以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のCO2吸着材は、有機シリカ系多孔体からなるCO2吸着材であって、
前記有機シリカ系多孔体が、
該多孔体の骨格中のケイ素に塩基性官能基が結合した下記一般式(1):
X−Si (1)
[式(1)中、Xは式:R1−NH−(CH2)n−(式中のR1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかを示し、nは1〜6の整数を示す。)で表される塩基性官能基を示す。]
で表される構造を有するものであり、
該多孔体の窒素吸着等温線に基づいて求められる比表面積が1〜30m2/gのものであり、
該多孔体中の有機成分の質量比を、該多孔体を550℃で6時間加熱処理して得られる試料の窒素吸着等温線に基づいて求められる該試料の平均細孔径で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])が0.06/nm以上のものであること、
を特徴とするものである。
このような有機シリカ系多孔体は、骨格中のケイ素に塩基性官能基が結合した下記一般式(1):
X−Si (1)
[式(1)中、Xは式:R1−NH−(CH2)n−(式中のR1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかを示し、nは1〜6の整数を示す。)で表される塩基性官能基を示す。]
で表される構造を有する。このように、本発明にかかる有機シリカ系多孔体においては、塩基性官能基(X)が骨格中のケイ素(Si)に結合された構造を有しており、かかる塩基性官能基がCO2に対する親和性が高い基であるため、その塩基性官能基に起因してCO2の吸着性能をより高度なものとすることが可能である。なお、上述のように塩基性官能基(X)が骨格中のケイ素(Si)に結合していることから、仮にCO2吸着材の再利用時にCO2を回収するために180℃程度まで加熱した場合においても、塩基性官能基が脱離することを十分に抑制できるため、CO2吸着性能に関して十分に高度な耐熱性を発揮することも可能である。このような塩基性官能基が骨格中のケイ素に結合している有機シリカ系多孔体(有機基を有するシリカ系多孔体)は、後述の塩基性官能基含有トリアルコキシシランを利用してシリカ系多孔体を製造することで効率よく製造することができる。
このような塩基性官能基(上記一般式(1)においてXで表される基)は、式:R1−NH−(CH2)n−で表される基である。このような塩基性官能基の式中のR1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかである。
前記R1として選択され得るアミノアルキル基は炭素数が1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると細孔内のアミノ基の量が減少するためにCO2の吸着量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、そのような塩基性官能基を有するトリアルコキシシランを合成することが困難(原料の合成や入手が困難)となる傾向にある。また、このようなR1として選択され得るアミノアルキル基としてはアミノエチル基、アミノプロピル基がより好ましく、アミノエチル基が特に好ましい。
また、前記R1として選択され得るアミノアルキルアミノアルキル基は、各アミノアルキル部分の炭素数が1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると細孔内のアミノ基の量が減少するためにCO2の吸着量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、そのような塩基性官能基を有するトリアルコキシシランを合成することが困難となる傾向にある。また、このようなR1として選択され得るアミノアルキルアミノアルキル基としてはアミノエチルアミノエチル基、アミノプロピルアミノプロピル基がより好ましく、アミノエチルアミノエチル基が特に好ましい。
このようなR1としては、中でも、細孔内にアミノ基をより均一に分散させるという観点から、水素原子、炭素数が1〜5(更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2〜3)のアミノアルキル基、アミノアルキル部分の炭素数がそれぞれ1〜5(更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2〜3)であるアミノアルキルアミノアルキル基が好ましい。
また、前記塩基性官能基(式:R1−NH−(CH2)n−で表される基)の式中のnは1〜6(より好ましくは2〜5、更に好ましくは3〜4)の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると細孔内のアミノ基の量が減少するためにCO2の吸着量が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、そのような塩基性官能基を有するトリアルコキシシランを合成することが困難(原料の合成や入手が困難)となる傾向にある。
また、このような塩基性官能基(上記一般式(1)においてXで表される基)としては、アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、アミノエチルアミノエチルアミノプロピル基が好ましい。
さらに、このような有機シリカ系多孔体は、該有機シリカ系多孔体を550℃で6時間加熱処理して得られる試料の窒素吸着等温線に基づいて求められる、該試料の平均細孔径(平均細孔直径)が1〜50nm(好ましくは1.2〜20nm)であることが好ましい。ここで、本発明にいう「試料の平均細孔径」とは、該有機シリカ系多孔体を550℃で6時間加熱処理して得られる試料(焼成品)を用いて測定される値であって、該試料の窒素吸着等温線に基づいて求められる該試料の比表面積(S)と、該試料の細孔容積(V)とから、式:D=4V/S[式中、Dは前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)を示し、Vは前記試料の細孔容積を示し、Sは前記試料の比表面積を示す]を計算することにより求められる値(平均細孔直径)をいう。なお、このような試料の比表面積(S)としては、有機シリカ系多孔体100mgを550℃で6時間加熱処理して得られる試料(焼成品)を準備した後、かかる試料を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法(ガス吸着法)あるいは重量法により窒素ガスの吸着量を求め、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより、前記試料の窒素吸着等温線を得た後、該試料の窒素吸着等温線からBET等温吸着式を用いて算出された値を採用する。また、前記試料の細孔容積(V)としては、前記試料の窒素吸着等温線を利用して、P/P0(相対圧)=0.95における窒素ガスの吸着量を標準状態(圧力100kPa、温度25℃)に換算することにより求められる窒素ガス吸着容量を採用する。すなわち、このような試料の平均細孔径の計算に利用する前記試料の比表面積(S)はBET法により求められる比表面積(前記試料のBET比表面積)であり、かつ、前記試料の細孔容積(V)はP/P0(相対圧)=0.95における窒素の吸着量を標準状態に換算することにより求められる窒素ガス吸着容量である。なお、本発明においては、前記試料の平均細孔径を前記有機シリカ系多孔体の平均細孔径であるものと擬制して、試料の平均細孔径が1〜50nmの範囲にある場合、該多孔体は細孔直径が1〜50nmのメソ孔を有するものであると判断することができる。
また、このような有機シリカ系多孔体としては、細孔が多孔体の表面のみならず内部にも形成されているものが好ましい。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されない。
このような多孔体の細孔配列構造がヘキサゴナル構造(2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造)であるとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449,1996、Q.Huo,et al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体の細孔配列構造がキュービック構造であるとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
また、このような有機シリカ系多孔体は、該多孔体の窒素吸着等温線に基づいて求められる比表面積が1〜30m2/gである。このような比表面積が前記上限を超えると高温でCO2吸着量が増大するという特性が発現されない傾向にあり、他方、前記下限未満では、ガスと接触させた際にガス中のCO2を十分に吸着することができなくなる。このような多孔体の窒素吸着等温線に基づいて求められる比表面積は、1〜20m2/gであることがより好ましく、1〜13m2/gであることが更に好ましく、1〜10m2/gであることが特に好ましい。このような比表面積を前記範囲内とすることで、水蒸気等の他のガスの吸着を十分に抑制しながら、CO2をより効率よく分離することが可能となる傾向にある。なお、比表面積が前記上限を超えると他のガスの吸着量が増大し、CO2の吸着選択率が低下する傾向にある。なお、このような有機シリカ系多孔体の比表面積としては、該有機シリカ系多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法(ガス吸着法)あるいは重量法により前記有機シリカ系多孔体に対する窒素ガスの吸着量を求め、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより、前記有機シリカ系多孔体の窒素吸着等温線を得た後、該有機シリカ系多孔体の窒素吸着等温線からBET等温吸着式を用いて算出される値(BET比表面積)を採用する。すなわち、このような有機シリカ系多孔体の比表面積としては、有機シリカ系多孔体をそのまま用いて求められる窒素吸着等温線(該多孔体の窒素吸着等温線)からBET等温吸着式を用いて算出された値(BET法により求められる比表面積:BET比表面積)を採用する。また、このような窒素吸着等温線の測定に際しては、測定に際して予め有機シリカ系多孔体に乾燥処理(例えば、真空条件下(1Pa以下の条件下)において80〜150℃で2時間程度加熱する処理等)を施すことが好ましい。
また、前記有機シリカ系多孔体は、該多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)が0.06〜0.5であることが好ましく、0.08〜0.3であることがより好ましい。このような有機成分の質量比が前記下限未満では有機成分である塩基性官能基の含有量が低くなることからCO2を十分に吸着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔が縮小し、CO2の吸着量が減少する傾向にある。なお、このような多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)としては、以下のようにして測定できる値を採用する。すなわち、先ず、有機シリカ系多孔体の10mgを測定試料として用い、大気中において、熱重量測定装置(例えばリガク社製の商品名「Thermo Plus」)を利用して、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から800℃までの温度域で熱重量曲線を測定し、かかる熱重量曲線から150℃における重量分率(150℃での重量の残分率、すなわち、測定試料の当初重量に対して150℃において残存している成分の重量の割合、単位:wt%:以下、場合により単に「W1」又は「重量分率(W1)」と称する)と、600℃における重量分率(600℃での重量の残分率、すなわち、測定試料の当初質量に対して600℃において残存している成分の重量の割合、単位:wt%:以下、場合により単に「W2」又は「重量分率(W2)」と称する)を利用し、150℃における重量分率(W1)の値を測定試料中の有機シリカ系多孔体自体の重量の比率と擬制し(細孔中の溶媒等が十分に除去された状態の有機シリカ系多孔体自体の重量の比率と擬制し)、150℃における重量分率(W1)から600℃における重量分率(W2)を引いた差分(W1−W2)を有機成分の比率と擬制して、上記150℃における重量分率と600℃における重量分率の差分(W1−W2)を、150℃における重量分率(W1)で除することにより、有機成分の質量比(有機成分率)を求める。このように、本発明においては、上述のようにして熱重量曲線を求めた後、下記計算式(I):
[有機成分の質量比]=(W1−W2)/W1 (I)
(計算式(I)中、W1は上記熱重量曲線における150℃における重量分率を示し、W2は上記熱重量曲線における600℃における重量分率を示す。)
を算出することにより求められる値を有機成分の質量比(有機成分率)として採用する。
また、前記有機シリカ系多孔体は、該多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)を、該多孔体を550℃で6時間加熱処理して得られる試料の窒素吸着等温線に基づいて求められる該試料の平均細孔径で除することにより求められる値(平均細孔径あたりの有機成分率:[有機成分の質量比(有機成分率)]/[試料の平均細孔径])が0.06/nm以上となるものである(ここにいう「有機成分の質量比(有機成分率)」は、前述の計算式(I)で求められる値である)。このような平均細孔径あたりの有機成分率([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値が前記下限未満ではCO2を十分に選択的に分離することができなくなる。なお、平均細孔径あたりの有機成分率([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は、各細孔あたりの有機成分(塩基性官能基)の量を確認するための指標とすることができ、かかる値が0.06/nm以上となる場合には、CO2を吸着する性能を十分に向上させるために、CO2との親和性の高い塩基性官能基が十分な割合で導入されているものと判断することが可能である。
また、このような平均細孔径あたりの有機成分率([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値としては、0.07〜0.2/nmであることが好ましく、0.07〜0.15/nmであることがより好ましい。このような平均細孔径あたりの有機成分率が前記範囲内にある場合には細孔内にアミノ基がより十分に分散され、CO2をより十分に吸着できるものとなる傾向にある。なお、このような平均細孔径あたりの有機成分率が前記上限を超えると、細孔が縮小して、CO2の吸着量が減少する傾向にある。
また、このような有機シリカ系多孔体としては、調製がより容易であるといった観点から、上記一般式(2)で表される塩基性官能基を含有するトリアルコキシシラン(塩基性官能基含有トリアルコキシシラン)と、テトラアルコキシランとの縮合物(共重合体)であることがより好ましい。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシランについては後述する(CO2吸着材を製造するために好適な方法を説明する際に、より詳細に説明する)。
また、このような有機シリカ系多孔体の形状は特に制限されないが、上記条件を満たす有機シリカ系多孔体の調製がより容易であることから、粉末状であることが好ましい。また、有機シリカ系多孔体が粉末状である場合、平均粒径は0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがより好ましい。このような平均粒径が前記下限未満では粒子が凝集し、成形加工性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると粒子内部の細孔がCO2の吸着に寄与できなくなり、CO2の吸着量が低下する傾向にある。なお、ここにいう粉末を構成する粒子は、いわゆる球状の粒子の他、最小直径が最大直径の10%以上(好ましくは20%以上)である略球体の粒子であってもよい。また、粒子が略球体の場合、その粒径は、原則として最小直径と最大直径との平均値をいう。
また、本発明のCO2吸着材は、前記有機シリカ系多孔体からなるものであればよく、その形態等は特に制限されず、例えば、粉末状の有機シリカ系多孔体をそのままCO2吸着材としてもよく、あるいは、各種基材(例えば、アルミ二ウムのハニカム等)に担持して利用してもよい。このように、本発明のCO2吸着材は、使用する用途に応じて、その形態を適宜変更して利用することができる。また、有機シリカ系多孔体が粉末状である場合、必要に応じて成形して使用してもよい。このような成形の手段としては特に制限されず、用途に応じて最適な形状となるように、押出成形、打錠成形、CIP等の公知の成形手段を適宜利用できる。
以上、本発明のCO2吸着材について説明したが、以下、本発明のCO2吸着材を製造するために好適な方法について説明する。
本発明のCO2吸着材を製造するために好適な方法は、特に制限されないが、例えば、溶媒中において、シリカ原料と界面活性剤とを混合し、前記界面活性剤が細孔に導入されてなる多孔体前駆体を得る第1の工程と、
前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤を除去することにより有機シリカ系多孔体からなるCO2吸着材を得る第2の工程とを含み、
前記シリカ原料として下記一般式(2):
R1−NH−(CH2)n−Si(OR2)3 (2)
[式中、R1は水素原子、アミノアルキル基及びアミノアルキルアミノアルキル基からなる群から選択されるいずれかを示し、nは1〜6の整数を示し、R2はアルキル基を示す。]
で表される塩基性官能基含有トリアルコキシシランと、テトラアルコキシランとの混合物を用い、
前記界面活性剤として下記一般式(3):
CH3(CH2)mN+(CH3)3 ・ Y− (3)
[式中、mは8〜25の整数を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
で表されるアルキルトリメチルアンモニウムハライドを用い、かつ、
前記シリカ原料中の前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率を調整することにより、前記CO2吸着材として上記本発明のCO2吸着材を得る方法であることが好ましい。以下、このような方法を、工程ごとに分けて説明する。
〈第1の工程〉
第1の工程は、溶媒中において、シリカ原料と界面活性剤とを混合し、前記界面活性剤が細孔に導入されてなる多孔体前駆体を得る工程である。
第1の工程において用いる前記溶媒としては、シリカ系多孔体を製造する際に利用することが可能な公知の溶媒を適宜利用でき、特に制限されるものではないが、反応速度を制御し、粒径の均一な粒子を製造するという観点から、水とアルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、グリセリンが挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点からメタノールまたはエタノールが好ましい。また、前記溶媒を水とアルコールの混合物とする場合(溶媒を「水/アルコール混合溶媒」とする場合)、水/アルコール混合溶媒中のアルコールの含有比率は特に制限されるものではないが、アルコール量が10〜90容量%(さらに好ましくは20〜80容量%)であることがより好ましい。このようなアルコールの含有量が前記下限未満では粒子径の分布が広く、粒子径の大きな粒子が得られる傾向にあり、他方、前記上限を超えると細孔の規則性が著しく低下する傾向にある。
第1の工程において用いるシリカ原料は、上記一般式(2)で表される塩基性官能基含有トリアルコキシシランと、テトラアルコキシランとの混合物である。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシラン(式:R1−NH−(CH2)n−Si(OR2)3で表される化合物)に関して、上記一般式(2)中のR1、nは本発明のCO2吸着材において説明した上記一般式(1)中のR1、nと同様のものである(その好適なものも同様である)。また、上記一般式(2)中のR2はアルキル基である。このようなR2として選択され得るアルキル基としては、それぞれ独立に、炭素数が1〜3のアルキル基であることが好ましく、1〜2のアルキル基であることがより好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると溶媒への溶解性、反応性が低下し、粒子径が大きくなり、細孔の規則性が低くなる傾向にある。また、このようなアルキル基としてはメチル基、エチル基がより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランとしては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランは、1種を単独で、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。但し、2種類以上の塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、塩基性官能基含有トリアルコキシシランは1種を単独で使用することが好ましい。
また、前記シリカ原料として用いられる前記テトラアルコキシシランとしては、公知のものを適宜利用できる。このようなテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。また、このようなテトラアルコキシシランの中でも、反応性の観点等から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランが特に好ましい。このようなテトラアルコキシシランは、1種を単独で、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。但し、2種類以上のテトラアルコキシシランを用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、テトラアルコキシシランは1種を単独で使用することが好ましい。
また、前記シリカ原料中(前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの混合物)において、前記テトラアルコキシランと前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランの含有比率は、上記特定の有機シリカ系多孔体を製造するために、用いる界面活性剤の種類に応じて、その比率を適宜変更する必要がある。このような含有比率については後述する。
第1の工程において用いる界面活性剤は、下記一般式(3):
CH3(CH2)mN+(CH3)3 ・ Y− (3)
[式中、mは8〜25の整数を示し、Yはハロゲン原子を示す。]
で表されるアルキルトリメチルアンモニウムハライドである。
このようなアルキルトリメチルアンモニウムハライドは、界面活性剤分子の対称性に優れるものである。そのため、前記アルキルトリメチルアンモニウムハライドを用いた場合には、容易に界面活性剤同士を凝集(ミセルの形成等)させることができる。
また、上記一般式(1)におけるmは8〜25の整数を示し、8〜17の整数であることがより好ましく、9〜15の整数であることが特に好ましい。前記mが7以下であるアルキルトリメチルアンモニウムハライドでは、ミセルの形成が不十分となるため多孔体を得ることができなくなってしまう傾向にある。他方、前記mが26以上のアルキルトリメチルアンモニウムハライドでは、界面活性剤の疎水性相互作用が強すぎるため、層状の化合物が生成されてしまい、多孔体を得ることができなくなってしまう傾向にある。
さらに、上記一般式(3)におけるYはハロゲン原子を示し、このようなハロゲン原子の種類は特に制限されないが、入手の容易さの観点からYは塩素原子または臭素原子であることが好ましい。
また、上記一般式(3)で表される界面活性剤は、具体的には、炭素数9〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであり、例えば、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライド等が挙げられる。このような界面活性剤は、より効率よくCO2吸着材を製造するといった観点から、1種を単独で使用することが好ましい。
また、第1の工程においては、前記CO2吸着材として上記本発明のCO2吸着材を得るために、前記シリカ原料中の前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率を調整する。このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率は、前記アルキルトリメチルアンモニウムハライド(界面活性剤)の種類や、用いる前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランの種類に応じて、目的の設計となるように適宜調整する必要があり、一概に言えるものではない。
このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率は、上述のように一概に言えるものではないが、前記界面活性剤として上記一般式(3)中のmの値が8〜12である前記アルキルトリメチルアンモニウムハライド(より好ましくはデシルトリメチルアンモニウムハライド)を用いる場合であって、例えば、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランとして前記一般式(2)中のR1が水素原子である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)を、塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して15〜35モル%の範囲に調整することが好ましく、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランとして前記一般式(2)中のR1がアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)を、塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して15〜35モル%の範囲に調整することが好ましく、さらに、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランとして前記一般式(2)中のR1がアミノアルキルアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチルアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)を、塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して5〜25モル%の範囲に調整することが好ましい。
また、このような塩基性官能基含有トリアルコキシシランと前記テトラアルコキシランとの含有比率に関して、前記界面活性剤として上記一般式(3)中のmの値が13〜25である前記アルキルトリメチルアンモニウムハライド(より好ましくはヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド)を用いる場合であって、例えば、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランが前記一般式(2)中のR1が水素原子である塩基性官能基含有トリアルコキシシランである場合には、その含有比率(モル%)を、塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して22〜48モル%の範囲に調整することが好ましく、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランが前記一般式(2)中のR1がアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)を、塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して22〜48モル%の範囲に調整することが好ましく、さらに、前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランが前記一般式(2)中のR1がアミノアルキルアミノアルキル基(より好ましくはアミノエチルアミノエチル基)である塩基性官能基含有トリアルコキシシランを用いる場合には、その含有比率(モル%)を、塩基性官能基含有トリアルコキシシランとテトラアルコキシランとの合計量に対して12〜38モル%の範囲に調整することが好ましい。
さらに、本発明においては、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合する際に、シリカ原料の濃度はSi濃度換算で溶液の全容量を基準として0.0005〜0.1mol/L(好ましくは、0.003〜0.05mol/L)とすることが好ましい。このようなシリカ原料の濃度が前記下限未満では粒子径及び粒子径分布の制御が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶媒中におけるシリカ原料の量が過剰となることから、細孔のテンプレートとなるべき界面活性剤の比率が不足するために良好な多孔体を得ることができない傾向にある。
また、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合する際に、界面活性剤の濃度は溶液の全容量を基準として0.0003〜0.3mol/L(好ましくは、0.0005〜0.15mol/L)とすることが好ましい。このような界面活性剤の濃度が前記下限未満では細孔の鋳型(テンプレート)となるべき界面活性剤の比率が不足するために良好な多孔体を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粉末状の多孔体を得る場合に、その粒径及び粒径分布の制御が困難となって、得られる有機シリカ系多孔体の粒径の均一性が低くなる傾向にある。
さらに、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を前記溶媒中で混合する際に、前記シリカ原料と前記界面活性剤の含有比率は、シリカ原料中のSi濃度換算のモル量(シリカ原料Si濃度換算のモル量)と界面活性剤のモル量との比([シリカ原料Si濃度換算のモル量]:[界面活性剤のモル量])で、1:10〜20:1(より好ましくは1:5〜10:1)であることが好ましい。このような界面活性剤のモル量が前記下限未満では細孔の形成が不完全となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると界面活性剤で被覆されたナノ粒子が形成される傾向にある。
また、第1の工程においては、溶媒中において、前記シリカ原料及び前記界面活性剤を混合する。この際、塩基性条件下で混合することが好ましい。シリカ原料は一般に塩基性条件下においても酸性条件下においても反応が生じケイ素酸化物へと変化するが、酸性条件で反応させる場合よりも、塩基性条件で反応させる場合の方がケイ素原子の反応点がより増加し、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができる傾向にあるため、塩基性条件下で混合することは、かかる点において有利である。このような観点から、第1の工程においては、前記溶媒を塩基性にするために、前記溶媒に水酸化ナトリウム等の塩基性物質を添加することが好ましい。このような溶媒の塩基性条件に関しては特に制限されないが、添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1〜0.9となるようにすることが好ましく、0.2〜0.5となるようにすることがより好ましい。添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1未満である場合は、収率が低下してしまう傾向があり、他方、0.9を超える場合は、多孔体の形成が困難となる傾向がある。
なお、このような混合により、シリカ原料である上記各アルコキシシランから加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。そのため、形成されるケイ素酸化物には、シリカ原料中の前記塩基性官能基含有トリアルコキシシランに由来して、塩基性官能基(式:R1−NH−(CH2)n−で表される基)が導入されることとなる。すなわち、骨格中のケイ素に前記塩基性官能基が結合した構造(式:R1−NH−(CH2)n−Siで表される構造)を有するケイ素酸化物が得られることとなる。また、このようなケイ素酸化物が形成される縮合反応に際して、界面活性剤が存在している部分には孔が形成されることになる。このように、界面活性剤はケイ素酸化物(シリカ原料の縮合物)中に導入されて孔形成のためのテンプレートとして機能する。このようにして、第1の工程においては、前記界面活性剤が細孔に導入されてなる多孔体前駆体(孔の形成されている部位に界面活性剤が導入されているシリカ(ケイ素酸化物)からなる多孔体前駆体)が形成されることとなる。
このような第1の工程における前記縮合反応の反応条件(反応温度、反応時間等)は特に制限されず、反応温度としては、例えば−20℃〜100℃(好ましくは0℃〜80℃、より好ましくは10℃〜40℃)とすることができる。また、反応は撹拌状態で進行させることが好ましい。具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類等に基づいて決定することが好ましい。
なお、このような第1の工程においては、例えば、以下のようにして多孔体前駆体を得ることができる。先ず、水とアルコールの混合溶媒に対して、前記界面活性剤及び塩基性物質を添加して前記界面活性剤を含有する塩基性溶液を調製し、得られた塩基性溶液に前記シリカ原料を添加する。このようにして添加されたシリカ原料は前記溶液中で加水分解(または、加水分解および縮合)するため、添加後しばらくすると沈殿物(白色粉末)が析出する。そして、このような沈殿物(白色粉末)が析出した後において、0℃〜80℃(好ましくは10℃〜40℃)で1時間〜10日、前記溶液をさらに撹拌してシリカ原料の反応を進行させることで、粉末状の多孔体前駆体(孔の形成されている部位に前記界面活性剤が導入されてなる多孔体前駆体(シリカ系多孔体前駆体)を得ることができる。
また、第1の工程においては、反応の終了後においては、得られた多孔体前駆体を必要に応じて、ろ過および洗浄してもよい。例えば、上述のようにして粉末状の多孔体前駆体を得る場合においては、得られた沈殿物(白色粉末)を濾過して得られた固形分を大量の水に分散させることにより洗浄し、再度濾過し乾燥してもよい。このようにして、第1の工程において多孔体前駆体を得ることができる。
なお、このようにして調製する多孔体前駆体の形状は特に制限されず、前述の粉末状の他、例えば、薄膜状等の種々の形状としてもよい。なお、このように薄膜状の多孔体前駆体を製造する場合には、第1の工程として、例えば、以下のような方法を採用することが好ましい。すなわち、先ず、前記溶媒と前記界面活性剤とを含む溶液に酸(例えば、塩酸、硝酸など)を添加して得られる酸性溶液に前記シラン原料を添加し、この溶液を撹拌して反応(部分加水分解および部分縮合反応)させて、部分重合体を含有するゾル溶液を製造する。なお、前記シラン原料の加水分解反応はpHが低い領域で起こり易いことから、系のpHをより低くすることにより部分重合を促進させることができる。そのため、前記酸性溶液のpHは6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。また、反応温度は15〜25℃程度が好ましく、反応時間は30分間〜1日間程度が好ましい。次に、このようにして得られたゾル溶液を基板に塗布することにより薄膜状の多孔体前駆体を調製することができる。前記ゾル溶液を基板に塗布する方法としては特に制限はなく、各種コーティング方法を適宜採用することができる。例えば、溶液キャスト法や、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いて塗布する方法、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングといった方法などが挙げられる。なお、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、基板にパターン状の多孔体前駆体を形成することも可能である。
〈第2の工程〉
第2の工程は、前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤を除去することにより有機シリカ系多孔体からなるCO2吸着材を得る工程である。
前記多孔体前駆体に含まれる前記界面活性剤を除去する方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用でき、例えば、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等を挙げることができる。前記界面活性剤を除去する方法として前記有機溶媒で処理する方法を採用する場合は、用いた界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に多孔体前駆体を浸漬して界面活性剤を抽出する方法を採用することが好ましい。また、前記界面活性剤を除去する方法として前記イオン交換法を採用する場合においては、前記多孔体前駆体を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱しながら撹拌を行う方法を採用することができる。これにより、前記多孔体前駆体の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。また、このようにして酸性溶液によりイオン交換した後においては、塩基性溶液(少量の濃アンモニア水溶液を含むメタノール等)中に、イオン交換後の多孔体を浸漬し、例えば、10〜60℃(好ましくは室温程度)で撹拌することが好ましい。このようにイオン交換後の多孔体を塩基性溶液(少量の濃アンモニア水溶液を含むメタノール等)中で撹拌することにより、アミノ基の塩酸塩をアミノ基に変換することが可能となる。
このようにして界面活性剤を除去することにより、有機シリカ系多孔体であって、該多孔体の骨格中のケイ素に塩基性官能基が結合した上記一般式(1)で表される構造を有するものであり、該多孔体の比表面積(有機シリカ系多孔体の窒素吸着等温線に基づいて求められる比表面積)が1〜30m2/gであり、該多孔体中の有機成分の質量比を、該多孔体を550℃で6時間加熱処理して得られる試料の窒素吸着等温線に基づいて求められる該試料の平均細孔径で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])が0.06/nm以上である有機シリカ系多孔体を得ることができる。このようにして調製される有機シリカ系多孔体は、上記本発明のCO2吸着材において説明したものと同様のものである。すなわち、このようにして有機シリカ系多孔体を調製することで、上記本発明のCO2吸着材を効率よく得ることができる。
このような本発明のCO2吸着材の用途としては特に制限されるものではないが、例えば、発電所からの排ガス(排ガス中のCO2の含有割合は一般にCO2:15〜16容量%程度であり、排ガス温度は一般に50〜75℃程度であり、圧力は100kPa(1Bar)程度である)や、自動車からの排ガス(ガス中のCO2の含有割合は一般にCO2:10容量%程度であり、排ガス温度は一般に70〜90℃程度であり、圧力は100kPa程度である)中のCO2を吸着して分離するためのCO2吸着材としての用途等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)3.52g(0.011モル)と、1規定の水酸化ナトリウム溶液2.28mLとを、水397.7g及びメタノール400gからなる混合溶液中に添加して混合液を得た(混合液を得る工程)。次に、得られた混合液に対して、テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を添加して反応液を得た。なお、このようなシラン原料を添加したところ、しばらくしてから反応液が白濁して粒子が合成されていることが確認できた。次いで、前記反応液を室温(25℃)で8時間撹拌した後、撹拌後の反応液中の固形分を濾過により回収した。このようにして得られる固形分(濾過後の残渣)を水1Lに再分散させて分散液を得た後、再び濾過により固形分(濾過後の残渣)を回収し、、得られた固形分(残渣)を45℃のオーブンで乾燥させることにより、粉末状の多孔体前駆体(乾燥粉末:シリカ/界面活性剤複合体)を得た。
このようにして得られた粉末状の多孔体前駆体(乾燥粉末)10gを、濃塩酸(濃度:36.8質量%)10mLとエタノール(残部)とからなる酸性溶液1L中に分散した分散液を得た後、該分散液を60℃で3時間撹拌することにより、前記粉末状の多孔体前駆体中からヘキサデシルトリメチルアンモニウムを除去した。次いで、前記分散液から固形分を濾過により回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させた。次に、乾燥後の前記固形分3.5gを、10mLの濃アンモニア水溶液(濃度:28質量%)とメタノール(残部)とからなる塩基性溶液200mL中に分散して分散液を得た後、室温(25℃)で8時間撹拌した。その後、前記撹拌後の分散液から固形分を濾過により回収し、得られた固形分を45℃のオーブンで乾燥させることにより、有機シリカ系多孔体を得た。
〈有機シリカ系多孔体の比表面積の測定〉
前記有機シリカ系多孔体の比表面積は以下のようにして測定した。すなわち、先ず、前記有機シリカ系多孔体50mgを真空条件(1Pa以下の条件)下において80℃で2時間加熱処理して、前記有機シリカ系多孔体の測定用の試料(乾燥させた有機シリカ系多孔体)を準備した。次に、得られた測定用の試料を用い、測定装置としてQuantachrome社製の商品名「Autosorb−1」を用いて、液体窒素温度(−196℃)でガス吸着法(定容量法を採用)により窒素ガスの吸着量を求め、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させて各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより、前記有機シリカ系多孔体の窒素吸着等温線を求めた。次に、前記有機シリカ系多孔体の窒素吸着等温線を利用してBET法により算出することにより前記有機シリカ系多孔体の比表面積を求めた。
このような測定の結果、実施例1で得られた多孔体は、その比表面積(BET)が8.2m2/gであることが確認された。
〈試料の平均細孔径の測定〉
先ず、前記有機シリカ系多孔体100mgを550℃で6時間加熱処理して試料を準備した。その後、前記試料50mgを用いて、測定装置としてQuantachrome社製の商品名「Autosorb−1」を用いて、液体窒素温度(−196℃)でガス吸着法(定容量法を採用)により窒素ガスの吸着量を求め、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させて各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより、前記試料の窒素吸着等温線を求めた。そして、かかる試料(焼成品)の窒素吸着等温線を利用してBET法により算出することにより前記試料の比表面積(S)を求めた。次いで、前記試料の前記窒素吸着等温線を利用して、P/P0(相対圧)=0.95における窒素の吸着量を標準状態に換算することにより窒素ガス吸着容量を求めた。そして、かかる窒素ガス吸着容量の値を前記試料の細孔容積(V)として利用し、かつ、前記試料(焼成品)の窒素吸着等温線を利用してBET法により算出した前記試料の比表面積(S)を利用して、下記式:
D=4V/S
[式中、Dは前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)を示し、Vは前記試料の細孔容積(全細孔容積)を示し、Sは前記試料の比表面積を示す。]
を計算することにより、前記試料の平均細孔径(D)を求めた。
このような計算の結果、実施例1で得られた多孔体の焼成後の試料(550℃で6時間加熱処理した焼成品)の平均細孔径(平均細孔直径)は2.18nmであった。
〈多孔体中の有機成分の質量比の測定〉
前記有機シリカ系多孔体の有機成分の質量比(有機成分率:多孔体中の有機成分の質量基準の含有割合)を以下のようにして測定した。すなわち、先ず、有機シリカ系多孔体10mgを測定試料として用い、測定装置として熱重量測定装置(リガク社製の熱重量分析装置:商品名「Thermo Plus」)を利用して、大気中において、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から800℃までの温度域で熱重量曲線を測定し、かかる熱重量曲線から150℃における重量分率(W1:150℃での重量の残分率、単位:wt%)と、600℃における重量分率(W2:600℃での重量の残分率、単位:wt%)とを求めて、下記計算式(I):
[有機成分の質量比]=(W1−W2)/W1 (I)
(計算式(I)中、W1は熱重量曲線における150℃における重量分率を示し、W2は熱重量曲線における600℃における重量分率を示す。)
を算出することにより、有機成分の質量比(有機成分率)を求めた。
このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(実施例1)中の有機成分の質量比は0.216(21.6質量%)であることが確認された。また、このようにして求められた有機成分の質量比の値と、上記試料の平均細孔径(平均細孔直径)の測定結果とから、多孔体中の有機成分の質量比を前記試料の平均細孔径で除することにより、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値を求めたところ、0.099/nmであることが確認された。
〈NMR測定〉
前記有機シリカ系多孔体に対して測定装置として日立ハイテクノロジーズ社製の商品名「AVANCE 400」を用いて、Si−NMR測定を行なった。
このようなNMR測定の結果とから、Si−NMRスペクトルのグラフにおいて−70ppm付近にピークが確認された。ここで、このような−70ppm付近のピークはSi−C結合に基づくものである。このような結果と用いたシリカ原料の種類から、Si−NMRスペクトルのグラフにおいて確認されたSi−C結合はケイ素とアミノプロピル基との結合であることが明らかであり、前記有機シリカ系多孔体(実施例1)は、アミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、0℃、40℃、60℃、80℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図1に示す。
図1に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた有機シリカ系多孔体は、0℃のCO2吸着等温線と、温度が40℃以上の温度域(40℃、60℃、80℃の温度域)のCO2吸着等温線とを比較すると、温度が40℃以上の温度域において、CO2の吸着量が増大していた。
また、図1に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた有機シリカ系多孔体は、60℃以上の高温の温度域(60℃、80℃の温度域)において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が12cm3(STP)/g以上となっており、高温の温度域でCO2の吸着量が十分に高いものとなることが分かった。
ここで、CO2の圧力(分圧)が15kPaである排ガス中のCO2を吸着させる場合を仮定すると、0℃では吸着量が3cm3(STP)/g、60℃では吸着量が13.8cm3(STP)/g、80℃では吸着量が12cm3(STP)/gとなることが分かった。このような結果から、実施例1で得られた有機シリカ系多孔体は、例えば、発電所からの排ガス(一般にCO2の含有割合が15〜16容量%程度であり、排ガス温度が50〜75℃程度でありかつ圧力が100kPa(1Bar)程度である)中のCO2の吸着に特に有効であることが分かった。
(実施例2)
テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン5.8g(0.026モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(実施例2)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(実施例2)は、比表面積が16.9m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.3nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(実施例2)は、有機成分の質量比は0.257(25.7質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.112/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(実施例2)は、アミノエチルアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(実施例2)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、0℃、40℃、60℃、80℃、100℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図2に示す。
図2に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機シリカ系多孔体は、0℃のCO2吸着等温線と、温度が40℃以上の温度域(40℃、60℃、80℃、100℃の温度域)のCO2吸着等温線とを比較すると、温度が40℃以上の温度域において、CO2の吸着量が増大していた。また、図2に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた有機シリカ系多孔体は、60℃以上の高温の温度域(60℃、80℃、100℃の温度域)において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が10.6cm3(STP)/g以上となっており、高温の温度域(より好ましくは60〜100℃)でCO2の吸着量が十分に高いものとなることが分かった。
ここで、図2に示す結果から、実施例2で得られた有機シリカ系多孔体は、CO2の圧力(分圧)が15kPaである排ガス中のCO2を吸着させる場合を仮定すると、0℃では吸着量が2.7cm3(STP)/g、40℃では吸着量が6.8cm3(STP)/g、60℃では吸着量が11.8cm3(STP)/g、80℃では吸着量が13.2cm3(STP)/g、100℃では吸着量が10.6cm3(STP)/gとなることが分かった。このような結果から、実施例2で得られた有機シリカ系多孔体は、例えば、発電所からの排ガス(一般にCO2の含有割合が15〜16容量%程度であり、排ガス温度が50〜75℃程度でありかつ圧力が100kPa(1Bar)程度である)中のCO2の吸着に特に有効であることが分かった。
(実施例3)
テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン10.6g(0.0696モル)とアミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン4.6g(0.0173モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(実施例3)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(実施例3)は、比表面積が13.7m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.3nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(実施例3)は、有機成分の質量比は0.267(26.7質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.116/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(実施例3)は、アミノエチルアミノエチルアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(実施例3)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、0℃、40℃、60℃、80℃、100℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図3に示す。
図3に示す結果からも明らかなように、実施例3で得られた有機シリカ系多孔体は、0℃のCO2吸着等温線と、温度が40℃以上の温度域(40℃、60℃、80℃、100℃の温度域)のCO2吸着等温線とを比較すると、温度が40℃以上の温度域において、CO2の吸着量が増大していた。また、図3に示す結果からも明らかなように、実施例3で得られた有機シリカ系多孔体は、60℃以上の高温の温度域(60℃、80℃、100℃の温度域)において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が7.6cm3(STP)/g以上となっており、高温の温度域でCO2の吸着量が十分に高いものとなることが分かった。
ここで、図3に示す結果から、実施例3で得られた有機シリカ系多孔体は、CO2の圧力(分圧)が15kPaである排ガス中のCO2を吸着させる場合を仮定すると、0℃では吸着量が3cm3(STP)/g、40℃では吸着量が4.4cm3(STP)/g、60℃では吸着量が7.6cm3(STP)/g、80℃では吸着量が8.9cm3(STP)/g、100℃では吸着量が7.6cm3(STP)/gとなることが分かった。このような結果から、実施例3で得られた有機シリカ系多孔体は、例えば、発電所からの排ガス(一般にCO2の含有割合が15〜16容量%程度であり、排ガス温度が50〜75℃程度でありかつ圧力が100kPa(1Bar)程度である)中のCO2の吸着に特に有効であることが分かった。
(実施例4)
テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン7.9g(0.0519モル)とアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン7.7g(0.0346モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(実施例4)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(実施例4)は、比表面積が15.9m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.3nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(実施例4)は、有機成分の質量比は0.268(26.8質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.117/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(実施例4)は、アミノエチルアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(実施例4)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、60℃、80℃、100℃、120℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図4に示す。
図4に示す結果からも明らかなように、実施例4で得られた有機シリカ系多孔体は、高温の温度域(60℃、80℃、100℃、120℃の温度域)において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が9.3cm3(STP)/g以上となっており、高温の温度域(より好ましくは60〜100℃の温度域)でCO2の吸着量が十分に高いものとなることが分かった。
ここで、図4に示す結果から、実施例4で得られた有機シリカ系多孔体は、CO2の圧力(分圧)が15kPaである排ガス中のCO2を吸着させる場合を仮定すると、60℃では吸着量が12.3cm3(STP)/g、80℃では吸着量が14cm3(STP)/g、100℃では吸着量が13.7cm3(STP)/g、120℃では吸着量が9.3cm3(STP)/gとなることが分かった。このような結果から、実施例4で得られた有機シリカ系多孔体は、例えば、発電所からの排ガス(一般にCO2の含有割合が15〜16容量%程度であり、排ガス温度が50〜75℃程度でありかつ圧力が100kPa(1Bar)程度である)中のCO2の吸着に特に有効であることが分かった。
(実施例5)
テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン6.9g(0.026モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(実施例5)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(実施例5)は、比表面積が22.8m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.5nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(実施例5)は、有機成分の質量比は0.283(28.3質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.113/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(実施例5)は、アミノエチルアミノエチルアミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(実施例5)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、60℃、80℃、100℃、120℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図5に示す。
図5に示す結果からも明らかなように、実施例5で得られた有機シリカ系多孔体は、高温の温度域(60℃、80℃、100℃、120℃の温度域)において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が6.8cm3(STP)/g以上となっており、高温の温度域(より好ましくは60〜100℃の温度域)でCO2の吸着量が十分に高いものとなることが分かった。
ここで、図5に示す結果から、実施例5で得られた有機シリカ系多孔体は、CO2の圧力(分圧)が15kPaである排ガス中のCO2を吸着させる場合を仮定すると、60℃では吸着量が8.2cm3(STP)/g、80℃では吸着量が9.8cm3(STP)/g、100℃では吸着量が9.7cm3(STP)/g、120℃では吸着量が6.8cm3(STP)/gとなることが分かった。このような結果から、実施例5で得られた有機シリカ系多孔体は、例えば、発電所からの排ガス(一般にCO2の含有割合が15〜16容量%程度であり、排ガス温度が50〜75℃程度でありかつ圧力が100kPa(1Bar)程度である)中のCO2の吸着に特に有効であることが分かった。
(比較例1)
テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン11.9g(0.0782モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.0089モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(比較例1)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(比較例1)は、比表面積が850m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.0nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(比較例1)は、有機成分の質量比は0.108(10.8質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.054/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(比較例1)は、アミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(比較例1)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、0℃、40℃、60℃、80℃、100℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図6に示す。
図6に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた有機シリカ系多孔体は、より低温になるほどCO2の吸着量が増加していた。なお、比較例1で得られた有機シリカ系多孔体は、60℃以上の温度域において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が3cm3(STP)/g以下(温度が60℃以上の場合)となっており、60℃以上の高温の温度域ではCO2の吸着量は十分なものではなかった。
(比較例2)
テトラメトキシシラン9.2g(0.0604モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン4.7g(0.0262モル)とからなるシラン原料を用いる代わりに、テトラメトキシシラン6.6g(0.0434モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン7.7g(0.0429モル)とからなるシラン原料を用いた以外は実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(比較例2)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(比較例2)は、比表面積が42.5m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.06nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(比較例2)は有機成分の質量比は0.202(20.2質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.098/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(比較例2)は、アミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(比較例2)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、0℃、40℃、60℃、80℃、100℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図7に示す。
図7に示す結果からも明らかなように比較例2で得られた有機シリカ系多孔体は、り低温になるほどCO2の吸着量が増加していた。なお、比較例2で得られた有機シリカ系多孔体は、60℃以上の温度域において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合(発電所からの排ガスにおけるCO2のおおよその分圧を想定した場合)のCO2の吸着量が0.45cm3(STP)/g以下(温度が60℃以上の場合)となっており、60℃以上の高温の温度域ではCO2の吸着量は十分なものではなかった。
(比較例3)
混合液を得る工程をデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)1.54g(0.00653モル)と、1規定の水酸化ナトリウム溶液2.28mLとを、水297.7g及びメタノール100gからなる混合溶液中に添加して混合液を得る工程に変更することにより、用いる混合液の種類を変更するとともに、
シラン原料をテトラメトキシシラン11.9g(0.0782モル)とアミノプロピルトリメトキシシラン1.6g(0.0089モル)とからなるものに変更することにより、用いるシラン原料の種類を変更した以外は、実施例1と同様にして有機シリカ系多孔体を得た。
このようにして得られた有機シリカ系多孔体(比較例3)に関して、有機シリカ系多孔体の比表面積、前記試料の平均細孔径(平均細孔直径)、多孔体中の有機成分の質量比、及び、Si−NMRチャートを、実施例1で採用した測定方法と同様の方法を採用して測定した。このような測定の結果、前記有機シリカ系多孔体(比較例3)は、比表面積が17.1m2/gであり、また、計算により求められた前記試料(多孔体を550℃で6時間加熱処理した試料(焼成品))の平均細孔径(平均細孔直径)が2.46nmであった。また、前記有機シリカ系多孔体(比較例3)は、有機成分の質量比は0.124(12.4質量%)であり、平均細孔径あたりの有機成分率(平均細孔径あたりの有機成分の質量比:[有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])の値は0.05/nmであることが確認された。さらに、測定されたSi−NMRスペクトルのグラフから、前記有機シリカ系多孔体(比較例3)は、アミノプロピル基(塩基性官能基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものであることが確認された。
〈CO2吸着等温線の測定〉
試験ごとに前記有機シリカ系多孔体(比較例3)を100mg用い、測定装置としてマイクロトラック・ベル製BELSORP−MAX−12−N−T−HLを用い、0℃、60℃、80℃、100℃の各温度において、CO2吸着等温線をそれぞれ測定した。得られた結果を図8に示す。
図8に示す結果からも明らかなように比較例3で得られた有機シリカ系多孔体は、より低温になるほどCO2の吸着量が増加していた。なお、比較例3で得られた有機シリカ系多孔体は、60℃以上の温度域において、CO2の圧力(分圧)が15kPaである場合のCO2の吸着量が3.48cm3(STP)/g以下となっており、60℃以上の温度域ではCO2の吸着量は十分なものではなかった。
[多孔体の特性の評価]
<実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた多孔体の構造等について>
実施例1〜5で得られた有機シリカ系多孔体は、塩基性官能基(アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基又はアミノエチルアミノエチルアミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有し、比表面積が30m2/g以下であり、多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)を前記平均細孔径で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])が0.06/nm以上となるものであることが確認された。
一方、比較例1及び3で得られた多孔体は、塩基性官能基(アミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものの、多孔体中の有機成分の質量比(有機成分率)を前記平均細孔径で除することにより求められる値([有機成分の質量比]/[試料の平均細孔径])が0.06/nm未満の値となっていた。また、比較例2で得られた多孔体は、塩基性官能基(アミノプロピル基)がケイ素(Si)に結合した構造を有するものの、比表面積の値が30m2/gを超える値となっていることが確認された。
<実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた多孔体のCO2の吸着特性について>
発電所からの排ガスや、自動車からの排ガス、更には工場からの排ガス等は、CO2の分圧が一般に10〜20kPa程度の範囲にあることから、図1〜5に基づいて、実施例1〜5で得られた多孔体について、CO2の圧力が10〜20kPaの領域における各多孔体のCO2の吸着量を確認したところ、60℃の温度条件においてCO2の吸着量がいずれも7.3cm3(STP)/g以上(実施例3で得られた多孔体の10kPaの条件における値が最低値)となっており、80℃の温度条件においてCO2の吸着量がいずれも8.3cm3(STP)/g以上(実施例3で得られた多孔体の10kPaの条件における値が最低値)となっていることが確認された。これに対して、図6〜8に基づいて、比較例1〜3で得られた多孔体について、CO2の圧力が10〜20kPaの領域における各多孔体のCO2の吸着量を確認したところ、60℃の温度条件においてCO2の吸着量がいずれも3.3cm3(STP)/g以下の値(比較例1で得られた多孔体の20kPaの条件における値が最高値)となっており、80℃の温度条件においてCO2の吸着量がいずれも2.2cm3(STP)/g以下の値(比較例1で得られた多孔体の20kPaの条件における値が最高値)となっていることが確認された。
このように、図1〜8に示すグラフから、実施例1〜5で得られた有機シリカ系多孔体からなる本発明のCO2吸着材はいずれも、少なくともCO2の圧力が10〜20kPaの領域において、同じ温度条件で比較すると、比較例1〜3で得られた多孔体からなる吸着材よりも、60℃以上の比較的高温の温度域(より好ましくは60〜100℃、更に好ましくは60〜80℃)において、CO2をより高度な水準で吸着することが可能であることが明らかである。このような結果から、本発明のCO2吸着材(実施例1〜5)は、60℃以上の高温の温度域(好ましくは60〜100℃、更に好ましくは60〜80℃)においてCO2を十分に吸着することが可能なものであることが分かる。