本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。また、本明細書中で「質量」との表現がある場合は、従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」と読み替えてもよく、逆に、本明細書中で「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として慣用されている「質量」と読み替えてもよい。
本明細書において、構造単位の含有割合や単量体の含有割合などを算出する際、不飽和カルボン酸系単量体(b)は、完全にナトリウムで中和された単量体(ナトリウム塩)であるとして計算するものとする。例えば、カルボン酸系単量体(b)としてアクリル酸を用いた場合には、カルボン酸系単量体(b)としてアクリル酸ナトリウムを用いたとして、質量割合(質量%)の計算をする。
本明細書において「水硬性粉体」とは、単体では水と接触して硬化する粉体を意味する。水硬性粉体としては、例えば、ポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水石膏、無水石膏、自硬性を有する生石灰の粉体などが挙げられる。
≪ポリカルボン酸系共重合体≫
本発明のポリカルボン酸系共重合体は、全構造単位100質量%に対して、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I):35質量%〜94質量%と、一般式(II)で表されるカルボン酸系構造単位:5質量%〜40質量%と、一般式(III)で表されるカルボン酸アルキルエステル系構造単位:1質量%〜30質量%と、を含む。
本明細書において「単量体(x)由来の構造単位」(xは、a、b、c、dのいずれか)とは、単量体(x)が重合反応によって単量体単位となった構造を意味する。例えば、単量体(x)が「RpRqC=CRrRs」で表される場合(Rp、Rq、Rr、Rsは、同一または異なって、水素原子またはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基)、単量体(x)由来の構造単位は「−RpRqC−CRrRs−」である。
ポリカルボン酸系共重合体中、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリカルボン酸系共重合体中、一般式(II)で表されるカルボン酸系構造単位(構造単位(II))は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリカルボン酸系共重合体中、一般式(III)で表されるカルボン酸アルキルエステル系構造単位(構造単位(III))は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリカルボン酸系共重合体は、その他の構造単位(IV)を含んでいてもよい。ポリカルボン酸系共重合体がその他の構造単位(IV)を含む場合、ポリカルボン酸系共重合体中、その他の構造単位(IV)は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリカルボン酸系共重合体中、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)、構造単位(IV)の合計は100質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中、好ましくは、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)の合計が100質量%(すなわち、構造単位(IV)を含まない)である。
ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)の含有割合は、ポリカルボン酸系共重合体中の全構造単位100質量%に対して、35質量%〜94質量%であり、好ましくは40質量%〜92質量%であり、より好ましくは44質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは48質量%〜88質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)の含有割合が上記範囲内にあることにより、ポリカルボン酸系共重合体が十分な立体反発力を発現することができ、分散性が向上し、該ポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の流動性をより向上させることができる。
ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(II)の含有割合は、ポリカルボン酸系共重合体中の全構造単位100質量%に対して、5質量%〜40質量%であり、好ましくは6質量%〜38質量%であり、より好ましくは7質量%〜36質量%であり、さらに好ましくは8質量%〜34質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(II)の含有割合が上記範囲内にあることにより、ポリカルボン酸系共重合体が十分な吸着力や水溶性を発現することができ、分散性が向上し、該ポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の流動性をより向上させることができる。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(II)の含有割合がポリカルボン酸系共重合体中の全構造単位100質量%に対して低すぎる場合(例えば、5質量%未満の場合)や、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(II)の含有割合がポリカルボン酸系共重合体中の全構造単位100質量%に対して高すぎる場合(例えば、40質量%を超える場合)は、優れた減水性を発現し難く、水硬性粉体含有組成物に対して優れた粘性低減効果と優れた減水性とをバランスよく両立して発現させ難い。このため、例えば、セメント分散剤としては適さないおそれがある。
ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合は、ポリカルボン酸系共重合体中の全構造単位100質量%に対して、1質量%〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜28質量%であり、より好ましくは3質量%〜26質量%であり、さらに好ましくは4質量%〜24質量%であり、特に好ましくは5質量%〜22質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合が上記範囲内にあることにより、該ポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の粘性を低減させることができると共にポンプ圧送時の配管通過性を向上させることができる。よって、水硬性粉体含有組成物をポンプ圧送する際に、配管内で閉塞せず、かつ短時間で輸送することができ、また、型枠内に充填する際に、型枠が複雑な形状を有する場合であっても、打設された水硬性粉体含有組成物を型枠の隅々にまで行きわたらせることができ、また、型枠表面に残る気泡が少なく、表面美観に優れた硬化物を得ることができる。したがって、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合が上記範囲内にあることにより、該ポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物に対して優れた粘性低減効果と優れた配管通過性と優れた減水性とをバランスよく両立して発現させることができる。また、構造単位(III)におけるエステル基部分の炭素数を9〜30とすることにより、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合を上記範囲内で少なくしても、高い粘性低減効果を得ることができる。このため、本発明の効果を発現させるにあたって、例えば、後述する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c)の使用量を少なくすることができ、コスト的に有利となる。
ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(IV)の含有割合は、ポリカルボン酸系共重合体中の全構造単位100質量%に対して、好ましくは0質量%〜59質量%であり、より好ましくは0質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは0質量%〜40質量%であり、特に好ましくは0質量%〜30質量%である。
ポリカルボン酸系共重合体中の各種構造単位の含有割合は、例えば、ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、ポリカルボン酸系共重合体中の各種構造単位の含有割合としてもよい。
ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは2000〜100000であり、より好ましくは4000〜50000であり、さらに好ましくは6000〜30000であり、特に好ましくは8000〜25000である。重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の減水性が低下し、水硬性粉体含有組成物の流動性が低下するおそれがある。重量平均分子量が上記範囲を上回ると、ポリカルボン酸共重合体の水溶液粘度が高くなって扱いづらくなるおそれがあり、ひいては、該ポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の粘性低減効果や優れた配管通過性が発現できないおそれがある。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)は、具体的には、下記式で表される。
一般式(1)および一般式(I)中、R1、R2、R3は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)および一般式(I)中、R4は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、R4は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
一般式(1)および一般式(I)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。
一般式(1)および一般式(I)中、mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300であり、好ましくは5〜250であり、より好ましくは10〜200であり、さらに好ましくは15〜150であり、特に好ましくは20〜100である。mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体の親水性が向上し得るとともに、ポリカルボン酸系共重合体の分散性能が向上し得る。さらに、mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の粘性を低減させることができると共にポンプ圧送時の配管通過性を向上させることができる。よって、水硬性粉体含有組成物をポンプ圧送する際に、配管内で閉塞せず、かつ短時間で輸送することができ、また、型枠内に充填する際に、型枠が複雑な形状を有する場合であっても、打設された水硬性粉体含有組成物を型枠の隅々にまで行きわたらせることができ、また、型枠表面に残る気泡が少なく、表面美観に優れた硬化物を得ることができる。さらに、mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の減水性を向上させることができる。したがって、mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物に対して優れた粘性低減効果と優れた配管通過性と優れた減水性とをバランスよく両立して発現させることができる。
一般式(1)および一般式(I)中、xは0〜5の整数である。
一般式(1)および一般式(I)中、yは0または1である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、例えば、炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステル;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを1〜300モル付加した化合物;であり、より好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オール、メタリルアルコールから選ばれる少なくとも1種にアルキレンオキシドを1〜300モル付加した化合物である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、好ましくは一般式(1e)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(e)である。
一般式(1e)中、R1、R2、R3は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1e)中、R4は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、R4は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
一般式(1e)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。
一般式(1e)中、mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300であり、好ましくは5〜250であり、より好ましくは10〜200であり、さらに好ましくは15〜150であり、特に好ましくは20〜100である。mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体の親水性が向上し得るとともに、ポリカルボン酸系共重合体の分散性能が向上し得る。さらに、mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の粘性を低減させることができると共にポンプ圧送時の配管通過性を向上させることができる。よって、水硬性粉体含有組成物をポンプ圧送する際に、配管内で閉塞せず、かつ短時間で輸送することができ、また、型枠内に充填する際に、型枠が複雑な形状を有する場合であっても、打設された水硬性粉体含有組成物を型枠の隅々にまで行きわたらせることができ、また、型枠表面に残る気泡が少なく、表面美観に優れた硬化物を得ることができる。さらに、mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物の減水性を向上させることができる。したがって、mが上記範囲内にあることにより、得られるポリカルボン酸系共重合体を水硬性粉体含有組成物に添加すると、水硬性粉体含有組成物に対して優れた粘性低減効果と優れた配管通過性と優れた減水性とをバランスよく両立して発現させることができる。
一般式(1e)中、xは0〜5の整数である。
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(e)としては、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、(メタ)アリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜300モル付加した化合物などが挙げられる。
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(e)としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1−ジメチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル3−ブテニル)エーテル、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ビニル酸素にオキシプロピレン基やオキシブチレン基が結合したビニルオキシプロピルポリエチレングリコールやビニルオキシブチルポリエチレングリコールなどが挙げられる。
カルボン酸系構造単位は一般式(II)で表される。
一般式(II)中、R5、R6、R7は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH2)nCOOM2基を表す。nは0〜2であり、M1とM2は、同一または異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基を表す。金属原子としては、一価金属原子(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、二価金属原子(マグネシウム、カルシウムなど)などが挙げられる。有機アミン基の有機アミン部分としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。R6とR7は同時に−(CH2)nCOOM2基とはならず、R7が−(CH2)nCOOM2基である場合には、R5とR6は、同一または異なって、水素原子またはメチル基である。
一般式(II)で表されるカルボン酸系構造単位としては、例えば、不飽和カルボン酸系単量体(b)の重合によって形成される構造単位(未中和体)または、該構造単位を金属原子(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)、アンモニウム基、または有機アミン基(有機アミン基の有機アミン部分としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなど)によって置換した塩(中和体)が挙げられる。
一般式(II)中、R5は、好ましくは水素原子であり、R6は、好ましくは水素原子であり、R7は、好ましくは水素原子またはメチル基である。
不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)、不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)が挙げられる。不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、好ましくは、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)である。
不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、およびこれらの塩や誘導体が挙げられ、好ましくは、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩であり、より好ましくは、アクリル酸、アクリル酸塩である。ここでいう塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。
金属塩としては、任意の適切な金属塩を採用し得る。このような金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの一価金属原子塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などの二価金属原子塩;などが挙げられる。
有機アミン塩としては、プロトン化された有機アミンの塩であれば任意の適切な有機アミン塩を採用し得る。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩などが挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびこれらの塩や誘導体が挙げられ、好ましくは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびこれらの塩であり、より好ましくは、マレイン酸、マレイン酸塩である。ここでいう塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。
金属塩としては、任意の適切な金属塩を採用し得る。このような金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの一価金属原子塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などの二価金属原子塩;などが挙げられる。
有機アミン塩としては、プロトン化された有機アミンの塩であれば任意の適切な有機アミン塩を採用し得る。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩などが挙げられる。
カルボン酸アルキルエステル系構造単位は一般式(III)で表される。
一般式(III)中、R8とR9は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。R10は炭素数9〜30の炭化水素基または炭素数9〜30の芳香族基含有炭化水素基を表す。
一般式(III)中、R8は、好ましくは水素原子である。
一般式(III)中、R10は、本発明の効果をより発現できる点で、好ましくは炭素数10〜28の炭化水素基または炭素数10〜28の芳香族基含有炭化水素基である。
一般式(III)中、R10としては、具体的には、例えば、ノニル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、4−エチルー5−メチルオクチル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、イコシル基、ベヘニル基などの直鎖状または分岐鎖状アルキル基;ナフチル基、ピレニル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、トリチル基、ジシクロペンタニル基、イソボルニル基などの環状アルキル基;などが挙げられ、好ましくは、ノニル基、ラウリル基、ステアリル基、イソボルニル基である。
一般式(III)で表されるカルボン酸アルキルエステル系構造単位としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c)の重合によって形成される構造単位が挙げられる。
不飽和カルボン酸系単量体(c)としては、具体的には、例えば、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4−エチル−5−メチルオクチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ピレニル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、アントリル(メタ)アクリレート、フェナントリル(メタ)アクリレート、トリチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、好ましくは、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートである。
その他の構造単位(IV)としては、例えば、その他の単量体(d)の重合によって形成される構造単位が挙げられる。
その他の単量体(d)としては、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c)と共重合可能な単量体であれば、任意の適切な単量体を採用し得る。
その他の単量体(d)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド;アルキル(ポリ)アルキレングリコールと不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)とのハーフエステル、ジエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)とのエステル;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸、およびそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミド等の、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物;などが挙げられる。
本発明のポリカルボン酸系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法によって製造し得る。本発明のポリカルボン酸系共重合体は、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c)と必要に応じてその他の単量体(d)を含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
本発明のポリカルボン酸系共重合体の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c)と必要に応じてその他の単量体(d)の使用量は、本発明のポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合が前述したものとなるように、適宜調整すればよい。好ましくは、重合反応が定量的に進行するとして、前述した本発明のポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合と同じ割合で、各単量体を用いればよい。
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(c)のエステル部分のアルキル基の炭素数が9以上であることを勘案すると、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等の有機溶媒が好ましい。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機溶媒と水を併用して用いてもよい。
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。重合開始剤の中では、過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。促進剤の中では、モール塩等のFe(II)塩やL−アスコルビン酸(塩)が好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
単量体成分の重合の際の溶存酸素濃度としては、所定の分子量の重合体を再現性よく得るには重合反応を安定に進行させることが必要であることから、溶液重合する場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下とすることが好ましい。この溶存酸素濃度は、より好ましくは0.01ppm〜4ppmであり、さらに好ましくは0.01ppm〜2ppmであり、特に好ましくは0.01ppm〜1ppmである。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行う場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが好ましい。上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような投入方法としては、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法等が挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入質量比を連続的又は段階的に変化させてもよい。なお、重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、そのままでも本発明のポリカルボン酸系共重合体として用いることもできるが、取り扱い性の観点から、ポリカルボン酸系共重合体の製造後の反応溶液のpHを5以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率向上のため、pH5未満で重合を行い、重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、1価金属または2価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質を用いて行うことができる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、溶液の形態でそのまま使用してもよいし、あるいは、粉体化して使用してもよい。
≪水硬性粉体含有組成物≫
本発明のポリカルボン酸系共重合体を添加し得る対象は、好ましくは、水硬性粉体含有組成物である。
水硬性粉体含有組成物とは、水硬性粉体を必須に含む組成物である。水硬性粉体とは、単体では水と接触して硬化する粉体を意味する。水硬性粉体としては、例えば、ポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水石膏、無水石膏、自硬性を有する生石灰の粉体などが挙げられる。
水硬性粉体含有組成物は、非水硬性粉体を含有してもよい。非水硬性粉体とは、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味し、アルカリ性または酸性の雰囲気、あるいは、高圧蒸気雰囲気において、その成分が溶出して他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意味である。非水硬性粉体としては、例えば、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、珪石粉末、粘土粉末、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどが挙げられる。
水硬性粉体含有組成物中の、水硬性粉体と非水硬性粉体の合計の含有割合は、実質的に100質量%である。
水硬性粉体と非水硬性粉体の合計量に対する、水硬性粉体の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは80質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
≪セメント分散剤≫
本発明のセメント分散剤は、本発明のポリカルボン酸系共重合体を含む。この場合、好ましくは、本発明のポリカルボン酸系共重合体は、セメント分散剤として用いられる。
本発明のセメント分散剤は、本発明のポリカルボン酸系共重合体以外に、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、他のセメント分散剤が挙げられる。他のセメント分散剤を用いる場合、本発明のポリカルボン酸系共重合体と他のセメント分散剤との配合比(本発明のポリカルボン酸系共重合体/他のセメント分散剤)としては、使用するその他のセメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって、任意の適切な配合比を設定し得る。このような配合比は、固形分換算での質量割合(質量%)として、好ましくは50〜100/50〜0であり、より好ましくは60〜100/40〜0であり、さらに好ましくは70〜100/30〜0である。他のセメント分散剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
他のセメント分散剤としては、例えば、(i)ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系分散剤;等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤、(ii)特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載の如く、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報、特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報に記載の如く、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体または(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体;等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤、(iii)特開2006−52381号公報に記載の如く、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤、などが挙げられる。
≪コンクリート混和剤≫
本発明のコンクリート混和剤は、本発明のポリカルボン酸系共重合体を含む。
本発明のコンクリート混和剤は、本発明のポリカルボン酸系共重合体以外に、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。
本発明のコンクリート混和剤において、その他の成分についての特に好適な実施形態としては、次の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などが使用可能であり、ポリオキシアルキレン類が特に好ましい。なお、<2>オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体に対して、0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
(2)<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体、<2>オキシアルキレン系消泡剤、および、<3>AE剤の3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などが使用可能であり、ポリオキシアルキレン類が特に好ましい。AE剤としては、樹脂石鹸類、飽和または不飽和脂肪酸類、変性ロジン酸類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル類などが使用可能であり、変性ロジン酸類、アルキルアリールスルホン酸塩類が特に好ましい。なお、<2>オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体に対して、0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましい。また、<3>AE剤の配合質量比としては、セメントに対して0.001質量%〜2質量%の範囲が好ましい。
(3)<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>公知のセメント分散剤の組み合わせ。公知のセメント分散剤としては、
(i)ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系分散剤;等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤、
(ii)特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載の如く、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報、特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報に記載の如く、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体または(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体;等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤、
(iii)特開2006−52381号公報に記載の如く、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤、
などが挙げられる。なお、<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>公知のセメント分散剤の配合比としては、質量比で、1/99〜99/1の範囲が好ましく、5/95〜95/5の範囲がより好ましく、10/90〜90/10の範囲がさらに好ましい。
(4)<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能であり、オキシカルボン酸類が特に好ましい。なお、<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>遅延剤との配合比としては、質量比で、50/50〜99.9/0.1の範囲が好ましく、70/30〜99/1の範囲がより好ましい。
(5)<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>促進剤との2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。なお、<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>の促進剤との配合比としては、質量比で、10/90〜99.9/0.1の範囲が好ましく、20/80〜99/1の範囲がより好ましい。
(6)<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>材料分離低減剤との2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤が使用可能である。なお、<1>本発明のポリカルボン酸系共重合体と<2>材料分離低減剤との配合比としては、質量比で、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組み合わせのコンクリート組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
≪コンクリート組成物≫
本発明のコンクリート組成物は、本発明のコンクリート混和剤を含む。本発明のコンクリート組成物は、好ましくは、本発明のコンクリート混和剤と水硬性粉体含有組成物を含む。本発明のコンクリート組成物は、水を含んでいてもよい。本発明のコンクリート組成物は、骨材を含んでいてもよい。本発明のコンクリート組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。また、骨材として砂を用いる場合は、本発明のコンクリート組成物は、モルタル組成物と称することがある。なお、本発明のコンクリート組成物は、硬化前の未硬化物であってもよいし、一部硬化した半硬化物であってもよいし、硬化した硬化物であってもよい。
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
コンクリート組成物やモルタル組成物においては、その1m3あたりの単位水量、水硬性粉体含有組成物(=非水硬性粉体+水硬性粉体)の使用量、および水/水硬性粉体含有組成物比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が50kg/m3〜200kg/m3であり、水硬性粉体含有組成物の使用量が200kg/m3〜800kg/m3であり、水/水硬性粉体含有組成物比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が100kg/m3〜185kg/m3であり、水硬性粉体含有組成物の使用量が250kg/m3〜600kg/m3であり、水/水硬性粉体含有組成物比(質量比)=0.15〜0.6である。
本発明のコンクリート組成物中の、本発明のポリカルボン酸系共重合体の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬性粉体含有組成物100質量部に対する、本発明のポリカルボン酸系共重合体の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のコンクリート組成物中の本発明のコンクリート混和剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬性粉体含有組成物100質量部に対する本発明のコンクリート混和剤の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜8質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部である。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のコンクリート組成物中の、水硬性粉体含有組成物の含有割合は、好ましくは2.5質量%以上であり、より好ましくは5質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは7.5質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜50質量%であり、特に好ましくは12.5質量%〜40質量%であり、最も好ましくは15質量%〜30質量%である。
コンクリート組成物やモルタル組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調製すればよい。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
<GPC分析法>
重量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
標準物質試料液注入量:100μL(重合体濃度0.1質量%の溶離液溶液)
重合体試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
<GPC解析条件(重合体の分析)>
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部や不純物部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を計算した。凹部が無い場合はまとめて計算した。
重合体純分は、RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
<モルタル試験>
(モルタル配合)
モルタル配合は、C/S/W=550/1350/220(g)とした。
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:JIS標準砂
W:イオン交換水(共重合体、消泡剤を含む)
(モルタル調製手順)
実験環境は、20℃プラスマイナス1℃、湿度60%プラスマイナス10%とした。所定量のポリカルボン酸系共重合体の水溶液を量りとり、消泡剤としてアデカノールLG−299(アデカ製)をポリカルボン酸系共重合体の固形分に対して有姿で15質量%加え、さらにイオン交換水を加えて220gとし、十分に均一溶解させた。
モルタル混練には、HOBART社製のN−50ミキサーにステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付けたものを用いた。まず、混練容器に所定量のC、Sを仕込み、1速で1分間混練したのち、Wを投入し引き続き1速で3分間混練した。その後、混練を停止して15秒間、容器壁に付いたモルタルを掻き落し、2分45秒静置した。さらに1速で2分間混練して混練終了とし、モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移した。
(モルタル流動性測定手順)
モルタル流動性の測定には、JIS−A−1171準拠のモルタルスランプ試験用器具を用いた。練り上がったモルタルをスパチュラで20回撹拌した後、水平に設置した鋼製平板上に置かれたスランプコーン(上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)の中にモルタルの半量を詰め、突き棒で15回突いて均一に充填し、さらに同様の手順で残りの半量を充填し、表面を均一に馴らした。続いて、スランプコーンを垂直に引き上げ、モルタルの流動が止まってから、広がったモルタルの直径を縦横2点計測し、平均値をフロー値とした。次に、モルタルの頂部の下がりを計測し、これをスランプ値とした。
最後に下記式で計算されたモルタルワーカビリティ値をモルタル流動性の指標とした。
モルタルワーカビリティ(mm)=フロー値(mm)+スランプ値(mm)−100(mm)
このモルタルワーカビリティが200±10mmとなるようにポリカルボン酸系共重合体の添加量を調整した。
(モルタル空気量)
モルタルを500mLパイレックス(登録商標)製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突いて粗い気泡を抜いた。さらにモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後に質量を測り、体積、質量、各材料の密度から空気量を計算した。
(モルタル状態評価)
モルタルの状態評価としては、モルタルを、スパチュラを用いて撹拌した際に、モルタルの粘性が低い、もしくはスパチュラへのモルタルの付着量が少ないものは状態が良好と判断した。具体的には以下のとおりである。
◎:撹拌時にモルタルの粘性が低く、スパチュラへのモルタルの付着がほとんどない。
○:撹拌時にモルタルの粘性が低いが、スパチュラへのモルタルの付着が見られる。
△:撹拌時にモルタルの粘性が高く、スパチュラへのモルタルの付着も見られる。
×:撹拌時にモルタルの粘性が高く、スパチュラへのモルタルの付着が多い。
(配管通過性)
ポンプ圧送時の配管通過性評価として、モルタルのロート流下試験を実施した。モルタルが途中で閉塞することなく、しかも短時間で流下したものは配管通過性が良好と判断した。ロート流下試験の具体的な方法は以下のとおりである。
土木学会基準JSCE−F541に規定されたJ14ロート(上端内径70mm、下端内径14mm、高さ392mm)の下端にゴム栓をし、台で鉛直に支持した。次に、流出したモルタル量を計測するための電子はかりをJ14ロート下端の下方に設置した。
得られたモルタルをJ14ロート上面まで流し込み上面をならした。次に、ゴム栓を外してモルタルを流出させ、モルタル流出開始より1200g流下するまでの時間をストップウォッチで計測し、これをロート流下時間とした。
なお、ロート流下時間を10%以上短縮できる場合は、特に、配管通過性に優れるものと言える。
また、配管通過性に優れる観点から、ロート流下時間の絶対値として、以下の基準で評価を行った。
◎:流下時間40秒未満。
○:流下時間40秒以上、44秒未満。
△:流下時間44秒以上、48秒未満。
×:流下時間48秒以上。
〔実施例1〕
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.7部をイソプロピルアルコール54.6部に溶解させた溶液(1)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水37.4部、イソプロピルアルコール21.0部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)149.7部、アクリル酸(AA)0.3部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
30分後、上述の混合溶液(1)を3.5時間かけて、アクリル酸(AA)20.7部、アクリル酸ステアリル(STA)5.5部、3−メルカプトプロピオン酸0.4部およびイソプロピルアルコール6.6部の混合溶液を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(1)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。このようにして、共重合体(1)を含む重合体溶液を得た。得られた共重合体(1)の重量平均分子量Mwは15500であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(1)をコンクリート混和剤として用いて、各種試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.0部をイソプロピルアルコール46.2部に溶解させた溶液(2)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水34.2部、イソプロピルアルコール19.3部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)136.9部、アクリル酸(AA)0.2部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
30分後、上述の混合溶液(2)を3.5時間かけて、アクリル酸(AA)20.7部、アクリル酸ステアリル(STA)18.3部、3−メルカプトプロピオン酸0.4部およびイソプロピルアルコール9.9部の混合溶液を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(2)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。このようにして、共重合体(2)を含む重合体溶液を得た。得られた共重合体(2)の重量平均分子量Mwは14600であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(2)をコンクリート混和剤として用いて、各種試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例3〕
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.8部をイソプロピルアルコール54.6部に溶解させた溶液(3)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水37.4部、イソプロピルアルコール21.1部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)149.7部、アクリル酸(AA)0.3部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
30分後、上述の混合溶液(3)を3.5時間かけて、アクリル酸(AA)20.7部、アクリル酸ラウリル(LA)5.5部、3−メルカプトプロピオン酸0.4部およびイソプロピルアルコール6.6部の混合溶液を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(3)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。このようにして、共重合体(3)を含む重合体溶液を得た。得られた共重合体(3)の重量平均分子量Mwは15100であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(3)をコンクリート混和剤として用いて、各種試験を行った。結果を表2に示す。
〔比較例1〕
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.6部をイソプロピルアルコール77.1部に溶解させた溶液(C1)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水60.6部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)155.2部、アクリル酸(AA)0.3部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
30分後、上述の混合溶液(C1)を3.5時間かけて、アクリル酸(AA)20.7部およびイソプロピルアルコール13.8部の混合溶液を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(C1)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。このようにして、共重合体(C1)を含む重合体溶液を得た。得られた共重合体(C1)の重量平均分子量Mwは31000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(C1)をコンクリート混和剤として用いて、各種試験を行った。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.8部をイソプロピルアルコール92.9部に溶解させた溶液(C2)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水58.5部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)149.7部、アクリル酸(AA)0.3部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
30分後、上述の混合溶液(C2)を3.5時間かけて、アクリル酸(AA)20.7部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)5.5部およびイソプロピルアルコール6.5部の混合溶液を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(C2)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。このようにして、共重合体(C2)を含む重合体溶液を得た。得られた共重合体(C2)の重量平均分子量Mwは29000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(C2)をコンクリート混和剤として用いて、各種試験を行った。結果を表2に示す。
〔比較例3〕
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)(MPG−9)87.0部、メタクリル酸(MAA)4.9部、メタクリル酸ラウリル(LMA)51.9部、3−メルカプトプロピオン酸1.2部をイソプロピルアルコール40.4部に溶解させた水溶液(C3a)、および2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.3部をイソプロピルアルコール82.2部に溶解させた溶液(C3b)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器にイソプロピルアルコール81.2部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
30分後、上述の混合溶液(C3a)を4時間かけて、混合溶液(C3b)を5時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(C3b)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。このようにして、共重合体(C3)を含む重合体溶液を得た。得られた共重合体(C3)の重量平均分子量Mwは13000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(C3)をコンクリート混和剤として用いて、各種試験を行った。結果を表2に示す。
実施例1〜3より、本発明のポリカルボン酸系共重合体は、優れた粘性低減効果と優れた配管通過性と減水性をバランスよく両立して発現させていることがわかる。
一方、粘性低減や配管通過性に有効なカルボン酸アルキルエステル構造単位(III)を有しない比較例1は、粘性が高く、配管通過性も劣っている。また、カルボン酸アルキルエステル構造単位として、アルキル基部分の炭素数が8である単量体を用いた比較例2では粘性低減効果が不十分であり、配管通過性も劣っている。また、本願のカルボン酸アルキルエステル構造単位(III)を有しているが、カルボン酸構造単位(II)が請求範囲を外れた比較例3は減水性が非常に劣っており、ポリカルボン酸系共重合体を大量に加えても所定のワーカビリティに達することができなかった。