JP2018161831A - 金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

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直希 伊與
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Abstract

【課題】厳しい加工が要求される缶に使用された場合でも、下地の金属板に対して優れた隠蔽性を有し、金属板に貼合せた後に缶へ成形加工する際にフィルムが削れたり、疵付いたり、剥がれたりすることのない優れた成形加工性を発現し、さらに成形後の缶が良好な表面外観、インキ密着性を示す金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【解決手段】融点が236〜250℃の共重合ポリエステルからなり、着色顔料の含有量が15〜40重量%であるB層と、B層の両側に積層した融点が231〜239℃の共重合ポリエステルからなり、着色顔料の含有量が1.0重量%以下であるA層の3層からなる着色二軸延伸ポリエステルフィルムであって、前記A層およびB層の共重合ポリエステルの融点が下記(1)式を満足することを特徴とする金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
4℃<TmB−TmA≦20℃ −−−(1)
ただし、TmAはA層の共重合ポリエステルの融点、TmBはB層の共重合ポリエステルの融点を示す。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属貼板合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。さらに詳しくは、金属板に貼合せた後に缶へ成形加工する際に厳しい加工を施した場合でも優れた成形加工性を発現し、成形加工によって得られた缶が良好な隠蔽性、インキ密着性、レトルト処理後の表面外観を有する、金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
金属缶には内外面の腐食防止として、一般に塗装が施されている。近年、工程簡素化、衛生性向上、公害防止等の目的で有機溶剤を使用せずに防錆性を付与する方法としてポリエステルフィルムのような熱可塑性樹脂フィルムによる被覆が行われている(特許文献1)。即ち、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の金属板に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした後、絞り缶や薄肉化絞り缶のなどのような厳しい成形加工が施される食缶および飲料缶用途へ使用されている。これらの用途に用いられる缶は、コスト低減の観点からさらに加工条件を厳しくした薄肉化絞り加工やしごき加工を施して製造されるようになってきている(特許文献2)。
このような厳しい成形加工を施す場合、金属板の薄肉化にともなって樹脂フィルムも薄肉化する。食缶や飲料缶の外面は意匠性を高めるために一般に印刷が施されるが、樹脂フィルム被覆金属板から成形された缶においては、その印刷下地として金属板の色を隠蔽するために、白色または様々な色の顔料を含んだ樹脂フィルムを金属板にラミネートしたものが使用されている。このようなラミネート金属板に厳しい加工を施した場合、樹脂の厚さは大幅に薄くなり、添加した顔料の厚さ方向の絶対量が減少するため、下地の十分な隠蔽性を得られないという問題が発生する。またこのような厳しい薄肉化加工による樹脂厚さの低減を見越して顔料を予め多量に樹脂フィルム中に添加した場合には樹脂フィルムの強度が低下し、加工時に樹脂フィルムが削れたり傷付きやすくなり、さらには樹脂フィルムが割れて剥げ落ちたりする現象が発生し、隠蔽性を向上させ、なおかつ被覆した樹脂フィルムの強度を高く保つことはきわめて困難である。
例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを金属板にラミネートし、製缶材料として用いる方法(特許文献3、特許文献4)が提案されているが、より厳しい加工を施して成形する際の加工発熱によって樹脂フィルムが削れたり傷付ついたり、極端な場合には破断が発生する。また、未延伸ポリエステルフィルムを金属板にラミネートし、製缶材料として用いる方法(特許文献5)が提案されているが、未延伸フィルムは非常に脆いため、製膜する際や取扱う際に切断し易く、生産性が悪いという問題がある。また、高融点層を有するフィルムを用いて加工発熱によるフィルムの削れや傷付きを防ぐ方法(特許文献6)が提案されているが、金属板との密着力不足によってフィルムが剥がれる問題や、高温がかかる製缶工程、またはレトルト殺菌処理を経た後の表面外観が劣るといった問題があった。
このように厳しい成形加工の際の優れた成形加工性と、成形後の缶の良好な隠蔽性、レトルト処理後の表面外観を両立することは困難であった。
特開平5−154570号公報 特開2006−68779号公報 特開平11−342577号公報 特開2000−37836号公報 特開平11−348218号公報 WO2013/002323号公報
本発明は上記を鑑みなされたもので、その目的は、上記のように厳しい加工が要求される缶に使用された場合でも、下地の金属板に対して優れた隠蔽性を有し、金属板に貼合せた後に缶へ成形加工する際にフィルムが削れたり、疵付いたり、剥がれたりすることのない優れた成形加工性を発現し、さらに良好なレトルト処理後の表面外観、インキ密着性を示す金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
ここでいう優れた成形加工性とは、成形工具によってフィルムが削れたり、フィルムが追従できずに割れたり、金属板からフィルムが剥がれたりすることのない状態を意味する。
本発明者らの研究によれば、上記課題は、融点が236〜250℃の共重合ポリエステルからなり、着色顔料の含有量が15〜40重量%であるB層と、B層の両側に積層した融点が231〜239℃の共重合ポリエステルからなり、着色顔料の含有量が1.0重量%以下であるA層の3層からなる着色二軸延伸ポリエステルフィルムであって、さらには前記A層およびB層の共重合ポリエステルの融点が下記(1)式を満足することを特徴とする金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム(項1)により達成されることが見出された。
4℃<TmB−TmA≦20℃ −−−(1)
ただし、TmAはA層の共重合ポリエステルの融点、TmBはB層の共重合ポリエステルの融点を示す。
また、本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、好ましい態様として以下の項2〜項6の少なくともいずれか1つの態様を包含する。
2.A層の固有粘度が0.60〜0.80であり、B層の固有粘度が0.40〜0.65であって、フィルム全体の着色顔料の含有量が15重量%以上である項1に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
3.A層およびB層を構成する共重合ポリエステルが、いずれもイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートである項1または2に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
4.しごき加工方法を用いた成形に使用される項1〜3のいずれかに記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、隠蔽性に優れ、金属板に貼合せた後に缶へ成形加工する際に缶壁部のフィルムに削れ、疵付き、剥がれが生じることのない優れた成形加工性を発現し、さらには成形後の缶のインキ密着性、表面外観も良好である。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明におけるA層およびB層を構成する共重合ポリエステルは、後述する融点の要件を満たしていれば、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレート共重合体のいずれでも好ましくも用いることができる。なかでもポリエチレンテレフタレート共重合体がより好ましく用いることができる。
かかる共重合ポリエステルの共重合成分は、酸成分でもアルコール成分でも好ましく用いることができる。酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の如き主たる酸成分以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸等が好ましく、アルコール成分としては1,6−ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール、1,4−ヘキサメチレンジメタノールの如き脂環族ジオールが好ましく用いることができる。これらは単独または2種以上を使用することができる。これらの中、イソフタル酸、セバシン酸が好ましく、特にイソフタル酸がより好ましい。
本発明におけるA層は、金属板との密着性確保、かつインキ密着性確保、さらには熱処理やレトルト殺菌処理を経た後の表面外観を保つために共重合ポリエステルの融点が231〜239℃の範囲である必要があり、好ましくは231〜237℃の範囲である。このような融点は、例えば、ポリエチレンテレフタレート共重合体の場合、全繰り返し単位に対して6〜9モル%となるように共重合成分を導入することが好ましい。
該A層に用いられている共重合ポリエステルの融点が231℃未満では耐熱性が劣り、水蒸気透過性が向上するため、製缶後の熱処理やその後のレトルト殺菌処理時に表面外観が悪化する。一方、239℃を超えると製缶後に印刷を施す際のインキとの密着性が悪くなるだけでなく、金属板との密着性が損なわれフィルムの剥がれが発生する。
本発明におけるB層は、フィルム全体の耐熱性を確保するため、共重合ポリエステルの融点が236〜250℃である必要があり、好ましくは238〜248℃の範囲である。このような融点は、例えば、ポリエチレンテレフタレート共重合体の場合、全繰り返し単位に対して2〜7モル%となるように共重合成分を導入することが好ましい。
該B層に用いられている共重合ポリエステルの融点が236℃未満では耐熱性が劣るため、成形加工時の発熱によって削れが発生する。一方、融点が250℃を超えると、共重合ポリエステルの結晶性が高くなり、成形追従性が損なわれる。
さらに本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、厳しい条件で成形加工を施しても缶壁部に削れ、傷つき、剥がれなどが生じることのない良好な加工性を実現するために、金属板に貼合せる際に結晶成分が全溶融する条件で貼り合せることが好ましい。このため、A層とB層の融点差は20℃以下である必要があり、好ましくは15℃以下である。融点差が20℃を超えると、貼り合せる際にA層がラミネートロールに融着してしまう。
また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、上記のとおり金属板に貼合せる際に結晶成分が全溶融する条件で貼り合せる必要があるが、その際インキ密着性と金属板との密着性を確保するためにB層よりもA層の方が融点が低い必要がある。具体的にはA層がB層よりも4℃を超えて低い必要があり、5℃を超えて低いことが好ましい。
ここで、共重合ポリエステルの融点測定はTA Instruments Q100 DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法による。なおサンプルはフィルム各層から削り取ったポリエステル組成物を1mg用いる。
次に本発明におけるA層の着色顔料の含有量は1.0重量%以下である必要があり、好ましくは0.5重量%以下である。着色顔料の含有量が1.0重量%を超える場合には、得られたフィルムを金属板に貼合せ、缶に成形加工した後に高温での熱処理を経た際に、またはレトルト殺菌処理を行った際に、缶の表面外観が悪化する。一方B層の着色顔料の含有量は15〜40重量%範囲である必要があり、好ましくは20〜35重量%である。着色顔料の含有量が下限に満たない場合には、隠蔽性に劣る。一方、着色顔料の含有量が上限を超える場合には、隠蔽性の向上効果が飽和するだけでなく、フィルムが脆くなってフィルム延伸時にフィルム破断が生じやすくなり、かつ得られたフィルムを金属板に貼合せた後、缶に成形加工する際に破断が生じやすい。また、隠蔽性を確保するためフィルム全体の着色顔料の含有量15重量%以上であることが好ましい。A層およびB層に含有させる着色顔料としては無機、有機系のいずれであってもよいが、無機系の方が好ましい。無機系顔料としては、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が好ましく例示され、なかでも二酸化チタンがより好ましい。
なお、A層およびB層を構成する共重合ポリエステルには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて他の添加物、例えば蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加することができる。特に白度を向上させる場合には、蛍光増白剤が有効である。
次に、本発明におけるA層を構成する共重合ポリエステル(ポリマー部分)の固有粘度は0.60〜0.80の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.60〜0.75の範囲である。この固有粘度が0.60に満たない場合には、厳しい加工条件で缶に成形加工する際に削れやすく、表面欠陥が生じやすい。一方0.80を超えるものは過剰品質であるだけでなく、原料共重合ポリエステルの生産性も落ちるので不経済である。
また、本発明におけるB層を構成する共重合ポリエステル(ポリマー部分)の固有粘度は0.40〜0.65の範囲であることが好ましく、0.42〜0.62の範囲であることがより好ましい。この固有粘度が0.40に満たない場合には、フィルム延伸時の破断が起き易くなるだけでなく、得られたフィルムを金属板に貼合せ後、缶に成形加工する際に破断を生じやすい。一方0.65を超えるものは過剰品質であるだけでなく、原料共重合ポリエステルの生産性も落ちるので不経済である。
ここで、A層およびB層の共重合ポリエステルの固有粘度(IV)は、製膜に使用される原料共重合ポリエステル組成物をo−クロロフェノールに溶解後、遠心分離機により着色顔料等を取り除き35℃溶液にて測定して得られる値(IVa)を、下記(2)式に代入して樹脂分の重量換算値として求めた。
IV=IVa/(1−C) −−−(2)
ここでいうCは各層の着色顔料濃度を指す。
次に本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、必要に応じて適宜変更できるが全体の厚みで6〜75μmの範囲が好ましく、なかでも10〜75μmがより好ましく、特に12〜50μmの範囲がさらに好ましい。厚みが6μm未満では成形加工時に削れ等が生じやすくなり、一方75μmを超えるものは過剰品質であって不経済である。
さらに、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、B層の両側にA層が積層された3層から構成される必要がある。B層の片側のみにA層が積層された2層構成の場合は、B層がフィルム表面に存在することになり、B層側を金属板に貼合せた場合は、高融点かつ着色顔料が多量に含まれているため金属板との密着性が損なわれ、A層側を金属板に貼合せた場合は、缶に成形加工する際に着色顔料が多量に含まれるB層表面と成形工具が接触し、フィルムが削れる。A層とB層の厚み比(X/X:但し、Xは2つのA層の厚みの合計、XはB層の厚み)は0.05〜0.50の範囲であることが好ましく、0.07〜0.45の範囲であることがより好ましい。厚み比が0.05に満たない場合にはA層が担う金属板との密着性、インキ密着性が損なわれ、フィルムの剥がれや印刷不良が発生し好ましくない。一方0.50を超える場合はB層が担うフィルムの耐熱性が損なわれフィルムの削れが発生したり、隠蔽性が損なわれるため好ましくない。また、B層の両側に積層された2つのA層の厚み比(A/A:但し、AはB層の両側に積層された2つのA層のうち、厚みが大きい方の厚み、Aはもう片方のA層の厚み)は1〜30の範囲であることが好ましく、1〜10の範囲であることがより好ましい。厚み比が30を超える場合はA層が担う金属板との密着性、またはインキ密着性が損なわれ、フィルムの剥がれや印刷不良が発生し好ましくない。また、製膜したフィルムがカールしやすくなり、その後のハンドリングが難しくなる点からも好ましくない。
以上に説明した本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の製膜方法により先ず未延伸積層シートを作成し、次いで二方向に延伸すればよい。
例えば層A用に調整した共重合ポリエステルを十分に乾燥させた後、好ましくは、融点〜(融点+70)℃の温度で押出機内で溶融する。同時に層B用に調整した共重合ポリエステルを十分に乾燥させた後、他の押出機に供給し、好ましくは、融点〜(融点+70)℃の温度で溶融する。続いて、両方の溶融樹脂をダイ内部で積層する方法、例えばマルチマニホールドダイを用いた同時積層押出法により、積層された未延伸積層シートが製造される。かかる同時積層押出法によると、一つの層を形成する樹脂の溶融物と別の層を形成する樹脂の溶融物はダイ内部で積層され、積層形態を維持した状態でダイよりシート状に成形される。
次いで該未延伸フィルムを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。逐次二軸延伸により製膜する場合、未延伸積層シートをロール加熱、赤外線加熱等で加熱して先ず縦方向に延伸し、次いでステンターにて横延伸する。この時、延伸温度を共重合ポリエステルのガラス転移点(Tg)より20〜50℃高い温度とすることが好ましく、縦延伸倍率を2.0〜3.6倍、横延伸倍率を2.5〜3.7倍の範囲とすることが好ましい。熱固定の温度は、150〜230℃の範囲で共重合ポリエステルの融点に応じて、フィルム品質を調整するべく選択するのが好ましい。
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムが貼合される金属板、特に製缶用金属板としては、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の板が適切である。金属板への貼合せは、例えば下記の方法で行うことができる。
金属板をB層の共重合ポリエステル融点以上に加熱しておき、フィルムを貼合せた後、フィルムの全層が非晶状態となるように冷却して密着させる。この時、フィルムの非晶化が部分的である場合には、成形加工する際に缶壁部に削れ等が発生しやすくなる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
(融点)
共重合ポリエステルの融点測定はTA Instruments Q100 DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法により行った。なおサンプルはなおサンプルはフィルム各層から削り取ったポリエステル組成物を1mg用いる。
(固有粘度)
フィルム各層から削り取ったポリエステル組成物0.3gをo−クロロフェノール25ml中に溶解後、一旦冷却させ、遠心分離機により着色顔料等を取り除き、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
(着色顔料濃度)
A層、B層の着色顔料濃度は、フィルム各層から削り取ったポリエステル組成物約1〜2gを、セラミック製の坩堝に入れ電気乾燥機内で600℃、6時間以上加熱した後、坩堝に残った灰分重量を、もとのポリエステル組成物の重量で除して求めた。フィルム全体の着色顔料濃度は、製膜した二軸延伸ポリエステルフィルム1gを用いて同様の方法で算出した。
(フィルム各層の厚み)
サンプルを長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(Reichert−Jung製 Supercut)で幅方向に垂直に切断、50μm厚の薄膜切片にする。走査型電子顕微鏡(日立 4300SE/N)を用いて、加速電圧20kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、5点の平均厚みを求めた。
(成形加工性)
板厚0.18mm、幅1mのティンフリースチール(金属クロム量:120mg/m、クロム水酸化物量:クロムとして15mg/m)をポリエステルフィルムの融点より20℃高い温度に加熱した状態で、ニップロールを利用して片面に熱融着によりポリエステルフィルムサンプルをラミネートした。かかるラミネートの際、比較例6の2層構成のものはポリエステルフィルムのB層が金属板側になるよう配置した。
得られたフィルム貼合せ金属板を直径160mmのブランクに打ち抜いた後、フィルム被覆面が缶外面側となるようにして、缶底径100mmの絞り缶とした。ついで再絞り加工により缶底径80mmの再絞り缶とした。さらにこの再絞り缶をストレッチ加工と同時にしごき加工を行う複合加工により、缶底径65mmの絞りしごき缶とした。この複合加工において、缶の上端部となる再絞り加工部としごき加工部間の間隔は20mm、再絞りダイスの肩アールは板厚の1.5倍、再絞りダイスとポンチのクリアランスは板厚の1.0倍、しごき加工部のクリアランスは元板厚の50%となるように加工条件を設定した。このようにして得られた缶体1000缶の缶壁におけるポリエステルフィルム層の削れ、割れ、剥がれの発生状況により、以下の基準で成形加工性を評価した。
◎:削れ、剥がれの発生率が0.1%未満。
○:0.1〜0.5%の缶に削れ、剥がれの発生が認められるが実用上の問題なし。
×:0.1〜0.5%の缶に実用上問題となる削れ、剥がれが認められる。
××:0.5%を超える缶に実用上問題となる削れ、剥がれが認められる。
(インキ密着性)
インキ密着性をデュポン衝撃試験で評価した。
二軸延伸フィルムサンプルを貼合せた金属板からなる缶に、公知の熱硬化性インキ(DIC株式会社製、MC QL R−3 赤−3)、熱硬化性仕上げニス(DIC株式会社製、6WB117)を缶胴に塗布した後、オーブンにて200℃、30秒の焼付け硬化を行った。得られた缶を切り開き、缶胴部を平らに伸ばして試験片とした。得られた試験片を、側壁内面側を上にして接地部から90mmの位置部分に撃芯があたるよう、デュポン衝撃試験機にセットした。撃芯は重さ300gで先端球の直径が3/8インチであり、試験片をセットした位置を基準として高さ50mmから落下させて缶外面側が凸になるように加工した。 加工後の缶外面側に、凸部の頂点を中心として、18mm×40mmの面積のセロハンテープ(ニチバン株式会社製,CT405AP−18)を接着させて、180°で引き剥がす作業を行った。得られた缶5缶について各缶当たり2箇所でこの測定を行った。インキの剥離した合計の面積を次の基準で評価した。
◎:剥離面積が20%未満
○:剥離面積が20%以上40%未満
×:剥離面積が40%以上
(レトルト処理後表面外観)
二軸延伸フィルムサンプルを貼合せた金属板からなる缶を、121℃、30分の条件でレトルト処理を行った。得られた缶5缶について外面缶胴部分の目視観察を行い、次の基準で評価した。
○:缶の円周方向、高さ方向いずれも均一な外観であり、局所的な表面の荒れがない。
×:低頻度で局所的な表面の荒れが発生している。
(隠蔽性)
フィルムサンプルのCIE1976(L*、a*、b*)色空間の定義による白さを表すL*値を、日本電色製のSE6000分光色差計を用いて、フィルムの下に何も置かずに測定し、以下の基準で隠蔽性を評価した。
◎:L*値:90以上 優れた隠蔽性を示す。
○:L*値:85以上90未満 良好な隠蔽性を示す。
×:L*値:80以上85未満 隠蔽性がやや劣る。
[実施例1〜6、比較例1〜5]
着色顔料としてルチル型酸化チタンを用いた、表1に示すA層用共重合ポリエステルおよびB層用共重合ポリエステルをそれぞれ独立に乾燥・溶融後、隣接したダイよりB層の両側にA層が積層されるように共押出し、急冷固化して未延伸積層フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムを100℃で表1に示す倍率で縦延伸した後、120℃で同表に示す倍率で横延伸し、続いて180℃で熱固定して二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。フィルム全体の厚み、フィルム全体の着色顔料濃度、A層およびB層の厚みはそれぞれ表1に示す通りであった。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
[比較例6]
B層の片側にのみA層が積層されるように共押出しした以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。フィルム全体の厚みは16μmであり、A層およびB層の厚みは2.0μm、14.0μmであった。
Figure 2018161831
Figure 2018161831
本発明の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルムは、隠蔽性に優れ、金属板に貼合せた後に厳しい条件で例えば缶へ成形加工しても、缶壁部のフィルムに削れ、剥がれが生じることのない優れた成形加工性を発現し、さらに成形後の缶が良好な表面外観、インキ密着性を示すので、例えば飲料缶、食品缶等の金属缶用として好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 融点が236〜250℃の共重合ポリエステルからなり、着色顔料の含有量が15〜40重量%であるB層と、B層の両側に積層した融点が231〜239℃の共重合ポリエステルからなり、着色顔料の含有量が1.0重量%以下であるA層の3層からなる着色二軸延伸ポリエステルフィルムであって、前記A層およびB層の共重合ポリエステルの融点が下記(1)式を満足することを特徴とする金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
    4℃<TmB−TmA≦20℃ −−−(1)
    ただし、TmAはA層の共重合ポリエステルの融点、TmBはB層の共重合ポリエステルの融点を示す。
  2. A層の固有粘度が0.60〜0.80であり、B層の固有粘度が0.40〜0.65であって、フィルム全体の着色顔料の含有量が15重量%以上である請求項1に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. A層およびB層を構成する共重合ポリエステルが、いずれもイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートである請求項1または2に記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
  4. しごき加工方法を用いた成形に使用される請求項1〜3のいずれかに記載の金属板貼合せ成形加工用着色二軸延伸ポリエステルフィルム。
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