JP2018180038A - 鍵盤装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】、鍵盤装置の大きさに与える影響を抑えつつ、鍵の様々な方向への移動または変形に対して許容する構造を設けること。【解決手段】本発明の一実施形態における鍵盤装置は、鍵と、フレームと、前記鍵と前記フレームとを接続する接続部であって、可撓性によって前記フレームに対して前記鍵を回動可能とする棒状の可撓性部材を含む接続部と、を含み、前記可撓性部材は、前記可撓性部材の中立線の所定の2点を結ぶ直線の長さよりも前記中立線に沿った当該2点の長さが長くなる状態を、前記鍵の回動範囲全体において維持する部分を有する。【選択図】図9

Description

本発明は、鍵盤装置に関する。
鍵盤装置において鍵を回動する構造の一例として、可撓性を有する薄板を水平に配置した構造がある(例えば、特許文献1)。この薄板を変形することにより、鍵を上下方向に回動させることができる。特許文献1には、さらに垂直に配置した薄板を併用し、水平に配置された薄板に対して直列に接続することで、鍵の並び方向への移動を許容することができる構造についても開示されている。
特開2008−191650号公報
鍵が本来の位置に対して鍵の並び方向へ移動するときは、演奏操作による場合に限らず、鍵の製造誤差および経時変化によっても生じる。このような状況であっても、特許文献1に開示された技術によれば、鍵の並び方向への移動を薄板の可撓性によって許容することができる。しかしながら、鍵を回動させる薄板(水平)と鍵の並び方向への移動を許容する薄板(垂直)とは直列に接続しなくてはならないため、それぞれの薄板を配置する領域が必要となる。この領域が小さいと薄板を小さくする必要があり、その結果、薄板が曲がるときの負荷が大きくなる。負荷を低減しようとして大きな薄板を用いると、鍵盤装置を大きくしなくてはならない。
本発明の目的の一つは、鍵盤装置の大きさに与える影響を抑えつつ、鍵の様々な方向への移動または変形に対して許容する構造を設けることにある。
本発明の一実施形態によると、鍵と、フレームと、前記鍵と前記フレームとを接続する接続部であって、可撓性によって前記フレームに対して前記鍵を回動可能とする棒状の可撓性部材を含む接続部と、を含み、前記可撓性部材は、前記可撓性部材の中立線の所定の2点を結ぶ直線の長さよりも前記中立線に沿った当該2点の長さが長くなる状態を、前記鍵の回動範囲全体において維持する部分を有することを特徴とする鍵盤装置が提供される。
前記中立線の前記所定の2点を結ぶ直線が、前記鍵が回動する面に沿った方向の成分を有してもよい。
前記中立線の前記所定の2点を結ぶ直線は、前記鍵が配列される方向の成分を有してもよい。
また、本発明の一実施形態によると、鍵と、フレームと、前記鍵と前記フレームとを接続する接続部であって、可撓性によって前記フレームに対して前記鍵を回動可能とする棒状の可撓性部材を含む接続部と、を含み、前記可撓性部材は、前記鍵の回動範囲全体において前記可撓性部材の中立線が曲がった状態を維持する部分を有することを特徴とする鍵盤装置が提供される。
前記鍵の回動範囲の少なくとも一部において、前記可撓性部材の第1位置おける延伸方向と前記鍵の長手方向とのなす角が45度未満であるとともに、前記可撓性部材の第2位置おける延伸方向と前記鍵の長手方向とのなす角が45度より大きくなってもよい。
前記鍵の回動範囲の少なくとも一部において、前記可撓性部材の第3位置から第4位置までの延伸方向の変化において、延伸方向が90度以上変化してもよい。
前記中立線は、曲線を含んでもよい。
前記可撓性部材は、前記中立線に垂直な断面において、所定の2点における断面積が互いに異なってもよい。
前記鍵が前記フレームに対して当該鍵の長手方向に移動することを規制するガイドをさらに備えてもよい。
本発明によれば、鍵盤装置の大きさに与える影響を抑えつつ、鍵の様々な方向への移動または変形に対して許容する構造を設けることができる。
第1実施形態における鍵盤装置の構成を示す図である。 第1実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。 第1実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。 第1実施形態における鍵盤アセンブリを上面から見た場合の説明図である。 第1実施形態におけるフレームのうち回動部が接続される部分を上面から見た場合の説明図である。 第1実施形態における白鍵の詳細の構造を説明する図である。 第1実施形態における回動部の構造を説明する図である。 第1実施形態における回動部を他の部材から取り外す方法を説明する図である。 第1実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。 第1実施形態における棒状可撓性部材の特徴的な構造を詳細に説明する図である。 第1実施形態における鍵(白鍵)を押下したときの鍵アセンブリの動作を説明する図である。 第2実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。 第3実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。 第4実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。 第5実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。 第6実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。 第7実施形態における棒状可撓性部材を用いた場合の鍵アセンブリの構造を説明する図である。 第7実施形態における棒状可撓性部材を上方から見た場合の図である。
以下、本発明の一実施形態における鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
<第1実施形態>
[鍵盤装置の構成]
図1は、第1実施形態における鍵盤装置の構成を示す図である。鍵盤装置1は、この例では、電子ピアノなどユーザ(演奏者)の押鍵に応じて発音する電子鍵盤楽器である。なお、鍵盤装置1は、外部の音源装置を制御するための制御データ(例えば、MIDI)を、押鍵に応じて出力する鍵盤型のコントローラであってもよい。この場合には、鍵盤装置1は、音源装置を有していなくてもよい。
鍵盤装置1は、鍵盤アセンブリ10を備える。鍵盤アセンブリ10は、白鍵100wおよび黒鍵100bを含む。複数の白鍵100wと黒鍵100bとが並んで配列されている。鍵100の数は、N個であり、この例では88個であるが、この数に限られない。鍵100が配列された方向をスケール方向という。白鍵100wおよび黒鍵100bを特に区別せずに説明できる場合には、鍵100という場合がある。以下の説明においても、符号の最後に「w」を付した場合には、白鍵に対応する構成であることを意味している。また、符号の最後に「b」を付した場合には、黒鍵に対応する構成であることを意味している。
鍵盤アセンブリ10の一部は、筐体90の内部に存在している。鍵盤装置1を上方から見た場合において、鍵盤アセンブリ10のうち筐体90に覆われている部分を非外観部NVといい、筐体90から露出してユーザから視認できる部分を外観部PVという。すなわち、外観部PVは、鍵100の一部であって、ユーザによって演奏操作が可能な領域を示す。以下、鍵100のうち外観部PVによって露出されている部分を鍵本体部という場合がある。
筐体90内部には、音源装置70およびスピーカ80が配置されている。音源装置70は、鍵100の押下に伴って音波形信号を生成する。スピーカ80は、音源装置70において生成された音波形信号を外部の空間に出力する。なお、鍵盤装置1は、音量をコントロールするためのスライダ、音色を切り替えるためのスイッチ、様々な情報を表示するディスプレイなどが備えられていてもよい。
なお、本明細書における説明において、上、下、左、右、手前および奥などの方向は、演奏するときの演奏者から鍵盤装置1を見た場合の方向を示している。そのため、例えば、非外観部NVは、外観部PVよりも奥側に位置している、と表現することができる。また、鍵前端側(鍵前方側)、鍵後端側(鍵後方側)のように、鍵100を基準として方向を示す場合もある。この場合、鍵前端側は鍵100に対して演奏者から見た手前側を示す。鍵後端側は鍵100に対して演奏者から見た奥側を示す。この定義によれば、黒鍵100bのうち、黒鍵100bの鍵本体部の前端から後端までが、白鍵100wよりも上方に突出した部分である、と表現することができる。
図2は、第1実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。音源装置70は、信号変換部710、音源部730および出力部750を備える。センサ300は、各鍵100に対応して設けられ、鍵の操作を検出し、検出した内容に応じた信号を出力する。この例では、センサ300は、3段階の押鍵量に応じて信号を出力する。この信号の間隔に応じて押鍵速度が検出可能である。
信号変換部710は、センサ300(88の鍵100に対応したセンサ300−1、300−2、・・・、300−88)の出力信号を取得し、各鍵100における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作に応じて、信号変換部710はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵100のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、および押鍵速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作に応じて、信号変換部710はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部710には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。
音源部730は、信号変換部710から出力された操作信号に基づいて、音波形信号を生成する。出力部750は、音源部730によって生成された音波形信号を出力する。この音波形信号は、例えば、スピーカ80または音波形信号出力端子などに出力される。
[鍵盤アセンブリの構成]
図3は、第1実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。図3に示すように、筐体90の内部において、鍵盤アセンブリ10およびスピーカ80が配置されている。すなわち、筐体90は、少なくとも、鍵盤アセンブリ10の一部(接続部180およびフレーム500)およびスピーカ80を覆っている。スピーカ80は、鍵盤アセンブリ10の奥側に配置されている。このスピーカ80は、押鍵に応じた音を筐体90の上方および下方に向けて出力するように配置されている。下方に出力される音は、筐体90の下面側から外部に進む。一方、上方に出力される音は筐体90の内部から鍵盤アセンブリ10の内部の空間を通過して、外観部PVにおける鍵100の隣接間の隙間または鍵100と筐体90との隙間から外部に進む。なお、スピーカ80からの音の経路は、経路SRとして例示されている。
鍵盤アセンブリ10の構成について、図3を用いて説明する。鍵盤アセンブリ10は、上述した鍵100の他にも、接続部180、ハンマアセンブリ200およびフレーム500を含む。鍵盤アセンブリ10は、ほとんどの構成が射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。フレーム500は、筐体90に固定されている。接続部180は、フレーム500に対して回動可能に鍵100を接続する。接続部180は、板状可撓性部材181、第1支持部183および回動部185を備える。このように、接続部180は、鍵100と一体で動く部材を含んでいてもよいし、さらにフレーム500と一体で動く部材を含んでいてもよい。板状可撓性部材181は、鍵100の後端から延在している。第1支持部183は、板状可撓性部材181の後端から延在している。
回動部185は、棒状可撓性部材1850、鍵側支持部1851およびフレーム側支持部1852を備える。鍵側支持部1851は、棒状可撓性部材1850の一端を支持している。この例では、鍵側支持部1851は、鍵100に対して位置関係が固定された部材(第1支持部183)に接続され、この部材よりも下方に向けて延びる部材を有し、棒状可撓性部材1850の奥側の一端を支持する。一方、フレーム側支持部1852は、棒状可撓性部材1850の他の一端を支持している。回動部185の詳細の構成は後述する。
棒状可撓性部材1850は、可撓性を有する部材で形成され、曲がった棒形状を有している。すなわち、力が加わっていない状態の棒状可撓性部材1850の中立線は、少なくとも曲がった部分を有する。この例では、鍵100の可動範囲(押鍵範囲)の全体において、棒状可撓性部材1850の中立線は、少なくとも曲がった部分を有している。棒状可撓性部材1850は、その可撓性により、様々な方向に向けて曲がったり捻れたりすることができる。棒状可撓性部材1850の詳細の構造については、後述する。鍵側支持部1851およびフレーム側支持部1852は、棒状可撓性部材1850と同じ材質であるが、棒状可撓性部材1850よりも剛性を有する形状である。鍵側支持部1851とフレーム側支持部1852との位置関係は、棒状可撓性部材1850の変形に応じて変化する。棒状可撓性部材1850を曲げることによって鍵側支持部1851がフレーム側支持部1852に対して上方に移動し、鍵100がフレーム500に対して回動することができる(図11参照)。
回動部185は、第1支持部183およびフレーム500の第2支持部585によって支持されている。このとき、第1支持部183と鍵側支持部1851とは着脱可能に接続され、第2支持部585とフレーム側支持部1852とは着脱可能に接続される。着脱可能に構成することで、製造の容易性が向上(金型の設計の容易化、組立作業の容易化、修理作業の容易化など)したり、それぞれの材料の組み合わせなどによるタッチ感および強度が向上したりする。なお、回動部185は、第1支持部183および第2支持部585の少なくとも一方と一体となって、または接着等により、着脱できない構成であってもよい。
板状可撓性部材181および第1支持部183は、鍵100と一体に成型され、同一の材質を有する。また、フレーム500も板状可撓性部材181と同一の材質を有するが、異なる材質を有してもよい。一方、回動部185(棒状可撓性部材1850)と板状可撓性部材181とは異なる材質を有するが、同一の材質を有してもよい。この例では、板状可撓性部材181は棒状可撓性部材1850よりも硬質である。
鍵100は、前端鍵ガイド151および側面鍵ガイド153を備える。前端鍵ガイド151は、フレーム500の前端フレームガイド511を覆った状態で摺動可能に接触している。前端鍵ガイド151は、その上部と下部のスケール方向の両側において、前端フレームガイド511と接触している。前端鍵ガイド151のうち、上部は上部鍵ガイド151uに対応し、下部は下部鍵ガイド151dに対応する(図7参照)。側面鍵ガイド153は、スケール方向の両側において側面フレームガイド513と摺動可能に接触している。この例では、側面鍵ガイド153は、鍵100の側面のうち非外観部NVに対応する領域に配置され、接続部180(板状可撓性部材181)よりも鍵前端側に存在するが、外観部PVに対応する領域に配置されてもよい。
ハンマアセンブリ200は、鍵100の下方側の空間に配置され、フレーム500に対して回動可能に取り付けられている。このときハンマアセンブリ200の軸受部220とフレーム500の回動軸520とは少なくとも3点で摺動可能に接触する。ハンマアセンブリ200の前端部210は、ハンマ支持部120の内部空間において概ね前後方向に摺動可能に接触する。この摺動部分、すなわち前端部210とハンマ支持部120とが接触する部分は、外観部PV(鍵本体部の後端よりも前方)における鍵100の下方に位置する。
ハンマアセンブリ200は、回動軸520よりも奥側において、金属製の錘部230が配置されている。通常時(押鍵していないとき)には、錘部230が下側ストッパ410に載置された状態であり、ハンマアセンブリ200の前端部210が、鍵100を押し戻している。押鍵されると、錘部230が上方に移動し、上側ストッパ430に衝突する。ハンマアセンブリ200は、この錘部230によって、押鍵に対して加重を与える。下側ストッパ410および上側ストッパ430は、緩衝材等(不織布、弾性体等)で形成されている。
ハンマ支持部120および前端部210の下方には、フレーム500にセンサ300が取り付けられている。押鍵により前端部210がその下面側でセンサ300を変形させ、センサ300は検出信号を出力する。センサ300は、上述したように、各鍵100に対応して設けられている。
図4は、第1実施形態における鍵盤アセンブリを上面から見た場合の説明図である。図5は、第1実施形態におけるフレームのうち回動部が接続される部分を上面から見た場合の説明図である。なお、これらの図においては、鍵100の下方に位置するハンマアセンブリ200およびフレーム500の構成は、その一部を省略して記載している。具体的には、接続部180近傍のフレーム500の構成(第2支持部585など)を記載し、手前側の構成等の一部については記載を省略している。他の説明においても、図示の際に一部の記載を省略することがある。
図4に示すように、第1支持部183bは、第1支持部183wよりも奥側に配置される。この位置は、鍵100の回動中心となる棒状可撓性部材1850の位置に関連する。このような配置にすることによって、アコースティックピアノの白鍵と黒鍵の回動中心の違いを再現している。この例では、黒鍵に対応する板状可撓性部材181bが、白鍵に対応する板状可撓性部材181wよりも長い。このような配置に対応して、フレーム500の第2支持部585bは、第2支持部585wよりも奥側に配置される。そのため、フレーム500の奥側(第2支持部585)の形状は、図5に示すように第2支持部585bが第2支持部585wよりも突出した形状となる。
図5において回動部185の記載は省略しているが、隣接する回動部185の間、特に隣接する棒状可撓性部材1850の間には大きな空間が存在する。この空間は、図5に示す音通路AP1、AP2に対応する。スピーカ80から出力された音は、鍵盤アセンブリ10の外部から、音通路AP1、AP2を通過して内部に到達し、隣接する鍵100の隙間から鍵盤装置1の外部に放出される。外観部PVから音が外部に放出されるまでの間の経路において、棒状可撓性部材1850の存在により、フレーム500(第2支持部585)と接続部180(第1支持部183)との間に音の通過を遮蔽する要素が少ないため、音の減衰量を抑えることもできる。また、第2支持部585bが第2支持部585wより突出した形状であることにより、第2支持部585wが隣接する部分の音通路AP1よりも、第2支持部585wと585bとが隣接する部分の音通路AP2の幅が広くなる。さらに、第2支持部585bの手前側において、第2支持部585wのスケール方向に、開口部586が配置されていてもよい。この場合、この開口部586も音通路になり得る。
支柱590は、筐体90と接続し、筐体90に対するフレーム500の位置を固定するための部材である。支柱590は、非外観部NVにおける白鍵100wが隣接する部分の間、すなわち「E」の白鍵100wと「F」の白鍵100wとの間、および「B」の白鍵100wと「C」の白鍵100wとの間に設けられている。
[白鍵の構造]
図6は、第1実施形態における白鍵の詳細の構造を説明する図である。図6(A)は、白鍵を上面から見た図である。図6(B)は、白鍵を側面(左側)から見た図である。図6(C)は、白鍵を奥側から見た図である。図6(D)は、白鍵を手前側から見た図である。
まず、以下の説明で用いる方向(スケール方向S、ローリング方向R、ヨーイング方向Y、上下方向V、前後方向F)について定義する。スケール方向Sは、上述したように、鍵100が配列する方向(演奏者から見た左右方向)に対応する。ローリング方向Rは、鍵100の延びる方向(演奏者から見た手前から奥側方向)を軸として回転する方向に対応する。ヨーイング方向Yは、鍵100を上方から見たときに左右方向に曲がる方向である。スケール方向Sとヨーイング方向Yとの違いは大きくはないが、鍵100のスケール方向Sの移動は平行移動の意味であるのに対し、鍵100のヨーイング方向Yの移動はスケール方向Sに曲がる(反る)ことに相当する。上下方向Vは、演奏者から見た上下方向に対応し、ヨーイング方向Yの曲がりの軸になる方向ともいえる。前後方向Fは、鍵100の延びる方向(演奏者から見た手前から奥側方向)に対応し、ローリング方向Rの回転の軸となる方向ともいえる。なお、前後方向Fは、上下方向Vおよびスケール方向Sの双方に直交する方向(水平面に含まれる方向)であり、厳密にはレスト位置における鍵100が延びる方向とは異なるが、概ね一致した方向である。
鍵100には、前端鍵ガイド151および側面鍵ガイド153が備えられている。前端鍵ガイド151は、上述したように、その上部と下部とにおいてフレーム500の前端フレームガイド511(図3参照)に対してスケール方向に接触する。そのため、前端鍵ガイド151は、実際には上部鍵ガイド151uおよび下部鍵ガイド151dに分かれている。このように、前端鍵ガイド151(上部鍵ガイド151u、下部鍵ガイド151d)および側面鍵ガイド153は、スケール方向Sに鍵100を見た場合において、直線上に並ばない3箇所で鍵100の移動を規制している。このように配置された少なくとも3箇所のガイドによれば、スケール方向S、ヨーイング方向Yおよびローリング方向Rについて鍵100の移動を規制する。なお、この例では、側面鍵ガイド153は、突出部1531、1533により形成される溝1535を側面フレームガイドが摺動することによって、鍵100の前後方向の移動も規制している。ガイドの数は3箇所以上であってもよい。この場合には、全てのガイドが直線上に並ばない要件を満たす必要が無く、少なくとも3箇所のガイドがこの要件を満たせばよい。
板状可撓性部材181は、スケール方向Sに対する可撓性を有する板状の部材である。板状可撓性部材181は、板面の法線方向Nがスケール方向Sに向かうように配置されている。これによって、板状可撓性部材181は、曲がったり捻れたりすることで、ローリング方向Rおよびヨーイング方向Yへの変形が可能である。すなわち、板状可撓性部材181は、その可撓性によって、鍵100のローリング方向Rおよびヨーイング方向Yに自由度を有する。ヨーイング方向Yの変形を組み合わせることによって、板状可撓性部材181はスケール方向Sについても自由度を有しているともいえる。一方、板状可撓性部材181は、上下方向にはほとんど変形しない。なお、法線方向Nは、スケール方向Sと完全に一致していなくてもよく、スケール方向Sの成分を有していればよい。一致しない場合には、法線方向Nとスケール方向Sとのなす角は、小さいほど好ましい。
棒状可撓性部材1850は、曲がったり捻れたりすることで、ローリング方向Rおよびヨーイング方向Yへの変形が可能である。すなわち、棒状可撓性部材1850は、その可撓性によって、鍵100のローリング方向Rおよびヨーイング方向Yに自由度を有する。ヨーイング方向Yの変形とローリング方向Rとの変形を組み合わせることによって、棒状可撓性部材1850はスケール方向Sについても自由度を有しているともいえる。また、棒状可撓性部材1850は、前後方向Fおよび上下方向Vにも変形が可能である。なお、棒状可撓性部材1850は、その形状的な特性から、板状可撓性部材181よりも捻れることができる量が大きい。
このように、接続部180は、鍵100をフレーム500に対してピッチ方向に回動させることができるだけでなく、接続部180は、ローリング方向Rおよびヨーイング方向Yに対して、変形が可能になっている。すなわち、接続部180は、鍵100のローリング方向Rおよびヨーイング方向Yに対して自由度を有している。上述のように、ヨーイング方向Yの変形とローリング方向Rとの変形を組み合わせることによって、接続部180はスケール方向Sについても自由度を有しているともいえる。
鍵100は、上述したように、製造誤差および経時変化によってヨーイング方向Yおよびローリング方向Rを含む変形を生じることがある。このとき、前端鍵ガイド151と側面鍵ガイド153との間については、これらのガイドによる規制によって、外観部PVにおいては、できるだけ、鍵100の変形による影響が視認されないようになっている。一方、外観部PVにおいて変形の影響を抑えたために、非外観部NVにおいてはその変形の影響を大きく受ける。これは、鍵100が長いほど、より顕著に影響が出る。
例えば、第1の例として、鍵100が徐々に捻れていくような変形(ローリング方向Rの変形)があった場合を想定する。この場合、上部鍵ガイド151uおよび下部鍵ガイド151dによって鍵100の前端部分のローリング方向Rの向きが鉛直方向になるように規制されるため、鍵100は奥側に行くほどローリング方向Rへの変形の影響が出る。また、第2の例として、鍵100が徐々にスケール方向Sに曲がっていくような変形(ヨーイング方向Yの変形)があった場合を想定する。この場合、前端鍵ガイド151と側面鍵ガイド153とによって外観部PVにおける鍵100のスケール方向Sの位置が規制されるため、鍵100は奥側に行くほどヨーイング方向Yへの変形の影響が出る。
いずれの場合も、鍵100の変形の影響により、鍵100の回動中心となる部分とフレーム500との位置がずれてきてしまう。すなわち、鍵100に接続された接続部180(第1支持部183)と第2支持部585との位置関係がずれてくる。
一方、第1実施形態における鍵100であれば、板状可撓性部材181と棒状可撓性部材1850とは可撓性によって変形することができ、鍵100と第2支持部585との位置のずれによる影響を、接続部180(板状可撓性部材181および棒状可撓性部材1850)の変形によって抑制することができる。このときには、棒状可撓性部材1850は、鍵100をピッチ方向に回動させる部材としての機能を有するだけでなく、さらに、鍵100の変形による影響を吸収する部材としての機能も有している。このとき、側面鍵ガイドと側面フレームガイドとによって鍵100の前後方向の移動も規制していると、棒状可撓性部材1850の前後方向Fの変形の影響を少なくすることができるため、鍵100のピッチ方向の回動をさらに安定させることができる。
また、上述したように、外観部PVにおいては、できるだけ、鍵100の変形による影響が視認されないようになっていることから、スケール方向Sの位置精度も高くなっている。そのため、センサ300に検出されるハンマアセンブリ200の前端部210と、その前端部210に接続される鍵100のハンマ支持部120とは、このような、外観部PV(鍵本体部の後端より前方)の鍵100の下方に設けられることが望ましい。
[回動部の構成]
続いて、回動部185の構成について説明する。この例では、回動部185は、第1支持部183および第2支持部585に対して着脱可能になっている。
図7は、第1実施形態における回動部の構造を説明する図である。図7は、図6(B)における接続部180の近傍を拡大した図である。また、回動部185のうち、第1支持部183および第2支持部585の内部に存在する構成についても、実線で示している。一方、第1支持部183および第2支持部585の内部に形成された空間は破線で示している。
第1支持部183は、内部において上下方向に貫通する第1空間183S1および第2空間183S2が形成されている。第2空間183S2は、後端側に第3空間183S3が接続されている。第1空間183S1には係止棒1855が配置され、第2空間183S2には支持棒1853が配置されている。支持棒1853は、第2空間183S2に対して下方から挿入されている。係止棒1855は、第1空間183S1に対して下方から挿入されている。係止棒1855は、頂部において係止部18551を有する。係止部18551が第1空間183S1から上方に突出している。係止棒1855は、第1支持部183の上面において係止部18551が引っかかることで係止され、鍵100の回動では、第1支持部183から抜けないようになっている。なお、係止棒1855は、可撓性を有している。このとき、係止棒1855は、支持棒1853側(奥側)に向けて曲げられた状態で第1空間183S1に配置されていてもよい。係止部18551を支持棒1853側に押すことによって係止棒1855を支持棒1853側に変形させると、係止棒1855による第1支持部183への係止が解除される。
支持棒1853および係止棒1855は、鍵側支持部1851に接続されている。鍵側支持部1851は、第1支持部183の下面に沿って配置された板状部材とこの板状部材から下方に延びる部材とを含む。この例では、支持棒1853と鍵側支持部1851との位置関係が変化しないようにするための補強板1859が配置されている。補強板1859は、鍵側支持部1851に接続される板状部材であって、その一部が第3空間183S3にも配置されている。
第2支持部585は、内部において上下方向に貫通する第1空間585S1および第2空間585S2が形成されている。第1空間585S1には係止棒1856が配置され、第2空間585S2には支持棒1854が配置されている。支持棒1854は、第2空間585S2に対して上方から挿入されている。係止棒1856は、第1空間585S1に対して上方から挿入されている。係止棒1856は、頂部において係止部18561を有する。係止部18561が第1空間585S1から下方に突出している。係止棒1856は、第2支持部585の下面において係止部18561が引っかかることで係止され、鍵100の回動では、第2支持部585から抜けないようになっている。なお、係止棒1856は、可撓性を有している。このとき、係止棒1856は、支持棒1854側(奥側)に向けて曲げられた状態で第1空間585S1に配置されていてもよい。係止部18561を支持棒1854側に押すことによって係止棒1856を支持棒1854側に変形させると、係止棒1856による第2支持部585への係止が解除される。
支持棒1854および係止棒1856は、フレーム側支持部1852に接続されている。フレーム側支持部1852は、第2支持部585の上面に沿って配置された板状部材である。フレーム側支持部1852は、支持棒1854および係止棒1856が配置された面(下面)とは反対側の面(上面)において、棒状可撓性部材1850が接続されている。
[回動部の着脱方法]
続いて、回動部185を第1支持部183および第2支持部585から取り外す方法について説明する。
図8は、第1実施形態における回動部を他の部材から取り外す方法を説明する図である。より詳細には、図8は、回動部185を第1支持部183および第2支持部585から取り外すときの途中の段階を説明する図である。係止部18551に対して支持棒1853側に向けて力を加えると、可撓性を有する係止棒1855が曲がって係止部18551が第1空間183S1の内部に押し込める位置まで移動する。そして、回動部185に対して第1支持部183を上方に移動させると、係止部18551が第1空間183S1の内部を通過していく。さらに第1支持部183を上方に移動させると、第1支持部183と回動部185とが分離され、係止棒1855の形状が元に戻る。
一方、第1支持部183に回動部185を取り付けるときには、支持棒1853を第2空間183S2に下方から挿入するとともに、係止部18551を第1空間183S1に下方から挿入した状態で、第1支持部183を下方に移動させる。このとき、係止部18551の先端形状が斜面を有していることにより、係止棒1855が支持棒1853側に曲げられつつ係止部18551および係止棒1855が第1空間183S1に挿入されていく。さらに第1支持部183を下方に移動させると、係止部18551が第1空間183S1から上方に突出し、係止棒1855の形状が元に戻り、係止部18551が第1支持部183の上面に係止される。
続いて、第2支持部585から回動部185を取り外す方法について説明する。基本的には、第1支持部183から回動部185を取り外すときと同様である。係止部18561に対して支持棒1854側に向けて力を加えると、可撓性を有する係止棒1856が曲がって係止部18561が第1空間585S1の内部に押し込める位置まで移動する。そして、回動部185に対して第2支持部585を下方に移動させると、係止部18561が第1空間585S1の内部を通過していく。さらに第2支持部585を下方に移動させる(回動部185を上方に移動させる)と、第2支持部585と回動部185とが分離され、係止棒1856の形状が元に戻る。
一方、第2支持部585に回動部185を取り付けるときには、支持棒1854を第2空間585S2に上方から挿入するとともに、係止部18561を第1空間585S1に上方から挿入しつつ、第2支持部585を上方に移動させる(回動部185を下方に移動させる)。このとき、係止部18561の先端形状が斜面を有していることにより、係止棒1856が支持棒1854側に曲げられつつ係止部18561および係止棒1856が第1空間585S1に挿入されていく。さらに第2支持部585を上方に移動させる(回動部185を下方に移動させる)と、係止部18561が第1空間585S1から下方に突出し、係止棒1856の形状が元に戻り、係止部18561が第2支持部585の下面に係止される。
なお、図8においては、第1支持部183および第2支持部585のいずれに対しても、回動部185が取り外される途中の段階を示しているが、双方を同時に取り外す必要はない。また、棒状可撓性部材1850は、第1支持部183および第2支持部585のいずれから先に取り外されてもよい。
[棒状可撓性部材の構造]
続いて、回動部185における棒状可撓性部材1850の構造について詳述する。上述と同様に、棒状可撓性部材1850をスケール方向に見た場合の図を用いて説明する。
図9は、第1実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。棒状可撓性部材1850は、鍵側端部KEにおいて鍵側支持部1851と接続し、フレーム側端部FEにおいてフレーム側支持部1852と接続する。また、棒状可撓性部材1850は、この例では、第1直棒部18501、第2直棒部18502および曲棒部18503を含む。第1直棒部18501は、一端側(鍵側端部KE)において鍵側支持部1851に接続し、上述した前後方向Fに沿って配置されている。第2直棒部18502は、一端側(フレーム側端部FE)においてフレーム側支持部1852に接続し、上下方向Vに沿って配置されている。曲棒部18503は、第1直棒部18501と第2直棒部18502とを接続する。棒状可撓性部材1850がその可撓性によって曲がるときの中立面のうち、棒の延伸方向に沿った軸を中立線NAという。言い換えると、中立線NAの接線が延伸方向に対応する。なお、この例では、延伸方向は、鍵側端部KEからフレーム側端部FEへの向きを基準と説明する。
棒状可撓性部材1850の断面形状(棒状の延伸方向(中立線NA)に垂直な断面)は、この例では、円形状である。円形状でなくても曲線のみで囲まれた形状であってもよいし、曲線と直線との組み合わせで囲まれた形状(例えば、半円形状)であってもよいし、直線のみで囲まれた形状(例えば矩形状)であってもよい。また、棒状可撓性部材1850の内部に空間が形成されたチューブ状であってもよい。すなわち、棒状可撓性部材1850は、中立線NAに対して垂直な方向への曲げ変形が可能であり、かつ、中立線NAを中心とした捻れ変形が可能であれば、断面形状はどのような形状であってもよい。この例では、棒状可撓性部材1850は、太さ(中立線NAから表面までの距離に対応)が中立線NAのどの位置においても同じであるが、位置によって変化してもよい。また、棒状可撓性部材1850の断面形状の外縁を矩形に収めた場合に、矩形の直交する2辺の長さの比が、3/4以上4/3以下であってもよいが、必ずしもこの範囲に限定されない。
図10は、第1実施形態における棒状可撓性部材の特徴的な構造を詳細に説明する図である。図10は、回動部185のうち棒状可撓性部材1850の部分のみを取り出して示している。図10に示すように、中立線NAのうち、第1直棒部18501における位置P1、第2直棒部18502における位置P2、曲棒部18503における位置P3を便宜的に定義する。棒状可撓性部材1850は、曲棒部18503において中立線NAが曲がっているため、位置P1と位置P2とを結ぶ直線SLの長さよりも、位置P1から位置P2までの中立線NAに沿った長さが長くなる。この例では、位置P1と位置P3との関係においても同様である。このような条件は、鍵100の回動範囲(レスト位置からエンド位置までの範囲)全体において満たされている。すなわち、棒状可撓性部材1850に力が加わって曲がったとしても、位置P1と位置P2とを結ぶ直線SLの長さよりも、位置P1から位置P2までの中立線NAに沿った長さが長くなるという状態は維持されている。
また、押鍵されていない状態(レスト位置)においては、位置P1における延伸方向ED1は、鍵100の長手方向(前後方向F)とほぼ一致し、第1直棒部18501において位置P1が変化しても、鍵100の長手方向に対する角度は変化していない。また、位置P2における延伸方向ED2は、鍵100の長手方向に対して垂直な方向(上下方向V)にほぼ一致し、第2直棒部18502において位置P2が変化しても、鍵100の長手方向に対する角度は変化していない。一方、曲棒部18503が曲がった形状を有しているため、位置P3における延伸方向ED3は、第1直棒部18501側から第2直棒部18502側に位置P3が変化するにつれて、徐々に鍵100の長手方向に対する角度が大きくなるように変化する。なお、この例では、鍵100が回動する面に沿って中立線NAが配置されているため、直線SLは鍵100が回動する面に沿って配置され、また、延伸方向はこの面に沿って向きが変化する。したがって、棒状可撓性部材1850を上方から見た場合には、鍵100の長手方向に沿った直線の棒形状を有するように見える。
なお、鍵100の回動範囲の少なくとも一部において、延伸方向ED1と鍵100の長手方向とのなす角は0度である場合に限らず0度以上45度未満であってもよく、延伸方向ED2と鍵100の長手方向とのなす角は90度である場合に限らず、45度以上90以下であってもよい。また、棒状可撓性部材1850における延伸方向の変化(例えば、延伸方向ED1から延伸方向ED2までの変化)したときの角度の変化(図10における角度FAに対応)が、この例では90度であったが、90度より小さくてもよいし、90度より大きくてもよい。様々な方向に対する自由度をより大きくする場合には、この変化が90度以上であるとより望ましい。また、直線SLは鍵100が回動する面に沿って配置される場合に限らず、直線SLがこのような面に沿った方向の成分を有していればよい。すなわち、鍵100が回動する面に対して、中立線NAの一部が傾いていてもよい。
上述したように、接続部180は、ローリング方向Rおよびヨーイング方向Yに対して、変形が可能になっている。このとき、棒状可撓性部材1850が図9および図10に示すような形状を有することにより、様々な変形を領域毎に分担して行うこともできる。例えば、ローリング方向Rへの変形については、第1直棒部18501の捻れ変形が生じる一方、第2直棒部18502においては曲げ変形が生じる。ヨーイング方向Yへの変形については、第1直棒部18501の曲げ変形が生じる一方、第2直棒部18502においては捻れ変形が生じる。曲棒部18503においても、これらの変形の一部を分担する。
また、鍵100の奥側(接続部180側)を押下するような特定の押鍵に対しては、棒状可撓性部材1850に剪断荷重が大きく発生する。このような剪断荷重による曲げ応力に対しては、棒状可撓性部材1850における鍵側端部KEとフレーム側端部FEとの直線距離が短いほど、構造上は有利である。一方、棒状可撓性部材1850に沿った鍵側端部KEとフレーム側端部FEとの長さ、例えば、鍵側端部KEとフレーム側端部FEとの間の中立線NAの長さが長い方が、可撓性部材自身による曲げ反力を低下させる面では有利である。第1実施形態では、棒状可撓性部材1850における所定の2点(上記の例では、位置P1、P2)の間において、直線距離よりも中立線NAに沿った距離が長くなるように構成することによって、少ない反力で鍵100を回動可能に支持することができるとともに、耐久性の向上が可能となる。
[鍵盤アセンブリの動作]
図11は、第1実施形態における鍵(白鍵)を押下したときの鍵アセンブリの動作を説明する図である。図11(A)は、鍵100がレスト位置(押鍵していない状態)にある場合の図である。図12(B)は、鍵100がエンド位置(最後まで押鍵した状態)にある場合の図である。鍵100が押下されると、回動部185、詳細には棒状可撓性部材1850が回動中心となって曲がる。このとき、棒状可撓性部材1850は、曲げ変形を生じる。これによって鍵100がピッチ方向に回動するようになる。そして、ハンマ支持部120が前端部210を押し下げることで、ハンマアセンブリ200が回動軸520を中心に回動する。錘部230が上側ストッパ430に衝突することによって、ハンマアセンブリ200の回動が止まり、鍵100がエンド位置に達する。また、センサ300が前端部210によって変形すると、センサ300は、変形した量(押鍵量)に応じた複数の段階で、検出信号を出力する。
一方、離鍵すると、錘部230が下方に移動して、ハンマアセンブリ200が回動し、鍵100が上方に回動する。錘部230が下側ストッパ410に接触することで、ハンマアセンブリ200の回動が止まり、鍵100がレスト位置に戻る。
第1実施形態における鍵盤装置1は、上述の通り、接続部180において押鍵および離鍵による鍵100を回動可能に接続している。そして、鍵盤装置1は、前端鍵ガイド151および側面鍵ガイド153による移動の規制と、接続部180の変形とによって、鍵100の製造誤差および経時変化による変形による外観部PVへの影響を少なくすることができる。
また、棒状可撓性部材1850を用いることによって、1つの部材において、様々な方向への移動または変形に対して許容することができる。そのため、移動または変形に対して許容する方向毎に領域を区分して複数の部材を組み合わせなくてはならない従来技術に比べて、第1実施形態における鍵盤装置1では、可撓性を有するとともに、曲がった部分を有する棒状の部材を用いることで、鍵盤装置1の大きさに与える影響が抑えられる。また、上述したように、棒状可撓性部材1850の耐久性の向上も可能となる。
<第2実施形態>
第1実施形態では、鍵側端部KEがフレーム側端部FEに対して上方かつ奥側に配置されている位置関係を有する棒状可撓性部材1850について説明したが、この位置は様々に取り得る。また、位置関係だけでなく、鍵側端部KEにおける中立線NAが前後方向Fに沿っている一方、フレーム側端部FEにおける中立線NAが上下方向Vに沿っているという、方向関係についても様々に取り得る。第2実施形態では、第1直棒部18501、第2直棒部18502および曲棒部18503を有する棒状可撓性部材1850において、鍵側端部KEとフレーム側端部FEとの位置関係および方向関係を変更した場合の例について説明する。
図12は、第2実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。図12(A)は、鍵側端部KEとフレーム側端部FEとの位置関係が第1実施形態における場合と同様であるが、第2直棒部18502Aの長さを、第1直棒部18501Aの長さと同じとした棒状可撓性部材1850Aを例示した。
図12(B)は、上記位置関係が第1実施形態と同様であるが、方向関係が第1実施形態とは異なる棒状可撓性部材1850Bを例示した。この例では、鍵側端部KEにおける中立線NAが上下方向Vに沿っている一方、フレーム側端部FEにおける延伸方向が前後方向Fに沿っている。
図12(C)は、上記方向関係が第1実施形態と同様であるが、位置関係が第1実施形態とは異なる棒状可撓性部材1850Cを例示した。この例では、鍵側端部KEがフレーム側端部FEに対して上方かつ手前側に配置されている。
図12(D)は、上記位置関係および方向関係が第1実施形態とは異なる棒状可撓性部材1850Dを例示した。この例では、鍵側端部KEがフレーム側端部FEに対して上方かつ手前側に配置されている。さらに、鍵側端部KEにおける中立線NAが上下方向Vに沿っている一方、フレーム側端部FEにおける中立線NAが前後方向Fに沿っている。
なお、上記の例では、いずれも鍵100がフレーム500の上方に位置する場合として説明しているが、鍵100の上方にもフレーム500が配置される構成であってもよい。この場合、棒状可撓性部材1850A、1850B、1850C、1850Dにおいて、それぞれ、鍵側端部KEとフレーム側端部FEとを入れ替えればよい。
<第3実施形態>
第1実施形態における棒状可撓性部材1850は、2つの直棒部(第1直棒部18501および第2直棒部18502)が1つの曲棒部18503によって接続され、一方向にのみ曲がった棒形状の可撓性部材であった。第3実施形態では、複数の方向に曲がった棒形状の可撓性部材の例について説明する。
図13は、第3実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。この例では、2つの曲棒部を有し、それぞれ異なる方向に曲がっている棒状可撓性部材1850E、1850Fについて説明する。図13(A)は、第1直棒部18501Eと第2直棒部18502Eとの間に2つの曲棒部18503E1、18503E2を有し、鍵側端部Kにおける中立線NAとフレーム側端部FEにおける中立線NAいずれも前後方向Fに沿っている棒状可撓性部材1850Eを例示した。ここでは、曲棒部18503E1と曲棒部18503E2との間には直棒部18504Eが配置されているが、2つの曲棒部18503E1、18503E2が直接接続されていてもよい。
図13(B)は、棒状可撓性部材1850Eを90度回転させたものであり、鍵側端部KEにおける中立線NAとフレーム側端部FEにおける中立線NAのいずれも上下方向Vに沿っている棒状可撓性部材1850Fを例示した。このように、多くの曲棒部を含むことによって、所定の2点(位置P1、P2の2点であってもよいし、鍵側端部KEとフレーム側端部FEとの2点であってもよい)における、直線距離よりも中立線NAに沿った距離がさらに長くなるように構成することができる。
この例では、曲棒部が2つである場合の棒状可撓性部材1850E、1850Fについて説明したが、さらに多くの曲棒部が用いられていてもよい。また、棒状可撓性部材が曲棒部のみで形成され、直棒部が用いられていなくてもよい。
<第4実施形態>
第1実施形態における棒状可撓性部材1850は、2つの直棒部(第1直棒部18501および第2直棒部18502)が1つの曲棒部18503によって接続され、中立線NAが曲線を含むことによって、曲がった棒形状を実現していた。第4実施形態では、2つの直棒部が直接結合することによって曲がった棒形状を実現した棒状可撓性部材1850Gについて説明する。
図14は、第4実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。この例では、第1直棒部18501Gと第2直棒部18502Gとが直接接続され、上述した曲棒部に対応する構成が存在しない。このため、第4実施形態における棒状可撓性部材1850Gは、中立線NAが角部CNを含むことによって、曲がった棒形状を実現している。
<第5実施形態>
第1実施形態における棒状可撓性部材1850は、中立線NAに垂直な断面形状の面積(断面積)は、中立線NAの位置によらず一定であった。第5実施形態では、この断面積が中立線NAの位置によって異なる棒状可撓性部材1850Hについて説明する。
図15は、第5実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。この例では、第1直棒部18501Hの位置P1における直径D1と第2直棒部18502Hの位置P2における直径D2とが異なっている。すなわち、位置P1と位置P2とで、棒状可撓性部材1850Hの断面積が互いに異なっている。棒状可撓性部材1850Hは、第1直棒部18501Hと第2直棒部18502Hとを接続する曲棒部18503Hの直径が徐々に変化することによって、直径D1から直径D2への変換を実現している。
大きい断面積となる部分をどの位置に配置するかによって、棒状可撓性部材の曲げ特性および耐久性等を様々に設定することができる。なお、1つの直棒部において中立線NAの位置によって断面積が変化するようになっていてもよい。また、曲棒部において中立線NAの位置によって断面積が変化する一方、複数の直棒部が同じ断面積となってもよい。
<第6実施形態>
第1実施形態では、曲棒部18503において延伸方向を90度変化させるものであった。第6実施形態では延伸方向を90度以上変化させる曲棒部を含む棒状可撓性部材1850Jについて説明する。
図16は、第6実施形態における棒状可撓性部材の構造を説明する図である。この例では、第1直棒部18501Jと第2直棒部18502Jとの間に、曲棒部18503Jが配置されている。曲棒部18503Jは、曲がった中立線NAにおいて変曲点となる位置P5を含んでいる。位置P1から位置P2までの延伸方向の変化のうち、位置P5における延伸方向ED5が位置P1における延伸方向ED1に対して最も大きな角度の変化をしている。延伸方向ED1に対する延伸方向ED5の角度FAが、この例では90度より大きくなる。このように90度より大きい変化をすることによって、棒状可撓性部材Jを上方から見た場合に、一部領域が重畳する形状であってもよい。
<第7実施形態>
第1実施形態では、中立線NAは、鍵100が回動する面に沿って配置されている。第7実施形態では、押鍵されていない状態(レスト位置)において、中立線NAは、鍵100が配列された方向(スケール方向S)かつ鍵100の長手方向(前後方向F)を含む面に沿って配置されていてもよい。
図17は、第7実施形態における棒状可撓性部材を用いた場合の鍵アセンブリの構造を説明する図である。図18は、第7実施形態における棒状可撓性部材を上方から見た場合の図である。図17に示す鍵盤アセンブリ10Kは、第1支持部183Kおよび棒状可撓性部材1850Kを含む接続部180Kを備えている。棒状可撓性部材1850Kは、第1支持部183Kと第2支持部585Kとに支持されている。第2支持部585Kは、鍵100の後端の奥側まで突出している。図17に示すように、棒状可撓性部材1850Kは、スケール方向に見ると、鍵100の長手方向に沿ったほぼ直線形状のである。
一方、図18に示すように上方から見た場合には、棒状可撓性部材1850Kは、例えば、第1直棒部18501K、第2直棒部18502Kおよび曲棒部18503Kを含んでいる。この例では、曲棒部18503Kは、2つの変曲点を有し、スケール方向Sおよび前後方向Fを含む面に含まれる中立線NAを有している。なお、このような棒状可撓性部材1850Kは、隣接する鍵100に対応する棒状可撓性部材1850Kとは干渉しないようになっている。なお、隣接する鍵100に対応する棒状可撓性部材1850Kと干渉しないようになっていれば、隣接する鍵100の奥側に存在する第2支持部585Kにフレーム側端部FEが接続されていてもよい。
<変形例>
上述した各実施形態は、互いに組み合わせたり、置換したりして適用することが可能である。また、上述した各実施形態では、以下の通り変形して実施することも可能である。
(1)第1実施形態においては中立線NAおよび直線SLは、鍵100が回動する面に沿って配置され、第7実施形態においては中立線NAおよび直線SLは、押鍵されていない状態(レスト位置)において鍵100が配列された方向(スケール方向)かつ鍵100の長手方向を含む面に沿って配置されていた。棒状可撓性部材の中立線NAがこれらの条件のいずれかに限定される場合に限られない。例えば、押鍵されていない状態(レスト位置)において、直線SLが、鍵100が回動する面に沿った方向の成分(または回動方向の成分)と、スケール方向の成分とを有する棒状可撓性部材が用いられてもよい。例えば、棒状可撓性部材がコイルバネの形状であってもよい。上述した実施形態では、直線SLが、このいずれかの成分のみを有している場合についての例示をしたものである。
(2)上述した実施形態において、様々な形状の棒状可撓性部材を例示したが、全ての鍵100に対応して同じ形状が適用される場合に限られない。例えば、白鍵100wに接続される棒状可撓性部材と、黒鍵100bに接続される棒状可撓性部材とで、異なる形状を有していてもよい。また、高音側の鍵100に接続される棒状可撓性部材と、低音側の鍵100に接続される棒状可撓性部材とで異なる形状を有していてもよい。
(3)鍵側端部KEおよびフレーム側端部FEにおける中立線NAは、前後方向Fまたは上下方向Vに沿う場合に限られない。前後方向Fおよび上下方向Vのいずれに対しても傾いていてもよい。
(4)黒鍵100bの回動中心と白鍵100wの回動中心とは、奥側方向に対して同じ位置であってもよい。その場合には、接続部180b、180wが隣接して配置できるように、スケール方向Sにおける接続部180b、180wの大きさを規定すればよい。
(5)上述した接続部180においては、板状可撓性部材181および棒状可撓性部材185の2種類の可撓性部材を含んでいたが、板状可撓性部材181が存在しなくてもよい。
(6)鍵100は樹脂の構造体であるが、鍵100のうち外観部PVの部分(鍵本体部)において側面に木製部材を貼りつけることで、視覚的な印象をよくしてもよい。この場合には、側面鍵ガイド153は、木製部材が貼りつけられた領域以外、すなわち樹脂部材が露出している領域に設けることが好ましい。すなわち、側面フレームガイド513は、樹脂部材の領域に接触することになる。
(7)鍵100の前後方向の移動の規制は、側面鍵ガイド153によって実現していたが、その他のガイドによって実現されてもよい。
1…鍵盤装置、10,10K…鍵盤アセンブリ、70…音源装置、80…スピーカ、90…筐体、100…鍵、100w…白鍵、100b…黒鍵、120…ハンマ支持部、151…前端鍵ガイド、151u…上部鍵ガイド、151d…下部鍵ガイド、153…側面鍵ガイド、180,180K…接続部、181,181w,181b…板状可撓性部材、183,183w,183b,183K…第1支持部、183S1…第1空間、183S2…第2空間、183S3…第3空間、185,185K…回動部、1850,1850A,1850B,1850C,1850D,1850E,1850F,1850G,1850H,1850J,1850K…棒状可撓性部材、18501,18501A,18501E,18501G,18501H,18501J,18501K…第1直棒部、18502,18502A,18502E,18502G,18502H,18502J,18502K…第2直棒部、18503,18503E1,18503E2,18503H,18503J,18503K…曲棒部、18504E…直棒部、1851…鍵側支持部、1852…フレーム側支持部、1853…支持棒、1854…支持棒、1855…係止棒、1856…係止棒、18551…係止部、18561…係止部、1859…補強板、200…ハンマアセンブリ、210…前端部、220…軸受部、230…錘部、300…センサ、410…下側ストッパ、430…上側ストッパ、500…フレーム、511…前端フレームガイド、513…側面フレームガイド、520…回動軸、585,585w、585b,585K…第2支持部、585S1…第1空間、585S2…第2空間、585S3…第3空間、590…支柱、710…信号変換部、730…音源部、750…出力部

Claims (9)

  1. 鍵と、
    フレームと、
    前記鍵と前記フレームとを接続する接続部であって、可撓性によって前記フレームに対して前記鍵を回動可能とする棒状の可撓性部材を含む接続部と、
    を含み、
    前記可撓性部材は、前記可撓性部材の中立線の所定の2点を結ぶ直線の長さよりも前記中立線に沿った当該2点の長さが長くなる状態を、前記鍵の回動範囲全体において維持する部分を有することを特徴とする鍵盤装置。
  2. 前記中立線の前記所定の2点を結ぶ直線が、前記鍵が回動する面に沿った方向の成分を有することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
  3. 前記中立線の前記所定の2点を結ぶ直線は、前記鍵が配列される方向の成分を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置。
  4. 鍵と、
    フレームと、
    前記鍵と前記フレームとを接続する接続部であって、可撓性によって前記フレームに対して前記鍵を回動可能とする棒状の可撓性部材を含む接続部と、
    を含み、
    前記可撓性部材は、前記鍵の回動範囲全体において前記可撓性部材の中立線が曲がった状態を維持する部分を有することを特徴とする鍵盤装置。
  5. 前記鍵の回動範囲の少なくとも一部において、前記可撓性部材の第1位置おける延伸方向と前記鍵の長手方向とのなす角が45度未満であるとともに、前記可撓性部材の第2位置おける延伸方向と前記鍵の長手方向とのなす角が45度より大きくなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置。
  6. 前記鍵の回動範囲の少なくとも一部において、前記可撓性部材の第3位置から第4位置までの延伸方向の変化において、延伸方向が90度以上変化することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置。
  7. 前記中立線は、曲線を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の鍵盤装置。
  8. 前記可撓性部材は、前記中立線に垂直な断面において、所定の2点における断面積が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の鍵盤装置。
  9. 前記鍵が前記フレームに対して当該鍵の長手方向に移動することを規制するガイドをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の鍵盤装置。
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