JP2018164906A - 苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】苦汁が付着した焼成成形品、未焼成成形品(焼成成形品とする)は、焼成成形品と苦汁のみを含んでいる。焼成成形品は、その表面を苦汁(苦汁の結晶)で被覆、及び/又は、その内部(孔と、孔周面)に苦汁の結晶が付着する。焼成成形品に被覆、及び/又は、珪藻土の孔等に付着する苦汁の濃度をコントロールすることで、珪藻土の特性を変えることができ、消臭又は有害物質の吸着と除去に有効である。
【選択図】図4
Description
このような珪藻土を利用した日用品としては、例えば、特許文献1に、珪藻土焼成製品である脱湿置物類が開示されている。
焼成成形品、又は未焼成成形品と、苦汁のみを含んでおり、
前記焼成成形品、又は未焼成成形品の表面を前記苦汁(苦汁の結晶)で被覆、及び/又は、内部に前記苦汁を浸透し、
前記焼成成形品、又は未焼成成形品に被覆、及び/又は、浸透した前記苦汁の結晶は、空気中のホルムアルデヒド(ホルムアルデヒドガス)を吸着可能とする。
その材料として、粉砕した珪藻土と苦汁のみを準備する工程と、
前記珪藻土で成形品を成形する工程と、
前記成形品を、必要により、焼成する工程と(焼成しない選択も含む)、
前記焼成した成形品、又は未焼成成形品の表面を前記苦汁(苦汁の結晶)で被覆、及び/又は、内部に前記苦汁を浸透する工程と、
前記苦汁を添加した成形品を乾燥する工程と、
を含む。
その材料として、珪藻土と苦汁のみを準備する工程と、
前記珪藻土と前記苦汁を混合して混合物を作る工程と、
前記混合物を成形する工程と、
この成形品を乾燥する工程と、
前記乾燥させた混合物を、必要により、焼成する工程(焼成しない選択も含む)と、
を含む。
苦汁は、海水塩の製造時に得られる天然苦汁、又は天然苦汁を水で希釈した苦汁水溶液である。
すなわち、採掘された珪藻土の粉砕物やブロックを所定の形状(例えば七輪や蒸発器)に成形する。次に、その成形した珪藻土(成形品)を焼成する。そして、その焼成した珪藻土(つまり焼成成形品)を、その表面に磨きをかけたのち、苦汁に浸漬させる。この浸漬は、焼成成形品に苦汁を添加するための処理であり、焼成成形品の表面全体に苦汁が接触するように行う。
この浸漬により、焼成成形品の表面に苦汁が被覆し、及び/又は、焼成成形品の内部に苦汁が浸透する。そして、浸漬の終了後、この苦汁が添加された焼成成形品を乾燥させる。なお、ここでの乾燥は、例えば自然乾燥であり、焼成成形品と苦汁が乾燥することで、製品が得られる。
ここで、製品において、苦汁は、焼成成形品の表面及び/又は内部の全体に被覆及び/又は浸透しているのではなく、その表面及び/又は内部の一部に付着して定着している(苦汁の結晶が付着した)と考えられる。具体的には、苦汁は、焼成成形品の表面及び/又は内部に形成された微細な孔(数ミクロン程度の大きさ)に吸着されることで、焼成成形品の表面及び/又は内部に付着して定着し、焼成成形品の表面及び/又は内部に点在すると考えられる。そして、苦汁、及び/又は、珪藻土が本来備えている微細な孔(焼成成形品の微細な孔)は、調湿機能や消臭機能を果たすことが可能であると考えられる。
このような方法で作製された製品は、焼成成形品と、苦汁のみを含んでおり、焼成成形品の表面を苦汁(苦汁の結晶)で被覆、及び/又は、内部に苦汁を浸透した製品であるといえる。
また、上述の浸漬処理に用いる苦汁について、天然苦汁であるか、又は、天然苦汁の質量パーセント濃度が75wt%以上である苦汁水溶液であることがさらに好ましい。これにより、製品はホルムアルデヒドをさらに多く吸収するようになる。
すなわち、切出した珪藻土とか、焼成粉砕物、又は切出した生粉砕物でなる珪藻土に苦汁を(噴霧、練り込み、又はまぶし等の所作で)混合し、混合物(珪藻土)素材(混合物)を作る。苦汁は、反応して珪藻土を固形するバインダーとしての役割も果たしている。次に、その混合物を、例えば、金型により所定の形状(例えば、七輪や蒸発器)に成形し、乾燥処理し、乾燥後に成形品を焼成する。
これにより、珪藻土に苦汁を練り込んだ混合物、即ち、苦汁添加の製品が得られる(成形品「製品」ができる)。製品は、食品衛生法で食品添加物と定められた珪藻土と苦汁のみにより作製される。
また、珪藻土に練り込まれて混合される苦汁は、天然苦汁の質量パーセント濃度が25wt%以上50wt%以下である苦汁水溶液であることがさらに好ましい。これにより、製品にカビが発生するのをさらに抑制することが可能になる。
まず、石川県珠洲市で産出された珪藻土、例えば、切出し珪藻土(塊)を、破砕し、或いは、その他の粉粒体(食品衛生法で認められているもの)を添加し、成形する。例えば、七輪、置物等に成形(以下、七輪とする)する。次に、その成形した七輪を焼成窯により700℃〜1000℃(望ましくは、800℃、以下800℃とする)で焼成する。そして、焼成後の七輪を冷まし、その表面に磨き、又は研磨等の処理をする。この磨きや研磨等を掛けた焼成七輪を、天然苦汁の質量パーセント濃度が50wt%である苦汁水溶液に、2〜3秒間浸漬する。この浸漬は、焼成七輪の表面全体に苦汁水溶液が接触するように浸漬させる。この浸漬により、苦汁が、焼成七輪の表面に付着(被覆)するか、その一部が内部に浸透するか等の処理を行ったことを特徴とした、苦汁処理した七輪が形成される。この浸漬処理の終了後、この苦汁処理した七輪を自然乾燥させる(乾燥窯に入れる)。以上のような作業を得て、実施例1の製品を作製した。この切り出した珪藻土を焼成し、粉状に粉砕したものに苦汁を塗布する手段では、結晶した苦汁は、バインダーとして機能する。実施例では説明しないが、七輪に、苦汁水溶液を吹き付けることも可能である。そして、焼成した製品の粉(七輪を磨く際に出る粉)は、水だけを加え固めると簡単に壊れる。しかし、苦汁を希釈した液をバインダーとして用いることで、固め得るとともに、強度も増すことが判明した。
実施例1の製品について、焼成七輪を、天然苦汁の質量パーセント濃度が75wt%である苦汁水溶液に浸漬させたこと以外は実施例1と同様の処理を行うことで、実施例2の製品を作製した。
実施例1の製品について、焼成七輪を、天然苦汁に浸漬させたこと以外は実施例1と同様の処理を行うことで、実施例3の製品を作製した。
実施例1の製品について、焼成七輪に対し苦汁の浸漬処理を行っていないものを比較例1の製品とした。
市販の木炭を比較例2の製品とした。
まず、石川県珠洲市で産出された珪藻土の粉に、食品衛生法で可能な材料と、天然苦汁の質量パーセント濃度が10wt%である苦汁水溶液を練り込んで混合させ、混合物を生成する。次に、その混合物を、金型により、例えば、蒸発器の形状に成形し、乾燥させる。そして、その乾燥させた成形品を、窯により800℃で焼成する。最後に、焼成後の成形品を冷す。尚、切り出した珪藻土を粉にし、成形した成形品を、乾燥させたものに苦汁を塗布する手段では、結晶した苦汁は、バインダーとして機能する。
これにより、実施例4の製品を作製した。
尚、焼成しない実施例では、成形後に、乾燥し、その後に苦汁の処理(浸漬、又は噴霧等)をする。その効果は、それぞれの例に準ずる。
実施例4の製品について、珪藻土の粉に、食品衛生法で可能な材料と、天然苦汁の質量パーセント濃度が25wt%である苦汁水溶液を練り込んで混合させたこと以外は実施例4と同様の処理を行うことで、実施例5の製品を作製した。
実施例4の製品について、珪藻土の粉に、食品衛生法で可能な材料と、天然苦汁の質量パーセント濃度が50wt%である苦汁水溶液を練り込んで混合させたこと以外は実施例4と同様の処理を行うことで、実施例6の製品を作製した。
実施例4の製品について、珪藻土に対し苦汁を練り込んでいないものを比較例3の製品とした。
実施例1〜3および比較例1、2で作製した製品について、ホルムアルデヒドガスの吸着性能を、SEKマーク繊維製品認証基準で定める方法(一般社団法人繊維評価技術協議会)に基づいて測定した。具体的には、スマートバッグPA(ジーエルサイエンス株式会社製)に、製品の一部(試験片1g)とホルムアルデヒドガス3Lを封入し、2時間経過後のホルムアルデヒドガスの減少量を検知管法により測定した。ホルムアルデヒドガスの減少量(減少率)は、100×(空試験の平均値−測定の平均値)/空試験の平均値で計算した。
実施例4〜6および比較例3で作製した製品について、室内に配置し、当該製品に常時水分(水道水)を添加した。この水分の添加は、製品の上部から市販のペットボトルに入れた水を加えることで行い、具体的には、目視において、水分が珪藻土に概ね染み渡り、珪藻土から水分が溢れていないことを確認できる程度に行った。なお、珪藻土に染み渡った水分は、珪藻土の外面などから空気中に蒸散される。
そして、40日間の間、製品の表面にカビが発生したか否かを目視および光学顕微鏡により観測した。
ホルムアルデヒドガスの吸着性能に関する試験について、得られた結果を下記の表1〜表3に纏めて示す。吸着は、80%以上吸着が可能である。
特に、焼成七輪の表面及び/又は内部の一部について、天然苦汁の質量パーセント濃度が75wt%以上である苦汁水溶液、又は天然苦汁(苦汁の結晶)で被覆及び/又は浸透された製品は、より多くホルムアルデヒドを吸着することが分かった。
ここで、試験結果を考慮すると、焼成七輪と苦汁のみで作製された製品であれば、苦汁を含まない焼成七輪で作製された製品や木炭と比較して、ホルムアルデヒドを吸着する能力が高いと考えられる。
そして、実施例5及び実施例6により作製した製品では、観察開始40日間で、図3〜図6に示すように、その表面にカビの生育を認めなかった。なお、製品の表面に、苦汁の成分と思われる塩類の析出が認められた。カビは、25%以上抑制できる。
一方で、比較例3により作製した製品では、観察開始2週間目で、図7及び図8に示すように、その表面の一部にカビの生育を認めた。
この結果から、珪藻土に、天然苦汁の質量パーセント濃度が10wt%以上50wt%以下である苦汁水溶液を混合させた混合物により成形された製品は、苦汁を含まない珪藻土で作製された製品と比較して、カビの生育を長期間抑制することが分かった。
特に、珪藻土に、天然苦汁の質量パーセント濃度が25wt%以上50wt%以下である苦汁水溶液を混合させた混合物により成形された製品は、カビの生育を、より長期間抑制することが分かった。
ここで、試験結果を考慮すると、焼成七輪(珪藻土)と苦汁とで作製された製品は、苦汁を含まない焼成七輪(珪藻土)で作製された製品と比較して、カビの生育を抑制する能力が高いと考えられる。
具体的には、実施例1の製品について、焼成七輪を、天然苦汁の質量パーセント濃度が25wt%である苦汁水溶液に浸漬させたこと以外は実施例1と同様の処理を行うことで、製品Aを作製した。そして、この製品Aについて、アンモニアガスの吸着性能を、SEKマーク繊維製品認証基準で定める方法に基づいて測定した。つまり、スマートバッグPA(ジーエルサイエンス株式会社製)に、製品の一部(試験片1g)とアンモニアガス3Lを封入し、2時間経過後のアンモニアガスの減少量を検知管法により測定した。アンモニアガスの減少量(減少率)は、100×(空試験の平均値−測定の平均値)/空試験の平均値で計算した。
そして、焼成成形品と苦汁のみを含んだ製品は、珪藻土と同様に、酢酸やイソ吉草酸等の空気中の有害物質を吸着しつつ、その除去を可能とする。
また、このような食品衛生法に定められた材料の他の物質は、例えば、製品に対して0wt%以上10wt%未満含まれていても良い。
Claims (5)
- 焼成成形品、又は未焼成成形品と、苦汁のみを含んでおり、
前記焼成成形品、又は未焼成成形品の表面を前記苦汁(苦汁の結晶)で被覆、及び/又は、内部に前記苦汁を浸透し、
前記焼成成形品、又は未焼成成形品に被覆、及び/又は、浸透した前記苦汁の結晶は、空気中のホルムアルデヒド(ホルムアルデヒドガス)を吸着可能とする、
ことを特徴とする、苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品。 - 苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品の製造方法であって、
その材料として、粉砕した珪藻土と苦汁のみを準備する工程と、
前記珪藻土で成形品を成形する工程と、
前記成形品を、必要により、焼成する工程と(焼成しない選択も含む)、
前記焼成した成形品、又は未焼成成形品の表面を前記苦汁(苦汁の結晶)で被覆、及び/又は、内部に前記苦汁を浸透する工程と、
前記苦汁を添加した成形品を乾燥する工程と、
を含む、
ことを特徴とする、苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品の製造方法。 - 前記苦汁は、天然苦汁、又は前記天然苦汁の質量パーセント濃度が50wt%以上である苦汁水溶液である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品の製造方法。 - 苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品の製造方法であって、
その材料として、珪藻土と苦汁のみを準備する工程と、
前記珪藻土と前記苦汁を混合して混合物を作る工程と、
前記混合物を成形する工程と、
この成形品を乾燥する工程と、
前記乾燥させた成形品を、必要により、焼成する工程と、
を含む、
ことを特徴とする、苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品の製造方法。 - 前記苦汁は、天然苦汁の質量パーセント濃度が10wt%以上50wt%以下である苦汁水溶液である、
ことを特徴とする、請求項4に記載の苦汁の結晶が付着した焼成成形品、又は未焼成成形品の製造方法。
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