JP2018167845A - 酸素吸収性多層容器の梱包体 - Google Patents

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史裕 伊東
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Abstract

【課題】酸素吸収性多層容器の酸素吸収性能が保管中に低下することを抑制する方法を提供する。
【解決手段】テトラリン環を有する構成単位を含有するポリエステル化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)とを含む酸素吸収性多層容器と、酸素濃度が1vol%未満である気体とが、密閉容器内に密封されている酸素吸収性多層容器の梱包体。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸素吸収性多層容器の梱包体に関するものである。
食品、飲料、医薬品、化粧品に代表される、酸素の影響を受けて変質あるいは劣化しやすい各種物品の酸素酸化を防止し、長期に保存する目的で、これらを収納した包装体内の酸素除去を行う酸素吸収剤が使用されている。
一方で、容器自体に酸素吸収性を付与した酸素吸収性容器も数多く提案されている。中でも、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で、酸素バリア性能および酸素吸収性能に優れる酸素吸収性容器として、所定のテトラリン環を有するポリマーと遷移金属触媒を含有する酸素吸収性多層容器(特許文献1参照)が開発されている。
国際公開第2013/077436号
しかしながら、特許文献1の酸素吸収性多層容器は製造直後から酸素吸収性能を発現するため、保管中に該多層容器が周辺に存在する酸素を吸収することで酸素吸収性能が低下するといった課題を有している。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、酸素吸収性多層容器の酸素吸収性能が保管中に低下することを抑制する方法を提供することにある。
本発明者らが検討を進めた結果、酸素濃度を1vol%未満とした密閉容器内に該多層容器を保存することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1> [1]テトラリン環を有する構成単位を含有するポリエステル化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)とを含む酸素吸収性多層容器と、[2]酸素濃度が1vol%未満である気体とが、密閉容器内に密封されている、酸素吸収性多層容器の梱包体。
<2>
前記ポリエステル化合物が、下記一般式(1)〜(3)
Figure 2018167845
からなる群より選択される少なくとも1つのテトラリン環を有する構成単位を含有するものである、上記<1>記載の酸素吸収性多層容器の梱包体。
<3> 前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属を含むものである、上記<1>または<2>に記載の酸素吸収性多層容器の梱包体。
<4> 前記遷移金属触媒が、前記ポリエステル化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.0001〜10質量部含まれる、上記<1>〜<3>に記載の酸素吸収性多層容器の梱包体。
本発明によれば、酸素吸収性多層容器を低酸素濃度で保管出来る為、酸素吸収性多層容器の酸素吸収性能が保管中に低下することを抑制することが出来る。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
[酸素吸収性多層容器の梱包体]
本実施形態の酸素吸収性多層容器の梱包体では、(1)酸素吸収性多層容器と、(2)酸素濃度が1vol%未満である気体とが、密閉容器内に密封されている。
[[1]酸素吸収性多層容器]
本実施形態の酸素吸収性多層容器は、酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)とを少なくとも含む。
本実施形態の酸素吸収性多層容器における層構成は特に限定されず、酸素吸収層(層A)及び樹脂層(層B)の数や種類は特に限定されない。例えば、1層の層A及び1層の層BからなるA/B構成であってもよく、1層の層A及び2層の層BからなるB/A/Bの3層構成であってもよい。また、1層の層A並びに層B1及び層B2の2種4層の層BからなるB1/B2/A/B2/B1の5層構成であってもよい。さらに、本実施形態の多層容器は、必要に応じて接着層(層AD)等の任意の層を含んでもよく、例えば、B1/AD/B2/A/B2/AD/B1の7層構成であってもよい。
[酸素吸収層(層A)]
本実施形態の酸素吸収性多層容器の酸素吸収層(層A)は、テトラリン環を有する構成単位を含有するポリエステル化合物(以下、単に「テトラリン環含有ポリエステル化合物」ともいう。)と遷移金属触媒とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる。
層A中の前記テトラリン環含有ポリエステル化合物の含有割合は、特に限定されないが、層Aの総量に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。テトラリン環含有ポリエステル化合物の含有割合が50質量%以上であると、酸素吸収性能がより高められる傾向にある。
<テトラリン環含有ポリエステル化合物>
酸素吸収層(層A)の酸素吸収性樹脂組成物において用いられるテトラリン環含有ポリエステル化合物は、テトラリン環を構成単位として有するポリエステル化合物であれば何ら限定されず、例えば、国際公開第2013/077436号(特許文献1)に記載されたポリエステル化合物を用いることができる。中でも、成形加工性と酸素吸収性能、コストの観点から、本実施形態のテトラリン環含有ポリエステル化合物としては、上記式(1)〜(3)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。ここで、「構成単位を含有する」とは、化合物中に当該構成単位を1以上有することを意味する。かかる構成単位は、テトラリン環含有ポリエステル化合物中に繰り返し単位として含まれていることが好ましい。このようにテトラリン環含有ポリエステル化合物が重合体である場合、上記構成単位のホモポリマー、上記構成単位と他の構成単位とのランダムコポリマー、上記構成単位と他の構成単位とのブロックコポリマーのいずれであっても構わない。
上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物の分子量は、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。一般的には、重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜8.0×10であることが好ましく、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。また同様に、数平均分子量(Mn)が1.0×10〜1.0×10であることが好ましく、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。なお、ここでいう分子量は、いずれもポリスチレン換算の値を意味する。なお、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、テトラリン環含有ポリエステル化合物の極限粘度(フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値)は、特に限定されないが、テトラリン環含有ポリエステル化合物の成形性の観点から、0.1〜2.0dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5dL/gである。
また、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、0〜90℃であることが好ましく、より好ましくは10〜80℃である。なお、ここでいうガラス転移温度は、示差走査熱量測定により測定される値を意味する。
上述したテトラリン環含有ポリエステル化合物は、いずれも、テトラリン環のベンジル位に水素を有するものであり、上述した遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
また、酸素吸収層(層A)の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後の臭気発生が無いものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物においては、まずテトラリン環のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基またはケトン基が生成すると考えられる。言い換えれば、酸素吸収層(層A)の酸素吸収性樹脂組成物においては、上記従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、テトラリン環含有ポリエステル化合物の構造が維持され、臭気の原因となる低分子量の有機化合物が酸素吸収後に生成され難く、その結果、酸素吸収後の臭気発生が外部から検知できない程に抑制されていると推測される。
<遷移金属触媒>
酸素吸収層(層A)の酸素吸収性樹脂組成物において用いられる遷移金属触媒としては、上記のテトラリン環含有ポリエステル化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
かかる遷移金属触媒の具体例としては、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、これらの遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸またはナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸素吸収層(層A)の酸素吸収性樹脂組成物におけるテトラリン環含有ポリエステル化合物および遷移金属触媒の含有割合は、使用するテトラリン環含有ポリエステル化合物や遷移金属触媒の種類および所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量の観点から、遷移金属触媒の含有量は、テトラリン環含有ポリエステル化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.0001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0002〜2質量部である。
ポリエステル化合物及び遷移金属触媒は、公知の方法で混合する事が出来るが、好ましくは押出機により混練することにより、分散性の良い酸素吸収性樹脂組成物として使用することができる。また、酸素吸収性樹脂組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等を添加しても良いが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合することができる。また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。
本実施形態の酸素吸収性多層容器において、酸素吸収層(層A)の厚みは、特に限定されないが、1〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは10〜900μmであり、さらに好ましくは50〜800μmである。層Aの厚みがこの好ましい範囲内にあることにより、そうでない場合に比べて、加工性や経済性を過度に損なうことなく、酸素吸収性能がより高められ、より長期の保存が可能になる傾向にある。
[熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)]
本実施形態の熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)は、熱可塑性樹脂を含有する層である。層B における熱可塑性樹脂の含有率は特に限定されないが、層Bの総量に対する熱可塑性樹脂の含有率が、70〜100質量% であることが好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。
本実施形態の酸素吸収性多層容器は、層Bを複数有していてもよく、複数の層Bの構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層Bの厚みは、用途に応じて適宜決定することができ、多層成形容器に要求される諸物性を確保するという観点からは、好ましくは30〜10000μm、より好ましくは50〜7000μm、更に好ましくは70〜5000μmである。
本実施形態の熱可塑性樹脂には任意の熱可塑性樹脂を使用することができ、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン− ビニルアルコール共重合体、植物由来樹脂及び塩素系樹脂を挙げることができる。本実施形態において熱可塑性樹脂としては、これら樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂においては、本発明の前記ポリエステル化合物以外の熱可塑性樹脂の含有量が、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。
特に好ましいのは、ノルボルネンとエチレン等のオレフィンを原料とした共重合体、およびテトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンを原料とした共重合体であるシクロオレフィンコポリマー(COC)、また、ノルボルネンを開環重合し、水素添加した重合物であるシクロオレフィンポリマー(COP)である。COCおよびCOPは、耐熱性や耐光性などの化学的性質や耐薬品性はポリオレフィン樹脂としての特徴を示し、機械特性、溶融、流動特性、寸法精度などの物理的性質は非晶性樹脂としての特徴を示すことから最も好ましい材質である。このようなCOCおよびCOPは例えば特開平5−300939号公報あるいは特開平5−317411号公報に記載されている。
COCは、例えば三井化学株式会社製、アペル(登録商標)として市販されており、またCOPは、例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオネックス(登録商標)又はゼオノア(登録商標)や株式会社大協精工製、Daikyo Resin CZ(登録商標)として市販されている。
本実施形態の酸素吸収性多層容器は、前記酸素吸収層(層A)及び層Bに加えて、所望する性能等に応じて任意の層を含んでいてもよい。そのような任意の層としては、例えば、接着層等が挙げられ、隣接する2つの層の間で実用的な層間接着強度が得られない場合には、当該2つの層の間に接着層(層AD)を設けることが好ましい。
本実施形態の酸素吸収性多層容器は、ガスバリア性及び遮光性の観点から、金属箔、金属蒸着層及び有機−無機膜を含んでいてもよい。また、酸素吸収性多層容器の開封を容易にするために、易剥離層や易引裂層を含んでいてもよい。
酸素吸収性多層容器の製造方法については、各種材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を利用することができる。例えば、フィルムやシートの成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた樹脂組成物を付属した押出機から押し出して製造する方法や、酸素吸収性フィルムもしくはシートに接着剤を塗布し、他のフィルムやシートと貼り合わせることで製造する方法がある。また、射出機を用い、溶融した樹脂を、多層多重ダイスを通して射出金型中に共射出または逐次射出することによって所定の形状の多層容器に一挙に成形することができる。
本実施形態の酸素吸収性多層容器は、上述した酸素吸収層(層A)を包装容器の全体又は一部に含むものである。本実施形態の酸素吸収性多層容器は、容器外からわずかに侵入する酸素のほか、容器内の酸素を吸収して、保存する内容物品の酸素による変質を防止することができる。本実施形態の酸素吸収性多層容器の形状は特に限定されず、収納、保存する物品に応じて適切な範囲で選ぶことができる。例えば、本実施形態の酸素吸収性多層体はフィルムとして作製し、三方シール平袋、スタンディングパウチ、ガセット包装袋、ピロー包装袋、主室と副室とからなり主室と副室との間に易剥離壁を設けた多室パウチ、熱成形を施した容器、シュリンクフィルム包装等とすることができる。また、熱成形容器などのフランジ部を有する場合には、そのフランジ部に易剥離機能を付与する特殊加工を施してもよい。また、容器の蓋材、トップシール等の部材として用いることで、包装容器に脱酸素機能を付与することができる。
また、本実施形態の酸素吸収性多層体は、シートとして作製し、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の成形方法によりトレイ、カップ、ボトル、チューブ、PTP(プレス・スルー・パック)等の所定の形状の酸素吸収性多層容器に熱成形することができる。
本実施形態の酸素吸収性多層成形容器の製造方法及び層構成については特に限定されず、射出成形法、圧縮成形法、押出成形、圧縮成形(シート成形、ブロー成形)等により製造することができるが、射出成形法が好ましい。例えば、2台以上の射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、層Aを構成する材料及び層B を構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応した多層成形容器を製造することができる。また、先ず、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する樹脂と同時に射出し、次に層Bを構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより3層構造B/A/Bの多層容器が製造できる。
また、先ず、層Bを構成する材料を射出し、次いで層Aを構成する材料を単独で射出し、最後に層Bを構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造B/A/B/A/B 多層容器が製造できる。
また、先ず、層B1を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層B2を構成する材料を別の射出シリンダーから、層B1を構成する樹脂と同時に射出し、次に層Aを構成する樹脂を層B1、層B2を構成する樹脂と同時に射出し、次に層B1を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより5層構造B1/B2/A/B2/B1の多層成形容器が製造できる。
該容器の形状は特に限定されるものではないが、例えば、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジが挙げられる。
〔バイアル〕
本実施形態のバイアルの構成は、一般的なバイアルとなんら変わるものではなく、ボトル、ゴム栓、キャップから構成される。薬液をボトルに充填後、ゴム栓をして、更にその上からキャップを巻締めることで密閉して用いられる。前記ボトル部分が、本実施形態で用いられる酸素吸収性医療用多層成形容器であって、中間層の少なくとも一層が酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)であり、最内層及び最外層が熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)である。
〔プレフィルドシリンジ〕
本実施形態のプレフィルドシリンジの構成は一般的なプレフィルドシリンジとなんら変わるものではなく、少なくとも薬液を充填する為のバレル、バレルの一端に注射針を接合する為の接合部及び使用時に薬液を押出す為のプランジャーから構成される。前記バレルが本発明で用いられる酸素吸収性多層容器であって、中間層の少なくとも一層が酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)であり、最内層、最外層が熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)である。
容器の厚さは、使用目的や大きさによるが0.5〜20mm程度のものであればよい。また、厚さは均一であっても、厚さを変えたものであってもいずれでもよい。また表面に長期保存安定の目的で、別のガスバリア膜や遮光膜が形成されていてもよい。かかる膜およびその形成方法としては、特開2004−323058号公報に記載された方法などを採用できる。
また、これらの被保存物の充填前後に、被保存物に適した形で、医療多層容器や被保存物の殺菌を施すことができる。殺菌方法としては、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、121℃以上の高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線、電子等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
[[2]酸素濃度が1vol%未満である気体]
本実施形態の酸素吸収性多層容器の梱包体では、保管中に多層容器の酸素吸収性能が低下するのを抑制する為に、梱包体内の酸素濃度を1vol%未満とする。酸素濃度は低いほど酸素吸収性能の低下を抑制でき、0.5vol%未満が好ましく、0.1vol%未満がより好ましい。酸素濃度を低減させる手法は特に限定されず、窒素置換や脱酸素剤の使用、脱気、等の一般的な手段を使用可能である。窒素置換の手法として、具体例としてはチャンバー式やノズル式などが挙げられる。用いる窒素は何ら限定されないが、酸素吸収性多層容器の汚染防止や置換効率の観点から、高純度品であることが好ましい。また、脱酸素剤の種類についても特に限定されず、例えば、三菱ガス化学株式会社製、エージレス(登録商標)やアイリス・ファインプロダク株式会社製、サンソカット(登録商標)などが挙げられる。さらに、脱気の手法についても何ら限定されず、富士インパルス株式会社製、V−460Cシリーズなどが使用できる。また、上記の手段を組み合わせて使用すると更に効果的である。
<密閉容器>
本実施形態で用いる密閉容器は、酸素吸収性多層容器を収納できるものであれば、その大きさや形状は限定されない。形状としては円筒型のドラム缶や、合掌袋や三方袋のような袋形状等が挙げられる。
密閉容器の素材は特に限定されず、公知のガスバリア性物質を用いることができる。酸素バリア性に優れた物が好ましく、酸素透過係数(単位:cc・mm/m・day・atm、23℃)として5以下が好ましく、3以下がより好ましい。例えば、一軸ないし二軸延伸された、PET等のポリエステルフィルム又はMXD6等のポリアミドフィルム;ビニルアルコール共重合体系フィルム;アルミニウム箔;一軸ないし二軸延伸されたPETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィン系フィルムなどの延伸フィルム上にアルミニウム等の金属の薄膜を蒸着した金属蒸着プラスチックフィルム;一軸ないし二軸延伸されたPETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィン系フィルムなどの延伸フィルム上に、酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を設けた無機化合物蒸着プラスチックフィルム;上記のプラスチックフィルムに塩化ビニリデン樹脂、無機層状化合物とポリビニルアルコール等の水溶性高分子の混合物等を適量塗工したバリア層コーティングプラスチックフィルム等が好ましく使用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に記載が無い限り、NMR測定は室温で行った。
[モノマー合成例]
内容積18Lのオートクレーブに、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル2.20kg、2−プロパノール11.0kg、5%パラジウムを活性炭に担持させた触媒350g(50wt%含水品)を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の空気を窒素と置換し、さらに窒素を水素と置換した後、オートクレーブ内の圧力が0.8MPaとなるまで水素を供給した。次に、撹拌機を起動し、回転速度を500rpmに調整し、30分かけて内温を100℃まで上げた後、さらに水素を供給し圧力を1MPaとした。その後、反応の進行による圧力低下に応じ、1MPaを維持するよう水素の供給を続けた。7時間後に圧力低下が無くなったので、オートクレーブを冷却し、未反応の残存水素を放出した後、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液を濾過し、触媒を除去した後、分離濾液から2−プロパノールをエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物に、2−プロパノールを4.40kg加え、再結晶により精製し、テトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチルを80%の収率で得た。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。H‐NMR(400MHz CDCl)δ7.76−7.96(2H m)、7.15(1H d)、3.89(3H s)、3.70(3H s)、2.70−3.09(5H m)、2.19−2.26(1H m)、1.80−1.95(1H m)。
[ポリマー製造例]
(製造例1)
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置および窒素導入管を備えたポリエステル樹脂製造装置に、モノマー合成例で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチル543g、エチレングリコール217g、テトラブチルチタネート0.171gを仕込み、窒素雰囲気で230℃まで昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を85%以上とした後、テトラブチルチタネート0.171gを添加し、昇温と減圧を徐々に行い、245℃、133Pa以下で重縮合を行い、ポリエステル化合物(1)を得た。
得られたポリエステル化合物(1)の重量平均分子量と数平均分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行った結果、ポリスチレン換算の重量平均分子量は8.5×10、数平均分子量は3.0×10であった。ガラス転移温度と融点をDSCにより測定を行った結果、ガラス転移温度は67℃、融点は非晶性のため認められなかった。
(製造例2)
エチレングリコールに代えて1,4−ブタンジオール315gを用いること以外は、製造例1と同様にしてテトラリン環含有ポリエステル化合物(2)を合成した。得られたポリエステル化合物(2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.5×10、数平均分子量は3.6×10、極限粘度は1.08dL/g、ガラス転移温度は36℃、融点は145℃であった。
(製造例3)
エチレングリコールに代えて1,6−ヘキサンジオール413gを用いること以外は、製造例1と同様にしてテトラリン環含有ポリエステル化合物(3)を合成した。得られたポリエステル化合物(3)のポリスチレン換算の重量平均分子量は6.6×10、数平均分子量は2.4×10、極限粘度は0.98dL/g、ガラス転移温度は16℃、融点は137℃であった。
[多層容器(バイアル)の製造例]
下記の条件により、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する樹脂と同時に射出し、次に層Aを構成する樹脂を必要量射出して射出金型内キャビティーを満たすことにより、B/A/Bの3層構成の射出成形体を得た後、射出成形体を所定の温度まで冷却し、ブロー金型へ移行した後にブロー成形を行うことでバイアル(ボトル部)を製造した。層Aの質量をバイアルの総質量の30質量%とした。層Aを構成する樹脂としては酸素吸収樹脂組成物(1)を使用した。層Bを構成する樹脂としてはシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製、商品名:ZEONEX(登録商標) 5000、ガラス転移温度68℃)を使用した。
(バイアルの形状)
全長45mm、外径25mmφ、肉厚1.8mmとした。なお、バイアルの製造には、射出ブロー一体型成形機日精エー・エス・ビー機械株式会社製、型式:ASB−12N/10)を使用した。を使用した。
(バイアルの成形条件)
層A用の射出シリンダー温度:260℃
層B用の射出シリンダー温度:260℃
射出金型内樹脂流路温度:260℃
ブロー温度:150℃
ブロー金型冷却水温度:15℃
[多層容器(シリンジ)の製造例]
下記の条件により、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する樹脂と同時に射出し、次に層Aを構成する樹脂を必要量射出して射出金型内キャビティーを満たすことにより、B/A/Bの3層構成のシリンジを製造した。層Aの質量をシリンジの総質量の30質量%とした。層Aを構成する樹脂としては酸素吸収樹脂組成物(1)を使用した。層Bを構成する樹脂としてはシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製、商品名:ZEONEX(登録商標) 5000、ガラス転移温度68℃)を使用した。成形後のゲートを切断後の径がISO594−1(φ3.976±0.051)に規定の値となる位置にて超音波溶断機にて切断した。
(シリンジの形状)
ISO11040−6に準拠した内容量1cc(ロング)とした。なお、シリンジの製造には、射出成形機(日精エー・エス・ビー機械株式会社製、型式:ASB−12N/10)を使用した。
(シリンジの成形条件)
層A用の射出シリンダー温度:260℃
層B 用の射出シリンダー温度:260℃
射出金型内樹脂流路温度:260℃
金型温度:18℃
[評価]
実施例及び比較例で得られたバイアル及びシリンジの酸素吸収性能保持率及び耐衝撃試験について、以下の方法で測定し評価した。
(1)酸素吸収性能保持率
多層容器を500mLの空気と共にアルミ袋に封入し、袋内湿度を90%RHとした後に密封した。40℃で2ヶ月間保存後のアルミ袋内の酸素濃度を測定し、容器の酸素吸収量を計算した。測定装置は、ジルコニア式酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、製品名:「LC−750F」)を使用した。酸素吸収性能保持率(%)は以下の式から算出した。
酸素吸収性能保持率(%)
=(所定期間保存後の酸素吸収量/成形直後の酸素吸収量)×100
(2−1)バイアルの耐衝撃試験
バイアルに水を公称容量まで充填し、23℃50%RH下にて1日保存した後、バイアル底部を下にして金属板上に垂直に高さ100cmから落下させた時の破損の有無を20個のサンプルに対して調査した。
(2−2)シリンジの耐衝撃試験
シリンジを40℃、90%RH下にて1ヶ月保存した後、50gの金属球をシリンジ胴部に2mの高さから落下させた時の破壊の有無を20個のサンプルに対して調査した。
(実施例1)
ポリエステル化合物(1)100質量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.00025質量部となるようドライブレンドし、直径37mmのスクリューを2本有する2軸押出機に30kg/hの速度で上記材料を供給し、シリンダー温度220℃の条件にて溶融混練を行い、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングし、酸素吸収性樹脂組成物を得た。層Aを構成する樹脂として前記酸素吸収樹脂組成物を用い、上述の方法でバイアルを製造した。次に、得られた酸素吸収性多層バイアルをハイバリア袋(構成:蒸着PET(12)/Ny(15)/PE(20)/PE(30))に脱酸素剤(三菱ガス化学株式会社製、商品名:AGELESS(登録商標) ZP−100)と共に密封し、23℃/50%RHで最長6ヶ月保存し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバイアルを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバイアルを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1で得られた酸素吸収性多層バイアルをハイバリア袋(構成:蒸着PET(12)/Ny(15)/PE(20)/PE(30))に入れ、窒素置換を実施して袋内の酸素濃度を1vol%未満まで低下させた後に密封し、23℃/50%RHで最長6ヶ月保存し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(2)を用いた以外は、実施例4と同様にしてバイアルを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(3)を用いた以外は、実施例4と同様にしてバイアルを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1で得られた酸素吸収性多層バイアルをハイバリア袋(構成:蒸着PET(12)/Ny(15)/PE(20)/PE(30))に入れ、窒素置換を実施して袋内の酸素濃度を1vol%未満まで低下させた後に脱酸素剤と共に密封し、23℃/50%RHで最長6ヶ月保存し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1で得られた酸素吸収樹脂組成物を用い、上述の方法でシリンジを製造した。次に、得られた酸素吸収性多層シリンジをハイバリア袋(構成:蒸着PET(12)/Ny(15)/PE(20)/PE(30))に脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名:AGELESS(登録商標) ZP−100)と共に密封し、23℃/50%RHで最長6ヶ月保存し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(2)を用いた以外は、実施例4と同様にしてシリンジを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(3)を用いた以外は、実施例4と同様にしてシリンジを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例8で得られた酸素吸収性多層シリンジをハイバリア袋(構成:蒸着PET(12)/Ny(15)/PE(20)/PE(30))に入れ、窒素置換を実施して袋内の酸素濃度を1vol%未満まで低下させた後に密封し、23℃/50%RHで最長6ヶ月保存し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例12)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(2)を用いた以外は、実施例11と同様にしてシリンジを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例13)
ポリエステル化合物(1)に代えてポリエステル化合物(3)を用いた以外は、実施例11と同様にしてシリンジを製造し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例14)
実施例8で得られた酸素吸収性多層シリンジをハイバリア袋(構成:蒸着PET(12)/Ny(15)/PE(20)/PE(30))に入れ、窒素置換を実施して袋内の酸素濃度を1%未満まで低下させた後に脱酸素剤と共に密封し、23℃/50%RHで最長6ヶ月保存し、容器評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
バリア袋に脱酸素剤を入れなかったこと以外は実施例1と同様に行って、バイアルの評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1で得られたバイアルをバリア袋に入れずに、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
バリア袋に脱酸素剤を入れなかったこと以外は実施例4と同様に行って、シリンジの評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例4で得られたシリンジをバリア袋に入れずに、実施例4と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2018167845
上記の実施例の結果より、比較例に比べ袋内酸素濃度を1%未満とすることで、良好な耐衝撃性を維持しつつ、多層バイアル及びシリンジの酸素吸収性能を使用直前まで保持可能であった。これより、本願の梱包体を用いた保管方法は、多層バイアル及びシリンジの使用前の酸素吸収性能低下防止に非常に有効であった。

Claims (4)

  1. [1]テトラリン環を有する構成単位を含有するポリエステル化合物及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(層B)とを含む酸素吸収性多層容器と、[2]酸素濃度が1vol%未満である気体とが、密閉容器内に密封されている酸素吸収性多層容器の梱包体。
  2. 前記ポリエステル化合物が、下記一般式(1)〜(3)
    Figure 2018167845
    からなる群より選択される少なくとも1つのテトラリン環を有する構成単位を含有するものである、請求項1記載の酸素吸収性多層容器の梱包体。
  3. 前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属を含むものである、請求項1または2に記載の酸素吸収性多層容器の梱包体。
  4. 前記遷移金属触媒が、前記ポリエステル化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.0001〜10質量部含まれる、請求項1〜3の何れかに記載の酸素吸収性多層容器の梱包体。
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