(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、溶解されて液状となった金属材料(溶湯)を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。なお、溶湯に代えて、固液共存金属を用いることも可能である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体部3と、マシン本体部3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体部3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、成形品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体部3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、基本的には(例えば射出装置9の取付けに係る部分を除いて)、公知の種々の構成と同様とされてよい。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図2)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
なお、ダイカストマシン1のうち射出装置9に着目する場合において、制御ユニット5は、射出装置9の制御ユニットとして捉えられてよい。制御ユニット5の構成要素(例えば制御装置13)についても同様である。
(射出装置の構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側(図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがあり、また、この定義に従って、前進または後退等の語を用いることがある。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
駆動部25は、固定部位(符号省略)と、固定部位に対してプランジャ23の軸方向へ移動可能な可動部位(後述する接続軸41等)とを有している。固定部位は、例えば、射出フレーム69と固定されている。射出フレーム69は、例えば、型締装置7のうちの固定金型103を保持する固定ダイプレート7aに固定されている。可動部位は、プランジャ23と連結されている。
(駆動部の全体構成)
図2は、射出装置9(駆動部25)の具体的な構成を示す模式図である。図2の大部分は、基本的に上方から見た断面図となっている。ただし、図2は、側方から見た図と捉えられても構わない。
駆動部25は、例えば、全電動式のものであり、射出電動機27と、射出電動機27の駆動力をプランジャ23へ伝達するための射出伝達部29と、増圧電動機31と、増圧電動機31の駆動力をプランジャ23へ伝達するための増圧伝達部33と、増圧伝達部33とプランジャ23との接続及び遮断を行う接続部35とを有している。
射出電動機27及び射出伝達部29は、主として、低速射出及び高速射出(狭義の射出)に利用されるものである。増圧電動機31及び増圧伝達部33は、主として増圧に利用されるものである。射出装置9は、これらによりプランジャ23を駆動する際、工程の進行に応じて、プランジャ23へ駆動力を付与する電動機を切り換える。接続部35は、その切り換え動作を好適化することに寄与する。
本実施形態においては、射出電動機27及び射出伝達部29の組み合わせと、増圧電動機31及び増圧伝達部33の組み合わせとは、採用している機構の原理等に関して共通している点があり、説明が重複する部分が比較的多い。そこで、以下では、説明が両者で共通する場合に、射出電動機27及び射出伝達部29について説明し、増圧電動機31及び増圧伝達部33の符号を( )内に付すことがある。すなわち、( )の前の符号(及び名称)は、( )内の符号に置換されてよい。
(電動機)
射出電動機27(31)の台数は、適宜に設定されてよい。本実施形態の説明では、2つの射出電動機27と1つの増圧電動機31とが設けられる態様を例に取る。
射出電動機27(31)は、例えば、回転式の電動機により構成されており、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。なお、射出電動機27(31)は、適宜な形式のものとされてよく、例えば、直流電動機であってもよいし、交流電動機であってもよいし、同期電動機であってもよいし、誘導電動機であってもよい。
射出電動機27(31)は、ブレーキ付のものとされてもよい。以下の説明において、射出電動機27(31)が停止している状態は、トルクフリーの状態であってもよいし、一定の位置に位置制御されている状態であってもよいし、ブレーキが利用されている状態であってもよく、これらから適宜に選択されてよい。
射出電動機27(31)は、例えば、サーボモータとして構成されている。すなわち、射出電動機27(31)は、その回転を検出する回転センサ27s(31s)を有し、回転センサ27s(31s)の検出値に基づいて、不図示のサーボドライバにより回転数のフィードバック制御がなされる。回転センサ27s(31s)は、例えば、回転量に応じた数のパルスを出力するエンコーダである。
また、増圧電動機31のサーボドライバは、例えば、増圧電動機31に流れる電流を検出し、その検出値に基づいてトルクのフィードバック制御を行うことが可能である。射出電動機27のサーボドライバも、そのようなトルクのフィードバック制御が可能であってもよい。
射出電動機27(31)は、低慣性電動機により構成されてもよい。すなわち、射出電動機27(31)は、定格トルクに対してロータのイナーシャが相対的に小さい電動機により構成されてもよい。なお、低慣性電動機は、そのカタログ乃至は仕様書などにおいて、低慣性電動機である旨が記載されていることが多く、当該記載に基づいて低慣性電動機であるか否かを特定可能である。一般に、低慣性電動機は、ロータ径をロータの軸方向長さに対して相対的に小さくして構成されている。ただし、磁石材料、ロータ径、鉄心形状及び積厚等を最適化することにより低慣性が実現されたものも知られている。
射出電動機27及び増圧電動機31の仕様は、互いに同一であってもよいが、本実施形態では互いに異なっている。例えば、射出電動機27は、増圧電動機31に比較して、定格回転数が高く、定格トルクが低い。
射出電動機27(31)の配置は適宜に設定されてよい。図示の例では、射出電動機27(31)は、プランジャ23に対して並列(プランジャ23と軸方向の位置が重複していなくても、便宜上、このように表現するものとする。)に配置され、その出力軸を後方へ向けている。また、射出電動機27及び増圧電動機31は、前後方向(プランジャ23の進退方向)において互いに重複しないように配置されている。また、2つの射出電動機27は、上下方向(紙面貫通方向。左右方向でもよい。)の位置を互いに異ならせて互いに並列に配置されている。
(伝達部)
射出伝達部29(33)は、例えば、射出電動機27(31)の回転を伝達する巻掛伝動機構37(55)と、巻掛伝動機構37(55)からの回転を直線運動に変換する射出ねじ機構39(増圧ねじ機構57)とを有している。
また、射出伝達部29は、上記に加えて、プランジャ23に連結されており、射出ねじ機構39の直線運動をプランジャ23へ伝える接続軸41を有している。増圧ねじ機構57の直線運動は、接続部35を介して接続軸41へ伝達される。
(巻掛伝動機構)
巻掛伝動機構37(55)は、例えば、プーリ・ベルト機構であり、射出電動機27(31)の出力軸に固定されたプーリ43(59)と、プーリ43(59)に掛けられたベルト45(61)と、ベルト45(61)が掛けられ、射出ねじ機構39(57)に兼用されている射出ナット47(増圧ナット63)とを有している。ベルト45(61)は、例えば、歯付ベルトであってもよいし、歯が付いていないものであってもよい。巻掛伝動機構37(55)は、スプロケット・チェーン機構のように、プーリ・ベルト機構以外の他の形式のものとされてもよい。
射出電動機27(31)の回転は、プーリ43(59)、ベルト45(61)及び射出ナット47(63)へ順次伝達され、射出ねじ機構39(57)に入力される。巻掛伝動機構37(55)は、例えば、射出ねじ機構39(57)に対する射出電動機27(31)の配置の自由度を向上させることに寄与している。プーリ43(59)の径と射出ナット47(63)の径とは、同等であってもよいし、一方が他方よりも大きくてもよい。すなわち、巻掛伝動機構37(55)は、減速又は増速に寄与しなくてもよいし、寄与してもよい。
なお、図示の例では、射出伝達部29においては、射出ナット47の径は、プーリ43の径と概ね同等となっている。一方、増圧伝達部33においては、増圧ナット63の径は、プーリ59の径よりも大きくなっている。従って、増圧電動機31の生じたトルクよりも大きなトルクで増圧ナット63は駆動される。
射出伝達部29において、射出ナット47には、2つのベルト45が掛けられており、2つの射出電動機27の駆動力が伝達される。ただし、射出電動機27毎に射出ナット47が設けられてもよい。2つの射出電動機27の制御においては、タンデム制御が行われてもよい。また、射出電動機27は、1つのみ設けられてもよい。
(ねじ機構)
射出ねじ機構39(57)は、既述の射出ナット47(63)と、射出ナット47(63)に螺合する射出ねじ軸49(増圧ねじ軸65)とを有している。なお、図2では、増圧ねじ軸65は、2点鎖線により、前進したときの状態も示されている。
射出ナット47(63)は、軸回りの回転が許容されているとともに軸方向の移動が規制されている。一方、射出ねじ軸49(65)は、軸回りの回転が規制されているとともに軸方向の移動が許容されている。従って、射出電動機27(31)の回転が射出ナット47(63)に伝達されると、射出ねじ軸49(65)がその軸方向に移動する。
射出ナット47(63)の軸回りの回転の許容及び軸方向の移動の規制は、例えば、射出ナット47(63)が適宜な軸受けによって支持されることによりなされている。射出ねじ軸49(65)の軸回りの回転の規制は、後述するように接続軸41によってなされる。ただし、接続軸41による回転の規制に加えて、又は代えて、スプライン溝等の一般的な方法によって回転の規制がなされてもよい。
射出ねじ機構39(57)は、射出ナット47(63)と射出ねじ軸49(65)との間にボールが介在するボールねじ機構であってもよいし、ボールが介在しないすべりねじ機構であってもよい。例えば、射出ねじ機構39は、ボールねじ機構とされ、増圧ねじ機構57は、すべりねじ機構とされてよい。射出ねじ機構39(57)は、ねじ溝が1本の1条ねじ式のものであってもよいし、ねじ溝が2本以上の多条ねじ式のものであってもよい。
射出ねじ軸49は、点線で示されているように、中空状(筒状)とされている。これにより、例えば、射出ねじ軸49の軽量化が図られている。ただし、射出ねじ軸49は、中実(円柱状)とされていても構わない。増圧ねじ軸65は、接続軸41を挿通可能に中空状とされている。
射出ねじ機構39(57)は、例えば、プランジャ23に対して同軸に配置されている。具体的には、例えば、射出ナット47(63)及び射出ねじ軸49(65)の軸心は、プランジャ23の軸心の延長上に位置している。
(接続軸)
接続軸41は、プランジャ23の後端に対して同軸に連結されているとともに、射出ねじ軸49の前端に対して同軸に固定されている。従って、射出ねじ軸49がその軸方向に移動すると、プランジャ23はその軸方向に移動する。また、後述するように、増圧ねじ軸65は、接続部35によって適宜な時期に接続軸41と連結される。従って、その連結がなされた状態で、増圧ねじ軸65がその軸方向に移動すると、プランジャ23はその軸方向に移動する。
接続軸41は、直線状に延びる軸状部材であり、その断面形状は、概ね全長に亘って一定である。接続軸41の断面形状(横断面の外縁の形状)は、後に詳述するように、例えば、非円形とされている。ただし、接続軸41の断面形状は円形とされても構わない。接続軸41は、図2において点線で示されているように、例えば、中空状とされている(図3(a)及び図3(b)も参照)。ただし、接続軸41は、中実とされていても構わない。
なお、直動部材53、接続軸41又は射出ねじ軸49について中空状という場合、長さ全体に亘って中空である必要はなく、一部(例えば端部又は中途位置)に中実な部分が存在してもよい。直動部材53、接続軸41又は射出ねじ軸49それぞれは、例えば、長さの半分以上又は2/3以上が中空状である。
接続軸41とプランジャ23との連結は、例えば、カップリング51によってなされている。カップリング51は、例えば、特に符号を付さないが、プランジャロッド23bの後端に設けられたフランジと接続軸41の前端に設けられたフランジとの間に介在するスペーサを有しているとともに、これらフランジ及びスペーサを収容するケース状部分を有している。
接続軸41と射出ねじ軸49との固定は、これらが一体的に形成されることによってなされていてもよいし、これらが別個に形成され、カップリング又はねじ等によって連結されることによってなされていてもよい。
接続軸41及び射出ねじ軸49は、少なくとも成形サイクル中においては互いに固定された状態が維持されるから、1つの部材として捉えられてもよい。以下では、両者を直動部材53ということがある。本実施形態では、直動部材53は全体として軸状であり、プランジャ23に対して同軸に連結されている。なお、本実施形態の説明では、直動部材53の一部を射出ねじ軸49として捉えているが、直動部材53全体が射出ねじ機構39のねじ軸として捉えられても構わない。
(射出伝達部と増圧伝達部との相対関係)
射出ねじ機構39の直動部材53は、増圧ねじ軸65に挿通されている。従って、両者は同心に配置されている。なお、直動部材53全体を射出ねじ機構39のねじ軸として捉え、ねじ軸同士が同心に配置されていると捉えてもよい。
射出伝達部29及び増圧伝達部33を比較すると、例えば、射出電動機27の1回転による射出ねじ軸49(プランジャ23)の移動量は、増圧電動機31の1回転による増圧ねじ軸65の移動量よりも大きい。従って、例えば、射出伝達部29は、相対的に高速で射出ねじ軸49を移動させやすく、増圧伝達部33は、相対的に大きな力を増圧ねじ軸65に伝えやすい。
上記のような相違は、巻掛伝動機構37及び55における減速比の差によって実現されていてもよいし、及び/又は射出ねじ機構39及び増圧ねじ機構57のリードの差によって実現されていてもよい。例えば、射出ねじ機構39のリードは、増圧ねじ機構57のリードよりも大きい。
また、射出ねじ機構39及び増圧ねじ機構57を比較すると、増圧ねじ機構57の径(例えば有効径又は雄ねじの谷径。射出ねじ機構39についても同様。)は、射出ねじ機構39の径よりも大きくされている。また、射出ねじ軸49の長さ(実際にねじ溝が形成されている部分の長さ。増圧ねじ軸65についても同様。)は、増圧ねじ軸65の長さよりも長い。別の観点では、射出ねじ機構39のストロークは、増圧ねじ機構57のストロークよりも長い。
(回り止め)
図3(a)及び図3(b)を参照して射出ねじ軸49及び増圧ねじ軸65の軸回りの回転を規制するための構造について説明する。図3(a)は図2のIIIa−IIIa線における断面図であり、図3(b)は図2のIIIb−IIIb線における断面図である。
接続軸41は、上述のように断面形状(横断面の外縁の形状)が非円形とされている。具体的には、例えば、接続軸41の断面形状は、円形の一部を直線(41f)で切り取った形状である。別の観点では、接続軸41の外形は、円柱の外周面に平面41fを設けた形状である。平面41fの数及び位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、互いに対向する2つの平面41fが設けられている。平面41fの幅は適宜に設定されてよく、また、平面41fの長さは、後述する摺動に必要な分だけ設けられればよい。
図2及び図3(a)に示すように、平面41fには、回り止め部材67が当接している。回り止め部材67は、例えば、いずれの方向にも移動不可能に設けられている。具体的には、例えば、回り止め部材67は、射出フレーム69に固定されている。従って、接続軸41は、軸回りの回転が規制されているとともに、回り止め部材67に対する摺動を伴う、軸方向の移動が許容されている。
なお、回り止め部材67の、平面41fに当接する部位の形状は適宜な形状とされてよい。図示の例では、平面41fに当接する部位は、平面状とされている。図示の例では、回り止め部材67は、平面41f毎に設けられているとともに、接続軸41の平面41f以外の部分に当接していない。ただし、回り止め部材67は、筒状の1つの部材とされ、接続軸41の平面41f以外の部分にも当接するように構成されてもよい(後述の増圧ねじ軸65の断面形状を参照)。
図2及び図3(b)に示すように、平面41fには、増圧ねじ軸65の内周面の一部が当接している。従って、増圧ねじ軸65は、接続軸41に対する軸回りの相対的な回転が規制されているとともに、接続軸41との摺動を伴う、軸方向の移動が許容されている。接続軸41は、上記のように、回り止め部材67によって軸回りの(絶対的な)回転が規制されているから、増圧ねじ軸65は、接続軸41を介して回り止め部材67によって軸回りの回転が規制されている。
なお、増圧ねじ軸65の、平面41fに当接する部位の形状は適宜な形状とされてよい。図示の例では、平面41fに当接する部位は、平面状とされている。また、増圧ねじ軸65は、接続軸41の平面41f以外の部分に対して当接していてもよいし(図示の例)、当接していなくてもよい。
(接続部)
図2に示すように、接続部35は、直動部材53(接続軸41)に設けられている内側部35aと、増圧ねじ軸65に設けられている外側部35bとを有している。図示のようにプランジャ23及び直動部材53が後退限に位置している状態では、内側部35aは、外側部35bに対して後方に離れている。そして、直動部材53が前進することによって、内側部35aは、外側部35b内に位置し、内側部35aと外側部35bとが結合可能となる。
図4(a)は接続部35の構成の例を示す断面図である。この図では、内側部35aが外側部35b内に位置している状態が示されている。紙面左側は、図2と同様に、前方(金型101側)である。Vsは増圧ねじ軸65の速度を示し、Vfは接続軸41の速度を示している。
接続部35は、例えば、直進式のワンウェイクラッチ71(以下、単に「クラッチ71」ということがある。)と、クラッチ71を非作動とするための解除部73とを含んでいる。
クラッチ71は、接続軸41の増圧ねじ軸65に対する相対的な前進を許容しつつ相対的な後退を禁止するように構成されている。具体的には、例えば、クラッチ71は、接続軸41に保持されている内側ラック75と、増圧ねじ軸65に保持されている外側ラック77と、外側ラック77を付勢する弾性部材79とを有している。
内側ラック75は、外側ラック77に対向する面に、接続軸41の軸方向に配列された複数の歯75aを有している。複数の歯75aは、後方に傾斜する鋸歯状である。例えば、歯75aは、前方に傾斜面を有し、後方に鉛直面(逆傾斜面又は急傾斜面でもよい)を有している。内側ラック75は、接続軸41に対して、その軸方向及び径方向において移動不可能とされている。例えば、内側ラック75は、ねじ(符号省略)によって接続軸41に固定されている。なお、内側ラック75は、接続軸41と一体的に形成されていてもよい。
外側ラック77は、内側ラック75に対向する面に、増圧ねじ軸65の軸方向に配列された複数の歯77aを有している。複数の歯77aは、前方に傾斜する鋸歯状である。例えば、歯77aは、後方に傾斜面を有し、前方に鉛直面(逆傾斜面又は急傾斜面でもよい)を有している。外側ラック77は、増圧ねじ軸65に対して、その軸方向に移動不可能かつ径方向(例えば上下方向又は左右方向)に移動可能に保持されている。具体的には、例えば、外側ラック77は、増圧ねじ軸65に形成された空所に径方向に摺動可能に収容されている部分を有している。
弾性部材79は、例えば、板ばね又はつる巻きばね等のばねによって構成されており、外側ラック77と増圧ねじ軸65との間に介在している。そして、弾性部材79は、外側ラック77を増圧ねじ軸65に対して内側ラック75へ付勢している。
従って、接続軸41が増圧ねじ軸65に対して相対的に前進する(Vf>Vs)ときは、内側ラック75の歯75aの傾斜面と、外側ラック77の歯77aの傾斜面とが摺動し、外側ラック77は、弾性部材79の付勢力に抗して増圧ねじ軸65側へ押される。ひいては、接続軸41の増圧ねじ軸65に対する相対的な前進が許容される。
一方、増圧ねじ軸65が接続軸41に対して相対的に前進する(Vf<Vs)ときは、内側ラック75の歯75aの鉛直面と、外側ラック77の歯77aの鉛直面とが係合する。ひいては、増圧ねじ軸65の接続軸41に対する相対的な前進が禁止される。
なお、図2及び図4(a)では、接続軸41を軸方向に見たときに、平面41fが設けられている方向に内側ラック75及び外側ラック77が設けられている態様を例示している。ただし、内側ラック75及び外側ラック77は、平面41fが設けられている方向とは異なる方向に設けられていてもよい。
解除部73は、例えば、電磁石によって構成されており、外側ラック77の外側(内側ラック75に対向する側とは反対側)に位置し、増圧ねじ軸65に固定されている。そして、解除部73は、通電されると、弾性部材79の付勢力に抗して、少なくとも一部が磁性体からなる外側ラック77を吸着する。これにより、クラッチ71は非作動の状態(接続軸41の増圧ねじ軸65に対する相対的な前進及び後退のいずれも許容される状態)とされる。解除部73の数及び位置は適宜に設定されてよい。
図4(b)は接続部35の構成の他の例を示す断面図である。図4(b)は、図4(a)に対応する図である。ここでは、便宜上、図4(a)と共通の符号を用いる。
図4(a)の例では、内側ラック75及び外側ラック77のうち外側ラック77が径方向において移動可能とされた。これに対して、図4(b)の例では、内側ラック75が径方向において移動可能とされている。また、これに伴い、弾性部材79及び解除部73は、接続軸41に設けられている。その他は、図4(a)と同様である。
(駆動部の支持構造)
図2に示すように、駆動部25は、例えば、射出ねじ機構39等の支持のために、支持部材81を有している。なお、図2では、支持部材81を1つのハッチングで示しているが、支持部材81は、複数の部材が組み合わされて構成されていてよい。支持部材81は、例えば、全体として筐体状に構成されており、射出フレーム69に固定されている。
支持部材81は、例えば、射出ねじ機構39及び増圧ねじ機構57を収容している。なお、支持部材81の後方には、支持部材81から後方へ突出する射出ねじ軸49を覆うカバー83が固定されている。支持部材81及びカバー83の全体が支持部材として捉えられてもよい。
支持部材81は、適宜な軸受けを介して射出ナット47及び増圧ナット63を支持している。また、支持部材81には、例えば、支持部材81の外部に位置する射出電動機27の本体部分(ステータ)が固定されている。なお、増圧電動機31は、例えば、射出フレーム69に固定されている。
(ショックアブソーバー)
図2に示すように、射出装置9は、射出フレーム69に設けられたショックアブソーバー85を有している。
ショックアブソーバー85は、例えば、シリンダ式のものであり、シリンダ部(符号省略)と、シリンダ部内を摺動する不図示のピストンと、当該ピストンからシリンダ部の外部へ延び出るピストンロッド(符号省略)と、シリンダ部内に配置された不図示のばねとを有している。ばねは、シリンダ部に対してピストンをピストンロッド側へ付勢している。シリンダ部は、特に図示しないが、ピストンが摺動するシリンダ本体と、その外側を覆う外郭部とを有している。シリンダ本体内の、ピストンによって区画された2つのシリンダ室のうちピストンロッドとは反対側のシリンダ室は、例えば、オリフィスを介して、ピストンロッド側のシリンダ室、及びシリンダ本体と外郭部との間の隙間に通じている。これらの空間には作動液(例えば油)が満たされている。
ショックアブソーバー85は、ピストンロッドがプランジャ23の軸方向の後方へ向けられた状態で、シリンダ部が射出フレーム69に固定されている。なお、ショックアブソーバー85は、移動不可能に設けられるのであれば、射出フレーム69以外の部材に設けられていてもよい。
一方、カップリング51には、プランジャ23が所定位置まで前進したときにショックアブソーバー85(そのピストンロッド)に当接する当接部51aが形成されている。なお、当接部51aは、プランジャ23とともに移動する部材に設けられるのであれば、カップリング51以外の部材に設けられていてもよい。
(制御装置)
制御装置13は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び補助記憶装置を含んで構成されている。そして、CPUがROM及び/又は補助記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の機能部が構築される。そして、制御装置13は、ダイカストマシン1(射出装置9)内の種々の機器からの信号に基づいて種々の制御指令を出力する。
制御装置13に信号を入力するのは、例えば、入力装置17、回転センサ27s及び31s、プランジャ23の位置を検出するための位置センサ87(図2)、及びプランジャ23が溶湯に加えている力を検出するための力センサ89(図2)である。
制御装置13が信号を出力するのは、例えば、表示装置15、射出電動機27に電力を供給する不図示のドライバ、増圧電動機31に電力を供給する不図示のドライバ及び解除部73に電力を供給する不図示のドライバである。
位置センサ87は、例えば、不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。例えば、位置センサ87は、後退限に位置している接続軸41の前端付近に対向する位置に固定的に設けられている。一方、スケール部は、接続軸41に設けられ、その軸方向に延びている。そして、位置センサ87は、接続軸41の移動に伴って移動するスケール部の位置を検出することによってプランジャ23の位置を間接的に検出する。なお、位置センサ87又は制御装置13は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
力センサ89は、例えば、プランジャ23(厳密にはカップリング51のスペーサ)と接続軸41との間に位置するロードセルを含んで構成されている。ロードセルは、例えば、歪ゲージ式のものである。制御装置13は、力センサ89からの検出信号に基づいて、プランジャ23に付与されている力、ひいては、溶湯に付与されている圧力を特定可能である。
(射出装置の動作)
図5は、射出装置9の動作を説明するための図である。
図5の上段のグラフは、射出速度及び射出圧力等の経時変化を示している。このグラフにおいて、横軸は経過時間を示し、縦軸は速度及び圧力の大きさを示している。Vfの符号が付された線は、図4(a)と同様に、接続軸41の速度を示している。接続軸41はプランジャ23と連結されているから、別の観点では、Vfの符号が付された線は、射出速度(プランジャ23の速度)を示している。Vsの符号が付された線は、図4(a)と同様に、増圧ねじ軸65の速度を示している。線Lpは、射出圧力(プランジャ23が溶湯に付与する圧力)を示している。
図5の下段のタイミングチャートは、射出電動機27及び増圧電動機31の駆動の有無を示している。図中の「ON」は、これらの電動機が駆動力を生じている状態である。図中の「OFF」は、例えば、トルクフリーとされている状態、一定位置への位置制御が行われている状態、又はブレーキが作動している状態である。
射出装置9は、概観すると、低速射出(t0〜t1)、高速射出(t1〜t3)、増圧(t4〜t5)及び保圧(t5〜)を順に行う。すなわち、射出装置9は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ23を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ23を前進させる。その後、射出装置9は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ23の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧し、さらに、その増圧した圧力を維持して成形品の凝固を待つ。具体的には、以下のとおりである。
(射出開始直前:t0直前)
射出開始直前において、射出装置9は、図1及び図2に示す状態となっている。すなわち、プランジャ23(直動部材53)及び増圧ねじ軸65は、後退限等の初期位置において停止している。別の観点では、射出電動機27及び増圧電動機31は停止している。解除部73は、例えば、通電されていない。
(低速射出:t0〜t1)
固定金型103及び移動金型105の型締が終了し、溶湯がスリーブ21に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、射出電動機27を回転させ、プランジャ23を前進させる。すなわち、射出電動機27の駆動力によって低速射出が行われる。
プランジャ23の速度は、射出電動機27の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置13は、位置センサ87の検出値に基づいて射出電動機27の回転数をフィードバック制御する。ここでの速度のフィードバック制御は、プランジャ23の速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、所定の時間刻みで経過時間に対して設定された目標位置と現時点の位置との偏差に基づくもの(時々刻々と行われる位置フィードバックによって実質的に速度フィードバックを実現するもの)であってもよい。
低速射出におけるプランジャ23の速度(低速射出速度VL)は、例えば、1m/s未満である。低速射出速度VLの具体的な値は、オペレータによって適宜に設定されてよい。制御装置13は、入力装置17を介して当該値の入力を受け付ける。
低速射出の間、増圧電動機31は、例えば、停止されている。この停止は、例えば、一定の位置に位置制御を行っている状態、又はブレーキを使用している状態である。これにより、接続軸41が増圧ねじ軸65に摺動しても、増圧ねじ軸65の移動は確実に抑制される。ただし、停止は、トルクフリーの状態であってもよい。この場合であっても、増圧ねじ機構57自体の抵抗によって増圧ねじ軸65は停止し得る。
(高速射出:t1〜t3)
制御装置13は、低速射出において、プランジャ23の位置が所定の高速切換位置に到達したか否か判定する。当該判定は、適宜に行われてよい。例えば、制御装置13は、位置センサ87の検出位置が所定の高速切換位置に到達したか否かを判定し、又は射出開始から所定の時間が経過したか否かを判定する。
そして、制御装置13は、高速切換位置に到達したと判定すると、プランジャ23の速度が低速射出のときよりも高速になるように、射出電動機27の回転数を上昇させる。なお、射出速度のフィードバック制御が継続されることは、低速射出と同様である。
また、制御装置13は、例えば、高速射出開始後の適宜な時期(t2)に、増圧ねじ軸65を前進させるように増圧電動機31を制御する。このときの増圧ねじ軸65の速度Vsは、直動部材53の速度Vf(高速射出における射出速度)に比較して遅い。
従って、仮に、射出開始時において外側ラック77よりも後方に位置していた内側ラック75が外側ラック77に到達したとしても、外側ラック77に対する内側ラック75の相対的な前進は許容される。すなわち、プランジャ23は、依然として、射出電動機27の駆動力によって前進し、また、増圧電動機31による増圧ねじ軸65の駆動は基本的にはプランジャ23の速度に影響を及ぼさない。
なお、増圧電動機31は、高速射出の間においては、例えば、速度制御がなされる。当該速度制御は、オープン制御であってもよいし、回転センサ31sの検出値に基づくフィードバック制御であってもよい。フィードバック制御は、射出電動機27と同様に、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、時々刻々の位置制御によって実質的に速度フィードバックを行うものであってもよい。
(減速射出:t3〜t4)
溶湯がキャビティCaにある程度充填されると、プランジャ23は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、射出電動機27の回転数を下降させるように制御を行う減速制御がなされてもよい。
(増圧:t4〜t5)
上記のように射出速度が低下していくと、直動部材53の速度Vfは、増圧ねじ軸65の速度Vsまで低下する(t4)。これにより、外側ラック77は、内側ラック75に対して後方から係合することになり、増圧電動機31の駆動力がプランジャ23へ伝達される。すなわち、増圧電動機31の駆動力によって増圧が行われる。
なお、上述した増圧電動機31の駆動開始時点t2は、直動部材53の速度Vfが増圧ねじ軸65の速度Vsまで低下する前に、速度Vsが所望の値に到達できる限り、適宜に設定されてよい。
射出電動機27は、例えば、プランジャ23の減速後(t3後)、又は速度Vfが速度Vsまで低下した時点以後(t4以後)の適宜な時期にトルクフリーの状態とされてよい。又は、射出電動機27は、速度Vfが速度Vsまで低下した以後も継続して駆動され、増圧等に寄与してもよい。又は、射出電動機27は、射出ねじ機構39等が増圧の負荷とならない程度(増圧に寄与するとまでは言えない程度)に駆動されてもよい。
増圧において、増圧電動機31は、例えば、トルク制御がなされる。具体的には、例えば、制御装置13は、力センサ89の検出値に基づいて、所望の昇圧曲線が得られるように増圧電動機31のトルクのフィードバック制御を行う。なお、増圧開始前の速度制御から増圧開始後のトルク制御への切り換え時期は、時点t4付近において適宜に設定されてよい。例えば、制御装置13は、回転センサ27s(又は位置センサ87)及び回転センサ31sの検出値に基づいて、速度Vfが速度Vsまで低下したか否か判定し、低下したと判定したときに切り換えを行う。
増圧電動機31の駆動力がプランジャ23へ伝達されることにより、射出圧力は上昇し、射出圧力は終圧Pに到達する(t5)。一方、射出速度は、キャビティCaに溶湯が完全に充填されることにより0となる。
(ショックアブソーバーの当接:t3〜t5)
射出速度の低下開始後、射出圧力が終圧に至る前までの間において、カップリング51は、ショックアブソーバー85に当接する。これにより、例えば、いわゆるサージ圧の発生が抑制される。
(保圧:t5〜)
制御装置13は、射出圧力が終圧Pとなっている状態を維持する。具体的には、制御装置13は、増圧に引き続いて、増圧電動機31(及び射出電動機27)のトルク制御を継続する。なお、増圧電動機31及び/又は射出電動機27のブレーキが使用されたり、その他の不図示のブレーキが使用されたりすることによってプランジャ23の後退が規制され、保圧が行われてもよい。
(押出追従及びプランジャ後退)
その後、特に図示しないが、溶湯が凝固すると、制御装置13は、保圧を終了し、型締装置7に型開きを行わせるとともに、押出装置11により固定金型103から成形品を押し出す。このとき、制御装置13は、プランジャ23によりビスケットを押し出すための駆動力を射出電動機27及び/又は増圧電動機31が生じるようにこれらを制御してもよい。すなわち、押出追従が行われてもよい。
保圧完了後、又は押出追従を行う場合は押出追従完了後、制御装置13は、プランジャ23を初期位置まで後退させる。具体的には、例えば、制御装置13は、解除部73に通電し、クラッチ71を非作動状態とする。そして、制御装置13は、射出ねじ軸49を後退させる方向に射出電動機27を回転させるとともに、増圧ねじ軸65を後退させる方向に増圧電動機31を回転させる。
以上のとおり、本実施形態において、プランジャ23を前進させて成形材料を金型101内に押し出す射出装置9は、射出電動機27と、射出伝達部29と、回転式の増圧電動機31と、増圧伝達部33と、接続部35を有している。射出伝達部29は、プランジャ23の後端に同軸に連結される直動部材53を含み、射出電動機27の駆動力により直動部材53がプランジャ23の軸方向に駆動される。増圧伝達部33は、直動部材53が挿通される増圧ねじ軸65を含み、増圧電動機31の回転をプランジャ23の軸方向における増圧ねじ軸65の直線運動に変換する。接続部35は、増圧ねじ軸65から直動部材53への駆動力の伝達を許容及び禁止可能である。
従って、例えば、射出電動機27によってプランジャ23を往復駆動可能であり、かつ必要に応じて増圧電動機31によってプランジャ23を駆動可能である。また、例えば、射出電動機27から直動部材53までの伝達経路とは別に、増圧電動機31から直動部材53への伝達経路(増圧伝達部33)が設けられていることから、射出電動機27と増圧電動機31とでプランジャ23へ至るまでの速度伝達比を互いに異ならせることができる。また、例えば、増圧電動機31からプランジャ23への経路のうちプランジャ23の直前において接続部35が力の伝達を遮断することから、増圧電動機31と増圧伝達部33との間にクラッチを設ける場合に比較して、射出電動機27にとっての慣性モーメントを小さくすることができる。さらに、プランジャ23に固定されている直動部材53が増圧ねじ軸65に挿通される態様であることから、例えば、増圧ねじ軸65と直動部材53との係合を軸回りの2箇所以上で行い、増圧ねじ軸65と直動部材53との間で平面視又は側面視において不要なモーメントが生じるおそれを低減することが可能である。
本実施形態では、増圧伝達部33は、増圧電動機31の回転が伝達される増圧ナット63と、増圧ナット63に螺合する、増圧ねじ軸65と、を有している。
従って、例えば、外周面から軸方向の力を受けている増圧ねじ軸65に直動部材53が挿通されることになる。その結果、例えば、増圧ねじ軸65に加えられる軸方向の力と、直動部材53との距離が短く、両者の間に生じる、側面視又は平面視における不要なモーメントを低減しやすくなる。また、例えば、直動部材53を挟んで2本の増圧ねじ軸65を設けてバランスさせなくてもよい。また、例えば、増圧ねじ軸65及び直動部材53が直列に設けられている場合に比較して、増圧ねじ軸65の一端に力が加えられることを避けることができること、及び/又は増圧ねじ軸65の径が確保されることから、増圧ねじ軸65が座屈するおそれが低減される。
本実施形態では、射出電動機27は回転式であり、射出伝達部29は、射出電動機27の回転をプランジャ23の軸方向における直動部材53の直線運動に変換する射出ねじ機構39を有している。直動部材53は、射出ねじ機構39の、プランジャ23に同軸に配置されている、射出ねじ軸49を含んでいる。
従って、例えば、射出電動機27の回転が直線運動に変換された直後の直動部材53がプランジャ23に直結されることになる。その結果、例えば、接続軸41に対して射出ねじ軸49を並列に配置して両者を連結する態様(後述する図6(d)参照)に比較して、その連結に必要な部材の質量だけ、射出電動機27にとっての慣性モーメントを低減できる。また、別の観点では、上述した増圧ねじ軸65と同様に、接続軸41を挟んで2本の射出ねじ軸49を設けてバランスさせる(図6(d)参照)必要はない。
本実施形態では、射出装置9は、直動部材53に対してその軸回りの方向において係合して、直動部材53の軸回りの回転を禁止するとともに直動部材53の軸方向における移動を許容する回り止め部材67を有している。増圧ねじ軸65は、直動部材53に対して軸回りの方向において係合して、軸回りの回転が禁止されているとともに軸方向における移動が許容されている。
従って、射出電動機27の駆動力をプランジャ23へ伝達する直動部材53は、増圧ねじ軸65の回り止めに寄与している。別の観点では、回り止め部材67は、直動部材53の回り止めと、増圧ねじ軸65の回り止めとの双方に兼用されている。これにより、例えば、構造の簡素化が図られる。このような回り止めの構成は、直動部材53を増圧ねじ軸65に挿通する構成(同心状の構成)であることから可能となっている。
本実施形態では、射出電動機27は回転式であり、射出伝達部29は、射出電動機の回転をプランジャ23の軸方向における直動部材53の直線運動に変換する。増圧電動機31の1回転による増圧ねじ軸65の移動量は、射出電動機27の1回転による直動部材53の移動量よりも小さい。
従って、例えば、直動部材53を含む駆動系は、相対的にプランジャ23を高速で移動させやすく、直動部材53が挿通される増圧ねじ軸65を含む駆動系は、相対的に大きな力をプランジャ23に付与しやすい。一方、直動部材53が増圧ねじ軸65に挿通されてプランジャ23に連結される構成であることから、直動部材53は相対的に長くなり、増圧ねじ軸65は相対的に径が大きくなる。また、低速射出及び高速射出(狭義の射出)は、相対的にプランジャ23の移動距離が長く、増圧は相対的にプランジャ23に付与する力が大きい。以上のことから、例えば、全体として、射出(狭義)及び増圧に適した駆動部25が実現される。
本実施形態では、接続部35は、直動部材53の外周面と増圧ねじ軸65の内周面との間に介在して、直動部材53の増圧ねじ軸65に対する相対的な前進を許容しつつ相対的な後退を禁止可能なワンウェイクラッチ71を含んでいる。
従って、例えば、図5を参照して説明したように、直動部材53の速度Vfが増圧ねじ軸65の速度Vsまで低下したときに自動的にかつ円滑に増圧ねじ軸65が直動部材53に係合する。換言すれば、例えば、直動部材53と増圧ねじ軸65との相対速度を正確に制御しなくてもよく、また、両者を結合させるタイミングを制御しなくてもよい。さらに、クラッチ71が直動部材53の外周面と増圧ねじ軸65との内周面との間に介在していることから、両者の間の力の伝達において、既述のように、不要なモーメントを生じるおそれを低減したり、座屈が生じるおそれを低減したりすることができる。
本実施形態では、ワンウェイクラッチ71は、直動部材53に保持されている内側ラック75と、増圧ねじ軸65に保持されている外側ラック77と、内側ラック75及び外側ラック77の一方を他方へ付勢する弾性部材79と、を有している。内側ラック75は、プランジャ23の軸方向に配列されており、後方へ傾斜している複数の歯75aを有している。外側ラック77は、プランジャ23の軸方向に配列されており、前方へ傾斜している、複数の歯75aに噛み合い可能な複数の歯77aを有している。
従って、例えば、一般的なラチェット機構のように1つの爪を複数の歯に係合させる(この態様も本開示に係る技術に含まれる。)のではなく、複数の歯75aと複数の歯77aとが係合する。その結果、例えば、1つの歯75a及び1つの歯77aに加えられる荷重が低減され、比較的大きな力を増圧ねじ軸65から直動部材53へ伝達することが可能となる。ひいては、大型のダイカストマシンに本開示の技術を適用することが容易化される。
本実施形態では、直動部材53は中空状である。
従って、例えば、射出電動機27又は増圧電動機31にとっての慣性モーメントを低減することができる。その結果、例えば、低速射出から高速射出への切り換え時における速度の立ち上がりを急峻にすることができる。ひいては、成形品の品質を向上させることができる。
本実施形態では、射出装置9は、直動部材53が所定位置まで前進したときに直動部材53に固定的なカップリング51に当接する、シリンダ式のショックアブソーバー85を更に有している。
従って、例えば、射出の減速開始後から増圧完了までの間において生じる衝撃を緩和することができる。すなわち、いわゆるサージ圧の発生を抑制することができる。その結果、例えば、衝撃が電動式の駆動系に伝わるおそれが低減される。電動式の駆動系は、油圧式の駆動系のように作動油の圧縮による衝撃緩和の効果が得られないから、ショックアブソーバー85による保護効果が有効である。
なお、以上の実施形態において、射出電動機27は第1電動機の一例である。射出伝達部29は第1伝達部の一例である。直動部材53は第1直動部材の一例である。増圧電動機31は第2電動機の一例である。増圧伝達部33は第2伝達部の一例である。増圧ねじ軸65は第2直動部材の一例である。カップリング51は、ショックアブソーバーに当接する、第1直動部材に固定的な部材の一例である。
(変形例)
図6(a)〜図6(d)を参照して、種々の変形例に係る射出装置について説明する。図6(a)〜図6(d)は、いずれも射出装置のうちの駆動部を模式的に示す図である。以下では、主として実施形態との相違部分を説明する。特に説明がない事項については、実施形態と同様でよい。また、以下では、実施形態と同様又は類似する構成については、実施形態の符号を付すことがある。
図6(a)の射出装置201は、射出ねじ機構39に代えて、ラック・ピニオン機構203を有している。ラック・ピニオン機構203は、例えば、接続軸41の後端に同軸に固定されているラック205と、ラック205に噛み合うピニオン207とを有している。射出電動機27の回転は、ピニオン207に伝達される。接続軸41及びラック205は、直動部材209を構成している。
このように、電動機(射出電動機27又は増圧電動機31)が回転式のものである場合において、その回転を直線運動に変換する機構は、ねじ機構に限定されない。なお、特に図示しないが、ラック・ピニオン機構の他、例えば、リンク機構であってもよい。
図6(b)の射出装置221は、射出ねじ機構39及び増圧ねじ機構57の前後方向の位置関係が実施形態と逆になっている。具体的には、プランジャ23の後端に射出ねじ軸49が連結され、射出ねじ軸49の後端に接続軸41が連結されて直動部材223が構成されている。そして、増圧ねじ機構57は、射出ナット47よりも後方に位置して、直動部材223が挿通されている。接続部35の内側部35aは、接続軸41の後端に位置している。
なお、図6(b)では、初期位置において増圧ねじ軸65内に射出ねじ軸49が位置しており、接続軸41によっては増圧ねじ軸65の回り止めがなされていない態様を例示している。増圧ねじ軸65の回り止めは、例えば、スプライン溝によってなされてよい。ただし、実施形態と同様に、初期位置において増圧ねじ軸65内に接続軸41が位置し、接続軸41によって回り止めがなされてもよい。
図6(c)の射出装置231は、射出ナット47及び射出ねじ軸49において、プランジャ23に連結される部材が実施形態とは逆になっている。すなわち、射出ナット47は、プランジャ23に連結される接続軸233に固定されて、増圧ねじ軸65に挿通される直動部材235を構成している。射出ねじ軸49は、中空状の接続軸233に挿通されている。
射出ナット47は、実施形態と同様に回り止めがなされている接続軸233に固定されていることにより、軸回りの回転が規制されているとともに軸方向の移動が許容されている。射出ねじ軸49は、不図示の軸受けによって軸回りの回転が許容されているとともに軸方向の移動が規制されている。射出電動機27の回転は、射出ねじ軸49に伝達される。なお、接続部35の内側部35aは、接続軸233において軸方向の中途位置に設けられている。
図6(d)の射出装置241では、射出ねじ機構39は、プランジャ23に対して同軸に設けられておらず、プランジャ23に対して並列に設けられている。具体的には、例えば、平面視において、接続軸41を挟んで2つの射出ねじ機構39が設けられている。この変形例は、図6(c)の変形例と同様に、射出ナット47が接続軸41に固定される態様であり、射出ナット47は、連結部材243を介して接続軸41に固定されている。接続軸41、連結部材243及び射出ナット47は、(一部が)増圧ねじ軸65に挿通される直動部材245を構成している。接続部35の内側部35aは、接続軸41において軸方向の中途位置に設けられている。
なお、実施形態及び変形例の構成は、適宜に組み合わされてよい。例えば、図6(b)のように増圧ねじ機構57が後方に位置する構成において、図6(a)のように射出ねじ機構39に代えてラック・ピニオン機構203が設けられてもよい。また、例えば、図6(d)のようにプランジャ23と、伝達機構(射出ねじ機構39)とが同軸でない構成において、図6(a)のようにねじ機構以外の伝達機構が設けられてもよいし、射出ねじ軸49が連結部材243に固定されて、実施形態と同様に射出ねじ軸49が直動部材を構成してもよい。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機(成形機)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。成形材料は、液状のものに限定されず、半凝固金属又は半溶融金属のように固液共存状態のものであってもよい。
射出は、低速射出及び高速射出を有するものに限定されず、例えば、射出開始から増圧開始まで、射出速度が一定であったり、連続的に上昇したりするものであってもよい。
第1電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。この場合において、第1伝達部は、リニアモータの可動子と固定された第1直動部材のみを含む構成であってよい。また、回転式の第1電動機または第2電動機の回転を伝達する巻掛伝動機構は設けられなくてもよいし、巻掛伝動機構に加えて又は代えて、歯車機構等の他の伝達機構が設けられてもよい。
第1電動機及び第2電動機の役割分担は、適宜に設定されてよく、第1電動機を射出(狭義)に用い、第2電動機を増圧に用いる役割分担に限定されない。例えば、第1電動機を高速射出に用い、第2電動機を低速射出及び増圧に用いてもよい。また、例えば、実施形態とは逆に、第1電動機を増圧に用い、第2電動機を射出に用いてもよい。
実施形態では、接続軸41と射出ねじ軸49とが固定されて、第1直動部材としての直動部材53が構成された。ただし、第1伝達部(射出伝達部29)は、例えば、射出ねじ軸49から接続軸41への駆動力の伝達を接続及び遮断する(接続部35とは別の)接続部を含んでいてもよい。換言すれば、例えば、接続軸41のみによって第1直動部材が構成されてもよい。
接続部は、ワンウェイクラッチを含むものに限定されない。例えば、実施形態において、内側ラック及び外側ラックの歯を前方又は後方に傾斜していない形状(内側ラック75の外側ラック77に対する相対的な前進を許容しない形状)とし、増圧ねじ軸65を接続軸41に連結すべきタイミングで解除部73への通電を停止するようにしてもよい。また、例えば、接続部は、射出ねじ軸49のねじ溝に係合するハーフナットを有するものであってもよい。
また、実施形態では、内側ラック及び外側ラックは、直動部材53が所定位置まで前進したときに互いに対向したが、直動部材53の位置によらずに互いに対向するように、内側ラックが直動部材53の比較的長い範囲に亘って構成されても構わない。