図面を参照してこの発明の音声通信システムについて説明する。図1は、この発明の実施形態である無線アクセスポイント13が用いられる音声通信システムの構成図である。この音声通信システムでは、Wi−Fiなどの無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)16を用いて、複数の端末装置14が相互に通信を行う。端末装置14は、無線通信用のハンディトランシーバに似た形状をしており、図3に示すようにPTT(プッシュ・トゥ・トーク)スイッチ220を備えている。端末装置14は、機能面で言えば、無線アクセスポイント(AP)13を介して音声パケットを送受信する無線ネットワーク機器である。中継装置であるサーバ装置11は、複数の端末装置14の有線ネットワーク15および無線LAN16を経由した端末装置14相互の通信を中継する。なお、以下、有線ネットワーク15および無線LAN16を総称してネットワーク17と呼ぶ。
無線アクセスポイント13は、複数設置されている。無線アクセスポイント13は、たとえば、ビルのフロア毎または部屋毎にそれぞれ設置される。各無線アクセスポイント13は、それぞれ設置されたフロアまたは部屋の全部または一部のカバーエリアを有している。サーバ装置11は、端末装置14がどの無線アクセスポイント13のカバーエリアにいるかによって、その端末装置14がどのフロアまたは部屋にいるかを推定することができる。
サーバ装置11は、音声通信システム内に、複数の(この実施形態では2の)区分音声通信システム101、102を構築可能である。すなわち、従来、複数の音声通信システムは、それぞれ別のサーバ装置11を設けて構築されるものであったが、このサーバ装置11は、自装置に接続される複数の端末装置14を複数の集合に分割し、各集合が仮想的にそれぞれ独立した音声通信システム(区分音声通信システム101、102)に見えるように音声信号の転送等を制御する。各区分音声通信システム101、102に所属する端末装置14は、同一のシステム101、102に所属する端末装置14のみと通信が可能である。
この音声通信システムは、1つのビルに複数の企業が存在する場合や1つの商店街に複数の企業および店舗が存在する場合などに好適に適用可能である。たとえば、この音声通信システムを企業A,Bが在籍する1つのビルに設け、区分音声通信システム101を企業A用に設置し、区分音声通信システム102を企業B用に設置する。上記例では、企業A,Bが同一フロアで無線アクセスポイント13を共用する場合においても、端末装置14は、同一のシステムに所属する端末装置14のみと通信が可能である。これにより、1台のサーバ装置11で、企業A,B専用の音声通信システム(区分音声通信システム101、102)を構築することができ、各企業内に限定された端末装置14相互の通信が可能となる。
端末装置14は、起動されると無線アクセスポイント13を介してサーバ装置11にアクセスする。サーバ装置11は、その端末装置14に対して、設定データを送信し、その端末装置14を通信可能な状態にセットアップする。サーバ装置11が送信する設定データは、たとえば、この端末装置14が属する区分音声通信システム101または102の番号(区分システム番号)、この端末装置14が通信可能な端末番号、および、更新プログラムなどである。
有線ネットワーク15として、Ethernet(登録商標)のLANやインターネットなどが使用可能である。ネットワーク17にインターネットが含まれる場合には、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)を用いることで安全な通信が可能である。また、無線LAN16として、Wi−FiなどIEEE802.11に準拠した通信方式などが適用可能である。端末装置14と無線アクセスポイント13とは、この無線LAN16の通信方式で通信する。
無線アクセスポイント13は、上述したように複数設置されている。各無線アクセスポイント13は、たとえば、ビルの異なるフロア、異なる部屋などにそれぞれ設置され、各フロア、部屋の全部または一部を通信範囲としている。これにより、端末装置14がどの無線アクセスポイント13と通信しているかによって、その端末装置14がどのフロア/部屋にいるかを推定することができる。この音声通信システムで端末装置14の全通信可能範囲は、サーバ装置11および管理装置12の管理において、上記フロア、部屋など、無線アクセスポイント13の設置場所の物理的または機能的な区分に応じて複数のエリアに分割される。サーバ装置11は、通信中の無線アクセスポイント13の情報(BSSID)を各端末装置14から受信し、端末装置14の現在位置を管理している。
端末装置14は、自己が所属する区分音声通信システム101または102内で、個別通信、グループ通信、全体通信(全体呼出)および近隣通信(近隣呼出)の形態で他の端末装置14と通信する。個別通信は、端末装置14が、他の1台の端末装置14を呼び出して行う1対1の通信形態である。グループ通信は、端末装置14が、予め設定されているグループを呼び出し、そのグループに所属する端末装置14と通信を行う形態である。全体通信は、端末装置14の全体呼出により、その端末装置14が所属する区分音声通信システム101または102内の通信可能な全ての端末装置14と通信を行う形態である。グループ通信および全体通信では、3台以上の端末装置14の相互通信が可能である。近隣通信は、端末装置14の近隣呼出により、自己の近隣にいる他の端末装置14と通信を行う形態である。この実施形態では、その端末装置14が接続している無線アクセスポイント13のカバーエリア(部分通信エリア)を近隣の範囲すなわち近隣エリアとしている。近隣エリアの詳細については後述する。
ユーザは、自己の端末装置14を操作してこれらの通信形態の中から希望する形態を選択可能である。また、近隣通信には、近隣エリアにいる通信可能な全ての端末装置14と通信する形態(近隣全体通信)、および、近隣エリアにいる通信可能な端末装置14のうち予め設定されているグループに所属する端末装置14と通信をする形態(近隣グループ通信)がある。本実施形態において、近隣通信と記載した場合は、近隣全体通信および近隣グループ通信の両方を含む。なお、近隣全体通信も近隣グループ通信も自己が所属する区分音声通信システム101または102の範囲内で処理される。
この音声通信システムでは、端末装置14は、PTTスイッチ220(図3参照)がオンされると、SIP手順のような通信確立手順を行うことなく、マイク240(図3参照)から入力された音声信号に通信相手識別番号が付加された音声パケットをサーバ装置11に送信する。サーバ装置11は、その音声信号を通信相手識別番号(図4参照)で識別される通信相手宛に転送する。このように、この音声通信システムでは、音声パケット(RTPパケット)を送ることで通信が開始されるため、ユーザはPTTスイッチ220をオンするとほぼ同時に通信を開始することができ、従来の無線通信のトランシーバと同じような使用感で通信を行うことができる。このような使用感を実現するため、各端末装置14のIPアドレスやグループなどの管理、および、音声信号の転送はサーバ装置11が行う。
図1において、有線ネットワーク15には、管理装置12が接続されている。管理装置12は、たとえば、管理プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータなどで構成されている。管理装置12は、管理者の操作に応じてサーバ装置11にアクセスし、サーバ装置11に図7A,図7Cに示すテーブルなどを設定する。また、管理装置12は、区分音声通信システム101,102を構築する。具体的には、管理装置12が、管理者の操作に応じてサーバ装置11にアクセスし、図7Aに示す端末テーブル301の各端末番号に対応する区分システム番号を設定する。これにより、各端末番号の端末装置14が、それぞれ設定された区分システム番号の区分音声通信システムに所属させられる。区分音声通信システムの数は、2に限定されず3以上でもよい。
さらに、管理装置12は、1台の端末装置としても機能し、他の端末装置14との通信が可能である。管理装置12は、個別通信、グループ通信および全体通信の呼び出しが可能であるとともに、エリア指定通信の呼び出しが可能である。エリア指定通信は、管理装置12のユーザ(管理者)によって部分通信エリアが指定され、管理装置12が、指定された部分通信エリアにいる端末装置14を呼び出して通信する通信形態である。エリア指定通信も、近隣通信と同様に、指定された部分通信エリアにいる通信可能な全ての端末装置14と通信する形態(エリア指定全体通信)、および、指定された部分通信エリアにいる端末装置14のうち、予め設定されている既存グループに所属する端末装置14と通信する形態(エリア指定グループ通信)がある。本実施形態において、エリア指定通信と記載した場合は、エリア指定全体通信およびエリア指定グループ通信の両方を含む。なお、管理装置12のエリア指定全体通信およびエリア指定グループ通信は、ユーザによって指定された区分音声通信システム101および/または102内で処理される。区分音声通信システム101,102の両方が指定された場合は、ネットワーク17を介して通信可能な全ての端末装置14を対象として処理される。
なお、近隣通信は、近隣エリア、すなわち、端末装置14が接続している無線アクセスポイント13のカバーエリアが、部分通信エリアに選択されるエリア選択通信と言うことも可能である。この場合、部分通信エリアの選択は、ユーザに代わってサーバ装置11によって行われる。
図2は、無線アクセスポイント13のブロック図である。無線アクセスポイント13は、制御部60、ネットワーク処理部61、記憶部68を有している。制御部60は、記憶部68に記憶されている処理プログラムなどに従って装置全体の動作を制御する。記憶部68は、たとえば不揮発性のメモリであり、上述した処理プログラムに加えて自己のBSSID、IPアドレス、所属エリアテーブル600(図12A参照)などを記憶している。所属エリアテーブル600については後述する。ネットワーク処理部61は、アンテナ62、高周波回路63、無線手順処理部64および有線手順処理部65を有している。
無線手順処理部64は、IEEE802.11などのプロトコルに従った手順を実行し、端末装置14とパケット通信を行う。有線手順処理部65は、IEEE802.3(Ethernet(登録商標))に従った処理を実行し、有線ネットワーク15上に接続された機器とパケット通信を行う回路である。無線手順処理部64と有線手順処理部65とは、互いにパケットの交換を行う。高周波回路63は、無線手順処理部64から入力されたパケットを所定チャンネルのキャリア信号に重畳してアンテナ62から送信する。また、高周波回路63は、アンテナ62から受信した信号を復調してパケットを取り出し、このパケットを無線手順処理部64に入力する。
図3は、端末装置14のブロック図である。上述したように、端末装置14は、機能面から言うと、無線LANの無線アクセスポイント(AP)13を介して音声パケットを送受信する無線ネットワーク機器である。制御部20は、端末装置14の動作を制御し、マイクロプロセッサで構成される。制御部20は、各種のデータが記憶される記憶部21を有している。この記憶部21にサーバ装置11からダウンロードされた設定データが記憶される。制御部20には、操作部22、表示部23、オーディオ回路24および無線LAN通信部25が接続されている。操作部22は、PTTスイッチ220などのキースイッチを含む。そして、操作部22は、近隣呼出モードのオン/オフ、通信相手識別番号の選択などのユーザの操作を受け付け、その操作信号を制御部20に入力する。通信相手識別番号は、ユーザが通信相手(target device)を指定するために選択する番号であり、個別番号、グループ番号または全体番号が用いられる。表示部23は液晶ディスプレイを含む。液晶ディスプレイには、ユーザの操作によって選択された通信相手識別番号や着信した音声信号に付加されていた通信相手識別番号などが表示される。
オーディオ回路24は、マイク240およびスピーカ241を有している。制御部20は、受信した音声パケットをデコードしてオーディオ回路24に入力する。オーディオ回路は、このデコードされたオーディオ信号をアナログ信号に変換してスピーカ241から出力する。オーディオ回路24は、マイク240から入力された音声信号をデジタル信号に変換して制御部20に入力する。制御部20は、このデジタルオーディオ信号を音声パケット化して無線LAN通信部25に入力する。無線LAN通信部25は、上述のIEEE802.11に準拠した通信方式で無線通信を行う回路を有する。無線LAN通信部25は、制御部20から入力されたパケットを無線アクセスポイント13に向けて送信するとともに、無線アクセスポイント13から受信したパケットを制御部20に入力する。
ユーザがPTTスイッチ220を押しながらマイク240に向けて音声を発すると、端末装置14は、この音声信号を音声パケットに編集してサーバ装置11に向けて送信する。
音声パケットは、図4に示すような構成をしている。音声パケットのデータ本体には、デジタル化された音声信号とともに、通信相手識別番号、送信元端末番号、区分システム番号、エリア情報、および、近隣通信フラグが含まれている。エリア情報は、近隣通信またはエリア指定通信の場合の部分通信エリアを指定する情報であり、近隣通信の場合は、接続中の無線アクセスポイント13の番号(AP番号)が書き込まれ、エリア指定通信の場合は、管理装置12のユーザ(管理者)によって指定された部分通信エリアの指定情報(AP番号)が書き込まれる。エリア情報は、近隣通信またはエリア指定通信の場合のみ書き込まれてもよく、通常の通信形態でも書き込まれてもよい。
この実施形態では、無線アクセスポイント13を識別する番号であるAP番号として、その無線アクセスポイント13のBSSIDを用いている。また、この実施形態では、各無線アクセスポイント13のBSSIDとして、その無線アクセスポイント13のMACアドレスを用いている。ただし、無線アクセスポイント13のAP番号は、BSSIDに限定されず、無線アクセスポイント13のBSSIDはMACアドレスに限定されない。
区分システム番号は、この実施形態では、区分音声通信システム101または102、若しくは、その両方(全区分音声通信システム)を示す番号である。管理装置12が全区分音声通信システムを選択して通信する場合に、区分システム番号として全区分音声通信システムを示す番号が書き込まれる。
近隣通信フラグは、近隣通信またはエリア指定通信の場合にセットされるフラグである。この実施形態の音声パケットでは、データ本体に近隣通信フラグを設け、近隣通信フラグがセットされていることで近隣通信またはエリア指定通信であることを識別できるようになっている。ただし、近隣通信フラグは必須ではない。たとえば、近隣通信またはエリア指定通信の場合のみエリア情報が書き込まれるようにすれば、エリア情報の有無によって近隣通信またはエリア指定通信であるか、または、通常の通信であるかを見分けることができる。
音声パケットのヘッダには、宛先IPアドレス(destination address)および送信元アドレス(sender address)が含まれている。端末装置14から送信されてきた音声パケットの宛先IPアドレスには、サーバ装置11のIPアドレスが書き込まれているが、音声信号の最終目的地は、サーバ装置11ではなく、通信相手識別番号で指定される通信相手の端末装置14である。
サーバ装置11は、音声パケットを受信すると、区分システム番号に基づきこの音声パケットがどの区分音声通信システム101、102宛のものか、すなわち、送信元の端末装置14がどの区分音声通信システム101、102に所属するかを判断し、この音声パケットの音声信号を、区分システム番号が指示する区分音声通信システム101、102に所属する通信相手の端末装置14に対して転送する。具体的には以下のとおりである。通信相手識別番号が端末番号である場合(個別通信)、同じ区分音声通信システム101または102に所属し、その端末番号で識別される端末装置14に対して音声信号を転送する。通信相手識別番号がグループ番号である場合(グループ通信)、同じ区分音声通信システム101または102に設定されているそのグループ番号で識別されるグループに属する複数の端末装置14に対して音声信号を転送する。また、通信相手識別番号が全体番号である場合(全体通信)、同じ区分音声通信システム101、102内の通信可能な全ての端末装置14に対して音声信号を転送する。また、区分システム番号が、全区分音声通信システムを示す値で、通信相手識別番号が全体番号である場合、ネットワーク17に接続されている通信可能な全ての端末装置14に対して音声信号を転送する。この通信形態は、緊急通報などで使用される。
サーバ装置11が受信した音声パケットの音声信号に付加されている通信相手識別番号がグループ番号であって、近隣通信フラグがセットされている場合、この音声信号は近隣グループ通信の音声信号である。この場合、サーバ装置11は、同じ区分音声通信システム101、102内でそのグループに属する複数の端末装置14のうち、近隣エリアにある端末装置14に対して音声信号を転送する。また、その通信相手識別番号が全体番号であって、近隣通信フラグが設定されている場合は、近隣全体通信である。この場合、サーバ装置11は、同じ区分音声通信システム101、102内で通信可能な全ての端末装置14のうち、近隣エリアにある端末装置14に対して音声信号を転送する。
上述したように、この実施形態では、AP番号とは別に近隣通信フラグを設け、この近隣通信フラグが設定されているか否かで近隣通信の音声信号であるか否かが見分けられるようになっている。なお、近隣通信フラグを用いなくてもよく、たとえば、近隣通信が指定される場合のみAP番号を設定するようにし、このAP番号の設定の有無に応じて近隣通信の音声信号であるか否かを見分けるようにしてもよい。
ユーザによる端末装置14の操作によって端末装置14の近隣呼出モード(近隣通信モード)のON/OFFが切り換えられる。そして、近隣通信モードがONされた状態で、PTTスイッチ220を押すことで、ユーザは近隣通信を行うことができる。このとき、端末装置14は、サーバ装置11に送信する音声パケットの近隣通信フラグをセットする。なお、近隣通信は、同じ区分音声通信システム101または102内で近隣エリアにいる不特定またはグループ内の通信相手と通信することを目的とするものであるため、近隣通信モードがONされた状態では、指定された1台の端末装置14を通信相手とする選択(個別通信)を受け付けないよう、端末装置14の動作を制限してもよい。
この音声信号の転送に際して、転送先の端末装置14のIPアドレスを送信先アドレス、サーバ11のIPアドレスを送信元アドレスとする新たな音声パケットが作成される。この新たなパケットにおいても、データ本体の通信相手識別番号、区分システム番号、近隣通信フラグ、エリア情報および送信元端末番号は、サーバ装置11が端末装置14から受信した音声パケットのものと同じである。
図3において、端末装置14は、PTTスイッチ220とともにVOX回路242を有している。VOX回路242とは、マイク240の入力レベルとその持続時間に基づいて通話音声(音声信号)が入力されたか否かを判定し、通話音声が入力されたと判定された場合に装置を送信状態(PTTスイッチオン)に切り換える回路である。端末装置14は、PTTスイッチ220に代えて、または、PTTスイッチ220とともにVOX回路242を用いて送信オン/オフの切り換えを行ってもよい。また、一般の無線通信のトランシーバは、送信状態の時に無線信号の受信を行うことができないシンプレックス方式の通信である。一方、端末装置14は、無線LAN16を介した音声パケット通信で音声信号を送受信するため、音声パケットの送信と音声パケットの受信を並行して行うことができる。この機能を用いて、音声信号の送信と受信を同時に並行して行うフルデュプレックス方式の通信が可能である。ただし、端末装置14は、フルデュプレックス通信を行う場合であっても、無音の音声パケットを送信し続けることがないように、PTTスイッチ220またはVOX回路242の機能により、通話音声が入力されたときのみ音声パケットを編集して送信する。
図5は、管理装置12のブロック図である。上述したように、管理装置12は、例えば、管理プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータで構成されている。管理装置12は、制御部40、記憶部41、ネットワーク通信部45、操作部42、表示部43およびオーディオ回路44を有している。管理装置12は、管理者の操作に応じてサーバ装置11にアクセスするほか、端末装置14と同様に他の端末装置14と音声通信が可能である。操作部42、表示部43およびオーディオ回路44は、外付けであってもよい。
制御部40は、記憶部41に記憶されている管理プログラムなどを実行し、管理者の操作に応じてサーバ装置11にアクセスするほか、端末装置14と同様に他の端末装置14と通信などを行うべく装置の動作を制御する。記憶部41は、たとえばハードディスクやRAMなどで構成されている。ネットワーク通信部45は、有線ネットワーク15との通信を制御する。
操作部42は、例えばキーボード、マウスなどの入力デバイスを含み、ユーザの操作を受け付けてその操作信号を制御部40に入力する。操作部42から入力される操作信号としては、例えば、エリア指定通信モードの設定/解除、指定エリア、通話の開始/終了(PTT操作)などである。表示部43は液晶ディスプレイを含む。液晶ディスプレイには、サーバ装置11のテーブル設定を行うための操作画面、エリア指定を行うための操作画面などが表示される。また、液晶ディスプレイには、ユーザの操作によって選択された通信相手識別番号や着信した音声信号の通信相手識別番号も表示される。
上述したように、管理装置12は、端末装置14と同様に音声通信が可能である。管理装置12が実行可能な通信形態は、個別通信、グループ通信、全体通信、および、エリア指定通信(エリア指定グループ通信、エリア指定全体)である。管理装置12は、端末装置14とほぼ同様の処理でこれらの形態の通信を実行する。エリア指定通信を行う場合、管理装置12がサーバ装置11に送信する音声パケットのエリア情報には、管理者によって指定されたAP番号が書き込まれる。
また、エリア指定通信を行う場合の管理装置12およびサーバ装置11の処理は、端末装置14が近隣通信を行う場合の管理装置12およびサーバ装置11の処理と比べて、音声パケット(図4参照)の区分システム番号およびAP番号として管理者が入力した区分システム番号およびAP番号が設定されることを除いてほぼ同様である。すなわち、管理者が管理装置12を操作して区分システム番号および指定エリア通信を指定し、且つ、エリアを指定することによって、サーバ装置11に送信される音声パケットに区分システム番号およびエリア指定通信フラグが設定され、且つ、接続中AP番号として指定したエリアに属するAP番号が設定される。なお、エリア指定通信フラグは、近隣通信フラグと同一のフラグであり、以下、近隣通信フラグと記載する。
たとえば、音声パケットの通信相手の識別番号がグループ番号であって、近隣通信フラグが設定されている場合{エリア指定通信(グループ)}、サーバ装置11は、音声パケットの区分システム番号の区分音声通信システム101または102内でそのグループに所属する複数の端末装置14のうち、指定エリア(接続中AP番号)に位置する端末装置14に対して音声信号を転送する。また、音声パケットの通信相手の識別番号が全体番号であって、近隣通信フラグが設定されている場合{エリア指定通信(全体)}、サーバ装置11は、音声パケットの区分システム番号の区分音声通信システム101または102内で通信可能な全ての端末装置14のうち、指定エリア(接続中AP番号)に位置する端末装置14に対して音声信号を転送する。
サーバ装置11は、ネットワーク17を介して端末装置14から入力される音声パケット(音声信号)を、さらにネットワーク17を介して他の端末装置14に転送する。グループ通信の場合は、そのグループに属する複数の端末装置14に音声信号を転送する。また、グループ通信の場合、複数の端末装置14のユーザが同時に発言し、複数の端末装置14から同時に音声パケットが送信されてくる場合がある。この場合、サーバ装置11は、これら複数の音声パケットの音声信号をミキシングして新たな音声パケットを編集し、この新たな音声パケットを各端末装置14に転送する。なお、音声信号を送信していない端末装置14に対しては、全ての音声信号をミキシングして転送し、音声信号を送信してきた端末装置14に対しては、その端末装置14が送信した音声信号を外して、それ以外の音声信号をミキシングして転送する。これにより、音声信号を送信した端末装置14で自装置が送信した音声信号のエコーが生じないようにしている。なお、全体通信および近隣通信(エリア指定通信)の形態の通信を行う場合にも、グループ通信と同様の形態でミキシングが行われる。
図6は、サーバ装置11のブロック図である。サーバ装置11は、制御部30、記憶部31およびネットワーク通信部32を有している。記憶部31は、たとえばハードディスクやRAMなどで構成され、図7および図8に示す各種のテーブルや各端末装置14の設定データなどが記憶される。制御部30は、端末装置14のセットアップや音声信号のミキシングなどを行う。ネットワーク通信部32は、有線ネットワーク15との通信を制御する。
図7A、図7B、図7C、図8A、図8Bおよび図8Cは、サーバ装置11の記憶部31に設けられるテーブルを示す図である。
図7Aは、端末テーブル301を示す図である。各端末装置14は、各々ユニークに振られているTRX番号で識別される。TRX番号は、この音声通信システムで使用される全ての端末装置14、すなわち、このサーバ装置11が管理する全ての区分音声通信システム101、102の全ての端末装置14に対してユニークに割り当てられている識別符号である。また、各TRX番号に対応づけて、区分システム番号および端末番号も記憶される。区分システム番号は、その端末装置14が区分音声通信システム101、102のどちらに所属しているのかを特定する。また、端末番号は、各区分音声通信システム101、102内で各々ユニークに端末装置14に割り当てられている呼出符号である。したがって、端末テーブル301に示すように、異なる区分音声通信システム番号101、102で端末番号が同一の端末装置14が存在する。端末テーブル301には、TRX番号に対応づけて、IPアドレス、アクティブフラグ、設定データの格納アドレスおよび接続中AP番号がさらに記憶される。IPアドレスは、端末装置14のネットワーク17上のアドレスである。IPアドレスは、端末装置14からアクセス(レジスト要求)があったとき、サーバ装置11がそのアドレスを記憶する。アクティブフラグは、端末装置14が、ネットワーク17に接続され、サーバ装置11にアクセスしてサーバ装置11による登録と各種データのダウンロードを受けたこと、すなわち、レジストを完了して通信可能であることを示すフラグである。アクティブフラグは、端末装置14のレジストを完了したサーバ装置11によってセットされる。設定データは、たとえば、プログラムの更新データ(ファームウェア)、自己が所属する区分システム番号、自己が所属するグループ、通信が許可される他のグループを記録した電話帳などである。接続中AP番号は、端末装置14が接続している無線アクセスポイント13を識別する情報である。端末装置14がどのエリアにいるかを特定するための情報として使用される。
図7Bは、エリアテーブル304(304A、304B)を示す図である。エリアテーブル304Aは、区分音声通信システム101のエリア情報を示す。エリアテーブル304Bは、区分音声通信システム102のエリア情報を示す。エリアテーブル304には、端末装置14の通信可能範囲を分割した複数のエリアの番号と、各エリアに設置されている無線アクセスポイント13の情報(BSSID)とが対応づけて記憶されている。サーバ装置11は、端末テーブル301の接続中AP番号、および、エリアテーブル304に基づいて、端末装置14がいるエリアを特定する。エリアテーブル304の生成については後述する。
端末装置14は、起動されるとネットワーク17に接続される。サーバ装置11は、端末装置14がネットワーク17に接続されたとき、および、その後の適当なタイミングに、端末装置14と通信してその端末装置14のレジストを行う。その後の適当なタイミングとは、たとえば、一定時間毎、接続している無線アクセスポイント13が切り換わったときなどである。端末装置14は、上記タイミングにレジスト要求を含む音声パケットをサーバ装置11に送信する。サーバ装置11は、受信したレジスト要求に基づいて端末装置14のレジスト、および、端末テーブル301の各情報の更新を行う。端末テーブル301の更新には、レジストされている端末装置14の位置情報(接続中AP番号情報)の更新(変更)が含まれる。すなわち、サーバ装置11は、受信したレジスト要求に基づいて図7Aに示す端末テーブル301の接続中AP番号情報を更新することで、各端末装置14の最新の位置、および、各端末装置14が図7Bに示されるエリアのどのエリアに属しているかを把握することができる。なお、管理装置12が、端末テーブル301の位置情報(接続中AP番号)を更新するようにしてもよい。すなわち、サーバ装置11が自動で更新するのでなく、管理者が手動で更新してもよい。
レジスト要求も音声パケットの形式でサーバ装置11に送信される。レジスト要求を含む音声パケットは、図4に示したパケットと同一形式のパケット(RTPパケット)であるが、音声信号の伝送を目的とするパケットではないため、データ本体は、音声信号なしで制御情報のみからなる。制御情報は、たとえば、レジスト要求である旨の情報(フラグ)、接続中AP番号および送信元端末番号などを含む。通信相手識別番号は不要である。サーバ装置11は、このような形式の音声パケットを受信するとレジスト要求の音声パケットであると判断し、図11Aに説明する音声パケット受信処理の対象とせず、これとは別のレジスト処理を実行する。
なお、図7Aの端末テーブル301において、端末番号「0」は管理装置12を示している。すなわち、端末テーブル301の端末番号「0」の行には、管理装置12の情報が記憶される。管理装置12は、管理者によって管理され有線ネットワーク15に接続されているため、区分システム番号、設定データ格納アドレスや接続中AP番号の情報は不要であり、記憶されていない。
端末装置14は、レジスト処理により、アクティブな他の端末装置14や電話帳などの情報がダウンロードされると、端末装置14は、ユーザによる通信相手の選択操作時に、表示部23に通信相手の候補として、上述のアクティブな端末装置14の端末番号、通信が許可されたグループ番号を表示する。
端末装置14のユーザによって通信相手を選択する操作がされるとき、端末装置14の表示部23には通信相手の候補として、上述のアクティブな端末装置14の端末番号、通信が許可されたグループ番号が表示される。
図7Cは、グループテーブル302(302A、302B)を示す図である。グループテーブル302は、サーバ装置11がグループを管理するためのテーブルである。グループテーブル302Aは、区分音声通信システム101のグループ情報を記憶する。グループテーブル302Bは、区分音声通信システム102のグループ情報を記憶する。この実施形態のグループテーブル302A、302Bのグループ構成は同一であるが、異なっていてもよい。各グループは、各々ユニークに振られている識別番号(グループ番号)で識別される。グループテーブル302には、グループ番号、および、そのグループに所属する端末装置14の端末番号が記憶されている。グループに所属する端末装置14の数は、1台以上であればよい。これら端末テーブル301およびグループテーブル302は、管理装置12を操作する管理者によって設定される。
図8Aはミキシングテーブル(セッションテーブル)303(303A、303B)を示す図である。また、図8B、図8Cは、それぞれ、ミキシングテーブル303に対する近隣通信セッションおよびエリア指定通信セッションの登録例を示している。ミキシングテーブル303は、サーバ装置11が通信セッションを管理するためのテーブルである。通信セッションとは、サーバ装置11を中継装置とした複数の端末装置14間の通信状態のことである。ミキシングテーブル303は、複数の行を有しており、各行に1つの通信セッション(セッショングループ)の情報が記憶される。ミキシングテーブル303Aには、区分音声通信システム101の通信セッションの情報が記憶され、ミキシングテーブル303Bには、区分音声通信システム102の通信セッションが記憶される。ここで通信セッションとは、サーバ装置11を中継装置として複数の端末装置14間で音声信号を相互に転送している状態のことである。サーバ装置11は、端末装置14から音声信号(音声パケット)を受信したとき、ミキシングテーブル303を参照してその音声信号がどの通信セッションのものかを判断する。
通信セッションは、例えば以下の手順で処理される。通信セッションの確立、すなわち、ミキシングテーブル303の設定は、端末装置14から通信セッションを確立しようとする最初の呼出音声パケットを受信したとき行われる。1回の(例えば数秒の)発話音声は短い(この実施形態では20ミリ秒の)音声パケットに分割されて送受信される。また、通信セッションにおいては、先の発話音声に対する返答の発話音声が他の端末装置から送信されてくる。先の発話音声と返答の発話音声との間隔(無音時間)は、0秒から数秒程度である。通信セッションの保持時間は、一般の通信における無音時間の最大値以上に設定される。なお、上記の基本的な通信セッションの手順は、個別通信、グループ通信および全体通信の全ての形態で共通であるが、ミキシングテーブル303の設定手順は各通信形態で異なる。
ミキシングテーブル303A、303Bには、区分音声通信システム101、102で確立された各通信セッションについて、セッション番号、発呼端末番号、参加端末番号、追加端末番号、除外端末番号、および、残保持時間(T1)が、それぞれ対応づけて記憶される。なお、このうち、追加端末番号、除外端末番号の欄は必須ではない。参加端末番号の欄に対する端末番号の追加、除外のみでもテーブルの管理が可能である。ミキシングテーブル303A、303Bの各行の通信セッションに関する情報は、発呼端末装置が最初の音声パケット(呼出音声パケット)をサーバ装置11に送信したことに応じて、サーバ装置11の制御部30によって作成される。
セッション番号は、この通信セッションを識別する番号である。発呼端末番号は、この通信セッションを立ち上げる最初の呼び出し(音声パケットの送信)をした端末装置14の端末番号である。セッション番号は、上記最初の音声パケットに書き込まれていた通信相手の識別番号(端末番号/グループ番号/全体番号)が用いられる。セッション番号として端末番号(たとえばミキシングテーブル303Aの「19」)が登録されている通信セッションが、個別通信の通信セッション(個別通信セッション)である。個別通信とは、1対1の個別の端末装置14同士の通信である。セッション番号としてグループ番号(たとえばミキシングテーブル303Aの「G1」)が登録されている通信セッションが、グループ通信の通信セッション(グループ通信セッション)である。グループ通信とは、複数の端末装置14(一般的には3台以上)が相互に音声信号を交換する通信である。さらに、セッション番号として全体番号(たとえばミキシングテーブル303Bの「A」)が登録されている通信セッションが、全体通信の通信セッション(全体通信セッション)である。全体通信とは、その区分音声通信システム101または102内のアクティブな全ての端末装置14に音声信号が転送される通信形態である。
また、近隣通信またはエリア指定通信の形態で通信セッションが行われる場合でも、上述と同様に、図8Bおよび図8Cに示すような通信セッションの情報がミキシングテーブル303A、303Bに記憶される。図8Bは、近隣通信セッションが設定されているミキシングテーブル303A、303Bを示し、図8Cは、エリア指定通信セッションが設定されているミキシングテーブル303Aを示す図である。図8Bおよび図8Cに示すように、ミキシングテーブル303には、近隣通信またはエリア指定通信である旨を示す情報は記憶されず、グループ番号/全体番号がセッション番号として登録される。また、送受信される音声パケットには、通常の通信セッションと同様の通信相手の識別番号(グループ番号/全体番号)が設定される。
参加端末番号は、この通信セッションに参加している端末装置14の端末番号の一覧である。参加端末番号に端末番号が登録されている或る端末装置14から音声パケットが送信されてきた場合、制御部30は、この音声パケットの音声信号を、参加端末番号に端末番号が登録されている他の端末装置14に転送し、区分音声通信システム101(または102)の参加端末装置間の相互通信を実現する。
グループ通信セッションの場合、参加端末番号は、発呼端末装置の端末番号および通信相手に指名されたグループに属する端末装置14の端末番号となる。ただし、そのグループに所属していてもアクティブでない端末装置14や別の個別通信セッションを行っている端末装置14は、このグループ通信セッションに参加できないため、それらの端末装置14の端末番号は参加端末番号から除外される(除外端末番号の欄に登録される)。また、発呼端末装置が、このグループに所属していない端末装置14であった場合、すなわち、発呼端末装置が、自局の属するグループ以外のグループを呼び出した場合、発呼端末装置の端末番号も参加端末番号として登録される。同時に臨時にメンバー登録された追加端末装置として、その端末番号が追加端末番号の欄にも登録される。すなわち、このグループ通信セッションが継続している間は、発呼端末装置はグループに所属する端末装置14と同様に扱われる。
全体通信セッションの場合、参加端末番号は、発呼端末装置の端末番号および通信可能な全ての端末装置14の端末番号となる。除外端末番号については、上述のグループ通信と同様である。また、追加端末番号は登録されない。
個別通信セッションの場合、参加端末番号は、発呼端末装置の端末番号と通信相手の端末装置14の端末番号のみである。一対一通信であるため、追加端末番号および除外端末番号は登録されない。
近隣グループ通信セッションの場合、参加端末番号として、発呼端末装置の端末番号、および、区分音声通信システム101または102内でそのグループに所属する端末装置14のうち指定されているエリア(近隣エリア)にある端末装置14の端末番号が登録される。近隣全体通信セッションの場合、参加端末番号として、発呼端末装置の端末番号、および、区分音声通信システム101または102内で通信可能な全ての端末装置14のうち指定されているエリア(近隣エリア)にある端末装置14の端末番号が登録される。
たとえば、図8Bのミキシングテーブル303Aのセッション番号「G1」の近隣通信セッション(グループ)では、区分音声通信システム101のグループ番号「G1」に所属する端末装置14のうち、発呼端末である端末番号「3」の端末装置14のいるエリア(たとえばエリア番号「1」)にある端末番号「1」,「2」の端末装置14が通信相手となる。したがって、セッション番号「G1」の参加端末番号は、「1」,「2」,「3」となる。そして、グループ番号「G1」に所属しているが、近隣エリアに位置していない端末番号「4」,「5」の端末装置14は、除外端末として登録される。
また、たとえば、図8Bのミキシングテーブル303Bのセッション番号「A」の近隣全体通信セッションでは、区分音声通信システム102の通信可能な全ての端末装置14のうち、発呼端末である端末番号「98」の端末装置14のいるエリア(たとえばエリア番号「2」)に位置する端末番号「99」の端末装置14が通信相手となる。したがって、セッション番号「A」の参加端末番号は、「98」,「99」となる。
指定エリアグループ通信セッションの場合、参加端末番号として、発呼端末装置である管理装置12の端末番号、および、指定されている区分音声通信システム101または102内でそのグループに所属する端末装置14のうち指定されたエリア(指定エリア)にある端末装置14の端末番号が登録される。エリア指定全体通信セッションの場合、参加端末番号として、発呼端末装置である管理装置12の端末番号、および、区分音声通信システム101または102内で通信可能な全ての端末装置14のうち指定されているエリアにある端末装置14の端末番号が登録される。
たとえば、図8Cのミキシングテーブル303Aのセッション番号「G2」のエリア指定通信セッションでは、指定されている区分音声通信システム101のグループ番号「G2」に所属する端末装置14のうち、指定されているエリアにある端末番号「8」、「9」、「10」の端末装置14が通信相手となる。したがって、セッション番号「G2」の参加端末番号は、「0」,「8」、「9」、「10」となる。そして、グループ番号「G2」に所属しているが、近隣エリアに位置していない端末番号「6」,「7」の端末装置14は、除外端末として登録される。
ミキシングテーブル303の保持時間は、参加端末装置から音声パケットが送信されてこない状態で、この通信セッションを解消せずに保持する時間である。サーバ装置11における各通信セッションの保持時間は、たとえば30秒に設定される。ミキシングテーブル303の保持時間タイマ(TS)は、音声パケットが送信されてこないとき、保持時間の経過をカウントするタイマである。保持時間タイマTSは制御部30の処理動作(図11参照)で、音声パケットが送信されてこないとカウントダウンされ、且つ、音声パケットが送信されてくれば30秒にリセットされる。参加端末装置から音声パケットが30秒間送られて来ないことによりタイマTSがタイムアップした場合、この通信セッションは解消され、ミキシングテーブル303からこの通信セッションの情報が消去される。
通信セッションが継続されるためには、各端末装置14においても保持時間を計時する必要がある。端末装置14の保持時間(T1)は、サーバ装置11の保持時間(TS=30秒)よりも短く、タイマT1には例えば5秒が設定される。ユーザは、PTTスイッチ220をオフしたのち、5秒が経過すると、サーバ装置11でその通信セッションが維持されていても、所定操作により他の通信セッションを開始することができる。
また、ミキシングテーブル303を、実行中ミキシングテーブルと退避テーブルからなる2つのテーブルに分けてもよい。実行中ミキシングテーブルは、現在ミキシングを行っているセッションが登録されるテーブルであり、高速なメモリ上に形成される。通信(音声パケットの送受信)が途絶えたセッションは、200ミリ秒程度の短時間で退避テーブルに転記され、退避テーブルで保持時間(T1)だけ保持される。保持時間中に再度通信(音声パケットの送受信)が発生すると、その通信セッションは再度実行中ミキシングテーブルに転記され、ミキシングの実行に用いられる。これにより、各端末装置14のミキシングテーブル303からの解放を早くすることができる。
図9および図10は、端末装置14の制御部20の通信制御動作を示すフローチャートである。この処理動作は20ミリ秒毎に繰り返し実行される。この処理動作では、PTTスイッチ220のオン/オフや音声パケット(RTPパケット)の受信に応じて、現在の通信の状態(ステータス)を割り出す。ここで、このフローチャートで用いられるフラグ、タイマ類は以下のとおりである。
PTT:プッシュ・トゥ・トーク・スイッチ(PTTスイッチ)220の略記であるが、PTTスイッチ220のオン/オフに限定されず、VOX回路による送信信号のオン/オフも含んでいる。
NC0:ユーザの操作によって選択された通信相手識別番号(個別番号/グループ番号/全体番号)
NC1:セッション番号、実行中の通信セッションを識別する番号、通信セッションが確立される最初の音声パケットに書き込まれていた通信相手識別番号(個別番号/グループ番号/全体番号)が用いられる。
FC:通信セッションフラグ(この端末装置14が通信セッションに参加していることを示すフラグ)
FT:通信中フラグ(音声パケットの送信中または受信中であることを示すフラグ)
AC:近隣通信フラグ(通信セッションが近隣通信またはエリア指定通信であることを示すフラグ)
T1:保持時間タイマ(通信セッションの保持時間(5秒)を計時するタイマ)
S10〜S21は音声パケットの送信管理処理である。制御部20は、PTTスイッチ220の状態を判断する(S10)。制御部20は、PTTスイッチ220がオンしている場合、処理をS11に進める。PTTスイッチ220がオンしていない場合、処理をS22に進める。なお、このフローチャートの説明において、PTTスイッチのオンはVOXによる送信機能のオンを含むものとする。
S11では、制御部20は、通信セッションフラグFCがセットされているか否かを判断する。通信セッションフラグFCがセットされていない場合(S11でNO)、今回のPTTスイッチ220のオンによって作成される音声パケットは呼出音声パケットであり、この音声パケットの送信により、サーバ装置により通信セッションが開始される。制御部20は、通信セッションフラグFC、および、音声パケットを送受信中であることを示す通信中フラグFTをセットする(S12)。そして、制御部20は、ユーザによって選択された通信相手番号NC0を通信セッション番号NC1に転記し(S13)、近隣通信フラグACに基づいて近隣通信またはエリア指定通信であるか否かを判断する(S14)。近隣通信フラグACがセットしていれば近隣通信またはエリア指定通信である。近隣通信フラグACは、この端末装置14のユーザの操作によってセット/リセットが切り換えられる。また、他の端末装置14からの呼出し(近隣通信およびエリア指定通信)によってもONに設定される。
S14で、近隣通信フラグACがセットされている場合(S14でYES)、制御部20は、近隣通信フラグ(セット)、この端末装置14の接続中の無線アクセスポイント13番号(エリア情報、接続中AP番号(BSSID))、通信セッション番号NC1および区分システム番号が音声信号とともにデータ本体に書き込まれた音声パケットを、呼出音声パケットとしてサーバ装置11宛に送信する(S15)。一方、S14で、近隣通信フラグACがセットされていない場合(S14でNO)、制御部20は、近隣通信フラグをリセットのままにして、エリア情報(BSSID)、通信セッション番号NC1および区分システム番号が音声信号とともにデータ本体に書き込まれた音声パケットを、サーバ装置11宛に送信する(S16)。この呼出音声パケットの送信により、サーバ装置11により通信セッションが開始される。制御部20は、保持時間タイマT1を5秒にリセットしたのち(S17)、S30以下の音声パケットの受信管理処理に処理を進める。
S11で、通信セッションフラグFCが既にセットされている場合(S11でYES)、制御部20は、通信中フラグFTがセットされているか否か、すなわち、現在音声パケットの送信または受信中であるかを判断する(S18)。通信中フラグFTがセットされていない場合(S18でNO)、制御部20は、通信中フラグFTをセットする(S19)。処理がS11→S18→S19に進むのは、既に開始された通信セッションが維持されている状態で、新たな音声パケット(ユーザの通話音声)の送信を開始する場合である。S20では、既に開始されている通信セッションを継続して、その通信セッションに対して今回の音声パケットを返信するか(S20でNO)、先の通信セッションから離脱して、新たな通信相手に今回の音声パケットを送信する、すなわち新たな別の通信セッションを確立するか(S20でYES)を判断する。この判断は、たとえば、今回のPTTスイッチ220オンの直前のユーザによる操作、例えば通信相手の選択操作など、が行われたか否か等に応じて判断すればよい。ユーザによって新たな通信相手の選択操作が行われた場合には、S20の判断でその選択された通信相手に対する新たな通信セッションを確立する処理を行えばよい。
新たな通信セッションを確立する場合(S20でYES)、制御部20は、そのとき選択されている通信相手番号NC0を通信セッション番号NC1に転記して(S21)、S14に処理を進める。既に開始されている通信セッションを継続する場合(S20でNO)、制御部20は、S18からそのままS14に処理を進める。
S10において、PTTスイッチ220がオンされていない場合(S10でNO)、制御部20は、通信中フラグFTをリセットする(S22)。なお、通信中フラグFTが既にリセットされている場合にはそのままでよい。こののち、制御部20は、S30以下の音声パケットの受信管理処理に処理を進める。
制御部20は、S30で、ネットワーク17を介して音声パケットを受信したか否かを判断する。制御部20は、音声パケットを受信した場合、処理をS31に進める。音声パケットを受信していない場合、処理をS40に進める。
S31では、制御部20は、通信セッションフラグFCがセットされているか否かを判断する。通信セッションフラグFCがセットされていない場合(S31でNO)、今回新たな通信セッションが確立され、その最初の音声パケットが送信されてきたと判断し、通信セッションフラグFCおよび通信中フラグFTをセットする(S33)。通信中フラグFTは、音声パケットを送受信中であることを示すフラグである。制御部20は、その音声パケットに含まれている通信相手番号を通信セッション番号NC1に転記する(S34)。次に、制御部20は、その音声パケットが近隣通信またはエリア指定通信であるか否かを判断する(S35)。具体的には、その音声パケットの近隣通信フラグの設定有無によって判断する。なお、近隣通信およびエリア指定通信のいずれであっても通信制御動作は同じであるため、近隣通信とエリア指定通信との識別はしない。S35で、近隣通信またはエリア指定通信である場合(S35でYES)、制御部20は、近隣通信フラグACをセットし(S36)、S37に処理を進める。一方、S35で、近隣通信、エリア指定通信のいずれでもなかった場合(S35でNO)、S37に処理を進める。S37で、制御部20は、音声パケットをオーディオ回路24に出力し、保持時間タイマT1を5秒にリセットする(S38)。
S31で、通信セッションフラグFCが既にセットされている場合(S31でYES)、制御部20は、今回の音声パケットの受信に対応して通信中フラグFTをセットする(S32)。なお、通信中フラグFTが既にセットされている場合にはそのままでよい。こののち、制御部20は、処理をS35に進める。
S30において、音声パケットを受信しなかった場合(S30でNO)、制御部20は、通信セッションフラグFCがセットされているか否かを判断する(S40)。通信セッションフラグFCがセットされている場合(S40でYES)、制御部20は、S41以下の処理を実行する。通信セッションフラグFCがセットされていない場合(S40でNO)、制御部20は、そのまま処理を終了する。
S41では、制御部20は、通信中フラグFTがセットされているか否かを判断する。通信中フラグFTがセットされている場合(S41でYES)、制御部20は、そのまま処理を終了する。通信中フラグFTがセットされていない場合(S41でNO)、すなわち、通信中フラグFTはリセットされているが通信セッションフラグFCがセットされた状態の場合、制御部20は、保持時間タイマT1を1カウント(20ミリ秒分)減算する(S42)。そして、この減算で保持時間タイマT1が0になったか否かを判断する(S43)。保持時間タイマT1が0になった場合(S43でYES)、制御部20は、通信セッションを解消するために、通信セッションフラグFCをリセットする(S44)。S43において、保持時間タイマT1が未だ0よりも大きい場合(S43でNO)、制御部20は、そのまま処理を終了する。
図11Aおよび図11Bはサーバ装置の動作を示すフローチャートである。図11Aは、音声パケット受信時の処理動作を示している。図11Bは、ミキシングテーブル管理処理動作を示している。
図11Aにおいて、制御部30は、音声パケットを受信すると、発信元端末番号、通信相手識別番号および区分システム番号で識別される通信セッションが、既にこの区分システム番号に対応するミキシングテーブル303Aまたは303Bに登録されているかを判断する(S50)。通信セッションが既にミキシングテーブル303Aまたは303Bに登録されている場合(S50でYES)、制御部30は、その通信セッションの参加端末番号に基づき、受信した音声パケットの音声信号を、その通信セッションに参加している端末装置14に転送する(S56)。そして、ミキシングテーブル303Aまたは303Bのその通信セッションの保持時間タイマTSを30秒にリセットする(S57)。これにより、以後30秒間、サーバ装置11においてこの通信セッションが維持される。
受信した音声パケットの通信セッションが、ミキシングテーブル303Aまたは303Bに登録されていない場合(S50でNO)、すなわち、この音声パケットが呼出音声パケットであった場合、制御部30は、この呼出音声パケットに基づく新たな通信セッションを、この呼出音声パケットの区分システム番号に対応するミキシングテーブル303Aまたは303Bに登録する(S51)。ミキシングテーブル303Aまたは303Bには、通信相手の識別番号(端末番号/グループ番号/全体番号)がセッション番号として登録され、この音声パケットの送信元の端末装置14の端末番号が発呼端末番号として登録される。参加端末番号としては、個別通信セッションの場合、通信相手番号および発呼端末番号が登録され、グループ通信セッションの場合、発呼端末番号および通信相手番号のグループに所属する端末装置14の端末番号が登録される。また、発呼端末装置がグループに所属していない場合には、発呼端末番号は追加端末番号にも登録される。さらに、グループに所属している端末装置14のうち、非アクティブ、他の通信セッションに参加中などでこの通信セッションに参加できないものがある場合、その端末番号は参加端末番号の欄から除外され、除外端末番号の欄に転記される。また、全体通信セッションの場合、発呼端末番号および通信相手番号の全ての端末装置14の端末番号が参加端末番号として登録される。なお、除外端末番号については上記グループ通信セッションと同様である。また、近隣通信セッション(エリア指定通信セッション)の場合、この呼出音声パケットの区分システム番号に対応する通信相手番号(グループ番号/全体番号)の近隣エリア(指定エリア)に位置する端末装置14の端末番号が参加端末番号として登録される。
次に、制御部30は、受信した音声パケットの音声信号を、ミキシングテーブル303Aまたは303Bの参加端末番号に基づき、通信セッションに参加している端末装置14宛に転送する(S52)。
制御部30は、今回確立された通信セッションにより、この通信セッションが登録されたミキシングテーブル303Aまたは303Bに既に登録されている通信セッションの参加端末装置から除外されるものがあるかを判断する(S53)。すなわち、先に確立されている通信セッションに参加していた端末装置14が今回確立された通信セッションに参加することになった場合、先に確立されている通信セッションから外れる必要がある。このような端末装置14が存在する場合(S53でYES)、当該先に確立されていた通信セッションの参加端末番号の欄からこの端末装置14の端末番号を削除する(S54)。除外された端末番号は、除外端末番号の欄に転記される。このようにして通信セッションの参加端末装置を最適化する。
図11Bのミキシングテーブル管理処理は、定期的(たとえば20ミリ秒毎)に繰り返し実行される。制御部30は、まず複数のミキシングテーブル303A,303Bの先頭のテーブル303Aを選択する(S60)。そして、このミキシングテーブル303Aの先頭行の通信セッションを指定する(S61)。制御部30は、指定された通信セッションの保持時間タイマTSを1カウント(20ミリ秒分)減算し(S62)、この減算で保持時間タイマTSが0になったか否かを判断する(S63)。保持時間タイマTSが0になった場合(S63でYES)、制御部30は、この通信セッションは終了したとして、この行の通信セッションを消去する(S64)。一方、保持時間タイマTSが0でない場合(S63でNO)、制御部30は、S65に処理を進める。
制御部30は、以上の処理を、ミキシングテーブル303Aの最終行になるまで順次行い(S65、S66)、さらにミキシングテーブル303の最終テーブル(ミキシンググループ303B)が終了するまで順次行う(S67、68)。制御部30は、このようにして各ミキシングテーブル303A,303Bの管理を行う。
以上のように、この実施形態の音声通信システムでは、ネットワーク17を経由して中継装置(サーバ装置11)と通信機である端末装置14を接続し、端末装置14の所属に基づいた端末装置14同士の通信管理および各端末装置14の現在位置(エリア)の管理を中継装置側で行わせるようにしている。これにより、単一の音声通信システムにおいて、エリア単位での端末装置14の呼び出しが可能な複数の仮想的な音声通信システムを実現することができる。したがって、必要な数の音声通信システムを導入する必要がなく、多様な通信機能を有する音声通信システムの導入にかかるコストの増大を抑制することができる。
(エリアテーブル生成)
次に、サーバ装置11(記憶部31)に記憶されているエリアテーブル304の生成について説明する。エリアテーブル304は、サーバ装置11によって生成される。具体的には、サーバ装置11は、エリア情報リクエストを各無線アクセスポイント13に送信し、BSSID、IPアドレスおよび所属エリアテーブル600(区分システム番号およびエリア番号)を含む情報を受信してエリアテーブル304を生成する。サーバ装置11は、たとえば管理装置12からのリクエスト開始指示を受信して、エリア情報リクエストを送信する。
図12Aは、無線アクセスポイント13(記憶部68)に設定される所属エリアテーブル600を示す図である。所属エリアテーブル600は、区分音声通信システム101、102のそれぞれにおいて無線アクセスポイント13が所属するエリア番号を特定する情報であり、区分システム番号、エリア番号、通知可否の情報が関連づけて登録されている。たとえば、区分システム番号「101」(区分音声通信システム101)の場合は、この無線アクセスポイント13はエリア番号「4」に所属することを示している。通知可否は、サーバ装置11からエリア情報リクエストが送信された際、サーバ装置11に所属エリアテーブル600などの情報を送信するか否かを判断する情報である。たとえば、図12Aにおいて、区分システム番号「102」(区分音声通信システム102)の場合は、通知が禁止設定であるので、この無線アクセスポイント13は、上記リクエストに対して区分システム番号101に対応する情報のみを送信する。これは、或る無線アクセスポイント13がいずれかの区分音声通信システム101または102でのみ使用される場合、使用されない区分音声通信システム102または101に対してエリアテーブル304Bまたは304Aへの登録は不要だからである。
上記所属エリアテーブル600は、たとえば、無線アクセスポイント13を設置する際、パーソナルコンピュータ等の端末装置で無線アクセスポイント13と通信を行って、記憶部68に設定すればよい。あるいは、無線アクセスポイント13に操作部を設けて直接入力するようにしてもよい。
サーバ装置11は、管理装置12から受信した開始IPアドレスから終了IPアドレスの範囲でエリア情報リクエストを送信する。すなわち、上記範囲の全てのIPアドレスを送信先としてエリア情報リクエストを送信することで、ネットワーク17内に存在する無線アクセスポイント13を検索しつつ、発見できた無線アクセスポイント13からエリア番号などの情報などを受信する。そのため、サーバ装置11は、無線アクセスポイント13のIPアドレスを予め記憶しておく必要がない。なお、管理者であれば、使用しているIPアドレスの範囲を把握しているので、検索するべきIPアドレスの範囲を容易に特定可能である。
また、サーバ装置11および無線アクセスポイント13間の通信は、図12Bに示す形式のパケット(UDPパケット)で行われる。図12Bは、エリア情報リクエストを受信した無線アクセスポイント13が、サーバ装置11に応答(返信)する際のパケットである。データ本体には、上述したBSSID、区分システム番号、エリア番号に加え、データ本体のデータ長(有効データ長)、無線アクセスポイント13の名称を示す本体名称(テキストデータ)が含まれる。なお、サーバ装置11から送信するエリア情報リクエストの場合は、データ本体には、データ長のみが含まれる。
無線アクセスポイント13(制御部60)は、有線手順処理部65を経由して自己のIPアドレスが送信先IPアドレスとして設定されている上記UDPパケットをサーバ装置11から受信すると、エリア情報リクエストであると判断し、通知可否の設定に基づいて図12Bに示すUDPパケットの返信を行う。また、サーバ装置11も、自己のIPアドレスが送信先IPアドレスとして設定されている上記UDPパケットを無線アクセスポイント13から受信すると、エリア情報リクエストに対する無線アクセスポイント13からの応答であると判断し、エリアテーブル304の生成動作を実行する。
図13Aは、サーバ装置11の制御部30のエリアテーブル生成動作を示すフローチャートである。この生成動作は、管理装置12からリクエスト開始指示を受信した際に実行される。制御部30は、管理装置12から受信した開始IPアドレスおよび終了IPアドレスの範囲の先頭の開始IPアドレスを選択し(S80)、エリア情報リクエストを送信する(S81)。次に、制御部30は、無線アクセスポイント13からの応答の有無を判断する(S82)。たとえば、制御部30は、エリア情報リクエストを送信後、所定時間内に無線アクセスポイント13から応答が有るか否かで判断する。応答がなければ(S82でNO)、制御部30は、そのIPアドレスは無線アクセスポイント13のアドレスに該当していないと判断してS84に処理を進める。一方、応答があった場合(S82でYES)、制御部30は、受信した情報をRAMなどに格納してエリアテーブル304を生成(更新)する(S83)。そして、制御部30は、以上の処理を、終了IPアドレスになるまで順次行う(S84、S85)。そして、図示しないが、上述の処理で生成されたエリアテーブル304を記憶部31に格納する。
図13Bは、無線アクセスポイント13の制御部60のエリア情報送信動作を示すフローチャートである。この動作は、この無線アクセスポイント13のIPアドレスを宛先とするエリア情報リクエストを受信した際に実行される。
制御部60は、サーバ装置11に送信する情報を生成する(S90)。具体的には、記憶部68に記憶されている所属エリアテーブル600の通知可否の設定に基づいて、通知可能な所属エリアテーブル600の区分システム番号および対応するエリア番号の情報を取得し、また記憶部68からBSSIDを取得する。そして、これらの情報をサーバ装置11に送信する(S91)。
このように、サーバ装置11は、任意のIPアドレスから無線アクセスポイント13を検索し、その無線アクセスポイント13のエリア情報を取得する。そして、受信したエリア情報に基づいてエリアテーブル304を生成する。これにより、管理者等が、サーバ装置11に、エリア番号および該当する無線アクセスポイント13のBSSIDなどを1つ1つ入力する手間がなく、容易にエリアテーブル304を生成できる。したがって、音声通信システムの管理が複雑になることを抑制しつつ、単一の音声通信システムにおいて、エリア単位での端末装置14の呼び出しが可能な複数の仮想的な音声通信システムを実現することができる。
なお、エリアテーブル304の生成は、上述したエリア情報リクエストによる構成でなくてもよい。たとえば、管理者が、管理装置12を介してサーバ装置11にアクセスしてエリア番号、BSSIDなどの情報を入力してエリアテーブル304を生成するようにしてもよい。
上記実施形態では、単一の音声通信システムにおいて2つの区分音声通信システムを形成していたが、2つには限定されない。また、管理者が管理装置12を操作して、サーバ装置11の端末テーブル301、グループテーブル302、ミキシングテーブル303の設定を変更することで、区分音声通信システムの数を増減させることも可能である。また、管理者が管理装置12を操作して端末テーブル301における端末装置14の所属する区分システム番号を変更することで、端末装置14の区分音声通信システム101、102の所属を変更することも可能である。
また、上記実施形態では、音声パケットに送信元の端末装置14が所属する区分システム番号が付加されるが、付加しなくてもよい。たとえば、音声パケットに送信元端末番号として包括端末番号を書き込んでおき、音声パケットを受信したサーバ装置11が、送信元端末番号(包括端末番号)で端末テーブル301を検索して、送信元の端末装置14が所属する区分システム番号およびその区分音声通信システム101または102における端末番号を特定してもよい。この場合、サーバ装置11は端末装置14に区分システム番号を知らせる必要がなくなる。
上記実施形態では、近隣通信において、端末装置14のいる1エリアを近隣エリアとして、このエリアに位置する他の端末装置14が通信相手の対象であるが、特にこれに限定されるものではない。端末装置14のいる1エリアおよびこのエリアの周囲のエリアを近隣エリアとして、これらのエリアに位置する他の端末装置14も通信相手の対象としてもよい。たとえば、サーバ装置11に各エリアの周囲のエリア情報を記憶させ、端末装置14から受信した音声パケットのAP番号(BSSID)から、AP番号に該当するエリアおよび周囲のエリアを特定すればよい。
また、上記実施形態では、音声パケットに無線アクセスポイント13の番号(BSSID)を付加しているが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、エリアの番号を付加するようにしてもよい。この場合、端末装置14に図7(B)に示すエリアテーブル304を記憶させておけば、サーバ装置13側にエリアテーブル304はなくてもよい。そして、端末装置14が接続中の無線アクセスポイント13の番号(BSSID)に基づいて端末装置14が現在のエリアを特定すればよい。また、1エリア=1無線アクセスポイント13として近隣通信などの呼び出しを行ってもよい。この場合も、サーバ装置11のエリアテーブル304は不要となる。
また、上記実施形態の端末装置14の位置情報は、無線アクセスポイント13に基づいた情報であるが、特にこれに限定されるものではなく、端末装置14の位置情報を特定できる構成であればよい。たとえば、端末装置14にGPSを設け、GPSから特定される座標値を用いてもよい。また、上記実施形態のエリアについても、無線アクセスポイント13に基づいて設定されているが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、上記のように端末装置14の位置情報がGPSなどの座標値から特定される場合などは、上記エリアの設定も無線アクセスポイント13に基づいて設定されなくてもよい。
また、上記実施形態では、端末装置14は、自機の位置するエリア(近隣エリア)だけを指定できる近隣通信を行うことができるが、管理装置12のようにユーザが希望するエリアを指定できるようにしてもよい。さらに、エリア指定通信において、複数のエリアを指定できるようにしてもよい。例えば、2つのエリアに所属する無線アクセスポイント13の番号(BSSID)を音声パケットのAP番号に設定すればよい。
また、上記実施形態では、近隣通信およびエリア指定通信において、グループ番号および全体番号を選択可能にしているが、いずれか一方だけであってもよい。さらに、上記実施形態では、端末装置14はグループ通信なども可能であるが、近隣通信またはエリア指定通信だけであってもよい。
なお、上記実施形態では、非アクティブな端末装置は除外端末装置として通信セッションから除外されているが、この端末装置がアクティブになった時点で通信セッションに途中参加させてもよい。
上記実施形態では、端末装置14から送信されてきた呼出音声パケットに対応して通信セッションを確立するようにしているが、通信セッション確立の契機はこれに限定されない。たとえば、管理者が管理装置12からミキシングテーブル303を操作してミキシンググループの確立および解消を行ってもよい。また、管理装置12が、上に述べたグループ同士の拡張グループ通信を確立および解消を行ってもよい。この方式でも、ミキシンググループの統括的な管理と柔軟な変更が可能である。