JP2018165291A - ビニルアルコール系共重合体の製造方法 - Google Patents

ビニルアルコール系共重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】側鎖にエチレン性二重結合が導入されたビニルアルコール系共重合体の製造において、ゲルの発生を抑制することができる製造方法を提供する。【解決手段】(A)ビニルエステル系単量体、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体、開始剤及び溶媒を重合槽に連続的に供給してビニルエステル系共重合体を得る連続共重合工程;及び(B)該ビニルエステル系共重合体をけん化する工程;を有する、粘度平均重合度が600以上2000以下であるビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、該(A)工程における該溶媒の濃度が30質量%以上70質量%以下であり、該ビニルエステル系単量体に対する該多官能単量体のモル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)が0.05/100以上1.0/100以下である製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ビニルアルコール系共重合体の製造方法に関する。詳細には、本発明は、ビニルエステル系単量体と分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体との共重合体をけん化して得られる、水溶性のビニルアルコール系共重合体の製造に際し、重合時にゲルの発生を抑制する製造方法に関する。
ビニルエステル系単量体と分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体との共重合により、側鎖にエチレン性二重結合が導入されたビニルアルコール系共重合体としては、以下の特許文献1及び2に記載のものが知られている。特許文献1には、導入するエチレン性二重結合のモル比を特定の範囲とすることにより、側鎖にエチレン性二重結合を含有し、水溶性であるビニルアルコール系共重合体が得られることが開示されている。特許文献2には、側鎖にエチレン性二重結合を有するビニルアルコール系共重合体について、該共重合体をエステル化して得られるビニルエステル系共重合体の極限粘度と重量平均分子量が特定の範囲にあるビニルアルコール系共重合体が開示されている。
しかしながら上記特許文献1及び2に記載の製造方法では、原料となるビニルエステル系単量体、多官能単量体、溶媒等を重合の初期に一括仕込みで重合する回分重合方法が採用され、続くけん化、洗浄工程を経てビニルアルコール系共重合体を得ている。上記回分重合方法は少量の製品を生産する場合には適しているが、重合槽内の組成が時間と共に変化する非定常な操作であるため、工業的に大量生産する場合には適していない。一方、大量生産に適している連続重合方法では、ビニルエステル系単量体と上記多官能単量体とを共重合した場合、多官能単量体のエチレン性二重結合がビニルエステル系共重合体鎖と架橋構造を形成し、重合槽内で溶媒に不溶なゲルが生じてしまうという問題があった。
国際公開第2014/171502号 国際公開第2016/060241号
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、連続重合方法においてもゲルの発生を抑制しつつ、側鎖にエチレン性二重結合が導入されたビニルアルコール系共重合体の工業的に有利な製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1](A)ビニルエステル系単量体、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体、開始剤及び溶媒を重合槽に連続的に供給してビニルエステル系共重合体を得る連続共重合工程;及び(B)該ビニルエステル系共重合体をけん化する工程;を有する、粘度平均重合度が600以上2000以下であるビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、該(A)工程における該溶媒の濃度が30質量%以上70質量%以下であり、該ビニルエステル系単量体に対する該多官能単量体のモル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)が0.05/100以上1.0/100以下である製造方法。
[2]重合槽が2つ以上の添加口を備え、多官能単量体と開始剤とを異なる添加口から供給する、上記[1]の製造方法。
[3]多官能単量体を添加口から供給する際に、多官能単量体及び溶媒を含有する溶液を添加口から供給し、該溶液における多官能単量体の濃度が1.0質量%以上10.0質量%未満である、上記[2]の製造方法。
[4]溶媒がメタノールである、上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法。
[5]連続共重合工程における重合槽の液面高さが重合槽の高さに対して50%以上である、上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法。
[6]ビニルエステル系単量体の重合率が20%以上90%以下である、上記[1]〜[5]のいずれかの製造方法。
本発明により、ビニルエステル系単量体と特定の多官能単量体とを連続共重合する場合においてもゲルの発生を抑制しつつ、側鎖にエチレン性二重結合が導入され、かつ特定の粘度平均重合度を有するビニルアルコール系共重合体を工業的に簡便に得ることができる。
実施例1で得られたビニルアルコール系共重合体の1H−NMRスペクトルである。
本発明は、(A)ビニルエステル系単量体、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体(以下、単に「多官能単量体」と略記することがある)、開始剤及び溶媒を重合槽に連続的に供給してビニルエステル系共重合体を得る連続共重合工程;及び(B)該ビニルエステル系共重合体をけん化する工程;を有する、粘度平均重合度(以下、「重合度」と略記することがある)が600以上2000以下であるビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、該(A)工程における該溶媒の濃度が30質量%以上70質量%以下であり、該ビニルエステル系単量体に対する該多官能単量体のモル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)が0.05/100以上1.0/100以下である製造方法に関する。本発明の製造方法においては、重合度が600以上2000以下と特定の範囲のビニルアルコール系共重合体を連続重合方法によって得る場合に課題となる、重合槽内のゲルの発生を抑制する方法として、溶媒の濃度及びビニルエステル系単量体に対する該多官能単量体のモル比を上記特定の範囲にすることが特に重要である。以下、当該ビニルアルコール系共重合体の製造方法について詳細に説明する。
[(A)連続共重合工程]
本発明の製造方法は、ビニルエステル系単量体、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体、開始剤及び溶媒を重合槽に連続的に供給してビニルエステル系共重合体を得る連続共重合工程(以下、「連続共重合工程」と称する)を有する。ここで、連続共重合とは、ビニルエステル系単量体、多官能単量体、開始剤及び溶媒、必要に応じて連鎖移動剤等の他の添加剤を連続的に重合槽に供給し、かつビニルエステル系共重合体を含有する溶液を連続的に取り出すことを意味する。
ビニルエステル系単量体を重合する際、通常の連続重合方法では、重合槽における溶媒の濃度を20質量%程度かそれ以下に設定する。しかしながら、本発明の製造方法に用いる多官能単量体は、このような溶媒濃度においては多官能単量体中の複数のエチレン性二重結合が共重合中に反応することが避けられない。特に長時間に亘って連続して共重合を行うと、重合槽内に多官能単量体由来のエチレン性二重結合が導入されたビニルエステル系共重合体が長期滞留してしまい、過剰な架橋反応が進行することで溶媒に不溶なゲルが生成しやすい状況になると考えられる。溶媒に不溶なゲルが生成すると配管等の詰まりが生じるなど、生産続行が困難となる。
生産性の観点からは、溶媒に不溶のゲルは1週間以上生成しないことが好ましい。1週間未満でゲルが生じてしまうと、生産立ち上げから停止までの時間が短くなり、重合が安定する前に停止するため生産性も低く、かつ得られる共重合体の品質のばらつきが大きくなる。
そこで、本発明の製造方法では、連続共重合工程(A)における溶媒の濃度が30質量%以上70質量%以下であることが必須要件である。このように従来の連続共重合の条件よりも溶媒の量を増やすことで、結果として重合槽内におけるゲルの生成を抑制することができる。具体的に、溶媒の濃度が30質量%未満であると、短い運転時間でも多官能単量体単位が架橋点となりビニルエステル系共重合体が架橋したゲルが生成する。一方、溶媒の濃度が70質量%を超えると、得られるビニルエステル系共重合体の収率が低下したり、溶媒回収工程の負荷が高まるため好ましくない。溶媒の濃度の下限は35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。また、溶媒の濃度の上限は65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
本発明で用いる溶媒としてはアルコール系溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどを単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。これらの中でもメタノールが最も好ましい。
本発明の製造方法において、連続共重合工程(A)におけるビニルエステル系単量体に対する多官能単量体のモル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)を0.05/100以上1.0/100以下として共重合させることが重要である。モル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)が0.05/100未満であると、側鎖にエチレン性二重結合が導入され難くなるおそれがある。モル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)は0.10/100以上がより好ましく、0.15/100以上がさらに好ましい。一方、モル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)が1.0/100を超えると、短い重合時間でも多官能単量体単位が架橋点となりビニルエステル系共重合体が架橋したゲルが生成する可能性が高まったり、ビニルエステル系共重合体の重合度を制御するのが困難になる。モル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)は0.8/100以下がより好ましく、0.5/100以下がさらに好ましく、0.3/100以下が特に好ましい。
本発明で用いるビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。
本発明で用いる多官能単量体は、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有するものであれば、種々の単量体を用いることができる。但し、連続共重合時に過剰な架橋反応が進行してゲルが生じることがなく、しかも必要量の二重結合を導入できるものでなければならない。ビニルエステル系単量体に対する多官能単量体の配合割合、重合温度、単量体濃度、重合率、粘度平均重合度など、様々な要因を考慮しながら、適切な反応性を有する多官能単量体を選択する必要がある。過剰な架橋反応を抑制する観点からは、多官能単量体が含有するエチレン性二重結合の数が2つであることが好ましい。
中でも、上記多官能単量体として、エタンジオールジビニルエーテル、プロパンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテルなどのジビニルエーテル化合物のようなビニルエーテル基を含有する多官能単量体が好適なものとして挙げられる。
また、アリル基を含有する多官能単量体も好適である。アリル基を含有する多官能単量体としては、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン等のジエン化合物、グリセリンジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルなどのジアリルエーテル化合物、グリセリントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどのトリアリルエーテル化合物、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルなどのテトラアリルエーテル化合物のようなアリルエーテル基を含有する単量体;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリルなどカルボン酸ジアリルのようなアリルエステル基を含有する単量体;ジアリルアミン、ジアリルメチルアミンなどのジアリルアミン化合物、トリアリルアミンなどのアリルアミノ基を含有する単量体;ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどジアリルアンモニウム塩のようなアリルアンモニウム基を含有する単量体;イソシアヌル酸トリアリル;1,3−ジアリル尿素;リン酸トリアリル;ジアリルジスルフィドなどが例示される。これらの中でも、アリルエーテル基を含有する単量体は、粘度平均重合度や二重結合含有量の制御が容易であり、より好適に用いられる。
さらに、上述した多官能単量体の他に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸を有する単量体;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドを有する単量体、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなども挙げることができる。
連続共重合工程(A)において、ビニルエステル系単量体と多官能単量体とを重合する際の温度(共重合温度)は特に限定されないが、通常、0℃以上200℃以下が好ましく、30℃以上140℃以下がより好ましい。当該温度が0℃より低い場合、十分な重合速度が得られないことがある。当該温度が200℃より高い場合、使用するビニルエステル系単量体や多官能単量体の分解が懸念される。
連続共重合工程(A)において、共重合温度の制御方法は特に限定されず、例えば、重合速度の制御により、重合により生成する熱と、重合容器表面からの放熱とのバランスをとる方法が挙げられる。また、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法も挙げられる。安全性の面からは、後者の方法が好ましい。
ビニルエステル系単量体と多官能単量体とを共重合する際に使用される重合開始剤は、公知の開始剤(例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤など)から選択できる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらの開始剤に、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば、上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた開始剤が挙げられる。連続共重合を高温で行った場合に、酢酸ビニルの分解に起因する着色が見られることがある。その場合、着色の防止を目的として、酒石酸のような酸化防止剤を、ビニルエステル系単量体に対して1〜100ppm程度、重合系に添加することはなんら差し支えない。
連続共重合工程(A)においては、重合槽が2つ以上の添加口を備えており、多官能単量体と開始剤とを異なる添加口から供給することが好ましい。この方法により、重合槽内の液面以上の重合壁面へのゲルの付着をより一層抑制できる。重合槽が備えている2つ以上の添加口の位置は特に限定されない。ビニルエステル系単量体の添加口は特に限定されず、多官能単量体と同一、開始剤と同一又は多官能単量体及び開始剤のそれぞれの添加口と異なる第3の添加口から添加することができる。また、溶媒はすべての添加口から各種添加剤の溶液として供給することが好ましい。
また、多官能単量体を添加口から供給する際に、多官能単量体及び溶媒を含有する溶液を添加口から供給し、該溶液における多官能単量体の濃度が1.0質量%以上10.0質量%未満であることが好ましい。多官能単量体の濃度が1.0質量%未満であると、必要量の二重結合を導入するために、多量の溶液を供給する必要があり、生産性が低下するおそれがある。一方、多官能単量体の濃度が10.0質量%以上であると、重合槽内にゲルが発生する可能性が高まるおそれがある。該溶液における多官能単量体の濃度は2.0質量%以上9.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。
連続共重合工程(A)におけるビニルエステル系単量体と多官能単量体との共重合に際し、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の単量体を共重合してもよい。当該他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体などの(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。このような他の単量体を共重合させる場合、その共重合量は、通常5モル%以下である。
連続共重合工程(A)においては、重合槽の液面高さが、重合槽の高さに対して50%以上であることが好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。重合槽の液面高さが、重合槽の高さに対して50%以上であることにより、重合槽内の液面より高い位置にある重合壁面へのゲルの付着を一層抑制できる。
連続共重合工程(A)において、ビニルエステル系単量体の重合率は20%以上90%以下であることが好ましい。重合率が20%未満であると、単位時間当たりに製造できるビニルエステル系共重合体の量が減少して生産効率が低下する傾向になるとともに、ビニルエステル系単量体を回収するためのコストが増加する傾向となる。生産効率とコストの観点から、重合率は30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。一方、重合率が90%を超えると、架橋反応が過剰に進行して、得られるビニルアルコール系共重合体の水溶性が低下する傾向となる。架橋反応の抑制の観点から、重合率は80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
[(B)けん化工程]
本発明の製造方法は、上記連続共重合工程(A)で得られたビニルエステル系共重合体をけん化する工程を有する。ビニルエステル系共重合体のけん化方法は特に限定されず、公知のけん化方法を採用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒やp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた、加アルコール分解反応または加水分解反応が挙げられる。この反応に使用しうる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトンメチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒としてけん化することが簡便であり好ましい。
[ビニルアルコール系共重合体]
本発明の製造方法では、得られるビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は600以上2000以下である。粘度平均重合度が600未満では、仮に連続共重合工程(A)においてビニルエステル系共重合体が架橋した化合物が生じたとしても、該架橋した化合物が溶媒に溶解するため、結果としてゲルが生成される可能性は低く、重合槽におけるゲルの発生が問題とならない。粘度平均重合度は650以上がより好ましい。一方、粘度平均重合度が2000を超えると、連続共重合工程(A)において短時間で重合槽内にゲルが発生する可能性が高まる。粘度平均重合度は1500以下がより好ましい。
上記粘度平均重合度Pηは、JIS−K6726(1994年)に準じて測定される。具体的には、ビニルアルコール系共重合体を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:L/g)から、以下の式により算出できる。
粘度平均重合度=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
本発明の製造方法で得られるビニルアルコール系共重合体のけん化度は60モル%以上99.9モル%以下が好ましい。けん化度が60モル%未満では、ビニルアルコール系共重合体が水に不溶となる場合がある。けん化度は65モル%以上がより好ましい。一方、けん化度が99.9モル%を超えると、工業的製造が難しいだけでなく、ビニルアルコール系共重合体水溶液の粘度安定性が悪くなり取り扱いが困難な場合がある。けん化度は99.5モル%以下がより好ましい。
上記けん化度は、JIS−K6726(1994年)に記載されているけん化度の測定方法により測定した値とする。このとき、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位及びエチレン性二重結合を含む単量体単位以外の単位については、仮に含まれているとしても少量であるので無視できる。
本発明の製造方法により得られるビニルアルコール系共重合体は、その側鎖にエチレン性二重結合を含有する。そして、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対する該エチレン性二重結合のモル比は0.01/100〜0.8/100であることが好ましい。該モル比が上記特定の範囲にあることにより、連続共重合工程(A)における重合槽内のゲルの発生をより一層抑制できる。該モル比の下限は0.02/100以上がより好ましく、0.03/100以上がさらに好ましい。また、該モル比の上限は0.5/100以下がより好ましく、0.3/100以下がさらに好ましい。
本発明の製造方法により得られるビニルアルコール系共重合体における、エチレン性二重結合の導入量は、ビニルアルコール系共重合体の重水又は重ジメチルスルホキシド溶媒中での1H−NMRスペクトル、またはけん化前のビニルエステル系共重合体の重クロロホルム溶媒中での1H−NMRスペクトルから測定する。エチレン性二重結合の導入量は、多官能単量体のビニルエステル系単量体に対する混合比や重合率で制御する。
なお、本明細書において、ビニルアルコール系共重合体が水溶性であるとは、温度が90℃でビニルアルコール系共重合体の濃度が4重量%の、ビニルアルコール系共重合体が完全に溶解した水溶液が得られる水溶性のことをいう。
本発明の製造方法により得られるビニルアルコール系共重合体は、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤、グラフト重合体原料、各種接着剤などに特に有用である。また、従来のPVA用途、例えばフィルム、シート、パイプ、分離膜、繊維、繊維用糊剤、紙加工剤、顔料分散剤、各種バインダー用途、モルタルやセメントの添加剤などにも用いることができる。
以下、実施例等により本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準を意味する。
[実施例1]
(側鎖にエチレン性二重結合を有するビニルアルコール系共重合体の合成)
撹拌機、窒素導入口、多官能単量体添加口、および開始剤添加口を備えた容積250Lの重合槽に、該重合槽の滞留時間を8.3時間になるように同一の添加口から酢酸ビニル(以下、「VAc」と略記することがある)17.5kg/h、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネート/メタノール(1%濃度)を0.44kg/h、メタノールを重合槽中のメタノール濃度が50質量%になるように仕込んだ。さらに、開始剤と異なる添加口から多官能単量体としてトリメチロールプロパンジアリルエーテル/メタノール(4%濃度)1.44kg/hを仕込み、60℃で共重合を行った。重合槽内の液面は重合槽高さに対して66%であり、液面一定となるように重合槽から重合液を連続的に取り出した。重合槽出口の重合率が55%になるよう調整した。随時サンプリングを行い、重合液中にメタノールに不溶のゲルが生成しているかを目視で確認しながら重合を行い、メタノールに不溶のゲルが検出された、重合開始から222時間の時点で重合を停止した。重合停止後、未反応の酢酸ビニルを除去し、酢酸ビニル系共重合体(以下、「PVAc」と略記することがある)のメタノール溶液を得た(連続共重合工程(A))。次いで、PVAcのメタノール溶液の濃度を35%に調整し、アルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.012となるようにNaOH/メタノール溶液(50g/L濃度)を添加してけん化した。得られたビニルアルコール系共重合体はメタノールで洗浄した。以上の操作により、側鎖へのエチレン性二重結合の導入量は0.09モル%(ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対するエチレン性二重結合のモル比が0.09/100)、重合度800、けん化度98.5モル%のビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体を重ジメチルスルホキシドへ溶解して1H−NMRの測定を実施した。測定結果を図1に示す。
[実施例2]
多官能単量体であるトリメチロールプロパンジアリルエーテルを重合開始剤と同じ添加口から重合槽に導入したこと、195時間で重合を停止したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。なお、連続共重合工程(A)において、重合開始から195時間でメタノールに不溶なゲルが検出された。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表2に示す。
[実施例3]
連続共重合工程(A)において、重合槽の液面高さを、重合槽の高さに対して42%となるように条件を変更したこと、多官能単量体であるトリメチロールプロパンジアリルエーテルの添加濃度を12%に変更したこと、及び177時間で重合を停止したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。なお、連続共重合工程(A)において、重合開始から177時間でメタノールに不溶なゲルが検出された。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表2に示す。
[比較例1]
表1に示すように、各種の重合条件を変え、さらに連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸(3−MPA)を添加して重合度を調整したこと、及び32時間で重合を停止したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表2に示す。重合時に使用する溶媒濃度が低いためか、重合開始から32時間でメタノール不溶のゲルが検出されてしまい生産性が非常に悪かった。
[比較例2]
表1に示すように、各種の重合条件を変えたこと以外は実施例1と同様にしてPVAcの重合を試みたが、多官能単量体であるトリメチロールプロパンジアリルエーテルの使用量が多すぎるためか、連続共重合工程(A)を開始して5時間後に重合槽内にメタノールに不溶なゲルが生じた。そのため5時間で重合を停止し、続くけん化反応を実施しなかった。
[比較例3]
表1に示すように、各種の重合条件を変え、さらに3−MPAを添加して重合度を調整したこと、及び7時間で重合を停止したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。なお、連続共重合工程(A)において、重合開始から7時間でメタノールに不溶なゲルが検出された。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表2に示す。重合時に使用する溶媒濃度が低い上に、多官能単量体であるトリメチロールプロパンジアリルエーテルの添加濃度が高く、重合槽の重合液面が低いためか、比較例1よりも早く重合開始から7時間でメタノール不溶のゲルが検出されてしまい生産性が非常に悪かった。
[比較例4]
表1に示すように、各種の重合条件を変えたこと、及び200時間経過後に重合を停止したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系共重合体を得た。なお、連続共重合工程(A)において、重合開始から200時間経過時もメタノールに不溶なゲルは検出されなかった。得られたビニルアルコール系共重合体の物性を表2に示す。メタノール不溶のゲルは生じなかったが、得られたビニルアルコール系重合体の重合度が低く目標重合度を達成できなかった。
上記実施例で示されているとおり、本発明の製造方法によれば、長時間に亘って連続重合方法を行った場合でも、ビニルエステル系共重合体が架橋した化合物に由来するゲルの生成が抑制され、長時間の生産が可能となる。したがって、本発明の製造方法によれば、側鎖にエチレン性二重結合を含有するビニルアルコール系共重合体を安定的にかつ工業的に有利に得られる。

Claims (6)

  1. (A)ビニルエステル系単量体、分子中にエチレン性二重結合を2つ以上含有する多官能単量体、開始剤及び溶媒を重合槽に連続的に供給してビニルエステル系共重合体を得る連続共重合工程;及び
    (B)該ビニルエステル系共重合体をけん化する工程;
    を有する、粘度平均重合度が600以上2000以下であるビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、
    該(A)工程における該溶媒の濃度が30質量%以上70質量%以下であり、該ビニルエステル系単量体に対する該多官能単量体のモル比(多官能単量体/ビニルエステル系単量体)が0.05/100以上1.0/100以下である製造方法。
  2. 重合槽が2つ以上の添加口を備え、多官能単量体と開始剤とを異なる添加口から供給する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 多官能単量体を添加口から供給する際に、多官能単量体及び溶媒を含有する溶液を添加口から供給し、該溶液における多官能単量体の濃度が1.0質量%以上10.0質量%未満である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 溶媒がメタノールである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 連続共重合工程における重合槽の液面高さが重合槽の高さに対して50%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. ビニルエステル系単量体の重合率が20%以上90%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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