JP2018179948A - パーライト組織の三次元形態定量解析方法 - Google Patents

パーライト組織の三次元形態定量解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】試験片を非破壊で、簡便な方法により、深さ方向に広がるセメンタイト及びフェライトの三次元形態を定量的に解析できる、パーライト組織の三次元形態定量解析方法を提供する。【解決手段】セメンタイト層及びフェライト層によりラメラ形態を構成するパーライト組織を有する鋼材の、深さ方向に広がるパーライト組織の三次元形態定量解析方法であって、鋼材から採取した試験片表面を研磨して観察研磨面とし、観察研磨面よりEBSD法で、セメンタイト層の結晶面、(010)面又は(031)面について、観察研磨面の各点においてどの程度、観察研磨面から傾いているかという傾き情報を取得し、各点の傾き情報からセメンタイト層の結晶面の曲率を求めることによって、深さ方向に広がるセメンタイト層及びフェライト層の三次元形態を定量的に求める。【選択図】図4

Description

本発明は、パーライト組織の三次元形態定量解析方法に関する。
鉄鋼材料(以下、「鋼材」という。)等の金属材料は、含まれる元素の種類と量が同じでも、材料中の微細な合金組織の違いにより、強度、伸び、靱性等の機械的性質、耐食性等の化学的性質が異なる。そのため、鋼材開発においては、微細な合金組織の形態の違いを定量的に解析し、その影響をあわせて解析することが望まれる。
たとえば、スチールコード、橋梁用鋼線、PC鋼線などの高炭素鋼線の素材として使用される鋼材は、一般に、パーライト鋼が用いられる。パーライト鋼は、その名のとおり、パーライト組織という合金組織を主に有する。
このパーライト組織は、鋼材中で、セメンタイト(FeC)とフェライト(αFe)の二つの相に分離した複合的な合金組織であって、セメンタイトとフェライトがそれぞれ層状に交互に積層し、ラメラ形態となって存在している合金組織である。
一般に、セメンタイトは強度が高いが脆く、フェライトは強度が低いが伸びやすい。そのため、パーライト組織では、このセメンタイトとフェライトが、鋼材中でそれぞれ、どのような配置や曲率の層によりラメラ形態を形成しているかを解析することは、鋼材の機械的性質を向上させる上で、重要な問題である。
合金組織、たとえば、パーライト組織を解析するには、鋼材から採取した試験片を、観察研磨面がほぼ水平になるように研磨する。そして、この研磨された観察研磨面に表れるセメンタイト層1とフェライト層2の存在形態を、SEM等の電子顕微鏡により、図1に示したように、観察方向3から観察する。
しかしながら、通常の顕微鏡観察では、観察方向3から観察できるセメンタイト層1とフェライト層2の平面存在情報しか得られない。そのため、観察研磨面の深さ方向を含めたパーライト組織が、三次元形態としては、定量的にセメンタイト層1とフェライト層2がどのようにラメラ形態を形成しているかを解析することができない。したがって、特に深さ方向について、パーライト組織の形態と機械的性質との関係を把握することができない。
これまで、パーライト組織等の鋼材の合金組織の三次元形態を知る方法には、鋼材の試験片の研磨と、研磨により現れる新たな観察研磨面の撮影を繰り返し、撮影された映像を研磨の順序通りに重ね合わせることにより解析していた。これには膨大な手間がかかるため、特に、鋼材の機械的性質に及ぼすラメラ形態を形成するパーライト組織のセメンタイト層1とフェライト層2の存在形態の影響について研究が進んでいなかった。
パーライト組織を唯一、三次元的かつ定量的に評価しうる技術として、FIB−SEM観察によるシリアルセクショニング技術が近年研究されている(非特許文献1)。この技術は収束イオンビーム(FIB)で、観察サンプルの数100nm程度の微小な厚みを研削しては、FE−SEMにより組織断層写真の取得をくりかえし、鋼材の合金組織の内部の形態を計算機上で再構築しようとするものである。
この技術は各断層における研削を平行かつ一定の厚みで正確に行うことを前提に、得られた二次元像を補間してつなぎあわせ、三次元形態を計算機上で再構築できるが、膨大な費用及びマシンタイムを要するため、まだ、産業上活用できるものではない。
一方、非特許文献2に示されるように、ナノメートルオーダーの微細な形態ではない、材料中のボイドや欠陥(クラック)の進展のような現象は研磨と光学顕微鏡との組み合わせで評価することが可能であったが、パーライト組織のラメラ形態は、隣り合うセメンタイト層1とフェライト層2の層間間隔(ラメラ間隔)が数10nmからせいぜい100nm程度と光学顕微鏡では分解できない領域であるため安価かつ効率的に評価することは困難であった。
以上のように、鋼材のパーライト組織の微細ラメラ形態を構成するセメンタイト層1とフェライト層2の存在形態を三次元的かつ定量的に評価することは、材質制御の上でも重要であるが、その困難さから、工業上実現できてはいなかった。
また、図1で示したように、微細ラメラ形態は、セメンタイト層1とフェライト層2の界面(ラメラ界面)が平面とは限らず、ある程度湾曲していることが一般的である。しかしながら、研磨面の二次元断層像を統計的に集約して取り扱おうとする場合において、湾曲していない平板状である場合を含め、この湾曲の度合いを深さ方向に定量的に測定することは困難であった。
Adachi.et.al, Acta Materiaria vol56(2008)5995-6002, "computer-aided three-dimensional visualization of twisted cementite lamellae in eutectoid steel" 大和田,車田,伊藤,友田,足立,日本機械学会関東支部・精密工学会・茨城大学茨城講演会講演論文集Vol.21st Page.81−82(2013.09.06),鉄鋼材料のき裂進展とミクロ組織の3次元観察
以上のように、スチールコード、橋梁用鋼線、PC鋼線等の高強度鋼線の伸線加工の出発材としての鋼線材のパーライト組織の三次元形態を規定して鋼線の特性を向上させるための提案を行うことが求められているものの、簡便に、パーライト組織の三次元形態を定量的に解析する実効的な手段は提案されていなかった。
これは、パーライト組織はそのラメラ間隔が数10nm程度と非常に微細であり、その湾曲まで含めた微細な形態を定量的に捉えることが困難であったと思われる。
また、深さ方向のパーライト組織の形態を解析するには、観察研磨面を順次削り取る必要があるため、同じ試験片を再分析することができない。
本発明は、試験片を非破壊で、簡便な方法により、深さ方向に広がるセメンタイト及びフェライトの三次元形態を定量的に解析できる、パーライト組織の三次元形態定量解析方法を提供することを目的とする。
本発明者は、以上のような状況に鑑み、鋭意工夫を重ねることにより、上記課題を解決する技術を完成させた。
すなわち、上記課題を解決する本発明の要旨は、次の通りである。
(1)セメンタイト層及びフェライト層によりラメラ形態を構成するパーライト組織を有する鋼材の、深さ方向に広がる前記パーライト組織の三次元形態定量解析方法であって、
前記鋼材から採取した試験片表面を研磨して観察研磨面とし、前記観察研磨面よりEBSD法で、
前記セメンタイト層の結晶面、(010)面又は(031)面について、前記観察研磨面の各点においてどの程度、前記観察研磨面から傾いているかという傾き情報を取得し、
前記各点の傾き情報から前記セメンタイト層の結晶面の曲率を求めることによって、
深さ方向に広がる前記セメンタイト層及び前記フェライト層の三次元形態を定量的に求めることを特徴とするパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
(2)セメンタイト層と前記フェライト層の間の結晶方位関係により、前記セメンタイト層の結晶面と整合するフェライト層の結晶面、結晶方位を決定することを特徴とする(1)に記載のパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
(3)前記EBSD法による測定は、観察研磨面の法線ベクトルと、前記セメンタイト層と前記フェライト層の界面の法線ベクトルのなす角度が30°以内であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
(4)前記観察研磨面を形成するにあたり、コロイダルシリカ分散の研磨液により10分以上研磨し、引き続き、10分以上電解研磨することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一つに記載のパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
本発明により、一断面をEBSD法(Electron Backscattered Diffraction)で測定するという簡便な方法で、パーライト組織を構成する深さ方向に広がるセメンタイト層1及びフェライト層2が平板状である場合も含め、その三次元形態(ラメラ形態)を簡便かつ明確に解析することを可能とした。
パーライト組織を有する鋼材試験片の観察研磨面を観察している図である。 パーライト組織を有する鋼材試験片の深さ方向断面を示す模式図である。 図2の破線で囲んだパーライト組織を有する鋼材試験片の深さ方向断面を拡大し、フェライト層2、セメンタイト層1、フェライト層2の三層をのみを示す模式図である。 本発明により解析したセメンタイト層1とフェライト層2の深さ方向の界面形状(ラメラ形状)を示す図である。
以下に本発明について説明する。
まず、組織観察を複数枚にすることは、評価するための時間、費用の増大につながるため、一枚の観察研磨面のみにおける測定で実施する方法に限定し、開発した。
本発明者は、EBSD法(Electron Backscattered Diffraction)でパーライト組織を有する鋼材を構成する少なくともセメンタイト層1の結晶方位分布情報を取得し、セメンタイトとフェライトが一定の晶癖面関係を有することを利用して、セメンタイト層1の結晶面、(010)面又は(031)面が観察研磨面の各点において、どの程度観察研磨面から傾いているかという傾き情報取得することより、パーライト組織のラメラ形態の内部形態を検出する技術を開発した。この技術を用いることにより、だだの1断面の情報のみからパーライト組織のラメラ形態の間隔、平板状であるか、あるいは曲面状である場合は、曲面の形態を三次元的かつ定量的に検出することができる。
パーライト組織は、既に述べたように、セメンタイト層1と、フェライト層2がそれぞれ層状に交互に積層し、ラメラ形態となって存在している。
図2は、パーライト組織を有する鋼材試験片の深さ方向断面を示す模式図である。すなわち、図1で示すUNKOWN面を切り出した模式図である。図2において、セメンタイト層1、フェライト層2の各層は湾曲している。
図2に示したように、パーライト組織は、5で示されるコロニーと呼ばれる領域の集合体により形成されている。このコロニー5の一つ一つは、10〜50μm程度の大きさであり、この一つのコロニー5の領域内部では、深さ方向に、表面とほぼ同様な厚さや曲率で、セメンタイト層1、フェライト層2が形成されている。
そのため、ある一つの隣接するセメンタイト層1とフェライト層2の界面(ラメラ界面。以下単に「界面」ともいう。)の形態に注目した場合、この界面の一部について、深さ方向の曲率、たとえば、図2の破線で囲んだ表面付近の界面(観察研磨面付近の深さ方向ラメラ界面)の曲率を求めることができれば、この一つの界面は、少なくとも同じコロニー5内に属する間は、同じ形態(曲率)を有すると推定できる。他の界面も同様に、表面付近の曲率を測定することによりコロニー5内部の界面の存在形態を推定する。このように表面付近の界面の曲率を求めることにより、同じコロニー5内に属する10〜50μmの深さまでは、この界面の形態を三次元的に解析することができる。
そこで、この表面付近の界面の曲率情報を求めるために、EBSD法(Electron Backscattered Diffraction)を適用する。EBSD法は、通常、鋼材から採取した試験片表面を研磨して観察研磨面とし、この観察研磨面を非破壊で分析する。図3に、図2の破線で囲んだ部分を拡大し、フェライト層21、セメンタイト層1、フェライト層22の三層をのみを示す模式図を示す。
鋼材中のセメンタイトとフェライトの結晶方位関係は種々報告されているが、パーライト組織のラメラ界面の晶癖面関係の特定に利用できるものは通常、以下の3種類のみである。
Pitsch-Petch
[100]cem//[-311]fer,[001]cem//[131]fer,(010)cem//(-12-5)fer
Bagaryatsky
[001]cem//[-110]fer,[100]cem//[-1-11]fer,(010)cem//(112)fer
Isaichev
[100]cem//[111]fer,(031)cem//(1-10)fer
上記において、たとえば、[100]cem//[-311]ferは、セメンタイト層1の[100]方位が、隣接するフェライト層2の[-311]方位と平行であることを意味し、(010)cem//(-12-5)ferは、セメンタイト層1の(010)面が、隣接するフェライト層2の(-12-5)面と平行であることを意味する。なお、セメンタイトの結晶方位[a b c]の各方位の単位胞の長さは、a方向、0.509nm、b方向、0.674nm、c方向、0.4502nmである。
すなわち、パーライト組織におけるセメンタイト層1とフェライト層2の界面では、セメンタイトは、ほぼ(010)面又は(031)面と平行となっている。このため、EBSD法により表面から測定できる、セメンタイト層1とフェライト層2の界面の極近傍の結晶方位関係をもって、界面の形状が(010)面又は(031)面と一致していると判断できる。
EBSD法により、(010)面又は(031)面が観察研磨面から50nm程度の深さまで、セメンタイト層1の各地点において、観察研磨面からどのような角度で傾いていくかという傾き情報が得られる。
図3には、例として、(010)面に注目した場合について、各地点で観察研磨面からどのような角度θ1(010)21、θ2(010)21、θ3(010)21で傾いているかを示した。
EBSD法により、観察研磨面からどのような角度θ1(010)21、θ2(010)21、θ3(010)21で傾いていくかを知ることができる。そのため、後述するように、(010)cem面と界面との傾きとの関係を各地点において、このような角度を数多く集積することによって、セメンタイト層1とフェライト層21の界面の曲率H21を得ることができる。
また、角度θ1(010)21、θ2(010)21、θ3(010)21を測定した地点の真下にあたる地点においては、結晶面(h k l)と観察研磨面の角度θ1(010)22、θ2(010)22、θ3(010)22は、それぞれ、角度θ1(010)21、θ2(010)21、θ3(010)21と一致すると推認できる(θ1(010)22=θ1(010)21、θ2(010)22=θ2(010)21、θ3(010)22=θ3(010)21と推認できる。)。すなわち、セメンタイト層1とフェライト層22の界面の曲率H22も、セメンタイト層1とフェライト層21の界面の曲率H21と同様であると推認できる。
このように、EBSD法によって、表面から50nm程度の深さまでセメンタイト層1とフェライト層21の界面の曲率情報を得れば、同じ形態が続く同じコロニー5内である10〜50μmの深さまでは、セメンタイト層1と、その両隣のフェライト層21、22の界面(ラメラ界面)の曲率を三次元的に、定量的に解析することができる。
また、セメンタイト層1の(010)面又は(031)面の傾き情報だけでなく、セメンタイト層1の結晶方位情報も、EBSD法により取得することができる。そのため、上記のセメンタイト層1と整合する結晶方位関係により、セメンタイト層1の結晶面と整合するフェライト層2(21、22)の結晶面、結晶方位も決定してもよい。
上記のPitsch-Petch、Bagaryatsky、又はIsaichevの関係から、セメンタイト層1とフェライト層2の界面を形成するセメンタイト層1の結晶面が、(031)cemであった場合、Isaichevの関係に従い、このセメンタイト層1と整合する隣接するフェライト層2は、(1-10)ferであるといえる。そのため、セメンタイト層1の結晶面、結晶方位情報を測定すれば、フェライト層2の結晶面、結晶方位情報は、上記の関係に当てはめて決定することができる。
そのため、フェライト層2の面、結晶方位情報を決定する際に、必ずしもEBSD法により測定する必要はない。ただし、セメンタイト層1とフェライト層2の界面の結晶方位関係を、EBSD法により直接、測定、決定してもよい。また、EBSD法により、隣り合うセメンタイト層1とフェライト層2の結晶方位を測定し、当該界面が、Pitsch-Petch、Bagaryatsky、又はIsaichevのいずれの関係を有するかを判定してもよい。
一方、セメンタイトは立方晶(立方体構造)ではなく、直方晶(直方体構造)であり、異方性を有するので、結晶方位を決定しやすい。そのため、セメンタイト層1の結晶方位分布情報をEBSD法により測定する。
また、EBSD法による測定は、観察研磨面とラメラ界面の角度が30°を超えると、セメンタイトの結晶方位分布情報が、フェライトのそれにかき消されて検出困難になることから、観察研磨面の法線ベクトルと、セメンタイト層1とフェライト層2の界面の法線ベクトルのなす角度を30°以内とすることが好ましい。
次に観察研磨面を形成する試料準備条件について述べる。
観察研磨面を形成するにあたり、コロイダルシリカ分散の研磨液により10分以上研磨することが好ましい。10分以上研磨を継続して行うことにより、EBSD法による測定の際にノイズとなる観察研磨面近傍のひずみを消すことができる。
コロイダルシリカ分散の分散液中のシリカ粒子は、通常通り、0.5μm以下とすることが好ましい。また、研磨圧も、通常通り、圧下圧5g/cm以下で、研磨傷が消失する程度の圧力で、行うことが好ましい。
また、コロイダルシリカ分散の研磨液により10分以上研磨し、引き続き、10分以上電解研磨することが好ましい。
EBSD法による測定では、二次電子による信号強度は、セメンタイトの方がフェライトよりも低くなりやすい。そのため、電解研磨によりフェライト層2を若干、溶出させて観察研磨面での高さを低くし、セメンタイト層1を突出させる。セメンタイト層1を突出させると、信号強度が高まり、結晶方位分布情報等の精度が向上する。そのためには、電解研磨の時間を10分以上とすることが好ましい。また、電解研磨の時間は、120分以下とすることが好ましい。電解時間が長すぎると、セメンタイト層1を突出させ過ぎることになり、EBSDデータ採取の際、突出部により影ができて情報の精度が低下する虞がある。好ましい突出部の高さ、すなわちセメンタイト層1とフェライト層2の高低差は、5〜30nmである。
以上に説明したような本発明の方法により、表面からのEBSD法による測定のみで、パーライト組織の三次元形態が推定できる。
本発明を適用するパーライト組織を有する鋼材としては、主組織がパーライト組織であるので、強伸線加工して製造されるスチールコード、橋梁用鋼線、PC鋼線などの高炭素鋼線が好ましい。
実施例は、ラメラ界面の配向の分布が、セメンタイト(010)cemと平行な場合について測定したものを例として説明する。
本発明によるパーライト組織のラメラ形態を構成するセメンタイト層1、フェライト層2の結晶方位解析は、たとえば、以下の方法により行うことができる。ただし、以下の方法はあくまでも一様態として詳細の手順を述べるだけであり、本発明の内容を限定するものではない。本発明の一様態によれば、観察用鋼材試験片は、湿式カッターで十分水を供給しながら、試験片鋼材への熱流を極力抑制して切り出し、段階的に目の細かいエメリーペーパーで湿式研磨し、続いて3μmのダイヤモンドペースト、1μmのダイヤモンドペーストでラッピング(バフ研磨)し、最終的に0.05μmのコロイダルシリカ分散液で10分程度研磨後、電解研磨を行って観察研磨面を鏡面に仕上げる。
観察・解析はSEM(走査型電子顕微鏡)で行った。日本電子FE−SEM(JEOL−7100F)などの汎用のSEMを用いて、二次電子像観察を加速電圧10kV、作動距離5.5mmで行った。結晶方位分布情報は同SEM内に設置のEBSD装置を用いた。EBSD測定は、TSL社製digiview−IV CCDカメラで加速電圧15kV、照射電流3.5×10−7A、対物絞り径70μmとし、電子線入射方向に対して観察研磨面を70°傾斜させてEBSDパターンを取得した。パターン同定においては、付属のデータベース中からフェライト(立方晶)とセメンタイト(直方晶)を選択して行った。データ取得は6×12μmの領域をステップサイズ0.1μmで行った。好ましくは、ステップサイズ0.04μmである。
ラメラ形態の三次元形態定量解析の考え方についてさらに詳細に説明する。通常、三次元の界面形態は、FIB(収束イオンビーム)等で実際に切り出さないと直接視ることはできない。
一方、ラメラ配向に対してごく浅い角度で切り出して観察した場合、ラメラ界面と垂直に近い方向から観察することとなり、EBSD法による測定により、ラメラ界面と平行な方向のセメンタイトの(010)cemの角度(傾き)を測定することが可能となる。観察研磨面からパーライト組織中のコロニー5、1個程度の大きさの深さ内では、観察研磨面(研磨面)と同じラメラ形態(alignment)が結晶学的に反復すると考えられるから、一観察研磨面の情報のみから、その付近のラメラの配向、形状を三次元、かつ定量的に推定することが可能である。より具体的には、鮮明なセメンタイトのEBSDパターンを取得するため、観察研磨面とラメラ界面の法線の角度として30°以内のごく浅い角度で配向するラメラを観察した。
ラメラ界面の配向の分布は、セメンタイト(031)cem又は(010)cemの方位と一致することが発明者の鋭意調査で明確になっている。(010)cemの方位と一致する場合、セメンタイト(010)cemの空間的な分布をグラフ上にプロットして近似関数をもとめ、その傾きをラメラ界面の曲率ととらえることが可能である。具体的には図4に示すように、傾きを表す分布の近似関数を、距離で積分することで、深さ方向のラメラ配向の形状(曲率、傾き)を得ることが可能である。
図3は、フェライト/セメンタイト界面の面方位関係(セメンタイト層1とフェライト層2間の結晶方位関係)がPitsch-Petch[(-12-5)fer//(010)cem]の関係であることを前提に例示している。通常、図示したこのような界面形態は、FIB等で実際に切り出さないと直接視ることはできない。しかしながら、EBSD技能向上により、セメンタイトの結晶方位分布と、セメンタイト層とフェライト層間の結晶方位関係の取得が可能になったことから、観察研磨面(研磨面)にそのラメラ形態(alignment)が結晶学的に複写されているとして、1観察研磨面の情報のみからラメラの配向、形状を三次元、かつ定量的に推定することがはじめて可能となった。
上記の考え方により、フェライト/セメンタイト界面の観察研磨面に対する「傾き」の分布を知ることができる。EBSD法により、結晶方位分布の表示にもっとも一般的に用いられる逆極点(IPF)マップを作成した。逆極点(IPF)マップは、グラデーションによりラメラ界面の配向を表示することができる。
フェライト/セメンタイト界面の傾斜の程度をさらに定量的に評価するために、セメンタイト結晶格子A軸、及びC軸に沿ってその方向へ(010)cem単位ベクトルの射影の大きさを採取し、図面に平行な方向から視たラメラ界面の傾き、及び曲率を微分幾何学的に定量的に解析した。
幾何学形状の定量的な解析は以下の手順で行った。まず、図4(A)に示す観察研磨面上の評価したい領域、area−1及びarea−2に、各測定点のセメンタイト結晶格子A軸(セメンタイトa方向と平行な軸)方向、C軸(セメンタイトc方向と平行な軸)方向をそれぞれ平均して方向を決定し、観察研磨面に投影した軸x、xを設定する。軸x、xに沿って(010)cem(セメンタイトB軸(セメンタイトb方向と平行な軸)面の単位法線ベクトルe)の位置と方位の情報をピックアップする。次に拾い上げた単位法線ベクトルeの、軸x、x方向の射影(単位法線ベクトルeの軸x、x方向成分)である単位ベクトルeNxA、eNxCを採取し、x−eNxA、x−eNxC座標上にプロットし、近似の直線をもとめる。x−eNxA、x−eNxC座標平面上でのこの近似の直線の傾き(変化率)すなわち−(∂eNxA/∂x)及び(∂eNxC/∂x)は、セメンタイト結晶格子のA軸、C軸に沿った方向の曲率を示している(単位は1/μm)。これにより、算出した2方向の曲率k、kによりガウス曲率K=k×k、平均曲率H=(k+k)/2が定量的に算出され、H、k、kの点を得ることができる。計算の結果、area−1ではA軸に沿った曲率kは0.066/μm(軸x方向の曲率半径R15.2μm)、C軸に沿った曲率kは−0.0085/μm(軸x方向の曲率半径R118μm)、area−2では、A軸に沿った曲率kは0.0347/μm(軸x方向の曲率半径R28.8μm)、C軸に沿った曲率kは0.0337/μm(軸x方向の曲率半径R29.7μm)であった。
この計算結果から、図4(A)に例示した領域のラメラは全体的には図面上で右上の方向に行くに従い、図面の向こう側へ大きく落ち込んでいることがわかる。また、area−1とarea−2では、それぞれ微妙に異なる凹凸を持つことがわかった。計算結果を図示すると、図4(B)(C)のようになる。area−1では軸x方向には上に凸、軸x方向には若干ながら下に凸であるのに対し、area−2では軸x方向、軸x方向ともに上に凸となっている。観察研磨面に現れたラメラの見かけ上の「曲がり」がarea−1と2で顕著に逆方向になっているのは、ラメラ界面のこの微妙な凹凸が逆方向であることに対応している。また、微分幾何学の観点でいえば、ラメラの形態クラスは、area−1ではSaddle型(鞍型)に属し、area−2ではConcave(お椀型)に属するということができる。
本発明は、観察研磨面からのEBSD法の測定により、試験片を非破壊のまま、パーライト組織のラメラ形態を三次元的かつ定量的に評価することが可能となる。それにより特に、パーライト組織が主組織である高強度高延性の鋼線を製造する際に必要な、鋼線材の組織及びそれを実現するための化学組成を明確にする手段が得られるため、産業上の効果は絶大である。
1…セメンタイト層、2、21、22…フェライト層、3…観察方向、4…測定可能深さ、5…コロニー

Claims (4)

  1. セメンタイト層及びフェライト層によりラメラ形態を構成するパーライト組織を有する鋼材の、深さ方向に広がる前記パーライト組織の三次元形態定量解析方法であって、
    前記鋼材から採取した試験片表面を研磨して観察研磨面とし、前記観察研磨面よりEBSD法で、
    前記セメンタイト層の結晶面、(010)面又は(031)面について、前記観察研磨面の各点においてどの程度、前記観察研磨面から傾いているかという傾き情報を取得し、
    前記各点の傾き情報から前記セメンタイト層の結晶面の曲率を求めることによって、
    深さ方向に広がる前記セメンタイト層及び前記フェライト層の三次元形態を定量的に求めることを特徴とするパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
  2. セメンタイト層と前記フェライト層の間の結晶方位関係により、前記セメンタイト層の結晶面と整合するフェライト層の結晶面、結晶方位を決定することを特徴とする請求項1に記載のパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
  3. 前記EBSD法による測定は、観察研磨面の法線ベクトルと、前記セメンタイト層と前記フェライト層の界面の法線ベクトルのなす角度が30°以内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
  4. 前記観察研磨面を形成するにあたり、コロイダルシリカ分散の研磨液により10分以上研磨し、引き続き、10分以上電解研磨することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパーライト組織の三次元形態定量解析方法。
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