実施の形態の一態様に係る校正装置は、車両の荷重を計測する荷重計を校正する校正装置であって、検出部と、校正部とを備える。検出部は、車両の荷重によって走行路に生じる変位に対応した変位量を検出する。校正部は、検出部が検出した変位量を集計して、変位量のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて車両の荷重を算出するための変位係数を更新する。
これにより、この校正装置は、一般車両の荷重の計測のみから、荷重計が荷重を計測する際に使用する変位係数を校正することができる。
このため、荷重計の校正を低コストかつ頻繁に行うことが可能になる。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されても良く、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されても良い。
以下、本開示の一態様に係る校正装置の具体例について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本開示は、請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本開示の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
(実施の形態1)
ここでは、本開示の一態様として、一般車両の走行路に設置された荷重計測システムについて説明する。
ここで、校正装置は、荷重計測システムを構成する荷重計に組み込まれて動作する場合を想定している。以下、図面を参照しながら本開示に係る荷重計および校正装置について説明する。
[1−1.構成]
図1は、実施の形態1に係る荷重計200が車両102の軸重を計測する様子の一例を模式的に示す図である。図1に示すように、実施の形態1に係る荷重計測システム1は、撮像装置101と荷重計200とを含む。
ここでは、例えば、荷重計200は、車両102が走行する走行路103を撮像する撮像装置101に接続される。そして、荷重計200には、撮像装置101によって走行路103が撮像された複数の撮像画像が入力される。荷重計200は、入力された撮像画像を用いて、車両102の軸重を算出する際に使用する変位係数を校正する。車両102は例えばトラックであり、走行路103は例えばアスファルト製の道路である。
図2は、荷重計200の構成を示すブロック図である。図2に示される通り、荷重計200は、入力部210と、軸重算出部240と、校正装置300とを含む。校正装置300は、軸特定部220と、速度算出部230と、校正部250と、検出部260と、記憶部270と、報知部280とを含む。さらに、検出部260は、軸重位置特定部261と、変位量検出部262とを含む。校正装置300は、車両の軸重を計測する荷重計200を校正する校正装置である。
荷重計200は、例えば、マイクロプロセッサ(図示せず)とメモリ(図示せず)とを備えるコンピュータ(図示せず)において、メモリに記憶されたプログラムをマイクロプロセッサが実行することによって実現される。
入力部210は、撮像装置101によって走行路が撮像された複数の撮像画像の入力を受け付ける。ここでは、入力部210は、例えば、撮像画像として、4096×2160ピクセルのデジタル画像の入力を受け付ける。入力部210は、受付けた撮像画像を、軸特定部220、速度算出部230、軸重位置特定部261、および変位量検出部262に出力する。
撮像画像の入力は、無線又は有線による通信、もしくは、記録媒体を介して行われる。
検出部260は、所定の地点において、車両が通過することによって走行路の路面に生じる変位に対応した変位量を検出する。
軸重位置特定部261は、入力部210によって受け付けられた撮像画像に車両が含まれる場合に、その撮像画像における、その車両の軸重位置を特定する。より具体的には、軸重位置特定部261は、撮像画像に対して画像認識処理を行い、撮像画像に車両が含まれるか否かを判定する。そして、車両が撮像画像に含まれる場合には、軸重位置特定部261は、さらなる画像認識処理により、その車両のタイヤを認識する。そして、軸重位置特定部261は、そのタイヤの最下点に対応する走行路上の領域を軸重位置として特定する。軸重位置特定部261は、特定した軸重位置を、校正部250および変位量検出部262に出力する。
変位量検出部262は、入力部210によって受け付けられた撮像画像を用いて、軸重が加えられたことによって走行路に生じる変位に対応した、その撮像画像における変位量を検出する。変位量検出部262は、特に、軸重位置特定部261から軸重位置が入力された場合に、その特定された軸重位置における変位に対応した変位量の検出を行う。変位量検出部262は、入力部210によって受け付けられた複数の撮像画像のうち、走行路に変位が生じていない撮像画像と、走行路に変位が生じている撮像画像とを比較することで、その変位に対応した変位量を検出する。変位量検出部262は、ブロックマッチング、相関法、またはオプティカルフローを用いることで、撮像画像間の変位量を検出できる。変位量検出部262は、例えば、撮像画像間における、走行路上の同一地点に対応する画素位置の差を示す画素数を変位量として算出する。また、走行路に変位が生じていない撮像画像は、車両が存在しない状態で走行路があらかじめ撮像された撮像画像であっても良いし、時間的に連続して走行路が撮像された複数の撮像画像において画像変化量が一定以下である撮像画像であっても良いし、画像認識処理により車両が存在しないと判定された撮像画像であっても良い。
軸特定部220は、入力部210によって受け付けられた撮像画像に車両が含まれる場合に、その撮像画像における、その車両の車軸が前(又は後)から何番目の軸かを特定する。より具体的には、軸特定部220は、撮像画像に対して画像認識処理を行い、撮像画像に車両が含まれるか否かを判定する。そして、車両が撮像画像に含まれる場合には、軸特定部220は、さらなる画像認識処理により、その車両の車軸を認識する。そして、軸特定部220は、車両ごとに前方からの軸番号を特定する。軸特定部220は、特定した軸番号を校正部250に出力する。ここで、図1に示すように、軸特定部220は、例えば、車両102の最前方の車軸を第1軸10として特定する。また、軸特定部220は、例えば、次の車軸を第2軸20として特定する。
速度算出部230は、入力部210によって受け付けられた撮像画像に車両が含まれる場合に、その車両の速度を算出する。より具体的には、速度算出部230は、撮像画像に対して画像認識処理を行い、撮像画像に車両が含まれるか否かを判定する。そして、速度算出部230は、異なるフレーム間(例えば隣接フレーム間)の同一車両の位置の違いに基づいて、その車両の速度を算出する。速度算出部230は、撮像装置101と走行路の位置関係を予め計測することで、撮影画像内での移動量と実際の移動量とのスケール換算を幾何学的に行うことができる。速度算出部230は、算出した速度を校正部250に出力する。
校正部250は、検出部260が検出した変位量を集計して、変位量のヒストグラムを生成する。そして、校正部250は、変位量のヒストグラムの形状に基づいて、変位係数を更新する。
校正部250は、異なる車両がそれぞれ撮像された複数の撮像画像を対象として、検出部260によって検出された変位量を集計する。特に、軸重位置特定部261によって軸重位置が特定された場合には、校正部250は、その特定された軸重位置と変位量とを対応付けて集計する。同様に、校正部250は、軸特定部220が特定した軸番号および速度算出部230が算出した速度の違いごとにも変位量を分けて集計する。例えば、校正部250は、第1軸および第2軸ごとに変位量を分けて集計する。また、校正部250は、例えば、低速(例えば、0〜30km/h)、中速(例えば、30〜60km/h)、高速(例えば、60km/h以上)などに分けて変位量を集計する。校正部250は、全ての条件を組み合わせて変位量を集計してもよいし、一部の条件のみを組み合わせて変位量を集計してもよい。また、校正部250は、第1軸(車両の最前方の車軸)のような条件および時速30km/h以上のような条件のみを組み合わせて変位量を集計してもよい。校正部250が条件を分ける(又は限定する)ことで、後述する変位量のヒストグラムの特徴が得やすくなる。
記憶部270は、軸重と変位量との関係を示す第1情報を記憶する。より具体的には、第1情報とは、走行路に軸重が加えられたことに起因して走行路に変位が生じる場合における、軸重と変位量との関係を示す関係式、及び、この関係式で用いられる変位係数である。記憶部270は、荷重計200が備えるメモリ(図示せず)によって実現されても良いし、通信可能な外部装置のデータベースによって実現されても良い。
軸重w(kg)は、変位量d(画素数)の関数である。すなわち、軸重wは、関数fを用いて、w=f(d)の式で表現される。ここでは、関数fを一次式で近似して取り扱う。このため、記憶部270は、一次式(w=αd)を関係式として記憶する。また、記憶部270は、係数αを変位係数として記憶する。
この変位係数αは、軸重位置特定部261によって、軸重位置として特定され得る複数の位置それぞれに対応付けられた変位係数値を有する。このことにより、走行路上の領域毎に、撮像装置101からの距離が互いに異なること、アスファルト等の組成が互いに異なること、路面温度が互いに異なること、路面の劣化状態が互いに異なること等を、変位係数αに反映することができる。ここでは、変位係数αは、撮像画像における、例えば、横方向(x方向)10ピクセル、縦方向(y方向)10ピクセルからなる領域(以下、「局所領域」と表記)毎に、その局所領域に対応する変位係数値を有している。
図3は、記憶部270によって記憶される変位係数αの一例を示す図である。
記憶部270は、初期状態において、予め定められた関係式と、予め定められた変位係数とを記憶する。変位係数は、校正部250によって新たに変位係数が算出された場合には、新たに算出された変位係数によって更新される。
軸重算出部240は、検出部260によって検出された変位量と、記憶部270によって記憶される第1情報とに基づいて、走行路上に存在する車両の軸重を算出する。特に、軸重位置特定部261によって軸重位置が特定された場合には、軸重算出部240は、特定された軸重位置における変位量に基づいて、軸重の算出を行う。より具体的には、軸重算出部240は、変位量検出部262によって検出された変位量dに、軸重位置特定部261によって特定される軸重位置を含む領域に対応する変位係数値を掛け合わせることで、軸重wを算出する。また、記憶部270は、軸特定部220が特定した軸番号および速度算出部230が算出した速度に応じた変位係数を記憶してもよい。そして、軸重算出部240は、車両の軸番号と速度に応じた変位係数を用いて軸重を算出してもよい。
また、記憶部270は、軸重に係る第2情報を記憶する。第2情報は、走行路103において通行頻度が最も多いと期待される車両の第1軸の軸重の値である。
校正部250は、検出部260によって検出された変位量と第2情報とに基づいて、軸重と変位量との関係を特定する変位係数を算出する。そして、校正部250は、算出した変位係数を用いて、記憶部270に記憶される変位係数を更新する。変位係数を算出する方法の詳細については、後述する校正処理において説明する。
報知部280は、校正部250が新たに算出した変位係数と第1情報との差が予め定めた基準値以上となる場合、システム外部にその旨を報知する。例えば、報知部280が有線または無線により外部ユーザに報知した後に、校正部250は、ユーザの判断に基づいて変位係数の更新を行ってもよい。
上記構成の荷重計200(特に校正部250)が行う動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
[1−2.動作]
荷重計200は、その特徴的な動作として、第1計測処理と校正処理とを行う。
[1−2−1.第1計測処理]
第1計測処理は、荷重計200に、車両が含まれる撮像画像が入力された場合において、その車両の軸重を算出する処理である。
図4Aは、第1計測処理の動作を説明するフローチャートである。この第1計測処理は、入力部210に、車両が含まれる撮像画像(以下、「撮像画像A」と表記)が入力されることで開始される。
第1計測処理が開始されると、入力部210は、撮像装置101から入力された撮像画像Aを取得する(ステップS10)。
図5は、取得された撮像画像Aの一例を示す図である。図5に示すように、撮像画像Aには、走行路103上を走行する車両102が含まれる。そして、この車両102は、車両102のタイヤの最下点410において走行路103に接触している。また、図5において、領域420は軸重位置であると特定されない点を含む領域である。
図4Aにおいて、軸重位置特定部261は、撮像画像Aを取得すると、画像認識処理を行って、車両102のタイヤの最下点410を特定する。そして、軸重位置特定部261は、特定した最下点410に対応する走行路103上の領域を軸重位置として特定する(ステップS20)。
ここで、軸重位置特定部261が特定する領域は、必ずしも1点(1画素)のみからなる領域でなくてもよい。軸重位置特定部261が特定する領域は、隣接する複数画素からなる局所画像領域であっても良い。なお、軸重位置特定部261は、軸重検出の対象とする軸重検出範囲を、走行路103の領域に限定しても良い。また、軸重位置特定部261は、図6の領域510のように、軸重検出の対象とする軸重検出範囲を、走行路103の一部に限定しても良い。軸重位置特定部261は、ユーザの指定により検出範囲を限定しても良いし、ユーザの指定および走行路103の色やテクスチャの画像認識結果により検出範囲を限定しても良い。軸重検出範囲を限定することで、画像処理量を抑制する効果がある。このため、軸重位置を特定するための画像処理量を抑制することができる。なお、軸重位置特定部261は、撮像画像において複数のタイヤが走行路103に接触している場合には、接触位置のそれぞれを軸重位置として特定する。
軸重位置が特定されると、変位量検出部262は、特定された軸重位置において走行路103に生じた変位に対応した変位量を検出する(ステップS30)。変位量検出部262は、撮像画像Aと、入力部210によって取得された撮像画像のうちの、変位が生じていない撮像画像(以下、「撮像画像B」と表記)とを用いて、変位量を検出する。軸重位置が特定されるまでに、入力部210によって撮像画像Bが取得されていない場合は、変位量検出部262は、入力部210によって撮像画像Bが取得されるまで待ってから、この変位量の検出を行う。
図7は、取得された撮像画像Bの一例である。撮像画像A(図5参照)および撮像画像Bには、同じ視点から走行路103が撮像されている。撮像画像Bにおける走行路103上の領域610は、撮像画像Aにおけるタイヤの最下点410に対応する走行路103上の領域と同一領域である。また、撮像画像Bにおける走行路103上の領域620は、撮像画像Aにおける走行路103上の領域420と同一領域である。
変位量検出部262は、撮像画像Aにおける最下点410に対応する走行路103上の領域と、撮像画像Bにおける領域610との間で生じる変位量を検出する。ここで、一般的な車両の軸重に起因する走行路103の変位量は微小であるため、走行路103を走行する車両の震動等による撮像装置101の揺れの影響を抑えることが望ましい。一例として、変位量検出部262は、撮像画像Aと撮像画像Bとの双方において、軸重位置であると特定されない同一地点(例えば、撮像画像Aにおける領域420および撮像画像Bにおける領域620)を選出する。そして、変位量検出部262は、選出された領域間の変位量(以下、「非軸重位置変位量」と表記)を算出する。そして、変位量検出部262は、撮像画像Aにおけるタイヤの最下点410に対応する走行路103上の領域と、撮像画像Bにおける領域610との間で生じる変位量から、この非軸重位置変位量を差し引くことにより、変位量を補正する。これにより、撮像装置101の揺れの影響を抑えることが可能となる。他にも、光学的ブレ補正(Optical Image Stabilization)技術を利用する方法、センサシフト方式等の機械的機構を利用する方法等によっても撮像装置101の揺れの影響を抑えることが可能となる。
図4Aにおいて、変位量が検出されると、軸重算出部240は、軸重位置特定部261によって特定された軸重位置に対応する変位係数値を特定する(ステップS40)。すなわち、軸重算出部240は、記憶部270に記憶される変位係数α(図3参照)を参照して、軸重位置特定部261によって特定された軸重位置に対応する変位係数値を特定する。
変位係数値が特定されると、軸重算出部240は、特定された変位係数値に、変位量検出部262によって検出された変位量を掛け合わせることで、軸重を算出する(ステップS50)。
軸重が算出されると、軸重算出部240は、算出された軸重の数値を外部に出力する(ステップS60)。ここで、軸重算出部240は、算出された軸重の数値を外部に出力する代わりに、算出された軸重の数値が予め定められた基準値よりも大きい場合に、報知部280を介して、その旨をユーザに報知しても良い。この際、この基準値は、絶対的な基準値でも良いし、相対的な基準値でも良い。さらには、この基準値が後述するヒストグラムの代表値の例えば30倍以上である場合に、軸重算出部240は、対応する撮像画像を保存した上で、その旨をユーザに報知するとしても良い。これにより、対応する撮像画像に含まれる車両が過積載である可能性が比較的高いことを、ユーザに報知することができる。
ステップS60の処理が終了すると、荷重計200は、第1計測処理を終了する。
[1−2−2.校正処理]
校正処理は、校正部250が記憶部270に記憶される変位係数を更新する処理である。
図4Bは、校正処理のフローチャートである。この校正処理は、荷重計200が起動されることで開始される。
校正処理が開始されると、校正部250は、軸重位置特定部261によって軸重位置が特定された場合において、変位量検出部262によって変位量が検出される毎に、変位量を入力する(ステップS110)。同様に、校正部250は、軸特定部220から軸番号を入力し(ステップS120)、速度算出部230から速度を入力する(ステップS130)。校正部250は、特定された軸重位置、軸番号、および速度の条件ごとに、検出された変位量を対応付けて集計する(ステップS140)。ここで、校正部250は、すべての条件の組み合わせに対して変位量のヒストグラムを生成しなくてもよく、特定の軸番号と特定の速度との組み合わせといったような限定した条件のみに対して変位量のヒストグラムを作成してもよい。なお、ステップS110〜ステップS130の順番はこの順番でなくてもよい。
ここでは、校正部250は、変位係数値に対応付けられた局所領域毎に、検出された変位量を集計する。
荷重計200は、ステップS110〜S140の処理において、所定条件が満たされるまで処理を繰り返す。ここで、所定条件には、例えば、所定日時になった場合、変位量が所定数集計された場合、荷重計200に対してユーザによる所定の操作がなされた場合等が該当する。
ステップS150の処理において、所定条件が満たされた場合に(ステップS150のYes)、校正部250は、集計された集計結果に基づいて、局所領域毎に、過去の一定期間内に集計された変位量のヒストグラムを生成する(ステップS160)。
図8Aおよび図8Bは、それぞれ、校正部250によって生成された、局所領域毎のヒストグラムの一例を示す図である。図8Aおよび図8Bにおいて、縦軸は頻度、横軸は変位量を示す。図8Aおよび図8Bに示すヒストグラムは、互いに集計期間が異なる、同一の局所領域、同一軸番号、および同一速度分類のヒストグラムの例である。これらのヒストグラムの形状が異なっている理由として、例えば、これらの集計期間において、路面温度が互いに異なること、路面の劣化状態が互いに異なること等が挙げられる。
局所領域毎のヒストグラムが生成されると、校正部250は、ヒストグラムの特徴を抽出する(ステップS170)。そして、校正部250は、ヒストグラムの特徴と記憶部270に記憶される第2情報とに基づいて、対応する局所領域の変位係数を算出する。そして、校正部250は、記憶部270に記憶される変位係数を、算出した変位係数に更新する(ステップS180)。ここで、ヒストグラムの特徴とは、ヒストグラムの平均値、最頻値、最大値、最小値、下位一定割合の平均値等といった、ヒストグラムの形状から得られる変位量の代表値のことを言う。ここでは、ヒストグラムの特徴として、ヒストグラムの最頻値を用いる場合を例として説明する。
記憶部270は、走行路103において通行頻度が最も多いと期待される車両の第1軸の軸重値を、第2情報として記憶している。
校正部250は、第2情報を、ヒストグラムの形状から得られる変位量の代表値である最頻値で除算することで変位係数を算出する。
例えば、校正部250は、図8Aに示すヒストグラムおよび以下の式(1)に基づいて変位係数α1を算出する。
α1=w1/d1 ・・・ (1)
ここで、第2情報をw1とし、図8Aで示されるヒストグラムの最頻値をd1としている。
また、例えば、校正部250は、図8Bに示すヒストグラムおよび以下の式(2)に基づいて変位係数α2を算出する。
α2=w1/d2 ・・・ (2)
ここで、第2情報をw1とし、図8Bで示されるヒストグラムの最頻値をd2としている。
なお、通行車両数が少ない(例えば、一定数以下)ために、ヒストグラムの精度が低くなる場合等、想定するヒストグラムの特徴が適切に得られない場合には、校正部250は、最頻値に代えて、代替値を用いて変位係数を算出しても良い。校正部250は、代替値として、例えば、過去の時間帯の変位係数を用いたり、ヒストグラム更新前に利用していた変位係数を継続して用いたりしても良い。
また、変位量のヒストグラムは、複数の頻度のピーク値を有する場合がある。この場合、校正部250は、一定の変位量の範囲における平均値、最頻値、最大値、または最小値を用いてもよい。これにより、安定したヒストグラムの特徴が得られる。
なお、変位係数αが車両の速度に依存する場合、速度算出部230は、時系列的に連続して走行路103が撮像された撮像画像における車両の移動量から、その車両の速度vを算出する。そして、校正部250は、速度v毎に、変位係数α(v)を算出しても良い。また、校正部250は、一定範囲の速度の場合(例えば、車両速度v<20km/hの場合等)に限って、ヒストグラムの更新や、変位係数の算出を行うとしても良い。
図4Bにおいて、変位係数が算出されると、校正部250は、算出された変位係数を用いて、記憶部270に記憶される変位係数を上書きすることで、その変位係数を更新する(ステップS180)。
ステップS180の処理が終了すると、荷重計200は、再びステップS110の処理に進んで、ステップS110以降の処理を繰り返す。
なお、校正部250は、変位係数の更新を自動的に行わずに、変位係数の校正が必要になった旨を外部に報知してもよい。例えば、ステップS180の前に、校正部250は、報知部280を用いて有線または無線を通じてシステム外部の管理者に、変位係数の校正が必要になった旨を通知する。そして、管理者がその旨を確認した後、校正部250は、変位係数を更新してもよい。また、荷重計測システム1は、通知のみ行うことで、従来通りの校正を実施するためのタイミングを報知するシステムとして機能してもよい。
[1−3.効果等]
上述した通り、実施の形態1に係る校正装置300は、外部の撮像装置101によって撮像された撮像画像から、走行路103を走行する車両102の軸重による変位量を検出する。校正部250は、複数の車両の通過に渡る変位量を集計することで、変位量のヒストグラムを生成する。校正部250は、このヒストグラムの特徴と記憶部270に記録した軸重に関する第2情報とを用いて、記憶部270が記憶する変位係数を更新することができる。
このため、荷重計200を校正する際に、軸重が既知の車両を用意して校正作業を行う必要がない。従って、校正部250は、荷重計測システム1の校正を自動的に実現することができる。
また、校正部250は、軸番号に対して選択的にヒストグラムを生成することで、ヒストグラムの形状特徴が得やすい車軸を選択することができる。そのため、校正精度が向上する。また、校正部250は、車両の速度に対して選択的にヒストグラムを生成することで、ヒストグラムの形状特徴が得やすい速度を選択することができる。そのため、校正精度が向上する。
また、校正部250は、車軸の軸番号として、第1軸(車両の最前方の車軸)に対応したヒストグラムの形状のみに基づいて変位係数を算出してもよい。例えば、車両の荷台に載せられた荷物等の影響によって、第1軸以外の車軸の軸重を精度良く算出することは難しい。一方で、第1軸の軸重は、車両のエンジンの荷重がかかり、かつ、車両の荷台の荷物の重さに影響されにくい。そのため、第1軸の軸重は、他の車軸に比べて、精度良く算出されやすい。そのため、校正部250は、第1軸に対応したヒストグラムの形状のみに基づいて変位係数を算出することによって、精度良く変位係数を算出することができる。
また、映像を用いて変位を計測する場合、校正装置300は、走行路103の位置ごとに変位係数を校正することが望ましい。これにより、自動校正によって多点の校正が容易に実現することができる。そのため、計測システムの維持および管理におけるコストと手間を削減することができる。
また、校正を自動的に行わない場合でも、校正装置300は、校正すべきタイミングを自動的に検出できる。そのため、更新作業を必要十分な頻度で行うことができる。
なお、本実施例において、車両の軸重を算出するための変位係数を補正するとしたが、車両の荷重を算出する変位係数を補正するとしても良い。荷重計が、車両の荷重と車両の軸重の関係を予め記録しておく。荷重計は、車両の軸重を計測することで、車両の荷重を算出することができる。この荷重計は、荷重計200と同様に変位量のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて車両の荷重を算出するための変位係数を更新する。
なお、本実施例において、荷重計は車両の軸重を計測するとしたが、車両全体が乗っている領域で車両全体の荷重を計測するとしても良い。この場合、検出部は、複数の車軸の位置での変位量を検出し、変位量の平均値を算出する。この荷重計は、荷重計200と同様に変位量の平均値のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて車両の荷重を算出するための変位係数を更新する。
また、記憶部270は、走行路を走行する車両の荷重や軸重のヒストグラムを記録してもよい。そして、校正部250は、変位量のヒストグラムの形状と車両の荷重や軸重のヒストグラムの形状とに基づいて変位係数を更新してもよい。
[1−4.変形例]
図8Cおよび図8Dを用いて、変形例に係る荷重計について説明する。なお、変形例に係る荷重計は、上記の荷重計200と同様の構成を有する。
図8Cは、あらかじめ取得された荷重値のヒストグラムの一例を示す図である。より詳細には、図8Cのヒストグラムは、校正済みの荷重センサまたは荷重計を用いて生成する。本変形例において、記憶部270は、このヒストグラムを示す情報を記憶している。
図8Cのヒストグラムにおいて、出力値の最頻値は、頻度s3である。図8Cのヒストグラムは、頻度s3以外に、3つのピーク値(頻度s4、頻度s5、および頻度s6)を有する。
図8Dは、校正部250によって生成された変位量のヒストグラムの一例を示す図である。図8Dのヒストグラムは、上記の荷重センサが設置されている走行路と近接した位置の走行路が撮像された撮像画像から生成されている。すなわち、図8Cのヒストグラムは、図8Dのヒストグラムと対応している。
図8Dのヒストグラムにおいて、変位量の最頻値は、頻度d3である。図8Dのヒストグラムは、頻度d3以外に、3つのピーク値(頻度d4、頻度d5、および頻度d6)を有する。ここで、図8Cおよび図8Dに示すように、頻度s3は、頻度d3に対応していると考えられる。同様に、頻度s4、頻度s5、および頻度s6は、それぞれ、頻度d4、頻度d5、および頻度d6に対応していると考えられる。
本変形例の校正装置300の校正部250は、図8Cのヒストグラムおよび図8Dのヒストグラムの形状に基づいて、変位係数を更新する。具体的には、校正部250は、図8Cの頻度s3〜s6の軸重値が図8Dの頻度d3〜d6の変位量に対応する軸重値に略一致するように、変位係数を算出する。これにより、校正部250は、多数の車両の車軸を測定することにより生成された信頼度の高い既存のヒストグラムを用いて、変位係数を更新することができる。また、校正部250は、複数のヒストグラムの特徴(すなわち、複数のヒストグラムのピーク値)を用いることにより、変位係数をより精度良く算出することができる。
なお、校正部250は、変位係数を算出する際に、最頻値である頻度s3および頻度d3を用いなくてもよい。本変形例において、ヒストグラムの最頻値に対応する車両は、軸重が軽い車両である。軽い軸重を計測する際には、軸重の計測に誤差が生じやすい。そのため、最頻値である頻度s3および頻度d3は、誤差を多く含みやすい。そのため、頻度s3および頻度d3を用いないことで、校正部250は、精度良く変位係数を算出することができる。以上のように、校正部250は、図8Dのヒストグラムの形状のうち、最頻値(頻度d3)を含まない区間に対応したヒストグラムの形状のみに基づいて変位係数を更新してもよい。
また、本変形例において、校正部250は、ヒストグラムのピーク値を用いて変位係数を算出したが、他のヒストグラムの形状の特徴を用いて変位係数を算出してもよい。例えば、校正部250は、ヒストグラムの谷となる位置を、ヒストグラムの形状の特徴として用いてもよい。
(実施の形態2)
ここでは、本開示の一態様として、実施の形態1における荷重計200から、その構成の一部が変更された実施の形態2における荷重計について説明する。
図9は、本開示の実施の形態2に係る軸重を計測する様子の一例を模式的に示す図である。図9に示すように、実施の形態2に係る荷重計測システム2は、2つの荷重センサ100と、荷重計201とを含む。
実施の形態1における荷重計200は、撮像装置101から撮像画像を取得し、この画像から路面変位、軸番号および速度が算出していた。これに対して、実施の形態2における荷重計201では、図9および図10に示すように、入力部211が、走行路103に設置された荷重センサ(歪ゲージ、圧電素子など)100の出力値を取得する。荷重計201は、荷重センサ100の出力値から、変位量を検出する。ここで、荷重センサ100は図9に示すように隣接して2つ以上設置されており、その位置関係は既知とする。
以下、この荷重計201の詳細について、実施の形態1における荷重計200との相違点を中心に、図面を参照しながら説明する。
[2−1.構成]
図10は、実施の形態2における荷重計201の構成を示すブロック図である。
図10に示される通り、荷重計201は、入力部211と、軸重算出部241と、校正装置301とを含む。校正装置301は、軸特定部221と、速度算出部231と、校正部251と、検出部263と、記憶部270と、報知部280とを含む。
図10に示される通り、荷重計201は、入力部211が荷重センサ100の出力値を取得する点で、実施の形態1における荷重計200(図2参照)と異なる。
軸特定部221は、車両の通過に伴う入力部211が取得する荷重センサ100の出力値の変化の回数から軸数をカウントする。軸特定部221は、荷重センサ100の出力から一定の時間が空けば、車両が通過したと判断する。速度算出部231も同様に、車両の通過に伴う入力部211が取得する荷重センサ100の出力値の変化を計測する。そして、速度算出部231は、複数の荷重センサ100間の通過時間と既知の荷重センサ100の設置距離を用いて車両の速度を算出する。校正部251および記憶部270はそれぞれ、実施の形態1の変位量に代えて、入力部211が取得した荷重センサ100の出力値を用いる。軸重算出部241も同様に、実施の形態1の変位量に代えて、入力部211が取得した荷重センサ100の出力値を用いて、軸重を算出する。検出部263は、荷重センサ100の出力値から変位量を算出する。
[2−2.動作]
荷重計201は、その特徴的な動作として、実施の形態1における第1計測処理からその一部の処理が変更された第2計測処理を行う。
具体的には、第2計測処理は、実施の形態1における図4AのフローチャートのステップS10〜ステップS30の手続きが省略されている点で、第1計測処理と異なる。また、第2計測処理は、検出部263が荷重センサ100の出力値の変化量をもって変位量とする点で第1計測処理と異なる。また、軸特定部221は、ステップS120において、荷重センサ100の出力値の変化回数から、軸番号を特定する。また、速度算出部231は、ステップS130において、複数の荷重センサ100の出力値の変化の時間差と荷重センサ100の設置距離から車両の速度を算出する。他の動作については、実施の形態1と同様である。
[2−3.効果等]
上述した通り、荷重計201は、荷重センサ100によって得られた出力値を用いている。入力情報が実施の形態1とは異なるものの、校正部251は、実施の形態1と同様の動作を通じて、一般通行車両の通過に伴う荷重センサ100の出力値を集計する。これにより、荷重計201の校正を自動的に行うことができる。そのため、計測システムの維持および管理におけるコストと手間を削減することができる。
また、校正を自動的に行わない場合でも、校正装置301は、校正すべきタイミングを自動的に判断できる。そのため、更新作業を必要十分な頻度で行うことができる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1、2について説明した。しかしながら、本開示における技術は、これらに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用可能である。
(1)本開示において、荷重計200は、撮像装置101によって走行路103が撮像された撮像画像の入力を受け付ける入力部210を備える構成の例であるとして説明した。しかしながら、撮像画像を取得することができれば、荷重計200は、必ずしも入力部210を備える構成である必要はない。例えば、荷重計200は、入力部210を備える代わりに、撮像画像を生成する撮像部を備えてもよい。そして、軸重位置特定部261が利用する撮像画像は、その撮像部によって撮像された撮像画像であるとしても構わない。このような構成にすることで、外部の撮像装置が不要となる。
(2)本開示において、荷重計200は、マイクロプロセッサとメモリとを備えるコンピュータにおいて、メモリに記憶されたプログラムをマイクロプロセッサが実行することによって実現される構成の例であるとして説明した。しかしながら、荷重計200は、上記実現例と同等の機能を有していれば、必ずしも上記実現例通りに実現される構成の例に限定される必要はない。例えば、荷重計200は、荷重計200を構成する構成要素の一部又は全部が、専用回路によって実現される構成の例であっても構わない。
(3)本開示において、荷重計200は、画像処理により車両のタイヤを認識し、そのタイヤの最下点に対応する走行路103上の領域を軸重位置として特定する構成の例であるとして説明した。しかしながら、軸重位置の特定方法は、必ずしも上記方法に限定される必要はない。例えば、荷重計200は、変位量が局所的に最大となる位置を軸重位置として特定してもよい。
(4)本開示において、軸特定部220(車種認識部の一例)は撮像画像から車種を認識し、校正部250は特定の車種について選択的にヒストグラムを生成してもよい。車種を選択することで、ヒストグラムの形状特徴が得られやすくなる。そのため、校正の精度が向上する。
(5)本開示において、検出部260は、撮像画像からの変位量の信頼度を算出してもよい。また、校正部250は、信頼度が所定の値よりも高いときのみに、変位量を集計して、その変位量のヒストグラムを生成してもよい。信頼度として、相関法を用いる場合の相関係数や、相関関数の分布の先鋭度などを用いることができる。精度の高い変位検出結果を用いることで、校正の精度が向上する。
(6)本開示において、撮像画像は、モノクロ画像でもカラー画像でもマルチスペクトル画像であっても構わない。また、撮像する光は、可視光以外に、紫外光、近赤外光、または遠赤外光であっても構わない。
(7)本開示において、走行路103の路面としてアスファルト舗装の例を用いて説明した。しかし、走行路103の路面は、アスファルト舗装の他にコンクリート等の他の舗装素材からなる路面でもよい。また、走行路103の路面は、上記舗装面に板材やシート材、塗料などで一部被覆された路面でもよい。また、映像による変位をより正確かつ顕著に得るために、上記のような素材を用いて走行路103の路面を被覆し、その被覆された領域を変位検出の対象領域としてもよい。
(8)荷重計200、201における各構成要素(機能ブロック)は、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の半導体装置により個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全部を含むように1チップ化されてもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
(9)上記各種処理の全部又は一部は、電子回路等のハードウェアにより実現されても、ソフトウェアを用いて実現されてもよい。なお、ソフトウェアによる処理は、荷重計に含まれるプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現されるものである。また、そのプログラムを記録媒体に記録して頒布や流通させてもよい。例えば、頒布されたプログラムを、他のプロセッサを有する装置にインストールして、そのプログラムをそのプロセッサに実行させることで、その装置に、上記各処理を行わせることが可能となる。
(10)上述した実施の形態で示した構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示の範囲に含まれる。