JP2018179385A - 空気調和装置の室内ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】 パッケージ型の空気調和装置の室内ユニットにおいて、有害なオゾンを使用したり、室内熱交換器の熱交換能力を落としたりすることなく、室内ファンの表面を常に清浄な状態に保ち、カビ等の発生を防止する。【解決手段】 水の共存下における紫外線照射によって分解してヒドロキシルラジカルを生成する物質又はイオンが溶解した水溶液であって且つオゾンを実質的に含まない水溶液からなる殺菌用洗浄液を、塵や埃などの有機汚れが付着した室内ファンの表面に供給して付着させた後、これら表面に紫外線を照射することによってOHラジカルを発生させ、このOHラジカルの強力な酸化力により前記有機汚れを分解除去し、更に殺菌を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、空気調和装置の室内ユニットに関する。
室内ユニットと、熱源ユニットとなる室外ユニットと、を冷媒配管で接続した、所謂パッケージ型の空気調和装置(パッケージ型空調機と言われることもある。)が広く普及している。このようなパッケージ型の空気調和装置では、室内ファンにより室内ユニットの吸込口から室内ユニット内に雰囲気空気を導入し、導入された雰囲気空気と、内部に冷媒が流れる熱交換器の表面(通常、多数のフィンが形成されている)と、を接触させて熱交換を行うことにより、雰囲気空気の温度や湿度の調整を行い、吹出口から調和済み空気を吹き出すようにしている。また、除湿や冷房運転時においては、室内熱交換器の表面に雰囲気吸気に含まれる水蒸気が凝結した凝結水が付着するため、この凝結水を室内熱交換器の表面を伝って下方に落下させて、これを室内熱交換器の下方に設置されたドレンパンで受け、ドレン配管を通して室外に排出するようにしている。
通常室内ユニットの吸込口付近には、フィルタが設置され、雰囲気空気に含まれる塵や埃などを取り除くようにしている。ところが、フィルタで取り除くことができなかった微細な埃などが、室内ファン、室内熱交換器を構成する各フィンの隙間、或はやドレンパンなどに付着して堆積すると、カビやバクテリアなどの微生物の繁殖が避けられない。このような埃の堆積や微生物の繁殖は、調和済み空気の異臭の原因にもなるため、室内ファン、室内熱交換器、ドレンパンなどを定期的に(例えば、年に1回〜2回程度)洗浄する必要があった(特許文献1)。
また、このような微生物の増殖を抑制する方法として紫外線を照射する方法(特許文献2)およびオゾン処理する方法(特許文献3)が知られている。
すなわち、特許文献2には、「空気調和装置本体の内部に設けられた熱交換器に対して紫外線を照射するための紫外線発生手段を設けたことを特徴とする空気調和装置」が記載されている。また、特許文献3には、「室内ファンにより吸込口から吸い込んだ室内空気を室内熱交換器にて熱交換させ、熱交換後の空気を吹出口から室内に吹き出す室内ユニットを備えた空気調和装置において、当該空気調和装置の運転動作を制御する制御装置と、前記吹出口に設けられ、前記吹出口を開閉する吹出口開閉機構と、前記室内ユニット内で前記室内熱交換器の風上側に設置されたオゾン発生装置と、を備え、当該空気調和装置に前記室内ユニットの内部クリーン運転処理の実行が設定されると、前記制御装置が、当該空気調和装置の運転モードの停止を確認するとともに、当該空気調和装置の直前の運転モードが冷房運転もしくは除湿運転であったか否かを判定し、冷房運転もしくは除湿運転であったと判定した場合に、冷房運転終了後もしくは除湿運転終了後の前記室内熱交換器で凝縮した凝縮水によって前記室内ユニットの内部表面が濡れ、前記室内ユニット内が高湿度な状態にて、前記吹出口開閉機構を動かして前記吹出口を閉塞状態にするとともに、前記オゾン発生装置を稼働させ、前記室内ユニットの内部にオゾンを供給するオゾン処理運転を行うことを特徴とする空気調和装置」が記載されている。
また、特許文献8には、吸い込み口と吹き出し口とを結ぶ空気通路上に配設された冷凍サイクルの熱交換器と、前記熱交換器の後流に備えられて前記熱交換器により温度調節された風を吹き出す送風ファンとを備えた空気調和機において、室内機もしくは室外機の内部に、過酸化水素水などの除菌作用水を生成する除菌作用水生成部と前記除菌作用水をミスト状とする噴霧部を備え、前記除菌作用水を前記空気通路上の上流側空間から前記送風ファンに対して噴霧して供給するようにした空気調和機が記載されている。
さらに、フィルタを紫外線殺菌する室内ユニットを有する空気調和機として、特許文献9には、「室内機に内蔵されたエアフィルタの表面を紫外線により殺菌又は除菌する機能を備える空気調和機であって、前記エアフィルタに対して相対的に移動して、前記エアフィルタの表面に付着した塵埃を除去する塵埃除去部と、前記塵埃除去部により塵埃が除去されたエアフィルタに対して紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、前記塵埃除去部の移動と、前記紫外線照射部の照射を交互に行う、空気調和機」が記載されている。
特開2002−69499号公報 特開2000−111076号公報 特許第4396688号公報 特許第4803684号公報 特許第4332107号公報 特開2012−205615号公報 国際公開第2010/140581号パンフレット 特許第4967971号公報 特開2016−11762号公報 東芝レビューVol.61,No.8、(2006), J. of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry, Vol.137, pp177-184, 2000 Chem.Eng.Technol. Vol. 21, pp187-191, 1998
特許文献2に記載されている方法によれば、紫外線の効果により室内熱交換器表面における微生物の増殖を抑制することできる。また、室内ファンの表面に紫外線を照射するようにすれば室内ファン表面での微生物の繁殖は抑制することはできる。しかしながら、室内ファン表面に堆積した埃の除去をすることはできず、また、紫外線が照射されない期間における微生物の繁殖を防止することはできない。
引用文献3に記載された方法では、オゾンを発生させるための特別な装置が必要であり、安全性に対して一応の対策は採れているとはいえ、オゾン漏洩の危険性を完全には払拭することはできない。
さらに特許文献8に記載された空気調和機では、過酸化水素水の持つ酸化作用により殺菌・洗浄効果を得ることができるが、過酸化水素水ミストを送風路内全体に供給する必要があるため、過酸化水素水の使用量が多くなってしまう。また、ミストが広範に広がって周辺の部材表面に接触することから、これら部材に対する腐食や劣化などの悪影響を避けるために低濃度の過酸化水素水を使用しなければならないが、低濃度過酸化水素水の酸化力はさほど高くないため、処理に長時間を要するという問題がある。この点について、特許文献8には、オゾンと併用することにより酸化力を高めることができることが記載されているが、その場合には、オゾンの使用に伴って安全性の問題が発生する危険性がある。
そこで本発明は、このような問題を起こすことなく室内ファン表面の殺菌を行うことができ、同時に室内ファン表面に堆積した埃をも除去できるような機能を有する室内ユニット及び当該室内ユニットを有する空気調和装置を提供することを課題とする。
本発明者は、ヒドロキシルラジカル(OHラジカルともいう)の酸化作用を利用したセルフクリーニング機構に着目し、当該機構により、室内ファン表面に付着した埃や汚れが堆積する前の、付着初期段階で定期的に除去し、前記表面を殺菌しておけば、有害微生物の繁殖を防ぐことができると考えた。
このようなセルフクリーニング機構としては、被洗浄物の表面に光触媒を含む層を形成し、そこに水分を供給すると共に光触媒を活性化する光を照射する方法が知られている。しかしながら、室内ファン表面を光触媒でコーティングした場合には、ファンの重量が重くなり、エネルギーコストが増大するばかりでなく、モーターに負担がかかって発熱するという問題が起こる。
そこで、光触媒を用いずに室内ファン表面にヒドロキシルラジカルを供給する方法について調査を行ったところ、水溶液中の有機物やガス状の有機物を、光触媒を用いずに発生させたヒドロキシルラジカルで分解する技術が存在することを確認するに至った(特許文献4乃至7および非特許文献1乃至3参照)。
すなわち、特許文献4には、リグニンを亜硝酸ナトリウム水溶液に懸濁させながら波長366nmの紫外線を照射することにより、リグニンと、該照射で発生したOHラジカルと、を反応させてリグニンの低分子化を行うことが記載されている。
特許文献5には、表面に水を粒状に保持可能な保水面を水滴で濡れた状態にして至近距離から波長254nmの紫外線を照射してOHラジカルを発生させると共に、該保水面に対してエチレンガスを含む気体を通風させてエチレンをエタンと水に改質する方法が記載されている。
特許文献6には、ポリウレタンフォームなどの高分子多孔体に波長254nmの紫外線を照射してOHラジカルを発生させながら、エチレンガスを、該多孔体の内部を通過させて、これを分解する技術が開示されている。
特許文献7には、超純水中のTOC分解除去やウェハ等の固体表面に付着した有機化合物を分解・除去するために、発生したOHラジカルの濃度を数分程度維持してユースポイントに供給する方法が開示されている。即ち、オゾンと、過酸化水素と、水溶性有機物、無機酸、前記無機酸の塩、及びヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種以上の添加物質とを純水に溶解させてヒドロキシルラジカル含有水を生成する生成工程と、生成したヒドロキシルラジカル含有水をユースポイントに移送する移送工程と、移送後のヒドロキシルラジカル含有水をユースポイントで供給する供給工程とを含むことを特徴とするヒドロキシルラジカル含有水供給方法が開示されている。
非特許文献1には、酸素と水を含むガス中でコロナ放電を行うことによって発生したOHラジカルを処理水に溶解させて処理水中の有機物を分解する技術が開示されている。
非特許文献2及び3には、水(HO)やFe(OH)2+が紫外線照射によってOHラジカルを発生させること、及びこれらOHラジカル生成反応において、短波長の紫外線を用いると量子効率が高くなることが示されている。
ところが、特許文献4、5及び6に開示されている技術は、特定の物質や有害物質を分解することを目的とするものであり、物品に付着した有機汚れの除去技術に直接関係するものではない。また、特許文献7や非特許文献1に記載されている方法では、OHラジカルやその前駆体となるオゾンを発生させるために特殊な装置が必要である。さらに、特許文献7に開示されている方法では、環境基準の観点から許容濃度が極めて低いオゾンを使用しなければならないという問題もある。
特許文献5に開示されている技術は、有機汚れが付着した室内熱交換器表面等の表面を保水面とすれば汎用的な洗浄方法となり得ると考えられるが、紫外線照射により水から高濃度のOHラジカルを生成させることは困難である。
そこで、本発明者等は、保水面に保持される水に紫外線照射によりOHラジカルを発生する物質を添加すると共に照射する紫外線のエネルギーを高めることを着想し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、吸気口及び吹出口を有するケーシングと、室内ファンと、室内熱交換器と、室内熱交換器から落下する凝結水を受けるためのドレンパンと、を有し、室内ファン、室内熱交換器及びドレンパンは、前記ケーシング内に配置されてなる空気調和装置の室内ユニットにおいて、
水の共存下における紫外線照射によって分解してヒドロキシルラジカルを生成する物質又はイオンが溶解した水溶液からなり、且つオゾンを実質的に含まない水溶液からなる殺菌用洗浄液を前記室内ファンの表面に供給可能な殺菌用洗浄液供給手段と、
紫外線を前記室内ファンの表面に照射可能な紫外線光源と、を備え、
前記室内ファンの表面に供給される前記殺菌用洗浄液に、前記紫外線を照射することにより、前記室内ファンの洗浄及び殺菌を行う、殺菌及び洗浄機構を有することを特徴とする、空気調和装置の室内ユニットである。
上記本発明の室内ユニットにおいては、表面が光触媒物質を有しない材料で構成された室内ファンを用いてなることが好ましい。
また、前記殺菌用洗浄液は、硝酸イオン、亜硝酸イオン及び過酸化水素から選ばれる少なくとも1種が溶解した水溶液からなることが好ましい。
さらに、前記紫外線光源として、(1)前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、同時に紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、複数の紫外線発光ダイオードを配置した紫外線光源、又は(2)時間をずらして、前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、一又は複数の紫外線発光ダイオードの出射方向を制御する出射方向制御機構を有する紫外線光源を、用いることが好ましい。
また、第二の本発明は、前記本発明の室内ユニットを有する空気調和装置である。
本発明では、強力な酸化作用を有するヒドロキシルラジカルによって有害微生物を確実に死滅させることができる。また、紫外線(UV)として250nm以上280nm以下の紫外線を含む紫外線を用いた場合には、UV自体による殺菌効果を得ることもできる。さらに、本発明では紫外線照射によってヒドロキシルラジカルを含むようになった殺菌用洗浄液(深紫外線照射後の殺菌用洗浄液を殺菌液ともいう。)は表面に埃などが付着していても内部に浸透して全体に濡れ広がることができるので、むらなく室内ファンの表面全体を殺菌することが可能である。また、殺菌用洗浄液が流れることにより、分解された埃や汚れ(一部分解されないものが残っている場合もある)を流し去ることができる(物理的に除去することができる)ので、定期的に手動または自動洗浄を行うことにより、絶えず室内ファンの表面をきれいな状態に保つことができる。
また、空間を漂う殺菌用洗浄液のミストに紫外線を照射した場合には、ミストが被殺気・洗浄体(室内ファン等)の表面に到達する前に寿命の極めて短いOHラジカルが消滅してしまう確率が非常に高く、十分な殺菌・洗浄効果が得られ難いのに対し、本発明では、殺菌用洗浄液を、被殺菌・洗浄体の表面に付着させてから紫外線を照射するため、OHラジカルが前記表面上で確実に発生して殺菌・洗浄効果を発揮することができる。さらに、本発明では、被殺菌・洗浄体の表面を狙って殺菌用洗浄液を噴霧するなどの方法により、周辺部材表面への殺菌用洗浄液の付着を可及的に防止することができるので、殺菌用洗浄液の使用量を少なくすることができ、また、周辺部材の劣化や腐食を気にすることなく、比較的高い濃度の殺菌用洗浄液を使用することができ、酸化力をより一層高めることもできる。
本発明では、室内ファンの表面に光触媒を含む特殊なコーティングなどを施す必要が無いので軽量化が保たれ、エネルギー効率を下げることが無く、モーターに負担がかかり余計な発熱をすることもない。さらに、光源として長寿命が期待できる紫外線発光ダイオードを用いれば、適宜タンクに殺菌用洗浄液を補充するだけで、長期継続的に室内熱交換器等の表面を殺菌することが可能である。
また、前記紫外線光源として、(1)前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、同時に紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、複数の紫外線発光ダイオードを配置した紫外線光源、又は(2)時間をずらして、前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、一又は複数の紫外線発光ダイオードの出射方向を制御する出射方向制御機構を有する紫外線光源を、用いた場合には、一方向のみから光照射を行った場合には、影になり易い部分にも紫外線照射を行うことが可能になる。そして、その結果、室内ファンの表面における殺菌・洗浄残しを少なくすることができる。
本図は、代表的な本発明の空気調和装置の室内ユニット100を模式的に説明するための図である。 本図は、図1に示す室内ユニット100で殺菌用洗浄液供給手段及び光源として使用される噴霧ノズル付きLEDモジュールを説明するための概略図である。 本図は、別の噴霧ノズル付きLEDモジュールにおけるユニットの概略図である。 本図は、導光板を利用した噴霧ノズル付きモジュールを説明するための概略図である。 本図は、表裏両面に紫外線出射面及び噴霧ノズルを有するLEDモジュールを説明するための概略図である。 本図は、別の代表的な本発明の空気調和装置の室内ユニット100´を模式的に説明するための図である。 本図は、更に別の代表的な本発明の空気調和装置の室内ユニット100´´を模式的に説明するための図である。
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
本発明の空気調和装置の室内ユニットの基本的構造は、従来のパッケージ型の空気調和装置における室内ユニットと同様である。すなわち、吸気口及び吹出口を有するケーシングを有し、当該ケーシングの内部には前記吸気口と前記吹出口とを連通する送風路が形成されている。そして、この送風路内に、前記室内熱交換器及び前記室内ファンが配置されている。これらの配置順序は用いる室内ファンの種類によって異なり、ラインフローファン或いはクロスフローファンの場合には、室内ファンは前記室内熱交換器の下流側に配置され、プロペラファンの場合には前記室内熱交換器の上流側に配置されるのが一般的である。前記送風路内における前記室内熱交換器の下方には、ドレンパンが配置され、前記室内熱交換器から落下する凝結水を受け、ドレンパンに接続するドレン用配管を通して凝結水(ドレン)を室内ユニット外(主に屋外)に排出するようになっている。さらに、前記送風路の最上流側には吸気口より吸入される室内雰囲気空気に含まれる塵や埃を捕集するためのフィルタが設置されていてもよい。
このような基本構造を有するものであれば、本発明の室内ユニットのタイプは特に限定されず、所謂、壁掛型、天井カセット型、天井埋込型、天井吊型、床置型のいずれであってもよい。
本発明の室内ユニットは、上記したような基本構造を有する室内ユニットにおいて、水の共存下における紫外線照射によって分解してヒドロキシルラジカルを生成する物質又はイオンが溶解した水溶液からなり、且つオゾンを実質的に含まない水溶液からなる殺菌用洗浄液を室内ファンの表面に供給可能な殺菌用洗浄液供給手段と、紫外線を前記室内ファンの表面に照射可能な紫外線光源と、を備え、前記室内ファンの表面に供給される前記殺菌用洗浄液に、前記紫外線を照射することにより、前記室内ファンの洗浄及び殺菌を行う、殺菌及び洗浄機構を有することを特徴としている。
ここで、オゾンを実質的に含まないとは、オゾンを積極的に添加しないことを意味し、不純物としての不可避的な混入は許容する。不純物として不可避的に混入するこれら成分の濃度は低ければ低いほど良いが、通常、質量基準で1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下、最も好ましくは0.01ppm以下である。
水の共存下における紫外線照射によって分解してヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を生成する物質又はイオンとしては、オゾン以外の物質であって、このような機能が知られている物質又はイオンが特に限定されず、使用できる。これら物質及びイオンとしては、硝酸イオン、亜硝酸イオン、ウレタン化合物、セルロース誘導体及び過酸化水素などを挙げることができる。これらの中でも、取り扱いの容易さ及びOHラジカル発生効率の観点から、硝酸イオン、亜硝酸イオン及び過酸化水素から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンであるか又は過酸化水素であることが最も好ましい。
前記殺菌用洗浄液中における前記物質又はイオンの濃度が高いほどOHラジカルは生成し易いが、高すぎると折角生成したOHラジカルどうしが反応して消滅するため効率的ではなく、また溶質が析出するという問題も発生する。このような理由から前記殺菌用洗浄液中におけるこれら物質又はイオンの濃度は、0.01mM〜10M、特に0.05mM〜5Mであることが好ましく、0.1mM〜1Mであることが最も好ましい。なお、ここでMは(mol/リットル)を表す。
なお、水の共存下における紫外線照射によって分解してヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を生成するイオンを水溶液中に存在させるためには、これらイオンの酸又は塩を水に溶解させればよい、溶解して硝酸イオンを与える物質としては、硝酸及び硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸リチウムなどの硝酸塩が好適に使用でき、溶解して亜硝酸イオンを与える物質としては亜硝酸及び亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩が好適に使用できる。
硝酸イオンは240nm以下の波長を有する紫外線照射によって直接OHラジカルを生成する反応が起こることが知られている(Bull. Korean Chem. Soc. 2011, Vol. 32, No. 8, 3039-3044、及び、Techneau, D2.4.1.1, 1-27 参照)。また、一旦、硝酸イオンに還元されてからOHラジカルを生成し、そのときの還元反応がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリシン、グリコール酸などの共存に依って促進されることも知られている(Journal of Japan Society on Water Environment Vol.30, No.11, pp661-664, (2007))。実際に紫外線を照射したときには恐らく両方の反応が起こるものと考えられる。
一方、特許文献4に示されるように亜硝酸イオンは300〜400nmに吸収を有し、結合エネルギー的には、硝酸イオンから直接OHラジカルを生成するより亜硝酸イオンからOHラジカルを生成する方が有利であり、更に非特許文献2及び3に示される事実から、エネルギーの高い(短波長の)紫外線を照射することにより、その光反応の量子効率は更に高くなると考えられる。
したがって、硝酸イオンを用いる場合には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリシン、グリコール酸などの物質を、硝酸イオンの量(モル又はグラムイオン)に対して0.1〜1.2倍程度の量(モル又はグラム分子)で共存させることが好ましい。
また、過酸化水素は290nm以下の波長を吸収しOHラジカルを発生する。そして、過酸化水素が水溶性有機物や炭酸塩などの無機酸の塩が共存する場合には、連鎖反応により発生したOHラジカルの見かけ上の寿命が長くなることが知られている(特許文献7参照)。したがって前記殺菌用洗浄液が過酸化水素を含む場合には、更にイソプロパノールなどの低級(炭素数1〜5の)アルコールからなる水溶性有機物及び/又は炭酸塩を1〜100質量ppm含むようにすることが好ましい。
水溶性有機物を添加した場合における連鎖反応によるOHラジカルの長寿命化は、硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンを用いた場合にも期待することができるので、硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンを用いた殺菌用洗浄液についてもイソプロパノールなどの低級(炭素数1〜5の)アルコールからなる水溶性有機物を1〜100質量ppm含むようにすることが好ましい。
前記殺菌用洗浄液は、水の共存下における紫外線照射によって分解してOHラジカルを生成する物質又は水の共存下における紫外線照射によって分解してOHラジカルを生成するイオンを与える物質を所定量水に溶解させることにより調製することができる。このとき、濃度の高い原液を準備し、これを適宜水で希釈して調製してもよい。また、これら殺菌用洗浄液及び原液は、それ自体を商品として流通させることもできる。その場合には、紫外線遮蔽性の容器内に密閉し、冷暗所で保存することが好ましい。容器の形態は特に限定されず、ボトルやパウチなどが採用できる。また、殺菌用洗浄液として過酸化水素水を用いる場合には、前記特許文献8や特開2008−81760号公報に記載されているような過酸化水素水製造装置を用い、室内熱交換器で凝集した凝結水を原料として過酸化水素水を製造し、それをそのまま又は必要に応じて希釈して使用してもよい。このような方法を採用することにより無給水運転を行うことも可能となる。
殺菌用洗浄液供給手段は、通常、ポンプと、配管と、ノズルと、を有し、上記タンクに蓄えられた殺菌用洗浄液をポンプにより圧送してノズルから室内熱交換器等の表面に供給する。ノズルとしては、殺菌用洗浄液を前記室内熱交換器等の表面に供給して付着させ機能を有するものであれば特に限定されず、たとえばミストノズルやスプレイノズルなどが適用できる。また、所謂インクジェットプリンタで採用されているようなピエゾ方式或はサーマル方式を採用した液体噴射機構を採用することもできる。
本発明において、前記殺菌用洗浄液においてOHラジカルを発生させるために紫外線を照射する必要がある。紫外線の波長は短ければ短いほどエネルギーが高くOHラジカルの発生にとっては都合が良いが、210nm未満の短波長の紫外線を比較的高強度で出射することができる光源を準備することは困難である。したがって、210nm以上の紫外線、特に220nm以上380nm以下の波長を有する紫外線を照射することが好ましい。このような波長領域の紫外線を使用した場合には、雰囲気中の酸素などの物質に吸収されて強度低下を起こすことなく、高い強度を保ったまま紫外線を洗浄剤に照射することができるばかりでなく、200nm未満の波長を有する紫外線を出射する水銀ランプやエキシマランプを使用した場合と異なり、有害なオゾンを発生することもない。オゾン発生防止の観点からもこのような波長領域の紫外線を使用することが好ましい。さらに、紫外線単独による殺菌効果も同時に得ることができるという理由から、使用する紫外線は、250nm以上280nm以下の波長を有することが好ましい。
また、装置を小型化でき、メンテナンスを容易化できるという観点から、光源としては、紫外線発光ダイオード(UV−LED)を使用することが好ましい。このような装置上のメリット、OHラジカルの発生効率の高さから、220nm以上380nm以下の波長領域にピークを有する紫外線を出射するUV−LEDを使用することがより好ましく、更に紫外線単独による殺菌効果も同時に得ることができるという理由から、220nm以上380nm以下の波長領域であって250nmを越え280nm以下の波長領域を除く波長領域にピークを有する紫外線を出射するUV−LEDと、250nm以上280nm以下の波長領域にピークを有する紫外線を出射するUV−LEDと、を併用することが最も好ましい。
本発明においては、連鎖反応によるOHラジカルの長寿命化が図られる殺菌用洗浄液を使用すると共に、室内ファンの表面への殺菌用洗浄液の供給を開始する前から前記殺菌用洗浄液に対する紫外線照射を開始してもよい。こうすることにより紫外線照射時間を長くすることができ、前記殺菌用洗浄液に対する積算照射量を高くし、紫外線照射によるOHラジカルの発生をより確実に行って、室内ファンの表面におけるOHラジカル濃度を高くすることができる。室内ファンの表面への殺菌用洗浄液の供給を開始する前から紫外線照射を開始するためには、たとえば、タンクに貯留した殺菌用洗浄液を,ポンプ等を用いて導管(ホース)を経由してノズルから噴霧して室内ファンの表面に付着させる場合には、導管内やノズル内に光源を配置し、そこを通過する殺菌用洗浄液に紫外線を照射するようにすればよい。また、光源を導管やノズルの外部に配置し、導光部として光ファイバなどを用いて導管やノズルの内部に配置した出射部からUVを照射するようにしても良い。このとき、出射部は、光ファイバ用コリメータ、レンズ拡散板、拡散レンズ又は導光板であることが好ましく、照射領域を広くすることができるという理由からレンズ拡散板、拡散レンズ又は導光板であることが特に好ましい。ここで、光ファイバコリメータとは、光ファイバからの出射光をコリメート光(平行光)とする部材であり、光ファイバ用フェルールに非球面レンズを組み込んだコネクタタイプのものが好適に使用できる。レンズ拡散板(Light Shaping Diffuser)とは、拡散フィルム、拡散フィルタ又は拡散シートとも呼ばれるものであり、表面にランダムに形成される微小なレンズの作用等により、光を円形や楕円形などに拡散整形して均一な照射を可能にするものである。また、拡散レンズとしては株式会社エンプラス社製Light Enhancer Cap(登録商標)のようなものが好適に使用できる。さらに導光板としては、たとえば特開2006−237563号公報に開示されている面発光デバイスのようなものが好適に使用できる。
紫外線照射に際しては、光源の出力に応じて光源と室内ファンとの距離及び照射時間を制御して、前記室内ファンの表面における積算照射量が50mJ/cm以上、特に100mJ/cm以上となるようにすることが好ましい。
さらにまた、凹凸を有する表面に確実に紫外線を照射できるようにするために、前記紫外線光源として、(1)前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、同時に紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、複数の紫外線発光ダイオードを配置した紫外線光源、又は(2)時間をずらして、前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、一又は複数の紫外線発光ダイオードの出射方向を制御する出射方向制御機構を有する紫外線光源を、用いることが好ましい。
さらに、装置をよりコンパクトにすることができるという理由から、前記殺菌用洗浄液供給手段及び前記紫外線光源は、長方形又は略長方形の紫外線出射面を有し、内部に上記何れかの複数の紫外線発光ダイオードを収容する1又は2以上の筺体ユニットを有し、当該筐体に殺菌用洗浄液を噴霧するための噴霧ノズルが設けられたLEDモジュールであることが好ましい(図2参照)。このとき、高強度の紫外線照射が可能になるという理由から、前記LEDモジュールは各筺体ユニットの前記紫外線出射面から指向(半値)角が40°以下0°以上、特に30°以下0°以上である帯状の光束として紫外線を出射することが特に好ましい。
筐体に殺菌用洗浄液を噴霧するための噴霧ノズルが設けられたLEDモジュールにおいては、図3に示すようにUV−LEDを横に複数列並べ、UV−LEDの光軸の角度が各列で異なるようにすることにより、(1)前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、同時に紫外線を照射できるようにするか、又は(2)時間をずらして、前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、紫外線を照射できるようにすることができる。なお、各列のUV−LEDの照射領域が重なる部分では(1)の同時照射が行われ、照射領域が重ならない部分では(2)の時間をずらした照射が行われることになる。
なお、LEDモジュールとは、LEDパッケージを基板などに実装するか、又は複数のLEDを平面的若しくは立体的に配列して、機械的、電気的制御回路若しくはその一部、及び光学的に多数の要素で構成して、一つのユニットとして取り扱えるようにしたもの、またはその集合体のことを意味する。
また、前記殺菌用洗浄液供給手段及び前記紫外線光源を一体化した別の好ましい態様として、導光板を用いたモジュール(以下、導光板型モジュールともいう。)を挙げることができる(図4参照)。当該導光板型モジュールは前記LEDモジュールの紫外線出射面となる部分を導光板の紫外線出射面となるようにしてものであり、図4に示されるように縦長の導光板の側面に複数のUV−LEDを配置して、これらUV−LEDから出射された紫外線を導光板の前記紫外線出射面から出射するようにしたものである。
上記したようなLEDモジュール又は導光板型モジュール(以下、総称して光源・殺菌用洗浄液供給モジュールともいう。)を用いた本発明の室内ユニットとしては、コンパクト化が可能で、洗浄効果をより確実なものでき、しかも自動洗浄を行うこともできるという理由から、前記光源・殺菌用洗浄液供給モジュールを移動させるための移動手段と、前記紫外線発光素子の点灯及び消灯を制御する点灯制御手段と、前記殺菌用洗浄液供給手段の作動を制御する供給制御手段と、を更に有することが好ましい。そして、当該好ましい態様では、前記ケーシングの内部には、前記光源・殺菌用洗浄液供給モジュールを格納するための格納部を有しており、前記光源・殺菌用洗浄液供給モジュールは前記室内ユニットが空気調和装置の稼働時において当該格納部に格納されており、前記移動手段は、前記室内ユニットが空気調和装置の稼働停止時において、前記光源・殺菌用洗浄液供給モジュールをその紫外線出射面の長手方向が室内ファン(ラインフローファン或いはクロスフローファン)の母線と沿うようにして室内ファンの所定の位置における表面に近接して対向するように配置し、図1に示されるように、前記紫外線出射面の短手方向にスライドさせながら、1回又は複数回往復させて前記格納部に戻す移動操作を行うものであることが好ましい。また、室内ファンがプロペラファンの場合には、通常、図6及び7に示されるように複数のプロッペラファンがケーシングの横方向に水平に並べられて配置されるので、前記光源・殺菌用洗浄液供給モジュールの前記紫外線出射面の長手方向の長さをプロペラ直径よりも長くして、プロペラの上方及び/又は下方に、その紫外線出射面がプロペラと対向するように配置して、前記紫外線出射面の短手方向がケーシングの横方向となるようにして、1回又は複数回往復させて前記格納部に戻すようにすればよい。
上記移動手段としては、電動モーター、スプロケットおよびチェインを組み合わせたような電動アクチュエーター、並びに油圧或いは空気圧シリンダー等を用いた油圧又は空圧アクチュエーターなどが特に制限なく利用できる。
前記光源・殺菌用洗浄液供給モジュールは、当該モジュールの外部と配線や配管で接続する必要がなく、前記移動が行いやすくなるという観点から、2次電池と、殺菌用洗浄液用の小型タンクと、殺菌用洗浄液噴射機構と、を有することが好ましい。2次電池としては、リチウムイオン電池等が使用でき、当該2次電池の電力を用いてUV−LEDの稼働(点灯)および制御、殺菌用洗浄液噴射機構の稼働および制御、並びに必要に応じて前記移動手段の稼働および制御が行われる。前記殺菌用洗浄液用の小型タンクの容量は、少なくとも1回の洗浄・殺菌に必要な殺菌用洗浄剤を貯留できる容量であればよく、通常10〜200ml、好ましくは10〜150ml、最も好ましくは20〜100mlである。殺菌用洗浄液噴射機構としては、前記小型タンクと前記噴霧ノズルを連結するチューブと、その間に配置される超小型ポンプからなるもの、又はインクジェットプリンタで採用されているようなピエゾ方式或はサーマル方式を採用した液体噴射機構が好適に採用できる。
上記したような2次電池、殺菌用洗浄液用の小型タンク及び殺菌用洗浄液噴射機構を有する光源・殺菌用洗浄液供給モジュールを使用する場合、前記格納部には、前記2次電池用の充電器及び前記小型タンクへ殺菌用洗浄液を補充し、その貯留量を所定量とするための殺菌用洗浄剤補給機構を配置しておくことが好ましい。殺菌用洗浄剤補給機構としては、殺菌用洗浄液用の大型タンク、前記大型タンクから所定量の殺菌用洗浄剤を前記小型タンクに補充する定量ポンプを有するものが好適に使用できる。当該殺菌用洗浄剤補給機構は、前記小型タンク内に残存する殺菌用洗浄剤量を検知するためのセンサ、を有し、当該センサの検知結果に基づいて前記大型タンクから所定量の殺菌用洗浄剤を前記小型タンクに補充するようにしてもよい。
なお、前記格納部は、室内ユニットが空気調和装置の稼働時において、光源・殺菌用洗浄液供給モジュールが、吸気口から吸入された空気と室内ファンとの接触を邪魔しない位置に設けられることが好ましい。また、前記したような殺菌用洗浄液噴射機構を採用する場合に限らず、噴霧ノズルのつまり防止という観点からは、殺菌用洗浄液は、乾燥しても溶質が析出することのないものを使用することが好ましく、殺菌用洗浄液としては過酸化水素水又は過酸化水素水とアルコールとの混合溶液を用いることが最も好ましい。
また、本明の室内ユニットにおいては、室内ファンの軽量化という観点から、室内ファンの表面は、二酸化チタンなどの光触媒物質を有しない材料で構成されることが好ましい。ここで、光触媒物質を有しないとは、光触媒物質を含むコート層(被複層)を形成する等、恒久的に前記表面に光触媒物質を存在させることを行わないばかりでなく、殺菌用洗浄液に光触媒物質を添加して一時的に前記表面に光触媒物質を付着させることを行わないことも含む。殺菌用洗浄液に光触媒物質を添加した場合には、摩耗など、室内ファンの表面が損傷を受けることが避けられない。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図面は必ずしも正確な寸法を反映したものではない。また図では、一部の符号を省略することがある。
図1に示す本発明の室内ユニット100は、所謂、ラインフローファンを用いた壁掛型の室内ユニットであり、吸気口11及び吹出口12を有するケーシング10と、室内ファン(ラインフローファン)30と、室内熱交換器20と、室内熱交換器20から落下する凝結水を受けるためのドレンパン40a及び40bと、を有し、更に送風路14の室内熱交換器20より上流側には、室内ファン30の駆動によって吸気口11より吸入される室内雰囲気空気に含まれる塵や埃を捕集するためのフィルタ13が設置されている。また、上記ドレンパン40a及び40bには、図示しないドレン用配管が接続され、該ドレン用配管を通ってドレンが室内ユニット外(主に屋外)に排出されるようになっている。
そして、送風路14内における前記室内熱交換器20と前記室内ファン30との間の空間には、光源・殺菌用洗浄液供給モジュールとして、LEDモジュール70が配置されている。LEDモジュール70は、紫外線光源60と殺菌用洗浄液供給手段50とを兼ねるものであり、図2にその一部が示されるように、縦長の紫外線出射面73a、73a´を有し、内部に夫々UV−LED71、71´を収容する複数の筺体ユニット74a、74a´等がヒンジなどの連結部材75で連結された構造を有し、紫外線出射面73a、73a´から紫外線を出射し、更に各筐体ユニット74a、74a´等に設けられた噴霧ノズル51、51´等から殺菌用洗浄液を噴霧できるようになっている。
さらに、LEDモジュール70は、それぞれ図示しないリチウムイオン電池などの2次電池、殺菌用洗浄液用の小型タンク及び殺菌用洗浄液噴機構を有し、前記2次電池から、紫外線光源60および殺菌用洗浄液噴機構の駆動電力を供給できるようになっている。殺菌用洗浄液用の小型タンクの容量は、少なくとも1回の洗浄・殺菌に必要な殺菌用洗浄剤を貯留できる容量であればよく、通常10〜200ml、好ましくは10〜150ml、最も好ましくは20〜100mlである。殺菌用洗浄液噴機構としては、前記小型タンクと前記噴霧ノズルを連結するチューブと、その間に配置される超小型ポンプからなるもの、又はインクジェットプリンタで採用されているようなピエゾ方式或はサーマル方式を採用した液体噴射機構が好適に採用できる。
前記LEDモジュール70は、移動手段80のガイドレール81にアームを介して連結され、紫外線出射面73aを室内ファン30に対向させて、LEDモジュール70の短手方向(図1における左右方向)にスライド移動できるようにされている。上記移動手段としては、電動モーター、スプロケットおよびチェインを組み合わせたような電動アクチュエーター、並びに油圧或いは空気圧シリンダー等を用いた油圧又は空圧アクチュエーターなどが特に制限なく利用できる。
前記LEDモジュール70は、前記室内ユニットが空気調和装置の稼働時において、図1の右側図面に示されるように、室内ファン30と対向しない測端部近傍に設けられた格納部に格納されている。格納部には、図示しない充電器を有し、格納部において前記LEDモジュール70に内蔵される前記2次電池の充電が行われる。また、格納部近傍には、図示しない殺菌用洗浄剤補給機構が配置されている。当該殺菌用洗浄剤補給機構は、殺菌用洗浄液用の大型タンク、前記大型タンクから所定量の殺菌用洗浄剤を前記小型タンクに補充する定量ポンプを有し、格納部において前記LEDモジュール70の小型タンクに殺菌用洗浄剤が補給される。図1に示される室内ユニット100においては、当該殺菌用洗浄剤補給機構並びに前記LEDモジュール70の殺菌用洗浄液用の小型タンク及び殺菌用洗浄液噴機構の組み合わせが殺菌用洗浄液供給手段50を構成しているといえる。
なお、殺菌用洗浄剤補給機構は、必ずしもその全てをケーシング10内の格納部近傍に配置する必要はなく、例えば殺菌用洗浄液用の大型タンク及び定量ポンプをケーシングの外部に配置してフレキシブルチューブ等の配管を格納部近傍に導いて前記小型タンクに殺菌用洗浄液を補充するようにしてもよい。大型タンクの容量を大きくし、該大型タンクへの殺菌用洗浄液の補充の利便性や、室内ユニットの軽量化という観点からすると、このような外付けの態様を採ることが好ましい。
前記移動手段80、前記殺菌用洗浄液供給手段50及び前記紫外線光源60は、前記室内ユニット100が空気調和装置の稼働停止時において作動し、前記LEDモジュール70が室内ファン30の一端から他端の間をスライド移動する間に殺菌用洗浄液を噴霧し、紫外線照射を行う。この時、前記殺菌用洗浄液供給手段50及び前記紫外線光源60の電源は前記LEDモジュール70の2次電池から供給され、噴霧される殺菌用洗浄液は前記LEDモジュール70の小型タンクから供給されるので、前記LEDモジュール70を配線や配管で他の装置等に接続する必要はない。したがって、狭いスペースであっても容易に前記LEDモジュール70を移動させることができる。
前記移動手段80、前記殺菌用洗浄液供給手段50及び前記紫外線光源60の稼働は、前記室内ユニット100が空気調和装置の稼働停止時であれば特に限定されず、空気調和装置の稼働を停止した直後に毎回稼働するようにしてもよいし、例えば5回とか10回といった予め定めた回数空気調和装置を稼働させて、最後の稼働が停止した直後に稼働するようにしてもよいし、別途汚れセンサを配置し、汚れの程度が所定の値に達した場合に稼働するようにしてもよい。このようにすることによって、絶えず室内ファンの表面をきれいな状態に保つことができる。
なお、室内ファン表面の殺菌及び洗浄は、空気調和装置の非稼働時、すなわち空気調和を行っていないときに行うことが好ましいが、室内ファン表面全体に亘って殺菌用洗浄液を付着させ、紫外線が照射されるようにするために、前記LEDモジュール70は複数回往復移動させることが好ましく、その間、前記室内ファンがゆっくり回転するようにしておくことが好ましい。このとき、予め殺菌用洗浄液の噴霧条件や室内ファンの回転条件から、室内ファンに付着した使用後の殺菌用洗浄液や、余剰に付着して流れ出た殺菌用洗浄液の落下挙動を予測して、ドレンパンの形状や設置位置を調整し、室内ファンから落下してくる殺菌用洗浄液をドレンパンで受けるようにしておくことが好ましい。
以上、図1を参照してラインフローファンを用いた壁掛型の本発明の室内ユニットについて説明したが、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で様々な変更が可能である。
たとえば、図2〜4に示した光源・殺菌用洗浄液供給モジュールは筺体ユニットの片面のみから殺菌洗浄液の噴霧及び紫外線照射するものであるが、図5に、LEDモジュール70´として示すように、表裏両面に紫外線照射面73afront、73afront´、73aback及び73aback´並びに噴霧ノズル51front、51front´(及び図示しない51back、51back´)を有し、表裏両面から殺菌洗浄液の噴霧及び紫外線照射できるようにしたLEDモジュール70´を用いて、室内熱交換器20の表面の殺菌洗浄を同時に行うようにしてもよい。また、紫外線光源と殺菌洗浄液供給手段とを一体化した光源・殺菌用洗浄液供給モジュールについて、紫外線光源機能のみを残し、殺菌洗浄液供給手段を分離させてもよい。
図6に示す本発明の室内ユニット100´は、所謂、プロペラファンを用いた壁掛型の室内ユニットであり、吸気口11及び吹出口12を有するケーシング10と、モーター32(カバー内に収納されている)とプロペラ31とを有する室内ファン(プロペラファン)30´と、室内熱交換器20と、を有し、前記吸気口11と前記吹出口12の間に形成される送風路14の上流側から下流側に向かって、フィルタ13、室内ファン30´及び室内熱交換器20がこの順番で配置され、前記フィルタ13の目より大きな塵や埃が取り除かれた室内雰囲気空気の調和が成されるようになっている。また、室内熱交換器20の下方には、凝結水を受けるためのドレンパン40a及び40bが配置されている。
室内ユニット100´においては、ケーシングの横方向(ケーシング上面の長手方向)に沿って2つの室内ファン30´が水平に並べて配置され、前記フィルタ13と前記室内ファン30´との間の空間には、光源・殺菌用洗浄液供給モジュールとして、LEDモジュール70が配置されている。
LEDモジュール70は、紫外線光源60と殺菌用洗浄液供給手段50とを兼ねるものであり、一つの筺体ユニットで構成される他は、基本的には図2に示されるものと同様の構造を有し、紫外線出射面から紫外線を出射し、噴霧ノズルから殺菌用洗浄液を噴霧できるようになっている。LEDモジュール70の紫外線出射面の長手方向の長さは、室内ファン30´のプロペラ直径よりも長く、その長手方向がケーシングの横方向と直交し、且つ紫外線照射面がプロペラに32に対向するようにして2本のレール81によって移動可能に支持されている。
上記LEDモジュール70は、図1に示される室内ユニット100と同様に、移動手段80によってケーシング内の一端から他端の間をスライド移動する間に前記室内ファン30´の上方を横切りながら殺菌用洗浄液を噴霧し、紫外線照射を行う。この時、室内ファン表面全体に亘って殺菌用洗浄液を付着させ、紫外線が照射されるようにするために、前記LEDモジュール70は複数回往復移動させることが好ましく、その間、室内ファンがゆっくり回転するようにしておくことが好ましい。なお、殺菌用洗浄液を噴霧させたときにモーター31のカバーにも殺菌用洗浄液が付着するので、モーター31は防水機構を有することが好ましい。
室内ユニット100´では、室内ファン30´の下流側に室内熱交換器20が配置され、その下にドレンパンが配置されているので、室内ファンに付着した使用後の殺菌用洗浄液や、余剰に付着して流れ出た殺菌用洗浄液は、ドレンパンで受けられる。
以上、プロペラファンを用いた室内ユニットについて、ファンの上方から殺菌用洗浄液を噴霧して紫外線照射を行う態様について説明したが、LEDモジュール70を室内ファン30´の下側に配置し、ファンの下方から殺菌用洗浄液を噴霧して紫外線照射を行うようにしてもよい。また、上方及び下方に配置し両方から噴霧及び紫外線照射を行うようにしてもよい。更には、図7に示すように、上下にLEDモジュール70を、下方に図5に示したものと同様の構造を有するLEDモジュール70´を配置して、ファンの上下両方向から噴霧及び紫外線照射を行うと同時に室内熱交換器20の表面に対しても殺菌用洗浄液の噴霧及び紫外線照射を行うようにしてもよい。
100、100´、100´´・・・空気調和装置の室内ユニット
10・・・ケーシング
11・・・吸気口
12・・・吹出口
13・・・フィルタ
14・・・送風路
20・・・室内熱交換器
30・・・室内ファン(ラインフローファン)
30´・・・室内ファン(プロペラファン)
31・・・プロペラ
32・・・モーター
40a、40b・・・ドレンパン
50・・・殺菌用洗浄液供給手段
51、51´、51front、51front´・・・噴霧ノズル
60・・・紫外線光源
70、70´・・・LEDモジュール
71、71´、71front、71front´、71back、71back´・・・紫外線発光素子(UV−LED)
72、72´・・・LED用基板
73a、73a´、73afront、73afront´、73aback、73aback´、73b、73b´、73c・・・紫外線出射面
74a、74a´、74b、74b´、74c・・・筺体ユニット
75・・・連結部材
76、76´・・・裏面
77、77´・・・導光板
78・・・光軸(紫外線の出射方向)
80・・・移動手段
81・・・ガイドレール

Claims (5)

  1. 吸気口及び吹出口を有するケーシングと、室内ファンと、室内熱交換器と、室内熱交換器から落下する凝結水を受けるためのドレンパンと、を有し、室内ファン、室内熱交換器及びドレンパンは、前記ケーシング内に配置されてなる空気調和装置の室内ユニットにおいて、
    水の共存下における紫外線照射によって分解してヒドロキシルラジカルを生成する物質又はイオンが溶解した水溶液からなり、且つオゾンを実質的に含まない水溶液からなる殺菌用洗浄液を前記室内ファンの表面に供給可能な殺菌用洗浄液供給手段と、
    紫外線を前記室内ファンの表面に照射可能な紫外線光源と、を備え、
    前記室内ファンの表面に供給される前記殺菌用洗浄液に、前記紫外線を照射することにより、前記室内ファンの洗浄及び殺菌を行う、殺菌及び洗浄機構を有することを特徴とする、空気調和装置の室内ユニット。
  2. 表面が光触媒物質を有しない材料で構成された室内ファンを用いてなる請求項1に記載の空気調和装置の室内ユニット。
  3. 前記殺菌用洗浄液が、硝酸イオン、亜硝酸イオン及び過酸化水素から選ばれる少なくとも1種が溶解した水溶液からなる、請求項1又は2に記載の空気調和装置の室内ユニット。
  4. 前記紫外線光源として、(1)前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、同時に紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、複数の紫外線発光ダイオードを配置した紫外線光源、又は(2)時間をずらして、前記室内ファンの表面に対して、異なる複数の方向から、紫外線を照射できるように、ピーク波長が220〜380nmである、一又は複数の紫外線発光ダイオードの出射方向を制御する出射方向制御機構を有する紫外線光源を、用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和装置の室内ユニット。
  5. 前記請求項1乃至4の何れかに記載の室内ユニットを有する空気調和装置。
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