JP4454995B2 - 電動射出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、射出スクリュの前後進に複数のボールねじ装置を用いた電動射出装置(以下、電動射出ユニットと呼ぶ)の機能部品配置構造に関する。なお、本発明は特に射出成形機やアルミダイカスト機に用いる、ボールねじ機構を用いた電動式射出装置に関する。
射出成形機の直進移動軸の駆動源として、従来は主として油圧が用いられていたが、最近は作業環境の改善、電力エネルギ効率向上、作動部の速度、位置等の制御容易の利点を有する電気式駆動が多く用いられるようになってきている。特に、射出スクリュの射出駆動の直進移動の駆動源には、速度制御が容易であることから、電気サーボモータと、そのモータの回転を直線駆動に換える最も機械効率のよいボールねじ構造が多く使用されるようになってきている。
射出成形機の射出駆動に電気サーボモータとボールねじ装置を用いた従来例の特許文献1に開示されたものは、図8に示すように、複数のモータ020と直結するねじ機構034で射出スクリュ017を前後進させ、溶融樹脂を金型のキャビティ内に射出し成形するもので、ボールナット010を射出シリンダ09と同体の固定プレート02に取付け、プッシャープレート03にモータ020を取付け、軸継ぎ手023を介してモータ020に直結したボールねじ軸018をプッシャープレート03に回転可能に支持し、プッシャープレート03を結合ロッド(タイロッド)06でガイドするように構成されている。なお、複数のボールねじ軸018は歯付きベルトを介して同調回転する構成も提案されている。
射出スクリュ回転駆動用モータは減速モータ029を使用している。同モータ029はプッシャープレート03上に取付けられ、歯付ベルト等を介してプーリ031で駆動される。この従来例によれば、ねじ機構034をモータ020に直結することによりモータ020の回転が直接ボールねじ軸018に伝わるので、射出速度の立ち上がり特性が高まる。
また、特許文献2には電動式射出機構のボールねじ軸とボールナットとが嵌め合わさる部分に生じやすい過大なこじり力に対して、ボールねじ軸に環状溝の応力緩和手段を設けることで低減させ、ボールねじ軸の異常磨耗や折損を防止する技術が記載されている。
さらに、特許文献3で開示された従来例は、3つ以上のサーボモータ直結のねじ機構でプッシャープレートを介して射出スクリュを前後進させるもので、サーボモータは上記と同様にプッシャープレートに、ボールねじナットは固定プレートに夫々取付け、又は、サーボモータは固定プレートにボールねじナットはプッシャープレートに夫々取付けたものと両方の構成とともに、ボールねじ軸にサーボモータのロータを直接取付けたサーボモータ構造として全長の短縮を図ったものも紹介されている。この従来例は、サーボモータ直結のねじ機構を用いて射出出力を高めると同時に、上記特許文献1と同様に射出速度の立ち上がり特性を改善する。
特開平11−138599号公報 特開2002−168318号公報 特開2001−341176号公報
上記の特許文献1の従来例によれば、スクリュ回転駆動モータが減速機構を介して射出スクリュに動力を伝えるので、歯付きベルト、歯車、ベルトのテンション調整機構等、部品の数が多く、ベルトテンションの調整、部品のメンテナンス等が必要であり、騒音を発生するおそれがある。また、射出駆動用ボールねじ軸の回転同調装置に歯付きベルトを使用しているものは、ベルト、歯車等の慣性重量が加わるので、慣性モーメントの低減効果が減殺される。
また、特許文献3の従来例は、3つ以上のサーボモータ直結のボールねじ機構を設けたもので、ボールねじの回転同調制御が複雑になり、ホッパ周辺の作業が窮屈になる。また、上記と同様に、スクリュ回転駆動モータは減速機構を介して射出スクリュに動力を伝えるので、部品の数が多く、ベルトテンションの調整、部品のメンテナンス等が必要であり、騒音を発生するおそれがある。また、可動ハウジングの重量はベースによって受けられるのでその分の荷重は軽減されるが、複数の送りねじの回転位相の同期に不具合が生ずると、送りねじと嵌め合わさるナット部に偏荷重が掛かってナットの寿命を減ずるという難点は残る。
電動モータの回転を直進運動に変換する送りねじ機構は、速度を制御するサーボモータと摩擦損失の少ないボールねじ機構が用いられるのが一般であるが、両者は何れも容量が大きくなると、入手性が悪くなりコストが高くなる。このために、大きな容量に対して、小容量のモータとボールねじ機構を複数用いることが提案されている。このような構成の装置では、サーボモータによる同期運転に不具合が生じた場合、特に一部のモータが故障して停止した場合には、支持部材(可動ハウジング)が水平面内で姿勢を回転させようとし、この回転によってボールねじ機構のボールねじナットに偏荷重が加わり、ボールねじナットの寿命を大きく低減させるという不具合が生ずる。
特許文献2の技術では、大きな力が必要な射出工程のとき、ボールねじ軸が圧縮側になっているため、不安定な曲げ(バックリング:座屈)が起こるおそれがある。
本発明は、入手が容易な小容量のサーボモータとボールねじ機構を組み合わせた構造で、ボールねじナットに偏荷重が加わらないようにしてボールネジナットの長寿命化を図り、また、簡潔な構造で幾何学的精度を向上させ易い工作容易な電動射出装置の提供を目的としている。
本発明によれば、射出スクリュ軸を駆動する射出スクリュ回転駆動用モータと、該射出スクリュ軸に対して平行に配置された複数のボールねじ軸と、該ボールねじ軸に直結して駆動する複数の射出駆動用サーボモータと、該射出スクリュと該射出スクリュ回転駆動用モータと該射出駆動用サーボモータとを支持し、該ボールねじ軸の回転駆動によって該射出スクリュの軸方向に平行移動する移動フレームと、射出シリンダを支持し、該ボールねじ軸に嵌め合わさるボールねじナットを支持する固定フレームと、該移動フレームを摺動可能に支持する互いに平行に配置された複数のガイドロッドと、該射出駆動用サーボモータの速度と回転角度位置を同調制御する制御装置とを備える電動射出装置が提供される。
さらに本発明によれば、射出スクリュ軸を駆動する射出スクリュ回転駆動用モータと、該射出スクリュ軸に対して平行に配置された複数のボールねじ軸と、該ボールねじ軸に直結して駆動する複数の射出駆動用サーボモータと、該ボールねじ軸にそれぞれ嵌め合わさるボールねじナットを支持し、該射出スクリュと該射出スクリュ回転駆動用モータを駆動可能に固定支持し、該ボールねじ軸の回転駆動によって該射出スクリュの軸方向に平行移動する移動フレームと、該複数の射出駆動用サーボモータと射出シリンダとを支持する固定フレームと、該移動フレームを摺動可能に支持する互いに平行に配置された複数のガイドロッドと、該複数のボールねじ軸にそれぞれ嵌め合わさる各ボールねじナットのうち、一方のボールねじナットに掛かる軸力と他方のボールねじナットに掛かる軸力との間の差分による該移動フレームの水平面内の回転を阻止するように十分な距離を隔てて、且つ該ガイドロッドに対して摺動自在に外側から嵌めあわされ、該移動フレームに固定支持されたリニアブッシュと、該射出駆動用サーボモータの速度と回転角度位置を同調制御する制御装置とを備える電動射出装置が提供される。
また、射出工程のときに前記ボールねじ軸に働く応力が引張り力となるものであることが好ましい。
そして、前記複数のボールねじ軸は前記射出スクリュの回転軸に対して対称に配置されるものであり、前記ガイドロッドは該ボールねじ軸と該射出スクリュ軸の間に対称にそれぞれ配置され、該ボールねじ軸と前記射出駆動用サーボモータの重量をそれぞれが均等に支えるものとすることが好ましい。
さらに、前記制御装置において、射出移動設定速度に基づく該サーボモータ回転速度制御と、各該サーボモータ間の回転数の差を検出し、該サーボモータの回転位相を該各サーボモータ間で合うように回転位相差を補正し、該サーボモータ回転速度を同調制御するものであることが好ましい。
また、前記固定フレームと前記固定フレームとともに前記ガイドバーを支持する支持台とを一体形成としたベースフレームを備えた方が好ましい。
なお、前記ベースフレームが鋳鉄である方が好ましい。
更に、前記ベースフレームに、前記射出スクリュより低い位置で互いに平行に配置したガイドロッドの両端を固着させた方が好ましい。
また、前記移動フレームは、前記ガイドロッドの外にはめ合わされ摺動可能に固定支持されたリニアブッシュを有する方が好ましい。
本発明の電動射出装置の効果として次のものが得られる。
発明の一実施形態では、射出駆動用サーボモータはボールねじ軸と、射出スクリュ回転駆動用モータは射出スクリュと同軸に配置されて、軸継ぎ手のみを介して直接的に連結する配置(軸連結する配置)となっているので、回転軸間の減速機構が不要となり、部品点数が減り、メンテナンス箇所が少なくなり、騒音が減り、射出ユニットの構造がコンパクトになる。
また、射出駆動用動力系統は、慣性重量が小さく、機械的な同調機構が無いので、速度制御時の応答が速くなる。ガイドロッドには十分な剛性を持たせてあるので、射出駆動用サーボモータの同調制御において万一同調のソフト処理に乱れを生じて同調が崩れたときでも、ボールねじとボールねじナットの組み合わせに損傷を与えないようにする効果がある。
更に、大きな力が必要な射出工程のとき、本発明の一実施形態のように構成すれば、ボールねじ軸に働く応力が引張り力となるので、ボールねじ軸が撓むおそれがない。
本発明の変形例では、一体構造のベースの左右に対して水平で、かつ互いに平行であるガイドロッドを設けて移動フレームを摺動自在に支持する構造としている。よって、ベースの構造が簡潔となり、剛性の向上だけでなく、一体成形したベースフレーム110に、旋削された穴を基準にガイドロッドを組み付けることができるので、別体の場合とは異なり容易に幾何学的な精度を向上することができる。
また、移動フレームのガイドロッドとの摺動部分にはそれぞれ一定の距離を隔てて、ガイドロッドの軸方向に2個のリニアブッシュを設けたので、移動フレームの水平面内での回転運動に対して、リニアブッシュに大きな面圧を生ずることなく、大きな抵抗トルクが得られ、ボールねじナットに対する偏荷重の発生を抑えボールねじナットの寿命の低下を防止できる。
本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は電動射出ユニットを示す側面図、図2は図1のA−A断面で示す平面(一部断面)図、図3は図1の射出ユニットをB方向から見た後面図、図4は図1の射出ユニットの制御系統を示すブロック図である。
図1〜図3により電動射出ユニット1の構成を説明する。射出ユニット1は射出ユニット台2と、射出シリンダ5に取付けられ射出ユニット台2に固着して取り付けられた固定側フレーム4と、射出シリンダ5の内側に設けられた樹脂材料を溶融、可塑化、計量する射出スクリュ7と、一方の端部は固定フレーム4に固着して取り付けられ、他方の端部は
射出ユニット台2に固着して取り付けられたガイドロッド支持台22に固着して取り付けられた一対のガイドロッド21と、この一対のガイドロッド21によって摺動可能に支えられ、射出スクリュ7をアンギュラコンタクト軸受16とボール軸受17を介して回転自在に軸方向を拘束して支える移動フレーム6と、固定側フレーム4の両側に取付けられた一対のボールねじナット13A、13Bと、移動フレーム6に軸に回転可能に支持され、ボールねじナット13A、13Bにそれぞれねじで嵌め合わさる一対のボールねじ軸12A、12Bと、移動フレーム6に取付けられた射出スクリュ回転駆動モータ8と、移動フレーム6に取付けられ一対のボールねじ軸12A、12Bをそれぞれ回転駆動する射出駆動用サーボモータ11A、11Bとを備えている。射出駆動用サーボモータ11A、11Bの出力軸はボールねじ軸12A、12Bに軸継ぎ手15のみを介して直結しており、ベルトなどの他の機構を介さずに動力が伝達される。なお、射出スクリュ回転駆動用モータ(樹脂送り、可塑用)8についても軸継ぎ手のみを介して直結する方が好ましいが、減速機付モータを用いてもよい。
移動フレーム6の両側の2組のボールねじ軸12A、12Bは回転可能に、また、大きなスラストを受け持つことが可能なように、大容量のアンギュラコンタクト軸受14を介して取付けられ、サーボモータ11A、11Bとは軸継ぎ手15、15を介して連結されている。
射出ユニット1は射出ユニット台2において、射出成形機の主フレーム3の上を射出シリンダ5の軸方向に摺動可能に載置され、射出ユニット台2の設置されたシリンダ27とロッド28の作動で、射出シリンダ5の先端のノズルが図示略の金型の樹脂ゲート口にノズルタッチするように、射出ユニット台2を前後進させ射出動作位置に停止固定することができる。18、25は軸連結装置を示す。
また、一対の射出駆動用サーボモータ11A、11Bを速度と回転角度位相を同調制御するための制御装置35が設けられている。
移動フレーム6を移動可能に支える一対のガイドロッド21は複数のボールねじ軸12A、12Bと射出スクリュ7の間の下側に対称かつ平行に配置した構成として、移動フレーム6の跛行を抑制し、ボールねじ軸12A、12Bとサーボモータ11A、11Bの重量を均等に支えている。
なお、ボールねじ軸と射出スクリュ駆動モータ等の重量が左右のガイドロッドに均等に荷重がかかるようにすれば、ガイドロッドのたわみ量を左右均等にすることができ、爬行を防止するとともに移動フレームの移動時に余分な負荷(偏荷重)がかかることを防止する効果が得られる。
射出用のサーボモータ11A、11Bの回転速度の同調制御について説明する。図4において、ボールねじ軸12A、12Bを駆動するサーボモータ11A、11Bの回転速度は速度設定器34の指令により、同等に制御されるが、電気的な抵抗や機械的な抵抗の差により、回転のバラツキが生じる。この回転差を消去するための制御手段は、次のように作動する。ボールねじ軸12A、12Bとこれらに嵌め合わさる固定フレーム4のボールねじナット13A、13Bのセッティングが安定した位置を基準の回転角度位置と定めて置く。サーボモータ11Aの回転数を検出するエンコーダ19Aの回転検出値と、サーボモータ11Bの回転数を検出するエンコーダ19Bの回転検出値とが制御装置35の位置ずれ演算回路31に送られる。サーボモータ11Aの回転数に対するサーボモータ11Bの回転数差(角度位相差)が演算され、サーボモータ11Aの速度制御回路33Aとサーボモータ11Bの回転速度制御回路33Bにおいて設定速度の回転数に加算補正される。これにより、サーボモータ11Bの回転速度と回転位相角度は常にサーボモータ11Aの回転速度と回転位相角度に同調される。
以上に述べた構成の射出ユニット1の電動射出駆動とボールねじ装置の作用を説明する。
樹脂送り、可塑化、計量の工程においては、図2の実線の位置でモータ8を回転して射出スクリュ7を回し、ホッパ9から樹脂のペレットを導入して送りながら加熱し、樹脂を溶融可塑化する。同時に、射出駆動用モータ11A、11Bをゆっくり運転して移動フレーム6を後進し、射出スクリュ7をゆっくり後退させ(破線で示すS’方向)、溶融樹脂を射出スクリュ7の先端に溜める。射出スクリュ7の先端に金型に対して1ショット分の樹脂を溜め終わったとき(移動フレーム6は、図2の2点鎖線で示した位置まで移動する)、射出スクリュ回転駆動モータ8を停止し、射出駆動用モータ11A、11Bを高速回転し、射出スクリュ7を矢印S方向に高速に移動させて樹脂を金型のキャビティ内に射出する(図2の実線の位置に戻る)。次のサイクルのための樹脂送り、可塑化の工程に移行し、同じ工程を繰り返す。
なお、本発明によれば、大きな力が必要な射出工程のとき、ボールねじ軸12A、12Bに働く応力が引張り力となるように構成されているので、ボールねじ軸12A、12Bは撓むおそれがない。
また、射出スクリュ回転駆動モータ8と、射出駆動用モータ11A、11Bとは、移動フレーム6の同じ側に取付けてあるので、移動フレーム6の周辺機構がコンパクトに収まっている。
本発明の実施の形態の変形例を図5〜図7によって説明する。
図5は、本発明の射出成形機の電動射出ユニットを示す側面図、図6は図5の平面図、図7は図5のC方向から見た後面図である。なお、前述の実施形態とこの変形例とが異なる部分について説明する。
これらの図において、50は本発明の電動射出ユニット、110は主フレーム3の上に摺動自在に設けられたベースフレーム、120はベースフレーム110の前部に設けられた固定側フレーム、130は固定側フレーム120の後方のベースフレーム110に摺動自在に設けられ、固定側フレーム120に対して進退動する移動フレーム、140は移動フレーム130を前後に移動させるボールねじ機構である。
ベースフレーム110は、固定側フレーム120と、前部及び後部の左右に延びる前部アーム111及び後部アーム112とを一体化した鋳鉄製の部材である。 前部アーム111後部アーム112の左右の両端部にそれぞれ水平で互いに平行して前後に走るガイドロッド113を備えている。ガイドロッド113は後端を後部アーム112に嵌装され、前端を前部アーム111にねじで嵌めあわされて固定されており、十分大きい曲げ剛性を持たせてある。ガイドロッド113に対して、後述する移動フレーム130の水平面内の回転を阻止し、ボールねじナット144に発生する偏荷重を軽減するために十分大きい曲げ剛性を持たせていることが好ましい。
固定側フレーム120の左右の両端部の前側にはそれぞれ射出駆動用のサーボモータ141A、141Bが出力軸を後方に向けて固着して取り付けられている。出力軸は図6に示すようにスプラインハブを備えていて、後述のボールねじ軸142A、142Bの前端に設けたスプラインシャフトとスプライン継手を形成し連結している。
移動フレーム130は射出スクリュ7の後端を支持して前後進させる左右に伸びた部材で、左右の中央部に射出スクリュ7を回転駆動するスクリュ回転装置131を備えている。スクリュ回転装置131は移動フレーム130の後面に固着して取り付けられたウォーム減速機132と、上面に設けた射出スクリュ回転駆動用のサーボモータ133と、両者に歯付プーリを介して巻掛けられた歯付ベルト134で構成されており、サーボモータ133はテークアップ機能を備えたブラケットを介して取付けられており、歯付ベルト134を介してウォーム減速機132を駆動するようになっている。ウォーム減速機132の出力軸には射出スクリュ7の後端がスプライン継手で連結し、射出スクリュ7にかかるスラストはローラベアリングを介して移動フレーム130で受けられている。
また、移動フレーム130において、ウォーム減速機132の軸心とほぼ同じ高さの両端部にボールねじ軸142A、142Bを貫通させ、これにねじで嵌め合わさるボールねじナット144A、144Bを固定支持している。また、移動フレームはそのほぼ下側に脚部130aを備えていて、ガイドロッド113に対して摺動自在に外側から嵌めあわされたリニアブッシュ135を固定支持している。脚部130aのリニアブッシュ135についての軸方向の長さ(図5のd参照)は十分長くしてある。
dの大きさは回転誤差に起因する偏荷重に対して大きいほど良い。ただし、図5に示すようにリニアブッシュはdの大きさ全てがガイドロッドと装着する必要はない。リニアブッシュのdの寸法は、その両端2箇所に移動フレームの荷重と回転誤差に起因する偏過重を受けることができる面圧となるように決定し、さらには、リニアブッシュのクリアランスから発生する移動フレームの傾きを基準値以内に収めることを考慮して決定するとよい。なお、その基準値は移動フレームに結合されている射出スクリュ7と固定部に取り付けられているスクリュシリンダ5のクリアランスにより決定される。
ボールねじ軸142は前端を図6に示すように固定側フレーム120に固着して取り付けられた複数のアンギュラコンタクト軸受143によってスラストを受けるように回転自在に支持され、後端はボールねじナット144を介して移動フレーム130に回転自在に支持されており、先端には抜止のストッパを備えている。サーボモータ141、ボールねじ軸142、及びボールねじナット144で回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構140を形成している。なお、ボールねじ軸142、ガイドロッド113、及び射出スクリュ7は正確に平行にする必要があるが、上述の構成では鋳鉄製で一体に形成されたベースフレーム110と固定側フレーム120に旋削された穴を基準として組立てられるので、容易に幾何学的な精度を上げることが出来る。
なお、鋳鉄を選択することが製造、および加工などの利便性から好ましいが、他の材料によって一体成形してもよい。そのとき、鋳鉄と同等、もしくはそれ以上に剛性の高い材料を用いる方が好ましい。
このようにベースフレーム110を一体成形した場合、剛性の向上だけでなく、一体成形したベースフレーム110に、旋削された穴を基準にガイドロッド113を組み付けることができるので、別体の場合とは異なり容易に幾何学的な精度を向上することができる。すなわち、別体の場合は個々の部材(左右のガイドロッド取り付け部とベース)毎に機械加工誤差が生じるため、ガイドロッドの芯調整のためにガイドロッドの取り付け部材もしくはガイドロッドに調整用部品を組み付けることが必要となり、組み立ては容易ではなく、また時間も要する。一方、一体成形したベースフレーム110の場合は取り付け穴が同一条件で加工できるので機械加工精度が向上し、芯調整が不要となり組み立てが容易となる。
上記構成の電動射出ユニット50の作用を説明する。
樹脂の射出を行うときは、まず、図示しないシフトシリンダによってベースフレーム110を前方(図5の左側)に移動し、射出シリンダ5の先端のノズルを図示しない金型に圧接しておく。ついで、ホッパ9から材料樹脂を投入して射出シリンダ5で加熱すると共に、スクリュ回転装置131によって、即ち、サーボモータ133によって歯付ベルト134を介してウォーム減速機132で減速して、射出スクリュ7を回転させて樹脂を可塑化させる。そして、射出スクリュ7を後退させながら射出シリンダ5の前端に所定量の樹脂を溜める。次いで、ボールねじ機構140によって、即ち、2個のサーボモータ141A、141Bを図示しない制御装置によって同期駆動してスクリュねじ軸142を回転させる。この回転運動を移動フレーム130に固着して取り付けられたボールねじナット144A、144Bを介して直線運動に変換し、移動フレーム130、及び射出スクリュ7を前方に押し、溶融樹脂を金型内に射出する。射出した樹脂が冷却した後サーボモータ141A、141Bを逆転させて射出スクリュ7を元の位置に後退させる。なお、大きな力が必要な射出工程のとき、ボールねじ軸142A、142Bに働く応力が引張り力となるように構成されているので、ボールねじ軸142A、142Bは撓むおそれがない。
射出スクリュ7を前進させて樹脂を射出する力は、2個のサーボモータ141A、141Bによって回転するボールねじ軸142A、142Bに嵌め合わさるボールねじナット143A、143Bから伝達されるが、2個のサーボモータ141A、141Bの同期に不具合があると、一方のボールねじナット141A、141Bに掛かる軸力と他方のボールねじナットに掛かる軸力との間に差が現れ、この力の差分と両ボールねじ軸142A、142Bの間の距離を乗じた大きさの(上向きベクトルの)回転モーメントMを発生する。このモーメントMは移動フレーム130を水平面内で回転させようとし、移動フレーム130が回転するとボールねじナット144が回転し、ボールねじナット144の両端部に集中する偏荷重を発生してボールねじナット144の寿命を著しく低減させるというボールねじ機構特有の不具合を発生させる。
本発明の射出装置50では十分な距離(図5のd参照)を隔てて設けたリニアブッシュ135よって回転モーメントMに対抗する抵抗モーメントを発生して、移動フレーム130の水平面内の回転を阻止し、ボールねじナット144に発生する偏荷重を軽減することができる。リニアブッシュ135の有効長さは十分長くしてあるので、両端部に生ずる面圧力は十分小さくすることができ、リニアブッシュ135の摺動運動に不具合を生ずることはない。
以上、射出成形機の電動射出装置を例として、ボールねじ機構とサーボモータが2個の場合で説明したが、射出成形機の電動型締め装置や、アルミダイカスト機の電動射出装置としても適用でき、また、ボールねじ機構とサーボモータが3個以上の場合にも適用できる。なお、本変形例における射出スクリュ回転駆動用モータについても、本発明の一実施形態の射出スクリュ回転駆動用モータ8と同様に軸継ぎ手のみを介して直結する方が好ましいが、減速機付モータを用いてもよい。
また、当然のことながら本変形例で説明したものである一体成形したベースフレームは本発明の一実施形態にも適用できる。さらには、本発明の一実施形態と変形例に記載した特徴をそれぞれ選択して組み合わせることもできる。
本発明の一実施形態に係る電動射出ユニットを示す側面図である。 図1のA−A断面で示す平面(一部断面)図である。 図1の射出ユニットをB方向から見た後面図である。 図1の射出ユニットの制御系統を示すブロック図である。 本発明の一実施形態の変形例に係る電動射出ユニットを示す側面図である。 図5の平面図である。 図5のC方向から見た後面図である。 従来の電動射出ユニットを示す平面図(一部断面図)である。
符号の説明
1 射出ユニット
2 射出ユニット台
4 固定フレーム
5 射出シリンダ
6 移動フレーム
7 射出スクリュ
8 射出スクリュ回転駆動用モータ
11A、11B 射出駆動用サーボモータ
12A、12B ボールねじ軸
13A、13B ボールねじナット
21 ガイドロッド
22 ガイドロッド支持台
35 制御装置
50 電動射出装置
110 ベースフレーム
111 前部アーム
112 後部アーム
113 ガイドロッド
120 固定側フレーム
130 移動フレーム
130a 脚部
132 ウォーム減速機
133 サーボモータ
135 リニアブッシュ
140 ボールねじ機構
141A、141B サーボモータ
144A、144B ボールねじナット

Claims (9)

  1. 射出スクリュ軸を駆動する射出スクリュ回転駆動用モータと、
    該射出スクリュ軸に対して平行に配置された複数のボールねじ軸と、
    該ボールねじ軸に直結して駆動する複数の射出駆動用サーボモータと、
    該射出スクリュと該射出スクリュ回転駆動用モータと該射出駆動用サーボモータとを支持し、該ボールねじ軸の回転駆動によって該射出スクリュの軸方向に平行移動する移動フレームと、
    射出シリンダを支持し、該ボールねじ軸に嵌め合わさるボールねじナットを支持する固定フレームと、
    該移動フレームを摺動可能に支持する互いに平行に配置された複数のガイドロッドと、
    該射出駆動用サーボモータの速度と回転角度位置を同調制御する制御装置と
    を備える電動射出装置。
  2. 前記移動フレームは、前記ガイドロッドの外にはめ合わされ摺動可能に固定支持されたリニアブッシュを有するものである請求項1に記載の電動射出装置。
  3. 射出スクリュ軸を駆動する射出スクリュ回転駆動用モータと、
    該射出スクリュ軸に対して平行に配置された複数のボールねじ軸と、
    該ボールねじ軸に直結して駆動する複数の射出駆動用サーボモータと、
    該ボールねじ軸にそれぞれ嵌め合わさるボールねじナットを支持し、該射出スクリュと該射出スクリュ回転駆動用モータを駆動可能に固定支持し、該ボールねじ軸の回転駆動によって該射出スクリュの軸方向に平行移動する移動フレームと、
    該複数の射出駆動用サーボモータと射出シリンダとを支持する固定フレームと、
    該移動フレームを摺動可能に支持する互いに平行に配置された複数のガイドロッドと、
    該複数のボールねじ軸にそれぞれ嵌め合わさる各ボールねじナットのうち、一方のボールねじナットに掛かる軸力と他方のボールねじナットに掛かる軸力との間の差分による該移動フレームの水平面内の回転を阻止するように十分な距離を隔てて、且つ該ガイドロッドに対して摺動自在に外側から嵌めあわされ、該移動フレームに固定支持されたリニアブッシュと、
    該射出駆動用サーボモータの速度と回転角度位置を同調制御する制御装置と
    を備える電動射出装置。
  4. 射出工程のときに前記ボールねじ軸に働く応力が引張り力となる請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動射出装置。
  5. 前記ボールねじ軸は前記射出スクリュに対して対称に配置されるものであり、
    前記ガイドロッドは該ボールねじ軸と該射出スクリュ軸の間に対称にそれぞれ配置され、
    該ボールねじ軸と前記射出駆動用サーボモータの重量をそれぞれが均等に支えるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動射出装置。
  6. 前記制御装置において、射出移動設定速度に基づく該サーボモータ回転速度制御と、各該サーボモータ間の回転数の差を検出し、該サーボモータの回転位相を該各サーボモータ間で合うように回転位相差を補正し、該サーボモータ回転速度を同調制御するものである請求項1〜のいずれか1項に記載の電動射出装置。
  7. 前記固定フレームと前記固定フレームとともに前記ガイドバーを支持する支持台とを一体形成としたベースフレームを備えた請求項1〜のいずれか1項に記載の電動射出装置。
  8. 前記ベースフレームが鋳鉄である請求項に記載の電動射出装置。
  9. 前記ベースフレームに、前記射出スクリュより低い位置で互いに平行に配置したガイドロッドの両端を固着させた請求項7又は請求項8に記載の電動射出装置。
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