以下、本発明の詳細を説明する。
[活物質−炭素材料複合体]
本発明に係る活物質−炭素材料複合体は、負極活物質と、炭素材料とを含む。上記負極活物質は、リチウムイオンの脱離及び挿入の平均電位が、Li+/Liに対して、0.0V以上、2.0V未満の化合物である。上記炭素材料は、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する、第1の炭素材料を含有する。また、上記負極活物質の重量をAとし、上記炭素材料の重量をBとしたときに、0<B/(A+B)≦10を満たしている。
本発明に係る活物質−炭素材料複合体は、上記の負極活物質及び炭素材料を含んでいるので、非水電解質二次電池の負極に用いたときに、充放電時におけるサイクル特性を高めることができる。
この理由については、以下のように説明することができる。
従来、Siや、Snなどの負極活物質は、充放電反応に伴う体積変化が大きい。そのため、充放電を繰り返すと負極活物質が崩壊することがある。負極活物質が崩壊すると、導電助剤である炭素材料と接触しない負極活物質が増加する。すなわち、充放電反応に寄与しない負極活物質の存在比率が増加する。そのため、充放電時におけるサイクル特性などの電池性能が著しく低下するという問題があった。
これに対して、本発明では、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する、第1の炭素材料を含有する炭素材料を導電助剤として用いるので、充放電により負極活物質が崩壊しても導電助剤との接触を確保することができる。そのため、充放電時におけるサイクル特性が低下し難い。よって、本発明の活物質−炭素材料複合体は、非水電解質二次電池の負極に用いたときに、充放電時におけるサイクル特性を高めることができる。
(負極活物質)
本発明で用いる負極活物質は、Li+/Liに対して、0.0V以上、2.0V未満でリチウムイオンの脱離及び挿入が進行する。なお、以下、Li+/Liに対する平均電位をvs.Li+/Liと表記する場合があるものとする。
リチウムイオンの挿入反応が0.0V(vs.Li+/Li)以上、2.0V(vs.Li+/Li)未満で進行するとは、負極活物質へのリチウムイオン挿入が2.0V(vs.Li+/Li)未満で開始し、0.0V(vs.Li+/Li)以上で終了することである。一方、リチウムイオンの脱離反応が、0.0V(vs.Li+/Li)以上、2.0V(vs.Li+/Li)未満で進行するとは、負極活物質からのリチウムイオン脱離が0.0V(vs.Li+/Li)以上で開始し、2.0V(vs.Li+/Li)未満で終了することである。
リチウムイオンの脱離及び挿入反応の電圧値(vs.Li+/Li)は、例えば、負極活物質を用いたものを動作極とし、リチウム金属を対極とした半電池の充放電特性を測定し、プラトー開始時及び終了時の電圧値を読み取ることによって求めることができる。プラトーが、2箇所以上ある場合は、最も低い電圧値のプラトーが0.0V(vs.Li+/Li)以上であればよく、最も高い電圧値のプラトーが2.0V(vs.Li+/Li)未満であればよい。上記半電池に用いる動作極、電解液、セパレータは後述のものと同様のものを用いることができる。
リチウムイオンの脱離及び挿入反応が、0.0V(vs.Li+/Li)以上、2.0V(vs.Li+/Li)未満で進行する負極活物質は、金属、金属化合物、あるいは有機物が例示される。
上記金属としては、リチウムイオンと反応し、合金化できるものであれば限定されず、Li、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、又はHgが例示される。これらのなかでも、体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度の観点から、Li、Al、Si、Ge、Sn、Ti又はPbが好ましく、Li、Si、Sn、又はTiがより好ましい。また、リチウムイオンとの反応性がより一層高いことから、Si又はSnがさらに好ましい。
上記金属は、単独で用いてもよいし、上記金属が2種類以上含まれる合金でもよい。2種類以上の金属を混合したものでもよい。また、安定性をより一層向上させるために、上記金属以外の金属を含む合金や、PやBなどの非金属元素がドープされたものでもよい。
上記金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物又は金属硫化物が例示される。安定性をより一層高める観点から、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、リチウムイオンとの反応性がより一層高いことから、シリコン酸化物、スズ酸化物、チタン酸化物、タングステン酸化物、ニオブ酸化物、又はモリブデン酸化物が好ましい。
上記金属酸化物は、単独で用いてもよいし、2種類以上の金属で構成される合金の酸化物であってもよい。2種類以上の金属酸化物を混合したものであってもよい。さらに、安定性をより一層向上させるために、異種金属や、PやBなどの非金属元素がドープされていてもよい。
上記チタン酸化物の場合は、チタン酸リチウム、H2Ti12O25も含まれる。
上記有機物としては、ポリアセンなどの有機物が例示される。
本発明で用いる負極活物質の粒子径は、0.001μm以上、50μm以下であることが好ましい。取り扱い性をより一層高める観点から、0.01μm以上、30μm以下であることがより好ましい。粒子径は、SEM又はTEM像から各粒子の大きさを測定し、平均粒子径を算出した値である。なお、上記粒子径は、単結晶の大きさでもよいし、あるいは単結晶の造粒体の大きさでもよい。
本発明で用いる負極活物質の比表面積は、所望の出力密度を得やすいことから、0.1m2/g以上、100m2/g以下であることが好ましい。上記比表面積は、水銀ポロシメータや、BET法での測定により算出するのがよい。
(炭素材料)
本発明において、炭素材料は、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する第1の炭素材料のみによって構成されていてもよく、さらに後述の第2の炭素材料を含んでいてもよい。
本発明で用いる第1の炭素材料は、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する。より具体的に、「部分的にグラファイトが剥離されている」とは、グラフェンの積層体において、端縁からある程度内側までグラフェン層間が開いていることをいうものとする。すなわち、端縁にてグラファイトの一部が剥離しており、中央側の部分ではグラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層していることをいうものとする。従って、端縁にてグラファイトの一部が剥離している部分は、中央側の部分に連なっている。さらに、上記第1の炭素材料には、端縁のグラファイトが剥離され薄片化したものが含まれていてもよい。
上記のように、本発明で用いる第1の炭素材料は、中央側の部分において、グラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層している。そのため、従来の酸化グラフェンやカーボンブラックより黒鉛化度が高く、導電性に優れている。また、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有することから、比表面積が大きい。さらに、2次元的な広がりを有することから負極活物質と接触する箇所をより一層増加させることができる。従って、このような第1の炭素材料を含む活物質−炭素材料複合体は、非水電解質二次電池の負極に用いたときに、負極活物質が崩壊しても、負極活物質と導電助剤である炭素材料との接触を確保することができる。そのため、充放電を繰り返してもサイクル特性などの電池特性の低下を抑制することができる。
このような第1の炭素材料は、黒鉛もしくは一次薄片化黒鉛と、樹脂とを含み、樹脂が黒鉛又は一次薄片化黒鉛にグラフト又は吸着により固定されている組成物を用意し、熱分解することにより得ることができる。なお、上記組成物中に含まれている樹脂は、除去されていることが望ましいが、樹脂の一部が残存していてもよい。
上記熱分解により、黒鉛又は一次薄片化黒鉛におけるグラフェン層間の距離が拡げられる。より具体的に、黒鉛又は一次薄片化黒鉛などのグラフェンの積層体において、端縁からある程度内側までグラフェン層間が拡げられる。すなわち、グラファイトの一部が剥離しており、中央側の部分ではグラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層している構造を得ることができる。
上記黒鉛とは、複数のグラフェンの積層体である。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などを用いることができる。膨張黒鉛は、通常の黒鉛よりもグラフェン層の層間が大きい。従って、容易に剥離することができる。そのため、膨張黒鉛を用いた場合、本発明で用いる第1の炭素材料をより一層容易に得ることができる。
なお、上記黒鉛は、グラフェン積層数が10万層以上〜100万層程度であり、BETによる比表面積(BET比表面積)で25m2/gよりも小さい値を有するものである。また、上記一次薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離することにより得られるものであるため、その比表面積は、黒鉛よりも大きいものであればよい。
本発明では、上記第1の炭素材料において部分的にグラファイトが剥離されている部分のグラフェン積層数が、5層以上、3000層以下であることが好ましく、5層以上、1000層以下であることがより好ましく、5層以上、500層以下であることがさらに好ましい。
グラフェン積層数が上記下限未満の場合は、部分的にグラファイトが剥離されている部分におけるグラフェン積層数が少ないため、後述する非水電解質二次電池用負極内の各々の負極活物質間をつなげることができない場合がある。その結果、負極内の電子伝導経路が断絶され、レート特性及びサイクル特性が低下することがあるだけでなく、副反応が進行しやすくなり、その結果、ガスが発生しやすくなることがある。
グラフェン積層数が上記上限より多い場合は、炭素材料1つの大きさが極端に大きくなり、負極内の炭素材料の分布に偏りが生じる場合がある。そのため、負極内の電子伝導経路が未発達となり、レート特性及びサイクル特性が低下することがあるだけでなく、副反応が進行しやすくなり、その結果、ガスが発生しやすくなることがある。
グラフェン積層数の算出方法は、特に限定されないが、TEM等で目視観察することによって算出することができる。
本発明に用いる第1の炭素材料は、ラマン分光法によって得られるラマンスペクトルにおいて、Dバンドと、Gバンドとのピーク強度比をD/G比としたときに、D/G比が、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。D/G比がこの範囲の場合、炭素材料そのものの導電性をより一層高めることができ、しかもガス発生量をより一層低減することができる。また、D/G比は、0.05以上であることが好ましい。この場合、炭素材料上での電解液分解反応が抑制され、その結果、ガス発生がより一層抑制されるとともに、サイクル特性をより一層向上させることができる。
本発明に用いる第1の炭素材料のBET比表面積は、負極活物質との接触点をより一層十分に確保できることから、25m2/g以上が好ましい。負極活物質との接触点をさらに一層十分に確保できることから、第1の炭素材料のBET比表面積は、35m2/g以上であることがより好ましく、45m2/g以上であることがさらに好ましい。また、負極作製時の取り扱い易さをより一層高める観点から、第1の炭素材料のBET比表面積は、2500m2/g以下であることが好ましい。
本発明で用いる第1の炭素材料は、第1の炭素材料1gあたりのメチレンブルー吸着量(μモル/g)をyとし、第1の炭素材料のBET比表面積(m2/g)をxとしたときに、比y/xが、0.15以上であることが好ましく、0.15以上、1.0以下であることがより好ましい。また、後述のスラリー調製時において負極活物質と炭素材料との吸着がより一層進行しやすいことから、0.2以上、0.9以下であることがさらに好ましい。
メチレンブルー吸着量(μモル/g)は、次のようにして測定される。最初に、10mg/L濃度のメチレンブルーのメタノール溶液の吸光度(ブランク)を測定する。次に、メチレンブルーのメタノール溶液に測定対象物(第1の炭素材料)を投入し、遠心分離により得られた上澄み液の吸光度(サンプル)を測定する。最後に、吸光度(ブランク)と吸光度(サンプル)との差から1g当たりのメチレンブルー吸着量(μモル/g)を算出する。
なお、上記メチレンブルー吸着量と、第1の炭素材料のBETにより求められた比表面積とには相関が存在する。従来から知られている球状の黒鉛粒子では、BET比表面積(m2/g)をx、上記メチレンブルー吸着量(μモル/g)をyとしたとき、y≒0.13xの関係にあった。これは、BET比表面積が大きい程、メチレンブルー吸着量が多くなることを示している。従って、メチレンブルー吸着量は、BET比表面積の代わりの指標となり得るものである。
本発明では、上述のとおり、上記第1の炭素材料の比y/xが、0.15以上であることが好ましい。これに対して、従来の球状の黒鉛粒子では、比y/xが0.13である。従って、比y/xが0.15以上である場合、従来の球状の黒鉛とは、同じBET比表面積でありながら、メチレンブルー吸着量が多くなる。すなわち、この場合、乾燥状態では幾分凝縮するものの、メタノール中などの湿式状態では、グラフェン層間又はグラファイト層間を乾燥状態に比べより一層拡げることができる。
本発明で用いる第1の炭素材料は、最初に、黒鉛又は一次薄片化黒鉛にグラフト又は吸着により樹脂を固定した組成物を作製する工程を経て、次に、組成物を熱処理する工程を経て得ることができる。なお、上記組成物中に含まれている樹脂は除去されていてもよく、樹脂の一部が残存していてもよい。
第1の炭素材料に樹脂が残存している場合の樹脂量は、樹脂分を除く第1の炭素材料100重量部に対し、1重量部以上、350重量部以下であることが好ましく、5重量部以上、50量部以下であることがより好ましく、5重量部以上、30重量部以下であることがさらに好ましい。残存樹脂量が上記下限未満では、BET比表面積を確保できない場合がある。また、残存樹脂量が上記上限より多い場合は、製造コストが増大する場合がある。
なお、第1の炭素材料に残存している樹脂量は、例えば熱重量分析(以下、TG)によって加熱温度に伴う重量変化を測定し、算出することができる。
本発明で用いる第1の炭素材料は、負極活物質との複合体を作製した後に、樹脂を除去してもよい。樹脂を除去する方法としては、樹脂の分解温度以上、負極活物質の分解温度未満で加熱処理する方法が好ましい。この加熱処理は、大気中、不活性ガス雰囲気下、低酸素雰囲気下、あるいは真空下のいずれで行ってもよい。
黒鉛あるいは一次薄片化黒鉛に、グラフトあるいは吸着により樹脂を固定した組成物の作製に用いる樹脂は、特に限定されないが、ラジカル重合性モノマーの重合体であることが好ましい。ラジカル重合性モノマーは、複数種類のラジカル重合性モノマーの共重合体であってもよいし、1種類のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよい。
このような樹脂の例としては、ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリブチラール、ポリアクリル酸又はポリエチレングリコールが挙げられる。
上記第1の炭素材料の製造方法としては、例えば、国際公開第2014/034156号に記載の製造方法が挙げられる。すなわち、例えば、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、樹脂とを含む組成物を作製する工程と、作製した組成物を(開放系にて)熱分解する工程とを経ることにより、本発明に用いる第1の炭素材料が製造される。製造された第1の炭素材料は、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有している。
上記製造方法では、酸化工程を経ていないので、得られた第1の炭素材料は、従来の酸化グラフェン及び該酸化グラフェンを還元して得られるグラフェンと比較して導電性に優れている。従来の酸化グラフェンや酸化還元グラフェンでは、sp2構造を十分に担保できないためであると考えられる。従来の酸化グラフェンや酸化還元グラフェンと比較して導電性に優れているため、上記第1の炭素材料を用いた活物質−炭素材料複合体は、非水電解質二次電池の電極に用いたときに、電池の抵抗を小さくすることができ、レート特性及びサイクル特性を高めることができる。また、得られた第1の炭素材料は、表面に活性点が少ないことから、酸化グラフェンと比べて電解液が分解しにくいため、得られた第1の炭素材料を用いた場合、ガスの発生を抑制することができる。
なお、上記製造方法で得られた第1の炭素材料が、電解液を分解しにくい理由としては、以下のように説明することができる。
一般に、酸化グラフェンや、酸化グラフェン経由のグラフェンは、酸化又は還元処理が施されているので、表面に何らかの官能基(酸性:水酸基又はカルボキシル基、アルカリ性:アミノ基)が多数存在する。これらの官能基はそのものが酸性又はアルカリ性であるため、電解液と反応しやすいという性質を有する。また、電解液の分子が吸着しやすくなるため、電極表面との接触機会が増え、この点からも電解液と反応しやすくなる。
また、カーボンブラックでは、上記の官能基に加え、完全に黒鉛化されていないため、結晶構造に欠陥がある。この欠陥には電子が過剰に存在しているか不足しており、この過不足を解消する方向に働くので、周囲の分子を巻き込んで電解液との反応が進行しやすくなる。
これに対し、上記の製造方法で得られた第1の炭素材料は、黒鉛化度が高く、しかも酸化工程を経ていないので表面に活性点が少ない。そのため、上記の製造方法で得られた第1の炭素材料は電解液を分解しにくく、ガスの発生を抑制することができる。
上述したように、本発明においては、上記第1の炭素材料以外の第2の炭素材料が含まれていてもよい。上記第2の炭素材料は、上記第1の炭素材料とは異なる炭素材料であり、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有さない。上記第2の炭素材料としては、特に限定されず、グラフェン、粒状黒鉛化合物、繊維状黒鉛化合物、又はカーボンブラックなどが例示される。
上記グラフェンは、酸化グラフェンであってもよいし、酸化グラフェンを還元したものであってもよい。
上記粒状黒鉛化合物としては、特に限定されず、天然黒鉛、人造黒鉛、又は膨張黒鉛などが例示される。
上記繊維状黒鉛化合物としては、特に限定されず、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバーなどが例示される。
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、又はアセチレンブラックなどが例示される。
非水電解質二次電池の電解液保持性をより一層高める観点から、上記第2の炭素材料のBET比表面積は、5m2/g以上であることが好ましい。二次電池の電解液保持性をさらに一層高める観点から、第2の炭素材料のBET比表面積は、10m2/g以上であることがより好ましく、25m2/g以上であることがさらに好ましい。また、負極作製時の取り扱い易さをより一層高める観点から、第2の炭素材料のBET比表面積は、2500m2/g以下であることが好ましい。
グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている上記第1の炭素材料と、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有さない上記第2の炭素材料とは、例えば、SEMやTEMなどで区別することができる。
上記第1の炭素材料と第2の炭素材料とを含むとは、例えば、後述の複合体や負極に、上記第1の炭素材料と第2の炭素材料とが存在していることを意味する。上記第1の炭素材料と第2の炭素材料とを存在させる方法は、特に限定されない。後述の複合体や負極の作製時に混合してもよいし、どちらか一方の炭素材料で後述の複合体を作製した後に、他方の炭素材料を添加する方法でもよい。
第2の炭素材料の表面には、官能基が存在していてもよい。この場合、後述の複合体や負極がより一層作製しやすくなる。
本発明においては、上記第1の炭素材料の重量をMとし、上記第2の炭素材料の重量をNとしたときに、比M/Nが、0.01以上、100以下の範囲内にあることが好ましい。比M/Nが上記範囲内にある場合、二次電池における電極の抵抗をより一層小さくすることができる。そのため、本発明の非水電解質二次電池に用いたときに、大電流での充放電時における発熱をより一層抑制することをできる。
非水電解質二次電池における電極の抵抗をさらに一層小さくする観点から、比M/Nは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
(活物質−炭素材料複合体)
本発明の活物質−炭素材料複合体は、例えば、次のような手順で作製される。
最初に、上述したグラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている、第1の炭素材料を含有する炭素材料を、溶媒に分散させた分散液(以下、炭素材料の分散液)を作製する。続いて、上記分散液とは別に、負極活物質を溶媒に分散させた負極活物質の分散液(以下、負極活物質の分散液)を作製する。次に、炭素材料の分散液と、負極活物質の分散液とを混合する。最後に、上記炭素材料及び上記負極活物質が含まれる分散液の溶媒を除去することによって、本発明の負極に用いられる負極活物質と炭素材料との複合体(活物質−炭素材料複合体)が作製される。
また、上述の作製方法以外にも、炭素材料の分散液に負極活物質を加え、炭素材料及び負極活物質が含まれる分散液を作製した後に、溶媒を除去する方法でもよいし、炭素材料と、負極活物質と、溶媒との混合物を、ミキサーで混合する方法でもよい。後述の負極のスラリーの作製と、複合体の作製とを兼ねていてもよい。
負極活物質又は炭素材料を分散させる溶媒は、水系、非水系、水系と非水系との混合溶媒、あるいは異なる非水系溶媒の混合溶媒のいずれでもよい。また、炭素材料の分散に用いる溶媒と、負極活物質を分散させる溶媒は同じでもよいし、異なっていてもよい。異なっている場合は、互いの溶媒に相溶性があることが好ましい。
非水系溶媒としては、特に限定されないが、例えば分散のしやすさから、メタノール、エタノール、プロパノールに代表されるアルコール系、テトラヒドロフラン又はN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を用いることができる。また、分散性をより一層向上させるため、上記溶媒に、界面活性剤などの分散剤が含まれてもよい。
分散方法は、特に限定されないが、超音波による分散、ミキサーによる分散、ジェットミルによる分散、又は攪拌子による分散が挙げられる。
炭素材料の分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、炭素材料の重量を1とした場合に、溶媒の重量が1以上、1000以下であることが好ましい。取り扱い性をより一層高める観点から、炭素材料の重量を1とした場合に、溶媒の重量が5以上、750以下であることがより好ましい。また、分散性をより一層高める観点から、炭素材料の重量を1とした場合に、溶媒の重量が5以上、500以下であることがさらに好ましい。
溶媒の重量が上記下限未満の場合は、炭素材料を所望の分散状態まで分散させることができない場合がある。一方、溶媒の重量が上記上限より大きい場合は、製造費用が増大する場合がある。
負極活物質の分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、負極活物質の重量を1とした場合に、溶媒の重量が0.5以上、100以下であることが好ましい。取り扱い性をより一層高める観点から、溶媒の重量は、1以上、75以下であることがより好ましい。また、分散性をより一層高める観点から、溶媒の重量は、5以上、50以下であることがさらに好ましい。なお、溶媒の重量が上記下限未満の場合は、負極活物質を所望の分散状態まで分散させることができない場合がある。一方、溶媒の重量が上記上限より大きい場合は、製造費用が増大する場合がある。
負極活物質の分散液と、炭素材料の分散液とを混合する方法は、特に限定されないが、互いの分散液を一度に混合する方法や、一方の分散液を他方の分散液に複数回に分けて加える方法が挙げられる。
一方の分散液を他方の分散液に複数回に分けて加える方法としては、例えば、スポイドなどの滴下の器具を用いて滴下する方法や、ポンプを用いる方法、あるいはディスペンサーを用いる方法が挙げられる。
炭素材料、負極活物質及び溶媒の混合物から、溶媒を除去する方法としては、特に限定されないが、ろ過により溶媒を除去した後に、オーブン等で乾燥させる方法が挙げられる。上記ろ過は、生産性をより一層高める観点から、吸引ろ過であることが好ましい。また、乾燥方法としては、送風オーブンで乾燥させた後に、真空で乾燥させた場合、細孔に残存している溶媒を除去できることから好ましい。
本発明の活物質−炭素材料複合体においては、負極活物質の重量をAとし、炭素材料の重量をBとしたときに、0<B/(A+B)≦10を満たしている。比[B/(A+B)]が上記下限以上であるので、電子伝導経路を形成することができる。また、比[B/(A+B)]が上記上限以下であるので、高エネルギー密度化が可能となる。比[B/(A+B)]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。なお、炭素材料に第2の炭素材料が含まれる場合は、第1の炭素材料と第2の炭素材料の総和の重量をBとするものとする。
[非水電解質二次電池用負極]
本発明の非水電解質二次電池用負極は、上述の活物質−炭素材料複合体を含む。本発明の非水電解質二次電池用負極は、上記活物質−炭素材料複合体のみで形成されてもよいが、負極をより一層容易に形成する観点から、バインダーが含まれていてもよい。
上記バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。
上記バインダーは、非水電解質二次電池用負極をより一層容易に作製する観点から、非水溶媒又は水に溶解または分散されていることが好ましい。
非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル又はテトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらに、分散剤や、増粘剤を加えてもよい。
本発明の非水電解質二次電池用負極に含まれるバインダーの量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、30重量部以下であり、より好ましくは0.3重量部以上、15重量部以下であり、特に好ましくは0.5重量部以上、10重量部以下である。バインダーの量が上記範囲内にある場合、負極活物質と炭素材料との接着性を維持することができ、集電体との接着性をより一層高めることができる。
本発明の非水電解質二次電池用負極の作製方法としては、例えば、活物質−炭素材料複合体及びバインダーの混合物を、集電体上に形成させることによって作製する方法が挙げられる。
非水電解質二次電池用負極をより一層容易に作製する観点から、以下のようにして作製することが好ましい。まず、上記活物質−炭素材料複合体にバインダー溶液又は分散液を加えて混合することによりスラリーを作製する。次に、作製したスラリーを集電体上に塗布し、最後に溶媒を除去することによって非水電解質二次電池用負極を作製する。
上記スラリーの作製方法としては、例えば、活物質−炭素材料複合体にバインダー溶液を加え、ミキサー等を用いて混合する方法が挙げられる。混合に用いられるミキサーとしては、特に限定されないが、プラネタリミキサー、ディスパー、薄膜旋回型ミキサー、ジェットミキサー、又は自公回転型ミキサー等が挙げられる。
上記スラリーの固形分濃度は、後述の塗工をより一層容易に行う観点から、30重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。貯蔵安定性をより一層高める観点から、上記スラリーの固形分濃度は、35重量%以上、90重量%以下であることがより好ましい。また、より一層製造費用を抑制する観点から、上記スラリーの固形分濃度は、40重量%以上、85重量%以下であることがさらに好ましい。
なお、上記固形分濃度は、希釈溶媒によって制御することができる。希釈溶媒としては、バインダー溶液、あるいは分散液と同じ種類の溶媒を用いることが好ましい。また、溶媒の相溶性があれば、他の溶媒を用いてもよい。
本発明の非水電解質二次電池用負極に用いる集電体は、銅、SUS、ニッケル、チタン、アルミニウム又はこれらの金属を含む合金が好ましい。なお、集電体は、金属材料(銅、SUS、ニッケル、チタン又はこれらの金属を含む合金)の表面に負極の電位で反応しない金属を被覆したものを用いることもできる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましい。集電体の厚みが5μm未満の場合、作製の観点から取り扱いが困難となることがある。一方、集電体の厚みが100μmより厚い場合は、経済的観点から不利になることがある。
上記スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、上記スラリーをドクターブレード、ダイコータ又はコンマコータ等により塗布した後に溶剤を除去する方法や、スプレーにより塗布した後に溶剤を除去する方法、あるいはスクリーン印刷によって塗布した後に溶媒を除去する方法等が挙げられる。
上記溶媒を除去する方法は、より一層簡便であることから、送風オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が好ましい。溶媒を除去する雰囲気としては、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気、又は真空状態などが挙げられる。また、溶媒を除去する温度は、特に限定されないが、60℃以上、250℃以下であることが好ましい。溶媒を除去する温度が60℃未満では、溶媒の除去に時間を要する場合がある。一方、溶媒を除去する温度が250℃より高いと、バインダーが劣化する場合がある。
本発明の非水電解質二次電池用負極は、所望の厚み、密度まで圧縮させてもよい。圧縮は、特に限定されないが、例えば、ロールプレスや、油圧プレス等を用いて行うことができる。
圧縮後における本発明の非水電解質二次電池用負極の厚みは、特に限定されないが、1μm以上、1000μm以下であることが好ましい。厚みが1μm未満では、所望の容量を得ることが難しい場合がある。一方、厚みが1000μmより厚い場合は、所望の出力密度を得ることが難しい場合がある。
本発明の非水電解質二次電池用負極の密度は、負極活物質の真密度に対して、20%以上、100%未満であることが好ましい。密度が負極活物質の真密度に対して、20%未満であると、負極活物質及び炭素材料の接触が不十分となり電子伝導性が低下する場合がある。一方、負極活物質の真密度に対して、100%である場合、後述の電解液が負極内に浸透しにくくなり、リチウム伝導性が低下し、所望の電池特性を得ることができない場合がある。
本発明の非水電解質二次電池用負極は、負極1cm2当たりの電気容量が、0.5mAh以上、10.0mAh以下であることが好ましい。電気容量が0.5mAh未満である場合は、所望する容量の電池の大きさが大きくなる場合がある。一方、電気容量が10.0mAhより大きい場合は、所望の出力密度を得ることが難しくなる場合がある。なお、負極1cm2当たりの電気容量の算出は、非水電解質二次電池用負極作製後、リチウム金属を対極とした半電池を作製し、充放電特性を測定することによって算出してもよい。
非水電解質二次電池用負極の負極1cm2当たりの電気容量は、特に限定されないが、集電体単位面積あたりに形成させる負極の重量で制御することができる。例えば、前述のスラリー塗工時の塗工厚みで制御することができる。
[非水電解質二次電池]
本発明の非水電解質二次電池の正極及び負極は、集電体の両面に同じ電極を形成させた形態であってもよく、集電体の片面に正極、他方の面に負極を形成させた形態、すなわち、バイポーラ電極であってもよい。
本発明の非水電解質二次電池は、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回したものであってもよいし、積層したものであってもよい。正極、負極及びセパレータには、リチウムイオン伝導を担う非水電解質が含まれている。従って、非水電解質二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。
本発明の非水電解質二次電池は、上記積層体を倦回、あるいは複数積層した後にラミネートフィルムで外装してもよいし、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、シート形の金属缶で外装してもよい。外装には発生したガスを放出するための機構が備わっていてもよい。積層体の積層数は、特に限定されず、所望の電圧値、電池容量を発現するまで積層させることができる。
本発明の非水電解質二次電池は、所望の大きさ、容量、電圧によって、適宜直列、並列に接続した組電池とすることができる。上記組電池においては、各電池の充電状態の確認、安全性向上のため、組電池に制御回路が付属されていることが好ましい。
(正極)
本発明の非水電解質二次電池に用いる正極は、特に限定されないが、負極活物質よりも、リチウムイオンの脱離及び挿入の平均電位が高い化合物、すなわち正極活物質が含まれていればよい。例えば、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムに代表される層状岩塩型構造の化合物、マンガン酸リチウムに代表されるスピネル型構造の化合物、オリビン酸鉄リチウムに代表されるオリビン型構造の化合物、又はそれらの混合物が挙げられる。
(負極)
本発明の非水電解質二次電池は、負極として、上記本発明に従って構成される非水電解質二次電池用負極を備える。上記非水電解質二次電池用負極は、本発明に従って構成される活物質−炭素材料複合体を含む。従って、本発明の非水電解質二次電池は、サイクル特性に優れている。
(セパレータ)
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータは、前述の正極と負極との間に設置され、絶縁性かつ後述の非水電解質を含むことができる構造であればよい。セパレータの材料としては、例えば、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、又はそれらを2種類以上複合したものの織布、不織布、若しくは微多孔膜などが挙げられる。
セパレータには、各種可塑剤、酸化防止剤、又は難燃剤が含まれてもよいし、金属酸化物等が被覆されていてもよい。
セパレータの厚みは、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましい。セパレータの厚みが5μm未満の場合、正極と負極とが接触する場合がある。セパレータの厚みが100μmより厚い場合は、電池の抵抗が高くなる場合がある。経済性や、取り扱い性をより一層高める観点から、セパレータの厚みは、10μm以上、50μm以下であることがより好ましい。
(非水電解質)
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどの高分子固体電解質、又はサルファイドガラス、オキシナイトライドなどの無機固体電解質を用いることができる。
非水溶媒としては、後述の溶質をより一層溶解させやすいことから、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン又は環状エーテルなどが例示される。鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル又は鎖状エーテルなどが例示される。また、上記に加え、アセトニトリルなどの一般的に非水電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いてもよい。より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、又はプロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合しても用いてもよい。もっとも、後述の溶質をより一層容易に溶解させ、リチウムイオンの伝導性をより一層高める観点から、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。
溶質としては、特に限定されないが、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato) Borate)、又はLiN(SO2CF3)2などが好ましい。この場合、溶媒により一層容易に溶解させることができる。
電解液に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上、2.0mol/L以下であることが好ましい。溶質の濃度が0.5mol/L未満では、所望のリチウムイオン伝導性が発現しない場合がある。一方、溶質の濃度が2.0mol/Lより高いと、溶質がそれ以上溶解しない場合がある。なお、非水電解質には、難燃剤、安定化剤などの添加剤が微量含まれてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(炭素材料の製造例1)
最初に、膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8F」、BET比表面積=22m2/g)10gと、熱分解性発泡剤(ADCA、永和化成工業社製、商品名「ビニホール AC#R−K3」、熱分解温度210℃)20gと、ポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製、商品名「サンニックスGP−3000」、平均分子量=3000)200gと、テトラヒドロフラン200gとを混合し、原料組成物を用意した。上記原料組成物に、超音波処理装置(本多電子社製)で、100W、発振周波数:28kHzで5時間超音波を照射することによって、ポリプロピレングリコール(PPG)を膨張化黒鉛に吸着させた。このようにして、ポリプロピレングリコールが膨張化黒鉛に吸着されている組成物を用意した。
次に、ポリプロピレングリコールが膨張化黒鉛に吸着されている組成物を溶液流延法により成形した後、80℃で2時間、110℃で1時間、150℃で1時間の順に加熱することによってテトラヒドロフラン(以下、THF)を除去した。その後、THFを除去した組成物を110℃で1時間加熱処理させた後、さらに230℃で2時間加熱処理することによって、上記組成物を発泡させた。
さらに、発泡させた組成物を450℃の温度で0.5時間加熱処理することよって、ポリプロピレングリコール(樹脂)の一部が残存している炭素材料を作製した。
最後に、上記炭素材料を350℃で2.5時間加熱処理することによって、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている炭素材料(第1の炭素材料)を作製した。得られた炭素材料においては、全重量に対して15重量%樹脂が含まれていた。なお、樹脂量は、TG(日立ハイテクサイエンス社製、品番「STA7300」)を用いて、350℃〜600℃の範囲で重量減少した分を樹脂量として算出した。
得られた炭素材料のラマンスペクトルのDバンドと、Gバンドとのピーク強度比であるD/G比を測定した結果、0.6であった。なお、炭素材料のラマンスペクトルは、ラマン分光装置(Thermo Scientific社製、商品名「Nicolet Almega XR」)を用いて測定した。
また、D/G比は、得られたラマンスペクトルの1300cm−1〜1400cm−1の範囲の最大ピーク強度をDバンドのピーク強度とし、また、1500cm−1〜1600cm−1の最大ピーク強度をGバンドのピーク強度とすることにより求めた。
得られた炭素材料のBET比表面積を、比表面積測定装置(島津製作所社製、品番「ASAP−2000」、窒素ガス)を用いて測定した結果、120m2/gであった。
また、得られた炭素材料のメチレンブルー吸着量は、下記手順にて測定した結果、61.0μモル/gであった。また、前述のBET比表面積をxとし、メチレンブルー吸着量をyとしたとき、比y/xは、0.508であった。
メチレンブルー吸着量の測定は、次の通りに実施した。最初に、メスフラスコに、10.0mg/L、5.0mg/L、2.5mg/L、1.25mg/Lの濃度のメチレンブルー(関東化学社製、特級試薬)のメタノール溶液を調製し、各々の吸光度を紫外可視分光光度計(島津製作所社製、品番「UV−1600」)で測定し、検量線を作成した。次に、10mg/Lのメチレンブルーを調製し、100mLのナスフラスコに測定対象の炭素材料(0.005〜0.05g、試料のBET値によって変更)、メチレンブルー溶液(10mg/L、50mL)、及びスターラーバーを加えた。続いて、15分間超音波洗浄機(AS ONE社製)で処理した後に、冷却バス(25℃)中で60分撹拌した。さらに、吸着平衡に達した後、遠心分離により炭素材料と上澄み液とを分離し、ブランクの10mg/Lのメチレンブルー溶液、及び上記上澄み液の吸光度を紫外可視分光光度計で測定し、ブランクと上澄み液との吸光度の差を算出した。
最後に、上記吸光度の差と上記検量線からメチレンブルー溶液の濃度の減少量を算出し、下記式により、測定対象の炭素材料表面のメチレンブルー吸着量を算出した。
吸着量(mol/g)={メチレンブルー溶液の濃度の減少量(g/L)×測定溶媒の体積(L)}/{メチレンブルーの分子量(g/mol)×測定に用いた炭素材料の質量(g)}…式
(炭素材料の製造例2)
最初に、膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8F」、BET比表面積=22m2/g)16gと、カルボキシメチルセルロース(アルドリッチ社製、平均分子量=250,000)0.48gと、水530gとの混合物を用意した。用意した混合物に、超音波処理装置(SMT.CO.,LTD社製、品番「UH−600SR」)で5時間超音波を照射した。続いて、ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製、品番「PG600」)80gを加え、ホモミクサー(TOKUSHU KIKA社製、T.K.HOMOMIXER MARKII)で30分間混合することによって、原料組成物を作製した。
次に、作製した原料組成物を150℃で加熱処理することによって、水を除去した。その後、水を除去した組成物を、380℃の温度で、1時間加熱処理することによって、ポリエチレングリコールの一部が残存している炭素材料を作製した。
最後に、得られた炭素材料を400℃で30分、350℃で2時間の順で加熱処理することによって、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている炭素材料(第1の炭素材料)を作製した。得られた炭素材料においては、全重量に対して12重量%の樹脂が含まれていた。なお、樹脂量は、TG(日立ハイテクサイエンス社製、品番「STA7300」)を用いて、200℃〜600℃の範囲で重量減少した分を樹脂量として算出した。
なお、炭素材料の製造例2で得られた炭素材料のラマンスペクトルのDバンドと、Gバンドとのピーク強度比であるD/G比を測定した結果、0.234であった。
炭素材料の製造例2で得られた炭素材料のBET比表面積を、比表面積測定装置(島津製作所社製、品番「ASAP−2000」、窒素ガス)を用いて測定した結果、95m2/gであった。
また、炭素材料の製造例2で得られた炭素材料のメチレンブルー吸着量は、上記手順にて測定した結果、69.7μmol/gであった。また、前述のBET比表面積をx、メチレンブルー吸着量をyとしたとき、比y/xは、0.733であった。
(実施例1)
活物質−炭素材料複合体;
負極活物質と前述の製造例1で作製した炭素材料との複合体は、次の手順で作製した。
最初に、製造例1で作製した炭素材料0.015gに、エタノール1.5gを加え、5時間超音波洗浄機(AS ONE社製)で処理し、製造例1で作製した炭素材料の分散液(以下、実施例1の炭素材料の分散液)を調製した。
次に、エタノール9gに負極活物質(Si powder、アルドリッチ社製)3gを加え、マグネチックスターラーにて600rpmで10分攪拌することによって、実施例1の負極活物質の分散液を調製した。
さらに、実施例1の炭素材料の分散液に、実施例1の負極活物質の分散液をスポイトで滴下した。なお、滴下時は、実施例1の炭素材料の分散液は、超音波洗浄機(AS ONE社製)で処理し続けた。その後、実施例1の炭素材料及び実施例1の負極活物質の分散液の混合液を、マグネチックスターラーで3時間攪拌した。
最後に、分散液の混合液を吸引ろ過した後に、110℃で1時間真空乾燥することによって、実施例1の負極活物質と炭素材料との複合体(活物質−炭素材料複合体)を作製した。なお、負極の作製に必要な量は、上記の工程を繰り返すことによって作製した。
負極;
実施例1の負極は次の通りに作製した。
最初に、上記複合体100重量部に、バインダー(ブチラール樹脂、積水化学工業社製、商品名「LB−1」、固形分濃度5重量%、メタノール溶液)を固形分が1重量部となるように混合し、スラリーを作製した。次に、このスラリーを銅箔(18μm)に塗工した後に、送風オーブンにて120℃で1時間加熱し、溶媒を除去した後、120℃で12時間真空乾燥した。最後に、ロールプレス機にて、プレスし、電極密度が1.2g・cc−1の負極(片面塗工)を作製した。なお、電極密度は、単位面積当たりの電極重量及び厚みから算出した。
サイクル特性評価用の半電池(非水電解質二次電池)は以下の通りに作製した。
最初に、上述の電極を14mmΦに打ち抜き動作極とし、Li金属を16mmΦに打ち抜き対極とした。次に、動作極(片面塗工)/セパレータ(ポリオレフィン系多孔質膜、厚み25μm)/Li金属の順に試験セル(HSセル、宝泉社製)内に積層し、非水電解質(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2体積%、LiPF6 1mol/L)を0.15mL入れ、密封することによって実施例1の半電池を作製した。さらに、半電池の容量を確認するため、25℃で12時間放置した後、充放電試験装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。最後に上記半電池を25℃、0.5mAで定電流放電(終止電圧:0.02V)及び定電流充電(終止電圧:1.5V)を3回繰り返し、3回目の結果を負極の容量とした。その結果、負極の容量は、2.0mAh/cm2であった。
(実施例2)
製造例1で作製した炭素材料0.158gに、エタノール15.8gを加えたこと、負極作製時に、複合体100重量部に、バインダー(ブチラール樹脂、積水化学工業社製、LB−1、固形分濃度5重量%、メタノール溶液)の固形分が3重量部となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(実施例3)
製造例1で作製した炭素材料0.333gに、エタノール33.3gを加えたこと、負極作製時に、複合体100重量部に、バインダー(ブチラール樹脂、積水化学工業社製、LB−1、固形分濃度5重量%、メタノール溶液)の固形分が3重量部となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(実施例4)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、製造例2で作製した炭素材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(実施例5)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、製造例2で作製した炭素材料を用いたこと以外は、実施例2と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(実施例6)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、製造例2で作製した炭素材料を用いたこと以外は、実施例3と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(比較例1)
製造例1で作製した炭素材料を用いずに、負極活物質をそのまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(比較例2)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、炭素材料としてアセチレンブラックを用いたこと以外は、実施例1と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(比較例3)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、炭素材料としてアセチレンブラックを用いたこと以外は、実施例2と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(比較例4)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、炭素材料としてアセチレンブラックを用いたこと以外は、実施例3と同様にして活物質−炭素材料複合体、負極、半電池(非水電解質二次電池)を作製した。
(非水電解質二次電池のサイクル特性評価)
サイクル特性の評価は次の方法で行った。最初に、実施例1〜6及び比較例1〜4の非水電解質二次電池を、25℃の恒温槽に入れ、充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。次に、定電流定電圧放電(電流値:3mA、放電終止電圧:0.02V、定電圧放電電圧:0.02V、定電圧放電終止条件:3時間経過、あるいは電流値0.3mA)、3mA定電流充電(充電終止電圧:1.5V)を30回繰り返すサイクル運転を行った。最後に、1回目の放電容量を100としたときの、30回目の放電容量の割合を算出することによって放電容量の維持率(サイクル特性)とした。
上記サイクル特性の結果を表1にまとめた。なお、表1における合否の判定は以下の基準で行った。
○…上記維持率(サイクル特性)が70%以上
×…上記維持率(サイクル特性)が70%未満
この結果から明らかな通り、本発明の実施例1〜6の非水電解質二次電池は、比較例1〜4の非水電解質二次電池よりもサイクル特性が全て良好であることが確認できた。