JP2018174667A - デマンド制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】デマンド値の予測をより正確に行うことにより、電力供給制御をより好適に行うことができるデマンド制御システムを提供すること。【解決手段】デマンド制御システム10が有するデマンド制御装置15において、コントローラ21は、電力量計23より消費電力量データを取得し、その消費電力量データを用いてデマンド値を予測する。また、コントローラ21は、所定時刻ごとに取得した前記消費電力量データをサンプル値とし、そのサンプル値を用いて複数の算出方法でそれぞれ算出した各予測デマンド値の中から基準デマンド値に最も近い一つの値を、目標デマンド値との比較対象予測デマンド値として選択する。さらに、サンプル値が次に取得されるまでの間、その比較対象予測デマンド値として選択された予測デマンド値を算出する算出方法を用いて予測デマンド値を算出する。【選択図】 図1

Description

本発明は、デマンド制御システムに関する。
一般に、高圧電力の受電者が電力会社と電力使用について契約する場合、電気料金の基本料金は、デマンド値(需用電力)に基づいて設定される。デマンド値とは、単位時限(一般には30分)あたりの平均消費電力であり、単位時限の開始時点からの消費電力量を積算し、単位時限の終了時点における積算電力量を単位時限で除することにより算出される。計量期間(一般には1か月間)において最大となるデマンド値(最大デマンド値)が、当該計量期間における基本料金算定の基礎となる。そして、最大デマンド値が電力会社との契約値を超えた場合、受電者は契約違反となり、その後1年間の基本料金は、契約値を超過した最大デマンド値を基礎とするペナルティが課せられる。
このようなペナルティを回避すべく、単位時限の終了時点におけるデマンド値を予測し、その予測デマンド値を用いて電力供給を制御する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載のデマンドコントロール装置では、単位時限の終了時点におけるデマンド値の目標値を設定し、予測デマンド値がその目標デマンド値を超えた場合に電力供給を遮断し、デマンド値が目標デマンド値を超えないように電力供給を制御している。
特公昭63−26614号公報
ところで、上記特許文献1のデマンドコントロール装置では、予測デマンド値を、電力系統から電力負荷に供給される消費電力量の直近の変化量(増加量)に基づいて算出している。このような算出方法のみで予測デマンド値を算出した場合、消費電力量が急激な変動をすると、その変動が初期の変動である場合や一時的なものであっても、予測デマンド値が目標デマンド値を大きく超えてしまい、不必要に電力供給制御が行われてしまうこととなる。特に、電力供給制御として電力供給を遮断する場合、電力負荷が生産工場設備であるとすると、電力供給の遮断によって大幅な生産遅延やその後の立ち上げロス等が発生してしまうという問題が生じていた。
そこで、本発明は、デマンド値の予測をより正確に行うことにより、電力供給制御をより好適に行うことができるデマンド制御システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、第1の発明では、一つ又は複数の電力負荷と、全ての前記電力負荷が消費する消費電力量を逐次取得する消費電力量取得手段と、前記消費電力量取得手段により取得した消費電力量を用いて、単位時限あたりの平均消費電力であるデマンド値を予測した予測デマンド値を算出し、前記予測デマンド値が、予め設定された目標デマンド値を超えないように、前記電力負荷への供給電力を制御する電力供給制御手段と、を備えたデマンド制御システムであって、所定時間ごとに取得する前記消費電力量をサンプル値とし、前記サンプル値を用いて複数の算出方法により予測デマンド値をそれぞれ算出するとともに、前記サンプル値を取得した時点における消費電力量を単位時限開始時点からの経過時間に基づいて単位時限終了時点の消費電力量に換算し、その換算した値からデマンド値を算出して基準デマンド値とし、前記各予測デマンド値のうち前記基準デマンド値との差が最小となるものを、前記目標デマンド値との比較対象予測デマンド値として選択する予測デマンド値選択手段を有し、前記電力供給制御手段は、前記サンプル値が次に取得されるまでの間に取得した前記消費電力量に基づく前記比較対象予測デマンド値として、前記予測デマンド値選択手段により選択された前記比較対象予測デマンド値を算出する算出方法により算出した予測デマンド値を採用することを特徴とする。
第2の発明では、第1の発明において、前記消費電力量取得手段によって前記消費電力量を取得するごとに、今回取得した前記消費電力量と、それより前に取得した前記消費電力量とを用いて消費電力量の移動平均値を算出する平均値算出手段を備え、前記複数の算出方法として、前記消費電力量取得手段によって取得した前記消費電力量に基づいて消費電力量の変化量を求め、その変化量に基づいて予測デマンド値を算出する第1算出方法と、前記移動平均値の変化量を求め、その変化量に基づいて予測デマンド値を算出する第2算出方法とが含まれていることを特徴とする。
第3の発明では、第2の発明において、前記第2算出方法は、前記移動平均値として、移動平均をとる時間が異なる複数の算出方法を有することを特徴とする。
第4の発明では、第1乃至第3の発明のいずれか一つにおいて、前記電力供給制御手段は、前記予測デマンド値が前記目標デマンド値を超えた場合に、その超過分だけ電力系統から前記電力負荷に供給される電力供給を減少させる制御を行うことを特徴とする。
第1の発明によれば、所定時間ごとに取得される消費電力量をサンプル値とし、そのサンプル値を用いて複数の算出方法により予測デマンド値をそれぞれ算出する。それら各予測デマンド値を基準デマンド値と比較し、その差が最小となるものをサンプル取得時点における比較対象予測デマンド値として選択する。そして、サンプル値が次に取得されるまでの間、今回選択した比較対象予測デマンド値を算出する算出方法に基づいて算出した予測デマンド値を、比較対象予測デマンド値として採用している。
ここで、基準デマンド値は、消費電力量の実測値に基づいて算出され、消費電力量が急激な変動をしても、その変化の傾きによる影響を受けにくい。このような基準デマンド値に最も近い値の予測デマンド値を比較対象予測デマンド値として選択している。これにより、デマンド値の予測をより正確に行うことができ、電力供給制御をより好適に行うことができる。
第2の発明によれば、予測デマンド値を算出する複数の算出方法として、取得した消費電力量それ自体を用いる第1算出方法だけでなく、過去に取得した消費電力量を用いて算出した消費電力量の移動平均値を用いる第2算出方法も含んでいる。移動平均値を用いた第2算出方法を算出方法の一つとして採用することにより、過去に取得した消費電力量の変化が平準化され、消費電力量の急激な変化や一時的な変化による影響を低減させた数値が用いられて、予測デマンド値が算出される。これにより、より正確な予測デマンド値を算出できる。
第3の発明によれば、移動平均値として、移動平均をとる時間が異なる複数の算出方法、例えば、過去10分の移動平均値を用いた算出方法と、過去1時間の移動平均値を用いた算出方法とが採用される。移動平均をとる時間が長いと平準化の程度が高まる一方で直近の消費電力量の変化を捉えにくくなり、逆に、移動平均をとる時間が短いと直近の消費電力量の変化を捉えやすくなる一方、平準化の程度が低くなり急な変化の影響を受けやすくなる。そこで、移動平均をとる時間を異ならせることで、例えば、比較的短い時間とした場合と、比較的長い時間とした場合との両者を用いて予測デマンド値を算出することができ、予測デマンド値を算出する算出方法の選択肢を増やして、より正確なデマンド値の予測をすることができる。
第4の発明によれば、予測デマンド値が目標デマンド値を超えた場合に、その超過分だけ電力系統から電力負荷に供給される電力を減少させるようにしたため、不必要な電力制限が行わることが抑制され、電力低減が必要な分だけ電力供給を低減できる。これにより、効率的な電力供給の制限を行い、生産遅延や電力供給を低下させた後の立ち上げロス等が発生を低減させることができる。
デマンド制御システムのシステム構成を示すブロック図。 デマンド制御処理を示すフローチャート。 予測デマンド値選択処理を示すフローチャート。 平均値算出手法を示す一例であり、(a)は過去10分間に取得した平均値算出を、(b)は過去1時間に取得した平均値算出を示している。 単位時限開始からの消費電力積算量の推移と、通常算出方法による第1予測消費電力積算量の算出手法を示すグラフ。 予測デマンド値の選択手法を示す通常取得値のデータ表の一例。
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、特別高圧を使用する工場設備に適用されるデマンド制御システムを一例として説明する。なお、デマンド値とは、背景技術の欄において説明したとおり、単位時限T(一般には30分)あたりの平均消費電力である。
はじめに、本実施形態のデマンド制御システムのシステム構成を説明する。図1に示すように、デマンド制御システム10は、特高受変電装置11、高圧受変電装置12、電力負荷13、電力供給制御装置14及びデマンド制御装置15を備えている。
特高受変電装置11は、電力系統Aから供給される特別高圧電力を受電するとともに、変圧装置や配電装置を有し、受電した特別高圧電力を高圧電力のレベルまで変圧し、高圧受変電装置12及び電力供給制御装置14を介して電力負荷13に送電する装置である。高圧受変電装置12は電力負荷13に接続され、特高受変電装置11から送電された高圧電力を受電する装置である。高圧受変電装置12は、変圧装置や配電装置を有し、受電した高圧電力を電力負荷13に応じた電力レベルまで変圧し、当該電力負荷13に電力供給制御装置14を介して送電する。
電力負荷13は、例えば、鋳造工場に設置される電気炉をはじめとする各種工場設備、空調設備等である。デマンド制御システム10を構成する電力負荷13の数は、一つではなく複数又は多数設置される場合もある。仮に複数又は多数の電力負荷13が設置される場合、高圧受変電装置12は電力負荷13ごとに設けられ、各電力負荷13に応じた電力レベルまで変圧して当該電力負荷13に送電する。
電力供給制御装置14は、電力負荷13に供給される供給電力を制御する装置である。この電力供給制御装置14も、複数又は多数の電力負荷13が設置された場合には、電力負荷13ごとに設けられる。電力供給制御装置14はインバータ装置を内蔵し、供給電力の数値を任意に変更できる。例えば、電力系統Aから供給される電力が過大となり、そのままの電力が供給され続けると、デマンド値が目標デマンド値を上回り、契約違反となる状況が予測される。この場合、電力供給制御装置14は、デマンド制御装置15から出力される制御信号により、電力系統Aから電力負荷13に供給される供給電力を低下させる。また、いったん供給電力を低下させた後に、デマンド値が契約値を下回ると予測される状態となれば、デマンド制御装置15から出力される制御信号により、電力供給制御装置14は、電力供給の制限を解除し、電力供給を回復させる。
デマンド制御装置15は、デマンド制御システム10の中心的役割を担う装置であり、コントローラ21、記憶部22、電力量計23、入力操作部24、表示部25及び信号出力部26を備えている。
コントローラ21は、デマンド制御装置15によるデマンド制御を司るもので、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。コントローラ21はタイマを内蔵しており、タイマによって時刻情報を取得することが可能となっている。
記憶部22はコントローラ21に接続され、コントローラ21によって実行されるデマンド制御の制御プログラムが記憶されている。また、記憶部22は、制御プログラムの実行に伴う各種データを逐次記憶するようになっている。なお、コントローラ21によって実行される制御プログラムの内容は後述する。
電力量計23は、電力系統Aから特高受変電装置11に供給され、電力負荷13が消費する消費電力の消費電力量を計測する。複数の電力負荷13が設置された場合には、電力量計23が取得するのは、全ての電力負荷13の消費電力量を合計した総電力量となる。電力量計23はコントローラ21に接続され、電力量計23によって計測された消費電力量の計測データがコントローラ21に逐次入力される。
入力操作部24は操作子(例えばボタン、スイッチ、キーボード等)を備え、操作内容ごとに割り当てられた操作子を操作することにより、コントローラ21に対する各種入力処理が可能となっている。受電者(システム利用者)は、入力操作部24を用いて目標デマンド値の設定等の各種入力操作を行う。なお、後述する表示部25がタッチパネルであれば、操作子を表示部25に表示させるようにしてもよい。
表示部25は、CRT、LCD等のディスプレイよりなり、コントローラ21に接続されている。表示部25には、すべての電力負荷13によって使用されている総電力値や消費電力値、電力負荷13ごとで使用されている消費電力値、予測デマンド値、設定された目標デマンド値等、デマンド制御に伴う各種情報がコントローラ21の指示によって表示される。また、予測デマンド値が目標デマンド値を超過した場合の警告表示も、コントローラ21の指示によってなされる。受電者はこの表示部25に表示された情報をもとに、各種情報を取得することができる。
信号出力部26はコントローラ21に接続されるとともに、各電力負荷13にそれぞれ設けられた電力供給制御装置14に接続されている。信号出力部26は、予測デマンド値が目標デマンド値を超過した場合に、電力調整を行うためにコントローラ21から出力される制御信号を各電力供給制御装置14に送信する。
次に、コントローラ21によって実行される制御プログラムの内容、つまりデマンド制御処理の内容について、図2及び図3の各フローチャートに基づいて説明する。このデマンド制御処理は、入力操作部24によるデマンド制御の開始操作により開始され、入力操作部24による終了操作がされるまでの間、コントローラ21によって所定時間(例えば、1msecや1secなど)ごとの周期で繰り返し実行される。
図2に示すように、デマンド制御処理において、ステップS101では、コントローラ21は電力量計23より全ての電力負荷13が消費する消費電力量のデータを取得する。また、単位時限開始時点からの消費電力量を順次積算する。そのため、コントローラ21及び電力量計23が消費電力量取得手段に相当する。
これに続くステップS102では、ステップS101で取得した消費電力量データに基づいて、過去に取得した消費電力量データを用いた移動平均値を算出する。そのため、コントローラ21は平均値算出手段に相当する。ここでは、移動平均をとる時間を異ならせた2つの移動平均値を算出している。一つは、消費電力量のデータ表の一例である図4(a)に示すように、過去10分間に取得した消費電力量の平均値である。もう一つは、図4(b)に示すように、過去1時間に取得した消費電力量の平均値である。説明の便宜上、前者の平均値を分単位平均値とし、後者の平均値を時間単位平均値として説明を進める。なお、図4に示すデータ表は、電力負荷13として、溶解時における最大出力が3000kwの電気炉を想定した消費電力量データである。
続くステップS103では、コントローラ21は、時刻と同期する内蔵タイマにより、サンプル取得時刻か否かを判定する。サンプル取得時刻は、所定時間(例えば1分)ごとに設定されている。そのため、毎時毎分、例えば「AM10:00,AM10:01,AM10:02,…」がサンプル取得時刻となる。サンプル取得時刻である場合は判定を肯定し、ステップS104に進む。一方、いまだサンプル取得時刻でない場合には判定を否定して、後述するステップS105に進む。
ステップS104では、コントローラ21は、予測デマンド値選択処理を実行する。予測デマンド値選択処理では、サンプル取得時刻に取得した消費電力量データをサンプル値とする。このサンプル値を用い、複数の算出方法によってそれぞれ算出した予測デマンド値の中から、一つの予測デマンド値を目標デマンド値と比較する対象となる比較対象予測デマンド値として選択する。コントローラ21は、予測デマンド値選択手段に相当する。この予測デマンド値選択処理について、図3に示すフローチャートを用いてより詳しく説明する。
図3に示すように、予測デマンド値選択処理では、ステップS201において、コントローラ21は、サンプル値及び移動平均値を用いて予測デマンド値を算出する。予測デマンド値の算出方法としては、通常算出方法、分単位平均利用算出方法、時間単位平均利用算出方法の3つの算出方法を有している。各方法とも、基本的には、従来から知られている一般的な算出方法と同じであり、消費電力量の単位時間あたりの変化量(増加量)に基づいて、次式によって算出している。
「第1予測消費電力積算量Pa」 = Pt1+(ΔP/Δt)×(T−t2)
「予測デマンド値」 = Pa/(T/60)
ここで、第1予測消費電力積算量Paとは、単位時限T(単位は分であり、一般には30分)の終了時点における消費電力量の積算値である。t1は前回のサンプル取得時刻であり、Pt1はその時刻(t1)における消費電力量である。t2は今回のサンプル取得時刻である。ΔPは、今回のサンプル取得時刻(t2)の消費電力量が、前回のサンプル取得時刻(t1)の消費電力量から増加した増加量である。Δtはサンプル取得時刻の間隔(所定時間)であり、ここでは1分である。
もっとも、通常算出方法、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法は、第1予測消費電力積算量Paを算出するのに用いるデータがそれぞれ異なっている。通常算出方法では、サンプル値それ自体を用いて第1予測消費電力積算量Paを算出し、そのうえで予測デマンド値を算出している。そのため、通常算出方法は第1算出方法に相当する。図5は、単位時限開始からの消費電力積算量の推移と、通常算出方法による第1予測消費電力積算量Paの算出をグラフとして示したものである。一方、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法では、移動平均値を用いて第1予測消費電力積算量Paを算出している。そのため、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法は、第2算出方法に相当する。
このうち、分単位平均利用算出方法では、過去10分間に取得した消費電力量の移動平均値である分単位平均値を用いて、第1予測消費電力積算量Paを算出する。時間単位平均利用算出方法では、過去1時間に取得した消費電力量の移動平均値である時間単位平均値を用いて、第1予測消費電力積算量Paを算出する。そのため、ステップS201では、通常算出方法、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法の各算出方法により、それぞれ予測デマンド値を算出する。
次のステップS202において、コントローラ21は、サンプル取得時点における消費電力量データを用いて基準デマンド値を算出する。基準デマンド値は、次式によって算出される。
「第2予測消費電力積算量Pb」 =(「サンプル取得時刻の消費電力量」/「単位時限開始時点からの経過時間」)×T
「基準デマンド値」 = Pb/(T/60)
ここで、第2予測消費電力積算量Pbとは、第1予測消費電力積算量Paと同様、単位時限T(単位は分であり、一般には30分)の終了時点における消費電力量の積算値である。ただ、第1予測消費電力積算量Paとは、算出方法が異なる。すなわち、第2予測消費電力積算量Pbは、サンプル取得時刻の消費電力量を単位時限Tの開始時点からの経過時間に基づいて、単位時限Tの終了時点の消費電力量に換算したものである。
基準デマンド値を算出した後、ステップS203に進む。ステップS203において、コントローラ21は、ステップS201で算出した3つの予測デマンド値について、ステップS202で算出した基準デマンド値との比較処理を行う。そして、通常算出方法により算出した予測デマンド値(X値)と基準デマンド値との差が最も小さい場合は、続くステップS204を肯定し、その後のステップS205において、X値をサンプル取得時刻における比較対象予測デマンド値として選択する。併せて、次のサンプル取得時刻となるまでの間、通常算出方法によって算出した予測デマンド値を、目標デマンド値との比較対象となる比較対象予測デマンド値として採用するよう設定する。その後、予測デマンド値選択処理を終了する。一方、分単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値(Y値)又は時間単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値(Z値)と、基準デマンド値との差が最も小さい場合は、このステップS204は否定し、次のステップS206に進む。
時間単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値(Y値)と基準デマンド値との差が最も小さい場合、コントローラ21はステップS206を肯定し、続くステップS207において、Y値をサンプル取得時刻における予測デマンド値として選択する。併せて、次のサンプル取得時刻となるまでの間、分単位平均利用算出方法によって算出した予測デマンド値を、比較対象予測デマンド値として採用するよう設定する。その後、予測デマンド値選択処理を終了する。一方、時間単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値(Z値)と基準デマンド値との差が最も小さい場合は、このステップS206は否定し、次のステップS208に進む。
次のステップS208において、時間単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値(Z値)と基準デマンド値との差が最も小さいと、この段階で判明しているため、コントローラ21は、このZ値をサンプル取得時刻における予測デマンド値として選択する。併せて、次のサンプル取得時刻となるまでの間、時間単位平均利用算出方法によって算出した予測デマンド値を、比較対象予測デマンド値として採用するよう設定する。その後、予測デマンド値選択処理を終了する。
図2に示すデマンド制御処理のフローチャートに戻り、前述したように、先のステップS103にて、いまだサンプル取得時刻でないとして判定を否定した場合には、ステップS104に進まず、ステップS105に進む。ステップS105において、コントローラ21は、予測デマンド値を算出する通常算出方法、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法のうち、その時点で、比較対象予測デマンド値として採用する予測デマンド値の算出方法として、現在設定中となっている算出方法を読み出す。続くステップS106では、コントローラ21は、消費電力量データに基づいて算出された予測デマンド値のうち、設定中の算出方法により算出された予測デマンド値を比較対象予測デマンド値として選択する。
なお、サンプル取得時刻間に取得される消費電力量データに基づく比較対象予測デマンド値の採用は、次のように行う。通常算出方法、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法すべてを用いた各予測デマンド値を算出し、その中から設定中の算出方法に基づいた予測デマンド値を比較対象予測デマンド値として選択する。この場合、設定中の算出方法のみを用いて予測デマンド値を算出し、それを比較対象予測デマンド値として選択してもよい。
以上の一連の処理を、消費電力量のデータ表の一例である図6を用いてより具体的に説明すると、その図6に示すように、例えば、「AM10:16:00」、「AM10:17:00」、「AM10:18:00」に取得した消費電力量データがサンプル値となる。それぞれのサンプル取得時点におけるサンプル値を用いて、コントローラ21は、通常算出方法、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法により、それぞれ予測デマンド値を算出する。また、コントローラ21は、サンプル取得時刻での消費電力量データから基準デマンド値を算出する。なお、図6に示すデータ表は、電力負荷13として、溶解時における最大出力が3000kwの電気炉を想定し、目標デマンド値を1700kwに設定した場合を想定したものである。
例えば、サンプル取得時刻である「AM10:16:00」では、各予測デマンド値のうち、分単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値が、基準デマンド値と最も小さい差となっている。そのため、この時刻における比較対象予測デマンド値として、分単位平均利用算出方法により算出した数値を選択する。そして、次のサンプル取得時刻である「AM10:17:00」になるまでの間、取得した消費電力データに基づく比較対象予測デマンド値として、分単位平均利用算出方法により算出された予測デマンド値を採用する。
次のサンプル取得時刻「AM10:17:00」となると、各予測デマンド値のうち、時間単位平均利用算出方法により算出した予測デマンド値が、基準デマンド値と最も小さい差となっている。そのため、このサンプル取得時刻における比較対象予測デマンド値として、時間単位平均利用算出方法により算出した数値を選択する。そして、次のサンプル取得時刻である「AM10:18:00」になるまでの間、取得した消費電力量データに基づく比較対象予測デマンド値として、時間単位平均利用算出方法により算出された予測デマンド値を採用する。
ステップS104の予測デマンド値選択処理を終えて比較対象予測デマンド値を選択した後、また、ステップS106で比較対象予測デマンド値を選択した後、ステップS107に進む。ステップS107では、コントローラ21は比較対象予測デマンド値と目標デマンド値とを比較する。目標デマンド値は、受電者が入力操作部24を用いて任意に設定する設定値であり、電力会社との契約値を設定したり、契約値よりも低い数値を設定したりする。ステップS107では、コントローラ21は、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超過しているか否かを判定する。比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超過している場合は、判定を肯定してステップS108に進み警報処理を実行するとともに、それに続くステップS109で電力供給制御処理を実行する。
ステップS108での警報処理では、コントローラ21は、表示部25に警告表示をさせたり、信号出力部26から警報機等の警報装置(図示略)に制御信号を出力して動作させたりして、受電者に対し警報を発する。また、ステップS109の電力供給制御処理では、コントローラ21は、電力系統Aから電力負荷13に供給される供給電力を低下させる制御を実行する。その制御内容として、コントローラ21は、電力供給制御装置14に対し、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超過した消費電力分だけ供給電力を低下させるように、信号出力部26から制御信号を出力する。この制御信号を受けた電力供給制御装置14は、コントローラ21の指示にしたがって、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超過している電力だけ低下するように、電力負荷13への供給電力を制御する。コントローラ21は電力供給制御手段に相当する。
なお、いったん供給電力を低下させた後に、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を下回る状態となれば、コントローラ21は、電力供給制御装置14への制御信号により、電力供給の制限を解除し、電力負荷13への供給電力を回復させる。
上記ステップS108及びステップS109を経た後に、また、上記ステップS107において、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値以下であるために判定を否定した後に、ステップS110に進む。ステップS110では、コントローラ21は、単位時限T(ここでは30分)の終了時刻か否かを判定する。単位時限Tの終了時刻(毎時ジャスト又は毎時30分)である場合には、判定を肯定してステップS111に進む。ステップS111では、コントローラ21は、単位時限Tの開始時点から順次積算した消費電力量の積算値をリセットする。この時、これまで逐次取得した消費電力データやサンプル値についてはリセットせず、記憶部22に記憶した状態を維持する。その後、一連のデマンド制御処理を終了する。一方、いまだ単位時限Tの終了時刻となっていない場合には、ステップS110の判定を否定して、そのまま一連のデマンド制御処理を終了する。
本実施形態のデマンド制御システム10の構成と作用は、以上に説明したとおりであり、このデマンド制御システム10によって得られる効果を以下に列挙する。
(1)コントローラ21は、逐次取得する消費電力データのうち、サンプル取得時刻に取得するものをサンプル値とする。そして、そのサンプル値を用いて通常算出方法、分単位平均利用算出方法及び時間単位平均利用算出方法により予測デマンド値をそれぞれ算出する。それら各予測デマンド値を基準デマンド値と比較し、その差が最小となるものをサンプル取得時点における比較対象予測デマンド値として選択する。その後、サンプル値が次に取得されるまでの間、取得した消費電力量データに基づく比較対象予測デマンド値として、サンプル取得時刻において選択した比較対象予測デマンド値を算出する算出方法により算出した予測デマンド値を採用している。
ここで、基準デマンド値は、単位時限開始からサンプル取得時点までの消費電力量から単位時間あたりの消費電力量を求め、それを単位時限終了時点での消費電力量に換算し、その単位時限終了時点での消費電力量から算出したデマンド値である。つまり、この基準デマンド値は、消費電力量の実測値に基づいて算出される。このような基準デマンド値に最も近い値の予測デマンド値を採用し、かつその予測サンプル値を算出する算出方法を次のサンプル取得時刻までの間の算出方法として採用する。これにより、デマンド値の予測をより正確に行うことができ、電力供給制御をより好適に行うことができる。
(2)予測デマンド値を取得する複数の算出方法として、取得した消費電力量データそれ自体を用いる通常算出方法だけでなく、過去に取得した消費電力量データに基づく移動平均値を用いる算出方法、つまり分単位平均利用算出方法や時間単位平均利用算出方法も含んでいる。移動平均値を用いた算出方法を算出方法の一つとして採用することにより、過去に取得した消費電力量が平準化され、消費電力量の急激な変化や一時的な変化による影響を低減させた数値を用いて予測デマンド値が算出される。これにより、より正確な予測デマンド値を算出できる。
(3)移動平均値を利用した算出方法として、過去10分の移動平均値を用いた算出方法と、過去1時間の移動平均値を用いた算出方法とを採用している。移動平均をとる時間が長いと、平準化の程度が高まる一方で直近の消費電力の変化を捉えにくくなる。逆に、移動平均をとる時間が短いと、直近の消費電力の変化を捉えやすくなる一方で平準化の程度が低くなる。そこで、移動平均をとる時間を異ならせることで、例えば比較的短い10分の平均値と、比較的長い1時間の平均値との両者を用いて予測デマンド値を算出し、最適な値を比較することができる。これにより、予測デマンド値を算出する算出方法の選択肢を増やし、より正確なデマンド値の予測に寄与できる。
(4)比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超えた場合、電力供給制御装置14により、その超過分だけ電力系統Aから電力負荷13に供給される電力を減少させるようにした。そのため、不必要な電力制限が行わることが抑制され、電力低減が必要な分だけ電力供給を低減できる。その後、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を下回る状態となれば、電力供給の制限を解除し、電力供給を回復させる。これにより、効率的な電力供給の制限を行うことができる。
なお、本発明は、上記した実施形態のデマンド制御システム10に限られるものではなく、例えば次のような構成を採用してもよい。
(a)上記実施の形態では、分単位平均値をとる時間が10分、時間単位平均値をとる時間が1時間に設定されているが、それぞれ異なる時間を設定してもよい。例えば、分単位平均値をとる時間は、2分から59分までのうち任意の分、例えば15分や20分等としてもよい。また時間単位平均をとる時間は、2時間から24時間までの任意の時間(1時間単位)、例えば2時間や3時間としてもよい。また、平均値を用いて予測デマンド値を算出する場合について、分単位平均と時間単位平均との2つの異なる平均を採用するのではなく、用いる平均値はいずれか一つであってもよい。
(b)上記実施の形態では、コントローラ21は、電力供給制御装置14により、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超過した分だけ供給電力を低下させているが、供給電力を低下させる制御としても他の制御手法を採用してもよい。
その一つの例として、予め設定された電力値を段階的に低下させる段階制御を実行することが考えられる。この場合、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を超過する場合に、第1段階の電力値(例えば500kw)だけをまず低下させ、それでもなお目標デマンド値を超過している場合に、さらに第2段階の電力値(例えば500kw)を低下させるようにする。いったん電力を低下させた後に、比較対象予測デマンド値が目標デマンド値を下回る状態となれば、供給電力の制限を解除し、供給電力を回復させる。このように複数の段階によって順次所定電力を低下させたり、上昇させたりすることで、電力供給をすべて一度に遮断してしまうより、電力供給の遮断による大幅な生産遅延やその後の立ち上げロス等の発生を防止できる。
また、別の手法として、複数の電力負荷13を有する場合に、各電力負荷13についてその重要度や生産への影響度に応じた優先順位を設定し、優先順位の低い順位の電力負荷13から順に電力供給を遮断し、電力系統Aから供給される電力を低減させることも考えられる。
その他、同じく複数の電力負荷13を有する場合に、電力負荷13が工場の生産設備ではなく、空調設備のような生産への影響が少ない設備については、供給される電力を遮断する設備の順位を順に変更させるようにすることも考えられる。例えば、第1〜第3の空調設備が設置されている場合に、ある時点で電力供給を低減させる場合の順位として第1の空調設備、第2の空調設備、第3の空調設備を設定し、次の時点での順位は、第2の空調設備、第3の空調設備、第1の空調設備とするという制御手法である。
(c)上記実施の形態に加え、単位時限Tごとの通常取得値のデータの推移を記憶部22に記憶させ、データベースを作成するようにしてもよい。当該単位時限Tにおける通常取得値のデータの推移と類似する過去の推移データをデータベースの中から選択し、その過去の推移データをデマンド制御に用いてもよい。例えば、予測デマンド値を算出する際の補正値として利用したり、電力供給制御の制御手法をシミュレーションしたりすることに利用できる。
(d)上記実施の形態のデマンド制御システム10は、特別高圧電力を使用する工場設備に適用した場合を想定したが、高圧電力や低圧電力を使用する設備に適用してもよい。例えば、小規模の工場、商業施設、商業ビル等にデマンド制御システム10を適用してもよい。
10…デマンド制御システム、21…コントローラ(消費電力量取得手段、電力供給制御手段、予測デマンド値選択手段、平均値算出手段)、23…電力量計(消費電力量取得手段)、24…電力供給制御装置(電力供給制御手段)、A…電力系統。

Claims (4)

  1. 一つ又は複数の電力負荷と、
    全ての前記電力負荷が消費する消費電力量を逐次取得する消費電力量取得手段と、
    前記消費電力量取得手段により取得した消費電力量を用いて、単位時限あたりの平均消費電力であるデマンド値を予測した予測デマンド値を算出し、前記予測デマンド値が、予め設定された目標デマンド値を超えないように、前記電力負荷への供給電力を制御する電力供給制御手段と、
    を備えたデマンド制御システムであって、
    所定時間ごとに取得する前記消費電力量をサンプル値とし、前記サンプル値を用いて複数の算出方法により予測デマンド値をそれぞれ算出するとともに、前記サンプル値を単位時限開始時点からの経過時間に基づいて単位時限終了時点の消費電力量に換算し、その換算した値からデマンド値を算出して基準デマンド値とし、前記各予測デマンド値のうち前記基準デマンド値との差が最小となるものを、前記目標デマンド値との比較対象予測デマンド値として選択する予測デマンド値選択手段を有し、
    前記電力供給制御手段は、前記サンプル値が次に取得されるまでの間に取得した前記消費電力量に基づく前記比較対象予測デマンド値として、前記予測デマンド値選択手段により選択された前記比較対象予測デマンド値を算出する算出方法を用いて算出した予測デマンド値を採用することを特徴とするデマンド制御システム。
  2. 前記消費電力量取得手段によって前記消費電力量を取得するごとに、今回取得した前記消費電力量と、それより前に取得した前記消費電力量とを用いて消費電力量の移動平均値を算出する平均値算出手段を備え、
    前記複数の算出方法として、
    前記消費電力量取得手段によって取得した前記消費電力量に基づいて消費電力量の変化量を求め、その変化量に基づいて予測デマンド値を算出する第1算出方法と、
    前記移動平均値の変化量を求め、その変化量に基づいて予測デマンド値を算出する第2算出方法と
    が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御システム。
  3. 前記第2算出方法は、前記移動平均値として、移動平均をとる時間が異なる複数の算出方法を有することを特徴とする請求項2に記載のデマンド制御システム。
  4. 前記電力供給制御手段は、前記予測デマンド値が前記目標デマンド値を超えた場合に、その超過分だけ電力系統から前記電力負荷に供給される電力供給を減少させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデマンド制御システム。
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