JP2018160802A - 振動素子、電子デバイス、電子機器および移動体 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、屈曲振動を用いた振動子においては、小型化を図ると、熱弾性損失に伴うQ値の低下も生じてしまうという課題があった。つまり、屈曲振動する振動子において、振動子の屈曲により生じる圧縮あるいは引張(伸張)の歪によって、振動子の温度変化が生じる。具体的には圧縮歪の部位は温度上昇し、引張歪の部位では温度下降する。従って、屈曲振動する振動子では、屈曲方向の一方の面側に圧縮歪が生じると、他方の面側では引張歪が生じ、振動子の一方の面側から他方の面側に温度勾配が発生する。この温度勾配を均衡させるために熱移動が振動素子内部に生じ、これが振動エネルギーの損失、すなわち熱弾性損失を生じ、Q値の低下を招いていた。
[振動素子]
先ず、本実施形態に係る振動素子として、一対の腕部を有する音叉形状の振動素子を図1Aおよび図1Bを参照して説明する。
図1Aは、第1実施形態に係る振動素子1の構成を示す概略平面図である。図1Bは、図1AのA1−A1線における概略断面図である。なお、各図および以降で参照する図では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、以下の説明では、説明の便宜上、Z軸方向から見たときの平面視を単に「平面視」とも言う。更に、説明の便宜上、Z軸方向から見たときの平面視において、+Z軸方向の面を上面、−Z軸方向の面を下面として説明する。
振動素子1を構成する材料は、水晶、特に、Zカット水晶板で構成されている。これにより、振動素子1は、優れた振動特性を発揮することができる。Zカット水晶板とは、水晶のZ軸(光軸)を厚さ方向とする水晶基板である。Z軸は、振動素子1の厚さ方向と一致しているのが好ましいが、常温近傍における周波数温度変化を小さくする観点からは、厚さ方向に対して若干(例えば、15°未満程度)傾けることになる。
一対の腕部12は、腕部12が屈曲振動する方向である第1方向としてのX軸方向に並んで設けられており、それぞれ、基部10からX軸方向と交差する方向である第2方向としてのY軸方向に沿って延出(突出)している。よって、腕部12の長手方向は、Y軸方向となる。また、腕部12の上下面には、凸部14が設けられている。
図2Aは、振動素子の振動状態における熱の発生について説明する概略平面図であり、図2Bは、振動素子の振動状態における熱の発生源を説明する概略断面図であり、図2Cは、振動素子の振動状態における熱流促進部を説明する概略断面図である。
Q={(ρCp)/(cα2Θ)}×[{1+(f/f0)2}/(f/f0)] (1)
f0=(πk)/(2ρCpW2) (2)
ここで、ρは腕部12の質量密度[kg/m3]、Cpは腕部12の熱容量[J/(kg・K)]、cは腕部12の長さ方向(Y軸方向)に関する弾性定数[N/m2]、αは腕部12の長さ方向(Y軸方向)に関する熱膨張係数[1/K]、Θは環境温度[K]、fは屈曲振動の固有周波数[Hz]、f0は熱緩和周波数[Hz]、πは円周率、kは腕部12の振動方向(X軸方向)に関する熱伝導率[W/(m・K)]、Wは腕部12の幅方向(X軸方向)の長さ[m]である。
Q={(ρCp)/(cα2Θ)}×[{1+(W/W0)4}/(W/W0)2] (3)
W0=((πk)/(2ρCpf))1/2 (4)
ここで、W0は熱緩和距離と定義する。なお、屈曲振動の固有周波数fを固定して腕部12の幅Wのみを変化させたグラフが図3である。
W<(W0Wm)1/2 (5)
W<((πk)/(2ρCpf))1/2 (6)
W<((πk)/(2ρCpf))1/2の等温的領域において、振動素子1の腕部12の両端部の間に、振動方向と交差するZ軸方向に凸である凸部14が設けられているため、屈曲振動によって腕部12の表面に温度の上昇あるいは下降が生じても、凸部14が設けられた領域での熱移動が早まり、短時間で行われる。そのため、振動素子1は等温領域において等温準静操作により近づき、熱弾性損失によるQ値の低下が抑制され、信頼性の高い、安定した共振周波数を出力する振動素子1を得ることができる。
以下、変形例について、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成には、同一の符号を附してあり、同様の事項については、その説明を省略する。
図4Aに示す変形例1の凸部141は、腕部12の上下面にそれぞれZ軸方向に2段階の厚みを有して配置されている。そのため、屈曲振動した際に歪が生じ熱発生部となる腕部12のX軸方向の両端の厚みに対し、凸部141が設けられた領域は厚いので、熱流促進部として作用する。従って、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
図4Bに示す変形例2の凸部142は、腕部12の上下面にそれぞれ、その断面が腕部12からZ軸方向に沿って幅(X軸方向の長さ)が漸減する台形状を有して配置されている。そのため、屈曲振動した際に歪が生じ熱発生部となる腕部12のX軸方向の両端の厚みに対し、凸部142が設けられた領域は厚いので、熱流促進部として作用する。従って、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
図4Cに示す変形例3の凸部143は、腕部12の上下面にそれぞれ、そのX軸方向の両端の中心が腕部12のX軸方向の両端の中心から腕部12のどちらか一方の端部側にずれて配置されている。しかし、屈曲振動した際に歪が生じ熱発生部となる腕部12のX軸方向の両端の厚みに対し、凸部143が設けられた領域は厚いので、熱流促進部として作用する。従って、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
図4Dに示す変形例4の凸部144は、腕部12の上面に設けられている凸部144と、腕部12の下面に設けられている凸部144と、がそのX軸方向の両端の中心がX軸方向ずらして配置されている。しかし、屈曲振動した際に歪が生じ熱発生部となる腕部12のX軸方向の両端の厚みに対し、凸部144が設けられた領域は厚いので、熱流促進部として作用する。従って、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
図4Eに示す変形例5の凸部145は、腕部12の上下面にそれぞれ、X軸方向に沿って2個ずつ配置されている。そのため、屈曲振動した際に歪が生じ熱発生部となるX軸方向の両端の厚みに対し、凸部145が設けられた領域は厚いので、熱流促進部として作用する。従って、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
図4Fに示す変形例6の凸部146は、腕部12の上面に設けられている凸部146と、腕部12の下面に設けられている凸部146と、のX軸方向の長さが異なっている。しかし、屈曲振動した際に歪が生じ熱発生部となる腕部12のX軸方向の両端の厚みに対し、凸部146が設けられた領域は厚いので、熱流促進部として作用する。従って、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る振動素子1aについて、図5を参照して説明する。
図5は、第2実施形態に係る振動素子の構成を示す概略平面図である。なお、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成には、同一の符号を附してあり、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の振動素子1aは、図5に示すように、凸部14aのY軸方向の長さLpが腕部12の長さLより長く、凸部14aのY軸方向の一方の端部が腕部12の基部10と反対側の端部領域付近まで配置され、且つ、凸部14aの他方の端部が基部10に配置されている。つまり、凸部14aは腕部12と基部10とに連続して配置されている。
次に、本発明の第3実施形態に係る振動素子1bについて、図6を参照して説明する。
図6は、第3実施形態に係る振動素子の構成を示す概略平面図である。なお、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成には、同一の符号を附してあり、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の振動素子1bは、図6に示すように、腕部12bの基部10側とは反対側の端部領域に錘部16が配置されている。錘部16の幅(X軸方向の長さ)は、腕部12bの幅Wよりも広い。なお、腕部12に錘部16を設けることによって、振動素子1bの小型化を図ることができたり、腕部12bの屈曲振動の周波数を低めたりすることができる。また、錘部16に金属膜等を付着または形成された金属膜等を除去することにより、一対の腕部12bの屈曲振動の周波数を高精度に調整することができる。
振動素子1bの凸部14bは、Y軸方向の長さLpが腕部12bの長さLより長く、腕部12bと錘部16とに連続して配置されている。
また、凸部14bが錘部16まで配置されていることにより、凸部14bの錘部16の端部が腕部12bに配置された場合に比べ、屈曲振動に伴う歪が凸部14bの端部に位置する腕部12bに集中し、破損するのを回避することができ、腕部12bの強度を向上させることができる。
次に、本発明の第4実施形態に係る振動素子1cについて、図7Aおよび図7Bを参照して説明する。
図7Aは、第4実施形態に係る振動素子の構成を示す概略平面図であり、図7Bは、図7AのA2−A2線における概略断面図である。なお、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成には、同一の符号を附してあり、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の振動素子1cは、基部10cと、3つの腕部12cと、腕部12cの側面(X軸方向と交差する面)に設けられた凸部14cと、を含み構成されている。
振動素子1cは、図7Aに示すように、3つの腕部12cが基部10cのY軸方向の端部に、X軸方向に並んで設けられており、それぞれ、基部10cからY軸方向に沿って延出(突出)している。
なお、本実施形態では、腕部12cに第1電極層、圧電層および第2電極層を積層した圧電駆動方式を一例として挙げ説明したが、これに限定する必要はなく、腕部12cに第1電極層を設け、第1電極層と対向する位置に、空間を介して第2電極層を配置し、第1電極層と第2電極層との間に発生する静電力によって腕部12cを屈曲振動させる静電駆動方式でも構わない。また、腕部12cに不純物をドープするなどして静電力を発生させて駆動してもよい。
次に、本発明の第5実施形態に係る振動素子1dについて、図8を参照して説明する。
図8は、第5実施形態に係る振動素子1dの構成を示す概略平面図である。なお、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成には、同一の符号を附してあり、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の振動素子1dは、図8に示すように、基部10dと、一対の腕部12dと、腕部12dに設けられた凸部14dと、腕部12dの先端部と連結された錘部16dと、基部10dと連結した固定部18と、腕部12dを駆動するための電極部30と、を含み構成されている。また、基部10dと、一対の腕部12dと、凸部14dと、錘部16dと、固定部18と、はシリコン等の基板によって一体化して形成されている。
錘部16dは、腕部12dの2つの端部領域で基部10dと反対側の端部領域に設けられており、腕部12dの屈曲振動する振動方向であるX軸方向の両端がX軸方向に凹凸を有する櫛歯状に形成されている。
なお、電極部30に形成された凹部に錘部16dに形成された凸部が挿入できるように、また、錘部16dに形成された凹部に電極部30に形成された凸部が挿入できるように、形成されている。
次に、本発明の第6実施形態に係る振動素子1eについて、図9を参照して説明する。
図9は、第6実施形態に係る振動素子1eの構成を示す概略平面図である。なお、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成には、同一の符号を附してあり、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の振動素子1eは、図9に示すように、基部10eと、一対の腕部12eと、腕部12eに設けられた凸部14eと、腕部12eの先端部と連結された錘部16eと、基部10eと連結した固定部18eと、腕部12eを駆動するための電極部30と、を含み構成されている。また、基部10eと、一対の腕部12eと、凸部14eと、錘部16eと、固定部18eと、はシリコン等の基板によって一体化して形成されている。
また、固定部18eが、一対の腕部12eの間に配置されているため、振動素子1eの全長(Y軸方向の長さ)を短くすることができるため、振動素子1eの小型化を図ることができる。
次に、本発明の一実施形態に係る振動素子1〜1eの少なくとも1つを適用した電子デバイスとしての発振器100について、図10を参照して説明する。
図10は、本発明の振動素子1を備える発振器100の構造を示す概略断面図である。
発振器100は、振動素子1と、振動素子1を収納するパッケージ本体50と、振動素子1を発振させるための発振回路を有するICチップ(チップ部品)60と、ガラス、セラミック、又は金属等から成る蓋部材56と、で構成されている。なお、振動素子1を収容するキャビティー70内はほぼ真空の減圧空間となっている。
従って、熱弾性損失が抑制され高いQ値を有し、所望の共振周波数を安定して取り出すことができる振動素子1〜1eを備えていることにより、所望の共振周波数を安定して取り出すことができる発振器100を得ることができる。
次に、本発明の一実施形態に係る振動素子1〜1eの少なくとも1つを適用した電子機器について、図11、図12および図13を参照して説明する。なお、以下の例では1つの振動素子1のみを図示しているが、2個以上の振動素子1〜1eが搭載されていてもよいし、2個以上の振動素子1〜1eが同じものでも、振動素子1〜1eのうち異なるものであってもよい。
デジタルスチールカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、ディスプレイ1000が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行なう構成になっており、ディスプレイ1000は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCD等を含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者がディスプレイ1000に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。また、このデジタルスチールカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1330が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1340が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1330や、パーソナルコンピューター1340に出力される構成になっている。このようなデジタルスチールカメラ1300には、基準クロック等として機能する振動素子1〜1eが内蔵されている。
次に、本発明の一実施形態に係る振動素子1〜1eを適用した移動体について説明する。
図14は、本発明の移動体の一例としての自動車1400を概略的に示す斜視図である。自動車1400には、振動素子1〜1eが搭載されている。振動素子1〜1eは、キーレスエントリー、イモビライザー、ナビゲーションシステム、エアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)、エアバック、タイヤプレッシャーモニタリングシステム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム等の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)1410に広く適用できる。
Claims (8)
- 第1方向に屈曲振動する腕部を含み、
前記腕部の長手方向を第2方向とし、前記第1方向および前記第2方向と交差する方向を第3方向とした場合に、
前記腕部は、前記第2方向における2つの端部領域と、前記第3方向からの平面視において前記2つの端部領域の間に位置し、前記第3方向に凸である凸部と、を含み、
且つ、前記屈曲振動の固有周波数をf、前記腕部の質量密度をρ、前記腕部の熱容量をCp、前記腕部の前記第1方向の熱伝導率をk、前記腕部の前記第1方向の長さをW、とした場合、
W<((πk)/(2ρCpf))1/2
を満たすことを特徴とする振動素子。 - 前記第2方向において、前記腕部と連続する基部を含み、
前記凸部は、前記第2方向に沿って、前記腕部の長さの前記基部から1/3以内の範囲に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の振動素子。 - 前記凸部の前記第2方向における長さは、前記腕部の長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動素子。
- 前記凸部は、前記基部と前記腕部とに連続して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の振動素子。
- 前記腕部の前記基部とは反対側に配置された錘部を含み、
前記凸部は、前記錘部と前記腕部とに連続して配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の振動素子。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の振動素子と、
前記振動素子を発振させる発振回路と、
を備えていることを特徴とする電子デバイス。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の振動素子を備えていることを特徴とする電子機器。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の振動素子を備えていることを特徴とする移動体。
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