以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[CO2分離材]
本発明のCO2分離材は、有機シリカ系メソ多孔体からなるCO2分離材であって、
前記有機シリカ系メソ多孔体が、
該多孔体の骨格中のケイ素に塩基性官能基が結合した下記一般式(1):
X−Si (1)
[式(1)中、Xは式:R1−NH−(CH2)n−(式中のR1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかを示し、nは1〜6の整数を示す。)で表される塩基性官能基を示す。]
で表される構造を有するものであり、
比表面積が10m2/g以上のものであり、
1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すものであり、かつ、
該多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[d100値])が0.023/nm以上となるものであること、
を特徴とするものである。
このような有機シリカ系メソ多孔体は、骨格中のケイ素に塩基性官能基が結合した下記一般式(1):
X−Si (1)
[式(1)中、Xは式:R1−NH−(CH2)n−(式中のR1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかを示し、nは1〜6の整数を示す。)で表される塩基性官能基を示す。]
で表される構造を有する。このように、本発明にかかる有機シリカ系メソ多孔体においては、塩基性官能基(X)が骨格中のケイ素(Si)に結合された構造を有しており、かかる塩基性官能基がCO2に対する親和性が高い基であるため、その塩基性官能基に起因してCO2の吸着性能をより高度なものとすることが可能である。また、上述のように塩基性官能基(X)が骨格中のケイ素(Si)に結合していることから、CO2分離材の再利用時のCO2回収工程において加熱工程を採用した場合においても、塩基性官能基が脱離することを十分に抑制できるため、CO2吸着性能に関して十分に高度な耐熱性を発揮することが可能となる。このような塩基性官能基が骨格中のケイ素に結合している有機シリカ系メソ多孔体(有機基を有するシリカ系メソ多孔体)は、後述の塩基性官能基含有トリアルコキシシランを利用してシリカ系メソ多孔体を製造することで(より好ましくは本発明のCO2分離材の製造方法を採用することで)、効率よく製造することができる。
このような塩基性官能基(上記一般式(1)においてXで表される基)は、式:R1−NH−(CH2)n−で表される基である。このような塩基性官能基の式中のR1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかである。
前記R1として選択され得るアミノアルキル基は炭素数が1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると細孔内のアミノ基の量が減少するためにCO2の吸着量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、そのような塩基性官能基を有するトリアルコキシシランを合成することが困難(原料の合成や入手が困難)となる傾向にある。また、このようなR1として選択され得るアミノアルキル基としてはアミノエチル基、アミノプロピル基がより好ましく、アミノエチル基が特に好ましい。
また、前記R1として選択され得るアミノアルキルアミノアルキル基は、各アミノアルキル部分の炭素数が1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると細孔内のアミノ基の量が減少するためにCO2の吸着量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、そのような塩基性官能基を有するトリアルコキシシランを合成することが困難となる傾向にある。また、このようなR1として選択され得るるアミノアルキルアミノアルキル基としてはアミノエチルアミノエチル基、アミノプロピルアミノプロピル基がより好ましく、アミノエチルアミノエチル基が特に好ましい。
このようなR1としては、中でも、細孔内にアミノ基をより均一に分散させるという観点から、水素原子、炭素数が1〜5(更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2〜3)のアミノアルキル基、アミノアルキル部分の炭素数がそれぞれ1〜5(更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2〜3)であるアミノアルキルアミノアルキル基が好ましい。
また、前記塩基性官能基(式:R1−NH−(CH2)n−で表される基)の式中のnは1〜6(より好ましくは2〜5、更に好ましくは3〜4)の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると細孔内のアミノ基の量が減少するためにCO2の吸着量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、そのような塩基性官能基を有するトリアルコキシシランを合成することが困難(原料の合成や入手が困難)となる傾向にある。
また、このような塩基性官能基(上記一般式(1)においてXで表される基)としては、アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、アミノエチルアミノエチルアミノプロピル基が好ましい。
さらに、このような有機シリカ系メソ多孔体は、細孔のサイズがメソ孔である多孔体(メソ多孔体)からなる。ここにいうメソ孔は、中心細孔直径が1〜50nm(好ましくは中心細孔直径が1.2〜20nm)の細孔であることが好ましいが、多孔体がガスの選択吸着性を有するため(N2の吸着性が低いものとなるため)、中心細孔直径の大きさにより細孔のサイズがメソ孔であるか否かを確認する代わりに、X線回折測定を行って測定されるX線回折パターンから求められるd100の値が2nm以上60nm以下である場合に細孔のサイズがメソ孔であると判断してもよい。なお、このようなX線回折測定としては、市販の測定装置を適宜採用して、公知の条件を採用して適宜測定することができ、後述のX線回折パターンを測定する方法と同様の方法を採用できる(例えば、前記有機シリカ系メソ多孔体が粉末状のものである場合には、測定装置としてリガク製の粉末XRD装置RINT−2200等を適宜利用して、前記X線回折測定として、いわゆる粉末X線回折測定を行なってもよい)。また、d100の値も後述のd100値を算出する方法と同様の方法を採用できる。また、前記中心細孔直径が前記下限未満の場合はCO2の吸着量が減少し、他方、前記上限を超える場合はN2の吸着量が増大してCO2の選択吸着性が低下する。なお、本発明にいう「中心細孔直径」とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、有機シリカ系メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法(ガス吸着法)あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Dollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
また、このような有機シリカ系メソ多孔体としては、細孔が多孔体の表面のみならず内部にも形成されているものが好ましい。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
このような多孔体の細孔配列構造がヘキサゴナル構造(2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造)であるとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449,1996、Q.Huo,et al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体の細孔配列構造がキュービック構造であるとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
また、このような有機シリカ系メソ多孔体は、比表面積が10m2/g以上のものである。このような比表面積が前記下限未満では、ガスと接触させた際にガス中のCO2を十分に吸着することができなくなる。このような比表面積としては12〜400m2/gであることがより好ましく、14〜200m2/gであることが更に好ましい。このような比表面積を前記範囲内とすることで、CO2をより十分に吸着させることが可能となり、CO2をより効率よく分離することが可能となる傾向にある。なお、比表面積が前記上限を超えるとN2吸着量が増大し、CO2の吸着選択率が低下する傾向にある。このような比表面積は、窒素ガスの吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。なお、吸着等温線は、前述の細孔径分布曲線を求める際に説明した方法と同様にして求めることができる。
また、前記有機シリカ系メソ多孔体は、X線回折測定をした場合に1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すものである。すなわち、前記有機シリカ系メソ多孔体は、X線回折パターンにおいて1nm以上のd100値((100)面の間隔dを示す値である)に相当する回折角度に1本以上のピークを有するものである。このようなX線回折ピークは、そのピーク角度に相当するd100値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。このようなX線回折パターンは、市販の測定装置を適宜採用して、公知の条件を採用して適宜測定することができる(例えば、前記有機シリカ系メソ多孔体が粉末状のものである場合にはリガク製の粉末XRD装置RINT−2200等を適宜利用できる)。測定条件としては、スリットを使用して低角の直接光を除くことが好ましい。なお、このような測定にはCuKα線を利用することが好ましい。
さらに、前記有機シリカ系メソ多孔体は、前記X線回折パターンのピークから算出されるd100値((100)面の間隔d)が2〜10nmであるものが好ましく、3〜5nmであるものがより好ましい。このようなd100値が前記下限未満ではCO2の吸着量が減少する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとN2の吸着量が増大し、CO2の吸着選択性が低下する傾向にある。なお、このようなd100は、前述のようにして求められたX線回折パターンからブラッグの式(2dsinθ=nλ)により算出できる。
また、前記有機シリカ系メソ多孔体は、該多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)が0.06〜0.5であることが好ましく、0.08〜0.3であることがより好ましい。このような有機成分の質量比が前記下限未満では有機成分である塩基性官能基の含有量が低くなることからCO2を十分に吸着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔が縮小し、CO2の吸着量が減少する傾向にある。なお、このような多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)としては、以下のようにして測定できる値を採用する。すなわち、先ず、有機シリカ系メソ多孔体の10mgを測定試料として用い、大気中において、熱重量測定装置(例えばリガク社製の商品名「Thermo Plus」)を利用して、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から600℃までの温度域で熱重量曲線を測定し、かかる熱重量曲線から150℃における重量分率(W1:150℃での重量の残分率、すなわち、測定試料の当初重量に対して150℃において残存している成分の重量の割合、単位:wt%)と、500℃における重量分率(W2:500℃での重量の残分率、すなわち、測定試料の当初質量に対して500℃において残存している成分の重量の割合、単位:wt%)を利用し、150℃における重量分率(W1)の値を測定試料中の有機シリカ系メソ多孔体自体の重量の比率と擬制し(細孔中の溶媒等が十分に除去された状態の有機シリカ系メソ多孔体自体の重量の比率と擬制し)、150℃における重量分率(W1)から500℃における重量分率(W2)を引いた差分(W1−W2)を有機成分の比率と擬制して、上記150℃における重量分率と500℃における重量分率の差分(W1−W2)を、150℃における重量分率(W1)で除することにより、有機成分の質量比(有機成分率)を求める。このように、本発明においては、上述のようにして熱重量曲線を求めた後、下記計算式(I):
[有機成分の質量比]=(W1−W2)/W1 (I)
(計算式(I)中、W1は上記熱重量曲線における150℃における重量分率を示し、W2は上記熱重量曲線における500℃における重量分率を示す。)
を算出することにより求められる値を有機成分率(有機成分の質量比)として採用する。
また、前記有機シリカ系メソ多孔体は、該多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)を前記d100値で除することにより求められる値([有機成分の質量比(有機成分率)]/[d100値]:以下、場合により単に「d100値あたりの有機成分率」と称する)が0.023/nm以上となるものである(ここにいう「有機成分の質量比(有機成分率)」は、前述の計算式(I)で求められる値である)。このようなd100値あたりの有機成分率([有機成分の質量比]/[d100値])の値が前記下限未満ではCO2を十分に選択的に分離することができなくなる。なお、d100値あたりの有機成分率([有機成分の質量比]/[d100値])の値は、配列された各細孔あたりの有機成分(塩基性官能基)の量を確認するための指標とすることができ、かかる値が0.023/nm以上となる場合には、CO2を吸着する性能を十分に向上させるために、CO2との親和性の高い塩基性官能基が十分な割合で導入されているものと判断することが可能である。また、このようなd100値あたりの有機成分率([有機成分の質量比]/[d100値])の値としては、0.023〜0.15/nmであることが好ましく、0.023〜0.09/nmであることがより好ましい。このようなd100値あたりの有機成分率が前記範囲内にある場合には細孔内にアミノ基が十分に分散され、CO2を十分に吸着できるものとなる傾向にある。なお、d100値あたりの有機成分率が前記上限を超えると細孔が縮小し、CO2の吸着量が減少する傾向にある。
また、このような有機シリカ系メソ多孔体としては、調製がより容易であるといった観点から、上記一般式(2)で表される塩基性官能基含有トリアルコキシシランと、テトラアルコキシランとの縮合物(共重合体)であることがより好ましい。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシランについては、後述の本発明のCO2分離材の製造方法において、より詳細に説明する。
また、このような有機シリカ系メソ多孔体の形状は特に制限されないが、上記条件を満たす有機シリカ系メソ多孔体の調製がより容易であることから、粉末状であることが好ましい。また、有機シリカ系メソ多孔体が粉末状である場合、平均粒径は0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがより好ましい。このような平均粒径が前記下限未満では粒子が凝集し、成形加工性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると粒子内部の細孔がCO2の吸着に寄与できなくなり、CO2の吸着量が低下する傾向にある。なお、ここにいう粉末を構成する粒子は、いわゆる球状の粒子の他、最小直径が最大直径の10%以上(好ましくは20%以上)である略球体の粒子であってもよい。なお、粒子が略球体の場合、その粒径は原則として最小直径と最大直径との平均値をいう
また、本発明のCO2分離材は、有機シリカ系メソ多孔体からなるものであればよく、その形態等は特に制限されず、例えば、粉末状の有機シリカ系メソ多孔体をそのままCO2分離材としてもよく、あるいは、各種基材(例えば、アルミ二ウムのハニカム等)に担持して利用してもよい。このように、本発明のCO2分離材は、使用する用途に応じて、その形態を適宜変更して利用することができる。また、有機シリカ系メソ多孔体が粉末状である場合、必要に応じて成形して使用してもよい。このような成形の手段としては特に制限されず、用途に応じて最適な形状となるように、押出成形、打錠成形、CIP等の公知の成形手段を適宜利用できる。
以上、本発明のCO2分離材について説明したが、以下、本発明のCO2分離材の製造方法について説明する。
[CO2分離材の製造方法]
本発明のCO2分離材の製造方法は、溶媒中において、シリカ原料と界面活性剤とを混合し、前記界面活性剤が細孔に導入されてなる多孔体前駆体を得る第1の工程と、
前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤を除去することにより有機シリカ系メソ多孔体からなるCO2分離材を得る第2の工程とを含み、
前記シリカ原料として下記一般式(2):
R1−NH−(CH2)n−Si(OR2)3 (2)
[式中、R1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかを示し、nは1〜6の整数を示し、R2はアルキル基を示す。]
で表される塩基性官能基含有トリアルコキシシランと、テトラアルコキシランとの混合物を用い、
前記界面活性剤として下記一般式(3):
CH3(CH2)mN+(CH3)3 ・ Y− (3)
[式中、mは8〜25の整数を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
で表されるアルキルトリメチルアンモニウムハライドを用い、かつ、
前記シリカ原料中の前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率を調整することにより、前記CO2分離材として上記本発明のCO2分離材を得ること、を特徴とする方法である。以下、工程ごとに分けて説明する。
〈第1の工程〉
第1の工程は、溶媒中において、シリカ原料と界面活性剤とを混合し、前記界面活性剤が細孔に導入されてなる多孔体前駆体を得る工程である。
第1の工程において用いる前記溶媒としては、シリカ系メソ多孔体を製造する際に利用することが可能な公知の溶媒を適宜利用でき、特に制限されるものではないが、反応速度を制御し、粒径の均一な粒子を製造するという観点から、水とアルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、グリセリンが挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点からメタノールまたはエタノールが好ましい。また、前記溶媒を水とアルコールの混合物とする場合(溶媒を「水/アルコール混合溶媒」とする場合)、水/アルコール混合溶媒中のアルコールの含有比率は特に制限されるものではないが、アルコール量が10〜90容量%(さらに好ましくは20〜80容量%)であることがより好ましい。このようなアルコールの含有量が前記下限未満では粒子径の分布が広く、粒子径の大きな粒子が得られる傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔の規則性が著しく低下する傾向にある。
本発明において用いるシリカ原料は、上記一般式(2)で表される塩基性官能基含有トリアルコキシシランと、テトラアルコキシランとの混合物である。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシラン(式:R1−NH−(CH2)n−Si(OR2)3で表される化合物)に関して、上記一般式(2)中のR1、nは本発明のCO2分離材において説明した上記一般式(1)中のR1、nと同様のものである(その好適なものも同様である)。また、上記一般式(2)中のR2はアルキル基である。このようなR2として選択され得るアルキル基としては、それぞれ独立に、炭素数が1〜3のアルキル基であることが好ましく、1〜2のアルキル基であることがより好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると溶媒への溶解性、反応性が低下し、粒子径が大きくなり、細孔の規則性が低くなる傾向にある。また、このようなアルキル基としてはメチル基、エチル基がより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランとしては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランは、1種を単独で、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。但し、2種類以上の塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、塩基性官能基含有トリアルコキシシランは1種を単独で使用することが好ましい。
また、前記シリカ原料として用いられる前記テトラアルコキシシランとしては、公知のものを適宜利用できる。このようなテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。また、このようなテトラアルコキシシランの中でも、反応性の観点等から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランが特に好ましい。このようなテトラアルコキシシランは、1種を単独で、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。但し、2種類以上のテトラアルコキシシランを用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、テトラアルコキシシランは1種を単独で使用することが好ましい。
また、前記シリカ原料中(前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの混合物)において、前記テトラアルコキシランと前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランの含有比率は、上記特定の有機シリカ系メソ多孔体を製造するために、用いる界面活性剤の種類に応じて、その比率を適宜変更する必要がある。このような含有比率については後述する。
本発明において用いられる界面活性剤は、下記一般式(3):
CH3(CH2)mN+(CH3)3 ・ Y− (3)
[式中、mは8〜25の整数を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
で表されるアルキルトリメチルアンモニウムハライドである。
このようなアルキルトリメチルアンモニウムハライドは、界面活性剤分子の対称性に優れるものである。そのため、前記アルキルトリメチルアンモニウムハライドを用いた場合には、容易に界面活性剤同士を凝集(ミセルの形成等)させることができる。
また、上記一般式(1)におけるmは8〜25の整数を示し、8〜17の整数であることがより好ましく、9〜15の整数であることが特に好ましい。前記mが7以下であるアルキルトリメチルアンモニウムハライドでは、メソ細孔ではなく、ミクロ細孔を有する多孔体が形成されてしまう。他方、前記nが26以上のアルキルトリメチルアンモニウムハライドでは、界面活性剤の疎水性相互作用が強すぎるため、層状の化合物が生成されてしまい、メソ多孔体を得ることができなくなってしまう。
さらに、上記一般式(3)におけるYはハロゲン原子を示し、このようなハロゲン原子の種類は特に制限されないが、入手の容易さの観点からYは塩素原子または臭素原子であることが好ましい。
また、上記一般式(3)で表される界面活性剤は、具体的には、炭素数9〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであり、例えば、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライド等が挙げられる。このような界面活性剤は、より効率よくCO2分離材を製造するといった観点から、1種を単独で使用することが好ましい。
また、第1の工程においては、前記CO2分離材として上記本発明のCO2分離材を得るために、前記シリカ原料中の前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率を調整する。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率は、前記アルキルトリメチルアンモニウムハライド(界面活性剤)の種類や、用いる前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランの種類に応じて、目的の設計となるように適宜調整する必要があり、一概に言えるものではない。
このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率は、上述のように一概に言えるものではないが、前記界面活性剤として上記一般式(3)中のmの値が8〜10である前記アルキルトリメチルアンモニウムハライド(より好ましくはデシルトリメチルアンモニウムハライド)を用いる場合であって、例えば、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランとして前記一般式(2)中のR1が水素原子である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)が塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して7〜18モル%の範囲に調整することが好ましく、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランとして前記一般式(2)中のR1がアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)が塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して5〜15モル%の範囲に調整することが好ましく、さらに、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランとして前記一般式(2)中のR1がアミノアルキルアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチルアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)が塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して3〜10モル%の範囲に調整することが好ましい。
また、このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率に関して、前記界面活性剤として上記一般式(3)中のmの値が14〜16である前記アルキルトリメチルアンモニウムハライド(より好ましくはヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド)を用いる場合であって、例えば、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランが前記一般式(2)中のR1が水素原子である塩基性官能基含有トリアルコキシシランである場合には、その含有比率(モル%)が塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して15〜25モル%の範囲に調整することが好ましく、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランが前記一般式(2)中のR1がアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)が塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して10〜25モル%の範囲に調整することが好ましく、さらに、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランが前記一般式(2)中のR1がアミノアルキルアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチルアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)が塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して7〜15モル%の範囲に調整することが好ましい。
さらに、本発明においては、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合する際に、シリカ原料の濃度はSi濃度換算で溶液の全容量を基準として0.0005〜0.03mol/L(好ましくは、0.003〜0.015mol/L)とすることが好ましい。このようなシリカ原料の濃度が前記下限未満では粒子径及び粒子径分布の制御が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶媒中におけるシリカ原料の量が過剰となることから、細孔のテンプレートとなるべき界面活性剤の比率が不足するために良好な多孔体を得ることができない傾向にある。
また、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合する際に、界面活性剤の濃度は溶液の全容量を基準として0.0003〜0.03mol/L(好ましくは、0.0005〜0.02mol/L)とすることが好ましい。このような界面活性剤の濃度が前記下限未満では細孔の鋳型(テンプレート)となるべき界面活性剤の比率が不足するために良好なメソ多孔体を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粉末状の多孔体を得る場合に、その粒径及び粒径分布の制御が困難となって、得られる有機シリカ系メソ多孔体の粒径の均一性が低くなる傾向にある。
さらに、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合する際に、前記シリカ原料と前記界面活性剤の含有比率は、シリカ原料中のSi濃度換算のモル量(シリカ原料Si濃度換算のモル量)と界面活性剤のモル量との比([シリカ原料Si濃度換算のモル量]:[界面活性剤のモル量])で、1:10〜20:1(より好ましくは1:5〜10:1)であることが好ましい。このような界面活性剤のモル量が前記下限未満ではメソ細孔の形成が不完全となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると界面活性剤で被覆されたナノ粒子が形成される傾向にある。
また、第1の工程においては、溶媒中において、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を混合する。この際、塩基性条件下で混合することが好ましい。シリカ原料は一般に塩基性条件下においても酸性条件下においても反応が生じケイ素酸化物へと変化するが、酸性条件で反応させる場合よりも、塩基性条件で反応させる場合の方がケイ素原子の反応点がより増加し、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができる傾向にあるため、塩基性条件下で混合することは、かかる点において有利である。このような観点から、第1の工程においては、前記溶媒を塩基性にするために、前記溶媒に水酸化ナトリウム等の塩基性物質を添加することが好ましい。このような溶媒の塩基性条件に関しては特に制限されないが、添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1〜0.9となるようにすることが好ましく、0.2〜0.5となるようにすることがより好ましい。添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1未満である場合は、収率が低下してしまう傾向があり、他方、0.9を超える場合は、多孔体の形成が困難となる傾向がある。
なお、このような混合により、シリカ原料である上記各アルコキシシランから加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。そのため、形成されるケイ素酸化物には、シリカ原料中の前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランに由来して、塩基性官能基(式:R1−NH−(CH2)n−で表される基)が導入されることとなる。すなわち、骨格中のケイ素に前記塩基性官能基が結合した構造(式:R1−NH−(CH2)n−Siで表される構造)を有するケイ素酸化物が得られることとなる。また、このようなケイ素酸化物が形成される縮合反応に際して、界面活性剤が存在している部分には孔が形成されることになる。このように、界面活性剤はケイ素酸化物(シリカ原料の縮合物)中に導入されて孔形成のためのテンプレートとして機能する。このようにして、第1の工程においては、前記界面活性剤が細孔に導入されてなる多孔体前駆体(孔の形成されている部位に界面活性剤が導入されているシリカ(ケイ素酸化物)からなる多孔体前駆体)が形成されることとなる。
このような第1の工程における前記縮合反応の反応条件(反応温度、反応時間等)は特に制限されず、反応温度としては、例えば−20℃〜100℃(好ましくは0℃〜80℃、より好ましくは10℃〜40℃)とすることができる。また、反応は撹拌状態で進行させることが好ましい。具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類等に基づいて決定することが好ましい。
なお、このような第1の工程においては、例えば、以下のようにして多孔体前駆体を得ることができる。先ず、水とアルコールの混合溶媒に対して、前記界面活性剤及び塩基性物質を添加して前記界面活性剤を含有する塩基性溶液を調製し、得られた塩基性溶液に前記シリカ原料を添加する。このようにして添加されたシリカ原料は前記溶液中で加水分解(または、加水分解および縮合)するため、添加後しばらくすると沈殿物(白色粉末)が析出する。そして、このような沈殿物(白色粉末)が析出した後において、0℃〜80℃(好ましくは10℃〜40℃)で1時間〜10日、前記溶液をさらに撹拌してシリカ原料の反応を進行させることで、粉末状の多孔体前駆体(孔の形成されている部位に前記界面活性剤が導入されてなる多孔体前駆体(シリカ系多孔体前駆体)を得ることができる。
また、第1の工程においては、反応の終了後においては、得られた多孔体前駆体を必要に応じて、ろ過および洗浄してもよい。例えば、上述のようにして粉末状の多孔体前駆体を得る場合においては、得られた沈殿物(白色粉末)を濾過して得られた固形分を大量の水に分散させることにより洗浄し、再度濾過し乾燥してもよい。このようにして、第1の工程において多孔体前駆体を得ることができる。
なお、このようにして調製する多孔体前駆体の形状は特に制限されず、前述の粉末状の他、例えば、薄膜状等の種々の形状としてもよい。なお、このように薄膜状の多孔体前駆体を製造する場合には、第1の工程として、例えば、以下のような方法を採用することが好ましい。すなわち、先ず、前記溶媒と前記界面活性剤とを含む溶液に酸(例えば、塩酸、硝酸など)を添加して得られる酸性溶液に前記シラン原料を添加し、この溶液を撹拌して反応(部分加水分解および部分縮合反応)させて、部分重合体を含有するゾル溶液を製造する。なお、前記シラン原料の加水分解反応はpHが低い領域で起こり易いことから、系のpHをより低くすることにより部分重合を促進させることができる。そのため、前記酸性溶液のpHは6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。また、反応温度は15〜25℃程度が好ましく、反応時間は30分間〜1日間程度が好ましい。次に、このようにして得られたゾル溶液を基板に塗布することにより薄膜状の多孔体前駆体を調製することができる。前記ゾル溶液を基板に塗布する方法としては特に制限はなく、各種コーティング方法を適宜採用することができる。例えば、溶液キャスト法や、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いて塗布する方法、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングといった方法などが挙げられる。なお、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、基板にパターン状の多孔体前駆体を形成することも可能である。
〈第2の工程〉
第2の工程は、前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤を除去することにより有機シリカ系メソ多孔体からなるCO2分離材を得る工程である。
前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤を除去する方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用でき、例えば、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等を挙げることができる。前記界面活性剤を除去する方法として前記有機溶媒で処理する方法を採用する場合は、用いた界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に多孔体前駆体を浸漬して界面活性剤を抽出する方法を採用することが好ましい。また、前記界面活性剤を除去する方法として前記イオン交換法を採用する場合においては、前記多孔体前駆体を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱しながら撹拌を行う方法を採用することができる。これにより、前記多孔体前駆体の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。また、このようにして酸性溶液によりイオン交換した後においては、塩基性溶液(少量の濃アンモニア水溶液を含むメタノール等)中に、イオン交換後の多孔体を浸漬し、例えば、10〜60℃(好ましくは室温程度)で撹拌することが好ましい。このようにイオン交換後の多孔体を塩基性溶液(少量の濃アンモニア水溶液を含むメタノール等)中で撹拌することにより、アミノ基の塩酸塩をアミノ基に変換することが可能となる。
このようにして界面活性剤を除去することにより、有機シリカ系メソ多孔体であって、該多孔体の骨格中のケイ素に塩基性官能基が結合した上記一般式(1)で表される構造を有するものであり、比表面積が10m2/g以上のものであり、1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すものであり、かつ、該多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[d100値])が0.023/nm以上となるものである有機シリカ系メソ多孔体を得ることができる。このようにして調製される有機シリカ系メソ多孔体は、上記本発明のCO2分離材において説明したものと同様のものである。すなわち、このようにして有機シリカ系メソ多孔体を調製することで、上記本発明のCO2分離材を得ることができる。そのため、本発明のCO2分離材の製造方法は、上記本発明のCO2分離材を製造するための方法として好適に利用できる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)35.2g(0.11モル)と、1規定の水酸化ナトリウム水溶液22.8mLとを、水3977g及びメタノール4000gからなる混合溶媒中に添加して混合液を得た。次に、得られた混合液に対して、テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン3.1g(0.0173モル)とからなるシラン原料を添加して反応液を得た。なお、このようなシラン原料を添加したところ、しばらくしてから反応液が白濁して粒子が合成されていることが確認できた。次いで、前記反応液を室温(25℃)で8時間撹拌した後、撹拌後の反応液中の固形分を濾過により回収した。このようにして得られる固形分(濾過後の残渣)を水1L中に分散させて分散液を得た後、再び濾過により固形分(濾過後の残渣)を回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させることにより、粉末状の多孔体前駆体(乾燥粉末:シリカ/界面活性剤複合体)を得た。
このようにして得られた粉末状の多孔体前駆体(乾燥粉末)10gを、濃塩酸(濃度:36.8質量%)10mLとエタノール(残部)とからなる酸性溶液1L中に分散した分散液を得た後、該分散液を60℃で3時間撹拌することにより、前記多孔体前駆体(乾燥粉末)中からヘキサデシルトリメチルアンモニウムを除去した。次いで、前記分散液から固形分を濾過により回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させた。次に、乾燥後の前記固形分を、10mLの濃アンモニア水溶液(濃度:28質量%)とメタノールとからなる塩基性溶液200mL中に分散して分散液を得た後、室温(25℃)で8時間撹拌し、固形分を濾過により回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させて、有機シリカ系メソ多孔体を得た。
〈中心細孔直径及び比表面積の測定〉
前記有機シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は以下のようにして測定した。すなわち、先ず、測定装置としてQuantachrome社製の商品名「Autosorb−1」を用いて、液体窒素温度(−196℃)でガス吸着法(定容量法を採用)により窒素ガスの吸着量を求め、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させて各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより窒素吸着等温線を求めた。次に、前記窒素吸脱着等温線の脱離曲線をBJH法により解析して細孔分布曲線を求め、前記細孔径分布曲線の最大ピークに基いて中心細孔直径を求めた。
また、前記有機シリカ系メソ多孔体の比表面積は、上記中心細孔径の測定の際に得られた窒素吸着等温線を利用し、BET法により算出することにより求めた。
このような測定の結果、実施例1で得られた多孔体は、中心細孔直径が2.03nmであり、メソ孔を有するものであることが確認された。また、実施例1で得られた多孔体は、比表面積(BET)が168.3m2/gのものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
〈X線回折測定〉
リガク製の粉末XRD装置RINT−2200を用いて、前記有機シリカ系メソ多孔体のX線回折パターンを測定した(粉末X線回折測定)。
このような測定結果として、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例1)のX線回折パターンを図1に示す。図1に示す結果からも明らかなように、2θ=2°近辺にメソ細孔の規則性に基づくピークが確認され(1nm以上のd100値に相当する回折角度(2θ=2°近辺)にピークを有することが確認され)、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例1)は、メソ細孔が規則的に配列されたハニカム構造を有することが分かった。また、得られた有機シリカ系メソ多孔体(実施例1)は、得られたX線回折パターンの2θ=2°近辺のピークから算出される(100)面のd値(d100値)が4.21nmであることが分かった。得られた結果を表1に示す。
〈有機成分の質量比の測定〉
前記有機シリカ系メソ多孔体の有機成分の質量比(有機成分率:多孔体中の有機成分の質量基準の含有割合)を以下のようにして測定した。すなわち、先ず、有機シリカ系メソ多孔体10mgを測定試料として用い、測定装置として熱重量測定装置(リガク社製の熱重量分析装置:商品名「Thermo Plus」)を利用して、大気中において、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から600℃までの温度域で熱重量曲線を測定し、かかる熱重量曲線から150℃における重量分率(W1:150℃での重量の残分率、単位:wt%)と、500℃における重量分率(W2:500℃での重量の残分率、単位:wt%)とを求めて、下記計算式(I):
[有機成分の質量比]=(W1−W2)/W1 (I)
(計算式(I)中、W1は熱重量曲線における150℃における重量分率を示し、W2は熱重量曲線における500℃における重量分率を示す。)
を算出することにより、有機成分の質量比(有機成分率)を求めた。
このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例1)中の有機成分の質量比は0.14(14質量%)であることが確認された。また、有機成分の質量比の値と上記X線回折測定の結果とから、多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値(多孔体中の有機成分の質量比をd100値で除した値)を求めたところ、0.0332/nmであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
〈NMR測定〉
前記有機シリカ系メソ多孔体に対して測定装置として日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「AVANCE 400」を用いて、Si−NMR測定を行なった。
このようなNMR測定の結果としてSi−NMRスペクトルのグラフ(Si−NMRチャート)を図2に示す。このような図2に示す結果からも明らかなように、Si−NMRスペクトルのグラフにおいて−70ppm付近にピークが確認された。ここで、このような−70ppm付近のピークはSi−C結合に基づくものである。このような結果と用いたシリカ原料の種類から、Si−NMRスペクトルのグラフにおいて確認されたSi−C結合はケイ素とアミノプロピル基との結合であることが明らかであり、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例1)は、アミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
(実施例2)
デシルトリメチルアンモニウムブロミド(界面活性剤)15.4g(0.0549モル)と、1規定の水酸化ナトリウム水溶液22.8mLとを、水2977g及びメタノール1000gからなる混合溶媒中に添加して混合液を得た。次に、得られた混合液に対して、テトラメトキシシラン11.9g(0.0782モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.00893モル)とからなるシラン原料を添加して反応液を得た。なお、このようなシラン原料を添加したところ、しばらくしてから反応液が白濁して粒子が合成されていることが確認できた。次いで、前記反応液を室温(25℃)で8時間撹拌した後、撹拌後の反応液中の固形分を濾過により回収した。このようにして得られる固形分(濾過後の残渣)を水1L中に分散させて分散液を得た後、再び濾過により固形分(濾過後の残渣)を回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させることにより、粉末状の多孔体前駆体(乾燥粉末:シリカ/界面活性剤複合体)を得た。
このようにして得られた粉末状の多孔体前駆体(乾燥粉末)10gを、濃塩酸(濃度:36.8質量%)10mLとエタノールとからなる酸性溶液(溶媒:エタノール)1L中に分散した分散液を得た後、該分散液を60℃で3時間撹拌することにより、前記多孔体前駆体(乾燥粉末)中からデシルトリメチルアンモニウムを除去した。次いで、前記分散液から固形分を濾過により回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させた。次に、乾燥後の前記固形分を、10mLの濃アンモニア水溶液(濃度:28質量%)とメタノールとからなる塩基性溶液200mL中に分散して分散液を得た後、室温(25℃)で8時間撹拌し、固形分を濾過により回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させて、有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(実施例2)の比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。なお、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例2)については、上記X線回折測定(粉末X線回折測定)で求められたX線回折パターンからd100の値を求めることにより細孔のサイズ(メソ孔であるか)を確認した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例2)は、比表面積(BET)が14.1m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例2)は、X線回折パターンが1nm以上のd100値に相当する回折角度にピークを有するものであることが確認された。なお、X線回折パターンからd100値は3.86nmであることが確認され、かかる結果から多孔体がメソ孔を有するものであること(メソ多孔体であること)も確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例2)は、有機成分の質量比は0.0964(9.64質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0250/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例2)においてもアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
テトラメトキシシラン11.9g(0.0782モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.00893モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン11.2g(0.0736モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン2.3g(0.0128モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例2と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(実施例3)の比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。なお、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例3)については、上記X線回折測定(粉末X線回折測定)で求められたX線回折パターンからd100の値を求めることにより細孔のサイズ(メソ孔であるか)を確認した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例3)は、比表面積(BET)が56.4m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例3)は、X線回折パターンが1nm以上のd100値に相当する回折角度にピークを有するものであることが確認された。なお、X線回折パターンからd100値が3.38nmであることが確認され、かかる結果から多孔体がメソ孔を有するものであることも確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例3)は、有機成分の質量比は0.127(12.7質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0375/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例3)においてもアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(実施例4)
テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン3.1g(0.0173モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン10.5g(0.069モル)とアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン3.9g(0.0175モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(実施例4)の中心細孔直径、比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例4)は、中心細孔直径が1.35nmであり、メソ孔を有するものであることが確認されるとともに、比表面積(BET)が36.4m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例4)は、X線回折パターンが1nm以上のd100値に相当する回折角度にピークを有するものであることが確認された(なお、X線回折パターンからd100値が4.53nmであることが確認された)。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例4)は、有機成分の質量比は0.200(20.0質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0442/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例4)においてはアミノエチルアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(実施例5)
テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン3.1g(0.0173モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン11.8g(0.0775モル)とアミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン2.4g(0.009モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(実施例5)の中心細孔直径、比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例5)は、中心細孔直径が1.77nmであり、メソ孔を有するものであることが確認されるとともに、比表面積(BET)が125.6m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例5)は、X線回折パターンが1nm以上のd100値に相当する回折角度にピークを有するものであることが確認された(なお、X線回折パターンからd100値が3.82nmであることが確認された)。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例5)は、有機成分の質量比は0.256(25.6質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0668/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(実施例5)においてはアミノエチルアミノエチルアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン3.1g(0.0173モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(比較例1)の比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。なお、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例1)については、上記X線回折測定(粉末X線回折測定)で求められたX線回折パターンからd100の値を求めることにより細孔のサイズ(メソ孔であるか)を確認した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例1)は、比表面積(BET)が8.2m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例1)は、X線回折パターンが1nm以上のd100値に相当する回折角度にピークを有するものであることが確認された。なお、X線回折パターンからd100値が5.52nmであることが確認され、かかる結果から多孔体がメソ孔を有するものであることも確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例1)は、有機成分の質量比は0.173(17.3質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0313/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例1)においてはアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
テトラメトキシシラン11.9g(0.0782モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.00893モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン12.5g(0.0821モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン0.8g(0.00446モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例2と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(比較例2)の比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。なお、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例2)については、上記X線回折測定(粉末X線回折測定)で求められたX線回折パターンからd100の値を求めることにより細孔のサイズ(メソ孔であるか)を確認した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例2)は、比表面積(BET)が412.8m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例2)は、1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するものであることが確認された。なお、X線回折パターンからd100値が2.94nmであることが確認され、かかる結果から多孔体がメソ孔を有するものであることも確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例2)は、有機成分の質量比は0.054(5.4質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0185/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例2)においてはアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(比較例3)
テトラメトキシシラン11.9g(0.0782モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.00893モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン3.1g(0.0173モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例2と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(比較例3)の比表面積及びSi−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例3)は、比表面積(BET)が8.23m2/gであることが確認され、さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、アミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。なお、かかる有機シリカ系メソ多孔体(比較例3)については、比表面積が10m2/g未満であったことから、X線回折パターン、有機成分の質量比等の測定は特に行なっていない。得られた結果を表1に示す。
(比較例4)
テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン3.1g(0.0173モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン11.8g(0.07753モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.008925モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系メソ多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系メソ多孔体(比較例4)の中心細孔直径、比表面積、X線回折パターン、有機成分の質量比、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例4)は、中心細孔直径が2.16nmであり、メソ孔を有するものであることが確認されるとともに、比表面積(BET)が850.5m2/gであることが確認された。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例4)は、X線回折パターンが1nm以上のd100値に相当する回折角度にピークを有するものであることも分かった(なお、X線回折パターンからd100値が4.03nmであることが確認された)。また、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例4)は、有機成分の質量比は0.089(8.9質量%)であり、d100値あたりの有機成分の質量比([有機成分の質量比]/[d100値])の値は0.0221/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系メソ多孔体(比較例4)においてはアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。得られた結果を表1に示す。
(比較例5)
特開2012−139622号公報に記載の方法を参照し、以下のようにして多孔体(メソポーラスシリカ)の細孔内に2−アミノエタノールを導入することにより、2−アミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体を調製した。すなわち、先ず、メタノール50mL中に、メソポーラスシリカ(文献「K.Yano et al.,J.Mater.Chem,vol.14,1579頁,2004年発行」に記載の方法に従って合成したメソポーラスシリカ)1gと、2−アミノエタノール0.4gとを添加して混合液を得た。次いで、温度50℃、圧力30kPaの条件で、前記混合液からメタノールを除去することにより、メソポーラスシリカの細孔内に2−アミノエタノールを導入して、2−アミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体を調製した。
(比較例6)
2−アミノエタノール0.4gを利用する代わりに2−イソプロピルアミノエタノール0.4gを用いた以外は比較例5と同様にして、多孔体(メソポーラスシリカ)の細孔内に2−イソプロピルアミノエタノールを導入することにより、2−イソプロピルアミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体を調製した。
[メソ多孔体の特性の評価]
<実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたメソ多孔体の構造等について>
実施例1〜5で得られた有機シリカ系メソ多孔体は、塩基性官能基(アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基又はアミノエチルアミノエチルアミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有し、比表面積が14.1m2/g以上であり、1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すものであり、かつ、多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[d100値])が0.025/nm以上となるものであることが確認された。
一方、比較例1及び3で得られたメソ多孔体は、塩基性官能基(アミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものの比表面積が10m2/g未満の値となっていた。また、比較例2及び4で得られたメソ多孔体は、塩基性官能基(アミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものの、多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[d100値])が0.023/nm未満の値となっていることが確認された。
<ガス吸着特性の測定>
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた有機シリカ系メソ多孔体をそれぞれ用いて、各メソ多孔体の二酸化炭素(CO2)の吸着等温線及び窒素(N2)の吸着等温線をそれぞれ測定した。なお、測定には、測定装置としてマイクロトラック・ベル社製の商品名「BELSORP−MAX−12−N−T−HL」を用い、測定温度条件を0℃とした。また、このような測定により得られたCO2及びN2の吸着等温線に基いて、下記計算式(II):
[CO2選択吸着率]=(q1/q2)/(p1/p2) (II)
[式(II)中、p1はCO2の分圧(吸着圧力:単位:kPa)を示し、p2はN2の分圧(吸着圧力:単位:kPa)を示し、q1は圧力p1の時の有機シリカ系メソ多孔体1gあたりのCO2のモル吸着量(単位:mmol/g)を示し、q2は圧力p2の時の有機シリカ系メソ多孔体1gあたりのN2のモル吸着量(単位:mmol/g)を示し、]
を計算して、CO2ガスの選択吸着率を求めた。なお、上記計算式(II)によるガスの選択性の計算に際しては、CO2分圧が13kPaでありかつN2分圧が87kPaである混合ガスをメソ多孔体で吸着したものと仮定して選択率を計算した。なお、このような混合ガスはメタン燃焼時の排ガスを模したものである。
このような測定により得られた各メソ多孔体のCO2の吸着等温線を図3に示し、各メソ多孔体のN2の吸着等温線を図4に示す(なお、比較例1及び3についてはN2をほとんど吸着できなかったため図4にN2の吸着等温線は記載していない)。また、かかるCO2の吸着等温線のデータに基いて、圧力13kPaでのCO2のモル吸着量が0.35mmol/g以上となっているものについて、上記計算式(II)を計算して求めたCO2選択吸着率の測定結果を表1に示す。このようなCO2選択吸着率の値が100以上であれば、CO2を選択的に吸着できるものであると考えられる。なお、比較例1及び3については、図3に示す結果からも明らかなようにほとんどCO2を吸着しておらず、CO2及びN2のいずれについても吸着量が低いことから(特に圧力13kPaでのCO2のモル吸着量が0.1mmol/g未満であることから)、CO2選択吸着率の測定(計算)を行なっていない。また、実施例1〜5並びに比較例2及び4について、計算式(II)に導入した圧力13kPaでのCO2のモル吸着量、圧力87kPaでのN2のモル吸着量を表2に示す。さらに、参考のために、実施例1〜5並びに比較例1、2及び4で得られたメソ多孔体の有機分率と比表面積との関係を図5に示す。
図3〜4及び表2に示す結果からも明らかなように、実施例1〜5で得られた有機シリカ系メソ多孔体はいずれもCO2を十分に吸着しながらN2はほとんど吸着しないものであることが分かった。これに対して、比較例1及び3で得られた有機シリカ系メソ多孔体はいずれも、CO2とN2の双方とも十分量を吸着できないことが分かった(図3)。また、比較例2及び4で得られた有機シリカ系メソ多孔体はいずれも、CO2とN2の双方とも十分に吸着していることが分かった(図3〜4)。
また、表1に示す結果からも明らかなように、実施例1〜5で得られた有機シリカ系メソ多孔体はいずれも、CO2選択吸着率が270以上となっており、N2とCO2との混合ガスからCO2を十分に選択的に吸着して分離することが可能であることが分かった。これに対して、比較例2及び4で得られた有機シリカ系メソ多孔体はCO2選択吸着率が68以下の値となっており、N2とCO2との混合ガスからCO2を選択的に吸着分離する性能が十分なものではなかった。また、比較例1及び3については、そもそもCO2及びN2のいずれも吸着量が低く(圧力13kPaでのCO2のモル吸着量が0.1mmol/g未満である)、ガスを吸着分離する性能が十分なものではないことが分かった。
さらに、表1及び図5に示す結果について検討すると、有機シリカ系メソ多孔体の比表面積が10m2/g未満の場合(比較例1、3)には、そもそもCO2及びN2を十分に吸着させること自体が困難であり、十分に高度な吸着分離性能を発揮させることができないことが確認され、また、有機シリカ系メソ多孔体の比表面積が10m2/g以上であってもd100値あたりの有機成分率(多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより求められる値:[有機成分の質量比]/[d100値])が0.023/nm未満の場合(比較例2、4)には、CO2選択吸着率が100以上となるような、CO2に対する高度な選択吸着性を発現させることができないことが確認された。
このような結果から、塩基性官能基(アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基又はアミノエチルアミノエチルアミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有し、比表面積が14.1m2/g以上であり、1nm以上のd100値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すものであり、かつ、多孔体中の有機成分の質量比を前記d100値で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[d100値])が0.025/nm以上となる有機シリカ系メソ多孔体(実施例1〜5)をCO2分離材として利用した場合には、CO2選択吸着率が100以上となるような高度な選択吸着性能を発現させて、CO2を十分に選択的に分離することが可能であることが確認された。
<耐熱性の評価>
実施例1〜2で得られた有機シリカ系メソ多孔体、比較例5で得られた2−アミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体、及び、比較例6で得られた2−イソプロピルアミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体をそれぞれ用い、測定装置としてリガク製の熱重量分析装置(商品名「Thermo Plus」)を用いて、窒素雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)〜1000℃まで加熱して、熱重量減少曲線(メソ多孔体の重量の残存率(重量分率:wt%)と温度との関係を示すグラフ)を求めた。結果を図6に示す。
図6に示す結果からも明らかなように、比較例5で得られた2−アミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体及び比較例6で得られた2−イソプロピルアミノエタノール含有シリカ系メソ多孔体においては、熱重量減少曲線において300℃付近の急激な重量の減少が確認された。このような比較例5及び6で得られた多孔体の300℃付近の重量の減少は、多孔体の細孔内に導入された2−アミノエタノール又は2−イソプロピルアミノエタノールが300℃の加熱により蒸発除去されたことに起因するものであることが明らかである。なお、比較例5及び6で得られた多孔体の100℃付近の重量の減少は、細孔内のメタノールや水に起因するものであることも明らかである。これに対して、実施例1〜2で得られた有機シリカ系メソ多孔体は500℃程度まで大きな重量の減少がないことから、500℃程度まで塩基性官能基を十分に保持していることが明らかである。
このように、図6に示す熱重量減少曲線から、実施例1〜2で得られた有機シリカ系メソ多孔体は、比較例5及び6で得られた多孔体と比較して、高温まで重量減少が抑制されていることから、より高度な耐熱性を有することが分かった。すなわち、図6に示す熱重量減少曲線から、実施例1〜2で得られた有機シリカ系メソ多孔体は、重量の減少を500℃程度の高温まで十分に抑制できるのに対して、比較例5及び6で得られた多孔体においては300℃程度で重量が大きく減少していることから、実施例1〜2で得られた有機シリカ系メソ多孔体により、より高度な耐熱性が得られることが分かった。このような耐熱性の結果は、実施例1〜2で得られた有機シリカ系メソ多孔体においては、塩基性官能基がケイ素(Si)に結合した構造を有するのに対して、比較例5及び6で得られた多孔体においては、塩基成分が単に物理吸着していることに起因するものであると本発明者らは推察している。