JP2018182251A - 圧電積層体の製造方法および圧電積層体 - Google Patents

圧電積層体の製造方法および圧電積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】電荷保持性に優れ、圧電率の高い圧電積層体を製造する方法および該圧電積層体を提供する。【解決手段】繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シート10に、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分1と密な部分2とが交互に存在する粗密構造を有するように処理する粗密化工程と、多孔質樹脂シートまたは前記粗密化工程で得られたシートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する積層工程と、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、圧電積層体の製造方法および圧電積層体に関する。
多孔質系有機材料を用いた圧電材料(多孔質系有機圧電材料)が検討されており、例えば、EMFIT社(フィンランド)が多孔質ポリプロピレン材料を用いて圧電シートを提供している。
このシートは、独立した気孔がシート全体に均一に分布した構造を有している。しかし、圧電率の値が時間の経過にともなって次第に低下する問題を抱えている。これは、近接した多孔質構造中に保持されている分極した電荷が徐々に電気的に中和あるいは減衰することによって生じると考えられる。
多孔質系有機圧電材料における電荷減衰のメカニズムはいくつか想定されている。その一つとして、多孔質構造に保持されている分極した電荷同士が、有機材料の熱運動や物理的な変形によって接近し互いに打ち消しあうことや、偶発的な導電経路の形成によって外部環境と接続し、電荷自体が失われることが挙げられる。
特許文献1には、空孔を有するコア層と、その少なくとも片面に絶縁性を有する表面層からなるエレクトレット化フィルムが開示されている。
特許文献2には、多孔質フッ素樹脂フィルムの片面または両面に非多孔質フッ素樹脂薄膜が接合された積層フィルムが開示されている。
特開2010−089494号公報 特開2012−164735号公報
前記従来の圧電積層体は、圧電率や電荷保持性の点で改良の余地があった。
本発明は、該課題に鑑みてなされたものであり、電荷保持性に優れ、圧電率の高い圧電積層体を製造する方法および該圧電積層体を提供することを目的とする。
このような状況のもと、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
[1] 繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートに、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在する粗密構造を有するように処理する粗密化工程1と、
繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートまたは前記粗密化工程1で得られたシートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する積層工程2と、
を含む圧電積層体の製造方法。
[2] 繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートと該シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を有する圧電積層体の製造方法であって、
前記多孔質樹脂シートを凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1'、または、
前記多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1''
を含む、圧電積層体の製造方法。
[3] 前記粗密化工程1が、
前記多孔質樹脂シートまたは積層物とプレス機との間に、多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成部材を配置して、圧力をかける工程1A、または、
前記多孔質樹脂シートまたは積層物に接する側のプレス面の形状が、多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な表面形状であるプレス機を用いて圧力をかける工程1B
である、[1]に記載の製造方法。
[4] 前記多孔質樹脂シートが、不織布または2軸延伸多孔質膜である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記圧電積層体の原料として用いる多孔質樹脂シートの空孔率が60%以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記圧電積層体の原料として用いる多孔質樹脂シートの平均細孔径が0.1〜5.0μmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記工程1、1'および1''が、10〜1000kgf/cm2の圧力をかける工程である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記工程1が、前記多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物に圧力をかける工程であり、
前記工程1'または1''のうち、前記工程1''を採用する、
[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記工程1が、
前記積層物とプレス機との間に、多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成部材を配置して、圧力をかける工程1A、
前記積層物に接する側のプレス面の形状が、前記多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な表面形状であるプレス機を用いて圧力をかける工程1B、または、
前記圧電積層体における多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成要素を含む表面被覆層を用い、前記積層物に圧力をかける工程1C
である、[8]に記載の製造方法。
[10] 前記工程1が前記工程1Aであり、前記粗密構造形成部材が、凹凸構造を有する部材である、[2]または[9]に記載の製造方法。
[11] 前記凹凸構造を有する部材表面の凹凸構造単位の存在個数が0.04〜400個/mm2である、[2]または[10]に記載の製造方法。
[12] 前記工程1、1'および1''が、加熱環境下で行われる、[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 前記表面被覆層が溶融樹脂製シートである、[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14] 前記多孔質樹脂シートがフッ素樹脂製シートである、[1]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15] 繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートと、該シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を有し、
前記多孔質樹脂シートは、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在するような粗密化処理シートである、
圧電積層体。
本発明によれば、長期に亘って電荷を保持でき、高い圧電率を示す圧電積層体を提供することができる。
図1は、多孔質樹脂シート部分の断面の一例を示す、概略模式図である。 図2は、多孔質樹脂シート部分の一例を示す、概略模式平面図である。 図3は、実施例1で得られた圧電積層体におけるPFAシートの多孔質樹脂シート剥離面のSEM画像である。 図4は、実施例2で得られた圧電積層体における多孔質樹脂シート部分表面のSEM画像である。
≪圧電積層体の製造方法および圧電積層体≫
本発明に係る圧電積層体の製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートと該シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を有する圧電積層体の製造方法であって、
方法A:繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートに、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向(シートの面方向)に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在する粗密構造を有するように処理する粗密化工程1と、
繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートまたは前記粗密化工程1で得られたシートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する積層工程2と、
を含む方法、
方法B:前記多孔質樹脂シートを凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1'を含む方法、または、
方法C:前記多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1''を含む方法。
また、本発明に係る圧電積層体は、
繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートと、該シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を有し、
前記多孔質樹脂シートは、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在するような粗密化処理シートである。
この圧電積層体および前記本方法で得られる圧電積層体を併せて、以下「本積層体」ともいう。
前記本方法および本積層体によれば、長期に亘って電荷を保持でき、高い圧電率を示す圧電積層体が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
高い圧電性を有する圧電積層体を容易に得ることができる多孔質樹脂シートの裏表面の少なくとも一方に表面被覆層を用いることで、該多孔質樹脂シートの繊維状樹脂表面等に保持された電荷の減衰が抑制され、電荷の保持に有効に寄与し、さらに、前記粗密化工程1、方法B、方法Cまたは本積層体における粗密化処理により、多孔質樹脂シートを密度が密の部分で小領域に仕切ることで、多孔質樹脂シートに帯電された電荷がより圧電積層体表面から逃げにくい構造となり、また、多孔質樹脂シートがマクロ的に不均一化(粗部と密部)されることで、圧電積層体を使用する際の応力のかかり方が不均一となり、同等の応力量でもより電荷を引き出しやすくなっていると考えられる。
<粗密化工程1および粗密化処理>
前記粗密化工程1および本積層体における粗密化処理は、特に制限しない限り、多孔質樹脂シートを用い、該シートが前記粗密構造を有するように処理してもよく、多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物(これら以外の他の層を含んでいてもよい)を用い、多孔質樹脂シート部分が前記粗密構造を有するように処理してもよいが、前記効果を奏する圧電積層体を効率的に容易に得ることができる等の点から、後者が好ましい。
以下では、前記粗密化工程1および本積層体における粗密化処理を併せて、単に「工程1」ともいう。
多孔質樹脂シートの厚さ方向とは略垂直な方向に(多孔質樹脂シートの厚さ方向における縦断面において)、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在する粗密構造を有する多孔質樹脂シートとしては、例えば、図1のように、密度が粗の部分1と密度が密な部分2とが略周期的または略規則的に交互に存在するシート10であってもよいし、図示はしていないが、密度が粗の部分と密度が密な部分とが交互には存在するが、これら部分の存在位置が規則的ではないシートであってもよい。
なお、前記密度が密な部分は、多孔質樹脂シートの厚さ方向において、該密度は略同一であってもよく、異なっていてもよい。すなわち、前記多孔質樹脂シートは、シートの表面付近のみが粗密構造を有していてもよい。
前記多孔質樹脂シートが前記粗密構造を有しているか否かについては、該シートのSEM画像、密度分布、工程1前後のシート厚分布の変化等から判断することができる。また、多孔質樹脂シートの密度が粗の部分と密度が密な部分とは、シートを膜厚方向に切断して現れる断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率:10000倍)して得られるSEM画像を2値化処理することで、工程1を行う前の多孔質樹脂シートの空孔率に対し、局所的に空孔率が高い部分を密度が粗の部分、局所的に空孔率が低い部分を密度が密の部分であると特定できる。このとき、工程1を行う前の多孔質樹脂シートの空孔率にもよるが、粗の部分は該シートの空孔率よりも5%以上高い局所空孔率を有する部分であり、密の部分は該シートの空孔率よりも5%以上低い局所空孔率を有する部分であることが、電荷保持性に優れ、圧電率の高い圧電積層体が得られるため好ましい。
得られる圧電積層体の圧電性等の特性の均一性などを考慮すると、粗密構造を有する多孔質樹脂シートとしては、密度が粗の部分と密度が密な部分とが略周期的または略規則的に交互に存在するシートであることが好ましい。
多孔質樹脂シート部分表面の粗密構造の存在個数は、高い圧電率を示し、高い電荷保持性を有する圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.04〜400個/mm2、より好ましくは0.25〜100個/mm2、さらに好ましくは1〜25個/mm2である。
なお、前記密度が粗の部分と密度が密な部分とが略周期的または略規則的に交互に存在するシートの粗密構造単位の存在個数は、公知の表面構造分析(例:走査型電子顕微鏡観察、共焦点レーザー顕微鏡観察、走査型白色干渉顕微鏡観察、走査型プローブ顕微鏡観察)や内部構造分析(例:透過型電子顕微鏡観察、超音波顕微鏡観察、X線顕微鏡観察)等によって測定することができるが、例えば以下のようにして測定することができる。
測定対象となるシートの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率:500倍)し、得られたSEM画像から表面に形成された略周期的または略規則的に形成された粗密構造の最小の構造単位(以下「粗密構造単位」ともいう。例えば格子状粗密構造において観察される最小の四角形(図2の3)や、ハニカム状粗密構造において観察される最小の六角形)を特定し、その粗密構造単位の各辺の長さをSEM画像上で測定することで算出した粗密構造単位の面積から、単位面積当たりの粗密構造単位の存在個数を算出する。
〈処理方法〉
前記処理方法としては特に限定されないが、多孔質樹脂シートまたは積層物に圧力をかける方法であることが好ましく、特に、得られる圧電積層体における多孔質樹脂シート部分が、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在する粗密構造を有するように、積層物に圧力をかける工程であることが好ましい。
前記処理方法として、より具体的な方法は、下記工程1A〜1Cが挙げられる。
工程1A:前記多孔質樹脂シートまたは積層物とプレス機との間に、前記多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成部材を配置して、圧力をかける工程
工程1B:前記多孔質樹脂シートまたは積層物に接する側のプレス面の形状が、前記多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な表面形状であるプレス機を用いて圧力をかける工程
工程1C:前記圧電積層体における多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成要素を含む表面被覆層を用い、前記積層物に圧力をかける工程
これらの中でも、より電荷保持性に優れ、圧電率の高い圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、工程1Aが好ましく、積層物を用いる工程1Aがより好ましい。
前記圧力の強さは、高い圧電率を示し、高い電荷保持性を有する圧電積層体を容易に得ることができるとともに、薄膜の表面被覆層を用いても該層がプレスの際に破れにくく、長期に亘って優れた特性を示す圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは10〜1000kgf/cm2、より好ましくは20〜500kgf/cm2である。
また、前記圧力をかける時間は、加える圧力に応じて適宜変更すればよいが、好ましくは30秒〜300分、より好ましくは1分〜60分である。
また、工程1は、前記処理、好ましくはプレスにより短時間で多孔質樹脂シートに粗密構造を形成できる点や、生じた多孔質樹脂シート(部分)の構造の変化をより容易に維持できる等の点から、加熱環境下で行うことが好ましく、ヒートプレスがより好ましい。
該加熱環境下とは、用いる多孔質樹脂シートや表面被覆層に応じて適宜選択すればよいが、加熱温度は、好ましくは50〜400℃、より好ましくは100〜300℃であり、加熱時間は、前記圧力をかける時間と同程度である。
前記工程1を加熱環境下で行う場合、繊維状樹脂の形状を保ち、本積層体の原料として用いる多孔質樹脂シートが有していた空孔率を容易に維持できる等の点から、多孔質樹脂シートは融点が高い樹脂からなるシートであることが好ましい。融点が高い樹脂としては、例えば、フッ素樹脂を含むことが好ましく、特に融点付近で流動性を示さないPTFEを含むことが好ましい。
多孔質樹脂シートがPTFE等のフッ素樹脂製シートである場合、加熱温度は、好ましくは150〜400℃、より好ましくは200〜350℃である。加熱温度がこれより高いと、本積層体の原料として用いる多孔質樹脂シートが有していた空孔率が大きく低下し、得られる圧電積層体の圧電率が低下するおそれがある。
前記工程1が、多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を用い、加熱環境下で行う工程である場合、表面被覆層としては溶融樹脂製シートを用いることが、層間接着性に優れる圧電積層体を簡便な工程により得られるため好ましく、溶融樹脂製シートを構成する樹脂の融点が、多孔質樹脂シートを構成する樹脂の融点より高いことが特に好ましい。
また、前記工程1が、表面被覆層として、溶融樹脂製シートを用い、加熱環境下で行う工程である場合、高い圧電率を示し、層間接着性に優れる圧電積層体が得られる等の点から、該シートを構成する樹脂の融点付近の温度で行うことが好ましく、例えば、融点より100℃低い温度〜融点の温度で行うことが好ましい。さらには、表面被覆層を構成する樹脂の融点より100℃低い温度以上、多孔質樹脂シートを構成する樹脂の融点未満の温度で行うことが好ましい。
工程1Aで用いる粗密構造形成部材としては特に制限されず、圧力をかけた際に、該部材の形状により、多孔質樹脂シート(部分)に粗密構造を付与できるような形状を有する部材であれば特に制限されない。
このような部材としては、凹凸構造を有する部材が挙げられ、該凹凸構造は、周期的または規則的であってもよく、不規則であってもよいが、得られる圧電積層体の圧電性等の特性の均一性などを考慮すると、前者であることが好ましい。
前記粗密構造形成部材としてより好ましくは、該部材表面の凹凸構造単位の存在個数が、好ましくは0.04〜400個/mm2、より好ましくは0.25〜100個/mm2、さらに好ましくは1〜25個/mm2である部材が挙げられる。
このような部材を用いることで、高い圧電率を示し、高い電荷保持性を有する圧電積層体を容易に得ることができる。
なお、前記凹凸構造単位の存在個数は、前記多孔質樹脂シート部分表面の粗密構造単位の存在個数と同様にして測定することができる。
前記粗密構造形成部材として具体的には、織布、不織布、網、表面凹凸膜、直径の異なるリング材等が挙げられる。
前記粗密構造形成部材としてさらに好ましくは、部材の厚さ方向に貫通孔を有さず、該部材の表面粗さが、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1.0〜10μm、さらに好ましくは2.0〜5.0μmである部材が挙げられる。
このような部材を用いると、粗密構造を効率的に形成でき、高い圧電率を示し、高い電荷保持性を有する圧電積層体を容易に得ることができるとともに、薄膜の表面被覆層を用いても該層がプレスの際に破れにくいため好ましい。また、前記工程1において、多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を用いる場合には、層間接着性の高い圧電積層体が得られるため好ましい。
本発明における表面粗さは、JIS B 0651に準拠し、触針式表面粗さ測定機で測定される算術平均粗さRaである。
前記厚さ方向に貫通孔を有さない粗密構造形成部材としてより具体的には、織布、不織布、網、直径の異なるリング材等と樹脂材料とを貫通孔を有さないよう複合化した複合部材や、表面凹凸加工シート等が挙げられる。これらの中でも、多孔質樹脂シートに略周期的または略規則的な粗密構造を形成する観点からは、織布や網等と樹脂材料とを貫通孔を有さないよう複合化した複合部材または表面凹凸加工シートであることが好ましい。
前記粗密構造形成部材の材質としては、特に制限されず、用いる多孔質樹脂シートや表面被覆層等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、用いる表面被覆層と同等またはそれ以上の硬度を有する材料を含む部材であることが好ましく、具体的には、樹脂、炭素、ガラス等が挙げられ、薄膜の表面被覆層を用いても該層がプレスの際に破れにくい等の点から、樹脂材料を含む部材が好ましい。
前記樹脂材料としては、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂等が挙げられる。
例えば、表面被覆層として、PFA膜を用いる場合には、プレスの際に該膜が破れにくい等の点から、フッ素樹脂を表面に含む部材であることが好ましく、耐熱性および硬度の観点からPTFEを含む部材であることがより好ましく、略周期的または略規則的な粗密構造を形成する観点からは、PTFEと織布や網等とを貫通孔を有さないよう複合化(含浸)した複合部材であることが特に好ましい。そのような複合部材としては、例えば、PTFE含浸ファブリックが挙げられる。
工程1Bにおけるプレス面の形状としては、特に制限されないが、前記粗密構造形成部材と同様の凹凸構造が挙げられ、凹凸構造単位の存在個数、表面粗さRa等も前記粗密構造形成部材で挙げた範囲と同程度であることが好ましい。
また、該プレス面の形状としては、格子状、ライン状、リング状(例:大きなリングの内側に小さなリングが存在している形状)、ドット状等が挙げられる。
工程1Cで用いる粗密構造形成要素を含む表面被覆層としては、特に制限されないが、表面被覆層中に前記粗密構造形成部材を含む層(例:ガラスクロス含有PFA層)、前記粗密構造形成部材と樹脂層などの層との積層体(この場合、前記粗密構造形成部材が多孔質樹脂シート側となるように用いることが好ましい)、前記粗密構造形成部材の欄で例示した、部材の厚さ方向に貫通孔を有さず、該部材の表面粗さが前記範囲にある部材等が挙げられる。
また、圧力をかける以外の前記処理方法としては、例えば、ホットプレスする際に、密となる部分により高い熱をかけて多孔質樹脂シート(部分)を架橋または硬化収縮させる方法や、ホットプレス等を行った後、密にしたい部分のみに光を照射して架橋または硬化収縮させる方法が挙げられる。
〈多孔質樹脂シート〉
前記多孔質樹脂シートは、繊維状樹脂を含めば特に制限されないが、好ましくは繊維状樹脂からなる多孔質樹脂シートであり、より好ましくは、実質的に繊維状樹脂のみからなる多孔質樹脂シートである。
該多孔質樹脂シートは、繊維状樹脂を含むため、耐久性に優れ、長期に亘り変形性能が維持でき、空孔率が高く、かつ高比表面積であることにより、電荷保持に有利となる樹脂と空孔との界面を多く有するシートを容易に得ることができ、該シートを用いることで、電荷保持性に優れ、特に電荷保持量が高い、高い圧電性を有する圧電積層体を容易に得ることができる。
多孔質樹脂シートに含まれる繊維状樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよいが、好ましくは1種である。
以下、多孔質樹脂シートについて説明するが、下記シートの形状や物性等は、圧電積層体の原料として用いる前記工程1や2の前の多孔質樹脂シートが下記形状や物性等を有していることが好ましいことを記載しており、本積層体中の多孔質樹脂シートも同様の形状や物性等を有していることが好ましいが、必ずしも、本積層体中の多孔質樹脂シートが以下と同様の形状や物性等を有していることを規定したものではない。
前記多孔質樹脂シートの下記式で算出される空孔率は、高い柔軟性を有し、電荷保持量が高い圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは60%以上、より好ましくは80〜99%である。
空孔率=(樹脂の真密度−見掛けの密度)×100/樹脂の真密度
前記多孔質樹脂シートの平均細孔径は、電荷保持量が高い圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1〜5.0μmであり、より好ましくは0.3〜3.0μmである。
平均細孔径が前記範囲にある多孔質樹脂シートまたは該シートを含む積層物に前記工程1を行うと、該工程1を行う効果がより発揮され、より長期に亘って多孔質構造中に分極した電荷を保持し、より高い圧電率を保持する圧電積層体を容易に得ることができる。
特に、多孔質樹脂シートの平均細孔径が前記範囲にあり、かつ、前記工程1が、該工程1で得られる多孔質樹脂シート部分表面の粗密構造単位の存在個数が前記範囲となるように処理する工程である場合には、多孔質樹脂シートを密度が密の部分で小領域に仕切ることができ、該多孔質樹脂シートに保持された電荷の減衰がより抑制され、より長期に亘って電荷を保持し、より高い圧電率を保持する圧電積層体を容易に得ることができる。また、圧電積層体を使用する際に、同等の応力量でもより電荷を引き出しやすくなると考えられる。
前記多孔質樹脂シートの目付は、好ましくは500g/m2以下、より好ましくは300g/m2以下、さらに好ましくは100g/m2以下、特に好ましくは0.1〜20g/m2である。
前記多孔質樹脂シートの厚さは、通常1μm〜1mm、好ましくは10μm〜500μmである。
目付または厚さが前記範囲にあると、圧電率の高い圧電積層体を容易に得ることができ、本積層体の使用時に、電荷を容易に取り出すことができる傾向にある。
前記多孔質樹脂シートは、単層からなるシートでもよいし、材質や繊維径等の異なる2層以上から構成されるシート等でもよいが、好ましくは単層からなるシートである。
前記多孔質樹脂シートとしては、具体的には、例えば、延伸多孔質膜、織布、不織布が挙げられる。これらの中でも、空孔率が高く、かつ高比表面積のシートを容易に得ることができ、該シートを用いることで、電荷保持性に優れ、特に電荷保持量が高い、高い圧電率を示す圧電積層体を容易に得ることができ、前記工程1を行う効果がより発揮され、多孔質樹脂シートに保持された電荷が表面から逃げにくい圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、不織布または2軸延伸多孔質膜が好ましく、不織布が特に好ましい。
前記繊維状樹脂を構成する樹脂としては、特に制限されないが、体積抵抗率が1.0×1013Ω・cm以上である樹脂が好ましく、例えば、ポリアミド系樹脂(6−ナイロン、6,6−ナイロンなど)、芳香族ポリアミド系樹脂(アラミドなど)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタラートなど)、ポリアクリロニトリル、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、イミド系樹脂(ポリイミド、ポリアミドイミド、ビスマレイミドなど)、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
また、前記繊維状樹脂を構成する樹脂としては、分子および結晶構造に起因する双極子を持たない樹脂であることが好ましい。該樹脂としては、分子および結晶構造が極性を示す樹脂でなければ特に制限されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン樹脂など)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンエレフタラートなど)、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の非フッ素系樹脂、および、PTFE、PFA、FEP等のフッ素系樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、耐熱性および耐候性等の観点から、連続使用可能温度が高く、ガラス転移点を圧電積層体の使用温度域に持たない樹脂であることが好ましい。連続使用可能温度は、UL746B(UL規格)に記載の連続使用温度試験により測定でき、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、耐湿性の観点から、撥水性を示す樹脂であることが好ましい。
これらの特性を有する樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好ましく、フッ素系樹脂がより好ましく、PTFEが特に好ましい。
特に、前記樹脂として、PTFEを用いる場合には、耐熱性、圧電性および耐久性にバランスよく優れる圧電積層体を容易に得ることができ、該圧電積層体は、高温/高圧環境下でも性能や構造を維持できるため、これらの環境下でも好適に使用することができる。
前記多孔質樹脂シートに含まれる繊維状樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%であり、より好ましくは80〜100重量%である。
前記多孔質樹脂シートには、樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の添加剤が含まれていてもよい。
前記繊維状樹脂は、平均繊維径が好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.3〜5μmである。平均繊維径が前記範囲内にある場合には、高い柔軟性を示す多孔質樹脂シートを容易に形成でき、繊維表面積が大きくなることで電荷を保持する十分な空間を形成でき、薄いシートにおいても繊維の分布均一性を高くすることができる等の点で好ましい。
前記繊維状樹脂の平均繊維径は、繊維状樹脂を形成する条件を適宜選択することで調整することができるが、例えば、電界紡糸法により繊維状樹脂を形成する場合には、電界紡糸の際に湿度を下げる、ノズル径を小さくする、印加電圧を大きくする、または電圧密度を大きくすることにより、得られる繊維状樹脂の平均繊維径を小さくできる傾向にある。
なお、前記平均繊維径は、測定対象となる繊維(群)を走査型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率:10000倍)し、得られたSEM画像から無作為に20本の繊維を選び、これらの各繊維の繊維径(長径)を測定し、この測定結果に基づいて算出される平均値である。
前記繊維状樹脂の繊維径変動係数は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.01〜0.5である。繊維径変動係数が前記範囲内にある場合には、繊維径が均一となり、このような繊維状樹脂を含むことで、より高い空孔率を有するシートが得られ、また、得られるシートの電荷保持性を高めることができる点で好ましい。
前記繊維径変動係数は、以下の式より算出する。
繊維径変動係数=標準偏差/平均繊維径
(なお、「標準偏差」とは、前記20本の繊維状樹脂の繊維径の標準偏差である。)
前記繊維状樹脂の繊維長は、好ましくは0.5〜100mm、好ましくは1〜50mmである。
前記繊維状樹脂は、例えば、電界紡糸法、溶融紡糸法、溶融電界紡糸法、スパンボンド法(メルトブロー法)、湿式法、スパンレース法、延伸法により製造されるが、特に電界紡糸法により得られる繊維は繊維径が小さく、このような繊維より形成される不織布は、空孔率が高くかつ高比表面積であるため、高い圧電性を有する圧電積層体を容易に得ることができる。
前記電界紡糸は、樹脂および溶媒、必要により無機フィラーを含む紡糸液を用いて行われる。
前記樹脂は、その種類、紡糸法などにも依存するが、紡糸液中に例えば5〜100重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%含まれる。
前記樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
紡糸液に無機フィラーを配合する場合、無機フィラーは、その種類などにも依存するが、紡糸液中に例えば0.1〜30重量%、好ましくは1〜30重量%含まれる。無機フィラーの含有量が前記範囲内にあれば、多孔質樹脂シートの圧電率をより高めることができる。
前記無機フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記無機フィラーとしては、高い圧電率を有する圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、前記樹脂より高い誘電率を有するフィラーが好ましく、例えば、比誘電率εが10〜10000の無機フィラーが好ましい。無機フィラーの具体例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化スズなどが挙げられる。
前記溶媒としては、前記樹脂を溶解または分散し得るものであれば特に限定されず、例えば、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、キシレン、アセトン、クロロホルム、エチルベンゼン、シクロヘキサン、ベンゼン、スルホラン、メタノール、エタノール、フェノール、ピリジン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、トリクロロエタン、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジエチルエーテルが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた混合溶媒として用いてもよい。
前記溶媒は、紡糸液中に例えば0〜90重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%含まれる。
前記紡糸液は、さらに、前記樹脂および無機フィラー以外の、界面活性剤、分散剤、電荷調整剤、機能性粒子、接着剤、粘度調整剤、繊維形成剤等の添加剤を含んでいてもよい。前記紡糸液において、前記樹脂の前記溶媒への溶解度が低い場合(例えば、樹脂がPTFEであり、溶媒が水である場合)、紡糸時に有機ポリマーを繊維形状に保持させる観点から、繊維形成剤を含むことが好ましい。
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤(例:パーフルオロアルキル基を有する酸のアンモニウム塩)、炭化水素系界面活性剤(主鎖がアルキル基よりなる界面活性剤)、シリコーン系界面活性剤(ケイ素原子を有する界面活性剤)などが挙げられる。
前記界面活性剤を配合する場合には、その使用量は、紡糸液中に例えば0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
前記繊維形成剤としては、溶媒に対し高い溶解度を有するポリマーであることが好ましく、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルギン酸、キトサン、でんぷん、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。
前記繊維形成剤を使用する場合の使用量は、溶媒の粘度、溶媒への溶解度にもよるが、紡糸液中に例えば0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。
前記紡糸液は、前述した樹脂、溶媒および必要に応じて添加剤を従来公知の方法で混合することにより製造できる。
前記樹脂がPTFEである場合、紡糸液は、PTFE、繊維形成剤および溶媒を含むことが好ましい。
前記紡糸液の好ましい例としては、以下の紡糸液(1)が挙げられる。
紡糸液(1):PTFEを30〜70重量%、好ましくは35〜60重量%含み、繊維形成剤を0.1〜10重量%、好ましくは1〜7重量%含み、合計が100重量%となるよう溶媒を含む紡糸液
この電界紡糸を行う際の印加電圧は、好ましくは1〜100kV、より好ましくは5〜50kV、さらに好ましくは10〜40kVである。
紡糸ノズルの先端径(外径)は、好ましくは0.1〜2.0mm、より好ましくは0.2〜1.6mm、さらに好ましくは0.30〜1.6mmである。
より具体的には、例えば前記紡糸液(1)を用いる場合であれば、前記印加電圧は、好ましくは10〜50kV、より好ましくは10〜40kVであり、前記の紡糸ノズルの先端径(外径)は、好ましくは0.2〜1.6mmである。
また、電極間距離は通常50〜800mm、好ましくは100〜350mm程度である。
前記繊維状樹脂の製造方法として、PTFEからなる繊維を電界紡糸法により製造する方法を例に挙げて具体的に説明する。PTFEファイバーの製造方法としては、従来公知の製造方法を採用することができ、例えば、特表2012−515850号公報に記載された以下の方法が挙げられる。
PTFE、繊維形成剤および溶媒を含み、少なくとも50,000cPの粘度を有する紡糸液を提供するステップと;
紡糸液をノズルより紡糸し、静電的牽引力により繊維化するステップと;
前記ファイバーをコレクター(例:巻き取りスプール)の上に集め、前駆体を形成するステップと;
前記前駆体を焼成して前記溶媒および前記繊維形成剤を除去することによってPTFE繊維を形成するステップとを含む方法
この方法において、紡糸液に無機フィラーを配合することで、無機フィラーを含有するPTFE繊維を得ることができる。
前記繊維状樹脂を用いて多孔質樹脂シートを成形する方法については特に制限されず、従来公知の方法を用いればよい。
例えば、前記繊維状樹脂を用いて不織布を成形するには、繊維状樹脂を製造する工程、および該繊維状樹脂をシート状に集積して不織布を成形する工程を、別途独立に行ってもよく、同時に行ってもよい。
不織布を成形する方法としては、例えば、湿式法が挙げられ、具体的には、前記繊維状樹脂を含有する水分散液を、例えばメッシュ上に堆積させてシート状に成形すればよい。
前記繊維状樹脂の使用量は、前記水分散液全量に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。繊維状樹脂をこの範囲内で使用すれば、集積(抄紙)工程で水を効率よく活用することができ、また、繊維状樹脂の分散状態がよくなり、均一な湿式不織布を得ることができる。
前記水分散液には、分散状態を良好にするためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系等の界面活性剤などからなる分散剤や油剤、また泡の発生を抑制する消泡剤等を添加してもよい。
<積層工程2>
前記工程2は、多孔質樹脂シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する工程であってもよいし、前記工程1で得られたシートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する工程でもよい。
前者の場合、この工程2の後に、前記工程1を経ることで、本積層体が得られ、後者の場合、この工程2により、本積層体が得られる。
前記効果を奏する圧電積層体を効率的に容易に得ることができる等の点から、前者が好ましい。
前記表面被覆層は、コスト等の点から、多孔質樹脂シートの表裏面(最も面積の大きい2面)の一方に設けられてもよいが、より高い圧電率を保持する圧電積層体が得られる等の点から、多孔質樹脂シートの表裏面の両面に設けることが好ましく、さらに高い圧電率を保持する圧電積層体が得られる等の点から、多孔質樹脂シートの全面(表裏面および端面)上に設けることも好ましい。
〈表面被覆層〉
本積層体は、特定の多孔質樹脂シート上に表面被覆層を有することを特徴とする。
このような表面被覆層は、多孔質樹脂シートに保持された電荷が外部環境と電気的に接続して減衰するのを防止するように働くため、該層を用いることで、長期に亘って電荷を保持し、高い圧電率を保持する圧電積層体を容易に得ることができる。
また、多孔質樹脂シートと表面被覆層との間に電荷を保持し得る新たな界面を形成できるため、圧電率が向上するとともに、このような界面に保持された電荷が、多孔質樹脂シートの中空構造に移動することによって相乗的に保持できる電荷量が増大し、圧電率の向上に寄与するという効果があると考えられる。
前記表面被覆層を形成する材料は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の例示としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、熱硬化性ゴム(例えばフッ化ビニリデン系ゴム、シリコーンゴム)、ポリウレタン、フェノール樹脂、イミド樹脂(例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ビスマレイミド)、シリコーン樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の例示としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PCTFE、ETFE、PVDF、PFA、FEP)、ナイロン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンオキサイド、ポリスルホン、塩化ビニリデンが挙げられる。
これらの中でも、圧電積層体における多孔質樹脂シートとの密着性等の点から、溶融樹脂であることが好ましい。特に、積層工程2が、多孔質樹脂シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する工程であり、前記工程1が、得られる圧電積層体における多孔質樹脂シート部分が、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在する粗密構造を有するように、得られた積層物に加熱環境下で圧力をかける工程である場合は、工程1により多孔質樹脂シートと表面被覆層とを融着一体化できるため好ましい。溶融樹脂としては、融点が好ましくは100〜400℃、より好ましくは200〜350℃である樹脂が望ましい。
前記表面被覆層の体積抵抗率は、多孔質樹脂シートまたは本積層体の長期電荷保持性向上などの点から、好ましくは1×1013Ω・cm以上であり、より好ましくは1×1014Ω・cm以上である。
体積抵抗率は、測定したい表面被覆層単体(フィルム)を用いて二重リング電極法に基づいて測定される。
前記表面被覆層の弾性率は、電荷取り出しの際の圧縮歪に対して非線形の変形が起こりやすく、高い圧電率100〜500程度(単位:d33(pC/N))を示すことができる圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、前記多孔質樹脂シートの弾性率と異なることが好ましい。この場合、前記表面被覆層の弾性率は、前記多孔質樹脂シートの弾性率より高くても、低くてもよい。また、この場合の前記表面被覆層と前記多孔質樹脂シートとの弾性率の差は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは50MPa以上である。弾性率の差がこの範囲にあれば、本積層体を圧縮時に非線形変形が起こりやすいなどの点で好ましい。
前記表面被覆層の比誘電率は、好ましくは2〜100である。
比誘電率がこの範囲内にある場合であって、積層体(積層物)にコロナ放電による電荷印加を行う場合、該電荷印加の際に、誘電率が高い表面被覆層の内部に電荷が集中し、また、表面被覆層と多孔質樹脂シートとの界面にも電荷が保持されやすい傾向にある。さらに、保持された電荷は前記多孔質樹脂シート中の中空構造に移動するために、圧電層全体としての電荷保持量が増大して、圧電率の初期値が向上すると考えられる。
前記表面被覆層の厚さは、通常1μm以上であり、好ましくは多孔質樹脂シートの厚さの30%以下である。厚さが1μm未満では、例えば、表面被覆層用のフィルムを用いて、表面被覆層を形成する場合、該フィルムの取扱性が悪く、かつ、フィルム欠陥(ピンホール)による絶縁性が低下する等の問題が生じる可能性があり好ましくない。また、前記表面被覆層の厚さが多孔質樹脂シートの厚みの30%を超える場合であって、積層体(積層物)にコロナ放電による電荷印加を行う場合、多孔質樹脂シート中に電荷を注入する際のコロナ放電電圧を高く設定する必要があるため工業的に実用化が困難になる傾向にある。
なお、前記表面被覆層を多孔質樹脂シートの表裏面に形成する場合は、それぞれの表面被覆層の厚さが互いに異なるよう作成すると、得られる圧電積層体は、該積層体の圧縮歪に対して非線形の変形が起こりやすく、高い圧電特性を示す傾向にあるため好ましい。
前記表面被覆層は、従来公知の方法により形成可能であり、例えば熱硬化性樹脂を用いる場合は、前記多孔質樹脂シートに、熱硬化性樹脂と硬化剤(架橋剤)と溶剤とを含む液を塗布し乾燥させることにより形成することができる。
また、光硬化性樹脂を塗布し、光硬化させることにより形成することもできる。
前記硬化剤としては、従来公知の硬化剤を用いることができ、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名:パーヘキサ25B(日油(株)製))、トリアリルイソシアヌレート(商品名:TAIC(日油(株)製))などが挙げられる。
前記溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、ベンゼン、アセトン、エチルベンゼンが挙げられる。
表面被覆層は、例えば、直接多孔質樹脂シート上に形成する前記方法の他に、予め表面被覆層(用のフィルム)を形成したものを用いてもよい。
予め表面被覆層(用のフィルム)を形成する場合には、従来公知の成形方法、たとえば単軸・二軸押出機等の成形機により、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂と、必要に応じ硬化剤と溶剤とを混合した後、例えば加圧成形機やTダイ等でシート状等に成形する方法が挙げられる。成形温度は、熱可塑性樹脂の場合は通常、該樹脂の溶融温度と同程度であり、熱硬化性樹脂の場合は通常、該樹脂の硬化温度と同程度である。
表面被覆層は、単層であってもよく、複数の層からなる層でもよい。表面被覆層が複数の層からなる場合、該複数の層は、それぞれ同一の層であってもよく異なる層であってもよい。
また、表面被覆層が、多孔質樹脂シート表面の2面以上に設けられる場合、これらの表面被覆層は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、表面被覆層が、粗密構造を形成可能な粗密構造形成要素を含む場合も同様に、単層であってもよく、複数の層からなる層でもよく、多孔質樹脂シート表面の2面以上に設けられる場合、これらの表面被覆層は、同一であってもよく、異なっていてもよく、少なくとも1つが、粗密構造形成要素を含まない表面被覆層であってもよい。
<方法Bおよび方法C>
前記方法Bでは、前記多孔質樹脂シートを凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1'を含めばよく、前記方法Cでは、前記多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1''を含めばよい。
これらのうちでは、前記と同様の理由から、方法Cが好ましい。
これらの工程における、凹凸構造を有する部材としては、前記工程1Aで例示した粗密構造形成部材や、前記工程1Bで例示した前記多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な表面形状であるプレス機、前記工程1Cで例示した、部材の厚さ方向に貫通孔を有さず、該部材の表面粗さが前記範囲にある部材や表面被覆層中に前記粗密構造形成部材を含む層(但し、表面凹凸構造を有する)等が挙げられる。
前記工程1'および工程1''は、前記工程1と同様に、多孔質樹脂シート(部分)に前記粗密構造を有するように処理する工程であることが好ましく、プレス条件等も前記工程1と同様の条件が挙げられる。
前記工程1''における積層物を形成する方法としては、前記工程2と同様の工程が挙げられる。
<分極処理工程>
本積層体は、例えば、前記工程1や2の後に、分極処理されたものであることが好ましい。
前記分極処理の方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に制限されないが、例えば、直流電圧印加処理や交流電圧印加処理等の電圧印加処理、およびコロナ放電処理が挙げられる。
例えば、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して行うことができる。
放電条件は、用いる多孔質樹脂体に応じて適宜選択すればよいが、好ましい条件として、高電圧電源の電圧が−0.1〜−100kV、より好ましくは−1〜−20kV、電流が0.1〜100mA、より好ましくは1〜80mA、電極間距離が0.1〜100cm、より好ましくは1〜10cm、印加電圧が0.01〜10.0MV/m、より好ましくは0.5〜2.0MV/mである条件が挙げられる。
前記分極処理は、多孔質樹脂シートや前記工程1や1'で得られたシート自体を分極処理してもよいが、工程2や1''の後、好ましくは、工程2を行い、次いで工程1を行った後、分極処理をすることが好ましい。これは、表面被覆層が、多孔質樹脂シートに保持された電荷の外部環境と電気的に接続することによる減衰を防止する役割を果たすため、より高感度の圧電積層体を得ることができると考えられること、また、多孔質樹脂シートと表面被覆層との間に電荷を保持し得る新たな界面を形成できる傾向にあるため、得られる圧電積層体における多孔質樹脂シート部分の圧電率が向上すると考えられることによる。
<本積層体>
本積層体は、多孔質樹脂シートと表面被覆層とを有すれば特に制限されず、多孔質樹脂シートと表面被覆層との間や最外層に圧電積層体において従来用いられてきた層を有していてもよい。
該従来用いられてきた層は、本積層体中に、1層含まれていてもよく、層を構成する成分や厚みなどが異なる2層以上が含まれていてもよい。
本積層体の厚さは、用いる用途等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば10μm〜10mmであり、好ましくは50μm〜5mmである。
本積層体における表面被覆層の、多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を工程1Aまたは工程1Bの方法で圧力をかけた場合の多孔質樹脂シートとは反対側表面の表面粗さRaは、長期に亘って多孔質構造中に分極した電荷を保持し、高い圧電率を保持する圧電積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1.0〜20μm、さらに好ましくは2.0〜15μmである。
本積層体は、柔軟性が高く、前記工程1を経て得られるため、微小な応力においても電荷応答を生じる。このため、本積層体は、自動車、屋外、工場内でも利用可能なアクチュエーター、振動体、圧力センサー、振動力センサー、押圧センサー等のセンシング用材料、押圧や振動によって生じた起電力を電源として利用する発電用材料、スイッチ、マイクロフォン、ヘッドホン、スピーカなどに用いられる圧電素子として利用することができる。さらに、前記起電力を蓄電機構に蓄電して利用する方法も挙げられる。
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
特表2012−515850号公報に記載の電界紡糸法により、PTFEファイバーをシート状に集積することで、PTFE繊維からなる多孔質樹脂シート(不織布、厚さ:0.06mm、空孔率:85%、平均繊維径:900nm、平均細孔径:1.8μm)を得た。
なお、多孔質樹脂シートについて、無作為にSEM観察の領域を選び、この領域をSEM観察(装置:S−3400((株)日立ハイテクノロジーズ製)、倍率10000倍)して無作為に20本の繊維を選び、これらの繊維の測定結果に基づいて、平均繊維径(算術)を算出した。
前記空孔率は、以下の方法に基づいて測定した。
多孔質樹脂シートを4cm角(縦4cm、横4cm)に切り出した試験片の重量と、マイクロメーター(LITEMATIC VL−50、(株)ミツトヨ製)により測定した厚さを用いて算出された見掛けの密度を用いて、下記式により算出した。
{(PTFEの真密度)−見掛けの密度}×100/(PTFEの真密度)
前記粗密構造形成部材として、PTFE含浸ガラスファブリック1を以下の方法で作製した。
単繊維径が5〜8μmのガラス繊維を束ね、繊維束長径が192μmである繊維束を形成し、得られた繊維束を平織りすることで作成した厚さ59μmの織布を、PTFE分散液に浸漬することでPTFE粒子を織布に含浸させ、PTFE含浸ガラスファブリック1を得た。
PTFE含浸ガラスファブリック1は、PTFE含量が30重量%であり、表面粗さRaが4.5μmであり、表面の凹凸構造単位の存在個数が6.25個/mm2であった。
なお、PTFE含浸ガラスファブリック1表面の凹凸構造単位の存在個数は、該ファブリックの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率:500倍)し、得られたSEM画像から表面に形成された略周期的または略規則的に形成された凹凸構造の最小の構造単位(「凹凸構造単位」ともいう。クロス材において観察される最小の四角形)を特定し、その凹凸構造単位の各辺の長さをSEM画像上で測定することで算出した凹凸構造単位の面積から、単位面積当たりの凹凸構造単位の存在個数を算出した。
次いで、表面被覆層としてPFAシート(厚さ0.0125mm、ダイキン工業(株)製、ネオフロンPFA)を用い、下記粗密化工程(粗密化処理)を行った。
PTFE含浸ガラスファブリック1、PFAシート、多孔質樹脂シート、PFAシートおよびPTFE含浸ガラスファブリック1の順になるように配置し、プレス機(北川精機(株)製)を用いて、250℃、378kgf/cm2の圧力で、20分間熱圧着することで粗密化工程(粗密化処理)を行った。
その後、室温まで冷却した後圧力を開放し、PTFE含浸ガラスファブリック1を除去することで圧電積層体を製造した。
得られた圧電積層体における表面被覆層の、多孔質樹脂シートとは反対側表面の表面粗さRaは3.7μmであり、表面亀裂や層間の剥離等は生じていなかった。
得られた圧電積層体からPFAシートを無理やり剥離した時の、PFAシートの多孔質樹脂シート剥離面のSEM画像を図3に示す。
図3に示すように、PTFE含浸ガラスファブリック1の形状が、PFAシートに転写されている状態となり、PFAシートおよび多孔質樹脂シートに(該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に)略周期的な圧力がかけられたことが推察される。
得られた圧電積層体における多孔質樹脂シート部分表面の粗密構造単位の存在個数は、6.25個/mm2であった。
該粗密構造単位の存在個数は、以下のようにして測定した。
得られた圧電積層体からPFAシートを無理やり剥離し、多孔質樹脂シート部分の表面(剥離面)を走査型電子顕微鏡(SEM)観察(倍率:500倍)し、得られたSEM画像から表面に形成された粗密構造単位を特定し、その粗密構造単位の各辺の長さをSEM画像上で測定することで算出した粗密構造単位の面積から、単位面積当たりの粗密構造単位の存在個数を算出した。
得られた圧電積層体を、春日電機(株)製のコロナ放電装置を用いて、電極間距離12.5mm、電極間電圧3kV、室温下で3分間コロナ放電による分極処理を行い、その後、積層体の両面に、アルミ箔からなる矩形電極(三菱アルミニウム(株)製、FOIL、11μm)を設けた後、100℃の雰囲気に24時間静置し、評価用サンプルを作製した。
室温(20℃)下、湿度20%の条件で、評価用サンプルの厚さ方向に一定の交流加速度α(周波数:90〜300Hz、大きさ:2〜10m/s2)を与え、その時の応答電荷を測定し、圧電率d33(pC/N)を測定した。結果は、359pC/Nであった。
[実施例2]
PTFE含浸ガラスファブリック1の代わりに、以下のようにして作製したPTFE含浸ガラスファブリック2を用いた以外は、実施例1と同様にして、圧電積層体を製造した。
単繊維径が5〜8μmのガラス繊維を束ね、繊維束長径が330μmである繊維束を形成し、得られた繊維束を平織りすることで作成した厚さ110μmの織布を、PTFE分散液に浸漬することでPTFE粒子を織布に含浸させた、PTFE含浸ガラスファブリック2を得た。
PTFE含浸ガラスファブリック2は、PTFE含量が35重量%であり、表面粗さRaが7.0μmであり、実施例1と同様にして測定した表面の凹凸構造単位の存在個数が4個/mm2であった。
得られた圧電積層体における表面被覆層の、多孔質樹脂シートとは反対側表面の表面粗さRaは10.5μmであり、層間の剥離は生じていなかったが、圧電特性には影響のない程度に微小な表面亀裂が生じていた。
得られた圧電積層体からPFAシートを無理やり剥離した時の、多孔質樹脂シート部分のPFAシート剥離面のSEM画像を図4に示す。
図4に示すように、PTFE含浸ガラスファブリック2の形状が、多孔質樹脂シート部分に転写されている状態となり、多孔質樹脂シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在していることが推察される。
実施例1と同様にして測定した多孔質樹脂シート部分表面の粗密構造単位の存在個数は、4個/mm2であり、実施例1と同様にして測定した圧電積層体の圧電率d33は、328pC/Nであった。
[比較例1]
PTFE含浸ガラスファブリック1を用いない以外は、実施例1と同様にして、圧電積層体を製造した。
得られた圧電積層体における表面被覆層の、多孔質樹脂シートとは反対側表面の表面粗さRaは1.4μmであり、層間の剥離が生じやすかった。
実施例1と同様にして測定した圧電積層体の圧電率d33は、203pC/Nであった。
以上の結果より、本発明の圧電積層体は、加熱環境下での静置後でも高い圧電率を保持していた。
1:密度が粗の部分
2:密度が密な部分
3:粗密構造単位
10:多孔質樹脂シート

Claims (15)

  1. 繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートに、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在する粗密構造を有するように処理する粗密化工程1と、
    繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートまたは前記粗密化工程1で得られたシートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を配置して積層物を形成する積層工程2と、
    を含む圧電積層体の製造方法。
  2. 繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートと該シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を有する圧電積層体の製造方法であって、
    前記多孔質樹脂シートを凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1'、または、
    前記多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物を凹凸構造を有する部材を用いてプレスする工程1''
    を含む、圧電積層体の製造方法。
  3. 前記粗密化工程1が、
    前記多孔質樹脂シートまたは積層物とプレス機との間に、多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成部材を配置して、圧力をかける工程1A、または、
    前記多孔質樹脂シートまたは積層物に接する側のプレス面の形状が、多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な表面形状であるプレス機を用いて圧力をかける工程1B
    である、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記多孔質樹脂シートが、不織布または2軸延伸多孔質膜である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記圧電積層体の原料として用いる多孔質樹脂シートの空孔率が60%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記圧電積層体の原料として用いる多孔質樹脂シートの平均細孔径が0.1〜5.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記工程1、1'および1''が、10〜1000kgf/cm2の圧力をかける工程である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記工程1が、前記多孔質樹脂シートと表面被覆層との積層物に圧力をかける工程であり、
    前記工程1'または1''のうち、前記工程1''を採用する、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記工程1が、
    前記積層物とプレス機との間に、多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成部材を配置して、圧力をかける工程1A、
    前記積層物に接する側のプレス面の形状が、前記多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な表面形状であるプレス機を用いて圧力をかける工程1B、または、
    前記圧電積層体における多孔質樹脂シート部分に前記粗密構造を形成可能な粗密構造形成要素を含む表面被覆層を用い、前記積層物に圧力をかける工程1C
    である、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記工程1が前記工程1Aであり、前記粗密構造形成部材が、凹凸構造を有する部材である、請求項2または9に記載の製造方法。
  11. 前記凹凸構造を有する部材表面の凹凸構造単位の存在個数が0.04〜400個/mm2である、請求項2または10に記載の製造方法。
  12. 前記工程1、1'および1''が、加熱環境下で行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記表面被覆層が溶融樹脂製シートである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 前記多孔質樹脂シートがフッ素樹脂製シートである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
  15. 繊維状樹脂を含む多孔質樹脂シートと、該シートの表裏面の一方または両方に表面被覆層を有し、
    前記多孔質樹脂シートは、該シートの厚さ方向とは略垂直な方向に、密度が粗の部分と密な部分とが交互に存在するような粗密化処理シートである、
    圧電積層体。
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