JP2018161402A - 超音波診断装置、及びプログラム - Google Patents

超音波診断装置、及びプログラム Download PDF

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浩二 森
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健二 飯田
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Tomoaki Ito
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Abstract

【課題】精度よく、関節軟骨の変性程度を推定することができる。
【解決手段】データ演算部が、超音波を送受信した位置ごとに、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの特徴量群から、軟骨の変性程度の相関指標を求め、前記軟骨の変性程度の相関指標に基づいて、前記軟骨の変性程度を推定する。前記軟骨の変性程度の相関指標として、前記超音波波形データにおける特徴量の角度依存性から得られるガウス曲線より求めた、前記特徴量のピークの値と前記特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度、前記ガウス曲線における尖度、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和を用いる。
【選択図】図6

Description

本発明は、超音波診断装置、及びプログラムに係り、特に、関節軟骨の変性程度を推定するための超音波診断装置、及びプログラムに関する。
膝関節は、人体で最も大きな関節の一つであるが、加齢による損傷により、65歳以上における変形性関節症の発症率は40%以上になるといわれている。関節の変形は、主として、関節表面部を覆っている関節軟骨の変性によるものであり、具体的には、軟骨のヤング率が低下したり、軟骨の表面の粗さが増大したり、軟骨の厚さが減少することが知られている。関節軟骨の変性の程度を簡便な装置で評価できることは、治療方針の決定に大きな貢献をすることが期待される。
関節軟骨の変性程度を把握するには、超音波を利用する手法が従来から広く行われている。例えば、関節軟骨表面からの超音波反射エコーの振幅、持続時間などとその角度依存性から関節軟骨の変性程度を推定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2014−136133号公報
上述の関節軟骨表面からの超音波反射エコーの振幅、及び持続時間などとその角度依存性から関節軟骨の変性程度を推定する方法では、関節部の個体差や超音波の入射方法などによって測定誤差が大きくなり、大まかに軟骨が変性しているか否かを推定することは可能であったが、細かく変性程度を算出することはできないといった問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、精度よく、関節軟骨の変性程度を推定することができる超音波診断装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明に係る超音波診断装置は、振動子を有し、直線的に超音波を送信する超音波探触子に把持部を備えたプローブと、送信される前記超音波の角度を検知して角度データを出力する角度検知手段と、超音波を送受信した位置ごとに、前記プローブで送受信する超音波波形データを、前記角度データと同期して取得する超音波波形データ取得部と、前記超音波を送受信した位置ごとに、取得した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度から一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データを選抜するデータ処理部と、前記超音波を送受信した位置ごとに、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの特徴量群から、軟骨の変性程度の相関指標を求め、前記軟骨の変性程度の相関指標に基づいて、前記軟骨の変性程度を推定するデータ演算部と、を備え、前記軟骨の変性程度の相関指標として、前記超音波波形データにおける特徴量の角度依存性から得られるガウス曲線より求めた、前記特徴量のピークの値と前記特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度AHM(Angle at Half Maxumum)、前記ガウス曲線における尖度、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和を用いることを特徴とする。
また、第1の発明に係る超音波診断装置において、前記データ演算部は、前記相関指標と、定数とを線形に足し合わせて計算される、前記軟骨の変性程度の関連指標を求め、前記関連指標に基づいて前記変性程度を評価するようにしてもよい。
また、第1の発明に係る超音波診断装置において、前記相関指標に対する係数及び定数は、前記軟骨の変性程度の関連指標が既知の軟骨について得られた前記超音波波形データから求められる前記相関指標に基づいて、重回帰分析又は主成分分析を使って決定されるようにしてもよい。
また、第1の発明に係る超音波診断装置において、前記関連指標は、前記半値角度AHMをX1、前記尖度をX2、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和をX3として、以下(7)式に従って求められるようにしてもよい。
a×X1+b×X2+c×X3+d ・・・(7)
また、第1の発明に係る超音波診断装置において、係数bに対する、係数aの比率を−3.0以上−1.5以下の値とし、係数bに対する係数cの比率を、−0.4以上1.5以下の値とするようにしてもよい。
また、第1の発明に係る超音波診断装置において、前記超音波波形データ取得部は、超音波を送受信した位置ごとに、測定対象軟骨に対して垂直にプローブを当てた状態からプラス40度からマイナス40度までの範囲で角度を変化させたときに得られる、前記プローブで送受信する超音波波形データを、前記角度データと同期して取得するようにしてもよい。
また、第1の発明に係る超音波診断装置において、前記特徴量を、反射エコー強度とするようにしてもよい。
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、第1の発明に係る超音波診断装置の各部として機能させるためのプログラムである。
本発明の超音波診断装置、及びプログラムによれば、超音波を送受信した位置ごとに、取得した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度から一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データを選抜するデータ処理部と、前記超音波を送受信した位置ごとに、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの特徴量群から、軟骨の変性程度の相関指標を求め、前記軟骨の変性程度の相関指標に基づいて、前記軟骨の変性程度を推定するデータ演算部と、を備え、前記軟骨の変性程度の相関指標として、前記超音波波形データにおける特徴量の角度依存性から得られるガウス曲線より求めた、前記特徴量のピークの値と前記特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度、前記ガウス曲線における尖度、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和を用いることにより、精度よく、関節軟骨の変性程度を推定することができる。
反射エコー強度が最大となる角度と、その角度から一定の範囲の角度の超音波波形データを取得した場合の一例を示す図である。 好ましいプローブの手動走査の一例を示す図である。 超音波波形データから得たガウス曲線におけるベースラインに関する図である。 超音波波形データから得たガウス曲線における半値角度に関する図である。 疑似的なYに関する総合的な性能を検証した結果を示す図である。 本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る超音波診断装置における作用を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る実験装置の構成を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<本発明の実施の形態の概要>
特許文献1に記載のように、関節軟骨は皮膚に覆われて関節軟骨の表面が見えないため、関節軟骨表面を基準として複数の角度から超音波を送受信した場合の角度差θを把握することはできない。また、先に記載したとおり、皮膚の表面から関節軟骨に超音波を送受信して測定した場合には、皮下組織に存在する脂肪塊群等により超音波が散乱し、反射エコー強度は低下する。そこで皮膚の表面を基準点として複数の角度で測定し、超音波波形データを角度データと同期して取得した。このとき、図1に示すように、ある程度反射エコー強度が高い角度(図1中の■)を探し、その角度から様々な角度で測定することで、反射エコー強度が最大となる角度と、その角度から一定の範囲の角度の超音波波形データを取得した。そして、皮下組織に存在する脂肪塊群等により超音波が散乱する影響を排除するために、単に最大反射エコー強度だけを求めるのではなく、超音波波形データの特徴量を統計処理(超音波波形データの特徴量の平均値と標準偏差の算出、又は、超音波波形データの特徴量と相対角度を変数とする非線形回帰)したところ、統計処理した値と関節軟骨の変性程度に相関関係があることを見出した。特に、軟骨の変性程度の相関指標として、超音波反射エコー強度の角度依存性から得られるガウス曲線より求めた3つのパラメータ、(1)特徴量のピークの値と特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度AHM(Angle at Half Maxumum)、(2)ガウス曲線における尖度、及び(3)ベースラインの値とベースラインからピークまでの値との和、を用いることで強い相関関係が得られることを見出し、本発明に係る手法を完成した。
<用語及び処理内容の説明>
次に、本発明の実施の形態における用語、及び処理内容について説明する。
本発明の実施の形態において、関節軟骨の変性とは、軟骨のヤング率の低下、軟骨の表面の粗さの増大、軟骨の厚さの減少をいう。
本発明の実施の形態において、プローブは、振動子を有し、直線的に超音波を送信する超音波探触子に把持部を備えており、測定者はこのプローブを把持して超音波探触子の先端部にある振動子を皮膚にあてることにより超音波を送受信し、超音波波形データの特徴量等の測定を行う。超音波波形データとは、超音波を送信して得られる反射波のデータである。プローブで受信する超音波波形データは振幅と時間の関係で得られる。超音波探触子で受信した超音波波形データはパルサーレシーバーに送信される。
本発明の実施の形態において、振動子は、電圧を加えると振動して超音波を発生し、逆に振動すると電圧を発生する素子であり、超音波を送信するとともに、反射した超音波を検知することもできる。振動子は1つでもよく、また複数配列されていてもよい。複数配列する場合には、それぞれの振動子に対して同時に超音波を発生させてもよいが、それぞれの振動子に対して作動時間を電気的に制御することで送受信する超音波の角度を変更することもできる。
超音波探触子は一つ又は複数の振動子を有して直線的に超音波の送信が可能であり、パルサーレシーバーと電気的に接続している。パルサーレシーバーは超音波を発生するために必要な電気信号を超音波探触子に送信すると共に、超音波探触子で受信した超音波波形データを超音波波形データ取得部へ送信する。超音波の中心周波数については、周波数を高くすると波長が短くなり空間分解能は向上するが、他方で、生体組織通過時の微小な組織性状変化の影響を受けやすくなる。また、周波数に比例して減衰が激しくなるために、反射波に多数のノイズが含まれるとともに、反射波の信号強度が低下する。従って、空間分解能と、受信しやすさのバランスを考えると超音波の中心周波数は1〜30MHz、好ましくは5〜20MHz、より好ましくは10〜18MHzである。
角度検知手段としては、超音波探触子で送受信する超音波の角度を測定できればよく、加速度センサー、角速度センサー、地磁気センサー等の姿勢角センサーを挙げることができ、センサーを用いる場合は小型であるためプローブに直接設置しても装置の大きさやプローブの操作性において影響が少ない。このほか、プローブに磁性体を設置し、磁気センサーで読み取ることによってプローブにより送受信する超音波の角度を検知する手段や、プローブに複数のマーカーを設置し、プローブの動きをカメラで撮影することによりプローブの角度を知る手段も挙げることができる。また、複数の振動子を用いて超音波を送受信する場合には、作動時間の電気的な操作による角度把握手段を用いることもできる。本発明の実施の形態においては、プローブにより送受信する超音波の角度を知ることができればよいため、これら角度検知手段は、プローブにより送受信する超音波の角度を知ることができるかぎり、必ずしもプローブに直接設置されていなくてもよい。角度検知手段によって得られた角度データは超音波波形データ取得部へ送信される。角度検知手段を備えているので、測定者はプローブを操作するときに超音波の角度を把握する必要も、一定の速度で動かす必要もなく、図2に示すようにプローブを円やらせんを描くように動かしさえすればよい。なお、プローブの角度変化スピードに追従するためには、プローブで受信する超音波波形データと角度検知手段における角度データの取得タイミングは、0.01秒程度の時間的ずれは許容される。この時間的ずれの許容範囲は、後述する位置データを取得する場合についても適用される。ここで、「角度」とは、地面などの固定された座標系を基準にした角度である。一般的にはロール角(X軸周りの角度)、ピッチ角(Y軸周りの角度)、ヨー角(Z軸周りの角度)の3つの角度で表現される。
測定位置検知手段としては、超音波を送受信した位置を検知できればよく、磁気センサーや、プローブに複数のマーカーを設置してプローブの動きをカメラで撮影する手段を挙げることができる。特に、磁気センサーや、プローブの動きをカメラで撮影する手段は、送受信する超音波の角度と測定位置を両方検知することができる。測定位置検知手段によって得られた測定位置データは超音波波形データ取得部へ送信される。本発明の実施の形態においては、測定位置を知ることができればよいため、測定位置検知手段は、測定位置を知ることができるかぎり、必ずしもプローブに直接設置されていなくてもよい。
超音波波形データ取得部は、パルサーレシーバーから受信した超音波波形データを、超音波を送受信した位置ごとに、角度検知手段からの角度データと同期して取得する。同期させる方法としては、パルサーレシーバーから超音波探触子に電圧を加えるための信号をトリガー信号として超音波波形データ取得部での超音波波形データと角度データのデータ取得タイミングを一致させる方法を挙げることができる。測定位置検知手段を備えている場合には、超音波波形データを角度検知手段からの角度データ及び測定位置データと上記と同様の方法で同期する。
データ処理部では、取得した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度(以下、「最大角度」ともいう。)から一定範囲内の角度の超音波波形データを、超音波を送受信した位置ごとに選抜する。最大角度から一定の範囲内の角度とは、最大角度からの相対角度が一定範囲内の角度をいう。「相対角度」とは、最大角度の超音波の送信方向(直線)と測定した超音波の送信方向(直線)の2つの直線が作る平面内での2つの直線の間の角度をいう。
上記データ処理部において、最大角度、及び相対角度は、特許文献1に記載の手法により、求めることができる。
最大角度から一定範囲内の角度の超音波波形データを、超音波を送受信した位置ごとに選抜するには、超音波を送受信した位置ごとに、超音波波形データ取得部で取得した超音波波形データの特徴量から最大角度を決定し、次に、それぞれの位置における最大角度から一定範囲内の角度、例えば、プラス40度からマイナス40度までの範囲の角度の超音波波形データを選抜する。送受信した位置を検知する測定位置検知手段を備えている場合は、位置ごとに取得した超音波波形データを分類する際に位置データを利用することができる。この選抜処理により、変性した関節軟骨と正常な関節軟骨とで反射エコー強度に有意差を有する角度の超音波波形データが得られる。また、最大角度とその角度から一定範囲内の角度の超音波波形データが自動的に選抜されるため、測定者が最大角度を探す必要もなく、さらに最大角度でプローブを固定する必要もない。
超音波波形データの特徴量としては、超音波波形データのうち、関節軟骨表面からの反射エコーの振幅(反射エコー強度)、関節軟骨表面からの反射エコーの持続時間、該関節軟骨表面からの反射エコーの包絡線の振幅、包絡線の持続時間、関節軟骨表面からの反射エコーの信号処理値、関節軟骨表面からの反射エコーと軟骨下骨からの反射エコーとの時間間隔等を挙げることができ、中でも関節軟骨表面からの反射エコーの振幅を好適に挙げることができる。なお、関節軟骨の変性が進むと、表面の粗さが増大し、その表面の粗さは反射エコーの持続時間に比例し、さらに、関節軟骨の厚さは薄くなる。
関節軟骨表面からの反射エコーの包絡線は、関節軟骨表面からの反射エコーをウェーブレット変換、ヒルベルト変換、直交検波することで作成することができる。また、信号処理値とは、信号(波形データ)を数学的に分析して波形の特性の解析や特徴の抽出を行って得られる値をいい、関節軟骨表面からの反射エコーの形状の面積も含まれる。
皮膚を介して得られた関節軟骨からの超音波波形データは、特許文献1に記載されているように様々な反射エコーを含んでいる。そこで、データ処理部においては、得られた超音波波形データから関節軟骨表面からの反射エコーを識別するアルゴリズムによる処理を行うこともできる。たとえば、皮膚を介して得られた超音波波形データは、皮膚からの反射エコー、関節軟骨表面からの反射エコー、軟骨下骨からの反射エコーの順に反射エコーが観測されるという特徴や、関節軟骨表面からの反射エコーと軟骨下骨からの反射エコーとが観測される間は振幅が小さいという特徴があり、これらの特徴から関節軟骨表面からの反射エコーを識別することができる。また、超音波波形データをウェーブレット変換、ヒルベルト変換、直交検波することで、周辺のノイズと超音波による反射波形を分離し、関節軟骨表面からの反射エコーをより明確に抽出することもできる。
データ処理部において選抜する超音波波形データ数としては、10個以上、好ましくは20個以上、さらに好ましくは30個以上、中でも50個以上、もっとも好ましくは100個以上を挙げることができる。選抜する際には異なる複数の測定位置の超音波波形データから選抜することが好ましい。処理するデータ数を少なくすることで、データ処理の負担を軽減することが可能となるほか、装置の小型化、コスト低減が実現できる。
データ演算部では、データ処理部で選抜された、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの特徴量群を統計処理する。また、統計処理した特徴量群から軟骨の変性程度の相関指標を求め、相関指標と、定数とを線形に足し合わせて計算される、軟骨の変性程度の関連指標を求め、関連指標に基づいて変性程度を評価することにより、変性程度を推定する。相関指標に対する係数及び定数は、軟骨の変性程度の関連指標が既知の軟骨について得られた超音波波形データから求められる相関指標に基づいて、重回帰分析又は主成分分析を使って予め決定される。
データ演算部における統計処理としては、超音波波形データの特徴量の平均値と標準偏差の算出、又は、超音波波形データの特徴量と相対角度を変数とする非線形回帰等を挙げることができる。本実施の形態では、統計処理として、測定位置ごとに、角度、及び反射エコー強度からガウス曲線を作成する。ガウス曲線は例えば、図1に示すように、最大角度を0度として、横軸を超音波プローブの相対角度、縦軸を反射エコー強度として、プロットしたものである。ガウス曲線により信号強度の角度依存性を評価することができる。作成したガウス曲線からは、軟骨の変性程度の相関指標として、特徴量のピークの値と特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度AHM(Angle at Half Maxumum)、ガウス曲線における尖度、及びベースラインの値とベースラインからピークまでの値との和を得ることができる。この相関指標により、皮下組織に存在する脂肪塊群等による超音波の散乱の影響を受けずに関節軟骨の変性程度を精度よく推定することが可能となる。以下それぞれの相関指標について説明する。
ガウス曲線は以下(1)式で定義される。

・・・(1)
SIは縦軸の値を示し、△θは横軸の値を示す。図3に示すように、Aは、ベースラインの値であり、Bはベースラインからピークまでの値である。A+Bが相関指標の1つとなる。パラメータA,B,Dが変化することでガウス曲線の形状が変化する。
半値角度は、図4に示すように、最大角度(角度が0度)におけるピークの値と、ベースラインの値の差の半分の値をとったときの角度として定義される。また、半値角度は、Dを用いると以下(2)式で表される。

・・・(2)
ガウス曲線の尖度は以下の(3)式で表される。

・・・(3)
(3)式中のSはガウス曲線の面積であり、S.D.は標準偏差である.SI(θ)はθ≧0のみで定義されていることに注意すると、面積Sと標準偏差S.D.は以下の(4)式、(5)式で表される。

・・・(4)

・・・(5)
以上より尖度は以下の(6)式で求められる.

・・・(6)
上記で説明した相関指標を利用して、関節軟骨の変性程度を推定することができる。たとえば、相関係数に、後述する定数a,b,cを乗じ、定数dを加算して関連指標として、疑似的な音響インピーダンスYを計算し、疑似的な音響インピーダンスYから関節軟骨の変性程度を推定することができる。
関連指標である疑似的な音響インピーダンスYは、半値角度AHMをX1、尖度をX2、及びベースラインの値とベースラインからピークまでの値との和をX3として、以下(7)式に従って求められる。
Y=a×X1+b×X2+c×X3+d ・・・(7)
ここで、擬似的な音響インピーダンスYから関節の変性程度を推定が可能な原理について説明する。
音響インピーダンスが、関節軟骨の変性程度と強く関係していることは既知である。ある物質の音響インピーダンスは、物質の密度と物質の音速(物質中を伝わる音の速さ)の積で求められる。
正常な関節軟骨では、Y=(正常な関節軟骨の密度;1.1×103kg/m3)×(正常な関節軟骨の音速;1620m/s)=1.782×106kg s/m2程度である。一方で、変性が進むと、関節軟骨内のコラーゲン繊維などの成分が消失し、水に近づいていく。従って変性した関節軟骨では、Y=(水の密度;1.0×103kg/m3)×(水の音速;1500m/s)=1.500×106kg s/m2程度となる。従って半値角度などの相関指標から疑似的に計算されたYを使うと、その疑似的なYの値が、上述の関節軟骨のYの範囲(1.782〜1.500×106kg s/m2)のうち、どのあたりに位置するのかで変性の程度を見積もることができる。
定数の範囲について説明する。図5は、疑似的なYに関する総合的な性能を検証した結果を示す図である。グラデーションは相対的な総合性能の高さを示している。総合性能を見るとa=-1.50〜-0.30,c=0.40〜1.50の範囲の時に、総合的な性能が高くなっていることがわかる。従ってbを1.0にするときに、a=-1.5から-0.3,c=0.4から1.5にするのが好ましいといえる。また、dについては任意の値を用いればよい。
超音波波形データ取得部、データ処理部、データ演算部はモニターと接続してもよい。モニターに超音波波形データ取得部で取得した超音波波形データ、角度検知手段で取得した角度データ、測定位置検知手段から取得した測定位置データ等を視覚的に表示することで、測定者が送受信する超音波の角度、測定位置、超音波波形データの特徴量等を観察しながら測定をすることが可能となる。合わせて、モニターにデータ演算部で行った統計処理の結果や関節軟骨の変性程度の推定結果を表示することもできる。
(実施例)
<本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成>
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態の超音波診断装置の一例を説明するが、本発明の実施の形態の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
図6は本発明の実施の形態の一実施形態に係る超音波診断装置の概念図である。図6に示すように超音波診断装置20は、振動子2(直径3mm、中心周波数15MHz)を有し、直線的に超音波を送信する超音波探触子1に把持部3を備えたプローブ4に角度検知手段5を備えている。超音波探触子1はパルサーレシーバー6と電気的に接続しており、パルサーレシーバー6は超音波探触子1に超音波を発生するのに必要な電気信号を送信すると共に、超音波探触子1で受信した超音波波形データをパーソナルコンピューター11の超音波波形データ取得部7に送信する。パーソナルコンピューター11は、超音波波形データ取得部7と、データ処理部8と、データ演算部9とを備えている。
プローブには角度検知手段5を備え、角度検知手段5で得られた角度データは、超音波波形データ取得部7に送信される。
超音波波形データ取得部7は、超音波を送受信した位置ごとに、パルサーレシーバー6から受信した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度から一定範囲内の角度の超音波波形データを、角度検知手段5からの角度データと同期して取得する。位置検知手段を備えている場合には、超音波波形データを角度データ及び位置データと同期して取得する。
データ処理部8では、超音波を送受信した位置ごとに、超音波波形データ取得部7で取得した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度から一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データを選抜する。
超音波波形データの特徴量としては、超音波波形データのうち、関節軟骨表面からの反射エコーの振幅(反射エコー強度)を用いる。
データ処理部8においては、得られた超音波波形データから関節軟骨表面からの反射エコーを識別するアルゴリズムによって処理を行うこともできる。
さらにデータ処理部8において、同一の超音波送受信角度を有する超音波波形データを取得し、測定位置から関節軟骨表面への超音波到達時間をそれぞれ求め、超音波伝播距離に基づいて測定位置ごとの関節軟骨表面の超音波反射点の座標データを取得することもできる。
同一角度波形データを測定位置ごとに取得する方法としては、まずは測定した複数の測定位置から基準となる測定位置を決め、その基準となる測定位置の超音波波形データの角度と同一の超音波送受信角度を有する超音波波形データを他の測定位置からも取得する方法が用いられる。
同一の超音波送受信角度とは、超音波波形データ群のそれぞれの角度と完全に同一の超音波送受信角度だけでなく、超音波波形データ群のそれぞれの角度差が0.25度以内で同一の超音波送受信角度も含まれる。
測定位置から関節軟骨表面への超音波到達時間は、得られた超音波波形データに基づく超音波送信時から関節軟骨表面からの反射エコーの振幅が最も大きくなるまでの時間によって求める。超音波伝播距離は、測定位置から関節軟骨表面への超音波到達時間に一般的な生体中の音速(1550m/s)を乗じることによって求めることができる。
データ演算部9では、超音波を送受信した位置ごとに、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの反射エコー強度群から、軟骨の変性程度の相関指標を求め、軟骨の変性程度の相関指標に基づいて、軟骨の変性程度を推定する。
具体的には、データ演算部9では、まず、統計処理として、それぞれの角度における超音波波形データの反射エコー強度群から、反射エコー強度が最大となる最大角度を0度として、横軸を超音波プローブの相対角度、縦軸を反射エコー強度としたガウス曲線を作成する。次に、作成したガウス曲線から、半値角度(X1)、ガウス曲線における尖度(X2)、及びベースラインの値(A)とベースラインからピークまでの値(B)との和(X3)の相関指標X1〜X3をそれぞれ求める。次に相関指標X1〜X3に、予め決定された定数a,b,cを乗じて加算する上記(7)式により、疑似的な音響インピーダンスYを計算し、関節軟骨の変性程度を推定する。各定数の値について、例えば、bを1.0にし、aは、-1.5≦a≦-0.3とし、cは、0.4≦c≦1.5とする。
また、超音波波形データ取得部7、データ処理部8、データ演算部9はモニター10と接続しており、モニター10に超音波波形データ取得部7で取得した超音波波形データ、角度検知手段5で取得した角度データが視覚的に表示される。合わせて、モニター10にデータ演算部9で行った統計処理の結果や関節軟骨の変性程度の推定結果が表示される。
<本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の作用>
以下に、本発明の実施の形態の超音波診断装置を使用した関節軟骨の変性程度の推定方法を図7を参照して例示する。なお、関節軟骨表面からの反射エコー、超音波の角度データの取得手法は特許文献1の手法を用いればよい。反射エコー、超音波の角度データは、プローブ4を関節近傍の皮膚に押し当てて、識別可能な大きさの関節軟骨表面からの反射エコーを得られるようにして維持された角度から、プローブ4をランダムな方向に手動で傾けることにより得られる。以下の処理は、測定位置ごとに行われるものとする。
ステップS100では、超音波波形データ取得部7は、測定対象の位置について、プローブ4をランダムな方向に手動で傾けて得られた、角度検知手段5からの超音波の角度データと、角度データと同期された超音波波形データとを受信する。受信したデータの中に反射エコー強度が最大となる超音波波形データが存在する。つまり、図1に示すように、まずは比較的大きな関節軟骨表面からの反射エコーが得られる角度を探索し(■)、次にプローブをランダムな方向に手動で傾けて測定することで様々な角度(●)で測定すると、その中には反射エコー強度が最大となる超音波波形データが存在する。送受信される超音波の角度を知る手段を備えているので、測定者は、プローブを操作するときに超音波の角度を知る必要はない。プローブを傾ける方向は、プローブを握る手を同一面内で傾けるだけでなく、円やらせんを描くように動かす。
ステップS102では、データ処理部8は、測定対象の位置について、超音波波形データ取得部7で取得した超音波波形データの反射エコーが最大となる超音波の角度からプラス40度からマイナス40度までの範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データを選抜する。
ステップS104では、データ演算部9は、測定対象の位置について、統計処理として、ステップS102で得たそれぞれの角度における超音波波形データの反射エコー強度群から、反射エコー強度が最大となる最大角度を0度として、横軸を超音波プローブの相対角度、縦軸を反射エコー強度としたガウス曲線を作成する。
ステップS106では、データ演算部9は、測定対象の位置について、ステップS104で作成されたガウス曲線から、半値角度(X1)、ガウス曲線における尖度(X2)、及びベースラインの値(A)とベースラインからピークまでの値(B)との和(X3)の相関指標X1〜X3をそれぞれ求める。
ステップS108では、データ演算部9は、測定対象の位置について、ステップS106で求めた相関指標X1〜X3に、予め決定された定数a,b,cを乗じて加算する上記(7)式により、疑似的な音響インピーダンスYを計算し、関節軟骨の変性程度を推定する。以上のステップS100〜S108の処理を測定位置ごとに行う。
(実験結果の一例)
表1に本手法により、半値角度(X1)、ガウス曲線における尖度(X2)、及びベースラインの値(A)とベースラインからピークまでの値(B)との和(X3)の相関指標X1〜X3を組み合わせた関連指標によって求めた値と、測定により得られた音響インピーダンスとの相関係数を示す。
相関指標X1〜X3を組み合わせた関連指標によって求めた値との相関係数は、相関指標のそれぞれについて求めた値との相関係数よりも高い相関があることがわかる。なお、図8に関節軟骨の変性程度を推定する手法の検討に用いた実験装置の概略図を示す。図8の実験装置の具体的な構成は特許文献1に開示されている。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置によれば、超音波を送受信した位置ごとに、取得した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度から一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データを選抜するデータ処理部と、前記超音波を送受信した位置ごとに、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの特徴量群から、軟骨の変性程度の相関指標を求め、前記軟骨の変性程度の相関指標に基づいて、前記軟骨の変性程度を推定するデータ演算部と、を備え、前記軟骨の変性程度の相関指標として、前記超音波波形データにおける特徴量の角度依存性から得られるガウス曲線より求めた、前記特徴量のピークの値と前記特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度、前記ガウス曲線における尖度、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和を用いることにより、精度よく、関節軟骨の変性程度を推定することができる。
また、本発明の実施の形態の超音波診断装置は、関節軟骨の変性程度の推定に用いることができるものであり、医療分野において産業上の有用性は高い。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
1 超音波探触子
2 振動子
3 把持部
4 プローブ
5 角度検知手段
6 パルサーレシーバー
7 超音波波形データ取得部
8 データ処理部
9 データ演算部
10 モニター
11 パーソナルコンピューター
20 超音波診断装置

Claims (8)

  1. 振動子を有し、直線的に超音波を送信する超音波探触子に把持部を備えたプローブと、
    送信される前記超音波の角度を検知して角度データを出力する角度検知手段と、
    超音波を送受信した位置ごとに、前記プローブで送受信する超音波波形データを、前記角度データと同期して取得する超音波波形データ取得部と、
    前記超音波を送受信した位置ごとに、取得した超音波波形データの特徴量が最大となる超音波の角度から一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データを選抜するデータ処理部と、
    前記超音波を送受信した位置ごとに、一定範囲内のそれぞれの角度における超音波波形データの特徴量群から、軟骨の変性程度の相関指標を求め、前記軟骨の変性程度の相関指標に基づいて、前記軟骨の変性程度を推定するデータ演算部と、を備え、
    前記軟骨の変性程度の相関指標として、前記超音波波形データにおける特徴量の角度依存性から得られるガウス曲線より求めた、前記特徴量のピークの値と前記特徴量の値が変化しないベースラインの値との差の半分の値をとるときの角度である半値角度AHM(Angle at Half Maxumum)、前記ガウス曲線における尖度、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和を用いることを特徴とする超音波診断装置。
  2. 前記データ演算部は、前記相関指標と、定数とを線形に足し合わせて計算される、前記軟骨の変性程度の関連指標を求め、前記関連指標に基づいて前記変性程度を評価することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  3. 前記相関指標に対する係数及び定数は、前記軟骨の変性程度の関連指標が既知の軟骨について得られた前記超音波波形データから求められる前記相関指標に基づいて、重回帰分析又は主成分分析を使って決定されることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
  4. 前記関連指標は、前記半値角度AHMをX1、前記尖度をX2、及び前記ベースラインの値と前記ベースラインから前記ピークまでの値との和をX3として、以下(1)式に従って求められる、請求項2又は請求項3に記載の超音波診断装置。
    a×X1+b×X2+c×X3+d ・・・(1)
  5. 係数bに対する、係数aの比率を−3.0以上−1.5以下の値とし、係数bに対する係数cの比率を、−0.4以上1.5以下の値とする請求項4に記載の超音波診断装置。
  6. 前記超音波波形データ取得部は、超音波を送受信した位置ごとに、測定対象軟骨に対して垂直にプローブを当てた状態からプラス40度からマイナス40度までの範囲で角度を変化させたときに得られる、前記プローブで送受信する超音波波形データを、前記角度データと同期して取得する
    請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
  7. 前記特徴量を、反射エコー強度とした請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
  8. コンピュータを、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の超音波診断装置の各部として機能させるためのプログラム。
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