JP2018161691A - 硬質被覆層が優れた耐摩耗性・耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が優れた耐摩耗性・耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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宏彰 柿沼
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Abstract

【課題】Ni基、Co基耐熱合金の高速湿式断続切削に供した場合でも、優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する切削工具の提供。【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、平均層厚が0.5〜5.0μmのAlXTi1−XN(0.6≦X≦0.8)の皮膜を有し、(a)前記硬質皮膜は、結晶構造の割合が皮膜膜厚方向に表面に向かうにつれて立方晶構造から六方晶構造に単調増加し、(b)前記硬質皮膜の膜厚方向に等間隔に同面積の5視野とり、各視野に占める六方晶相の面積率を求めたとき、隣り合う視野の当該六方晶相の面積率の差が5〜20%であり、(c)前記硬質皮膜のAl濃度を皮膜厚さ方向に連続的に求めたとき、最大Al濃度と最小Al濃度との差が2.0原子%以下である、表面被覆切削工具。【選択図】図2

Description

この発明は、Ni基、Co基耐熱合金の高速湿式断続切削において硬質被覆層が優れた耐摩耗性・耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
切削工具の切削性能の改善を目的として、従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層等を蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
前記従来のTi−Al系の複合窒化物層等を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、WC基超硬合金からなる工具基体の表面に、(Al、Ti)N層である硬質被覆層が形成され、当該硬質被覆層は平均粒径が5〜50nmの微量結晶粒であって、平均層厚が0.5〜7μmであり、当該微小結晶粒は立方晶系結晶粒と六方晶系結晶粒とが混在し、この立方晶系結晶粒と六方晶系結晶粒のそれぞれを特定方向の低次面方向に配向させた被覆工具が記載されている。
また、特許文献2には、共に粒径が1〜100nmである立方晶構造のTiNを主成分とする層と、六方晶構造のAlNを主成分とする層とが、交互に繰り返して積層され、互いに隣接した2層の組成が連続的に変化する組成変調層を有する超微粒積層膜を有する被覆工具が記載されている。
つづいて、特許文献3には、被覆層を立方晶と六方晶とが混在した第1層と、立方晶からなる第2層との交互積層とし、六方晶のX線回折ピークの回折角を低角度側にずらすことにより、被覆層の耐酸化性、耐摩耗性、耐欠損性を高めた被覆工具が記載されている。
さらに、特許文献4には、 基材と前記基材の表面に形成された被覆層とを含む被覆切削工具であって、前記被覆層は、組成の異なる2種又は3種以上の化合物層を交互に各2層以上積層した交互積層構造を有し、
前記交互積層構造は、下記(1):
(Al1−x)N (1)
[MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Siから選ばれる少なくとも1種。0.58≦x≦0.80]
で表される組成を有する化合物を含む化合物層と、下記(2):
(Al1−y)N (2)
[MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Siから選ばれる少なくとも1種。0.57≦y≦0.79]
で表される組成を有する化合物を含む化合物層とから構成され、
前記交互積層構造を構成する化合物層に含まれる全金属元素の量に対する特定の金属元素の量と、当該化合物層に隣接した前記交互積層構造を構成する他の化合物層に含まれる全金属元素の量に対する前記特定の金属元素の量と、の差の絶対値が、0原子%を超えて大きく、かつ、5原子%未満であり、 前記化合物層のそれぞれの平均厚さは、1〜50nmであり、前記交互積層構造の平均厚さは、1.5〜15.0μm以下である、被覆工具が記載されている。
特開2014−193521号公報 特開平8−134629号公報 特許第5697750号公報 特許第6004366号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、Ni基やCo基耐熱合金のような難切削材に対しても高速湿式断続加工をすることが望まれ、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性の向上、強いては工具としての長寿命が求められている。
しかし、前記特許文献1に記載された被覆工具は、ステンレス鋼、低合金鋼の断続切削加工に用いるものであり、刃先がより高温となりより大きな衝撃を受けるという加工条件の厳しいNi基やCo基耐熱合金のような難切削材に対する高速湿式断続加工に、直ちに適用できるものではない。
また、前記特許文献2に記載された被覆工具は、組成調整層を設けてはいるものの、AlN層とTiN層のように組成が異なる層の積層がなされているため、加工条件のより厳しいNi基やCo基耐熱合金のような難切削材に対する高速湿式断続加工においては、これら層の界面で剥離の起こる可能性が否定できない。
さらに、前記特許文献3に記載された被覆工具は、合金鋼の切削加工に用いるものであり、加工条件のより厳しいNi基やCo基耐熱合金のような難切削材に対する高速湿式断続加工に、直ちに適用できるものではない。
加えて、前記特許文献4に記載された被覆工具は、積層間結晶格子の不整合を小さくして積層界面における剥離を抑制しているものの、加工条件のより厳しいNi基やCo基耐熱合金のような難切削材に対する高速湿式断続加工では、依然として存在する各積層間の組成差に起因した格子歪の存在により、積層界面における剥離が発生し、工具寿命が十分なものとはいえなかった。
そこで、本発明は、Ni基、Co基耐熱合金の高速湿式断続切削に供した場合であっても、優れた靭性を備え、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者は、積層された被覆層を有する切削工具を用いて、難切削材であるNi基、Co基耐熱合金の高速湿式断続切削を行ったときの積層された被覆層の剥離について鋭意検討を行った結果、わずかに存在する積層間結晶格子の不整合や被覆層内の組成分布に起因した格子歪みを減らすことが剥離を抑えて、これら難切削材の切削においても被覆工具の寿命を伸ばすことを知見した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質皮膜として平均層厚が0.5〜5.0μmのAlとTiの複合窒化物((AlTi1−X)N ただし、0.6≦X≦0.8)を被覆形成された表面被覆切削工具において
(a)前記硬質皮膜は、結晶構造の割合が皮膜膜厚方向に表面に向かうにつれて立方晶構造から六方晶構造に単調増加しており、
(b)前記硬質皮膜の膜厚方向に等間隔に同面積の5視野をとり、各視野に占める立方晶相および六方晶相の面積をEBSDにて測定して六方晶相の面積率を求めたとき、隣り合う視野の当該六方晶相の面積率の差が5〜20%であり、
(c)前記硬質皮膜のAl濃度を皮膜厚さ方向に連続的に求めたとき、最大Al濃度と最小Al濃度との差が2.0原子%以下である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具」
である。
本発明の表面被覆切削工具は、硬質皮膜内の組成差に起因する組成歪や結晶構造の違いに起因した機械的特性が大きく異なる箇所を低減させているため、刃先が高温となり大きな衝撃を受ける加工条件の厳しいNi基やCo基耐熱合金のような難切削材に対する高速湿式断続加工に十分に適用することができ、満足する工具寿命を有するという、顕著な効果を奏するものである。
本発明の表面被覆切削工具を製造するためのPVD装置におけるターゲットと磁石の配置の模式図を示す。 本発明の表面被覆切削工具に係る硬質皮膜の縦断面模式図を示す。
次に、本発明の表面被覆切削工具の硬質被覆層、すなわち、硬質皮膜について、より詳細に説明する。なお、本発明において、観察される断面(縦断面)における基体表面を示す線の垂直方向を皮膜膜厚方向という。
本発明の表面切削工具の硬質皮膜は、AlとTiとの複合窒化物層であり、(AlTi1−X)N(ただし、0.6≦X≦0.8)と表現できるものであって、WC基超高圧焼結体またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に蒸着成形されたものである。
ここで、(AlTi1−X)NにおけるAlとTiの合量に対するAlの含有割合Xを0.6〜0.8とした理由は、(AlTi1−X)Nの結晶構造は、X=0.6〜0.8を境界領域として、立方晶型結晶構造から六方晶型結晶構造へと変化するためである。
本発明では、後述するように、特定の磁場環境下において成膜時のバイアス条件や雰囲気圧力を操作することにより、この結晶構造の変化を制御している。
その上で、硬質皮膜が、次の(i)〜(iv)を満足するとき、きわめて優れた切削性能を示すことを見出した。
(i)硬質皮膜の平均層厚が0.5〜5μm
硬質皮膜の平均層厚を0.5μm〜5.0μmである。平均層厚をこの範囲とした理由は、0.5μm未満では、長期の使用にわたっての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が5.0μmを超えると、高熱発生を伴うNi基またはCo基耐熱合金の高速湿式断続切削において熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となるためである。
なお、平均層厚は、この断面内の複数点の層厚を測定し、その平均を求めることにより決定される。観察視野としては、基体界面方向は硬質皮膜の表面上の任意の点を測定開始点として50μmの範囲、膜厚方向は膜全体を観察できる程度とする。つづいて、該観察視野内における硬質皮膜表面上の任意の点を始点とし、該始点から基体表面方向に垂直な線分を引いて基体表面と硬質皮膜の界面に交わる点を終点とし、始点から終点までの距離を層厚として求めた。最終的にそれを5回繰り返し、計5点の平均を平均層厚として求めた。
(ii)硬質皮膜は、結晶構造の割合が皮膜膜厚方向に表面に向かうにつれて立方晶構造から六方晶構造に単調増加していること
立方晶型結晶構造を示す(AlTi1−X)Nは、高熱発生を伴うNi基またはCo基耐熱合金の高速湿式断続切削において、耐摩耗性を確保するものであり基体側に多く存在することが望ましい。
一方、六方晶型結晶構造を示す(AlTi1−X)Nは、前記高速湿式断続切削において、優れた潤滑性と耐酸化性を備えるために表面側に多く存在することが望ましい。
しかし、同じ(AlTi1−X)Nであっても、立方晶型結晶構造と六方晶型結晶構造とでは結晶構造が異なるため、立方晶型(AlTi1−X)Nと六方晶型(AlTi1−X)Nとの界面では、結晶構造の違いに起因する機械的な特性の差が存在する。
このため、この差を小さくするための一手段として、結晶構造の割合が皮膜膜厚方向に表面に向かうにつれて立方晶構造から六方晶構造に単調増加させる。
ここで、単調増加とは、減少することがないという意味である。つまり、基体界面から硬質皮膜の膜厚方向に硬質皮膜表面に向かって、等間隔に観察視野が同面積(0.1μm×10μm)である5視野をとり、各視野に占める立方晶相および六方晶相の面積をEBSDにて測定して六方晶相の面積率を求めたとき、該面積率が減少することなく、六方晶相の割合が増えていくことを意味する。なお、六方晶の相の面積率は、(六方晶相の面積)/(立方晶相の面積+六方晶相の面積)で定義される。
また、切削時の刃先は高温となりやすく、空気中の酸素に触れることにより、硬質皮膜が酸化することが想定される。故に、耐摩耗性は高いものの比較的耐酸化性の低い立方晶型(AlTi1−X)Nの上に優れた耐酸化性を有する六方晶型(AlTi1−X)Nがあることにより立方晶型(AlTi1−X)Nの優れた耐摩耗性を切削時に長時間にわたって発揮することができる。
(iii)硬質皮膜の膜厚方向に等間隔に同面積の5視野をとり、各視野に占める立方晶相および六方晶相の面積をEBSDにて測定して六方晶相の面積率を求めたとき、隣り合う視野の当該六方晶相の面積率の差が5〜20%であること
六方晶の相の面積率は、上記のとおり(六方晶相の面積)/(立方晶相の面積+六方晶相の面積)で定義される。隣り合う視野の当該六方晶相の面積率の差を5〜20%とした理由は、5%未満であると六方晶構造相が少なく、六方晶結晶構造の優れた耐酸化性を発揮することができない。一方、20%を超えると結晶構造差が大きくなって結晶構造差がもたらす機械的、熱的特性の違いに起因する歪みが硬質皮膜内部に生じてしまい、チッピング等を誘発するためである。
なお、EBSDによる視野は上記のとおり0.1μm×10μmとし、測定ステップ0.02μm、取り込み時間70msec./pointにて上記のとおり等間隔に5視野測定を行う。
(iv)硬質皮膜のAl濃度を皮膜厚さ方向に連続的に求めたとき、最大Al濃度と最小Al濃度との差が2.0原子%以下であること
最大Al濃度と最小Al濃度との差が2.0原子%を超えると、Al濃度差による格子歪により、亀裂が硬質皮膜内部に生じてしまうため、最大Al濃度と最小Al濃度との差が2.0原子%以下であると定めた。
なお、皮膜厚さ方向のAl濃度を連続的に測定する手段は、断面AES分析によるラインスキャンを用いる。硬質皮膜表面上の任意の点を測定開始点として膜厚方向に垂直な線分を引いて基体及び硬質皮膜の界面に交わるまでラインスキャンを行う。
上述の各事項を満足する本発明の表面被覆切削工具に係る硬質皮膜の皮膜膜厚方向の縦断面模式図を図2に示す。同図において、グラデーションは六方晶が単調増加していることを模式的に示している。
本発明の表面被覆切削工具の製造方法
PVD法において、ターゲット表面における磁場環境を変えることにより、蒸着速度を制御できることは知られている。このことを基にして、本発明者はターゲット垂直方向磁場成分と平行方向磁場成分に着目し、検討を加えたところ、垂直方向の磁場成分を小さくし、平行方向の磁場成分を比較的大きくした磁場環境とすることで、ターゲットから飛び出す電子の流れを制御し、電子を効率よくアノードに吸着させることができることを見出した。これにより、電子のアノード吸着量を制御でき、結果として、ターゲット表面から飛び出したイオンと電子との再結合を制御できることがわかった。
すなわち、磁場環境を変更することによって比較的電子と再結合しやすいAlイオンの再結合を抑制し、高いAlイオン下での成膜が行えるとの知見を得た。なお、垂直方向の磁場成分を小さくし、平行方向の磁場成分を比較的大きくするには、例えば、一般的なPVD装置に付属するターゲット背面に設置される永久磁石によりターゲット垂直方向へも磁力線が形成されるため、該磁力線を打ち消すように永久磁石または電磁石を併せて装着し、成膜を行えばよい。磁場は重ね合わせの原理が成り立つため、ターゲット垂直方向へ形成されている磁力線がN極からS極となる場合には、別途用いる磁石はS極からN極への磁力線がターゲットから基板方向に平行に倣うように形成する磁石とする(棒磁石やソレノイドコイルが望ましい。)。この磁石は、ターゲットからアノードまでの空間に形成されているターゲット垂直方向の磁力線を完全に打ち消すように配置する必要はなく、該磁力線が弱まればよい。
一方、成膜条件におけるバイアスや雰囲気圧力を操作することにより、被覆層の結晶構造を制御できることは周知技術である。
本発明の表面被覆切削工具は、上記知見と周知技術に基づいて製造することができるのである。
続いて、本発明の表面被覆切削工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cを形成した。
次いで、前記工具基体A〜Cのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1の模式図に示されるアークイオンプレーティング装置に工具基体を装着し、工具基体温度を400〜600℃とした状態で、ボンバード処理として、装置内を排気して10-−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を表2に示す所定温度に加熱した後、0.5〜2.0PaのArガス雰囲気に設定し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200〜−1000Vの直流バイアス電圧を印加して、工具基体表面をArイオンによって5〜30分間処理し、その後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体を、
蒸発源:Al−Ti合金ターゲット(Al含有割合75%)
蒸発源に対する放電電流:50〜250A、
雰囲気圧力:0.5〜8Pa
バイアス電圧:−50〜−300V
雰囲気圧力及びバイアス変更時間:40〜80min
磁場方向:アノード側に電子を押し出す方向
という表2に示される成膜条件の下で、表3に示される所定の目標層厚を有する硬質皮膜の形成を行い、本発明の切削工具(以下、本発明被覆工具という)を製造した。なお、上記雰囲気圧力及びバイアス変更時間とは成膜開始時の炉内圧力とバイアス値から、成膜終了後の炉内圧力とバイアス値へ変化させるまでの時間であり、成膜時間に等しい。
また、比較の目的で、工具基体A〜Cを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、本発明と同様、図1の概略図に示されるPVD装置に工具基体を装着し、工具基体温度を400〜600℃とした状態で、ボンバード処理をしたのち、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体を、
蒸発源:Al−Ti合金ターゲット(Al含有割合75%)
蒸発源に対する放電電流:50〜150A、
雰囲気圧力:0.5〜8Pa
バイアス電圧:−100〜−300V
雰囲気圧力及びバイアス変更時間:0〜100min
磁場方向:アノード側またはカソード側に電子を押出す方向
という表4に示される成膜条件のもと表5に示される所定の目標層厚を有する硬質被覆層の形成を行い、比較表面被覆切削工具(以下、比較被覆工具という)を製造した。
次に、前記の各種工具を、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具1〜10および比較被覆工具1〜10について、
(切削条件A:Ni基耐熱合金の高速湿式断続切削加工試験)
被削材:Ni−19Cr−3Mo−19Feの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 160 m/min.、
切り込み: 0.8mm、
送り: 0.22 mm/rev.、
切削時間: 4分、
(切削条件B:Co基耐熱合金の高速湿式断続切削加工試験)
被削材:Co−28Mo−17Cr−3Siの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 160m/min.、
切り込み: 1.0mm、
送り: 0.21mm/rev.、
切削時間: 6分、
を行い、いずれの断続旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
表6に示される結果から、本発明被覆工具は、硬質皮膜内の組成差に起因する組成歪や結晶構造の違いに起因した機械的特性が大きく異なる箇所を低減させているため、刃先が高温となり大きな衝撃を受ける加工条件の厳しいNi基やCo基耐熱合金のような難切削材に対する高速湿式断続加工に十分に適用することができ、満足する工具寿命を有する。
これに対して、本発明に規定する事項を少なくとも一つ有しない比較被覆工具は、上記塑性ひずみや機械的特性が大きく異なる箇所の低減が不十分であるため、摩耗量が多く短時間で工具寿命に至っている。
本発明の表面被覆切削工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工は勿論のこと、特に高熱発生を伴うとともに、切刃部に対して大きな負荷がかかるNi基、Co基耐熱合金の高速湿式断続旋削加工においても、優れた耐摩耗性を発揮し、長期にわたって優れた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質皮膜として平均層厚が0.5〜5.0μmのAlとTiの複合窒化物((AlTi1−X)N ただし、0.6≦X≦0.8)を被覆形成された表面被覆切削工具において
    (a)前記硬質皮膜は、結晶構造の割合が皮膜膜厚方向に表面に向かうにつれて立方晶構造から六方晶構造に単調増加しており、
    (b)前記硬質皮膜の膜厚方向に等間隔に同面積の5視野をとり、各視野に占める立方晶相および六方晶相の面積をEBSDにて測定して六方晶相の面積率を求めたとき、隣り合う視野の当該六方晶相の面積率の差が5〜20%であり、
    (c)前記硬質皮膜のAl濃度を皮膜厚さ方向に連続的に求めたとき、最大Al濃度と最小Al濃度との差が2.0原子%以下である、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具
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