JP2018168433A - 軸受部品、転がり軸受及び軸受部品の製造方法 - Google Patents
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【課題】本発明は、寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる軸受部品を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る軸受部品は、鋼製の軸受部品である。鋼は、オーステナイト相と、マルテンサイト相とを含む。鋼中におけるオーステナイト相の体積比率をX、マルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅をYとした場合に、X<14.1かつ0.054×Y−0.019×X>0.130との関係を満たす。【選択図】図1
Description
本発明は、軸受部品、転がり軸受及び軸受部品の製造方法に関する。
外輪、内輪、転動体等の軸受部品は、一般的に、オーステナイト相を含んでいる。軸受が高温環境下で長時間使用されると、オーステナイト相がフェライト相及び炭化物相に分解する。オーステナイトの結晶構造は面心立方格子であり、フェライトの結晶構造は体心立方構造である。そのため、オーステナイト相がフェライト相及び炭化物相に分解する際、体積変化が生じる。例えば軸受部品が内輪である場合、このような体積変化に起因して、軸とのはめあい代が減少する。その結果、内輪にクリープが引き起こされ、軸受の早期損傷の原因となる。
軸受には、大きな静的荷重が加えられる場合がある。軸受部品の静的負荷容量が十分ではない場合、このような静的荷重により、軌道面に圧痕が生じる。このような圧痕は、回転精度の悪化、異音の原因となる。このように、軸受には、機械的性質として、形状安定性及び静的荷重容量が要求されている。
なお、例えば特開2013−124416号公報(特許文献1)には、軸受部品の寸法安定性を改善するための軸受部品の製造方法が記載されている。特許文献1に記載の軸受部品の製造方法においては、寸法安定性を改善するため、浸炭窒化処理が行われている。
従来から、軸受部品の機械的性質は、軸受部品を構成する鋼の金属組織と関連性があることは知られている。しかしながら、良好な寸法安定性及び静的負荷容量を得るために軸受部品がどのような金属組織を有すればよいのかについては、明らかにされていない。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる軸受部品、転がり軸受及び軸受部品の製造方法を提供するものである。
本発明の一態様に係る軸受部品は、鋼製の軸受部品である。鋼は、オーステナイト相と、マルテンサイト相とを含む。鋼中におけるオーステナイト相の体積比率をX、マルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅をYとした場合に、X<14.1かつ0.054×Y−0.019×X>0.130との関係を満たす。
本発明の一態様に係る軸受部品によると、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の軸受部品において、X線は、CrKα線であってもよい。この場合、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の軸受部品において、鋼は、JIS規格に定められたSUJ2鋼材であってもよい。この場合、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
本発明の一態様に係る転がり軸受は、外輪と、内輪と、転動体とを備える。内輪は、外輪の内側に配置される。転動体は、外輪と内輪との間に配置される。外輪、内輪及び転動体のうちの少なくとも1つは、上記の軸受部品である。
本発明の一態様に係る転がり軸受によると、転がり軸受の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
本発明の一態様に係る軸受部品の製造方法は、鋼性の軸受部品の製造方法である。本発明の一態様に係る軸受部品の製造方法は、鋼の焼入れを行う工程と、鋼の焼き戻しを行う工程とを備える。鋼は、焼き戻し後において、オーステナイト相と、マルテンサイト相とを含む。焼き戻し後の鋼中におけるオーステナイト相の体積比率をX、マルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅をYとした場合に、X<14.1かつ0.054×Y−0.019×X>0.130との関係を満たす。
本発明の一態様に係る軸受部品の製造方法によると、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の軸受部品の製造方法において、X線は、CrKα線であってもよい。この場合、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の軸受部品の製造方法において、鋼は、JIS規格に定められたSUJ2鋼材であってもよい。この場合、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
本発明の一態様に係る軸受部品によると、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。本発明の一態様に係る転がり軸受によると、転がり軸受の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。本発明の一態様に係る軸受部品の製造方法によると、軸受部品の寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さないものとする。
(実施形態に係る軸受部品の構成)
以下に、実施形態に係る軸受部品の構成について説明する。
以下に、実施形態に係る軸受部品の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る軸受部品10の模式図である。なお、図1(A)が実施形態に係る軸受部品10の平面模式図であり、図1(B)が図1(A)のI−B−I−Bにおける断面模式図である。図1に示すように、軸受部品10は、例えば転がり軸受の内輪である。但し、軸受部品10は、これに限られるものではない。軸受部品10は、転がり軸受の外輪であってもよい。軸受部品10は、転がり軸受の転動体であってもよい。
軸受部品10は、鋼製である。軸受部品10を構成する鋼は、例えば軸受鋼である。軸受部品10を構成する鋼は、JIS規格(JIS4805:2008)に定められる高クロム軸受鋼であることが好ましい。軸受部品10を構成する鋼は、JIS規格に定められるSUJ2鋼材であることがさらに好ましい。
軸受部品10を構成する鋼は、オーステナイト相と、マルテンサイト相とを含んでいる。なお、このオーステナイト相は、後述する加熱工程S21においてオーステナイト化した鋼材の部分のうち、後述する冷却工程S22においてマルテンサイト相とならず、かつ後述する焼き戻し工程S3においてフェライト相及び炭化物相に分解しなかったものである。すなわち、このオーステナイト相は、いわゆる残留オーステナイトである。軸受部品10を構成する鋼中において、オーステナイト相の体積比率は、14.1パーセント未満である。すなわち、軸受部品10を構成する鋼中におけるオーステナイト相の体積比率をX(単位:パーセント)とした場合、X<14.1との関係が満たされている。
軸受部品10を構成する鋼中でのオーステナイト相の体積比率の測定においては、第1に、軸受部品10の鏡面研磨が行われる。軸受部品10を構成する鋼中でのオーステナイト相の体積比率の測定においては、第2に、軸受部品10の鏡面研磨面の腐食が行われる。軸受部品10を構成する鋼中でのオーステナイト相の体積比率の測定においては、第3に、軸受部品10の腐食された鏡面研磨面のSEM(Scanning Electron Microscope)観察が行われる。そして、軸受部品10の腐食された鏡面研磨面のSEM画像に対して画像解析を行うことにより、軸受部品10を構成する鋼中でのオーステナイト相の体積比率が算出される。
軸受部品10を構成する鋼は、軸受部品10を構成する鋼中でのオーステナイト相の体積比率をX(パーセント)、軸受部品10を構成する鋼中のマルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅をY(単位:°)とした場合、0.054×Y−0.019×X>0.130との関係を満たす。
軸受部品10を構成する鋼中のマルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅は、例えば株式会社リガク製のMSF−3Mを用いて測定される。軸受部品10を構成する鋼中のマルテンサイト相の{211}面の回折ピークの測定に用いられるX線は、CrKα線であってもよい。
軸受部品10を構成する鋼に対してX線回折を行った際、X線の回折強度は、マルテンサイト相の{211}面に対応する所定の角度において、ピーク値を示す。そして、当該所定の角度から離れるにつれて、X線の回折強度は、当該ピーク値から減少していく。当該所定の角度より角度が大きい側においてX線の回折強度が当該ピークの1/2となる角度と、当該所定の角度より角度が小さい側においてX線の回折強度が当該ピークの1/2となる角度との差が、軸受部品10を構成する鋼中のマルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅となる。
軸受部品10を構成する鋼中における炭化物面積率は、好ましくは、8パーセント以上12パーセント以下である。なお、軸受部品10を構成する鋼中における炭化物面積率は、軸受部品10を構成する鋼中におけるオーステナイト相の測定と同様の方法により測定される。
(実施形態に係る転がり軸受の構成)
以下に、実施形態に係る転がり軸受の構成について説明する。
以下に、実施形態に係る転がり軸受の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る転がり軸受20の模式図である。なお、図2(A)が実施形態に係る転がり軸受20の平面模式図であり、図2(B)が図2(A)のII−B−II−Bにおける断面模式図である。図2に示すように、転がり軸受20は、外輪21と、内輪22と、転動体23と、保持器24とを有している。外輪21及び内輪22は、平面視において、リング状の部材である。転動体23は、例えば球状の部材である。外輪21、内輪22及び転動体23は、例えば鋼製である。外輪21、内輪22及び転動体23を構成する鋼は、例えば軸受鋼である。好ましくは、外輪21、内輪22及び転動体23を構成する鋼は、JIS規格に定められるSUSJ2である。保持器24は、好ましくは合成樹脂により構成されている。
内輪22は、外輪21の内側に配置されている。転動体23は、外輪21と内輪22との間に配置されている。すなわち、外輪21は、内周面に外輪転走面21aを有しており、内輪22は、外周面に内輪転走面22aを有しており、外輪21及び内輪22は、外輪転走面21aと内輪転走面22aとが対向するように配置されている。転動体23は、外輪転走面21a及び内輪転走面22aに転動自在に接して配置されている。転動体23は、保持器24により、外輪21及び内輪22の周方向に沿って、所定のピッチで配置されている。これにより、外輪21及び内輪22は、互いに相対的に回転可能となっている。外輪21、内輪22及び転動体23の少なくとも1つは、上記の軸受部品10である。例えば、内輪22のみが上記の軸受部品10であり、外輪21及び転動体23は従来公知のものであってもよい。
(実施形態に係る軸受部品の製造方法)
以下に、実施形態に係る軸受部品10の製造方法について説明する。
以下に、実施形態に係る軸受部品10の製造方法について説明する。
図3は、実施形態に係る軸受部品10の製造方法を示す工程図である。図3に示すように、実施形態に係る軸受部品10の製造方法は、準備工程S1と、焼き入れ工程S2と、焼き戻し工程S3と、後処理工程S4を有している。焼き入れ工程S2は、準備工程S1の後に行われる。焼き戻し工程S3は、焼き入れ工程S2の後に行われる。後処理工程S4は、焼き戻し工程S3の後に行われる。
準備工程S1においては、実施形態に係る軸受部品10の製造方法が実施されることにより軸受部品10となる加工対象物が準備される。この加工対象物は、軸受部品10が例えば転がり軸受の軌道輪(内輪又は外輪)である場合、鋼製のリング状部材である。この加工対象物は、軸受部品10が例えば転がり軸受の転動体である場合、例えば鋼製の球状部材である。
加工対象物を構成する鋼は、例えば軸受鋼である。好ましくは、加工対象物を構成する鋼は、JIS規格(JIS4805:2008)に定められる高クロム軸受鋼である。軸受部品10を構成する鋼は、さらに好ましくは、JIS規格に定められるSUJ2鋼材である。
焼き入れ工程S2においては、加工対象物を構成する鋼に対する焼き入れが行われる。焼き入れ工程S2は、加熱工程S21と、冷却工程S22とを有している。加熱工程S21においては、加工対象物の加熱が行われる。加熱工程S21においては、加工対象物は、加工対象物を構成する鋼のA1点以上の温度(以下においては、加熱温度という)まで加熱される。加熱温度は、好ましくは、900℃以上1000℃未満である。さらに好ましくは、加熱温度は、900℃以上950℃以下である。
加熱工程S21における加工対象物の加熱は、例えばシングルターンコイルを用いた誘導加熱により行われる。加熱工程S21においては、加工対象物が加熱温度まで昇温された後、当該加熱温度で所定時間(以下においては、保持時間という)保持される。
保持時間が長くなるにつれて、又は加熱温度が高くなるにつれて、加熱工程S21において加工対象物を構成する鋼材の母材中に固溶する炭素量が多くなる。そのため、保持時間及び加熱温度を制御することにより、加工対象物を構成する鋼材中の(軸受部品10を構成する鋼材中の)炭化物面積率を制御することができる。
軸受部品10を構成する鋼材中のマルテンサイト相における炭素の固溶量が大きくなるにしたがい、マルテンサイト結晶のC軸が伸びることになるため、{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅が大きくなる傾向にある。軸受部品10を構成する鋼材中のマルテンサイト相における炭素の固溶量は、保持時間を長くするほど、又は加熱温度を高くするほど多くなる傾向にある。
そのため、保持時間及び加熱温度を制御することにより、軸受部品10を構成する鋼材中のマルテンサイト相の{211}面の回折ピークの半値幅を制御することができる。
保持時間が長くなるほど、又は加熱温度が高くなるほど、加熱工程S21において加工対象物を構成する鋼材中のフェライト相のより多くの部分がオーステナイト相に変態する傾向にある。加工対象物を構成する鋼材中のフェライト相のより多くの部分がオーステナイト相に変態するほど、残留オーステナイト相が多くなる傾向がある。そのため、保持時間及び加熱温度を制御することにより、軸受部品10を構成する鋼材中のオーステナイト相の体積比率を制御することができる。
このように、軸受部品10を構成する鋼材中のオーステナイト相の体積比率及び軸受部品10を構成する鋼材中のマルテンサイト相の{211}面の回折ピークの半値幅は、例えば、加熱工程S21における加熱温度及び保持時間を制御することにより、所望の値を得ることができる。
冷却工程S22においては、加工対象物の冷却が行われる。冷却工程S22においては、加工対象物は、加熱温度から加工対象物を構成する鋼のMS点以下の温度(以下においては、冷却温度という)まで冷却される。冷却工程S22における加工対象物の冷却は、従来周知の任意の冷媒を用いて行われる。加工対象物の冷却に用いられる冷媒は、例えば油又は水である。
なお、冷却工程S22における冷却温度及び冷却速度は、加熱工程S21において形成された加工対象物を構成する鋼材中のオーステナイト相のうちの冷却工程S22によりマルテンサイト相となる量(別の観点からいえば、冷却工程S22後においてもオーステナイト相のまま残留する量)に影響する。そのため、冷却温度及び冷却速度を制御することによっても、軸受部品10を構成する鋼材中のオーステナイト相の体積比率及び軸受部品10を構成する鋼材中のマルテンサイト相の{211}面の回折ピークの半値幅を制御することができる。
焼き戻し工程S3においては、加工対象物を構成する鋼が焼き戻される。加工対象物の焼き戻しは、加工対象物をA1点未満の温度(以下においては、焼き戻し温度という)で所定時間(以下においては、焼き戻し時間という)保持することにより行われる。焼き戻し温度は、例えば180℃である。焼き戻し時間は、例えば2時間である。
焼き戻し工程S3においては、冷却工程S22によってもマルテンサイト相とならなかったオーステナイト相が、フェライト相と炭化物相とに分解される。このオーステナイト相のフェライト相及び炭化物相へと分解される量は、焼き戻し温度及び焼き戻し時間を制御することにより、軸受部品10を構成する鋼材中のオーステナイト相の体積比率を制御することができる。
後処理工程S4においては、加工対象物に対する後処理が行われる。後処理工程S4においては、例えば、加工対象物の洗浄、加工対象物に対する研削、研磨等の機械加工等が行われる。以上により、軸受部品10の製造が行われる。
(寸法変化率及び静的荷重容量の評価)
以下に、実施例(実施例1〜実施例4)及び比較例(比較例1〜比較例5)に対して行った寸法変化率及び静的荷重容量の評価試験について説明する。
以下に、実施例(実施例1〜実施例4)及び比較例(比較例1〜比較例5)に対して行った寸法変化率及び静的荷重容量の評価試験について説明する。
<鋼材の組成>
表1には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5に用いられた鋼材の組成が示されている。なお、表1に示されていないが、鉄(Fe)は鋼材の残部を構成している。表1に示すように、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5に用いられた鋼材は、JIS規格に定められるSUJ2鋼材である。
表1には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5に用いられた鋼材の組成が示されている。なお、表1に示されていないが、鉄(Fe)は鋼材の残部を構成している。表1に示すように、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5に用いられた鋼材は、JIS規格に定められるSUJ2鋼材である。
<試料の形状及び寸法>
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5は、リング状部材である。このリング状部材の寸法は、外径60.3mm、内径53.7mm、幅15.3mmである。
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5は、リング状部材である。このリング状部材の寸法は、外径60.3mm、内径53.7mm、幅15.3mmである。
<熱処理条件>
表2には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5に対して行われた熱処理の熱処理条件が示されている。表2に示すように、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5においては、加熱工程S21における加熱温度は、900℃、950℃又は1000℃とされた。
表2には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5に対して行われた熱処理の熱処理条件が示されている。表2に示すように、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5においては、加熱工程S21における加熱温度は、900℃、950℃又は1000℃とされた。
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5においては、焼き入れ工程S2及び焼き戻し工程S3は、炭化物面積率が、4パーセント、8パーセント又は12パーセントとなるように行われた。
<寸法変化率評価試験方法>
寸法変化率の評価試験においては、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5は、外径60mm、内径54mm、幅15mmの寸法の試験片に研磨された。この研磨後、各試験片は、大気中において、230℃で2時間保持された。この保持の後、各試験片の寸法変化率が測定された。寸法変化率は、試験片毎に、互いに90°異なる2箇所の位置で測定された。寸法変化率は、各々の実施例及び比較例について、3個の試験片の平均値とされた。寸法変化率が6×10−4以下である場合「OK」と評価し、6×10−4を超えている場合を「NG」と評価した。
寸法変化率の評価試験においては、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5は、外径60mm、内径54mm、幅15mmの寸法の試験片に研磨された。この研磨後、各試験片は、大気中において、230℃で2時間保持された。この保持の後、各試験片の寸法変化率が測定された。寸法変化率は、試験片毎に、互いに90°異なる2箇所の位置で測定された。寸法変化率は、各々の実施例及び比較例について、3個の試験片の平均値とされた。寸法変化率が6×10−4以下である場合「OK」と評価し、6×10−4を超えている場合を「NG」と評価した。
<静的負荷容量評価試験方法>
静的負荷容量評価試験においては、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5は、ワイヤカットにより6mm×15mm×3mmの試験片に成型された後、鏡面研磨を施すことにより、試験片とされた。静的負荷容量評価試験は、鏡面研磨が施された各試験片の6mm×15mmの面に、3/8インチのセラミックス製のボールを一定荷重で押し付けた際に塑性変形によって生じる圧痕の深さを測定することにより行った。セラミックス製のボールを押し付ける際の荷重は、471Nである。なお、この荷重は、ヘルツ接触のPmaxが4GPaである場合に相当する。圧痕の深さは、寸法変化率は、各々の実施例及び比較例について、3個の試験片の平均値とされた。圧痕の深さが0.20μm以下である場合を「OK」と評価し、0.20μmを超えている場合を「NG」と評価した。
静的負荷容量評価試験においては、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5は、ワイヤカットにより6mm×15mm×3mmの試験片に成型された後、鏡面研磨を施すことにより、試験片とされた。静的負荷容量評価試験は、鏡面研磨が施された各試験片の6mm×15mmの面に、3/8インチのセラミックス製のボールを一定荷重で押し付けた際に塑性変形によって生じる圧痕の深さを測定することにより行った。セラミックス製のボールを押し付ける際の荷重は、471Nである。なお、この荷重は、ヘルツ接触のPmaxが4GPaである場合に相当する。圧痕の深さは、寸法変化率は、各々の実施例及び比較例について、3個の試験片の平均値とされた。圧痕の深さが0.20μm以下である場合を「OK」と評価し、0.20μmを超えている場合を「NG」と評価した。
なお、寸法変化率評価試験及び静的負荷容量評価試験の結果と、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5の金属組織との関係を評価するため、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5について、オーステナイト相の体積比率及びマルテンサイト相の半値幅の測定を行った。オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1の関係を満たしている場合に「OK」と評価し、この関係を満たしていない場合に「NG」と評価した。
<試験結果>
表3には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5についての寸法変化率評価試験及び静的負荷容量評価試験の結果が示されている。
表3には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5についての寸法変化率評価試験及び静的負荷容量評価試験の結果が示されている。
表3に示すように、実施例1〜実施例4については、寸法変化率評価試験の結果及び静的負荷容量評価試験の結果が、いずれも「OK」であった。他方で、比較例1〜比較例5については、寸法変化率評価試験結果及び静的負荷容量評価試験の結果の少なくともいずれか一方が、「NG」であった。
また、表3には、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5において、オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1との関係を満たしているか否かが示されている。
表3に示すように、実施例1〜実施例4については、オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1との関係を満たしている一方、比較例1〜比較例5については、この関係が満たされていなかった。
このことから、オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1との関係を満たしている場合には、軸受部品10の寸法安定性及び静的負荷容量が改善されることが明らかにされた。
(実施形態に係る軸受部品、転がり軸受及び軸受部品の製造方法の効果)
上記の通り、実施形態に係る軸受部品10においては、オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1との関係を満たしている。そのため、実施形態に係る軸受部品10によると、寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の通り、実施形態に係る軸受部品10においては、オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1との関係を満たしている。そのため、実施形態に係る軸受部品10によると、寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の通り、実施形態に係る転がり軸受20の外輪21、内輪22及び転動体23の少なくとも1つは、上記の軸受部品10である。そのため、実施形態に係る転がり軸受20によると、寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
上記の通り、実施形態に係る軸受部品10の製造方法によると、オーステナイト相の体積比率(X)及びマルテンサイト相の半値幅(Y)が、0.054×Y−0.019×X>0.130かつX>14.1との関係を満たす軸受部品10を製造することができる。そのため、実施形態に係る実施形態に係る軸受部品10の製造方法によると、寸法安定性及び静的負荷容量を改善することができる。
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
上記の実施形態は、軸受部品、その製造方法及び当該軸受部品を用いた転がり軸受に特に有利に適用される。
X オーステナイト相の体積比率、Y マルテンサイト相の{211}面でのX線回折における半値幅、10 軸受部品、20 転がり軸受、21 外輪、21a 外輪転走面、22 内輪、22a 内輪転走面、23 転動体、24 保持器、S1 準備工程、S2 焼き入れ工程、S21 加熱工程、S22 冷却工程、S3 焼き戻し工程、S4 後処理工程。
Claims (7)
- 鋼製の軸受部品であって、
前記鋼は、オーステナイト相と、マルテンサイト相とを含み、
前記鋼中における前記オーステナイト相の体積比率をX、前記マルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅をYとした場合に、X<14.1かつ0.054×Y−0.019×X>0.130との関係を満たす、軸受部品。 - 前記X線は、CrKα線である、請求項1に記載の軸受部品。
- 前記鋼は、JIS規格に定められたSUJ2鋼材である、請求項1又は2に記載の軸受部品。
- 外輪と、
前記外輪の内側に配置される内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配置される転動体とを備え、
前記外輪、前記内輪及び前記転動体のうちの少なくとも1つは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記軸受部品である、転がり軸受。 - 鋼製の軸受部品の製造方法であって、
前記鋼の焼入れを行う工程と、
前記鋼の焼き戻しを行う工程とを備え、
前記鋼は、前記焼き戻し後において、オーステナイト相と、マルテンサイト相とを含み、
前記焼き戻し後の前記鋼中における前記オーステナイト相の体積比率をX、前記マルテンサイト相の{211}面におけるX線の回折ピークの半値幅をYとした場合に、X<14.1かつ0.054×Y−0.019×X>0.130との関係を満たす、軸受部品の製造方法。 - 前記X線は、CrKα線である、請求項5に記載の軸受部品の製造方法。
- 前記鋼は、JIS規格に定められたSUJ2鋼材である、請求項5又は6に記載の軸受部品の製造方法。
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