無線LAN規格して知られているIEEE Std 802.11TM−2012およびIEEE Std 802.11acTM−2013は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る無線通信システムを示す。図1の無線通信システムは、基地局であるアクセスポイント(AP)1、2、3、4、5を備える。アクセスポイント1〜5は、それぞれ無線通信グループまたは無線通信ネットワークである、BSS(BSS:Basic Service Set)1、2、3、4、5を形成する。BSS1〜5には、複数の無線通信端末が属する。無線通信端末は、端末、無線端末、またはステーション(STA)と呼ぶこともある。AP1〜5も、中継局の機能を有する点を除き、端末の機能を有するため、端末の一形態である。以下の説明で端末と言うときは、特に動作に矛盾を生じない限り、APを指してもよい。なお、AP1〜5を制御する制御局が存在してもよい。
AP1〜5と、各APのBSSに属する複数の端末とは、任意の無線通信方式に従って無線通信を行う。一例として、IEEE802.11規格に準拠した通信を行う。端末に搭載される無線通信装置は、APに搭載される無線通信装置と通信する。APに搭載される無線通信装置は、端末に搭載される無線通信装置、および通信可能な範囲に存在する他のAPに搭載される無線通信装置と通信する。本実施形態の無線通信システムは、IEEE802.11規格の無線LANを想定するが、これに限定されるものではない。
BSS1〜5に属する端末は、BSS1〜5を形成するAP1〜5と通信できる。また各APは、自局と通信可能な範囲に属する限り、他のAPと互いに通信できる。図1の例では、AP1は、隣接するAP2と通信できる。また、AP2は、それぞれAP2に隣接するAP1およびAP3と通信できる。各APは、自局と通信可能な範囲内である限り、隣接しないAPとも通信可能であってもよい。例えば、AP1とAP3間で通信可能であってもよい
有線ネットワーク31に最も近いAP5は、有線ネットワーク31に接続されている。有線ネットワーク31は、イーサーネット等のLANでもよいし、インターネット等の広域ネットワークでもよい。AP1〜5に属する端末が、有線ネットワーク31にデータを送信するためには、AP5を経由する必要がある。例えばBSS1に属する端末がデータを有線ネットワーク31に送信するためには、AP1にデータを含むフレームを送信し、AP1がこのデータを含むフレームをAP2に中継し、さらにAP2がこのデータを含むフレームをAP3に中継し、最終的にAP5まで中継する必要がある。AP5が最も上流側に配置されており、AP1が最も下流側に配置されている。AP5と有線ネットワーク31の間にさらに別のAPが存在してもよい。また、AP1より下流側にさらに別のAPが存在してもよい。
AP1〜5は、1つまたは複数のアンテナを備える。図1の例では、AP1〜5は、2つ以上のアンテナを備える。APが具備するアンテナ数は、これより多くても、少なくてもかまわない。また、各端末は、それぞれ1つまたは複数のアンテナを備える。APのアンテナは、指向性を制御可能に構成されていてもよい。一例として図2(A)に示すように、各APのアンテナは、自局のBSSに属する端末群の方向の指向性と、隣接するAPの方向の指向性とを切り換え可能でも良い。また、APのアンテナは、特定の方向に指向性を有さない、全方位指向性(オムニ指向性)のアンテナでもよい。オムニ指向性と、図2(A)の指向性と、図2(B)の指向性とを互いに切り換え可能でもよい。指向性の切り替え方法としては、複数の指向性タイプを有する複数のアンテナを備え、使用するアンテナを切り換えることで対応してもよい。また、複数のブランチを有するアンテナを用い、各ブランチのインピーダンスまたは抵抗を制御することで、指向性を可変にしてもよい。ここで述べた以外の構成で、指向性を制御してもよい。
各端末は、アソシエーションプロセスを経て、APと接続することで、APのBSSに属することができる。接続とは、無線リンクを確立した状態を意味しており、APとのアソシエーションプロセスを経て、通信に必要なパラメータの交換が完了することで、無線リンクが確立される。無線リンクを確立した端末には、APからアソシエーションID(AID)が割り当てられる。AIDは、端末がAPのBSSに属するためにAPとの間で行うアソシエーションプロセス時に付与される識別子である。より詳細には、APは、接続要求(Association Request)フレームを送信してきた端末に接続許可をする場合に、そのネットワークでローカルに生成した番号を割り当てる。その番号がAIDと呼ばれるものであり、0以外のある指定の範囲内の番号を割り当てる。AIDは、そのネットワーク(BSS)内ではユニークになるように割り当てる。APは、接続を許可する端末に、割り当てたAIDを含む接続応答(Association Response)フレームを送信する。端末は、接続応答フレームからAIDを読み出すことで、自装置のAIDを把握する。端末は、APから接続許可の接続応答フレームを受信することで、APが形成するBSSに属し、以降、APと通信することができる。このようなAPと端末間の接続のプロセスをアソシエーションプロセスと呼ぶ。APは、端末とアソシエーションプロセスを行う前に、認証(Authentication)プロセスを行ってもよい。APは、自装置に接続した端末を、AIDまたはMACアドレスにより識別できる。
図3は、本実施形態に係るMACフレームの基本的なフォーマット例を示す。フレームの種別は、大きく、データフレーム、管理フレームおよび制御フレームに大別され、いずれの種別のフレームも、このようなフレームフォーマットをベースとする。本フレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、フレームボディ(Frame body)及びFCSの各フィールドを含む。MACヘッダは、Frame Control、Duration/ID、Address1、Address2、Address3, Sequence Control、Address4、QoS Control及び HT(High Throughput) controlのフィールドを含む。
これらのフィールドは必ずしもすべて存在する必要はなく、フレームの種別に応じて一部のフィールドが存在しない場合もあり得る。例えばAddress3またはAddress4またはこれらの両方のフィールドが存在しない場合もある。また、QoS ControlおよびHT Controlフィールドの両方または一方が存在しない場合もある。またフレームボディフィールドが存在しない場合もあり得る。一方、図4に示されていない他のフィールドが存在してもよい。HT Controlフィールドを、IEEE802.11acのVHT (Very High Throughput)Controlフィールド、または、次世代無線LANの規格であるIEEE802.11axのHE(High Efficiency) Controlフィールドに拡張してもよい。
Address1のフィールドには、受信先アドレス(RA:Receiver Address or Receiving Station Address)が、Address2のフィールドには送信元アドレス(TA:Transmitter Address or Transmitting Station Address)が入り、Address3のフィールドにはフレームの用途に応じて、BSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)(全てのビットに1を入れて全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSID場合もある)か、あるいはTAが入る。Address4フィールドは、AP間の通信の場合などに用いられる。Address4フィールドが存在しない場合もある。
Frame Controlフィールドには、タイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)という2つのフィールド等が含まれる。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別の識別はSubtypeフィールドで行われる。例えばそれぞれ制御フレームであるRTS(Request to Send)フレーム、CTS(Clear to Send)フレーム、ACKフレーム、BA(Block Ack)フレームの識別は、Subtypeで行う。
Duration/IDフィールドは媒体予約時間を記載し、他の端末宛てのMACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。
QoS Controlフィールドは、フレームの優先度を考慮して送信を行うQoS制御を行うために用いられる。このQoS Controlフィールドには、データのトラフィックに応じた識別子が設定されるTIDフィールド(0〜15までの16種類存在)、および送達確認方式が設定されるAck policyフィールド等が含まれる。TIDフィールドを確認することで、データのトラフィック種別を認識することができる。また、Ack policyフィールドを確認することで、そのQoS Dataフレームが“Normal Ack policy”か、“Block Ack policy”か、それとも“No Ack policy”で送信されたのかを、判別することができる。
HT Controlフィールドは、IEEE802.11nで導入されたフィールドであり、QoSデータフレームまたは管理フレームのときに、オーダーフィールドが1に設定されていると存在する。前述したように、HT Controlフィールドは、IEEE802.11acのVHT (Very High Throughput)Controlフィールドにも、次世代無線LAN規格であるIEEE802.11axのHE(High Efficiency) Controlフィールドにも拡張可能であり、各々IEEE802.11n、IEEE802.11ac、あるいはIEEE802.11axの各種機能に応じた通知をすることができる。
FCSフィールドには、受信側でフレームの誤り検出のため用いられるチェックサム符号としてFCS(Frame Check Sequence)情報が設定される。FCS情報の例としては、CRC(Cyclic Redundancy Code)などがある。
Address1、Address2、Address3、Address4に関して、APへ送信されるフレームか否か、APから送信されるフレームか否か、フレームがMSDU(MAC Service Data Unit)かA−MSDU(A(Aggregated)−MSDU)のどちらか、などに応じて、それぞれのフィールドに設定するアドレスの内容が異なる。
ここで、MSDUは、MPDU(Medium access control (MAC) Protocol Data Unit)であるMACフレームの中のデータ(フレームボディ部分)を指している。A−MSDUは、1つのMPDUのフレームボディ中に、複数のデータペイロードであるMSDUが連接されたものを指している。なお、これらのMSDU、A−MSDU、MPDU等の表現は、IEEE802.11規格での呼び方である。
図4に、Address1、Address2、Address3、Address4の各フィールドに設定する内容を示すテーブルの例を示す。このテーブルは、IEEE802.11規格書から抜粋したものである。使用するプロトコルの種類や規格に応じて、フレームヘッダで定義するAddressフィールドの個数および定義は異なってもよく、この際、各Addressフィールドへ設定するアドレスの内容は、このテーブルに必ずしも従う必要はない。
図4のテーブルにおける「To DS」ビットおよび「From DS」ビットは、Frame ControlフィールドのTo DSおよびFrom DSの各サブフィールドに設定されるビットに対応する。「To DS」はAPへ送信するフレームの場合にビット“1”が設定され、それ以外の場合はビット“0”に設定される。「From DS」は、APから送信されるフレームの場合にビット“1”が設定され、それ以外の場合は“0”に設定される。
一番上の行(「To DS」=0、「From DS」=0)の設定例は、同じBSS内のある端末から別の端末へ直接送信するフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、受信先アドレス(RA)として、フレームが送信される直接の宛先となる端末(上記別の端末)のアドレス(MACアドレス)が設定される。RAとして、端末のアドレス(ユニキャストアドレス)以外に、ブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスが設定されることもある(以下、同様)。Address2フィールドには、送信元アドレス(TA)として、SA(Source Address)が設定される。SAは、フレームの転送が開始される最初の送信元となる端末のアドレスである。ここでは、上記ある端末のアドレスである。Address3フィールドには、BSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)が設定される。Address4フィールドは、使用されない。
2番目の行(「To DS」=0、「From DS」=1)の設定例は、APから、当該APが形成するBSSに属する端末へ送信するフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先の端末のアドレス(MACアドレス)が設定される。Address2フィールドには、TAとして、送信元であるAPのBSSID(すなわち当該APのMACアドレス)が設定される。Address3フィールドには、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、SA(Source Address)またはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、使用されない。
3番目の行(「To DS」=1、「From DS」=0)の設定例は、AP(BSS)に属する端末から、当該APに送信するフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先であるAPのBSSIDが設定される。Address2フィールドには、TAとして、SA、すなわち当該端末のアドレス(MACアドレス)が設定される。Address3フィールドには、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、DA(Destination Address)またはBSSIDが設定される。DAは、フレームが最終的に転送される先となる端末(APの場合も含む)のアドレスである。Address4フィールドは、使用されない。
4番目の行(「To DS」=1、「From DS」=1)の設定例は、AP(BSS)間で通信されるフレームの場合である。この場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先であるAPのBSSIDが設定される。Address2フィールドには、TAとして、送信元であるAPのBSSIDが設定される。Address3フィールドには、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、DA(Destination Address)またはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、フレームがMSDUおよびA−MSDUのいずれを有するかに応じて、SAまたはBSSIDが設定される。
本実施形態では、一例として、AP1のBSS1に属する端末が、フレームを送信して、AP1、AP2、AP3、AP4を経由して、AP5まで転送される例を示すが、各APでの転送の際、MACヘッダのAddress1〜4フィールドは、上述した規則に従って、適宜、適切なアドレス(またはBSSID)に書き換えられるものとする。
ここで、APが送信するフレーム、および端末が送信するフレームは、実際には、フレームの先頭に、物理ヘッダ(PHY header)が付加され、物理ヘッダとフレームとを含む物理パケットが送信される。物理パケットのことを、物理フレームと呼んでもよい。
図5に、物理パケットのフォーマット例を示す。物理パケットは、物理ヘッダとPHYペイロードとを含む。物理ヘッダは、Legacy Preamble部分と、11n、11acまたは11ax等の各種規格に応じたPreamble部分とを含む。PHYペイロードはデータ部であり、変調処理が施された後のフレームが含まれる。Legacy
Preambleは、IEEE802.11aで規定される物理ヘッダと同様の構成であり、L−STF、L−LTF 、L−SIGのフィールドを含む。L−STFやL−LTFは既知のビットパターンを示す。これは、受信側の装置が受信利得調整や、タイミング同期、伝搬路推定等を行うために用いる。L−SIGには、これより後のPreamble部分とPHY payloadとの送信に必要な時間を受信側の装置で算出するための情報が含まれる。
ここで本実施形態のAP1〜5は、各々のBSSに属する端末群および自局以外のAPと、直交周波数分割多元接続方式(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を実施可能である。OFDMAでは、1つまたは複数のサブキャリアを含むリソースユニット(サブチャネル、リソースブロック、周波数ブロックなどと呼んでもよい)を通信リソースとして複数の端末(APの場合を含む)に割り当て、リソースユニットベースで、複数の端末と同時に通信する。アップリンクのOFDMA(複数の端末(APの場合を含む)から特定のAPへ同時に送信する場合)をUL−OFDMA、ダウンリンクのOFDMA(1つAPから複数の端末(APの場合を含む)へ同時に送信する場合)をDL−OFDMと記述する。
リソースユニット(RU)は、通信を行うリソースの最小単位となる周波数成分である。図6に、1つのチャネル(ここではチャネルMと記述している)の連続した周波数領域内に確保したRU(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を示す。チャネルMには、互いに直交する複数のサブキャリアが配置されており、1つまたは複数の連続するサブキャリアを含む複数のRUがチャネルM内に定義されている。RU間には、1つ以上のサブキャリア(ガードサブキャリア)が配置されてもよいが、ガードサブキャリアは必須ではない。チャネル内の各サブキャリアには、サブキャリアを識別するための番号が付与されていてもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。20MHzの複数のチャネルをまとめて1つのチャネルとしてもよい。帯域幅に応じてチャネル内のサブキャリア数またはRU数が異なってもよい。複数の端末(APの場合を含む)がそれぞれ異なるRUを同時に用いることで、OFDMA通信が実現される。
RUの帯域幅(あるいはサブキャリア数)は、各RUで共通でもよいし、RUごとに帯域幅(あるいはサブキャリア数)が異なってもよい。図7(A)〜図7(C)に、1つのチャネル内におけるRUの配置パターン例を模式的に示す。紙面に沿って横方向が周波数領域方向に対応する。各パターンにそれぞれパターン識別子が付与されており、いずれかのパターンをAPが選択できるようになっていてもよい。ここで示すパターンは一例であり、このほかにも種々のパターンが可能である。
図7(A)は、同じ帯域幅の複数のRU(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を配置した例を示し。図7(B)は、図7(A)より大きな帯域幅の複数のRU(RU#11−1、RU#11−2、・・・、RU#11−L)を配置した例を示す。図7(C)は3種類の帯域幅のRUを配置した例を示す。RU(RU#12−1、RU#12−2)が最も大きな帯域幅を有し、RU#11−(L−1)は図7(B)の各RUと同じ帯域幅である。RU(RU#K−1、RU#K)は、図7(A)の各RUと同じ帯域幅である。
なお、各端末(APの場合を含む)がOFDMAで使用するRU数は、特定の値に制限されず、1つでも、複数でもよい。端末が複数のRUを用いる場合、周波数的に連続する複数のRUをボンディングして1つのRUとして用いてもよい。また、離れた箇所にある複数のRUを用いてもよい。図8(B)のRU#11−1は、図8(A)のRU#1と#2をボンディングしたRUの一例と考えることもできる。
1つのRU内のサブキャリアは周波数領域で連続しているとするが、非連続に配置された複数のサブキャリアからRUを定義してもよい。OFDMAで使用するチャネルは1つに限定されず、チャネルMと周波数領域で離れた位置に配置された別のチャネル(図6ではチャネルNを参照)内にも、チャネルMと同様にしてRUを確保し、チャネルMとチャネルNの両方内のRUを用いてもよい。チャネルMとチャネルNとでRUの配置パターンは同じであっても、異なってもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、上述のように、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。3つ以上のチャネルを用いることも可能である。なお、チャネルMとチャネルNをまとめて1つのチャネルとして考えることも可能である。
上述したRUベースのOFDMA以外に、チャネルベースでのOFDMAも可能である。この場合のOFDMAを特にMU−MC(Multi−User Multi−Channel)と呼ぶことがある。MU−MCでは、APが複数のチャネル(1つのチャネル幅は例えば20MHzなど)を複数の端末(APの場合を含む)に割り当て、当該複数のチャネルを同時に用いて、複数端末宛て同時送信もしくは複数端末からの同時受信を行う。以降に説明するOFDMAでは、RUベースのOFDMAを想定するが、RUをチャネルに読み替えるなど、必要な読み替えを行うことで、チャネルベースのOFDMAの実施形態も実現可能である。
図8に、APがDL−OFDMAで複数の端末(APの場合を含む)にフレームを送信する場合の物理パケットの構成例を示す。L−STF、L−LTF、L−SIGのフィールドは、一例として20MHzのチャネル幅で送信され、端末毎のフレームのいずれでも同じ値(同じシンボル)が設定される。SIG1フィールドは、複数の端末に通知する情報を設定する。一例として、SIG1フィールドは、IEEE802.11ax規格のHE−SIG−AフィールドまたはHE−SIG−Bフィールドまたはこれらの両方に対応してもよい。例えば、SIG1フィールドには、DL−OFDMAの対象となる複数の端末を指定する情報、および端末毎に受信に使用する周波数リソース(RUまたはチャネルまたはこれらの両方)を指定する情報を設定する。例えば、端末の識別子と、RUの番号(識別子)とを対応づけた情報を設定する。別の例として、それぞれ特定のRUに関連づけられたサブフィールドをSIG1フィールド内に設け、各サブフィールドに端末の識別子を設定してもよい。この場合、RUの番号を指定せずに、端末に、使用すべきRUを指定できる。端末の識別子はアソシエーションID(AID)でもよいし、AIDの一部(Partial AID)でもよいし、MACアドレス等のその他の識別子でもよい。SIG1フィールドも、一例として、20MHzのチャネル幅で送信される。各端末のいずれもSIG1フィールドを復号可能である。APからの信号を受信した各端末はSIG1フィールドを復号することで、自端末が指定されているか、および自端末が復号すべきRUを把握できる。各端末は、それぞれ指定されたRUの信号を復号することで、ペイロードのフレームを受信する。なお、SIG1フィールドと各データフィールド(MACフレーム)との間に、SIG2フィールドや、伝搬路推定用のプリアンブルフィールドなど別のフィールドが、RU単位で(すなわち各データフィールドの前段に)配置されていてもよい。SIG2フィールドで、対応するRUを受信する端末に個別に通知する情報を設定してもよい。
以下、本実施形態の技術的課題について、図1のシステム構成を用いて、説明する。図9は、関連技術に係る動作シーケンス例を示す。ここではそれぞれ同じ帯域幅のRU0〜RU3を含む20MHz帯域幅のチャネルを用いる場合を仮定する。実際には、20MHz帯域幅のチャネル内に、より多くのRUが配置されていてもよいし、各RUの帯域幅が同じでなくてもよい。図9には、AP1〜AP3のみ示し、AP4、AP5の図示は省略している。なお、上向きの矢印付きの線は、送信を表し、下向きの矢印付きの線は、受信を意味している。
AP1は、BSS1内のある端末からRTSフレーム51を受信する。RTSフレーム51は、AP1に送信許可を求めるフレームである。RTSフレーム51のRAは、AP1のMACアドレス(BSSID)、TAは端末のMACアドレスである。なお、端末は、RTSフレーム51を送信する前に、CSMA/CAに従って、無線媒体へのアクセス権を獲得する。
AP1は、RTSフレーム51を受信すると、受信完了からSIFS(Short Interframe Space)後に、CTSフレーム52を送信する。CTSフレーム52のRAは、RTSフレーム51の送信元の端末のMACアドレス(RTSフレーム51のTA)である。CTSフレーム52に、TAは存在しなくてよい。
AP1が送信するCTSフレーム52は、RTSフレーム51の送信元の端末およびBSS1内の他の端末に受信される。RTSフレーム51の送信元の端末は、CTSフレーム52を受信すると、送信許可が得られたと判断し、そのSIFS後に、データフレーム53を送信する。
AP1は、データフレーム53を受信すると、そのSIFS後、当該端末への送達確認応答フレーム(図ではACKフレーム)54Bと、AP2へのデータフレーム54Aとを、OFDMAで送信する。データフレーム54Aのフレームボディフィールドには、データフレーム53のフレームボディフィールドから抽出されたデータが設定される。これにより、データフレーム53は、データフレーム54Aとして中継(転送)される。転送の際、MACヘッダのアドレスフィールド等は、適宜書き換えられる(図5参照)。データフレーム54AのRAは、AP2のMACアドレス(BSSID)である。なお、データフレーム54Aの末尾とACKフレーム54Bの末尾とが揃わない場合は、短い方のフレームにパディングデータを付加してもよい。
図の例では、ACKフレーム54Bは、RU0を使って送信され、データフレーム54Aは、RU1〜RU3を使って送信される。なお、RU1〜RU3が1つにボンディングされて、ボンディング後の帯域で、1つのデータフレームが送信されてもよいし、RU1〜RU3のそれぞれごとにデータフレームが送信されてもよい。図8を用いて述べたように、データフレーム54AおよびACKフレーム54Bは、これらのフレームを含む1つのパケットとして送信される。ここでは、AP1は、上記のデータフレーム53の送信元端末から受信したデータのみを転送したが、AP1の内部バッファに転送すべき他のデータが存在するときは、このデータも同時に送信してもよい(以下、同様)。例えばデータフレーム54AをRU2とRU3で送信し、上記他のデータを含むデータフレームをRU1で送信してもよい。
AP2と、データフレーム53の送信元端末とは、AP1が送信したパケットを受信する。パケットを受信した端末は、パケットの物理ヘッダから自端末用のRU0を特定し、RU0を復号して、ACKフレーム54Bを取得する。AP2は、同物理ヘッダから自局用のRU1〜RU3を特定し、RU1〜RU3を復号して、データフレーム54Aを取得する。なお、AP2は、パケットに含まれるACKフレーム54Bも受信するが、AP2はこれを復号しないため、図ではAP2がRU0ではフレームを受信していないかのように描かれている。
AP2は、パケットの受信完了から、SIFS後、AP1に対するACKフレーム58Bと、AP3へのデータフレーム58Aとを、OFDMAで送信する。データフレーム58Aのフレームボディフィールドには、データフレーム54Aのフレームボディフィールドから抽出されたデータが設定される。これにより、データフレーム54Aは、データフレーム58Aとして中継(転送)されることができる。この際、MACヘッダのアドレスフィールド等は、適宜書き換えられる(図5参照)。データフレーム58AのRAは、AP3のMACアドレス(BSSID)である。本例では、ACKフレーム58Bは、RU0で送信され、データフレーム58Aは、RU1〜RU3で送信される。これにより、データフレーム58AとACKフレーム58Bとを含むパケットが送信される。
なおAP2は、AP1からデータフレーム54以外の他のデータフレームも同時に受信した場合は、当該データフレームに対するACKフレームもACKフレーム58Bと同時に返せばよい(以下、同様)。この際、各ACKフレームを別々のRUで返してもよいし、データフレーム54と他のデータフレームとに対する送達確認応答をまとめて含む1つの送達確認応答フレームを送信してもよい。そのような送達確認応答フレームの例として、IEEE802.11axで検討されているMulti−Station BA(以下、Multi−STA BA)フレームを用いてもよいし、これとは別に新たに定義したフレームを用いてもよい。
AP3とAP1は、AP2が送信したパケットを受信する。AP1は、パケットの物理ヘッダから自局用のRU0を特定し、RU0を復号して、ACKフレーム58Bを取得する。AP3は、同物理ヘッダから自局用のRU1〜RU3を特定し、RU1〜RU3を復号して、データフレーム58Aを取得する。なお、AP3は、パケットに含まれるACKフレーム58Bも受信するが、AP3はこれを復号しないため、図ではAP3が、RU0でフレームを受信していないかのように描かれている。
AP3は、パケットの受信完了から、SIFS後、AP2に対するACKフレーム59Bと、AP4へのデータフレーム59Aとを、OFDMAで送信する。データフレーム59Aのフレームボディフィールドには、データフレーム58Aのフレームボディフィールドから抽出されたデータが設定される。これにより、データフレーム58Aは、データフレーム59Aとして中継(転送)されることができる。データフレーム59AのRAは、AP4のMACアドレス(BSSID)である。本例では、ACKフレーム59Bは、RU0を使って送信され、データフレーム59Aは、RU1〜RU3を使って送信される。以下、同様にして、AP間リレーによってデータが転送され、最終的にAP5を介して、有線ネットワーク31に出力される
上述した関連技術に係る図9のシーケンスでは、データフレームの送信(例えばデータフレーム54Aの送信)と、ACKフレームの送信(例えばACKフレーム54Bの送信)とを同時に行っている点ではシステム利用が効率的に行われている。しかしながら、AP1は、AP2からACKフレーム58Bを受信した後、SIFS後に、次のデータフレームをAP2に送信しようとした場合、このタイミングでは、AP2がAP3からACKフレーム59Bを受信する。このため、AP1が次のデータフレームを送信すると、AP2でフレーム衝突が発生してしまう可能性がある。したがって、AP1が、実際には次のデータフレームを送信できず、このことは、システム全体のレイテンシーにつながる。ここではAP1について説明したが、他のAPでも同様のことが起こる。本実施形態では、この問題を解消することで、システム全体のレイテンシーを低減する。例えば、AP1が、ACKフレーム58Bの受信のSIFS後に、次のデータフレームをAP2に送信できるような仕組みを提供する。
本実施形態では、APがデータフレームまたは送達確認応答フレーム(ACKフレーム等)を送信するときに、同時にトリガーフレームを送信することを特徴の1つとする。トリガーフレームは、送信の対象となる1つまたは複数の端末(端末はAPでもよい)を指定し、当該指定した端末(AP)に対して、次のフレーム送信のタイミングや、当該次のフレーム送信で使用する周波数リソース(RUまたはチャネルまたはこれらの両方)などを制御するフレームである。トリガーフレームは、一例として、指定した端末を特定する情報と、当該端末に対して通知するパラメータ情報(例えば送信で使用するRUまたはチャネルなど)を指定する情報とを含む。本実施形態では、主にトリガーフレームではAPを指定する場合を想定して説明する。トリガーフレームを受信したAPは、トリガーフレームで自APが指定されている場合に、受信完了から予め定めた時間後(本実施形態ではSIFSを想定するが、これに限定されない)に、トリガーフレームで指定されたパラメータ情報に従って、フレームを送信する。このような役割を有するトリガーフレームを、ACKフレームまたはデータフレームと同時にOFDMAで送信することで、周波数リソースを有効活用して、システム全体のレイテンシーを低減する手法を、本実施形態では示す。
図10に、トリガーフレームのフォーマット例を示す。なお、ここで示すトリガーフレームのフォーマットは一例であり、対象となる端末(APの場合も含む。以下の説明ではAPを想定)の指定や、APに必要なパラメータ情報を通知できれば、別のフォーマットでもかまわない。
図10のフォーマットは、図3に示した一般的なMACフレームのフォーマットをベースとしている。より詳細に、図10のフォーマットは、Frame Controlフィールド、Duration/IDフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、共通情報フィールド(Common Info Field)と、1つまたは複数のユーザ情報フィールド(Per User Info Field)と、FCSフィールドとを含んでいる。Frame ControlフィールドのTypeおよびSubtypeで、トリガーフレームを識別する値を指定する。一例として、Type “制御”を表す値であり、Subtypeはトリガーフレームに対応して新たに定義した値である。ただし、Typeは“管理”または、“データ”を表す値でもよい。ここで述べた以外の方法で、トリガーフレームを識別できるようにしてもよい。
RAは、ブロードキャストアドレス、マルチキャストアドレスまたはユニキャストアドレスである。トリガーフレームで1台のAPのみを指定する場合は、RAとして、送信先のAPのアドレス(MACアドレスまたはBSSID。以下同様)を用いる。トリガーフレームを非APの1台の端末に送信する場合は、当該端末のMACアドレスをRAとして用いてもよい。TAは、トリガーフレームの送信元のAPのMACアドレス(BSSID)である。
Common Infoフィールドには、トリガーフレームで指定する1または複数のAPに共通に通知するパラメータ情報を設定する。パラメータ情報として、例えば、トリガーフレームの応答として送信するフレーム長またはパケット長を設定してもよい。また、トリガーフレームに応答する送信タイミングを指定する情報を明示的に設定してもよい。また、トリガーフレームを受信したAPに要求する動作を指定する情報を設定してもよい。例えば、当該要求は、APに蓄積されている送信待ちのデータ量(データサイズ)を報告する要求でもよい。その他、例えば、Per Userフィールドのフォーマットを指定する情報、またはPer User Infoフィールドの個数を表す値を設定してもよい。
Per User Infoフィールドには、トリガーする対象となる1つまたは複数のAPを指定する情報(AIDまたはMACアドレスなど)、およびその他、APに通知するパラメータ情報を設定する。パラメータ情報の例として、トリガーフレームに応答する送信に使用する周波数リソース(RUまたはチャネルまたはこれらの両方)を指定する情報、送信に適用する伝送レートに相当するMCS(Modulation and Coding Scheme)のインデックス、および、送信電力情報(Transmit Power Information)等がある。送信させるフレームの種別(データフレーム、ACKフレーム、トリガーフレームなど)を指定する情報を指定してもよい。なお、トリガールレームのRAがユニキャストアドレスで、かつ、指定するAPが1台の場合は、Per User Infoフィールドに、当該APを指定する情報を設定することを省略してもよい。
ここで示した例は、一例に過ぎず、Common Infoフィールドに設定するとして説明した情報を、Per User Infoフィールドに設定してもよいし、その逆でもよい。トリガーフレームの送信先のAPに必要な情報を通知できれば、上述したフォーマットに限定されない。
以下、上述したトリガーフレームを用いる、本実施形態に係る動作シーケンス例について説明する。
(本実施形態に係る動作シーケンスの第1の例)
図11および図12は、本実施形態に係る動作シーケンスの第1の例を示す図である。説明のため、AP1〜AP3のみを示している。各APは、隣接するAP以外に、自局のBSS(自BSS)に属する端末とも通信するが、これらの端末および端末とのやり取りは省略している。前述した関連技術のシーケンスでは、チャネルを1つのみ使用したが、本実施形態では2つのチャネル(チャネルCH1とチャネルCH2)を使用するとする。AP1、AP2、AP3間でチャネルCH1、AP3、AP4およびAP5間ではチャネルCH2を使用する場合を想定する。説明の都合上、チャネルCH1は、4つのRU(RU1、RU2、RU3、RU4)を含み、チャネルCH2は、4つのRU(RU10、RU11、RU12、RU13)を含むとするが、これに限定されるものではない。
AP2は、事前にあるタイミングで、チャネルCH1でAP1からデータフレームを受信し、CRC検査に成功している。すなわち、AP2は、事前にAP1から、転送すべきデータを受信している。AP2は、図11の上図に示すように、その一定時間(本例ではSIFSとする)後のタイミングt1で、AP2がチャネルCH1を用いてOFDMA送信する。具体的に、AP2は、AP1宛のACKフレーム11と、AP1宛のトリガーフレーム12と、AP3宛のデータフレーム13と、AP3宛のトリガーフレーム14とを、それぞれRU1、RU0、RU2、RU3(図12参照)で送信している。なお、タイミングt1では、AP1およびAP3は、他のどのAPまたは端末にも送信していないとする。
AP1を指定するトリガーフレーム12のRAは、AP1のアドレスとし(またはブロードキャストアドレス等でもよい)、一例として、2つのPer User Infoフィールドの1つには、AP1に関する情報(例えば送信に使用するRUやチャネル、MCSなど。以下同様)を設定し、もう一方のPer User Infoフィールドには、AP2に関する情報を設定する。同様に、AP3を指定するトリガーフレーム14のRAは、AP3のアドレスとし(またはブロードキャスト等でもよい)、2つのPer User Infoフィールドには、トリガーフレーム12と同じ内容を設定する。なお、共通情報フィールドなども、トリガーフレーム12、14の双方で同じ内容を設定すればよい。
具体的に、AP2は、AP1およびAP3のそれぞれに対して複数のRUを指定する。より詳細には、AP1にはRU0とRU1を指定し、AP3にはRU2とRU3を指定したとする。また、AP2は、AP1およびAP3のそれぞれに対して、トリガーフレーム12,14への応答(以下、トリガー応答)に使用するチャネルとして、チャネルCH1を指定したとする。チャネルの指定を省略した場合は、AP1、AP3は、トリガーフレーム12,14を受信したチャネルと同じチャネルを使用するようにしてもよい。
図11の下図は、タイミングt1のSIFS後のタイミングt2における動作を示す。AP1が、AP2のトリガーフレーム12に応答して、データフレーム21と、トリガーフレーム22とを、チャネルCH1を用いて、それぞれRU0とRU1とで、OFDMAで送信している。トリガーフレーム22は、AP2にSIFS後のタイミングt3(図示せず)でAP1へ送信することを指示するとともに、AP1への送信に使用させるRU等を指定する。
また、AP3は、AP2のトリガーフレーム14に応答して、チャネルCH1を用いて、RU3とRU2とで、ACKフレーム23とトリガーフレーム24とを送信するのと同時に、さらにチャネルCH2を用いて、AP4宛のデータフレーム25と、AP4を指定するトリガーフレーム26とを送信している。トリガーフレーム26の送信にはRU10を用い、データフレーム25の送信には、RU11〜RU13を用いている。トリガーフレーム24では、AP2にSIFS後のタイミングt3(図示せず)でAP3へ送信することを指示するとともに、AP3への送信に使用させるRU等を指定する。トリガーフレーム26は、AP4にSIFS後のタイミングt3(図示せず)でAP3へ送信することを指示するとともに、AP3への送信に使用させるRU等を指定する。
なお、AP3、AP4間でチャネルCH2を利用することは、AP3が、無線媒体の状況に基づき自律的に決定してもよい。または、複数のAP間のネゴシエーション等を介して、各AP間で使用するチャネルが事前に設定されていてもよい。なお、AP3は、チャネルCH2でフレーム送信を開始するにあたっては、事前にCSMA/CAに基づきキャリアセンス等で、チャネルCH2がアイドル状態であることを確認しておいてもよい。
AP2は、タイミングt2でAP1とAP3の双方からそれぞれトリガーフレーム22、24を受信するが、これらのトリガーフレームが重複するRUを指定する場合もあり得る。この場合、AP1とAP3とのうちの一方を選択して、選択したAPに、当該重複するRUを使用すればよい。または、トリガーフレーム22、24ではそれぞれ全てのRUを指定し(あるいは指定を省略し)、AP2が、自律的にAP1とAP3とに対して使用するRUを決定してもよい。
上述のシーケンスで送信するデータフレーム(13、21または25)は、複数のフレームをアグリゲートしたアグリゲーションフレーム(A-MPDU(medium access control (MAC) protocol data unit)等)でもよい。アグリゲーションフレームに含まれる個々のフレームをサブフレームと呼んでもよい。なお、アグリゲーションフレームを送信する場合、その応答となる送達確認応答フレームは、各サブフレームに対する送達確認情報を含むBA(Block ACK)フレームである。
また、ACKフレーム11とトリガーフレーム12とをアグリゲートしたアグリゲーションフレームを送信することで、ACKフレーム11とトリガーフレーム12とを同一のRUで送信してもよい。なお、アグリゲーションフレームの宛先(RA)はAP1であり、アグリゲーションフレームは、1つまたは複数のRUで送信される。またデータフレーム13とトリガーフレーム14とをアグリゲートしたアグリゲーションフレームを送信することで、データフレーム13とトリガーフレーム14とを同一のRUで送信してもよい。なお、アグリゲーションフレームの宛先(RA)はAP3であり、アグリゲーションフレームは、1つまたは複数のRUで送信される。
図11および図12のシーケンスでは、タイミングt1でAP2からAP3にトリガーフレーム14を送信し、タイミングt3では、AP1からAP2にトリガーフレーム22を送信しているが、データフレーム13、21への応答に使用するRU、またはRUの決定方法が事前に決められている場合は、これらのトリガーフレームの送信を省略する構成もあり得る。例えばデータフレーム13に対して、ACKフレーム23とトリガーフレーム24とをアグリゲートしたアグリゲーションフレームを所定のRUで返すことが事前に決まっている場合などが、これに相当する。
また、図11および図12のシーケンスでは、AP2は、タイミングt1で、AP1とAP3にそれぞれ異なるトリガーフレームを送信したが、1つのトリガーフレームを、同じRUを用いて、AP1とAP3とにブロードキャスト等で送信する構成も可能である。つまり、図8に示したようにOFDMA送信では、SIG1フィールドまではチャネル帯域全体で同一の信号を送信し、SIG1フィールドより後ではRU毎の信号を送信するが、この際、図12のシーケンスでは、AP1とAP3に別々のRUを用いてそれぞれトリガーフレーム12、14を送信した。別の方法として、同じRUを用いて、同じトリガーフレームをAP1とAP3に送信することも可能である。
図13に、この場合のシーケンスの例を示す。AP2は、AP1とAP3に共通のトリガーフレーム16をRU0で送信する。トリガーフレーム16のRAは、ブロードキャストアドレス等とし、2つのPer User Infoフィールドをそれぞれ設ける。一方のPer User InfoフィールドにはAP1に関する情報、他方のPer User InfoフィールドにはAP2に関する情報を設定すればよい。また、AP2は、AP3へは、RU3に加えて、RU2も用いて、データフレーム15を送信する。これにより、図11および図12のシーケンスよりもより多くのデータを送信できる。なお、フレーム11、15、16は同じOFDMAパケットで送信されることから、図8で示したように、SIG1フィールドまでは同一信号が送信される。
図11および図12のシーケンスでは、AP3は、AP4への送信にチャネルCH2を用いたが、チャネルCH1を用いる構成も可能である。この場合、AP3は、AP2がタイミングt2での受信で使用するRUを、トリガーフレーム14などに基づき特定し、特定したRUを避けるように、AP4への送信に用いるRUを決定する。例えば、チャネルCH1が9個のRU(RU0〜RU8)を含む場合を想定する。AP3は、トリガーフレーム14からAP2がRU0〜RU4を使用する可能性があると判断した場合に、AP3は、RU4〜RU8の中から、AP4への送信に使用するRUを選択する。
図11および図12のシーケンスでは、AP2は、AP1へのACKフレーム11を、トリガーフレーム12とトリガーフレーム14とデータフレーム13と同時に送信したが、ACKフレーム11のみを先に送信し(例えばチャネルCH1の全体を使って送信)、そのSIFS後に、トリガーフレーム12とトリガーフレーム14とデータフレーム13とを送信(OFDMA送信)してもよい。
以上、図11および図12のシーケンスによれば、AP1は、AP2がAP3からACKフレーム23を受信するのと同じタイミングで、AP2にフレーム(データフレーム21、トリガーフレーム22)を送信できる。図9で説明した関連技術では、AP2がAP3からACKフレーム59Bを受信するタイミングでは、AP2で干渉する可能性があるため、AP1はフレームを送信できなかった。これに対して、本実施形態では、AP2は、AP3へデータフレーム13を送信するのと同時に、AP3とAP1にそれぞれトリガーフレーム14および12を送信することで、SIFS後のタイミングt2で、AP1とAP3のそれぞれから同時にフレーム送信(OFDMA送信)することを可能にする。したがって、タイミングt2で、AP3がACKフレーム23を送信するのと同時に、AP1はデータフレーム21を送信し、AP2はこれらのフレームを同時に正しく(干渉を生じさせずに)受信することができる。これによりAP1がフレームを送信できない期間(待ち時間)が発生することを抑制できる。ここではAP1の待ち時間に着目したが、他のAPでも同様の効果が得られる。このようにして、システム全体のレイテンシーの低減を図ることができる。
(本実施形態に係る動作シーケンスの第2の例)
図14は、本実施形態に係る動作シーケンスの第2の例を示す図である。以下、本第2の例のシーケンスについて、第1の例のシーケンスとの差分を中心に説明する。重複する説明は適宜、省略する。
図14において、タイミングt1、t3、・・・では、矢印付の実線に示されるAP間の方向に、実線に沿って記されているフレームが送受信される。タイミングt2、t4、・・・では、矢印付きの破線に示されるAP間の方向に、破線に沿って記されているフレームが送受信される。t2は、一例として、t1のSIFS後のタイミング、t3は、一例として、t2のSIFS後のタイミング、t4は、一例として、t3のSIFS後のタイミングであるが、これらに限定されない。実線の方向の動作と、破線の方向の動作とが交互に行われる。
前述した図11および図12の第1の例のシーケンスでは、AP1、AP2およびAP3間では、チャネルCH1のみ用いられたが、本第2の例では、チャネルCH1とチャネルCH2が用いられる。また、AP3、AP4およびAP5間でも、チャネルCH2とチャネルCH1が用いられる。
図14に示されるように、タイミングt1において、AP1がAP2にチャネルCH1で、データフレーム30とトリガーフレーム32とを送信するのと同時に、AP3がAP2にチャネルCH2で、ACKフレーム33とトリガーフレーム34とを同時に送信する。すなわち、AP2は、2つのチャネルCH1、CH2を用いて、AP1とAP3とからOFDMA受信を行う。また、同タイミングt1では、AP3がAP4にチャネルCH2で、データフレーム35とトリガーフレーム36とを送信するのと同時に、AP5がAP4にチャネルCH1で、ACKフレーム37とトリガーフレーム38とを同時に送信する。すなわち、AP4は、2つのチャネルCH1、CH2を用いて、AP3とAP5とからOFDMA受信を行う。AP3の観点で見れば、AP3は、チャネルCH2を用いて、AP2とAP4とへOFDMA送信を行っている。AP3がAP2への送信に使用するRUと、AP3がAP4への送信に使用するRUとは異なる。
SIFS後のタイミングt2では、AP1は、チャネルCH1でAP2からACKフレーム41とトリガーフレーム42とを受信(トリガーフレーム32への応答として)する。このとき同時に、チャネルCH2で図示しない別のAP(例えばさらに下流にAPが存在する場合は、当該APでもよい)または端末から、トリガーフレームを受信してもよい。AP3は、チャネルCH1でAP2からデータフレーム44とトリガーフレーム45とを受信(トリガーフレーム34への応答として)するのと同時に、チャネルCH2でAP4からACKフレーム46とトリガーフレーム47とを受信(トリガーフレーム36への応答として)する。AP5は、AP4からチャネルCH2でデータフレーム48とトリガーフレーム49とを受信(トリガーフレーム38への応答として)する。
なお、各APは、自BSSに属する複数の端末とも通信を行って、中継用のデータを受信等しているものとする。
さらにSIFS後のタイミングt3では、タイミングt1と同じ種類のフレームが、各AP間で送受信される。また、さらにSIFS後のタイミングt4では、タイミングt2と同じ種類のフレームが、各AP間で送受信される。以降、同様にして、動作が繰り返される。
上述した第2の例のシーケンスでは、AP2に着目すると、AP2からの送信は、AP1からの送信と重ならない(AP2の送信時は、AP1は送信しない)ため、AP2は、タイミングt2での送信において、AP1がタイミングt1でAP2への送信に用いたのと同じチャネルCH1を使用する。一方、AP1からAP2への送信と、AP3からAP1への送信は同時に行われるため、AP1がチャネルCH1を使用することから、AP3はAP2への送信に別のチャネルCH2を使用する。つまり、AP2は、送信ではチャネルCH1のみを使用し、受信では、チャネルCH1とCH2の両方を使用する。ここでは、AP2に着目したが、他のAP(両端のAPは除いてもよい)でも、送信時はCH1およびCH2のいずれか一方のチャネルを用い、受信時は、チャネルCH1とCH2の両方を使用する。これにより、各APにおいて、隣接する2つのAPから同時に受信する際に、衝突が発生することを防止できる。なお、AP1の下流側(有線ネットワーク31から遠ざかる側)に別のAPがさらに存在してもよいし、AP5の上流側(有線ネットワーク31に近い側)に別のAPがさらに存在してもよい。これらの場合、AP1またはAP5も、チャネルCH1とCH2の両方を用いて受信を行う。
前述した第1の例のシーケンスでは、図11に示したように、AP3がAP2に、ACKフレーム23およびトリガーフレーム24を送信するためにチャネルCH1を用いつつも、AP1がAP2への送信に使用するRUと異なるRUを用いることで、AP2での干渉を阻止した。(図11および図12参照)。これに対して、本第2の例のシーケンスでは、AP1が送信に使用するチャネルCH1と異なるチャネルCH2を用いることで、AP2での干渉を阻止する。
本第2の例のシーケンスでは、2つのチャネルを用いたが、有線ネットワーク31に近いAPほど、データ送信に使用するチャネル数を増やすようにしてもよい。例えば、AP3からAP4への送信では、3つのチャネル(チャネルCH1、CH2、CH3)、AP4からAP5への送信では、当該3つのチャネルまたは4つのチャネル(CH1、CH2、CH3、CH4)を使用するようにしてもよい。これにより、有線ネットワークの近くほど転送すべきデータ量が増加する場合に、システム全体のレイテンシーを抑制できる。
(本実施形態に係る動作シーケンスの第3の例)
図15は、本実施形態に係る動作シーケンスの第3の例を示す図である。以下、本第3の例のシーケンスについて、第2の例のシーケンスとの差分を中心に説明する。重複する説明は適宜、省略する。
図15(A)は、第2のシーケンス例に係る図14と同じである。この例では、データの転送経路がAP1→AP2→AP3→AP4→AP5となっている。この状態で、経路変更制御により、図15(B)に示すように、AP1の転送先が、AP2からAP3に変更されたとする。経路を変更する場合の例として、AP1とAP2間の通信品質が低下して所定の基準を満たさなくなった場合(例えばAP1からのAP2での受信信号に関して、受信信号のSINR(信号対干渉雑音比)が所定値を下回るなど)があり得る。図15(B)は、AP1の転送先がAP3に変更された場合の動作シーケンスを示している。
図15(B)に示されるように、AP1の転送先がAP3に変更された場合、AP1は、データフレーム30とトリガーフレーム32との送信先(RA)を、AP3に変更する。AP1は、変更前と同じチャネルCH1で、AP3に、データフレーム30とトリガーフレーム32を同時に送信(OFDMA送信)する。AP1は、トリガーフレーム32で、AP3に対して、トリガー応答をチャネルCH1で行うことを指示する情報を設定する。当該情報を設定するフィールドは、一例として、AP3に関連するPer User Infoフィールドであるが、これに限定されない。
AP3は、トリガーフレーム32で指定された情報に基づきAP1への応答をチャネルCH1で行うことを決定する。すなわち、AP3はAP1からの受信及び指定された送信が共にCH1であることから、AP4への送信に使用するチャネルをチャネルCH2からチャネルCH1に変更することを決定する。AP3は、タイミングt2で、チャネルCH1を用いて、AP4にデータフレーム35とトリガーフレーム36とを送信するとともに、AP1にACKフレーム33とトリガーフレーム34とを送信(OFDMA送信)する。なお、AP3は、AP4に送信するトリガーフレーム36に、トリガー応答を変更前と同じチャネルCH2(つまりAP1から受信するチャネルCH1と異なるチャネル)で行うことを指示する情報を設定してもよい。あるいは、トリガー応答するチャネルに変更が無いため、この情報の設定を、省略することも可能である。
AP4は、AP3からトリガーフレーム36およびデータフレーム35をチャネルCH1で受信(OFDMA受信)する。この際、AP4は、AP5から同じチャネルCH1でACKフレーム37およびトリガーフレーム38を受信し、衝突が発生し得る(AP5は、まだチャネルCH1を変更することの指示を受けていない)。この場合、一例として、AP3は、AP4からACKフレームを受信できないことから、AP4へデータフレーム35の再送を行う。また、AP4は、AP5からACKフレームを受信できないことから、データフレーム48を再送し、この際、同時にトリガーフレーム49も送信する。このトリガーフレーム49では、AP5に対し、(AP3からの受信で用いるチャネルCH1と異なる)チャネルCH2でトリガー応答を行うことを指示する情報を設定する。
AP5は、トリガーフレーム49で指定された情報に基づき、AP4への応答を行うチャネルを、チャネルCH2へ変更することを決定する。AP5は、チャネルCH2を用いて、AP4に、ACKフレーム37とトリガーフレーム38とを送信(OFDMA送信)する。AP4では、AP3からのOFDMA受信と、AP5からのOFDMA受信とをそれぞれ異なるチャネルで行うため、AP3およびAP5の双方から送信される信号を正常に受信できる。
図15(C)は、図15(A)の状態において、AP2の転送先が、AP3からAP4に変更された場合を示す。この場合も、図15(B)と同様のアルゴリズムによって、チャネル変更の制御が行われる。具体的には、AP5からAP4への送信に使用するチャネルが、チャネルCH1からチャネルCH2に変更される。つまり、AP4は、経路変更後では、AP2からチャネルCH1でOFDMA受信を行うことから、AP5からOFDMA受信するチャネルを、チャネルCH1とは異なるチャネルCH2に変更する必要があると判断する。この判断に基づき、AP4は、AP5に送信するトリガーフレーム49において、トリガー応答をチャネルCH2で行うことを指示する情報を設定する。
(本実施形態に係る動作シーケンスの第4の例)
図16は、本実施形態に係る動作シーケンスの第4の例を示す図である。図14で説明した第2の例のシーケンスで送受信するフレームと同一または対応するフレームには同一の符号を付してある。以下、図14のシーケンスとの差分を中心に説明する。
図14の第2の例のシーケンスでは、各APがOFDMA送信に使用するチャネルは1つ(CH1およびCH2のうちの1つ)であったが、図16の本シーケンスでは、各APは、2つのチャネルを同時に使ってOFDMA送信する。この際、一方のチャネルでは、下流側の隣接APにACKフレームとトリガーフレームとを送信し、他方のチャネルでは、上流側の隣接APにデータフレームを送信する。例えば、AP2は、チャネルCH2でデータフレーム44をAP3に送信するのと同時に、チャネルCH1でACKフレーム41およびトリガーフレーム42をAP1に送信する。また、各APは、下流側の隣接APから受信したチャネルと同じチャネルを使って、応答を行う。例えばAP3は、AP2からデータフレーム44をチャネルCH2で受信したため、応答(ACKフレーム33とトリガーフレーム34との送信)もチャネルCH2で行う。これにより、AP2はAP3へデータフレーム44を送信する際に、トリガーフレームをAP3へ同時に送信する必要はない(つまり、トリガー応答に使用するチャネルをAP3に指定する必要はない)。ここでは、AP2に着目して説明したが、他のAPでも同様である。
図16の本シーケンスでは、1つのチャネル全体をデータフレーム送信(データ転送)に利用できるため、転送すべきデータ量が多い場合に適している。ただし、多くのチャネルを必要とする。なお、下流側の隣接APへのACKフレームおよびトリガーフレームの送信時(例えばAP2からAP1へのACKフレーム41およびトリガーフレーム42の送信時)に、データフレームも同時に送信してもよい。例えば1つのチャネルが4つのRUを含む場合、ACKフレーム41とトリガーフレーム42とにそれぞれ1つのRUを割り当て、残りの2つのRUでデータフレームを送信してもよい。このことは、前述した、または後述する他の実施形態でも同様である。
(本実施形態に係る動作シーケンスの第5の例)
図17は、本実施形態に係る動作シーケンスの第5の例を示す図である。図16で説明した第4の例のシーケンスで送受信するフレームと同一または対応するフレームには同一の符号を付してある。以下、図16のシーケンスとの差分を中心に説明する。
前述した図16の第4の例のシーケンスでは、各APは、2つのチャネルを用いて下流側の隣接APおよび上流側の隣接APへ同時に送信(OFDMA送信)を行い、2つのチャネルを用いて下流側の隣接APおよび上流側の隣接APから同時に受信(OFDMA受信)を行った。例えば、AP2は、タイミングt2、t4・・・において、チャネルCH1とCH2を用いて、AP1とAP3へ同時に送信し、タイミングt1、t3、・・・において、チャネルCH1とCH2を用いて、AP1とAP3から同時に受信を行った。このように受信と送信とは異なるタイミングで行われた。
これに対して、図17の本シーケンスでは、受信と送信とでそれぞれ異なる2つのチャネルを用いつつ、受信(OFDMA受信)と、送信(OFDMA送信)とを同時に行う。すなわち、各APは、4つのチャネルを用いて、全二重(Full Duplex)通信を行う。本例では、前述した第1〜第4の例のシーケンスとは異なり、タイミングt1、t2、t3、t4・・・のそれぞれで毎回、データフレームの送信(データ転送)が可能である。本例では、送信と受信とのタイミングを区別する必要がないため、矢印付きの破線は図に存在しない。
図17に示すように、AP1はAP2への送信をチャネルCH1で、AP2からの受信をチャネルCH2で同時に行う。
AP2は、AP1への送信をチャネルCH2で、AP3への送信をチャネルCH3で、AP1からの受信をチャネルCH1で、AP3からの受信をチャネルCH4で同時に行う。
AP3は、AP2への送信をチャネルCH4で、AP4への送信をチャネルCH5で、AP2からの受信をチャネルCH3で、AP4からの受信をチャネルCH6で同時に行う。
AP4は、AP3への送信をチャネルCH6で、AP5への送信をチャネルCH7で、AP3からの受信をチャネルCH5で、AP5からの受信をチャネルCH8で同時に行う。
このように、各APは、下流側の隣接APへの送信、上流側の隣接APへの送信、下流側の隣接APからの受信、上流側の隣接APからの受信を、それぞれ異なるチャネル(合計4つのチャネル)で同時に行う。チャネルを多く使用するが、転送すべきデータ量が多い場合には、システム全体のレイテンシーを効率的に抑制できる。なお、AP1とAP5が十分離れており互いに干渉しない関係にある場合には、AP5がAP4への送信にチャネルCH8ではなく、チャネルCH1を使うことができる。つまり、同一チャネルの繰り返し利用も可能である。各APがどのチャネルを使うかは事前に各AP間のネゴシエーションで決まってもよいし、システム仕様で設定されていてもよい。あるいは、キャリアセンスによりアイドルであるチャネルを見つけて、見つけたチャネルを利用する方法も可能である。
図18は、本実施形態に係る動作シーケンスの第5の別の例を示す図である。以下、図17のシーケンスとの差分を中心に説明する。
前述した図17のシーケンスと同様に、各APは全二重通信が可能である。ただし、前述した図17のシーケンスでは、1つのチャネルに含まれるすべてのRUを同じAPに対して用いたが、図18のシーケンスでは、1つのチャネルに含まれるRUを、複数のAPに対して割り当てて使用する。
例えば、AP2は、チャネルCH1を用いて、AP1およびAP3からの受信を同時に行い、チャネルCH2を用いて、AP3とAP1への送信とを同時に行い、かつ、これらの受信と送信とを同時に行う。具体的には、AP1からチャネルCH1のRU4〜RU8でデータフレーム30を受信するのと同時に、AP3からチャネルCH1のRU0〜RU3でトリガーフレーム34とACKフレーム33とを受信する。またAP2は、チャネルCH2のRU4〜RU8を用いてAP3にデータフレーム44を送信するのと同時に、チャネルCH2のRU0〜RU3を用いて、AP1にACKフレーム41とトリガーフレーム42とを送信する。
このように各APは、チャネル単位でなく、RU単位で全二重通信を実施可能である。
(本実施形態に係る動作シーケンスの第6の例)
図19は、本実施形態に係る動作シーケンスの第6の例を示す図である。以下、前述した図14のシーケンス(本実施形態に係る動作シーケンスの第2の例)との差分を中心に説明する。
図19(A)は、前述した図14の第2の例のシーケンスに基づいている。ただし、各APは、上流側の隣接APへはトリガーフレームを送信していない。また、説明の都合上、タイミングt1、t2の時点のシーケンスのみを示している。
AP3が、タイミングt2で、チャネルCH1を用いて、AP2からデータフレーム44を受信する。また、AP3は、AP4から、チャネルCH2で、ACKフレーム46とトリガーフレーム47とを受信する。このとき、AP3が、AP2からの受信のタイミングと、AP4からの受信のタイミングとの差分から、AP2とAP4との同期ずれを検知したとする。
同期ずれの検出方法としては、AP2とAP4から受信したパケットまたはフレームの復号に失敗した場合がある。例えば、物理ヘッダでの復号の失敗、フレームのCRC検査の失敗のいずれの場合もある。また、復号は成功した場合でも、受信タイミングの差が大きい場合(例えば差の大きさが閾値以上の場合など)も、同期ずれの発生を検知してもよい。
図19(B)には、AP3が、AP2とAP4との同期ずれを検知した場合の動作が示されている。AP3は、AP2からの受信をタイミングt2で行ったが、AP4からの受信をタイミング(t2+Δ)で行っている。AP3は、これに起因して、上述した判断により、AP2とAP4との同期ずれを検知する。
AP3は、同期ずれを検知した場合は、AP3は、下流側(データ転送元側)のAP2のタイミングに合わせるように、同期ずれを補正するための動作を行う。AP3は、AP2から受信したタイミングt2の時刻(タイミング2の時刻にAP3がAP2からのパケットの受信を開始したとする)から、ある時間後に、AP4にチャネルCH2で(データフレームではなく)トリガーフレーム51を送信する。具体的に、タイミングt2の時刻に、パケット長(PPDU長)と、一定時間(ここではSIFSとするが別の時間でもよい)とを加算したタイミングt3で、トリガーフレーム51を送信する。なお、パケット長は、予め決められていても良いし、パケットヘッダの復号が出来た場合は、パケットヘッダからパケット長の値を検出してもよい。また、AP4は、AP2に、同じタイミングt3で、同じチャネルCH2を用いて(当然、使用するRUは異なる)トリガーフレーム34を送信する(なお、タイミングt2でデータフレーム44の受信に成功した場合は、トリガーフレーム34とともにACKフレーム33を送信してもよい)。ACKフレーム33を送信しない場合は、AP2はタイミングt2で送信したデータフレーム44の送信に失敗したと判断するため、AP2は、次のタイミングt4(図示せず)で、データフレームを再送する。AP4は、タイミングt3でトリガーフレーム51を受信すると、前回(タイミングt2+Δで)送信したACKフレーム46の送信に失敗した、または失敗した可能性があるとして、次のタイミングt4(図示せず)で、再送のACKフレーム46をトリガーフレーム47とともにチャネルCH2で送信する。
上述した動作では、タイミングt3(タイミングt2の時刻に、パケット長(PPDU長)とSIFSとを加算した時刻)でAP3は、AP4へのトリガーフレーム51と、AP2へのトリガーフレーム34とを送信したが、別の方法で算出したタイミングを用いてもよい。例えば、AP3は、タイミングt2でのAP2からの受信後、無線媒体がビジー状態からアイドル状態になったことを検知したら、その一定時間(SIFS等)後に、送信を行ってもよい。
また上述した動作では、タイミングt3で、AP2にトリガーフレーム34を送信したが、トリガーフレーム34の送信を行わなくてもよい(つまり、タイミングt3でAP2に何も送らない)。AP2は、ACKフレーム33をタイミングt3で受信できないことから、(トリガーフレーム34を受信しなくても)一定時間後の次のタイミングt4で、データフレーム44を再送する。この際、使用するRUは、前回と同じRUなど、事前に定めておいてもよい。
上述した手法によりAP2およびAP4間の同期ずれを補正することで、さらに下流側(転送元側)のAP間(例えばAP1とAP3間)等でも同期ずれが検知されうるが、この場合、AP2が上記した手法で、同期ずれを補正する動作が行われる。この結果、AP3で再度同期ずれが検出される場合もあり得るが、AP3で再度、同期ずれが補正される。この後、さらに、有線ネットワーク側へ向けて順次、各APで同期ずれが補正され、システム全体として同期ずれが解消される。
図20は、APに搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。以下の説明で端末と言うときは、特に非APの端末に固有の動作を行わない限り、APを指してもよい。
APの無線通信装置は、アンテナ12A、12B、12C、12Dと、制御部101と、送信部102と、受信部103と、バッファ104とを備えている。アンテナの個数はここでは4つであるが、これに限定されない。アンテナの個数は1つでもよい。
アンテナ12A〜12Dは、一例として指向性可変でもよいし、指向性可変でなくてもよい。ここでは指向性可変アンテナであるとする。指向性の設定は制御部101により行う。個々のアンテナが異なる指向性を有し、使用するアンテナを切り替えることで指向性を制御してもよいし、アンテナ12A〜12Dの全体の合成で指向性を制御してもよい。一例として、オムニ指向性、図2(A)の指向性、図2(B)の指向性間を切り替え可能である。一例として、自BSS内の端末と通信するときは図2(A)の指向性、隣接するAPと通信するときは図2(B)の指向性を用いても良い。あるいは、常時、オムニ指向性を用いてもよい。
制御部101は、端末との通信を制御する制御部またはベースバンド集積回路に対応し、送信部102と受信部103は、アンテナ12A〜12Dを介して、フレームを送受信する無線通信部またはRF(Radio Frequency)集積回路を形成する。制御部101の処理と、および送信部102と受信部103のデジタル領域の処理の全部または一部は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。APは、制御部101、送信部102および受信部103の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えてもよい。
バッファ104は、上位層と制御部101との間で、フレームまたはデータ等を受け渡しするための記憶部である。バッファ104はDRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
上位層は、別のネットワークまたは他のAPから受信したフレームまたはそのペイロード(データ等)を、非APの端末またはAPへの中継のため、バッファ104に格納してもよい。また、上位層は、非APの端末またはAPから受信したフレームまたはそのペイロード(データ等)を、バッファ104を介して受けとってもよい。
上位層は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を行ってもよい。または、TCP/IPやUDP/IPの処理を制御部101で行い、上位層では、それより上位のアプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部101は、主としてMAC層の処理、および物理層の処理の一部または全部を行う。物理層の処理には、OFDMAの処理を含む。OFDMA以外のマルチユーザ通信、例えば、MU−MIMO等の処理を、制御部101は実行してもよいし、OFDMAとMU−MIMOを組み合わせた方式を実行してもよい。また、制御部101は、AP間の効率的なデータ転送を行うため、前述した第1の例から第6の例の動作シーケンスに対応する動作を行う。
制御部101は、送信部102および受信部103を介して、フレーム(より詳細にはフレームに物理ヘッダを付加した物理パケット)を送受信する。また制御部101は、定期的にAPのBSS(Basic Service Set)の属性および同期情報等を通知するため、ビーコンフレームを送信するよう制御してもよい。また、制御部101は、クロックを生成するクロック生成部を含み、クロック生成部で生成するクロックを利用して、内部時間を管理してもよい。制御部101は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。あるいは、制御部101は、外部のクロック生成部で生成したクロックの入力を受け、当該クロックを利用して、内部時間を管理してもよい。
制御部101は、自BSSに属する端末からのアソシエーション要求を受けて、アソシエーションプロセスを行い、お互いの能力・属性等の必要な情報を交換することで、当該端末と無線リンクを確立する。必要に応じて、事前に端末との間で認証プロセスを行ってもよい。制御部101は、端末の能力情報として、OFDMAの対応可否の情報を取得してもよい。能力情報は、アソシエーションプロセス時でなく、その後の任意のタイミングで、端末に送信を要求するフレームを送信し、その応答として取得してもよい。
制御部101は、バッファ104を定期的に確認することで、ダウンリンク送信用のデータが存在するか等、バッファ104の状態を把握する。または、制御部101は、バッファ104等の外部からのトリガーにより、バッファ104の状態を確認する。
制御部101は、フレーム(より詳細にはフレームに物理ヘッダを付加した物理パケット)を生成し、フレームを送信する際、一例として、送信前にCSMA/CAに従って、キャリアセンスを行って、キャリアセンス結果がアイドル状態であることを示す場合(CCA値が閾値以下の場合)、無線媒体へのアクセス権を獲得する。制御部101は、フレームに符号化、およびMCSに基づく変調処理などの処理を行い、送信部102に出力する。送信部102は、入力されたフレーム(より詳細には物理ヘッダを付加した物理パケット)に、DA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行い、これらにより得られた信号をプリアンプで増幅して、アンテナ12A〜12Dから空間に電波として放射する。
制御部101は、送信するフレームとして、トリガーフレーム(図10参照)を生成してもよい。トリガーフレームでは、前述したように、1つまたは複数のAP(または端末)を指定する情報、およびパラメータ情報(送信に使用するRUまたはチャネルまたはこれらの両方等)を指定する。パラメータ情報として、送信させるフレームの種別(データフレーム、ACKフレームなど)や、送信タイミングを指定してもよい。
アンテナ12A〜12Dで受信された信号は、受信部103において、それぞれアンテナに対応する受信系統ごとに処理される。各アンテナの受信信号は、それぞれ受信系統において低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)により増幅され、周波数変換(ダウンコンバート)され、フィルタリング処理で所望帯域成分が抽出される。各抽出された信号は、さらにAD変換によりデジタル信号に変換されて、制御部101に入力される。一例として、各受信系統のデジタル信号をダイバーシティ技術により合成してもよい。なお合成はデジタル信号に変換される前のアナログ信号の段階で行ってもよい。OFDMAの場合は、RU毎またはチャネル毎に成分が抽出され、制御部101に入力されてもよい。
制御部101は、入力された信号に復調および誤り訂正復号等の処理を行ってフレームを取得する。OFDMA受信の場合は、RU毎またはチャネル毎の復調および誤り訂正復号等を行って、各RUまたは各チャネルのフレームを取得する。MU−MIMO受信の場合は、送信元端末毎の空間分離信号を用いて受信信号を分離し、複数のフレームを取得してもよい。制御部101は、受信したフレームのCRC検査(アグリゲーションフレームの場合は、アグリゲーションフレーム内の複数のサブフレームごとにCRC検査)を行う。制御部101は、各端末からのフレームの受信完了から予め定めた時間(SIFS等)後に、送達確認応答フレーム(より詳細には物理ヘッダを付加したパケット)を送信する。フレームがアグリゲーションフレームの場合は、送達確認応答フレームはBAフレームである。また、制御部101は、他のAPからトリガーフレームを受信し、トリガーフレームで自APが指定されている場合は、自APに指定されたパラメータ情報(RUまたはチャネル等の周波数リソースの情報、PPDU長の情報、フレームの種別の情報など)に従って、1つまたは複数のフレーム(アグリゲーションフレームでもよい)を生成および送信する。送信部102は、送達確認応答フレームにDA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行い、これらにより得られた信号をプリアンプで増幅して、複数のアンテナから空間に電波として放射する。
制御部101は、フレームで各端末に通知する情報、または各端末から通知された情報、またはこれらの両方を格納するための記憶装置にアクセスして当該情報を読み出してもよい。記憶装置は、内部メモリでも、外部メモリでもよく、揮発性メモリでも不揮発メモリでもよい。また、記憶装置は、メモリ以外に、SSD、ハードディスク等でもよい。
上述した、制御部101と送信部102の処理の切り分けは一例であり、上述した形態とは別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理およびDA変換までは、制御部101で行い、DA変換より後の処理を、送信部102で行うようにしてもよい。制御部101と受信部103の処理の切り分けも同様に、AD変換より前までの処理を、受信部103で行い、AD変換後の処理を含むデジタル領域の処理を、制御部101で行うようにしてもよい。
一例として、本実施形態に係るベースバンド集積回路は、送信時のデジタル領域の処理およびDA変換を行う部分と、受信時のAD変換以降の処理を行う部分とに対応し、RF集積回路は、送信時のDA変換より後の処理を行う部分と、受信時のAD変換より前の処理を行う部分に対応する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、ベースバンド集積回路およびRF集積回路のうち、少なくともベースバンド集積回路を含む。ここで述べた以外の方法でブロック間の処理、あるいはベースバンド集積回路およびRF集積回路間の処理を切り分けてもよい。
図21は、本実施形態に係るAP(中継局)の動作例のフローチャートである。本APは、自局の下流側に存在する隣接AP(または自局のBSSに属する端末でもよい)から、データを含むフレーム(データフレーム_Aとする)を受信する(S101)。
本APは、受信したデータフレーム_Aに含まれるデータを抽出し、当該データを転送するため、データフレーム_Aの送信元のAPと異なるAP(より詳細には、自局の上流側に存在する隣接AP)を宛先とする、抽出したデータを含むデータフレーム(データフレーム_Bとする)を生成する。生成したデータフレーム_Bと、データフレーム_Aの送信元APを指定したトリガーフレーム(トリガーフレーム_Aとする)とを、OFDMA(周波数多重)で同時に送信する(S102)。APは、データフレーム_Aに対する送達確認応答フレームを、当該OFDMAでさらに同時に送信してもよいし、当該OFDMAに先だって先に送信することも可能である。なお、データフレーム_Aに含まれるデータが自AP宛のものである場合は、データを自AP内のバッファに格納し、当該データの転送は不要である。
ここで、本APは、トリガーフレーム_Aにおいて、送信元APにトリガー応答で使用する周波数リソース(RUまたはチャネルまたはこれらの両方)を指定する。指定する周波数リソースは、データフレーム_Bの送信先APが、そのSIFS後に送信する送達確認応答フレーム(ACKフレーム等)で用いる周波数リソースと異なるようにする。ここでは、送達確認応答フレームの送信に用いられる周波数リソースを本APが予め把握している(例えば予め定めた周波数リソースで送達確認応答フレームが返信されるなど)ものとする。なお、本APは、トリガーフレーム_Aにおいて、上記データフレーム_Aの送信元APに対して、トリガー応答のタイミング(次の送信タイミング)を明示的に指定してもよい。
APは、OFDMA送信から一定時間後(SIFS後等)に、データフレーム_Aの送信元APから送信されるデータフレーム(データフレーム_Cとする)と、データフレーム_Bの送信先APから送信される、データフレーム_Bに対する送達確認応答フレーム(ACKフレーム等)とを、OFDMA(周波数多重)で同時に受信する(S103)。
上記のフローチャートの動作では、本APの上流側の隣接APは、データフレーム_Bに応答して送達確認応答フレーム(ACKフレーム)を送信したが、ACKフレームではなく、他のフレームを送信してもよい。例えば、データフレーム_Bが送達確認応答を要求しないフレームの場合は、上流側の隣接APは、データフレームなど、他の種類のフレームを送信してもよい。
また、本APは、トリガーフレーム_Aで、データフレーム_Aの送信元AP(下流側の隣接AP)を指定したが、上流側の隣接APをさらに指定してもよい。これにより、上流側のAPによる次のフレーム送信のタイミングおよび使用する周波数リソース(RUまたはチャネルまたはこれらの両方)等を、トリガーフレーム_Aで制御することもできる。この際、トリガーフレーム_Aで指定する周波数リソースのリソース量に関して、下流側の隣接APに指定するリソース量が、上流側の隣接APに指定するリソース量より多くてもよい。これにより、上流側の隣接APが送達確認応答フレームを送信する場合に、下流側のAPから多くの量のデータを含むデータフレームを受信でき、データ転送の効率を向上させることができる。
また、本APから上流側の隣接APに送信するトリガーフレームが、本APから下流側の隣接APに送信するトリガーフレームと異なるフレーム(トリガーフレーム_Bとする)であってもよい。この場合、上流側の隣接APへ送信するトリガーフレーム_Bを、上記データフレーム_Bと、下流側の隣接APへ送信するトリガーフレーム_Aとともに、OFDMAで同時に送信すればよい。この場合、トリガーフレーム_Aで指定する周波数リソースのリソース量が、トリガーフレーム_Bで指定する周波数リソースのリソース量より多くてもよい。これにより、上記と同様の理由により、データ転送の効率を向上させることができる。
本APは、下流側の隣接APから受信したデータフレーム_Aに対する送達確認応答フレームを、下流側の隣接APを指定したトリガーフレーム_Aと一緒にアグリゲートしたアグリゲーションフレームを送信してもよい。また、本APは、上流側の隣接APに上記トリガーフレーム_Bを送信する場合に、当該トリガーフレーム_Bをデータフレーム_Bと一緒にアグリゲートしたアグリゲーションフレームを送信してもよい。
本APは、下流側の隣接APおよび上流側の隣接APとの通信に関し、送信と受信とで異なるチャネルを用いてもよい。この際、送信では、下流側の隣接APへの送信と、上流側の隣接APへの送信とで同じチャネルを用いてもよいし、互いに異なるチャネルを用いてもよい。また、受信では、下流側の隣接APからの受信と、上流側の隣接APからの受信とで同じチャネルを用いてもよいし、互いに異なるチャネルを用いてもよい。
本APは、下流側の隣接APを指定するトリガーフレーム_Aに応答して送信されるフレームの受信タイミングと、データフレーム_Bおよびトリガーフレーム_Bの少なくとも一方に応答して送信されるフレームの受信タイミングとのずれが検知された場合に、同期ずれを補正する動作を行ってもよい。すなわち、上記トリガーフレーム_Aに応答して送信されたフレームの受信タイミングから、予め定めた方法で算出した時間後のタイミングで、上流側の隣接APの次の送信タイミングおよび使用する周波数リソースを制御する、当該上流側の隣接APを指定するトリガーフレーム(トリガーフレーム_Cとする)を送信してもよい。
図22は、端末(非APの端末)に搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。
無線通信装置は、制御部201と、送信部202と、受信部203と、少なくとも1つのアンテナ1と、バッファ204とを備えている。制御部201は、APとの通信を制御する制御部またはベースバンド集積回路に対応し、送信部202と受信部203は、フレームを送受信する無線通信部またはRF集積回路に対応する。制御部201の処理と、送信部202と受信部203のデジタル領域の処理の全部または一部とは、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。端末は、制御部201、送信部202および受信部203の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えてもよい。
バッファ204は、上位層と制御部201との間で、フレームまたはデータ等を受け渡しするための記憶部である。バッファ204はDRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
上位層は、他の端末、AP、またはサーバ等の他のネットワーク上の装置に送信するフレームまたはそのペイロード(データ等)を生成して、バッファ204に格納したり、他の端末、APまたは装置等から受信したフレームまたはそのペイロードを、バッファ204を介して制御部201から受け取ったりする。上位層は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を行ってもよい。また、TCP/IPやUDP/IPは制御部201で処理し、上位層は、これより上位のアプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部201は、主としてMAC層の処理、および物理層の処理の一部または全部を行う。制御部201は、送信部202および受信部203を介して、APとフレームを送受信することで、APとの通信を制御する。また、制御部201は、クロックを生成するクロック生成部を含み、クロック生成部で生成するクロックを利用して、内部時間を管理してもよい。制御部201は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。あるいは、制御部201は、外部のクロック生成部で生成してクロックの入力を受け、当該クロックを利用して、内部時間を管理してもよい。
制御部201は、一例としてビーコンフレームを受信して、APのBSSの属性および同期情報を把握した後、APにアソシエーション要求を行ってアソシエーションプロセスを行う。これにより、お互いの能力・属性等の必要な情報を交換することで、当該APと無線リンクを確立する。必要に応じて、事前にAPとの間で認証プロセスを行ってもよい。制御部201は、端末の能力情報として、自端末が備えるアンテナの本数を送信してもよい。能力情報は、アソシエーションプロセス時に送信する他、APから能力情報の取得要求を受けたときに送信してもよい。
制御部201は、バッファ204を定期的に確認することで、アップリンク送信するデータが存在するか等、バッファ204の状態を把握する。または、制御部201は、バッファ204等の外部からのトリガーによりバッファ204の状態を確認する。制御部201は、バッファ204にデータの存在を確認したら、CSMA/CA等に基づき無線媒体へのアクセス権(送信権)を獲得後、当該データを含むフレーム(より詳細には物理ヘッダを付加した物理パケット)を、送信部202およびアンテナ1を介して送信してもよい。
送信部202は、制御部201から入力されたフレームにDA変換や、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行い、これらにより得られた信号をプリアンプで増幅して、1つまたは複数のアンテナから空間に電波として放射する。なお、複数のアンテナを備える場合、ビームフォーミングでフレームを送信してもよい。
アンテナ1で受信された信号は、受信部203において処理される。受信された信号は、受信部203においてLNAにより増幅され、周波数変換(ダウンコンバート)され、ファイルタリング処理で所望帯域成分が抽出される。抽出された信号は、さらにAD変換によりデジタル信号に変換されて、制御部201に出力される。制御部201では、復調、誤り訂正復号、物理ヘッダの処理が行われ、データフレーム等のフレームが取得される。OFDMAの場合は、自装置用のRUまたはチャネルを特定し、特定したRUまたはチャネルの信号成分を抽出して、復調等の処理を行う。フレームのMACヘッダの受信先アドレス(Address1)が自端末のMACアドレスに一致すれば、当該フレームを自端末宛のフレームとして処理する。一致しなければ、当該フレームを廃棄する。
制御部201は、受信したフレームのCRC検査(アグリゲーションフレームの場合は、アグリゲーションフレーム内の複数のサブフレームごとにCRC検査)を行う。制御部201は、フレームの受信完了からSIFS等の一定時間後に、送達確認応答フレームを、送信部202を介して送信する。また、制御部201は、APからRTSフレームを受信した場合は、その送達確認応答フレームとして、CTSフレームを送信する。また、制御部201は、APからトリガーフレームを受信し、トリガーフレームで自端末が指定されている場合は、自端末に指定されたパラメータ情報(RUまたはチャネル等の周波数リソースの情報、PPDU長の情報、フレームの種別の情報など)に従って、フレーム(アグリゲーションフレームでもよい)を生成および送信する。
制御部201は、データフレーム等のフレームをAPに送信した場合、送信完了からSIFS等の一定時間後、APから送信される送達確認応答フレーム(ACKフレームまたはBAフレーム等)を、受信部203を介して受信する。制御部201は、送達確認応答フレームに基づき、データフレーム(アグリゲーションフレームを送信した場合は、アグリゲーションフレームにアグリゲートされていた個々のサブフレーム)の送信に成功したかを判断する。
制御部201は、APに通知する情報、またはAPから通知した情報、またはこれらの両方を格納するための記憶装置にアクセスして情報を読み出してもよい。記憶装置は、内部メモリでも、外部メモリでもよく、揮発性メモリでも不揮発メモリでもよい。また、記憶装置は、メモリ以外に、SSD、ハードディスク等でもよい。
上述した、制御部201と送信部202の処理の切り分けは一例であり、上述した形態とは別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理およびDA変換までは、制御部201で行い、DA変換より後の処理を、送信部202で行うようにしてもよい。制御部201と受信部203の処理の切り分けも同様に、AD変換より前までの処理を、受信部203で行い、AD変換後の処理を含むデジタル領域の処理を、制御部201で行うようにしてもよい。
一例として、本実施形態に係るベースバンド集積回路は、送信時のデジタル領域の処理およびDA変換を行う部分と、受信時のAD変換以降の処理を行う部分とに対応し、RF集積回路は、送信時のDA変換より後の処理を行う部分と、受信時のAD変換より前の処理を行う部分に対応する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、ベースバンド集積回路およびRF集積回路のうち、少なくともベースバンド集積回路を含む。ここで述べた以外の方法でブロック間の処理、あるいはベースバンド集積回路およびRF集積回路間の処理を切り分けてもよい。
なお、本端末が、指向性制御可能な複数のアンテナを備え、アンテナの指向性制御を行ってもよい。
(第2の実施形態)
図23は、本実施形態に係る基地局(アクセスポイント)400の機能ブロック図である。このアクセスポイントは、通信処理部401と、送信部402と、受信部403と、アンテナ42A、42B、42C、42Dと、ネットワーク処理部404と、有線I/F405と、メモリ406とを備えている。アクセスポイント400は、有線I/F405を介して、サーバ407と接続されている。通信処理部401およびネットワーク処理部404の少なくとも前者は、第1の実施形態で説明した制御部と同様な機能を有している。送信部402および受信部403は、第1の実施形態で説明した送信部および受信部と同様な機能を有している。または、送信部402および受信部403が、第1の実施形態の送信部および受信部のアナログ領域の処理に対応し、第1の実施形態の送信部および受信部のデジタル領域の処理は、通信処理部401に対応してもよい。ネットワーク処理部404は、上位処理部と同様な機能を有している。ここで、通信処理部401は、ネットワーク処理部404との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401とのデータ交換、メモリ406とのデータ書き込み・読み出し、および、有線I/F405を介したサーバ407との通信を制御する。ネットワーク処理部404は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理やアプリケーション層の処理を行ってもよい。ネットワーク処理部の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
一例として、通信処理部401は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部402と受信部403は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。通信処理部401とネットワーク処理部404とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。送信部402および受信部403のデジタル領域の処理を行う部分とアナログ領域の処理を行う部分とが異なるチップで構成されてもよい。また、通信処理部401が、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を実行するようにしてもよい。また、アンテナの個数はここでは4つであるが、少なくとも1つのアンテナを備えていればよい。
メモリ406は、サーバ407から受信したデータや、受信部403で受信したデータの保存等を行う。メモリ406は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ406が、基地局400の外部にあってもよい。
有線I/F405は、サーバ407とのデータの送受信を行う。本実施形態では、サーバ407との通信を有線で行っているが、サーバ407との通信を無線で実行するようにしてもよい。
サーバ407は、データの送信を要求するデータ転送要求を受けて、要求されたデータを含む応答を返す通信装置であり、例えばHTTPサーバ(Webサーバ)、FTPサーバ等が想定される。ただし、要求されたデータを返す機能を備えている限り、これに限定されるものではない。PCやスマートフォン等のユーザが操作する通信装置でもよい。また、基地局400と無線で通信してもよい。
基地局400のBSSに属するSTAが、サーバ407に対するデータの転送要求を発行した場合、このデータ転送要求に関するパケットが、基地局400に送信される。基地局400は、アンテナ42A〜42Dを介してこのパケットを受信し、受信部403で物理層の処理等を、通信処理部401でMAC層の処理等を実行する。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401から受信したパケットの解析を行う。具体的には、宛先IPアドレス、宛先ポート番号等を確認する。パケットのデータがHTTP GETリクエストのようなデータ転送要求である場合、ネットワーク処理部404は、このデータ転送要求で要求されたデータ(例えば、HTTP GETリクエストで要求されたURLに存在するデータ)が、メモリ406にキャッシュ(記憶)されているかを確認する。メモリ406には、URL(またはその縮小表現、例えばハッシュ値や、代替となる識別子)とデータとを対応づけたテーブルが格納されている。ここで、データがメモリ406にキャッシュされていることを、メモリ406にキャッシュデータが存在すると表現する。
メモリ406にキャッシュデータが存在しない場合、ネットワーク処理部404は、有線I/Fを405介して、サーバ407に対してデータ転送要求を送信する。つまり、ネットワーク処理部404は、STAの代理として、サーバ407へデータ転送要求を送信する。具体的には、ネットワーク処理部404は、HTTPリクエストを生成し、TCP/IPヘッダの付加などのプロトコル処理を行い、パケットを有線I/F405へ渡す。有線I/F405は、受け取ったパケットをサーバ407へ送信する。
有線I/F405は、データ転送要求に対する応答であるパケットをサーバ407から受信する。ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して受信したパケットのIPヘッダから、STA宛のパケットであることを把握し、通信処理部401へパケットを渡す。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。ここで、ネットワーク処理部404は、サーバ407から受信したデータを、URL(またはその縮小表現)と対応づけて、メモリ406にキャッシュデータとして保存する。
メモリ406にキャッシュデータが存在する場合、ネットワーク処理部404は、データ転送要求で要求されたデータをメモリ406から読み出して、このデータを通信処理部401へ送信する。具体的には、メモリ406から読み出したデータにHTTPヘッダ等を付加して、TCP/IPヘッダの付加等のプロトコル処理を行い、通信処理部401へパケットを送信する。このとき、一例として、パケットの送信元IPアドレスは、サーバと同じIPアドレスに設定し、送信元ポート番号もサーバと同じポート番号(通信端末が送信するパケットの宛先ポート番号)に設定する。したがって、STAから見れば、あたかもサーバ407と通信をしているかのように見える。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。
このような動作により、頻繁にアクセスされるデータは、メモリ406に保存されたキャッシュデータに基づいて応答することになり、サーバ407と基地局400間のトラフィックを削減できる。なお、ネットワーク処理部404の動作は、本実施形態の動作に限定されるものではない。STAの代わりにサーバ407からデータを取得して、メモリ406にデータをキャッシュし、同一のデータに対するデータ転送要求に対しては、メモリ406のキャッシュデータから応答するような一般的なキャッシュプロキシであれば、別の動作でも問題はない。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、上述したいずれかの実施形態の基地局として適用することが可能である。上述したいずれかの実施形態で使ったフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行して
もよい。また、上述したいずれかの実施形態の基地局が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。上述したいずれかの実施形態において、アクセスポイントが送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばデータのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。また、端末宛のデータの有無の情報を含んでもよい。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、上述したいずれかの実施形態の基地局として適用することが可能である。本実施形態では、キャッシュ機能を備えた基地局について説明を行ったが、図23と同じブロック構成で、キャッシュ機能を備えた端末(STA)を実現することもできる。この場合、有線I/F405を省略してもよい。上述したいずれかの実施形態における端末によるフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、上述したいずれかの実施形態の端末が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。上述したいずれかの実施形態において、端末が送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えばデータのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。また、端末宛のデータの有無の情報を含んでもよい。
(第3の実施形態)
図24は、端末(非アクセスポイントの端末)またはアクセスポイントの全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末またはアクセスポイントは、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、前述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルとを含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等でもよい。
無線LANモジュール148(または無線通信装置)は、IEEE802.11に加え、LTE(Long Term Evolution)またはLTE−Advanced(standards for mobile phones)のような他の無線通信規格の機能を備えていてもよい。
図25は、無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す。この構成は、無線通信装置が非アクセスポイントの端末およびアクセスポイントのいずれに搭載される場合にも適用可能である。つまり、前述したいずれかの実施形態における無線通信装置の具体的な構成の一例として適用できる。この構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(217、232〜235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、本実施形態に係る発振器に対応する。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated
Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末またはアクセスポイントに通知する情報、または端末またはアクセスポイントから通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理(MIMO変調を含んでもよい)など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。
これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)224は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側の低雑音増幅器(LNA)234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。なお、バラン135とLNA234の順番を逆にした構成でもよい。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理(MIMO復調を含んでもよい)等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
アンテナ247は、指向性可変アンテナでもよい。この場合、指向性パターンの切り替え制御は、ベースバンド回路212またはCPU215等が行ってもよい。
(第4の実施形態)
図26は、第4の実施形態に係る端末(STA)500の機能ブロック図である。このSTA500は、通信処理部501と、送信部502と、受信部503と、アンテナ51Aと、アプリケーションプロセッサ504と、メモリ505と、第2無線通信モジュール506とを備えている。基地局(AP)が同様の構成を有しても良い。
通信処理部501は、第1の実施形態で説明した制御部と同様な機能を有している。送信部502および受信部503は、第1の実施形態で説明した送信部および受信部と同様な機能を有している。または、送信部502および受信部503が、第1の実施形態で説明した送信部および受信部のアナログ領域の処理に対応し、第1の実施形態で説明した送信部および受信部のデジタル領域の処理は、通信処理部501に対応してもよい。ここで、通信処理部501は、アプリケーションプロセッサ504との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
アプリケーションプロセッサ504は、通信処理部501を介した無線通信、メモリ505とのデータ書き込み・読み出し、および、第2無線通信モジュール506を介した無線通信を制御する。また、アプリケーションプロセッサ504は、Webブラウジングや、映像や音楽などのマルチメディア処理など、STAにおける各種処理も実行する。アプリケーションプロセッサ504の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
メモリ505は、受信部503や第2無線通信モジュール506で受信したデータや、アプリケーションプロセッサ504で処理したデータの保存等を行う。メモリ505は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等がであってもよい。メモリ505が、アクセスポイント500の外部にあってもよい。
第2無線通信モジュール506は、一例として、図24または図25で示した無線LANモジュールと同様な構成を有する。第2無線通信モジュール506は、通信処理部501、送信部502、受信部503で実現される無線通信とは異なる方法で無線通信を実行する。例えば、通信処理部501、送信部502、受信部503がIEEE802.11規格に沿った無線通信である場合、第2無線通信モジュール506は、Bluetooth(登録商標)、LTE、Wireless HDなど、他の無線通信規格に沿った無線通信を実行してもよい。また、通信処理部501、送信部502、受信部503が2.4GHz/5GHzで無線通信を実行し、第2無線通信モジュール506が60GHzで無線数新を実行すうようにしてもよい。
なお、この例では、アンテナの個数はここでは1つであり、送信部502・受信部503と、第2無線通信モジュール506とでアンテナを共有している。ここで、アンテナ51Aの接続先を制御するスイッチを設けることで、アンテナを共有してもよい。また、複数のアンテナを備え、送信部502・受信部503と、第2無線通信モジュール506とで別のアンテナを使用するようにしてもよい。
一例として、通信処理部501は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部502と受信部503は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。ここで、通信処理部501とアプリケーションプロセッサ504とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。さらに、第2無線通信モジュール506の一部とアプリケーションプロセッサ504とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。
アプリケーションプロセッサは、通信処理部501を介した無線通信および第2無線通信モジュール506を介した無線通信の制御を行う。
(第5の実施形態)
図27(A)および図27(B)は、本実施形態に係る無線端末の斜視図である。図27(A)の無線端末はノートPC301であり、図27(B)の無線端末は移動体端末321である。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた無線端末に搭載されていた無線通信装置、またはアクセスポイントに搭載されていた無線通信装置、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等にも搭載可能である。
また、無線端末またはアクセスポイント、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図28に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線端末またはアクセスポイント、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置355を利用する。なお、図28では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第6の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る制御部または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係るアクセスポイントあるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、アクセスポイントに搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第7の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第8の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第9の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、無線通信装置における送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第10の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第11の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第12の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第13の実施形態)
本実施形態では、上述したいずれかの実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第14の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockACKフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std
802.11ac−2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマーを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマー(例えばデータフレーム用の再送タイマー)を起動し、第1のタイマーが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマーは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマーが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。第1のタイマーと同様、第2のタイマーでも、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマーを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマーを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマーが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。この場合も、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマーは、ここでは第2のタイマーとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマーを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)などがある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category:AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に起動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図29に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを起動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。
なお、各実施形態で記載されているフレームは、Null Data Packetなど、IEEE802.11規格または準拠する規格で、パケットと呼ばれるものを指してもよい。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。また、回路は、単一チップに配置された複数の回路でもよいし、複数のチップまたは複数の装置に分散して配置された1つ以上の回路でもよい。
また本明細書において “a,bおよび(または)cの少なくとも1つ”は、a,b,c,a−b, a−c,b−c,a−b−cの組み合わせだけでなく、a−a,a−b−b,a−a−b−b−c−cなどの同じ要素の複数の組み合わせも含む表現である。また、a−b−c−dの組み合わせのように、a,b,c以外の要素を含む構成もカバーする表現である。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。