先との間に無線接続を確立し、現在の無線接続先との間の無線接続を解放する。これによりローミングが完了する。
なお、詳しくは後述もするが、接続可能閾値にも、アクセスポイント装置に対する第1の接続可能閾値ACと、リピータ装置2に対する第2の接続可能閾値RCとがある。この場合、第1の接続可能閾値ACは、リピータ装置2に対する第2の接続可能閾値RCよりも低く設定される。
機器判別部329は、受信信号に含まれる情報に基づいて、当該受信信号の送信元の機器がアクセスポイント装置なのか、リピータ装置なのかを判別する。これにより、無線通信端末3は、自機が無線接続している相手先がアクセスポイント装置なのかリピータ装置なのかを判別したり、接続先の候補がアクセスポイント装置なのかリピータ装置なのかを判別したりすることができるようにしている。
タイミング検知部330は、機器別閾値管理部328で管理されているローミング閾値と機器判別部329からの接続先の機器種別とに基づいて、接続先からの受信信号の受信強度を監視し、新たな接続先を見つけ出すための無線スキャンの実行タイミングを検知する処理を行う。そして、タイミング検知部330は、当該無線スキャンの実行タイミングを検知すると、これをスキャン処理部331に通知する。
スキャン処理部331は、タイミング検知部330からの無線スキャンの実行タイミングを検知したことの通知を受けた場合に、無線スキャンを行って、新たな接続先を特定する処理を行う。スキャン処理部331は、機器別閾値管理部328で管理されている接続可能閾値と、機器判別部329の接続先の候補の機器種別とを用い、受信用処理回路304からの1以上の受信信号のそれぞれの送信元と電波強度を参照することによって、新たな接続先を特定する。そして、スキャン処理部331は、特定した新たな接続先を、接続処理部332に通知する。
接続処理部332は、スキャン処理部331からの新たな接続先の通知を受け付けると、新たな接続先と無線接続し、現在の接続先との間の無線接続を解放する処理を行う。これにより、ローミングが完了する。このように、設定情報管理部327、機器別閾値管理部328、機器判別部329、タイミング検知部330、スキャン処理部331、接続処理部332は、相互に関連しながら、適切にローミングを行うことができるようにしている。
また、制御部320には、ユーザインターフェイスを構成する部分として、キー操作部341、LED(Light Emitting Diode)制御部342及びLED群343、LCD(Liquid Crystal Display)制御部344及びLCD345、音声処理部346及びスピーカ347が接続されている。キー操作部341は、いわゆるテンキー(数字キー)や複数のファンクションキーなどを備え、ユーザからの操作入力を受け付けるものである。LED群343は、複数のLEDを備え、LED制御部342の制御に応じて、オフフック状態、サーバ10に収容された外線の利用状態、その他の種々の状態を示すためのものである。
LCD345は、LCD制御部344の制御に応じて、着信時に相手先の電話番号を表示したり、発信時に相手先の電話番号を表示したり、通話時間を表示したりする。また、LCD345は、LCD制御部344の制御に応じて、待ち受け状態にある場合には、図示しない時計回路が提供する現在時刻を表示するなど、種々の情報を表示するものである。スピーカ347は、音声処理部346で処理されたアナログ音声信号の供給を受けて、これに応じた音声(着信音やアラーム音)を放音するなどのことができるものである。
そして、アクセスポイント装置1やリピータ装置2からのパケットは、受信系を通じて制御部320に供給される。制御部320は、アクセスポイント装置1やリピータ装置2からのパケットをパケット分解/生成部326において分解し、その内容を把握する。アクセスポイント装置1やリピータ装置2からのパケットが通信の相手先からの音声データである場合には、制御部320は、これを音声データ入出力I/F307に供給する。
音声データ入出力I/F307は、これに供給された音声データからアナログ音声信号を形成し、これを受話アンプ308を通じてスピーカ309に供給する。これにより、相手先からの音声データに応じた音声がスピーカ309から放音され、無線通信端末3のユーザがこれを聴取することができるようにされる。
一方、無線通信端末3のユーザが発する音声は、マイクロホン310により集音され、これがアナログ音声信号として、送話アンプ311を通じて音声データ入出力I/Fに供給される。音声データ入出力I/F307は、これに供給されたアナログ音声信号をデジタル音声データに変換して、これを制御部320に供給する。
制御部320は、音声データ入出力I/F307からの音声データをパケット分解/生成部326においてパケット化し、これを送信系を通じてアクセスポイント装置1やリピータ装置2に送信する。これにより、当該音声パケットは、アクセスポイント装置1から、あるいは、リピータ装置2及びアクセスポイント装置1からサーバ10に送信され、サーバ10を通じて通話の相手先に送信される。
また、上述したように、自機において受信され、制御部320のパケット分解/生成部326において分解されたパケットが、自機宛ての制御情報である場合には、制御部320は、当該制御情報に応じて各部を制御する。例えば、アクセスポイント装置1やリピータ装置2からの当該制御情報が、サーバ10の外線の使用状況の通知である場合には、制御部320は、LED制御部342を制御し、使用されている外線に対応するLEDを点灯させるなどの処理を行う。また、アクセスポイント装置1やリピータ装置2からの当該制御情報が、自機への着信を通知するものである場合には、制御部320は、LCD制御部344を制御して、LCD345に発呼元の電話番号を表示したり、音声処理部346に着信音データを供給して、スピーカ347から着信音を放音させたりする。
そして、自機に着信がある場合に、ユーザがキー操作部341を通じてオフフック操作した時には、制御部320は、応答メッセージを形成する。この応答メッセージは、パケット分解/生成部326において、パケット化され、これが、送信系を通じてアクセスポイント装置1やリピータ装置2を通じてアクセスポイント装置1に送信される。そして、当該応答メッセージは、アクセスポイント装置1からサーバ10に送信され、サーバ10から発信元の端末に送信されて、通信回線が接続するようにされ、上述したように、音声パケットの送受が行われて通話が行うようにされる。
また、キー操作部341を通じて相手先の電話番号を入力し、自機から発呼を行うようにした場合には、制御部320は、当該相手先の電話番号を含む発呼メッセージを生成する。この発呼メッセージは、パケット分解/生成部326において、パケット化され、これが、送信系を通じてアクセスポイント装置1に、あるいは、リピータ装置2を通じてアクセスポイント装置1に送信される。
当該発呼メッセージは、アクセスポイント装置1からサーバ10に送信され、サーバ10から目的とする相手先の端末に送信される。そして、相手先のユーザがオフフック操作を行って着信に応答するようにしたときには、応答メッセージが送信されてくる。これに応じて、無線通信端末3及びアクセスポイント装置1は、さらには無線通信端末3とアクセスポイント装置1との間にリピータ装置2を介在させて、通信回線を接続するようにする。これにより、上述したように、音声パケットの送受が行われて通話が行うようにされる。
このように、制御部320は、自機の状態を管理して、通話や発着信などを制御する端末状態管理部としての機能と、LED(ランプ)制御、LCDへの表示制御、アラーム音や音声メッセージの出力制御などを行う端末制御部としての機能をも実現している。
そして、この実施の形態の無線通信端末3は、上述した制御部320の機能によって、アクセスポイント装置1にもリピータ装置2にも接続可能なオーバーラップ領域においては、できるだけアクセスポイント装置1と接続するようにする。これにより、無線通信区間を少なくして、通信品位を高く維持し、信頼性の高い無線通信システムを構築することができるようにしている。以下に、無線通信端末3の制御部320が行うオーバーラップ領域での処理について具体的に説明する。
[ローミング閾値と接続可能閾値の設定]
図5は、ローミング閾値と接続可能閾値について説明するための図である。一般にアクセスポイント装置1やリピータ装置2は、無線通信システムを構築する施設内の天井や壁の上部に設けられる場合が多い。このため、図5においても、アクセスポイント装置1、リピータ装置2は、施設内の天井などに設置される場合をイメージしている。
そして、図5では説明を簡単にするため、アクセスポイント装置1からの信号だけが受信可能な領域と、リピータ装置2からの信号だけが受信可能な領域と、両方の信号の受信が可能なオーバーラップ領域OVとを設けた場合を示している。なお、図5に示した例の場合には、アクセスポイント装置1とリピータ装置2との間の無線通信も良好に行うことができるようになっている。
図5において、アクセスポイント装置1の両側から下に向かって伸びている点線は、アクセスポイント装置1から送信される信号の電波強度に対応している。すなわち、アクセスポイント装置1から送信された信号を受信する場合、アクセスポイント装置1の近傍ではその電波強度は高いが、アクセスポイント装置1から離れるほど、その電波強度は低くなることを示している。
同様に、図5において、リピータ装置2の両側から下に向かって伸びている点線は、リピータ装置2から送信される信号の電波強度に対応している。すなわち、リピータ装置2から送信された信号を受信する場合、リピータ装置2の近傍ではその電波強度は高いが、リピータ装置2から離れるほど、その電波強度は低くなることを示している。
そして、図5において、位置S1と位置S2との間が、アクセスポイント装置1からの信号とリピータ装置2からの信号との両方の受信が可能で、アクセスポイント装置1ともリピータ装置2とも無線接続が可能なオーバーラップ領域OVである。この場合、当然ながら、アクセスポイント装置1からの信号だけが受信可能なエリアでは、無線通信端末3はアクセスポイント装置1と無線接続する。同様に、リピータ装置2からの信号だけが受信可能なエリアでは、無線通信端末3はリピータ装置2と無線接続する。
しかし、両方の信号の受信が可能なオーバーラップ領域OVでは、無線通信端末3は、できるだけアクセスポイント装置1と無線接続し、無線通信区間を少なくする。しかし、アクセスポイント装置1との無線接続を優先するあまり、ローミングを実施しても、リピータ装置2との無線接続が遅れたり、逆にリピータ装置2との無線接続を早く解放しすぎたりすると、通信路が接続されている場合には、その通信路を適切に維持できない。
そこで、オーバーラップ領域OVでは、無線通信端末3はできるだけアクセスポイント装置1と無線接続するようにする。しかし、使用者の意図しない通信路の切断などの不具合が生じないように、アクセスポイント装置1からリピータ装置2へのローミングとリピータ装置2からアクセスポイント装置1へのローミングとを適切に行えるようにする。
このため、無線通信端末3では、アクセスポイント装置1と無線接続している場合に用いる第1のローミング閾値ARと、無線通信端末3がリピータ装置2と接続している場合に用いる第2のローミング閾値RRと用いる。また、無線通信端末3は、リピータ装置2と無線接続している場合に用いる第1の接続可能閾値ACと、無線通信端末3がアクセスポイント装置1と接続している場合に用いる第2の接続可能閾値RCとを用いる。これらは、無線通信端末3の機器別閾値管理部328に記録され、管理される。
ローミング閾値AR、RRは、上述もしたように、ローミングのために無線スキャンを行い、新たな接続先となるアクセスポイント装置やリピータ装置をサーチし始めるタイミングを特定するための受信信号の電波強度についての閾値である。このため、無線通信端末3がアクセスポイント装置1と無線接続している場合に用いる第1のローミング閾値ARは、できるだけアクセスポイント装置1との無線接続を維持するために低い電波強度とする。具体的には、図5に示すように、オーバーラップ領域OVのアクセスポイント装置1側の始点S1からかなり離れ、リピータ装置2側に近い位置におけるアクセスポイント装置1からの信号の電波強度を第1のローミング閾値ARとする。
これに対して、無線通信端末3がリピータ装置2と接続している場合に用いる第2のローミング閾値RRは、できるだけ速やかにアクセスポイント装置1と無線接続するために、第1のローミング閾値ARよりも高い電波強度とする。具体的には、図5に示すように、オーバーラップ領域OVのリピータ装置2側の始点S2から、あまり離れず、リピータ装置2側に近い位置におけるリピータ装置2からの信号の電波強度を第2のローミング閾値RRとする。このように、第1のローミング閾値ARと第2のローミング閾値RRとの関係は、第1のローミング閾値が、第2のローミング閾値より低い電波強度となるように設定する。
これにより、無線通信端末3がアクセスポイント装置1と無線接続している場合には、無線通信端末3がオーバーラップ領域OVに入って、アクセスポイント装置1からかなり離れないと、ローミングのための無線スキャン処理は開始されない。これに対して、無線通信端末3がリピータ装置2と無線接続している場合には、無線通信端末3がオーバーラップ領域OVに入って、あまりリピータ装置2から離れない位置で、ローミングのために無線スキャン処理が開始される。これにより、無線通信端末3は、アクセスポイント装置1と無線接続されている場合には、これをできるだけその接続を維持するように、ローミングのための無線スキャンの開始タイミングを遅くすることができる。逆に、リピータ装置2と接続されている場合には、速やかにアクセスポイント装置1と無線接続するように、ローミングのための無線スキャンの開始タイミングを早くするようにできる。
接続可能閾値は、上述もしたように、無線通信端末が接続先との間で無線接続して適切に通信を行うことが可能な受信信号の電波強度の閾値であり、新たな接続先を特定して無線接続先を切り替えるための受信信号の電波強度の閾値である。このため、アクセスポイント装置1に対する接続可能閾値(第1の接続可能閾値)ACとリピータ装置2に対する接続可能閾値(第2の接続可能閾値)RCとが設けられる。
そして、第1の接続可能閾値ACは、無線通信端末3がアクセスポイント装置1との間で適切に通信が可能となるアクセスポイント装置1からの信号の電波強度であって、アクセスポイント装置1と適切に通信が可能である、できるだけ低い電波強度が選択される。リピータ装置2に無線接続されている無線通信端末3が、第2のローミング閾値RRに基づいてローミングのための無線スキャンを開始させた後に、速やかにアクセスポイント装置1に無線接続するためである。
具体的に、第1の接続可能閾値ACは、図5に示すように、リピータ装置2からの信号の電波強度についての閾値である第2のローミング閾値RRの近傍のアクセスポイント装置1からの信号の電波強度が選択される。換言すれば、第1の接続可能閾値ACは、オーバーラップ領域OVのリピータ装置2側の始点S2に近い位置におけるアクセスポイント装置1からの信号の電波強度となる。
これに対して、第2の接続可能閾値RCは、無線通信端末3が安定してリピータ装置2と通信が可能となるリピータ装置2からの信号の電波強度であって、できるだけ高い電波強度が選択される。アクセスポイント装置1に無線接続されている無線通信端末3が、第1のローミング閾値ARに基づいてローミングのための無線スキャンを開始させた後に、良好に無線接続が可能なリピータ装置2に無線接続するためである。
具体的に、第2の接続可能閾値RCは、図5に示すように、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度についての閾値である第1のローミング閾値ARの近傍のリピータ装置2からの信号の電波強度が選択される。換言すれば、第2の接続可能閾値RCは、第1のローミング閾値ARよりも高い、リピータ装置2からの信号の電波強度となる。
図6は、図5を用いて説明したように設定される、第1のローミング閾値ARと、第2のローミング閾値RRと、第1の接続可能閾値ACと、第2の接続可能閾値RCとに基づいて行われるローミング処理について説明するための図である。図6(A)に示すように、アクセスポイント装置1の直下とその周辺はアクセスポイント装置1とのみ無線接続が可能な領域である。また、リピータ装置2の直下とその周辺はリピータ装置2とのみ無線接続が可能な領域である。そして、オーバーラップ領域OVが、アクセスポイント装置1とリピータ装置2とのいずれにも無線接続が可能なエリアである。この状態は、図5に示した状態と同じである。
そして、図6においても、図5を用いて説明した場合と同様に、第1のローミング閾値ARと、第2のローミング閾値RRと、第1の接続可能閾値ACと、第2の接続可能閾値RCとが設定されているものとする。これらの各閾値は、無線通信端末3の機器別閾値管理部328に記憶され、管理されているものとする。
この場合に、まず、図6(B)において、矢印YAが示すように、アクセスポイント装置1側からリピータ装置2側に無線通信端末3が移動する場合を考える。この場合に、無線通信端末3においては、まず、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度が、第1のローミング閾値ARより低くなったタイミングStAを、ローミングのための無線スキャンの開始タイミングとして検知する。そして、タイミングStAにおいて、ローミングのための無線スキャンを行う。この場合、無線通信端末3は、既にリピータ装置2からの信号を受信しているが、タイミングStAの時点においては、リピータ装置2からの信号の電波強度は、第2の接続可能閾値RCに達していないので、リピータ装置2へのローミングは行われず、無線通信端末3はアクセスポイント装置1との接続を維持する。
その後においても、無線通信端末3が、リピータ装置2側に徐々に移動していったとする。この場合、無線通信端末3においては、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度は、第1のローミング閾値ARより低くなっていく。このため、無線通信端末3では、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度が、第1のローミング閾値ARより低くければ、その時点をローミングのための無線スキャンの開始タイミングとして検知し、無線スキャンを順次に実行する。この無線スキャンの実行タイミングにおいて、リピータ装置2からの信号の電波強度が第2の接続可能閾値RCより大きくなっていれば、リピータ装置2を新たな接続先として特定し、無接続先をアクセスポイント装置1からリピータ装置2に切り替えるローミング処理を実行する。
このように、無線通信端末3が、アクセスポイント装置1側からリピータ装置2側に徐々に移動していった場合において、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度が第1のローミング閾値ARより低くなっていれば、ローミングのための無線スキャンを繰り返し実行する。そして、このようにして繰り返し行われる無線スキャンにおいて、受信信号の電波強度が第2の接続可能閾値RCよりも高いリピータ装置2が見つかったら、無線通信端末3は、無線接続先を当該リピータ装置2に切り替えることになる。
したがって、図6(B)に示した例の場合には、時点StA以降おいては、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度が第1のローミング閾値ARより小さくなるので、ローミングのための無線スキャンが繰り返し行われることになる。そして、時点SwRにおいて、リピータ装置2からの信号の電波強度が第2の接続可能閾値RCより大きくなるので、この時の無線スキャンによって見つかったリピータ装置2が、新たな接続先となって、アクセスポイント装置1からリピータ装置2へのローミングが行われる。
そして、図6(B)に示すように、無線通信端末3がアクセスポイント装置1の直下からリピータ装置2の直下に移動したとする。この場合、無線通信端末3とアクセスポイント装置1との接続区間である無線AP接続区間は、無線通信端末3とリピータ装置2との接続区間であるリピータ接続区間よりも長くなる。オーバーラップ領域OVに関して見てみても、無線通信端末3がアクセスポイント装置1と無線接続していた区間は、無線通信端末3がリピータ装置2と無線接続していた区間よりかなり長くなっていることが分かる。無線通信端末3がリピータ装置2と無線接続していた区間は、オーバーラップ領域OVのリピータ装置2側のごく短い区間に過ぎないことが分かる。
次に、図6(C)において、矢印YRが示すように、リピータ装置2側からアクセスポイント装置1側に無線通信端末3が移動する場合を考える。この場合に、無線通信端末3においては、まず、リピータ装置2からの信号の電波強度が、第2のローミング閾値RRより低くなったタイミングStRを、ローミングのための無線スキャンの開始タイミングとして検知する。そして、タイミングStRにおいて、ローミングのための無線スキャンを行う。この場合、無線通信端末3は、既にアクセスポイント装置1からの信号を受信しているが、タイミングStRの時点においては、リピータ装置2からの信号の電波強度は、第1の接続可能閾値ACに達していないので、アクセスポイント装置1へのローミングは行われず、無線通信端末3はリピータ装置2との接続を維持する。
その後においても、無線通信端末3が、アクセスポイント装置1側に徐々に移動していったとする。この場合、無線通信端末3においては、リピータ装置2からの信号の電波強度は、第2のローミング閾値RRより低くなっていく。このため、無線通信端末3では、リピータ装置2からの信号の電波強度が、第2のローミング閾値RRより低くければ、その時点をローミングのための無線スキャンの開始タイミングとして検知し、無線スキャンを順次に実行する。この無線スキャンの実行タイミングにおいて、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度が第1の接続可能閾値ACより大きくなっていれば、アクセスポイント装置1を新たな接続先として特定し、接続先をリピータ装置2からアクセスポイント装置1に切り替えるローミング処理を実行する。
このように、無線通信端末3が、リピータ装置2側からアクセスポイント装置1側に徐々に移動していった場合において、リピータ装置2からの信号の電波強度が第2のローミング閾値RRより低くなっていれば、ローミングのための無線スキャンを繰り返し実行する。そして、このようにして繰り返し行われる無線スキャンにおいて、受信信号の電波強度が第1の接続可能閾値ACよりも高いアクセスポイント装置1が見つかったら、無線通信端末3は、無線接続先を当該アクセスポイント装置1に切り替えることになる。
したがって、図6(C)に示した例の場合には、時点StR以降おいては、リピータ装置2からの信号の電波強度が第2のローミング閾値RRより小さくなるので、ローミングのための無線スキャンが繰り返し行われることになる。そして、時点SwAにおいて、アクセスポイント装置1からの信号の電波強度が第1の接続可能閾値ACより大きくなるので、この時の無線スキャンによって見つかったアクセスポイント装置1が、新たな接続先となって、リピータ装置2からアクセスポイント装置1へのローミングが行われる。
そして、図6(C)に示すように、無線通信端末3がリピータ装置2の直下からアクセスポイント装置1の直下に移動したとする。この場合、無線通信端末3とアクセスポイント装置1との接続区間である無線AP接続区間は、無線通信端末3とリピータ装置2との接続区間であるリピータ接続区間よりも長くなる。オーバーラップ領域OVに関して見てみても、無線通信端末3がアクセスポイント装置1と無線接続していた区間は、無線通信端末3がリピータ装置2と無線接続していた区間よりかなり長くなっていることが分かる。無線通信端末3がリピータ装置2と無線接続していた区間は、オーバーラップ領域OVのリピータ装置2側のごく短い区間に過ぎないことが分かる。
このように、この実施の形態の無線通信端末3は、アクセスポイント装置1にもリピータ装置2にも接続可能なオーバーラップ領域においては、できるだけアクセスポイント装置1と接続するようにすると共に、通信路が切断される状態が生じることがないように、適切にローミングを行うことができるようにしている。
[接続先等の機器の判別処理]
そして、無線通信端末3においては、自機が無線接続している機器は、アクセスポイント装置1なのかリピータ装置2なのか、また、自機が受信している信号の送信元の機器は、アクセスポイント装置1なのかリピータ装置2なのかを正確に判別できる。この判別には、具体的に2つの方法ある。図7、図8は、無線通信端末3が行う接続先等の機器の判別方法の例を説明するための図である。
図7は、無線通信端末3が接続可能なアクセスポイント装置やリピータ装置に関する情報の一覧リストである。このような一覧リストを、無線通信端末3の設定情報管理部327に記憶して管理する。当該一覧リストでは、SSID(Service Set Identifier)、セキュリティ、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ(図7ではデフォルトGWと記載。)、機器種別が、アクセスポイント装置やリピータごとに管理される。
SSIDは、アクセスポイント装置やリピータ装置のそれぞれを一意に特定することができる情報である。セキュリティは、暗号化方式を示す情報である。IP(Internet Protocol)アドレスは、アクセスポイント装置やリピータ装置のそれぞれに割り振られた識別情報であって、ネットワーク上で各機器を一意に特定可能な情報である。サブネットマスクは、IPアドレスの内、前方24ビットをネットワークアドレスとして認識し、後方8ビットをホストアドレスとして認識するようにするものである。
デフォルトゲートウェイは、上述もしたように、自機が所属するネットワークの外へアクセスする際に使用される「出入り口」の代表となる機能を実現する装置を特定する情報である。そして、機種種別が、当該機器がアクセスポイント装置なのか、リピータ装置なのかを示す情報である。
そして、無線通信端末3の制御部320は、アクセスポイント装置1やリピータ装置2から送信される信号に含まれるSSIDに基づいて、無線通信端末3の設定情報管理部327で管理されている図7に示した一覧リストの機器種別を参照する。これにより、制御部320は、受信した信号の送信元がアクセスポイント装置なのか、リピータ装置なのかを適切に判別できる。
また、別の方法として、アクセスポイント装置やリピータ装置は、所定のタイミングごとにいわゆるビーコン信号を送信し、無線通信端末3が無線スキャンを行って、接続先をサーチすることができるようにしている。この場合のビーコン信号は、例えば、図8(A)に示すようなフォーマットを有している。すなわち、ビーコン信号は、エレメントIDとインフォメーションエレメント(実際のデータ)とからなり、エレメントIDが、7番から15番及び32番から255番はリザーブIDとして確保されている。
このため、図8(B)に示すように、アクセスポイント装置やリピータ装置が、ビーコン信号の200番のエレメントIDを利用し、送信元がアクセスポイント装置なのかリピータ装置なのかを示す情報を、ビーコン信号に含めて送信する。図8(B)に示す例は、200番のエレメントIDを用い、データ長(Length)と、機器種別(Information)をビーコン信号に含めて送信する。
これにより、無線通信端末3は、受信したビーコン信号のエレメントIDが200番の情報により、無線通信端末3の制御部320は、当該ビーコン信号の機器が、アクセスポイント装置なのかリピータ装置なのかを適切に判別できる。この場合、例えば、設定情報管理部327において、「01:アクセスポイント装置1」、「02」リピータ装置」というように、エレメントIDが200番の情報から送信元の機器の機器種別を特定するための情報を管理しておけばよい。
なお、ここでは、リザーブされているエレメントIDのうち、200番のエレメントIDを用いるものとして説明したが、これに限るものではない。リザーブされている他のエレメントIDを用いるようにしてももちろんよい。要は、当該無線通信システムにおいて、機器種別の通知に用いるエレメントIDを統一しておけばよい。
また、無線通信端末3は、自機が無線接続している相手先の機器も、設定情報管理部327において管理することができるので、接続先の機器の機器種別と、自機が受信したビーコン信号などの信号の送信元の機器の機器種別とを区別して判別できる。
[アクセスポイント装置/リピータ装置接続切替処理の詳細]
次に、無線通信端末3で実行されるアクセスポイント装置/リピータ装置接続切替処理、すなわちローミング処理について説明する。図9は、ローミング処理を説明するためのフローチャートであり、図10、図11は、図9のステップS106で実行される接続先選択処理を説明するためのフローチャートである。
図9のフローチャートに示すローミング処理は、無線通信端末3の制御部320において、所定のタイミングごとに実行される。図9のフローチャートに示すローミング処理が実行されると、まず、制御部320は、機器判別部329が機能し、設定情報管理部327で管理されている情報を参照し、図7、図8を用いて説明したいずれかの方法により、自機が現在無線接続している接続先の機器種別を判別する(ステップS101)。
具体的にステップS101においては、図7に示した一覧表を利用する場合には、機器判別部329は、自機が無線接続している機器からの受信信号に含まれるSSIDに基づいて、当該一覧表を参照して接続先の機器種別を判別する。すなわち、自機の接続先がアクセスポイント装置1かリピータ装置2かを判別する。なお、設定情報管理部327で管理している自機の無線接続先のSSIDに基づいて、当該一覧表を参照して接続先の機器種別を判別してもよい。
また、図8を用いて説明したビーコン信号を利用する場合には、機器判別部329は、自機が無線接続している機器からのビーコン信号を受信する、そして、機器判別部329は、その受信したビーコン信号のエレメントIDが200番の情報に基づいて、無線接続先の機器の機器種別を判別する。
そして、制御部320は、ステップS101での判別結果に基づいて、無線接続先がアクセスポイント装置か否かを判別する(ステップS102)。ステップS102の判別処理において、無線接続先がアクセスポイント装置であると判別した時には、タイミング検知部330が機能し、無線接続先から送信された信号の電波強度を取得し、その電波強度が第1のローミング閾値ARより小さいか否かを判別する(ステップS103)。このステップS103の判別処理が、アクセスポイント装置1に無線接続されている場合において、ローミングのための無線スキャンを実行するタイミングが到来したか否かを判別する処理である。
ステップS103の判別処理において、タイミング検知部330がローミングのための無線スキャンの実行タイミングが到来したと判別したとする。この場合、制御部320は、スキャン処理部331及びタイミング検知部330を制御して、接続先選択処理を実行すする(ステップS106)。
また、ステップS102の判別処理において、無線接続先がアクセスポイント装置ではないと判別した時には、制御部320は、ステップS101での判別結果に基づいて、無線接続先がリピータ装置か否かを判別する(ステップS104)。ステップS104の判別処理において、無線接続先がリピータ装置であると判別した時には、タイミング検知部330を制御し、無線接続先から送信された信号の電波強度を取得し、その電波強度が第2のローミング閾値RRより小さいか否かを判別する(ステップS105)。このステップS105の判別処理が、リピータ装置2に無線接続されている場合において、ローミングのための無線スキャンを実行するタイミングが到来したか否かを判別する処理である。
ステップS105の判別処理において、タイミング検知部330がローミングのための無線スキャンの実行タイミングが到来したと判別したとする。この場合、制御部320は、スキャン処理部331及びタイミング検知部330を制御して、接続先選択処理を実行すする(ステップS106)。
なお、ステップS103の判別処理と、ステップS105の判別処理において、ローミングのための無線スキャンの実行タイミングは到来していないと判別した場合には、この図9に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。また、ステップS104の判別処理において、無線接続先の機器種別がリピータ装置ではないと判別した時には、まだ無線接続されていないか、無線接続先の機器が特定できない状態であるので、この図9に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
そして、ステップS106では、図10、図11を用いて説明する接続先選択処理が実行される。ステップS106の処理の後においては、制御部320は、新たな接続先があるか否か(新たな接続先が選択できたか否か)を判別する(ステップS107)。ステップS107の判別処理において、新たな接続先があると判別したときには、制御部320は、接続処理部332を制御し、無線通信先を新たな接続先に切り替え、元の無線接続先との接続を解放する処理を実行する(ステップS108)。
ステップS108の処理の後と、ステップS107の判別処理において、新たな接続先はないと判別したときには、この図9に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
このように、無線通信端末3は、所定のタイミングごとに図9に示す処理を実行する。これにより、無線通信端末3を持った使用者(ユーザー)が移動することにより、無線接続中のアクセスポイント装置1やリピータ装置2から離れた場合でも、新たな接続先を探し出して、接続先を切り替えるローミング処理を適切に行うことができる。
[接続先選択処理の詳細]
図10、図11は、図9に示したローミング処理のステップS106で実行される接続先選択処理を説明するためのフローチャートである。図10、図11に示す接続先選択処理は、上述もしたように、主にスキャン処理部331が機能して実行する処理である。すなわち、
図10、図11に示す接続先選択処理が実行されると、まず、スキャン処理部331は、新たな接続先をサーチするために用いるデータの格納エリアである保持情報Hdと、新規情報Nw(1)〜Nw(n)とを初期化する(ステップS201)。図12は、保持情報Hdと、新規情報Nw(1)〜Nw(n)とについて説明するための図である。
図12(A)に示すように、保持情報Hdは、SSIDの格納エリア、機器区分の格納エリア、電波強度の格納エリアからなる。図12(B)に示すように、新規情報Nw(1)〜Nw(n)は、添字の格納エリア、SSIDの格納エリア、機器区分の格納エリア、電波強度の格納エリアからなる。
このように、新規情報Nw(1)〜Nw(n)が、添字によって複数個設けられているのは、この実施の形態の無線通信システムは、複数のアクセスポイント装置1や複数のリピータ装置2が用いられて構成されているためである。すなわち、無線通信端末3が受信する信号の送信元のアクセスポイント装置1やリピータ装置2が複数存在するためであり、無線通信端末3が1つの場所で受信する信号の送信元の数に応じた分だけ用意される。最大でも、当該無線通信システムを構成するアクセスポイント装置1及びリピータ装置2の総数を添字nとすればよい。すなわち、添字nは、正の整数である。
そして、スキャン処理部331は、アクセスポイント装置1とリピータ装置2との検索処理を実行する(ステップS202)。ステップS202においてスキャン処理部331は、無線通信端末3の受信系を通じて、近隣のアクセスポイント装置1やリピータ装置2からのビーコン信号を受信し、受信したビーコン信号の受信強度を検出する。そして、受信した信号ごとに、図12(B)を用いて説明した新規情報Nw(1)〜Nw(n)にSSIDと電波強度とを格納する。
更に、ステップS202においては、機器判別部329を制御して、受信した信号のそれぞれのSSIDに基づいて、図7又は図8を用いて説明した方法を用い、送信元の機器種別を判別し、判別結果を対応する新規情報Nw(1)〜Nw(n)の機器種別エリアに格納する。このようにして、無線通信端末3が受信した複数の信号のそれぞれのSSID、機器種別、電波強度が、図12(B)に示した態様の新規情報Nw(1)〜Nw(n)に格納される。これが、ステップS202で実行されるアクセスポイント装置/リピータ装置2の検索処理である。
次に、スキャン処理部331は、ステップS202においての検索処理の結果得られた新規情報Nw(1)〜Nw(n)のそれぞれごとに、図10のステップS203と図11のステップS204とに挟まれたステップS1〜ステップS8の処理を実行する。ここでは、まず、処理対象のデータが新規情報Nw(1)である場合を例にして、ステップS1〜ステップS8の処理について説明する。
まず、スキャン処理部331は、新規情報Nw(1)について、発見した機器はアクセスポイント装置1かリピータ装置2かを判別する(ステップS1)。すなわち、新規情報Nw(1)の機器種別はアクセスポイント装置1かリピータ装置2かを判別する。ステップS1の判別処理において、発見した機器はアクセスポイント装置1であると判別したとする。この場合、スキャン処理部331は、機器別閾値管理部328で管理されている第1の接続可能閾値ACを用い、新規情報Nw(1)の電波強度は、第1の接続可能閾値AC+X以上か否かを判別する(ステップS2)。
ステップS2において、第1の接続可能閾値ACに値Xを加算するのは、一時的に電波強度が第1の接続可能閾値ACを超えた場合を排除するためである。すなわち、無線通信端末3が確実にアクセスポイント装置1に近づく方向に移動しており、アクセスポイント装置1から送信された信号の電波強度が確実に第1の接続可能閾値ACより大きくなった場合を検知するためである。ステップS2の判別処理において、新規情報Nw(1)の電波強度は、第1の接続可能閾値AC+X以上であると判別したときには、図11のステップS4の判別処理に進む。
また、ステップS1の判別処理において、発見した機器はリピータ装置2であると判別したとする。この場合、スキャン処理部331は、機器別閾値管理部328で管理されている第2の接続可能閾値RCを用い、新規情報Nw(1)の電波強度は、第2の接続可能閾値RC+X以上か否かを判別する(ステップS3)。
ステップS3において、第2の接続可能閾値RCに値Xを加算するのは、ステップS2の判別処理の場合と同様に、一時的に電波強度が第2の接続可能閾値RCを超えた場合を排除するためである。すなわち、無線通信端末3が確実にリピータ装置2に近づく方向に移動しており、リピータ装置2から送信された信号の電波強度が確実に第2の接続可能閾値RCより大きくなった場合を検知するためである。ステップS3の判別処理において、新規情報Nw(1)の電波強度は、第2の接続可能閾値RC+X以上であると判別したときには、図11のステップS4の判別処理に進む。
なお、ステップS2の判別処理において、新規情報Nw(1)の電波強度は、第1の接続可能閾値AC+X以上ではないと判別したとする。この場合には、新規情報Nw(1)の機器は、接続先の候補とはならないので、新規情報Nw(1)についての処理を終了し、次の新規情報Nw(2)に対する処理に移ることになる。同様に、ステップS3の判別処理において、新規情報Nw(1)の電波強度は、第2の接続可能閾値RC+X以上ではないと判別したとする。この場合には、新規情報Nw(1)の機器は、接続先の候補とはならないので、新規情報Nw(1)についての処理を終了し、次の新規情報Nw(2)に対する処理に移ることになる。
そして、図11のステップS4に進んだ場合には、接続先の候補となった機器の情報を保持する保持情報Hdに既にデータが格納されているかどうか、接続先の候補となる機器が既に存在しているかどうかを判別する(ステップS4)。ステップS4の判別処理において、保持情報Hdに既にデータが格納されている(接続先の候補となる機器が存在する)と判別したときには、スキャン処理部331は、保持情報Hdの電波強度と新規情報Nw(1)の電波強度とを比較し、その結果を判別する(ステップS5)。
ステップS5の判別処理において、保持情報Hdの電波強度と新規情報Nw(1)の電波強度とが等しいと判別した場合には、スキャン処理部331は、保持情報Hdの機器区分はアクセスポイント装置か否かを判別する(ステップS6)。ステップS6の判別処理において、保持情報Hdの機器区分はアクセスポイント装置ではないと判別した時には、スキャン処理部331は、新規情報Nw(1)の機器区分はアクセスポイント装置か否かを判別する(ステップS7)。ステップS7の判別処理において、新規情報Nw(1)の機器区分はアクセスポイント装置であると判別した時には、スキャン処理部331は、新規情報Nw(1)のSSID、機器区分、電波強度を保持情報Hdの対応エリアに格納する。すなわち、保持情報Hdの情報を新規情報Nw(1)の情報に入れ替える(ステップS8)。
このステップS6〜ステップS8の処理により、保持情報Hdと新規情報Nw(1)の電波強度が同じ場合に、アクセスポイント装置に関する情報を優先的に接続先の候補として保持情報Hdに保持することができる。
また、ステップS4の判別処理において、保持情報Hdにデータが格納されていない(接続先の候補となる機器が存在していない)と判別したときには、スキャン処理部331は、ステップS8の処理を実行する。すなわち、保持情報Hdの情報を新規情報Nw(1)の情報に入れ替える(ステップS8)。同様に、ステップS5の判別処理において、保持情報Hdの電波強度より新規情報Nw(1)の電波強度の方が大きいと判別した場合にも、スキャン処理部331は、ステップS8の処理を実行する。すなわち、保持情報Hdの情報を新規情報Nw(1)の情報に入れ替える(ステップS8)。これらの処理により、接続先の候補に関する情報を保持情報Hdに格納することができる。このステップS8の処理の後においては、次の新規情報についての処理を行う。
また、ステップS5の判別処理において、保持情報Hdの電波強度の方が新規情報Nw(1)の電波強度より大きいと判別した場合には、保持情報Hdの入れ替えは必要ないので、次の新規情報についての処理を行う。また、ステップS6の判別処理において、保持情報Hdの機器区分はアクセスポイント装置であると判別した時にも、アクセスポイント装置1を優先的に接続先とするため、保持情報Hdの入れ替えは必要ないので、次の新規情報についての処理を行う。また、ステップS7の判別処理において、新規情報Nw(1)の機器区分はアクセスポイント装置ではないと判別した時にも、アクセスポイント装置1を優先的に接続先とするため、保持情報Hdの入れ替えは必要ないので、次の新規情報についての処理を行う。
なお、ステップS203とステップS204との間に示したステップS1〜ステップS8の処理は、新規情報Nw(1)〜新規情報Nw(n)のそれぞれについて順次に行われる。したがって、図11に示した新規情報Nw(n)における変数nは、無線通信端末3が受信した送信元(SSID)が異なる受信データの数に対応し、ステップS1〜ステップS8の処理が繰り返されるごとに、Nw(1)、Nw(2)、Nw(3)、…のように順番に変わる。
また、無線通信端末3が属する無線通信システム以外のアクセスポイント装置やリピータ装置からの信号が存在すする場合には、例えば、設定情報管理部327の図7に示した一覧表と突き合わせを行うことにより、これを処理対象から外すことができる。
この図10、図11に示す処理を実行することにより、最終的に保持情報Hdに格納されているSSIDにより特定される機器が、新たな接続先となる。そして、図10、図11に示す処理が終了すると、図9に示した処理に戻り、ステップS107からの処理が行われ、新たな接続先に関する情報が保持情報Hdに格納されている場合に、これを用いて無線接続先を、新たな接続先に変更すすることができる。
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の無線通信システムの無線通信端末3においては、無線接続先が、アクセスポイント装置1かリピータ装置2かに応じて、ローミングのための無線スキャンのタイミングを異ならせることができる。具体的には、接続先がアクセスポイント装置1の場合には、アクセスポイント装置1との無線接続を維持するため、ローミングのための無線スキャンのタイミングを遅くすることができる。また、接続先がリピータ装置2の場合には、アクセスポイント装置1と早く無線接続できるようにするため、ローミングのための無線スキャンのタイミングを早くすることができる。
また、実際に接続先を切り替える場合のタイミングも、無線接続先が、アクセスポイント装置1かリピータ装置2かに応じて異ならせることができる。具体的には、接続先の候補がアクセスポイント装置1の場合には、切り替えるか否かの判断基準となる受信信号の電波強度の閾値を、アクセスポイント装置1と適切に通信が可能な電波強度であってできるだけ低い電波強度とする。逆に、接続先の候補がリピータ装置2の場合には、切り替えるか否かの判断基準となる受信信号の電波強度の閾値を、リピータ装置2と高品位に無線通信が可能な電波強度とする。
これにより、無線接続先がアクセスポイント装置1の場合には、適切に通信を行うことができるリピータ装置2にローミングできるようにされる。また、無線接続先がリピータ装置2の場合には、できるだけ早い段階でアクセスポイント装置1にローミングできるようにされる。これにより、通信品質を高品位に保つことができる信頼性の高い無線通信システムが実現できる。
[変形例]
なお、第1のローミング閾値AR、第2のローミング閾値RR、第1の接続可能閾値AC、第2の接続可能閾値RCは、用いるアクセスポイント装置1やリピータ装置2の性能等に応じて、実験等を通じて適切な値を選択するようにすればよい。この場合に、各閾値は、図5、図6を用いて説明した関係を満足するようにすればよい。
また、無線通信端末3の制御部320において、無線通信可能なアクセスポイント装置1やリピータ装置2との間の無線通信時のエラー率に応じて、ローミング閾値や接続可能閾値を変動させることもできる。つまり、無線通信端末3の制御部320は、電波強度だけでなく、相手先からの信号を受信した場合に、そのエラー率をも検出するようにする。そして、無線通信端末3の制御部320は、無線接続しているアクセスポイント装置1との間でエラー率が低い場合には、第1のローミング閾値ARをより低くする。また、接続先の候補となったリピータ装置2との間でエラー率が高い場合には、第2の接続可能閾値RCをより高くする。
また、無線通信端末3は、無線接続しているリピータ装置2との間でエラー率が高い場合には、第2のローミング閾値RRをより高くする。また、接続先の候補となったアクセスポイント装置1との間でエラー率が高い場合には、第1の接続可能閾値ACをより高くする。このようにして、無線通信端末3は、通信時のエラー率に応じて、ローミング閾値、接続可能閾値の調整を行うようにすることもできる。
また、無線通信端末3の制御部320において、リピータ装置2の輻輳状況によって、ローミング閾値や接続可能閾値を変動させることもできる。つまり、リピータ装置2においては、自機に無線接続している無線通信端末3を管理しているため、自機に何台の無線通信端末が無線接続されているのかを把握している。このため、無線通信端末3は、リピータ装置2から接続中の無線通信端末3の台数の通知も受けるようにする。
そして、無線通信端末3の制御部320は、自機が無線接続中のリピータ装置2に多くの他の無線通信端末が接続されている場合には、第2のローミング閾値RRをより高くし、第1の接続可能閾値ACをできるだけ低くして、早くアクセスポイント装置1に接続することができるようにする。また、新たな接続先の候補となるリピータ装置2に接続されている他の無線通信端末が多い場合には、第2の接続可能閾値RCをより高くして、より確実に通信が可能な状況になった場合に、新たな接続先として特定させるようにする。このようにして、無線通信端末3は、相手機器の輻輳状況に応じて、ローミング閾値、接続可能閾値の調整を行うようにすることもできる。
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項におけるアクセスポイント装置、リピータ装置の送信手段の機能は、実施の形態のアクセスポイント装置1の制御部110及び送信用処理回路103等の送信系、リピータ装置2の制御部230及び送信用処理回路221等の送信系が実現している。
また、請求項における無線通信端末の第1の管理手段、受信手段、判別手段、検知手段、スキャン手段の各機能は、実施の形態の無線通信端末3の機器別閾値管理部328、受信用処理回路等からなる受信系、機器判別部329、タイミング検知部330、スキャン処理部331が実現している。
また、請求項における無線通信端末の第2の管理手段、特定手段、接続処理手段の各機能は、実施の形態の無線通信端末3の機器別閾値管理部328、スキャン処理部331、接続処理部332が実現している。