JP2018168605A - 建物の蓄熱構造 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、物質が固相と液相との間で相変化する際の潜熱を利用した潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)を建物の床に組み込んで室内温度の変化を緩和する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、空調機や太陽光による室内側の熱を潜熱蓄熱材によって自然に蓄熱し、空調機を停止した後や日没後に、急激に室内温度が変化しないようにしている。
建物躯体を構成する建築用板材12と、
前記建築用板材12の室内側に位置する蓄熱層40と、
前記蓄熱層40の室内側に位置する仕上げ層50と、を備える建物の蓄熱構造であって、
前記蓄熱層40は、
前記建築用板材12の室内側面に取り付けられた蓄熱板材41と、
前記蓄熱板材41の室内側に位置するパック状の潜熱蓄熱材42と、を有しており、
前記建築用板材12の室内とは反対側には断熱材13が設けられていることを特徴とする。
また、建築用板材12の室内とは反対側に断熱材13が設けられているので、この断熱材13によって、室内とは反対側からの冷気の影響を受けにくくなる。さらに、放熱する際には、この断熱材13によって室内とは反対側に放熱されにくくなるため、潜熱蓄熱材42及び蓄熱板材41に蓄熱された熱をより多く室内側に放熱することができる。
さらに、建築用板材12の室内側面に蓄熱板材41が取り付けられ、かつ、蓄熱層40の室内側に仕上げ層50が位置しているので、蓄熱板材41を、仕上げ層50を固定するための固定下地として利用することが可能となる。
また、潜熱蓄熱材42はパック状のものであるため、取り扱いがしやすく、施工性の向上に貢献できる。
前記蓄熱層40は、前記潜熱蓄熱材42の室内側面に設けられた蓄熱シート44を有することを特徴とする。
前記蓄熱層40は、前記蓄熱板材41の室内側面に取り付けられた複数の長尺材43aによって複数の区画に分けられて構成された複数の凹部43を有し、
前記凹部43のそれぞれに前記潜熱蓄熱材42が収納されており、
前記仕上げ層50は、前記長尺材43aを介して前記蓄熱板材41に支持されていることを特徴とする。
さらに、仕上げ層50は、長尺材43aを介して蓄熱板材41に支持されているので、仕上げ層50を、蓄熱板材41から複数の長尺材43a分の間隔を空けて支持することができる。これにより、潜熱蓄熱材42のための収納スペースを確保しつつ、仕上げ層50を、長尺材43aを介して蓄熱板材41に確実に固定することができる。
前記建物躯体は、
前記建築用板材12と、前記建築用板材12が固定された枠体11と、前記枠体11を形成する枠材11a,11b間に設けられた前記断熱材13と、を含んで構成された建築用パネル10と、
前記建築用パネル10に隣接して設けられるとともに前記建築用パネル10よりも厚く形成された他の建築用パネル20と、を備えており、
前記建築用パネル10と前記他の建築用パネル20との厚みの差を利用して形成されたスペース14に前記蓄熱層40が設けられていることを特徴とする。
また、厚みのある他の建築用パネル20を、例えば断熱材23を含んで構成されたものとすれば、高い断熱効果を得ることができる。さらに、このような他の建築用パネル20が、蓄熱効果の高い建築用パネル10と隣接して設けられているため、双方の建築用パネル10,20によって、室内温度の変化の緩和に貢献できることになる。
前記建築用板材12は、前記建物躯体の床2を構成する床下地材であることを特徴とする。
前記建築用パネルは、前記建物躯体の壁3を構成する建築用壁パネル30であることを特徴とする。
なお、本実施形態における建物の躯体は、床2や壁3、屋根といった構成要素を予め工場でパネル化しておき、施工現場でこれらの建築用パネル(後述する第一建築用パネル10及び第二建築用パネル20を含む。)を組み立てて構築するパネル工法で構築されている。ただし、これに限られるものではなく、従来の軸組工法や壁式工法の木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等を採用してもよい。
枠体を形成する枠材は、矩形状に組み立てられて外枠となる縦横の框材と、外枠の内側に組み付けられて内枠となる補助桟材と、からなる。断熱材は、框材と補助桟材によって形成された枠状の小区画内に設けられた状態となっている。
第一建築用パネル10及び第二建築用パネル20は、地盤に設置された基礎5に対して、台輪6を介して設置されている。すなわち、本実施形態における床2は、建物の一階の床であるが、これに限られるものではなく、建物の二階以上の床にも採用することができる。
図2に示す構成においては、第一建築用パネル10の屋外側に土台7が隣接して設けられている。また、これら第一建築用パネル10と土台7は、双方とも台輪6の上に設けられている。そして、第一建築用パネル10と土台7に跨って第一調整材8が設けられており、この第一調整材8の上に、壁3が立設されている。
すなわち、土台7と第一調整材8は、第一建築用パネル10と壁3との取り合い部分に、かつ、建物の外周に沿って設けられており、壁3を、床2上に納まり良く設置できるようにする役割を果たすことができる。
なお、本実施形態における建築用板材とは、建物の躯体をパネル工法で構築する場合に、第一建築用パネル10の面材12を指すものであるが、建物の躯体をその他の工法で構築する場合には、床仕上げ材が固定される合板等の固定下地を指すものとする。すなわち、パネル工法における第一建築用パネル10の面材12も、その他の工法における固定下地も、床下地材として用いられるものである。
すなわち、蓄熱層40は、断熱材13との間に、建築用板材である面材12を挟んだ状態に設けられていることとなる。
このような普通硬質石膏ボードには、その他にも耐火性、耐衝撃性、防水性、堅牢性等の面で高い機能が備わっており、建築材料として好適である。本実施形態における普通硬質石膏ボードとしては、特に限定されるものではないが、吉野石膏株式会社製の「タイガーハイパーハードC(登録商標)」が採用されている。
なお、蓄熱板材41は、本実施形態においては一枚で用いられているが、これに限られるものではなく、複数枚重ねて用いられるものとしてもよい。これによって、蓄熱板材41が設けられた箇所における蓄熱性を向上できる。また、本実施形態では、上述のように普通硬質石膏ボードが用いられているが、例えば、硬質木片セメント板等のように、その他の密度の高い板材を用いてもよい。すなわち、普通硬質石膏ボードや硬質木片セメント板等は密度が高く、密度が高い方が蓄熱効果も高い。これら普通硬質石膏ボードや硬質木片セメント板は比重が0.9以上に設定されている。
本実施形態における潜熱蓄熱材42は、ゲル状の蓄熱材料42aが、袋状体であるアルミパック42bに封入されたものが用いられている(図3参照。)。そして、このような潜熱蓄熱材42は、蓄熱板材41の上面側(室内側)に位置している。
なお、潜熱蓄熱材42は、このようにパック状のものであるため、取り扱いがしやすく、施工性の向上に貢献できる。
長尺材43aの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば8mm程度に設定されており、凹部43の深さも長尺材43aの厚みに対応している。そのため、凹部43に収納される潜熱蓄熱材42の厚みも長尺材43aの厚みに対応していることになる。ただし、ごくわずかに潜熱蓄熱材42の厚みを、長尺材43aの厚みよりも厚く設定して、床2の施工後に、潜熱蓄熱材42と仕上げ層50とが密着した状態となるようにしてもよい。
この下地板材51は、複数の長尺材43aの上面に載せられて固定された状態となっている。換言すれば、下地板材51と、この下地板材51の上層に位置する仕上げ材52は、複数の長尺材43aを介して蓄熱板材41に支持された状態となっている。
さらに、仕上げ材52は、第一建築用パネル10側だけの仕上げを行うものとして下地板材51の上に設けられてもよいし、図2に示すように、第一建築用パネル10と第二建築用パネル20の双方に跨って設けられ、第一建築用パネル10と第二建築用パネル20の双方の仕上げを行うようにしてもよい。
この第二建築用パネル20は、第一建築用パネル10よりも厚みが厚く形成されており、面材22の高さ位置が、第一建築用パネル10における面材12よりも高くなるように設定されている。
また、このように第二建築用パネル20は、厚みが厚く形成されているため、内部中空部に充填される断熱材23の厚みも、第一建築用パネル10における断熱材13よりも厚く設定されている。そのため、断熱性に優れ、床下からの冷気が室内側に伝わりにくくなっている。
第二調整材9は、第一調整材8と略等しい厚さ寸法に設定されている。そして、これら第一調整材8及び第二調整材9の厚さ寸法は、仕上げ材52を除く蓄熱層40における積層方向の寸法と略等しい。
なお、仕上げ材52が、第一建築用パネル10側だけの仕上げを行うものとして下地板材51の上に設けられていた場合は、第二建築用パネル20側だけの仕上げを行う仕上げ材(図示せず。)を別途用いる。
また、潜熱蓄熱材42は、例えば部屋空間などに露出して設けられるよりも、周囲を囲まれた空間に設けられ、かつ、自身を囲む壁や部材等に近い方が、空気に触れる面積が小さく、効果的に蓄熱を行うことができる。本実施形態においては、潜熱蓄熱材42が、蓄熱板材41と仕上げ層50との間に設けられた状態となっているので、効果的に蓄熱を行うことができる。
すなわち、蓄熱性の向上を図るために潜熱蓄熱材42の嵩を増しても、必ずしも嵩増しした分の蓄熱性が得られるものではない。例えば室内側から潜熱蓄熱材42に伝わる熱の量が十分でなかったり、室内とは反対側からの冷気に影響されたりする室内環境の場合は、潜熱蓄熱材42における室内側の狭い範囲のみが作用して蓄熱された状態となる。これに対して、室内とは反対側に断熱材13が設けられた第一建築用パネル10における面材12の室内側に蓄熱板材41と潜熱蓄熱材42が設けられていると、室内側からの熱を受けて、いったん蓄熱板材41まで熱が伝われば、蓄熱板材41と潜熱蓄熱材42の双方で蓄熱することができるので、潜熱蓄熱材42における室内側の狭い範囲のみが作用して蓄熱されるような事態が発生しにくくなる。そのため、蓄熱層40全体の蓄熱効果を高めることができ、蓄熱効果を十分に発揮することが可能となる。
その結果、空調機の消費電力を低減することができ、省エネルギーや地球温暖化対策、ランニングコスト低減等に貢献できる。
さらに、放熱する際には、この断熱材13によって室内とは反対側に放熱されにくくなるため、潜熱蓄熱材42及び蓄熱板材41に蓄熱された熱をより多く室内側に放熱することができる。
さらに、仕上げ層50は、長尺材43aを介して蓄熱板材41に支持されているので、仕上げ層50を、蓄熱板材41から複数の長尺材43a分の間隔を空けて支持することができる。これにより、潜熱蓄熱材42のための収納スペースを確保しつつ、仕上げ層50を、長尺材43aを介して蓄熱板材41に確実に固定することができる。
さらに、厚みのある第二建築用パネル20を、例えば断熱材23を含んで構成されたものとすれば、高い断熱効果を得ることができる。さらに、このような第二建築用パネル20が、蓄熱効果の高い第一建築用パネル10と隣接して設けられているため、双方の建築用パネル10,20によって、室内温度の変化の緩和に貢献できることになる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
図4に示す例においては、蓄熱層40が、潜熱蓄熱材42の室内側面に設けられた蓄熱シート44を有している。
このような蓄熱シート44は、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂を用い、さらに炭酸カルシウムを添加したものからなり、少なくとも蓄熱性を有するものとする。
また、図示はしないが、この蓄熱シート44は、複数の長尺材43aの上面に載せられるようにして設けられてもよいし、複数の長尺材43aの上面には載せられずに潜熱蓄熱材42の室内側面のみに対応して設けられてもよい。
図5に示す例においては、蓄熱構造と、温水床暖房設備60とが併用されている。
温水床暖房設備60は、床2に張り巡らされるとともに温水が通過する配水管と、配水管に対して温水を供給する温水供給部(熱源)と、を備えており、図5に示すような範囲で設けられている(太線部分)。蓄熱構造は、図5の二点鎖線で囲まれた範囲Aの床2部分に設けられている。
配水管は、例えば、蓄熱層40と共にスペース14に対して設けられてもよいし、仕上げ層50における下地板材51と仕上げ材52との間に形成された専用の配管層に設けられてもよい。
なお、配水管が、蓄熱層40と共にスペース14に対して設けられた場合は、配水管の配管スペースと、蓄熱層40の設置スペースの双方を確保する必要がある。
図6に示す例においては、建物躯体の壁3に、蓄熱構造が組み込まれている。
本変形例における壁3は、建築用壁パネル30によって構成されており、この建築用壁パネル30は、建築用板材である面材32と、面材32が固定された枠体31と、枠体31を形成する枠材間に設けられた断熱材33と、を含んで構成されている。
なお、建築用板材である面材32は、枠体31の室内側と屋外側の両面に対して貼設されている。屋外側の面材32には、胴縁34を介して外壁材35が設けられている。
蓄熱構造が壁3に組み込まれた場合、蓄熱層40における潜熱蓄熱材42は自重によって下方に移動しやすくなる。そのため、ごくわずかに潜熱蓄熱材42の厚みを、長尺材43aの厚みよりも厚く設定して、壁3の施工後に、潜熱蓄熱材42と仕上げ層50とが密着した状態となるようにし、潜熱蓄熱材42が下方に移動しにくい状態とすることが望ましい。または、潜熱蓄熱材42を蓄熱板材41に接着してもよい。
また、本変形例における下地板材51は石膏ボードであり、仕上げ材52は、壁クロスである。
2 床
3 壁
10 第一建築用パネル
11 枠体
12 面材
13 断熱材
14 スペース
20 第二建築用パネル
21 枠体
22 面材
23 断熱材
40 蓄熱層
41 蓄熱板材
42 潜熱蓄熱材
42a 蓄熱材料
42b アルミパック
44 蓄熱シート
50 仕上げ層
51 下地板材
52 仕上げ材
Claims (6)
- 建物躯体を構成する建築用板材と、
前記建築用板材の室内側に位置する蓄熱層と、
前記蓄熱層の室内側に位置する仕上げ層と、を備える建物の蓄熱構造であって、
前記蓄熱層は、
前記建築用板材の室内側面に取り付けられた蓄熱板材と、
前記蓄熱板材の室内側に位置するパック状の潜熱蓄熱材と、を有しており、
前記建築用板材の室内とは反対側には断熱材が設けられていることを特徴とする建物の蓄熱構造。 - 請求項1に記載の建物の蓄熱構造において、
前記蓄熱層は、前記潜熱蓄熱材の室内側面に設けられた蓄熱シートを有することを特徴とする建物の蓄熱構造。 - 請求項1又は2に記載の建物の蓄熱構造において、
前記蓄熱層は、前記蓄熱板材の室内側面に取り付けられた複数の長尺材によって複数の区画に分けられて構成された複数の凹部を有し、
前記凹部のそれぞれに前記潜熱蓄熱材が収納されており、
前記仕上げ層は、前記長尺材を介して前記蓄熱板材に支持されていることを特徴とする建物の蓄熱構造。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の建物の蓄熱構造において、
前記建物躯体は、
前記建築用板材と、前記建築用板材が固定された枠体と、前記枠体を形成する枠材間に設けられた前記断熱材と、を含んで構成された建築用パネルと、
前記建築用パネルに隣接して設けられるとともに前記建築用パネルよりも厚く形成された他の建築用パネルと、を備えており、
前記建築用パネルと前記他の建築用パネルとの厚みの差を利用して形成されたスペースに前記蓄熱層が設けられていることを特徴とする建物の蓄熱構造。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の建物の蓄熱構造において、
前記建築用板材は、前記建物躯体の床を構成する床下地材であることを特徴とする建物の蓄熱構造。 - 請求項4に記載の建物の蓄熱構造において、
前記建築用パネルは、前記建物躯体の壁を構成する建築用壁パネルであることを特徴とする建物の蓄熱構造。
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JP2021017796A (ja) * | 2019-07-22 | 2021-02-15 | Dic株式会社 | 屋内面施工方法及び蓄熱積層体 |
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2017
- 2017-03-30 JP JP2017067020A patent/JP6938193B2/ja active Active
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