JP2018179153A - 接合体および接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1部材と第2部材とを簡便かつ強固に接合する。【解決手段】接合体10は、第1部材11と、第1部材11に接合された第2部材12と、第1、第2部材11、12を締結固定する締結部材13とを備え、第1部材11は、第2部材12に接触する第1接合面11aを有し、第2部材12は、第1部材11に接触する第2接合面12aを有し、締結部材13が第1部材11と第2部材12とを締結固定することで、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に真実接触部と隙間部とが生じており、隙間部には硬化性充填材14が充填されており、第1接合面11aおよび第2接合面12aのうちの少なくとも一方に、当該接合面の外周縁に開口する排出溝15が形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、衝撃力や振動が付加される複数の部材からなる接合体、およびこれらの部材の接合方法に関する。
従来から、接合された部材間における相対滑りの対策として、例えば下記特許文献1、2に記載の構成が知られている。
特許文献1に記載の発明は、金属製の第1部材の締結面に、金属製の第2部材の締結面を重ねて、両者を締結具により締結する締結構造である。第1部材および第2部材間に、研磨剤を含有させた研磨剤保持層が形成されている。第1部材および第2部材の締結状態において、一部を第1部材および第2部材の各表面に埋設するように、研磨剤が第1部材および第2部材に狭持されている。
特許文献2に記載の発明は、摩擦締結の締結部に挿入する締結補助部材と、締結補助部材を間に挟む2つ以上の被締結部材と、締結補助部材と被締結部材を接触させた状態で固定する固定部材と、からなる摩擦締結構造である。締結補助部材の表面は、酸化還元反応により溶融処理されている。
特開2006−022948号公報 特開2013−253628号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、第1部材と第2部材との間に研磨剤保持層が形成されるため、第1部材と第2部材との間の物理的接合(凝着力)は低下する。
特許文献2に記載の発明では、締結補助部材の表面を酸化還元反応により溶融処理する必要があり、材質が限定されるとともに手間がかかる。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、第1部材と第2部材とを簡便かつ強固に接合することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る接合体は、第1部材と、前記第1部材に接合された第2部材と、前記第1、第2部材を締結固定する締結部材とを備えた接合体において、前記第1部材は、前記第2部材に接触する第1接合面を有し、前記第2部材は、前記第1部材に接触する第2接合面を有し、前記締結部材が前記第1部材と前記第2部材とを締結固定することで、前記第1接合面と前記第2接合面との間に真実接触部と隙間部とが生じており、前記隙間部には硬化性充填材が充填されており、前記第1接合面および前記第2接合面のうちの少なくとも一方に、当該接合面の外周縁に開口する排出溝が形成されていることを特徴とする。
この場合、第1部材と第2部材とを接合して接合体を形成するときには、硬化前の硬化性充填材を第1接合面と第2接合面とのうちの少なくとも一方に塗布した後、硬化性充填材を第1接合面と第2接合面との間に挟み込む。そして、締結部材により第1部材と第2部材とを締結固定することで、第1接合面と第2接合面との間に真実接触部および隙間部を生じさせて隙間部に硬化性充填材を充填しながら、第1接合面と第2接合面との間から余分な硬化性充填材を排出する。このとき、第1接合面と第2接合面との間から排出溝を通して硬化性充填材を排出する。そのため、第1接合面や第2接合面に塗布する硬化前の硬化性充填材が多量であっても、第1接合面と第2接合面との間に硬化性充填材の層が形成されて第1接合面と第2接合面との間に生じる真実接触部が減少するのを抑えることができる。したがって、硬化前の硬化性充填材の塗布量を微調整しなくても、第1接合面と第2接合面の間に生じる真実接触部の減少を抑えつつ、前記隙間部に硬化性充填材を充填することができる。このような接合体では、硬化性充填材が隙間部を充填して硬化している。したがって、真実接触部における第1接合面と第2接合面との凝着力に加え、硬化性充填材のせん断剛性に基づいて、第1接合面と第2接合面との相対滑りを抑制することができる。すなわち、第1接合面と第2接合面との真実接触部における摩擦力に、硬化性充填材の変形抵抗を加えた、第1接合面と第2接合面との間の見かけの摩擦力を高めることができる。
以上から、前記接合体によれば、第1部材と第2部材とを簡便かつ強固に接合することができる。しかも、第1接合面と第2接合面との見かけの接触面積を増加させることなく、第1部材と第2部材との接合強度を高めることが可能になり、例えば、設計時の制約等でスペースが限られた構成などにおいて本発明を好適に採用することができる。
前記排出溝が、前記第1接合面または前記第2接合面の平面視において格子状に形成されてもよい。
この場合、排出溝が前記平面視において格子状に形成されている。したがって、排出溝を通して硬化性充填材を排出するときに、余分な硬化性充填材を確実に排出することができる。これにより、第1接合面と第2接合面との間に生じる真実接触部の減少を抑えつつ、前記隙間部に硬化性充填材を確実に充填することができる。
本発明に係る接合方法は、第1部材と第2部材とを接合する接合方法において、前記第1部材の第1接合面および前記第2部材の第2接合面のうちの少なくとも一方に、硬化前の硬化性充填材を塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後、前記硬化性充填材を前記第1接合面と前記第2接合面との間に挟み込む挟み込み工程と、前記挟み込み工程の後、締結部材により前記第1、第2部材を締結固定する締結工程と、前記締結工程を実施することで、前記第1接合面と前記第2接合面との間に真実接触部および隙間部を生じさせて前記隙間部に前記硬化性充填材を充填しながら、前記第1接合面と前記第2接合面との間から余分な前記硬化性充填材を排出する排出工程と、前記締結工程および前記排出工程の後、前記硬化性充填材を硬化させる硬化工程とを備え、前記排出工程の際、前記第1接合面および前記第2接合面のうちの少なくとも一方に、当該接合面の外周縁に向けて開口するように形成された排出溝を通して、前記第1接合面と前記第2接合面との間から前記硬化性充填材を排出することを特徴とする。
この場合、排出工程の際、第1接合面と第2接合面との間から排出溝を通して硬化性充填材を排出する。そのため、第1接合面や第2接合面に塗布する硬化前の硬化性充填材が多量であっても、第1接合面と第2接合面との間に硬化性充填材の層が形成されて第1接合面と第2接合面との間に生じる真実接触部が減少するのを抑えることができる。したがって、硬化前の硬化性充填材の塗布量を微調整しなくても、第1接合面と第2接合面との間に生じる真実接触部の減少を抑えつつ、前記隙間部に硬化性充填材を充填することができる。このような接合体では、硬化性充填材が隙間部を充填して硬化している。したがって、真実接触部における第1接合面と第2接合面との凝着力に加え、硬化性充填材のせん断剛性に基づいて、第1接合面と第2接合面との相対滑りを抑制することができる。すなわち、第1接合面と第2接合面との真実接触部における摩擦力に、硬化性充填材の変形抵抗を加えた、第1接合面と第2接合面との間の見かけの摩擦力を高めることができる。
以上から、前記接合方法によれば、第1部材と第2部材とを簡便かつ強固に接合することができる。しかも、第1接合面と第2接合面との見かけの接触面積を増加させることなく、第1部材と第2部材との接合強度を高めることが可能になり、例えば、設計時の制約等でスペースが限られた構成などにおいて本発明を好適に採用することができる。
本発明によれば、第1部材と第2部材とを簡便かつ強固に接合することができる。
本発明の一実施形態に係る接合体を示す斜視図であって、第2部材の一部を破断した図である。 図1に示す接合体を構成する第1部材の平面図である。 図2に示すIII−III矢視断面図である。 図1に示す接合体の断面図である。 図1に示す接合体の要部の拡大断面図である。 本発明の第1検証試験に用いた比較例1の結果を示す図であって、(a)は第1接合面の写真を示し、(b)は(a)を画像処理した結果を示す。 本発明の第1検証試験に用いた比較例2の結果を示す図であって、(a)は第1接合面の写真を示し、(b)は(a)を画像処理した結果を示す。 本発明の第1検証試験に用いた比較例3の結果を示す図であって、(a)は第1接合面の写真を示し、(b)は(a)を画像処理した結果を示す。 本発明の第1検証試験に用いた実施例1の結果を示す図であって、(a)は第1接合面の写真を示し、(b)は(a)を画像処理した結果を示す。 本発明の第2検証試験に用いた試験治具を示す斜視図である。 図10に示す試験治具により試験される接合体の分解斜視図である。 本発明の第2検証試験に係る試験結果を示すグラフである。
以下、図1から図5を参照し、本発明の一実施形態に係る接合体を説明する。接合体は、例えば、配管用クランプやスピンドル等、衝撃力や振動が付加される複数の部材からなる構成に適用することが可能である。
図1から図5に示すように、接合体10は、第1部材11と、第1部材11に接合された第2部材12と、第1、第2部材11、12を締結固定する締結部材13と、を備える。
第1部材11および第2部材12はそれぞれ、金属材料により形成されるとともに、板状に形成されている。第1部材11は、第2部材12に接触する第1接合面11aを有し、第2部材12は、第1部材11に接触する第2接合面12aを有する。第1部材11および第2部材12は、第1接合面11aと第2接合面12aとが接触(圧接)した状態で互いに接合されている。
図1および図2に示すように、第1接合面11aおよび第2接合面12aのうちの少なくとも一方には、当該接合面11a、12aの外周縁に開口する排出溝15が形成されている。本実施形態では、排出溝15は、第1接合面11aおよび第2接合面12aのうち、第1接合面11aに形成されていて、第2接合面12aには形成されていない。排出溝15は、第1接合面11aの外周縁に開口している。排出溝15は、第1接合面11aの平面視において、第1接合面11aの外周に到達していて、第1部材11の板厚方向に直交する直交方向に向けて開口している。
図2に示すように、排出溝15は、第1接合面11aの平面視において格子状に形成(テクスチャリング)されている。排出溝15は、複数の縦溝部15aと、複数の横溝部15bと、を備えている。これらの各溝部15a、15bは、前記平面視において直線状に延びている。複数の縦溝部15aは、前記平面視において互いに平行に延びている。複数の横溝部15bは、前記平面視において互いに平行に延びている。縦溝部15aと横溝部15bとは、前記平面視において互いに直交している。
図3に示すように、縦溝部15aの横断面視形状と横溝部15bの横断面視形状とは、互いに同等である。なお、各溝部15a、15bの横断面視形状とは、当該溝部15a、15bを、当該溝部15a、15bが延びる方向に直交する断面(横断面)から見た形状である。縦溝部15aおよび横溝部15bの各横断面視形状は、三角形状である。縦溝部15aおよび横溝部15bは、当該溝部15a、15bの深さ方向(板厚方向)に沿って開口部側から底部側に向かうに従い徐々に溝幅方向に狭くなっている。縦溝部15aおよび横溝部15bそれぞれの底部は、各溝部15a、15bの横断面視において凹曲線状に形成されている。
なお、縦溝部15aおよび横溝部15bそれぞれについての開口幅wは、例えば200μm以下、具体的には100μm程度となっている。また、縦溝部15aおよび横溝部15bそれぞれについての深さdは、例えば100μm以下、具体的には50μm程度となっている(例えば、w:d=2:1とすることができる)。開口幅wと深さdについては、硬化性充填材14の粘度や、後述する排出工程時における硬化性充填材14の流速、排出溝15の断面形状等に基づいて定めることが望ましい。さらに、互いに隣り合う縦溝部15a同士のピッチ(間隔)、および互いに隣り合う横溝部15b同士のピッチ(間隔)は、互いに同等であり、これらのピッチを総称して溝ピッチpとすると、溝ピッチpは、1500μm以下、具体的には150μm〜1500μm程度となっている。なお、前記開口幅wが広くなったり、前記溝ピッチpが狭くなったりすると、各接合面11a、12a全体に対する排出溝15の占有面積が大きくなり、後述する真実接触面積が減少する。
図4に示すように、締結部材13は、第1部材11および第2部材12を挟持する。締結部材13は、第1接合面11aと第2接合面12aとを圧接させている。締結部材13は、第1部材11と第2部材12とを摩擦接合(摩擦締結)している。摩擦接合とは、第1部材11と第2部材12との前記直交方向の相対変位を、主に、第1接合面11aと第2接合面12aとの間の摩擦力により規制する接合形態をいう。
締結部材13は、ボルト16と、ナット17と、を備えている。ボルト16の軸部は、第1部材11および第2部材12それぞれに形成された貫通孔18に挿通されている。貫通孔18は、第1部材11および第2部材12を、各部材11、12の板厚方向に貫通している。ボルト16の頭部とナット17とは、第1部材11および第2部材12を板厚方向に挟持する。
図5に示すように、締結部材13が第1部材11と第2部材12とを締結固定することで、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に真実接触部19と隙間部20とが生じている。ここで真実接触部19とは、見かけの接触部のうち、実際に接触している部分をいう。見かけの接触部とは、外観上接触している部分(面)であって、第1接合面11aまたは第2接合面12aをいう。前記接合体10において、第1接合面11aおよび第2接合面12aでは、互いの真実接触面積が見かけの接触面積よりも小さい。ここで真実接触面積とは、真実接触部19の面積をいい、見かけの接触面積とは、見かけの接触部の面積をいう。
隙間部20には、硬化性充填材14が充填されている。硬化性充填材14は、前記隙間部20を充填している。硬化性充填材14は、第1接合面11aと第2接合面12aとの間の全域にわたって拡散されている。硬化性充填材14は、排出溝15の全域にわたって充填されている。
硬化性充填材14としては、硬化性樹脂(例えば、嫌気硬化性樹脂や熱硬化性樹脂など)等を好適に採用することが可能であり、例えば、いわゆる接着剤(例えば、嫌気性接着剤など)やシーラント剤を採用することができる。具体的には、硬化性充填材14として、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂(例えばPMMAなど)等を採用することができる。
次に、第1部材11と第2部材12とを接合する接合方法(接合体10の製造方法)について説明する。
まず、第1接合面11aおよび第2接合面12aのうちの少なくとも一方に、硬化前の硬化性充填材14を塗布する塗布工程を実施する。その後、硬化前の硬化性充填材14を第1接合面11aと第2接合面12aとの間に挟み込む挟み込み工程を実施する。
挟み込み工程の後、締結部材13により第1、第2部材11、12を締結固定する締結工程を実施する。そして、締結工程を実施することで、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に真実接触部19および隙間部20を生じさせて隙間部20に硬化性充填材14を充填しながら、第1接合面11aと第2接合面12aとの間から余分な硬化性充填材14を排出する排出工程も実施する。このとき、第1接合面11aと第2接合面12aとの間から排出溝15を通して硬化性充填材14を排出する。
締結工程および排出工程の後、硬化性充填材14を硬化させる硬化工程を実施する。例えば、硬化性充填材14として嫌気硬化性樹脂を採用した場合、第1部材11と第2部材12とを挟み込んだ状態で放置することで、硬化性充填材14が硬化する。硬化性充填材14として熱硬化性樹脂を採用した場合、第1部材11と第2部材12とを挟み込んだ状態で硬化性充填材14(第1部材11、第2部材12および締結部材13を含む全体)を、硬化性充填材14が硬化する程度の温度まで加熱することで、硬化性充填材14が硬化する。
以上により、第1部材11と第2部材12とが接合され、接合体10が形成される。
以上説明したように、本実施形態に係る接合体10および接合方法によれば、排出工程の際、第1接合面11aと第2接合面12aとの間から排出溝15を通して硬化性充填材14を排出する。そのため、第1接合面11aや第2接合面12aに塗布する硬化前の硬化性充填材14が多量であっても、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に硬化性充填材14の層が形成されて第1接合面11aと第2接合面12aとの間に生じる真実接触部19が減少するのを抑えることができる。したがって、硬化前の硬化性充填材14の塗布量を微調整しなくても、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に生じる真実接触部19の減少を抑えつつ、前記隙間部20に硬化性充填材14を充填することができる。このような接合体10では、硬化性充填材14が隙間部20を充填して硬化している。したがって、真実接触部19における第1接合面11aと第2接合面12aとの凝着力に加え、硬化性充填材14のせん断剛性に基づいて、第1接合面11aと第2接合面12aとの前記直交方向への相対滑りを抑制することができる。すなわち、第1接合面11aと第2接合面12aとの真実接触部19における摩擦力に、硬化性充填材14の変形抵抗を加えた、第1接合面11aと第2接合面12aとの間の見かけの摩擦力を高めることができる。なお、第1接合面11aと第2接合面12aとの凝着力とは、第1接合面11aと第2接合面12aとが接触することにより生じるファンデルワールス力などに基づく、第1接合面11aと第2接合面12aとの板厚方向への引き離しを抑制する力である。硬化性充填材14のせん断剛性とは、硬化性充填材14の直交方向への変形のし難さを表す物性値である。第1接合面11aと第2接合面12aとの相対滑りとは、第1接合面11aと第2接合面12aとの直交方向への相対変位である。
以上から、前記接合体10および前記接合方法によれば、第1部材11と第2部材12とを簡便かつ強固に接合することができる。しかも、第1接合面11aと第2接合面12aとの見かけの接触面積を増加させることなく、第1部材11と第2部材12との接合強度を高めることが可能になり、例えば、設計時の制約等でスペースが限られた構成などにおいて本発明を好適に採用することができる。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
排出溝15が第1接合面11aだけでなく第2接合面12aにも形成されていてもよい。さらに排出溝15が、第1接合面11aになく第2接合面12aだけに形成されていてもよい。
排出溝15が、前記平面視において格子状でなくてもよい。例えば排出溝15が、前記平面視において放射状に形成されていてもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
次に、以上に説明した作用効果についての検証試験を実施した。
検証試験として、第1検証試験と第2検証試験とを実施した。第1検証試験では、排出溝15が真実接触面積に与える影響について検証した。第2検証試験では、排出溝15が接合強度に与える影響について検証した。なお、いずれの検証試験においても、第1部材11の第1接合面11aの粗さや第2部材12の第2接合面12aの粗さは、6.3s(JIS B 0601:2013における最大高さ粗さRz)となっている。ここで、第1接合面11aや第2接合面12aに排出溝15が形成されている場合、当該接合面11a、12aの粗さは、当該接合面11a、12aにおいて排出溝15が形成されていない部分の粗さを意味する。
(第1検証試験)
第1検証試験では、比較例1〜3および実施例1の4つの接合体10を準備した。比較例1〜3および実施例1では、図1から図5に示す接合体10と比べて、排出溝15の有無、および硬化性充填材14の有無が、下記表1に示すように異なっている。
これらの各接合体において、見かけの接触面積(前述したように、見かけの接触部の面積を意味する)に対する真実接触面積(前述したように、真実接触部19の面積を意味する)の割合(以下、「真実接触面積率」という。)を計測した。なお、比較例1〜3および実施例1の4つの接合体における真実接触面積率の理論値を算出すると1.52%となった。
真実接触面積の計測には、各接合体の第1接合面11aの写真を画像処理した結果を用いた。各接合体の第1接合面11aの写真、およびその写真を画像処理した結果をそれぞれ図6から図9に示す。図6は比較例1、図7は比較例2、図8は比較例3、図9は実施例1を示す。図6から図9において、(a)はいずれも写真であり、(b)はいずれも画像処理した結果である。図6から図9において、真実接触部19は、他の部分(隙間部20、非真実接触部)よりも明るく表示されている。
まず、比較例1、2の接合体を比較する。上記表1に示すように、これらの接合体では、排出溝15が無い点で共通している。一方、比較例1は、硬化性充填材14を有していないものの、比較例2は、硬化性充填材14を有している点で異なる。したがって、比較例1、2を比較することで、排出溝15が無い場合における、硬化性充填材14の有無が真実接触面積率に与える影響について確認することができる。
比較例1の接合体における真実接触面積率は、1.12%であり、比較例2の接合体における真実接触面積率は、0.12%であった。これらから、排出溝15が無い場合、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に硬化性充填材14を配置することで、真実接触面積率が約11%程度(=0.12%/1.12%)まで大きく低下することが確認された。
次に、比較例3および実施例1の接合体を比較する。上記表1に示すように、これらの接合体では、排出溝15が有る点で共通している。一方、比較例3は、硬化性充填材14を有していないものの、実施例1は、硬化性充填材14を有している点で異なる。したがって、比較例3、実施例1を比較することで、排出溝15が有る場合における、硬化性充填材14の有無が真実接触面積率に与える影響について確認することができる。
比較例3の接合体における真実接触面積率は、1.19%であり、実施例1の接合体における真実接触面積率は、1.00%であった。これらから、排出溝15が有る場合、第1接合面11aと第2接合面12aとの間に硬化性充填材14を配置しても、真実接触面積率が約84%程度(=1.00%/1.19%)に維持されることが確認された。なお以上では、第1部材11の第1接合面11aの粗さや第2部材12の第2接合面12aの粗さ(第1接合面11aや第2接合面12aにおいて排出溝15が形成されていない部分の粗さ)が6.3sとなっている場合について説明した。しかしながら、本発明は当該接合面11a、12aの粗さが6.3sの場合に限定されるものではないことは言うまでもない。
(第2検証試験)
第2検証試験として、米国航空宇宙規格:NAS 3350/3354に記載された加速振動試験(いわゆるNAS試験)を実施した。第2検証試験では、図10および図11に示すような試験治具30および接合体40を使用した。
試験治具30は、直方体状に形成されている。試験治具30は、その上面視において矩形状に形成されている。試験治具30における長手方向Xの中央部には、この試験治具30を短手方向Yに貫通する長穴31が設けられている。長穴31は、この長穴31を短手方向Yから見た正面視において厚さ方向Zに長い。なお長手方向X、短手方向Y、厚さ方向Zは、互いに直交する3方向である。
接合体40は、長穴31内に厚さ方向Zに移動自在に配置されている。接合体40は、第1部材11としてのバレル41と、第2部材12としてのワッシャー42と、を備える。バレル41は、短手方向Yに延び、長穴31内に挿通されている。バレル41における短手方向Yの端面は、前記第1接合面11aとされている。ワッシャー42は、第1接合面11aに突き当てられている。ワッシャー42において前記第1接合面11aに接触する表面が、前記第2接合面12aとされている。
前記接合体40では、排出溝15が第1接合面11aおよび第2接合面12aの両方に形成されている。また貫通孔18が、バレル41およびワッシャー42の内部によって形成されている。締結部材13は、バレル41およびワッシャー42を挟持している。締結部材13は、長穴31からの接合体40の離脱を規制している。
第2検証試験では、比較例11、12および実施例11〜13の5つの接合体を準備した。比較例11、12および実施例11〜13では、図10から図11に示す接合体と比べて、硬化性充填材14の有無、排出溝15の有無、および溝ピッチpが、下記表2に示すように異なっている。なお、排出溝15の開口幅wは100μm、深さdは50μmである。
比較例11、12および実施例11〜13の5つの接合体を、長穴31内で厚さ方向Zに加振して、ナット17に緩みが生じるまでの加振回数(以下、「耐震回数」という。)を計測した。結果を図12に示す。図12に示す結果から、接合体において溝ピッチpが1500μm以下の排出溝15(実施例11〜13)が形成されていることにより、耐震回数が顕著に向上することが確認された。特に、溝ピッチpが500μm以下の場合(実施例12、13)には、耐震回数が30000回を超えることが確認された。なお以上では、第1部材11の第1接合面11aの粗さや第2部材12の第2接合面12aの粗さ(第1接合面11aや第2接合面12aに排出溝15が形成されている場合、当該接合面11a、12aにおいて排出溝15が形成されていない部分の粗さ)が6.3sとなっている場合について説明した。しかしながら、本発明は当該接合面11a、12aの粗さが6.3sの場合に限定されるものではないことは言うまでもない。
10、40 接合体
11 第1部材
11a 第1接合面
12 第2部材
12a 第2接合面
14 硬化性充填材
15 排出溝
19 真実接触部
20 隙間部

Claims (3)

  1. 第1部材と、
    前記第1部材に接合された第2部材と、
    前記第1、第2部材を締結固定する締結部材とを備えた接合体において、
    前記第1部材は、前記第2部材に接触する第1接合面を有し、
    前記第2部材は、前記第1部材に接触する第2接合面を有し、
    前記締結部材が前記第1部材と前記第2部材とを締結固定することで、前記第1接合面と前記第2接合面との間に真実接触部と隙間部とが生じており、
    前記隙間部には硬化性充填材が充填されており、
    前記第1接合面および前記第2接合面のうちの少なくとも一方に、当該接合面の外周縁に開口する排出溝が形成されていることを特徴とする接合体。
  2. 前記排出溝が、前記第1接合面または前記第2接合面の平面視において格子状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
  3. 第1部材と第2部材とを接合する接合方法において、
    前記第1部材の第1接合面および前記第2部材の第2接合面のうちの少なくとも一方に、硬化前の硬化性充填材を塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程の後、前記硬化性充填材を前記第1接合面と前記第2接合面との間に挟み込む挟み込み工程と、
    前記挟み込み工程の後、締結部材により前記第1、第2部材を締結固定する締結工程と、
    前記締結工程を実施することで、前記第1接合面と前記第2接合面との間に真実接触部および隙間部を生じさせて前記隙間部に前記硬化性充填材を充填しながら、前記第1接合面と前記第2接合面との間から余分な前記硬化性充填材を排出する排出工程と、
    前記締結工程および前記排出工程の後、前記硬化性充填材を硬化させる硬化工程とを備え、
    前記排出工程の際、前記第1接合面および前記第2接合面のうちの少なくとも一方に、当該接合面の外周縁に向けて開口するように形成された排出溝を通して、前記第1接合面と前記第2接合面との間から前記硬化性充填材を排出することを特徴とする接合方法。
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