JP2018181538A - リチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池正極、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池正極、及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】低温下での充放電のサイクル特性が良好であり、高温保存後の低温下での抵抗特性が良好なリチウムイオン二次電池を得ることができるリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池正極およびリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】ケン化度が75〜85モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有してなるリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池正極、及びリチウムイオン二次電池に関する。詳細には、リチウムイオン二次電池の正極を構成するために、活物質とともに用いられ、リチウムイオン二次電池を形成した場合に低温下での抵抗特性が良好となるバインダー組成物、当該バインダー組成物を用いて得られるリチウムイオン二次電池正極、ならびに当該リチウムイオン二次電池正極を有するリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、軽量でエネルギー密度が高いこと、繰り返し充放電に対する耐久性が高いことから、携帯電話やノートパソコンなどの電子デバイスの電源として用いられている。また、電気自動車等の電動車両においても、放電・充電できる電源装置として活用されている。特に、近年の電気自動車等の電動車両の普及に伴い、高温環境下や低温環境下においても高容量であり且つ急速充放電対応可能であるなど、性能の更に高い電池が要求されている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体の両面に形成された正極と、負極活物質を含む負極活物質層が負極集電体の両面に形成された負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。このような電極は、活物質と電極用バインダーとの混合スラリーを集電体表面に塗布、乾燥することにより形成される。
ここで電極用バインダーは、活物質同士を結着するとともに、集電体である金属箔と活物質とを結着する働きをしている。バインダーが十分な量の活物質を集電体に結着できないか、又は、活物質同士を結着できないと、容量の大きな電池は得られない。また、充放電を繰り返すことによってバインダーが徐々に酸化され、活物質の集電体への結着力が低下し、集電体から活物質が脱落して電池の容量が低下するおそれがある。
この問題を解決する方法として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような柔軟なフッ素系樹脂をバインダーに使用する方法が知られている。しかしPVDFは結着力が弱く、バインダーを多く使用しないと結着力が低下するおそれがあった。
また、リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物として、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性バインダーを用いることが提案されている。特許文献1には、高い充放電容量を発現し、活物質結着性の高い電極を得るために、ビニルアルコール由来の繰り返し単位が特定の割合で存在する重合体を含むリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物が提案されている。
また、特許文献2には高いサイクル特性を発現し、低温抵抗特性の高い電極を得るために、正極用リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物として、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が15〜60質量%である重合体と、酸性官能基含有単量体単位の含有割合が10質量%以下である粒子状重合体を含むリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物が提案されている。
特許4269371 特許6070266
しかしながら、上記特許文献1には、実施例において電池容量保持容量と結着性に関する評価が記載されているものの、高温条件や低温条件での電池特性については具体的な評価は行われていない。
また、上記特許文献2には、単純な低温抵抗特性に関する評価が記載されているものの、より実用に近い条件である高温での保存後の低温条件での電池抵抗安定性については具体的な評価は行われていない。
PVA系樹脂を電極バインダーとして用いる場合、初期クーロン効率が良好となる点、電気容量が大きくなる点で通常、高ケン化または完全ケン化のPVAが使用されていた。
一方、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド車等の自動車の駆動電源として用いられるため、高い出力特性が求められる。特に自動車は、寒冷地においても短時間での高負荷の入出力が必要であるため、常温下のみならず低温下における高い入出力特性が求められる。
しかしながら、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液は、低温時の粘度上昇によるイオン伝導度の大幅な低下を引き起こす場合がある。したがって、リチウムイオン二次電池の低温下での入出力特性を向上させることは、電気自動車やハイブリッド車等の自動車の駆動電源として用いる場合において重要な課題である。
また、自動車は寒冷地以外でも使用するのが一般的であり、高温条件化での安定的な電池容量の発揮が求められる。
しかしながら、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液は、高温時に安定性が低下し、酸化分解され、分解生成物の堆積に伴う抵抗の大幅な増加を引き起こす場合がある。したがって、リチウムイオン二次電池の高温時の抵抗特性を向上させることは、電気自動車やハイブリッド車等の自動車の駆動電源として用いる場合において重要な課題である。
そこで、本発明はこのような背景下において、リチウムイオン二次電池を形成した場合に低温下での充放電のサイクル特性が良好となり、高温保存後の抵抗値の上昇抑制を可能とするリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物、当該バインダー組成物を用いて得られるリチウムイオン二次電池正極、及び当該リチウムイオン二次電池正極を有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定のケン化度を有するポリビニルアルコール系樹脂をリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物に用いることによって、リチウムイオン二次電池を形成した場合に、低温下での充放電のサイクル特性が良好となること、高温保存後の電池抵抗の増加を抑制することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、ケン化度が75〜85モル%のポリビニルアルコール系樹脂を含有してなることを特徴とするリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物、およびそのバインダー組成物を用いたリチウムイオン二次電池正極ケン化度に関するものである。
なお、以下では、「リチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物」を単に「正極用バインダー組成物」と略称することがある。また、「ポリビニルアルコール系樹脂」を「PVA系樹脂」と表記することがある。
本発明の正極用バインダー組成物は、リチウムイオン二次電池を形成した場合に、活物質同士、または活物質と集電体間の結着性を担保しながらも、PVA系樹脂が電解液、とりわけ有機系電解液と適度な親和性を発揮するため、低温下でのイオン伝導度の低下を抑制することができ、そのため、低温下での充放電のサイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池を得ることができる。
更に、PVA系樹脂が正極活物質表面を適切に保護するため、高温保存時に誘発される正極活物質上での電解液の酸化分解、それに伴う抵抗値の増加を抑制することが可能となる。そのため、高温保存後の抵抗特性が良好なリチウムイオン二次電池を得ることができる。
本発明において、バインダーは活物質と電解液との界面上に存在しており、リチウムイオン電池における電池抵抗に大きな影響を与える。これは、電解液の粘度が上昇し、リチウムイオン伝導度が顕著に低下する低温時においてより明確に影響する。本発明で使用するPVA系樹脂を含有してなるバインダー組成物において、PVA系樹脂が有機系電解液と適度な親和性を持つため、低温時においてもリチウムイオンの移動を阻害しない。そのため、低温下での良好な充放電サイクル特性を発揮することが可能となる。
更に、バインダーは正極活物と電解液の界面に存在しており、正極活物質上の表面保護膜の安定性に大きな影響を与える。これは、安定性が低下し、正極活物質の表面保護膜が電解液中に溶出しやすく、電解液が正極活物質表面で酸化分解されやすくなる高温においてより明確に影響する。本発明で使用するPVA系樹脂を含有してなるバインダー組成物において、正極活物質の表面保護膜を適切に保護するため、高温保存時に誘発される正極活物質の表面保護膜の溶出を抑制し、正極活物質上での電解液の酸化分解を抑制することが可能となる。そのため、電解液の酸化分解に伴う電池抵抗の増加を抑制する機能を持つ。したがって、高温保存後の抵抗特性が良好なリチウムイオン二次電池を得ることができる。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
なお、本明細書において、アクリルとメタクリルを特段区別しない場合には、(メタ)アクリルと総称し、アクリレートとメタクリレートを特段区別しない場合には(メタ)アクリレートと総称する。
本発明において固形分とは、対象物を105℃、3時間の乾燥減量法に供することにより得られるものを意味する。
<リチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物>
本発明のリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物は、ケン化度が75〜85モル%のPVA系樹脂を含有してなるものである。
〔ポリビニルアルコール系樹脂(A)〕
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)としては、例えば、公知一般の水溶性のPVA系樹脂が挙げられる。
かかるPVA系樹脂(A)は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化することにより得られる。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、代表的には酢酸ビニルが挙げられる。また酢酸ビニルの代わりに、例えば、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピパリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等を例示できるが、価格や入手の容易さの観点で、酢酸ビニルが好ましく用いられる。
ビニルエステル系モノマーの重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などにより行うことができる。なかでも、反応熱を効率的に除去できる溶液重合を還流下で行うことが好ましい。溶液重合の溶媒としては、通常はアルコールが用いられ、好ましくは炭素数1〜3の低級アルコールが用いられる。
得られた共重合体のケン化についても、従来のPVA系樹脂で行われている公知のケン化方法を採用することができる。すなわち、重合体をアルコール又は水/アルコール溶媒に溶解させた状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いてケン化を行うことができる。
前記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
通常、無水アルコール系溶媒下、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が反応速度の点や脂肪酸塩等の不純物を低減できるなどの点で好適に用いられる。
ケン化反応の反応温度は、通常20℃〜60℃である。反応温度が低すぎると、反応速度が小さくなり反応効率が低下する傾向があり、高すぎると反応溶媒の沸点以上となる場合があり、製造面における安全性が低下する傾向がある。なお、耐圧性の高い塔式連続ケン化塔などを用いて高圧下でケン化する場合には、より高温、例えば、80〜150℃でケン化することが可能であり、少量のケン化触媒でも短時間で高ケン化度のものを得ることが可能である。
本発明のバインダー組成物に含有するPVA系樹脂(A)のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、75〜85モル%であり、好ましくは76〜83モル%であり、更に好ましくは77〜82モル%である。
ケン化度が低すぎると、電解液に対して膨潤しやすくなり、この結果、正極部材間の結着性が低下する傾向があり、特に高温時に正極活物質の表面保護膜の溶出を抑制できずに電池抵抗が増大し、電池特性が不安定となる傾向がある。逆に高すぎると、電解液との親和性が低下し、低温での電池抵抗が上昇する傾向がある。
PVA系樹脂(A)の粘度平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、350〜3,000であることが好ましく、特に好ましくは350〜2,800、更に好ましくは400〜2,500である。かかる粘度平均重合度が低すぎると、造膜された皮膜の柔軟性が低下することで、正極の柔軟性が低下する傾向がある。逆に高すぎると水分散体の粘度が高くなる傾向があり、電極活物質と混合する際に混ざりにくく、電極が不均一になる傾向がある。
上記PVA系樹脂(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、10モル%未満、好ましくは5モル%以下)にて、ビニルエステル系モノマー以外の他のモノマーに由来する構造単位を有していても良い。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のビニル基とエポキシ基を有するモノマー;トリアリルオキシエチレン、ジアリルマレアート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート等のアリル基を2個以上有するモノマー;酢酸アリル、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル等のアリルエステル系モノマー;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルクロトナート等のアセトアセトキシアルキルクロトナート;2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル部分がC1〜C10アルキル基であり、好ましくはC1〜C6アルキル基);(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレンスルホン酸等のオレフィン系モノマー;ブタジエン−1,3、2−メチルブタジエン、1,3又は2,3−ジメチルブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3等のジエン系モノマー;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパンなどのヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類、その塩又はモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニルアルキルジアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられる。ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートの具体的な例としては、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いても良く、又は2種以上を併せて用いても良い。
また、本発明のPVA系樹脂(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲(通常15モル%以下、好ましくは10モル%以下)にて変性されたPVA系樹脂、例えば、PVA系樹脂のホルマール化物、アセタール化物、アセトアセチル化物、ブチラール化物、ウレタン化物、スルホン酸やカルボン酸等とのエステル化物等が含まれていても良い。
なお、本発明においては、上記のPVA系樹脂の中で、1種を用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
〔リチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物〕
本発明のリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物は、上述のケン化度が75〜85モル%のPVA系樹脂を含有してなるものであり、好ましくはかかるPVA系樹脂を水に分散させ溶液にしたものを含有してなるもの、PVA系樹脂を水/アルコールに分散させたものを含有してなるもの等が挙げられる。中でも、電池電極製造上の簡便さを有し製造時の経済性に優れるという点で、PVA系樹脂を水に分散させた後、溶解した水溶液を含有してなるものであることが好ましい。本発明のバインダー組成物はPVA系樹脂を主成分とするものであり、固形分中の重量の過半を占めるものである。
以下に、本発明の正極用バインダー組成物に含まれる水溶液について説明する。
本発明で用いられる水溶液は、通常、上述のPVA系樹脂を水中で溶解することで得られる。
本発明で用いられる水溶液は、PVA系樹脂のケン化度が、75〜85モル%であることが好ましく、特に好ましくは76〜83モル%、更に好ましくは77〜82モル%であるPVA系樹脂が好適に用いられる。かかるケン化度が小さすぎると、水に均一に分散、溶解させることが困難となり、スラリーの不安定化や電極の不均一化が生じる傾向がある。また、大きすぎると、得られる正極を用いたリチウムイオン二次電池の低温時の抵抗が増加する傾向がある。
次に、PVA系樹脂から、水溶液を製造する工程について説明する。
かかる工程は、粉末あるいはペレット状のPVA系樹脂を溶解するもので、その方法としては特に限定されるものではないが、通常は、粉末状のPVA系樹脂を水中に投入し、必要に応じて撹拌、および加熱することで水溶液を得ることができる。
かかる方法によって得られた水溶液の固形分濃度は、通常、10〜50重量%であり、特に10〜30重量%の範囲が好ましい。かかる固形分濃度が小さすぎると、その水分の除去に多大なエネルギーや時間を要する傾向があり、また、固形分濃度が大きすぎると、流動性が低下し、作業性を阻害する傾向がある。
<他の成分>
本発明の正極用バインダー組成物には、通常、塗膜に用いられる塗料や成型用樹脂に用いられる配合剤等を配合することができる。例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤{ホウ酸、メチロール化メラミン、炭酸ジルコニュム、ジイソプロポキシチタンビストリエタノールアミネート等}、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。それぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。なお、正極用バインダー組成物がこれらの配合剤を含有する場合、含有する配合剤の有機分は、正極用バインダー組成物の固形分に含まれる。
上記配合剤の配合量は、正極用バインダー組成物における上記水分散体の固形分100重量部に対して通常10重量部未満、好ましくは5重量部未満である。
〔正極用スラリーの調製:正極の製造〕
上記本発明の正極用バインダー組成物及び活物質を混合して、リチウムイオン二次電池正極用スラリーを調製することができる。
かかる活物質は、リチウムイオン二次電池正極に用いられる、公知一般の活物資を用いることが可能である。
正極用活物質としては、例えば、オリビン型リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物等を用いることができる。
スラリー中の活物質の含有量は、10〜95重量%、好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは35〜65重量%である。
活物質の平均粒子径は、通常1〜100μmであり、好ましくは1〜50μmであり、特に好ましくは1〜25μmである。なお、活物質の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定(レーザ回折散乱法)により測定された値を採用するものとする。
正極用スラリーにおける活物質とバインダー組成物との含有比率は、活物質100重量部に対して、前記正極用バインダー組成物に含まれるPVA系樹脂の固形分にて通常0.1〜10重量部であり、好ましくは0.1〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。正極用バインダー組成物の含有量が多くなりすぎると、内部抵抗が増大する傾向がある。一方、少なすぎると、活物質間の所望の結着力や集電体への接着力が得られ難く、正極が不安定となり、充放電サイクル特性が低下する傾向がある。
正極用スラリーには、上記活物質、正極用バインダー組成物の他、その他の物質が含まれてもよい。例えば、導電助剤、支持塩(リチウム塩)等が含まれ得る。これらの成分の配合比は、公知の一般的な範囲である。配合比についても、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整され得る。
導電助剤とは、導電性を向上させるために配合される配合物をいう。導電助剤としては、黒鉛などのカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標))、スーパーグロスナノチューブなどの種々の炭素繊維などが挙げられる。本発明のリチウムイオン二次電池正極の作成において種々の配合の結果、結着剤の導電性を更に高める必要がある場合、導電助剤を配合することが好ましく、導電助剤としてVGCF(登録商標)を用いると、活物質が有効に活用され、結着剤を多量に用いることに起因する充放電容量の低下が抑制され得る。この際、VGCF(登録商標)の配合量は、活物質層の合計質量に対して、好ましくは1〜10重量%である。
さらに、正極作製時の作業性等を考慮して、粘度調整、正極用バインダー組成物の固形分の調整などの目的により、溶媒を追加して、正極用スラリーを調製してもよい。かかる溶媒としては、上記した有機溶媒と同様のものを用いることができる。
正極用スラリーには、上記活物質や正極用バインダー組成物及び導電助剤などの分散性向上、または塗工時のレベリング性改善を目的として、正極用バインダー組成物とは別に増粘剤を添加してもよい。増粘剤の種類としては、特に限定はしないが、PVA系樹脂との混和性や、上記水分散体の分散媒に水が好適に用いられていることなどから、主に水溶性高分子が好適に用いられる。
水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等のアクリルアミド類;酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和酸との共重合体;スチレンと上記不飽和酸との共重合体;ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体;及び前記不飽和酸と各共重合体の塩類又はエステル類、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガム等の天然多糖類が挙げられる。中でも増粘効果が高いという点でセルロース誘導体類が好ましく、さらには増粘効果、微粒子に対する分散安定性の高さの点でカルボキシメチルセルロースが好ましい。
正極用スラリーに用いられる増粘剤の量としては、正極用スラリーの固形分にて、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.5〜2重量%である。スラリーに対して用いる量が少なすぎると、上記活物質や正極用バインダー及び導電助剤などの分散安定性が低下し過ぎて、正極が不均一になって安定な充放電が得られない傾向にある。また一方で、かかる量が多すぎると、正極用スラリーの粘度が高くなり過ぎて、正極を作成する際に集電体に均一に塗工するのが困難となる傾向がある他、作成した電池の内部抵抗が向上して充放電容量が低下する傾向がある。
正極用バインダー組成物、活物質、及び必要に応じて用いられる配合剤、溶媒の混合は、攪拌機、脱泡機、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等を利用することができる。また、正極用スラリーの調製は、減圧下で行うことが好ましい。これにより、得られる活物質層内に気泡が生じることを防止することができる。
以上のようにして調製される正極用スラリーを、集電体上に塗布、乾燥することにより、本発明のリチウムイオン二次電池正極(以下「本発明の正極」と略称することがある。)を製造することができる。必要に応じて、塗布後、プレスして密度を上げることが好ましい。
本発明の正極に用いられる集電体としては、リチウムイオン二次電池の正極の集電体として用いられているものを使用できる。具体的には、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、タンタル、ステンレス、チタン等の金属材料が挙げられ、目的とする蓄電デバイスの種類に応じて適宜選択して用いることができる。
このような集電体上に、正極用スラリーを塗布、乾燥することで、正極層を形成することができる。正極用スラリーを集電体に塗布する方法としては、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法等が挙げられる。また、正極用スラリーの塗布膜の乾燥処理の条件としては、処理温度が通常20〜250℃であり、好ましくは50〜150℃である。また、処理時間は通常1〜120分間であり、好ましくは5〜60分間である。
活物質層の厚さ(塗布層の片面の厚さ)は、通常20〜500μmであり、好ましくは20〜300μm、特に好ましくは20〜150μmである。
得られる正極における本発明の正極用バインダー組成物の電解液膨潤率は、PVA系樹脂の種類、組成にもよるが、通常50%以下であり、好ましくは40%以下、特に好ましくは0.1〜30%である。
電解液膨潤率が前記範囲にあると、本発明の正極用バインダー組成物は電解液に対して適度に膨潤し、効果的に内部抵抗を低下させて、より良好な充放電特性を実現できる傾向がある。また、本発明の正極用バインダー組成物の電解液に対する膨潤を一定範囲に留めることにより、長期充放電時の抵抗増加を抑制することが可能となる。これは、正極活物質と電解液の接触を抑制することにより、電解液の酸化分解によりもたらされる電池抵抗の増加を抑制することが可能となるためと推測される。
かかる電解液膨潤率は、例えば、以下のように測定した値をいう。
正極用バインダー組成物として調製した水分散体を500μmのアプリケータを用いてPETフィルム上にキャストした後、105℃の乾燥機で3時間加熱乾燥してフィルムを得た。得られるフィルムを、所定サイズに切り出して、その重量を測定する(W0(g))。このフィルムを10gのプロピレンカーボネート(PC)、又はエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/EMC)の3/7混合液(体積比)に浸漬させて60℃で18時間加熱する。室温まで冷却した後、フィルムを取り出し、フィルム表面に付着した電解液をふき取った後に、試験後の浸漬後重量(W1(g))から、下式に従って、電解液膨潤率を算出する。
電解液膨潤率(%)=((W1−W0)/W0)×100
本発明のリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物を用いて得られた正極は低温特性が従来の正極よりも改善される為、低温作動時の抵抗増加を抑制するという効果が得られる。
〔リチウムイオン二次電池〕
本発明のリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物を用いて作製された正極を有するリチウムイオン二次電池について説明する。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレータを少なくとも有する。
負極は、上述の正極と同様の方法で製造することができ、例えば、一般的なバインダー組成物、負極用活物質、及び必要に応じて用いられる配合剤を含有する負極用スラリーを集電体上に塗布、乾燥して形成することができる。
負極用活物質としては、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。それ以外に、リチウム金属、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、珪素粉末、錫粉末、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
負極の集電体としては、例えば、銅、ニッケルといった金属箔、エッチング金属箔、エキスパンドメタルなどが用いられる。
電解液としては、リチウム塩を溶解する非プロトン性極性溶媒が用いられる。特に限定しないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステル系高誘電率・高沸点溶媒に、低粘性率溶媒である炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル等の低級鎖状炭酸エステルを含有させて用いられる。具体的には、例えば、エチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、イソプロピルエチルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチルなどが挙げられ、これらは混合して用いることが好ましい。
電解質のリチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCl、LiBr等の無機塩や、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3) 2、LiN(SO2252、LiC( SO2CF3) 3、LiN(SO3CF32等の有機塩など、非水電解液の電解質として常用されているものを用いればよい。これらのなかでもLiPF6、LiBF4又はLiClO4を用いるのが好ましい。
セパレータとしては、例えば、ポリオレフィンの不織布や多孔性フィルム、またガラスフィルター、ポリアラミド製フィルム、PVA系樹脂からなら不織布などを用いることができる。
二次電池の構造としては、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得る。また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)については、(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得る。
以上のようにして得られるリチウムイオン二次電池は、本発明の電極用バインダー組成物を用いたことに基づき、有機溶剤系電解液との親和性が向上するため、低温時に電解液の流動性が低下し、リチウムイオンの移動が阻害されやすい環境下においても、正極活物質へのリチウムイオンの拡散を阻害しないため、低温時の抵抗特性が改善され、低温作動時にもリチウムイオン電池の高い充放電容量を安定的に得ることが可能となる。
また、本発明の電極用バインダー組成物を用いたことに基づき、高温保存後の電池抵抗の増加を抑制することが可能となる。これらの効果が得られる理由は定かではないが、高温状態では正極活物質表面上での、電解液の酸化分解を抑制する表面保護膜が溶解しやすくなり、電解液の酸化分解が起こりやすくなる。本発明の電極用バインダー組成物は正極活物質表面保護膜とも親和性が高い為、表面保護膜を保護し、溶解を抑制したために、電解液の酸化分解に伴う抵抗の増加を抑制したと考えられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」とあるのは重量基準を意味する。また、例中「Vol」とあるのは体積比を意味する。
〔分析方法〕
下記実施例及び比較例において製造したPVA系樹脂は、以下の方法にて分析した。
(1)ケン化度(モル%)
JIS K 6726に準じて、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析した。
(2)粘度平均重合度
JIS K 6726に準じて測定した。
〔測定評価方法〕
下記実施例及び比較例において調製したバインダーは、以下の方法にて電池特性の評価を行った。
(1)電池特性
作製したセルを25℃で50時間放置した後充放電試験に供した。
電流密度を30mA/gとし電位範囲2.7−4.2Vで定電流充放電試験を行い、初回の放電容量(mAh/g)、クーロン効率(%)を測定した。
(2−1)初回放電容量(mAh/g)
初回放電時の定電流値(制御電流値(mA))と設定電位に達するまでの時間(h)の積を、電極活物質(正極活物質)重量(g)で除した値を初回放電容量(mAh/g)とした。
初回放電容量の絶対値が130(mAh/g)以上を優(◎)、120(mAh/g)以上、かつ130(mAh/g)未満を良(〇)、120(mAh/g)未満を不良(×)と評価した。
(2−2)初回クーロン効率(%)
初回放電容量(mAh/g)を初回充電容量(mAh/g)で除した百分率(%)を初回クーロン効率とした。
初回クーロン効率が86%以上を優(◎)、80%以上、かつ86%未満を良(〇)、80%未満を不良(×)と評価した。
(2−3)低温抵抗特性
電流密度30mA/g、25℃5サイクル後、充電状態50%における0℃インピーダンスによる抵抗値の測定を行った。周波数範囲は0.1m〜100MHz、電圧の振幅は±10mVとした。周波数10Hz時における抵抗値が低い程良好であることを示す。なお、抵抗値の絶対値は0に近い程よいものとする。
10Hzにおいての抵抗値(Ω)が100未満を優(◎)100以上、かつ150未満を良(〇)、150以上かつ200未満を不備あり(△)、200以上を不良(×)と評価した。
(2−4)高温保存後低温抵抗特性
電流密度30mA/g、25℃5サイクル後、充電状態100%の状態で60℃7日間電池を保持した。その後充電状態50%の状態における0℃インピーダンスによる抵抗値の測定を行った。周波数範囲は0.1m〜100MHz、電圧の振幅は±10mVとした。周波数10Hz時における抵抗値が低い程良好であることを示す。なお、抵抗値の絶対値は0に近い程よいものとする。
10Hzにおいての抵抗値(Ω)が200未満を優(◎)200以上、かつ400未満を良(〇)、400以上を不良(×)と評価した。
〔製造例1:PVA系樹脂(A1)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル78.5部、メタノール20.5部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位の合計量1モルに対して2ミリモルとなる割合で加えてケン化を行ったケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVA系樹脂(A1)を作製した。
得られたPVA系樹脂(A1)のケン化度は、JIS K 6726に準じて残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、78モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
〔比較例1:PVA系樹脂(B1)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル78.5部、メタノール20.5部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位の合計量1モルに対して1.8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVA系樹脂(B1)を作製した。
得られたPVA系樹脂(B1)のケン化度は、JIS K 6726に準じて残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、72モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
〔比較例2:PVA系樹脂(B2)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル78.5部、メタノール20.5部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVA系樹脂(B2)を作製した。
得られたPVA系樹脂(B2)のケン化度は、JIS K 6726に準じて残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
〔比較例3:PVA系樹脂(B3)の製造〕
還還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル78.5部、メタノール20.5部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位の合計量1モルに対して3ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVA系樹脂(B3)を作製した。
得られたPVA系樹脂(B3)のケン化度は、JIS K 6726に準じて残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、88モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
〔バインダー溶液の製造〕
上記で得られたPVA系樹脂(A1、B1〜B3)20部を常温の水80部に投入し、攪拌しながら昇温し、80℃で90分間撹拌することで、PVA系樹脂水溶液を得た。
上記で調製したPVA系樹脂水溶液を分取し、希釈用の精製水と混合して、固形分濃度15重量%のバインダー溶液を調製した。
〔実施例1〕
〔リチウムイオン二次電池正極の作製〕
<正極活物質を用いた電池用正極の作製>
活物質としてLiNiMnCoO2(日本化学工業株式会社製、平均粒径10μm)を94部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製「デンカブラック」)を3部、さらに増粘剤として1.5重量%水溶液に調製したカルボキシメチルセルロース#2200(ダイセルファインケム株式会社製)を固形分換算で1.5部、また適時に精製水を加えた後、遊星式混練機(株式会社シンキー製「泡取り錬太郎」)を用いて混合して固形分濃度66.3重量%のペーストを得た(2000rpmで8分間混合した後、更に2200rpmで0.5分間脱泡した。)。
得られたペースト中に、正極用バインダーとして上記のPVA系樹脂(A1)を用いて作成されたバインダー溶液(15重量%)を固形分換算で1.5部、また適時に精製水を加水した後、さらに遊星式混練機を用いて同様の条件で混合することで、固形分濃度が55.9重量%の活物質ペーストを得た。
次に、集電体として圧延アルミ箔(株式会社製箔、厚さ18μm)の表面に、180μmのアプリケータと塗工機(株式会社井元製作所製「コントロールコーター(塗工機)」)を用いて、塗工速度10mm/秒で上記活物質ペーストを塗工した。これを60℃で10分間乾燥させ、電池用正極を得た。
〔電池の作製〕
評価用の電池の外層としては、2032型のコイン型セルを使用した。得られた電池用正極を直径11mmの大きさに打ち抜き、更に80℃で24時間以上真空乾燥を行った後にグローブボックスへと仕込んだ。作用極に作製した電池用正極、対極に金属リチウム負極(直径13mm)、厚さ16μmのポリプロピレン多孔膜から成るセパレータ(直径18mm)を介在させて、互いに電極が対向するように配置させた。電解液として、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとを体積比で3:7に混合した溶媒を使用し、電解質としてLiPF6を1mol/リットルの濃度に溶解したものを使用した。ポリプロピレン製パッキングを介して外層容器にステンレス鋼のキャップを被せて固定し、電池缶を封止することでハーフセルを作成し、評価用の電池を作製した。
作製した電池について上記評価方法の通り電池特性を測定評価した。結果を表1に示す。
〔比較例1〜3〕
正極用バインダーとしてPVA系樹脂(B1〜B3)を用いて調製されたバインダー溶液を使用する以外は、実施例1と同様の方法で正極、更に電池を作製して電池性能を評価した。
Figure 2018181538
表1に示す結果から、ポリビニルアルコール系樹脂(A1)のケン化度が、78モル%を有する実施例1の正極用バインダー組成物を用いた電池では、ケン化度が99モル%、88モル%の比較例2、比較例3に比べ、0℃という低温下での電池抵抗特性が良好であり、かつケン化度が72モル%の比較例1と比べて、60℃の高温に7日間さらされた後でも、低温下の電池抵抗が小さく、高温保存時の安定性が良好であることが分かる。
本発明の樹脂組成物はリチウムリチウムイオン二次電池における低温抵抗及び高温保存後の抵抗特性の改善が可能であることから、リチウムリチウムイオン二次電池の正極用バインダーとして好適に用いることが出来る。

Claims (6)

  1. ケン化度が75〜85モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有してなることを特徴とするリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物。
  2. ポリビニルアルコール系樹脂(A)の粘度平均重合度が350〜3000であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物。
  3. 請求項1または2いずれか記載のリチウムイオン二次電池正極用バインダー組成物を用いてなることを特徴とするリチウムイオン二次電池正極。
  4. 増粘剤を含有することを特徴とする請求項3記載のリチウムイオン二次電池正極。
  5. 前記増粘剤がセルロース誘導体類であることを特徴とする請求項4記載のリチウムイオン二次電池正極。
  6. 請求項3から5いずれか記載のリチウムイオン二次電池正極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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