JP2018178372A - エアロゲルを利用した透光部材 - Google Patents
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Abstract
Description
トリプルガラスや真空ガラスなどの断熱ガラスも用いられるが、ブラインドやルーバーなどの使用は必須である。
建物のファザード(正面部分)にダブルスキン構造を採用することも行われているが、ダブルスキン内部の清掃に手間がかかる。
こうした状況に対して、主として北欧などの寒冷地において、最大長さが0.5〜5mm程度の顆粒状のシリカアエロゲルを2枚の透明板(又は半透明板)の間に挟んだものを外壁パネルとして使用する例が散見されている(非特許文献1)。
また内側のガラス板及び外側のガラス板の間に疎水性エアロゲルの粒状物を出し入れ可能とした二重ガラス装置(特許文献1)や、第1のガラス板と第2のガラス板との間にエアロゲルパウダなどの充填剤を充填した真空絶縁ガラス(特許文献2)も知られている。
またエアロゲルは脆弱で崩れやすいものであるために、製品化された当初では、2枚の透明板の間の空間に顆粒状のシリカエアロゲルを充填させていても、使っているうちにガラス窓に当たる風圧や地震力などの外力により顆粒がつぶれてしまい、当該空間の上部に隙間ができてしまう可能性がある。そうするとますます冷房負荷が増大する。
こうした問題に関して、特許文献1の二重ガラス装置は、粒状物の大きさが明らかではないが、透光性に優れていることを目的の一つに掲げるものであり(段落0006)、これでは夏季の空調負荷の増大を回避できない可能性がある。
特許文献2の真空絶縁ガラスは、高い断熱性を目指すものであり、光を透過することに関して言及していない。日射を通し過ぎると前述の冷房負荷の増大の問題があるが、光を全く透過しないと室内の照明などに余分のエネルギーを必要とする。
また何れの特許文献もエアロゲルの脆弱性の問題に関しては言及していない。
本発明の第2の目的は、断熱性の高いエアロゲルの特性を活用しつつ、不透明性の高い他の材料を活用して可視光透過率を適度に制限した透光材料を提供することである。
本発明の第3の目的は、エアロゲルを利用しており、かつエアロゲルの脆弱性の影響を受けにくい透光部材を提供することである。
第1透光板及び第2透光板と
これら両透光板の間に画成される半透明領域と
を具備し、
前記半透明領域は、前記第1透光板及び第2透光板の間の区間内に少なくともエアロゲルの半透明粒子を充填してなり、
前記半透明粒子の平均粒径が0.05〜0.5mmの範囲である。
この構成により、ある程度の透光性は確保されるとしても、夏季の空調負荷を低減することができる。
後述の表1に示す如く、材料(エアロゲル)の透光性が同程度であっても、平均粒径が小さくなると、透光部材全体としての透光率は低減される。透光率を15%以下にするとグレアを防止できる。
この構成により、ある程度の透光性を確保しつつ、夏季の空調負荷の低減を図ることができる。
「透光」とは、建築物の外壁パネルや柱状体の用途に使用される建材の厚みの範囲で光を透過することをいう。
「透光板」…透明板又は半透明板のどちらでもよい。
「半透明」とは、光は透過するが、透明ではないという程度の意味であり、例えば6mm厚のフロート板ガラス2枚の間に12mm厚のエアロゲル層の可視光透過率が10〜60%となる場合をいう。
なお、本明細書では、平均粒径が0.5mmを超えるものを顆粒状粒子といい、平均半径が0.5mm以下のものを粉状粒子という。
「エアロゲル」としては、シリカエアロゲルの他に例えばキトサンエアロゲルを用いることができる。
前記半透明領域を構成する各半透明粒子の粒径をほぼ一様とすることにより、粒子同士の間に光の通過が可能な空隙が形成されている。
「ほぼ一様」とするのは、半透明領域が均一になるようにするためである。
前記半透明領域は、前述の半透明粒子の間に分散して混合された不透明粒子を含み、
当該半透明粒子及び不透明粒子は安息角が55°以下であって、
半透明粒子の密度Msに対する不透明粒子の密度Moの比(Mo/Ms)が0.2以上で11.0以下である。
これにより、透光部材全体としての透光性を限定することができる。
安息角は、崩れにくさの尺度であり、一般には、一定の高さから粉状体を落下させて、自発的に崩れることなく安定を保つときに粉体の山の斜面と水平面とがなす角度で表される。従って凝集の程度を表す指標となる安息角が大きいと均一に混合しがたく、一様な透明領域が得られにくいため、安息角の好ましい上限値を設定している。
半透明粒子に対する不透明粒子の密度比(Mo/Ms)の上限を設定したのは、この上限を超えると混合不良や分離といった欠陥を生ずるからである。
第1透光板及び第2透光板と
これら両透光板の間に画成される半透明領域と
を具備し、
前記半透明領域は、前記第1透光板及び第2透光板の間の区間内にエアロゲルの半透明粒子を充填させるとともに、半透明粒子の間に分散して混合された不透明粒子を含んでおり、
前記半透明粒子の平均粒径が0.5〜5mmの範囲であり、
当該半透明粒子及び不透明粒子は安息角が55°以下であって、
半透明粒子の密度Msに対する不透明粒子の密度Moの比(Mo/Ms)が0.2以上で11.0以下である。
不透明粒子の見かけ上の粒径Diを、1μm≦Di≦1100μmとしたことを特徴とする。
粒径の範囲の上限の意味は均一な外観を担保することであり、この上限を超えて不透明粒子が大きくなると、透過光の均一性を損ない、或いは透光部材の体裁が悪くなる可能性があるからである。
また粒径の範囲の下限の意味は取り扱いの容易性を担保することである。すなわち、
「見かけ上の粒径」とは実測して得られる粒径という程度の意味である。
前記第1透光板及び第2透光板の間に、これら両板に直交する向きの仕切り板を設けた。
なお、仕切り板は、垂直となるように配置してもよい。
第2の手段に係る発明によれば、空隙を介して入射光が乱反射して透過することが可能としたことにより、或る程度の透光量を確保できる。
第3の手段の発明によれば、平均粒径が0.05〜0.5mmである半透明粒子の間に不透明粒子を混合分散させたから、前述の半透明粒子の粒径を小径化することによる透光性の抑制に加えて、不透明粒子の遮光性により、透光部材全体の透光性を効果的に抑制することができる。
第4の手段の発明によれば、平均粒径が0.5〜5mmである半透明粒子の間に不透明粒子を混合分散させたから、不透明粒子の遮光性により、透光部材全体の透光性を確実に抑制することができる。
また第3の手段及び第4の手段によれば、半透明粒子及び不透明粒子の安息角を55°以下とし、粒子の凝集の程度を制限したから、当該凝集力により半透明粒子及び不透明粒子が分離する傾向を抑制することができ、
半透明粒子の密度Msに対する不透明粒子の密度Moの比を0.2≦(Mo/Ms)≦11.0としたから、密度差により半透明粒子及び不透明粒子が分離する傾向を抑制することができる。
第5の手段に係る発明によれば、不透明粒子の見かけ上の粒径Diを、1μm≦Di≦1100μmとしたから、透光性が不均一になることを回避することができる。
第6の手段に係る発明によれば、第1透光板及び第2透光板の間に、これら両板に両端を当接する仕切り板を設けたから、半透明粒子が崩れて沈降してしまうことを防止できる。
透光パネル1Aは、当該パネルの少なくとも各端部を封止する閉塞具5を含む。閉塞具5の構成としては、好適な一実施例として、従来の複層ガラスと同様の構造を採用することができ、透明パネルの四辺において、第1透光板2A及び第2透光板2Bの対応する端部同士を閉塞するループ状の形状のものとすることができる。前記閉塞具5は、一次封着材5cで形成する内層と二次封着材5aで形成する外層の2構造とすることができ、その内層の巾方向中間部にスペーサ5bを設けてもよい。一次封着材5cはブチル系シーリング材などで、二次封着材5aはシリコーン系シーリング材などで形成することができる。これらの構造は適宜変更することができ、例えばスペーサを省略してもよく、単一のシーリング材で形成しても構わない。
さらに外力(地震、風)で第1透光板2A及び第2透光板2Bにたわみが生じて、半透明粒子4の充填部の圧力が容易に高まり、その圧力が半透明粒子4を破壊することで、半透明粒子4の沈降が生ずる場合がある。これを防止するために、図1に示す透光パネルを垂直に、または壁部に使用する場合、上辺の水平部にある閉塞具5に部分的な開口(孔など)を設けることで、圧力の上昇を防止して、沈降を抑制できる。なお、半透明粒子4は、耐久性に優れるため、閉塞具5の一部に開口があっても長期の熱物性と光物性とを低下させることは無い。さらに、部分的な開口を小さくすることで、その開口から半透明粒子へ流入する湿分を少なくできる。したがって閉塞具5に設けた開口から流入する湿分が半透明粒子内にとどまり、カビや藻類などが生成して美観を欠く懸念はない。
第1透光板2A及び第2透光板2Bの間に半透明領域3が設けられている。
半透明領域3は、シリカエアロゲルの半透明粒子4を充填することで形成される。なお、シリカエアロゲルに代えてキトサンのエアロゲルを用いることもできる。キトサンは微細なキトサン繊維が三次元的に絡み合った構造を有し、シリカエアロゲルに近い透光性・断熱性を有し、またシリカエアロゲルにない柔軟性を有する。
半透明粒子4同士の間には空隙gが存在する。前記半透明粒子4は、平均粒径が0.05〜0.5mmである粉状体である。平均粒径をこのように設定した理由は次の通りである。次の表1は、エアロゲルの粒子の集合体の可視光透過率と粒径との関係を示している。12mm厚のエアロゲル粒子層をフロート板ガラス(6mm厚)ではさみこんだ場合の可視光透過率である。粒径が小さいほど可視光透過率が低くなる傾向が見受けられる。エアロゲル粒子の平均粒径を前記の如く設定することにより、断熱性に優れるなどのエアロゲルの特性を残したままで、可視光透過率を制限することができる。
(1)半透明粒子の安息角が55°以下であること。
半透明粒子4を2枚の透明板の間に落下させ、充填する際に不透明粒子が閉塞しないようにするためである。安息角が大きいと、不透明粒子が凝集したり、透明板にはりついて閉塞する。
(2)熱伝導率が45mW/mK以下であること。
この条件を満たすことにより熱伝導性を良好なものとすることができる。
図3は、本発明の第1実施形態の透光パネルに関して熱貫流率と日射熱取得率との関係を示している。半透明層の厚みを一定とし、断熱性が一定であるという条件の下で、日射熱取得率を変化させることができることをこのグラフから読み取ることができる。換言すれば、低い日射熱取得率を選定することが可能である。
図4は、本発明の透光部材1に使用されるエアロゲル粒子の好ましい平均粒径及び標準偏差を示している。もっとも好ましいのは平均粒径が0.3mmであり、かつ標準偏差が0.14mmであることである。
粉状のエアロゲル半透明粒子4に対する不透明粒子6の混合率は、60vol%以下であることが望ましく、好ましくは10vol%以下とし、さらに好ましくは5vol%以下とする。
(3)不透明粒子6の安息角が55°以下であること。
半透明粒子4及び不透明粒子6の混合物を2枚の透明板の間に落下させ、充填する際に不透明粒子が閉塞してしないようにするためである。
(4)半透明粒子4の密度Msに対する不透明粒子6の密度Moの比(Mo/Ms)が0.2〜11.0、より好ましくは0.4〜5.0、さらに好ましくは0.4〜2.0であること。
この数値範囲の上限値の意味は、両粒子の分離を制限することであり、下限値の意味は両粒子の分離を制限するとともに均一に混合できるようにすることである。すなわち、両者の密度比が大きすぎると、両粒子を2枚の透明板の間に充填する際や運搬中の振動などにより、密度の大きい不透明粒子が下に沈み易い傾向を生じ、その結果として混合不良や分離といった欠陥を生ずるおそれがあるからである。
(5)不透明粒子の見かけ上の粒径Diが1μm〜1100μmであること。
不透明粒子の見かけ上の粒径が1100μmを超えると、利用者が透光パネルを見たときに個々の不透明粒子が視認され、外観の均一性を損なう可能性があるからであり、不透明粒子の見かけ上の粒径が1μm未満となると、半透明粒子と均一に混合させることが難しくなるからである。
また、本実施形態のように粉状の半透明粒子(見かけ上の粒径が50〜500μm)に対して不透明粒子の見かけ上の粒径が1100μmを超えると、両粒子の重量の違いが大きくなり、分離を生じ易くなるという問題もある。また粒径が小さ過ぎる(1μm未満である)場合には混合作業を行うとき或いは混合物の充填する作業を行うときに粉塵を生じて作業性を欠くという問題もある。
エアロゲル半透明粒子4の見かけ上の粒径Dsに対する不透明粒子6の見かけ上の粒径Diの比が0.1≦(Di/Ds)<3.0、より好ましくは0.1≦(Di/Ds)≦1.0であることが望ましい。
この粒径が0.5〜5mmの半透明粒子4を用いた場合には、粒径が0.05〜0.5mmの場合と比較して、半透明粒子が沈降しにくいという特性を有する。
なお、不透明粒子6の構成に関して第1実施形態で記載したことは、半透明粒子との粒径比を除いて本実施形態に援用する。
図7は、通し番号(1)〜(2)で示す半透明エアロゲル粒子に対して様々な条件で通し番号(3)〜(19)で示す不透明粒子を混合し、混合後の様子を視覚により視認した結果を表す。
(a)実験に使用した不透明粒子は、見かけ上の最大粒径が15μmであるエアロゲル微粒子{通し番号(3)}、中空シリカ{通し番号(4)}、シリカフューム{通し番号(5)}、フライアッシュ{通し番号(6)}、沈殿シリカ{通し番号(7)}、アルミナ{通し番号(8)}、燃焼シリカ{通し番号(9)〜(10)}、大径ガラスビーズ{通し番号(11)〜(12)}、小径ガラスビーズ{通し番号(13)〜(14)}、中径ガラスビーズ{通し番号(15)〜(16)}、大径発泡スチロール{通し番号(17)}、小径発泡スチロール{通し番号(18)}である。なお、それぞれの大きさのガラスビーズは、はっ水・親水状態の表面をもつ。
通し番号(1)の半透明粒子は見かけ上の最大粒径が1930μm・最小粒径が503μmで安息角が28°である顆粒タイプの半透明エアロゲル粒子(第3実施形態に相当する)、通し番号(2)の半透明粒子は、見かけ上の最大粒径が753μm・最小粒径が136μmで安息角が39°である粉体タイプの半透明エアロゲル粒子(第2実施形態に相当する)である。
(b)なお、見かけ上の最大粒径及び最小粒径は、マイクロスコープで0.5mm角〜2mm角の複数の視野画像の範囲の粒径を測定して得た。また図7中、Aopagueは不透明粒子のとりうる見かけの粒径の最小値、Agelは半透明粒子のとりうる見かけの粒径の最小値、Bopagueは不透明粒子のとりうる見かけの粒径の最大値、Bgelは半透明粒子のとりうる見かけの粒径の最大値である。そしてAopague/Agel(=C)、Aopague/Bgel(=D)、Bopague/Agel(=E)、Bopague/Bgel(=F)をそれぞれ計算して、これらC、D、E、Fの数値のうちで最大の値をエアロゲルに対する粒径比として採用した。
安息角はJIS規格に準拠して(すなわちφ60mmの円盤から40mmの位置にあるφ4mmの排出口から試料を落下させて円板上に円錐状に体積させたときの円盤面と斜面とのなす角度として3回測定して)得た。
エアロゲルに対する粒径比は、見かけの粒子径の取り得る範囲の最大値を示す。
混合の様子を観察するに際しては、間隙長さを12mmとする2枚の6mmフロート板ガラスを平行に向かい合わせた容器を用いた。500ccのカップにエアロゲルと不透明粒子を計量後に投入して左右に振って混合させた後に、前記容器内へ自由落下させて12mmの混合層を形成し、観察した。
(c)観察した結果、図7に示す次の5つのケースで均一な混合状態が見られた。
・単体での安息角が29°である通し番号(3)の不透明粒子(5vol%)と通し番号(2)のエアロゲル半透明粒子(95vol%)との混合物。
・単体での安息角が35°である通し番号(4)の不透明粒子(30vol%)と通し番号(1)のエアロゲル半透明粒子(70vol%)との混合物。
・単体での安息角が28°である通し番号(6)の不透明粒子(30vol%)と通し番号(1)のエアロゲル半透明粒子(70vol%)との混合物。
・単体での安息角が46°である通し番号(7)の不透明粒子(30vol%)と通し番号(1)のエアロゲル半透明粒子(70vol%)との混合物。
・単体での安息角が51°である通し番号(8)の不透明粒子(30vol%)と通し番号(1)のエアロゲル半透明粒子(70vol%)との混合物。
(d)これらのケースに対して、通し番号(9)〜(10)の燃焼シリカ、通し番号(13)の表面がはっ水状態の小径ガラスビーズ及び通し番号(14)の表面が親水状態の小径ガラスビーズ、通し番号(15) の表面がはっ水状態の中径ガラスビーズ及び通し番号(16) の表面が親水状態の中径ガラスビーズでは、混合後の様子が不均一である。これらの事例では、不透明粒子の最小粒径が19〜48μmであって半透明粒子の最小粒径503μmに比べてかなり小さく、そして半透明粒子に対する不透明粒子の密度比が16.92〜38.46であって段落0031で推奨した密度比の上限(11.0)を超えている。要するに、不透明粒子が小さくかつ比重が大きいわけであるから、不透明領域の下側に不透明粒子の中で粒が大きいものが集まって均一性が損なわれるものと解釈される。さらに、不透明粒子ははっ水・親水状態は、混合状態に大きく影響しない。
(e)通し番号(5)のシリカフュームでも、混合後の様子がやや不均一である。均一な混合状態が観察された前述の5つのケースのうちでエアロゲルに対する粒径比が特に大きい通し番号(6)及び(7)を除いて、通し番号(5)と通し番号(3)〜(4)及び(8)とを比較すると、通し番号(5)での半透明粒子に対する粒径比(0. 30)は、通し番号(3)〜(4)及び(8)での半透明粒子に対する粒径比(0.11、0.12、0.16)よりも大きい。通し番号(5)での半透明粒子に対する密度比(6.46)は、段落0031で2番目に奨励した密度比の上限値(5.0)を超えているために、この程度の粒径比であっても混合状態が不均一となっているものと解釈される。
(f)通し番号(11) の表面がはっ水状態の大径ガラスビーズ及び通し番号(12) の表面が親水状態の大径ガラスビーズでは、斑点状の模様が見えて体裁を損なっている。
これらのケースでは、半透明粒子の見かけ上の最小粒径が503μmで最大粒径が1930μmであるのに対して不透明粒子の最小粒径が991μmで最大粒径が1397μmである。両粒子の粒径が同程度であるので、混合状態としては均一である。しかしながら、不透明粒子の見かけ上の平均粒径は前述の好適な粒径の上限値(1100μm)を超えているものと推測され、個々の不透明粒子を利用者が視認できてしまう。混合状態としては均一であっても外観上の均一性は損なわれている。さらに、不透明粒子ははっ水・親水状態は、混合状態に大きく影響しない。
(g)通し番号(17)〜(18)の発泡スチロールでも混合状態の不均一が観測された。これらは、安息角が53°、58°であり、推奨される安息角(55°)に近い数値或いはこれを超える数値であって、凝集しやすい状態であるとともに、半透明粒子に対する密度比が0.31であり、他の不透明粒子に比べて密度が低い。要するに、不透明粒子は凝集しやすくかつ低密度であるから、不透明領域の上側に集まる傾向を生じ、混合状態の均一性を損なうものと推測される。
図8は、半透明粒子と不透明粒子とを混合させてなる透光パネルに関して熱貫流率と可視光透過率との関係を示している。横軸の熱貫流率が低いほど断熱性が良く、縦軸の可視光透過率が低いほど光を通さない。
実験において、6mm厚さの2枚の平行なフロート板ガラスの間に所定厚の透光層(粒子充填層)を形成したサンプル容器を使用した。
図8(A)は、平均粒子径0.4mmの粉状の半透明粒子を用いた試験のデータを表す。
△で表されるデータ群は、透光層の厚さを24mmとし、半透明粒子としてエアロゲル粒子を、不透明粒子として中空シリカ粒子を用いた例であり、半透明粒子に対する不透明粒子の混合の割合は、(a)で0vol%、(b)で5vol%、(c)で10vol%、(d)で20vol%ある。
○で表されるデータ群は、透光層の厚さを16mmとし、半透明粒子としてエアロゲル粒子を、不透明粒子として不透明エアロゲル粒子を用いた例であり、半透明粒子に対する不透明粒子の混合の割合は、(e)で0vol%、(f)で5vol%、(g)で10vol%ある。
図8(B)は、平均粒子径3mmの顆粒状の半透明粒子を用いた試験のデータを表す。
×で表されるデータ群は、透光層の厚さを12mmとし、半透明粒子としてエアロゲル粒子を、不透明粒子として中空シリカ粒子を用いた例であり、半透明粒子に対する不透明粒子の混合の割合は、(a)で0vol%、(b)で0.4vol%、(c)で0.8vol%、(d)で1.3vol%ある。
◇で表されるデータ群は、透光層の厚さを24mmとし、半透明粒子としてエアロゲル粒子を、不透明粒子として中空シリカ粒子を用いた例であり、半透明粒子に対する不透明粒子の混合の割合は、(e)で0vol%、(f)で1vol%、(g)で5vol%ある。
□で表されるデータ群は、透光層の厚さを16mmとし、半透明粒子としてエアロゲル粒子を、不透明粒子として中空シリカ粒子を用いた例であり、半透明粒子に対する不透明粒子の混合の割合は、(h)で0vol%、(i)で1vol%、(j)で5vol%、(k)で10vol%、(l)で20vol%、(m)で30vol%、(n)で40vol%である。
これらのデータから、中空シリカ粒子又は不透明エアロゲル粒子を、半透明エアロゲル粒子に混合することで、断熱性を一定の範囲を保ちながら、光の透過を抑制できることが分かる。さらに粒径が小さいほど、又は厚みが増すほど、或いは不透明粒子の混合量を増すほどに光の透過を抑制できるという傾向が読み取れる。
図9は、不透明粒子(エアロゲル粒子)単独および半透明粒子(エアロゲル顆粒又はエアロゲル粒子)単独を充填した容器に衝撃を加えて沈降量を調べる実験をいくつかの条件の下で観測した試験の結果を表している。半透明粒子及び不透明粒子の混合物に関しても衝撃が加わるため、本試験に表れる沈降現象の傾向は前記混合物の沈降にもあてはまると考えられる。
試験装置としては、独立発泡ポリエチレン樹脂製の枠体を介して、300角・6mm厚の2枚のフロート板ガラスを向かい合わせ、その3辺をシリコーン系シーリング材(シーリング深さ12mm)で接着して固定させてなる試験容器を使用した。この容器に対して、エアロゲルである不透明粒子を試験容器の内部(縦252mm×横252m×厚さ12mm)へ自由落下させて充填し、残りの一辺をシーリング材で接着してエアロゲル充填層を密閉空間とし、三日間室内で静置して、サンプルとした。
試験方法としては、次の手法により初期衝撃及び後の衝撃を加えた。
{初期衝撃}
それらのサンプルを水平面(机面)上に横置きして、サンプルの中央部に円柱状の重錘(φ150mm、高さ40mm、5kg)を高さ1cmから落下させ、衝撃を加えた。この衝撃を50回繰返した後に、サンプルを鉛直に水平面上に立てて、サンプルから約50cm程度離れた位置の水平面に同様に重錘を50回繰り返して衝撃を与えた。いずれの衝撃も速やかに与えた。
{後の衝撃}
サンプルを水平面において、サンプル中央部にサンプルの中央部に円柱状の重錘(φ150mm、高さ40mm、5kg)を高さ1cmから落下させて。これを速やかに50回繰り返した。
{測定}
サンプルに初期衝撃及び後の衝撃を与えて、1日、15日、35日静置した後に、エアロゲルの沈降量を測定したところ、図9に示す結果が得られた。これによりエアロゲルのサイズが大きい方が沈降しにくいということが分かった。
これにより、斜め上方から日射が入射したときに全反射し、冷房負荷を低減できる。好適な一例として第1透光板をガラス板とし、全反射層を絶対屈折率1.49のアクリル板とすると、入射角80.6°を超える太陽光を全反射することができる。
なお、図示例では、半透明領域3に不透明粒子6を混合しているが、不透明粒子を省略することもできる。
図示例では、第2透光板2Bの表面との間に空間Vを存して第2透光板2Bと平行に透明な支持板20を設け、この支持板12の内面にLow−E層10を形成している。図示のLow−E層10は、支持体20表面にスパッタリングやコーティングなどの方法で形成されている。
第1透光板2A及び第2透光板2Bと支持板20とは、それらの周囲に取り付ける枠部材で連結させることができる。また、閉塞具5を介して1枚のパネルとしても利用できる。
前記のようにLow−E層10を設けたから、再放射を効果的に抑制できる。
図12は、本実施形態の変形例であり、第1透光板2Aと第2透光2Bと支持板20とを一体化して一枚のパネルとしたものである。第1透光板2A及び第2透光2Bの端部同士の間、及び、第2透光2Bと支持板20との端部同士の間は、それぞれ閉塞具5で封止している。図示例の閉塞具5は、単層のシール材料で形成しているが、第1実施形態と同じ構成としても構わない。
このような構造とした理由は次の通りである。メンテナンスや防火上の観点からは、前記第1透光板2A及び第2透光板2Bはガラス板とすることが望ましい。しかしながら、2枚のガラス板でエアロゲル層を挟み込むと、外力でエアロゲル層が部分的に破壊されて、エアロゲル層の沈降を生じる。例えば風などによるガラスの変形にともないエアロゲル層の沈降が懸念される。これにより、透光部材1の上端側に空隙が生じ、日射が減衰されずに室内側へ入射される可能性もある。こうした不都合を回避するために前述の仕切り板26を設けているのである。
前記保持体20は、垂直な2枚の保持板22の間に水平な複数の仕切り板26を等間隔に架設してなり、これら保持板22の上下両端を端板24で閉塞してなる。前記仕切り板26は、100mm以内の間隔で設けることが望ましい。保持板22の間には、前記複数の仕切り板26と交差する垂直な補助板28を形成してもよい。これらの構造は例えば合成樹脂により一体的に成形することができる。
なお、本実施形態の構成を、前記各実施形態の構成と組み合わせても構わない。図示例では、第1透光板2Aの内側には、全反射層8(例えばアクリル板など)が第1透光板の内面に当接させた状態で配置している。保持体20は、第1透光板2A及び第2透光板2Bの間に挿入されていればたり、全反射層8や第2透光板2Bと当接していなくてもよい。図示はしないが、第2透光板2Bの内方に前述のLow−E層10を設けてもよい。
例えば絶対屈折率が1.51であるガラスとエアロゲルを充填した保持体20との間に全反射層であるアクリル板(絶対屈折率1.49)を挟むことでアクリル板を容易に固定できる。
前記保持体20にエアロゲルを充填させる場合には、保持体20の適所に予め設けた開口部(図示せず)を介して、所定の平均粒径のエアロゲル半透明粒子(第2実施形態の構成と組み合わせる場合には半透明粒子及び不透明粒子の混合体)を上方から落下させて充填させる。しかるのちに当該開口部をシールして密閉すればよい。
同図(A)は、断面四角形状の透光柱1Bであり、第1透光板2Aと第2透光板2Bと第3透光板2Cと第4透光板2Dとを有する。半透明領域3は互いに平行である第1透光板2A及び第2透光板2Bの間に、すなわち4枚の透明板で囲まれた空間内に形成されている。
同図(B)は、断面三角形状の透光柱1Cであり、第1透光板2Aと第2透光板2Bと第3透光板2Cとを有し、相互に隣り合う第1透光板2A及び第2透光板2Bの間、すなわち3枚の透明板で囲まれた空間内に形成されている。
図示例の半透明領域3は、第2実施形態のそれと同様に半透明粒子4及び不透明粒子6で形成されているが、不透明粒子6を省略することができる。
2A…第1透光板 2B…第2透光板 3…半透明領域
4…半透明粒子 5…閉塞具 6…不透明粒子 8…全反射層
10…Low−E層 12…支持板 14…枠部材
20…保持体 22…保持板 24…端板 26…仕切り板 28…補助板
g…空隙 V…空間
Claims (6)
- 第1透光板及び第2透光板と
これら両透光板の間に画成される半透明領域と
を具備し、
前記半透明領域は、前記第1透光板及び第2透光板の間の区間内に少なくともエアロゲルの半透明粒子を充填してなり、
前記半透明粒子の平均粒径が0.05〜0.5mmの範囲であることを特徴とする、エアロゲルを利用した透光部材。 - 前記半透明領域を構成する各半透明粒子の粒径をほぼ一様とすることにより、粒子同士の間に光の通過が可能な空隙が形成されたことを特徴とする、請求項1記載のエアロゲルを利用した透光部材。
- 前記半透明領域は、前述の半透明粒子の間に分散して混合された不透明粒子を含み、
当該半透明粒子及び不透明粒子は安息角が55°以下であって、
半透明粒子の密度Msに対する不透明粒子の密度Moの比(Mo/Ms)が0.1以上で11.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載のエアロゲルを利用した透光部材。 - 第1透光板及び第2透光板と
これら両透光板の間に画成される半透明領域と
を具備し、
前記半透明領域は、前記第1透光板及び第2透光板の間の区間内にエアロゲルの半透明粒子を充填させるとともに、半透明粒子の間に分散して混合された不透明粒子を含んでおり、
前記半透明粒子の平均粒径が0.5〜5mmの範囲であり、
当該半透明粒子及び不透明粒子は安息角が55°以下であって、
半透明粒子の密度Msに対する不透明粒子の密度Moの比(Mo/Ms)が0.1以上で11.0以下であることを特徴とする、エアロゲルを利用した透光部材。 - 不透明粒子の見かけ上の粒径Diを、1μm≦Di≦1100μmとしたことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の、エアロゲルを利用した透明部材。
- 前記第1透光板及び第2透光板の間に、これら両板に直交する向きの仕切り板を設けたことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載のエアロゲルを利用した透光部材。
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