JP2018154695A - 摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた耐摩耗性を確保しつつ、クリープ異音と呼ばれる低周波の不快音を低減させることのできる摩擦材を提供する。【解決手段】繊維基材、結合材、有機充填材、及び、無機充填材を含有する摩擦材であって、摩擦材中に、元素として銅の含有量が摩擦材全体に対して0.5重量%以下であり、無機充填材としてチタン酸塩を含有すると共に、粘着付与樹脂を摩擦材全体に対して0.5〜2.0重量%で含有する摩擦材。【選択図】図2
Description
本発明は、車両用のブレーキ装置等に使用される摩擦材に関する。
従来、車両等のブレーキパッドやブレーキシュー等に使用される摩擦材には、異音の発生の防止、高い効き(高摩擦係数)、及び、高寿命(耐摩耗性)等の種々の特性が求められている。なかでも、異音の発生はユーザーに不快感もしくは不安感を与え改善が求められている。
例えば、オートマチック(AT)車において、クリープ現象によって進行方向にトルクが発生して、摩擦材とその相手材(例えば、ロータ)間の相対速度の変化に伴って発生する振動が足回り、車体に伝わり、放射することで発生する不快な低周波の異音、所謂、クリープ異音が知られている。クリープ異音は、マニュアル(MT)車においても、下り坂にてサービスブレーキでの停車中にブレーキを緩めた際に発生することが知られている。
クリープ異音の発生は、摩擦材とロータの間の摩擦面で発生するスティックスリップ現象と関連している。詳細には、ブレーキ制動の繰り返しにより、摩擦材のロータとの摩擦により発生する摩耗粉及び摩耗粉の分解物が皮膜となってロータ表面に付着する。皮膜が過度の厚さや大きさに成長すると、皮膜が破壊される際のブレーキトルクの抜けが大きくなる。これにより、スティックスリップ現象が大きくなり、低周波の異音が発生すると考えられている。
近年、環境負荷の観点から銅成分の使用を制限する動きが高まる中、銅成分の削減による耐摩耗性悪化を補填するため、チタン酸カリウムを多く含有する(例えば、10〜40重量%)摩擦材が提案されている。しかしながら、チタン酸カリウムを多く含有すると高温での耐摩耗性に優れる反面、ロータ表面への皮膜の形成が増大し、それに伴いスティックスリップ現象が大きくなりクリープ異音発生につながることが知られている。
そこで、銅成分を含有しなくとも、高温での耐摩耗性とクリープ異音発生の低減を両立できる摩擦材の構築が試みられている。例えば、特許文献1には、平均粒形10〜800μmのマイカを摩擦材に含有させることにより、チタン酸カリウムの含有により増大するロータ表面の皮膜をクリーニングし、スティックスリップ現象を低減する効果を有する。これによりクリープ異音の発生を低減できることが開示されている。また、同様に、特許文献2には平均粒子径0.1〜1.0μmの四三酸化鉄、特許文献3には鉄粉、並びに、特許文献4には平均粒子径1〜2.5μmのケイ酸ジルコニウム、特許文献5には平均粒子径250〜710μmの未焼成パーミキュライトを含有する摩擦材が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜5に開示の技術は何れも、高硬度材等を含有し、これらの材料が皮膜を掻き落とすことでロータ表面を適度にクリーニングすることによりクリープ異音の発生を低減させるものである。高硬度材はロータを削る特性をも有することから、摩擦材のロータ等に対する攻撃性が大きくなり、耐摩耗性とクリープ異音発生の低減を両立するとの観点では効果は不十分であった。また、特許文献2に記載の四三酸化鉄は平均粒子径0.1〜1.0μmとしているが、かかる粒子径では皮膜のクリーニング効果を十分に発揮できないとの問題点もある。このような実情に鑑み、摩擦材の更なる性能向上が求められていた。
そこで、本発明は、優れた耐摩耗性を確保しつつ、クリープ異音と呼ばれる低周波の不快音を低減させることのできる摩擦材を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究し、クリープ異音発生の低減には摩擦材の静摩擦係数を高めることが有効であることに着目した。摩擦材の静摩擦係数を高めるために、摩擦材に粘着付与樹脂を含有すれば、優れた耐摩耗性を確保しつつ、クリープ異音を効果的に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、摩擦材は以下の〔1〕〜〔4〕を特徴構成とする。
〔1〕繊維基材、結合材、有機充填材、及び、無機充填材を含有する摩擦材であって、
前記摩擦材は、元素として銅の含有量が摩擦材全体に対して0.5重量%以下であり、前記無機充填材としてチタン酸塩を含有すると共に、粘着付与樹脂を摩擦材全体に対して0.5〜2.0重量%で含有する摩擦材。
〔1〕繊維基材、結合材、有機充填材、及び、無機充填材を含有する摩擦材であって、
前記摩擦材は、元素として銅の含有量が摩擦材全体に対して0.5重量%以下であり、前記無機充填材としてチタン酸塩を含有すると共に、粘着付与樹脂を摩擦材全体に対して0.5〜2.0重量%で含有する摩擦材。
上記〔1〕の構成によれば、優れた耐摩耗性を確保しつつ、クリープ現象時に発生するクリープ異音と呼ばれる低周波の不快音を低減させることが可能な摩擦材を提供することができる。従来、銅成分の削減による耐摩耗性の悪化を補填するためにチタン酸カリウム等のチタン酸塩を多く含有させた摩擦材において、クリープ異音の発生が問題となっていた。本構成によれば、摩擦材にチタン酸塩を含有させることによって耐摩耗性を向上させながら、摩擦材に粘着付与樹脂を含有させることで摩擦材の静摩擦係数を高めてクリープ異音の発生を低減させることができる。この粘着付与樹脂は高硬度材ではないため、ロータへの攻撃性が低く、耐摩耗性が悪化することもない。その結果、本構成の摩擦材であれば、優れた耐摩耗性とクリープ異音発生の低減を両立することができる。
〔2〕前記粘着付与樹脂が、ロジン又はテルペンを主成分とする樹脂、又は、前記ロジン又は前記テルペンの変性樹脂である上記〔1〕の摩擦材。
上記〔2〕の構成によれば、粘着付与性に優れた樹脂を使用することで効果的に摩擦材の静摩擦係数を高めることができ、クリープ異音の発生を効果的に抑制することができる。このロジンやテルペンは天然樹脂であることから、環境負荷を最小限に抑制することができるとの利点もある。
〔3〕前記粘着付与樹脂が、C5系脂肪族炭化水素石油系樹脂、C9系芳香族炭化水素石油系樹脂、又は、前記石油系樹脂の何れかの誘導体である上記〔1〕の摩擦材。
上記〔3〕の構成によれば、粘着付与性に優れた樹脂を使用することで効果的に摩擦材の静摩擦係数を高めることができ、クリープ異音発生を効果的に低減することができる。このC5系脂肪族炭化水素石油系樹脂やC9系芳香族炭化水素石油系樹脂は合成樹脂であることから、工業的に安価に製造でき、摩擦材のコスト削減を図ることができる。
〔4〕前記銅を含まず、前記チタン酸塩を摩擦材全体に対して10〜20重量%で含有する上記〔1〕〜〔3〕の摩擦材。
上記〔4〕の構成によれば、チタン酸塩の含有量を上記範囲内に調製することにより、クリープ異音の発生を低減しつつ、銅成分を実質的に含有しない摩擦材においても耐摩耗性に優れた摩擦材を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施形態によって限定されるものではない。
本実施形態に係る摩擦材は、後述する繊維基材、結合材、有機充填材、及び無機充填材等を含有し、更に、摩擦材に静摩擦係数を高める物質、典型的には粘着付与樹脂を含有する。これらの他にも摩擦材を製造する際に一般に使用される材料をも含有させても良い。ここで、本実施形態に係る摩擦材を製造する上で混合する全ての材料を摩擦材原料と称する。
本実施形態に係る摩擦材は、非石綿系摩擦材(NAO材)である。また、本実施形態に係る摩擦材は環境負荷の高い銅成分を実質的に含有するものではない(銅フリー化)。具体的には、銅成分は含有しないか、含有する場合であっても摩擦材原料全体に対して0.5重量%以下である。
従来、銅成分の削減による耐摩耗性の悪化を補填するためにチタン酸カリウム等のチタン酸塩を多く含有する摩擦材において、クリープ異音発生が問題となっていた。本実施形態に係る摩擦材は、粘着付与樹脂を含有させることで、銅成分の代替としてチタン酸塩を多く含有しながら、優れた耐摩耗性とクリープ異音発生の低減を両立することができる。したがって、本実施形態に係る摩擦材は、銅フリー化の動きに十分に対応するものである。
例えば、AT車におけるクリープ現象時のクリープ異音は、ブレーキペダルを徐々にリリースして静止状態から極低速で動き出すとき、つまり、静摩擦から動摩擦に移行する間のスティックスリップ現象が原因であると言われている。クリープ異音の発生や大きさは、静摩擦から動摩擦に移行するときのペダルリリースの速さにも影響される。しかしながら、この速さはドライバー個人によって異なり、一定したものではない。そこで、ドライバー個人のペダルリリースの速度に依存することなくクリープ異音発生を低減する技術の構築が必要とされている。
図1に示す通り、クリープ異音発生の低減には、摩擦材の静摩擦係数が高い方が好ましい。静摩擦係数が高い摩擦材は、静摩擦係数の低い摩擦材に比べて、ブレーキペダルのリリースを始めてから離す間際、つまり、踏力が最小となる直前まで、摩擦材に発生するトルクを高く維持することができ、該トルクがクリープ異音の発生領域(静摩擦が動摩擦に移行する領域)にかかり難い。しかも、クリープ異音発生踏力範囲が狭くなる。その結果、ペダルリリースの速さに関らず、クリープ異音の発生を抑制することができると推測した。そこで、本発明者は上記原理を効果的に発揮できる材料を鋭意研究した結果、摩擦材に粘着付与樹脂を含有させることにより、耐摩耗性を維持しながら効果的に摩擦材の静摩擦係数を高くして、クリープ異音の発生を低減できることを見出した。
粘着付与樹脂は、タッキファイヤー(tackifier)とも称されるものであり、物質に粘着性を付与する機能を有する樹脂である。ここで、粘着とは、常温で僅かな圧力で被着材に接着することを意味し、好ましくは、接着に際して、固化等を要せず、水や溶剤、熱等の介在なしに固体状態で被着材に接着するものである。
粘着付与樹脂は、摩擦材に粘着性を付与できる機能を有する限り特に制限はなく、当該技術分野で公知のものを使用することができる。したがって、粘着付与樹脂は、天然樹脂であっても、合成樹脂であってもよい。天然樹脂としては、ロジンを主成分とする樹脂(ロジン系樹脂)及びテルペンを主成分とする樹脂(ロジン系樹脂)等、並びに、これらの変性樹脂を例示することができるが、これらに限定するものではない。合成樹脂としては、石油及び石油由来の物質を原料に製造される樹脂(石油系樹脂)等を例示することができるが、これらに限定するものではない。粘着付与樹脂は、1種類を単独で、又は、複数種類を併用することもできる。
ロジン系樹脂は、アビエチン酸、パラストリン酸、及び、イソピマール酸等の樹脂酸の各種異性体の混合物であり、各異性体の割合に制限はない。具体的には、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン、及び、未変性ロジンを重合した重合ロジン、水素添加した水素添加ロジン、及び、不均斉化した不均斉化ロジン、各種ロジンのグリセリンエステルやエチレングリコールエステル等のエステル化ロジン等が好ましく使用することができる。更に、これら各種ロジンでフェノール樹脂やマレイン酸樹脂、キシレン樹脂等を変性したロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性キシレン樹脂等のロジン変性樹脂等をも好ましく使用することができる。
テルペン系樹脂は、テルペン系化合物を重合したポリテルペンが例示される。テルペン系化合物は、代表的には、イソプレンを構成単位とする(C5H8)nの不飽和炭化水素である。テルペン系樹脂としては、具体的には、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、及びミルセン等のテルペン系化合物をモノマーとして、単独で重合したホモポリマー、又は、これらの混合物を共重合したコポリマーを好ましく使用することができる。更に、テルペン系化合物とフェノールを共重合したテルペンフェノール樹脂も好ましく使用することができる。水素添加テルペン樹脂、芳香族モノマーで変性した芳香族変性テルペン樹脂、また、テルペンでフェノール樹脂等を変性したテルペン変性フェノール樹脂等のテルペン変性樹脂等をも好ましく使用することができる。
石油系樹脂は、C5系脂肪族及び脂環族炭化水素、並びに、これらの誘導体、C9系芳香族及び脂環族炭化水素、並びに、これらの誘導体、及び、C5−C9系脂肪族/芳香族共重合体、並びに、これらの誘導体等が例示される。C5系石油系樹脂は、ナフサの熱分解により副生されるC4〜C5留分、特には、C5留分を、重合したものである。C5留分の主な成分には、シクロペンタジエン、イソプレン、ピペリレン、ノルマルペンテン、イソペンテン、シクロペンテン等が含まれ、これらを単独で重合したホモポリマー、又は、これらの混合物を共重合したコポリマーをも好ましく使用することができる。C9系石油系樹脂は、ナフサの熱分解により副生されるC5〜C9留分、特にはC9留分、を重合したものである。C9留分の主な成分には、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、アルキルインデン、ジシクロペンタジエン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、及び、キシレン等が含まれ、これらを単独で重合したホモポリマー、又は、これらの混合物を共重合したコポリマーをも好ましく使用することができる。したがって、スチレン、α−メチルスチレン及びイソプロピルトルエンのホモポリマーやこれらのコポリマーを含む樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、芳香族系付加縮合型石油系樹脂、クロマン−インデン重合体型樹脂等を好ましく使用することができる。合成樹脂としては、更にスチレン−無水マレイン酸系樹脂、及び、ケトン系樹脂等をも好ましく使用することができる。
粘着付与樹脂は、摩擦材原料全体に対して好ましくは0.5〜2.0重量%、特に好ましくは0.5〜1.5重量%で含有することができる。ここで、粘着付与樹脂が0.5重量%よりも少なくなると静摩擦係数を高める効果を期待できず、粘着付与樹脂が2.0重量%よりも多くなると摩擦材の耐摩耗性が悪化するおそれがあることから、上記範囲で含有することが好ましい。
粘着付与樹脂の性状は、特に制限はないが、例えば、粉体状、粒子状、及び繊維状等の固体とすることができる。好ましくは粉体状である。粉体状とすることで、他の摩擦材原料と均一に混合することができ、摩擦材の静止摩擦係数を均等に高めることができる。
繊維基材は、有機繊維や金属繊維、天然又は人造の無機繊維等を例示することができる。繊維基材の具体例は、有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、アクリル繊維、セルロース繊維、及び、炭素繊維等を挙げることができ、金属繊維としては、スチール、ステンレス、アルミ、亜鉛、及び、スズ等の単独金属、並びに、それぞれの合金金属による繊維を挙げることができ、無機繊維としては、ロックウール、及び、ガラス繊維等を挙げることができる。繊維基材は、1種類を単独で、又は、複数種類を併用することもできる。また、繊維基材の含有量は特に制限されるものではないが、摩擦材原料全体に対して、好ましくは3〜15重量%で含有することができる。
結合材は、摩擦材原料を結合させる機能を有するものである。結合材の具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、及び、イミド樹脂等を挙げることができ、それぞれのエストラマー、炭化水素樹脂、及び、エポキシ等の変性した樹脂を使用することもできる。結合材は、1種類を単独で、又は、複数種類を併用することもできる。また、結合材の含有量は特に制限されるものではないが、摩擦材原料全体に対して、好ましくは3〜10重量%で含有することができる。
有機充填材は、カシューダスト、ゴム粉、タイヤ粉、及び、フッ素ポリマー等を好ましく使用することができ、これらを1種類単独で、又は、複数種類を併用することもできる。しかしながら、上記具体例に限定するものではなく、当該技術分野で公知の有機充填材を好ましく使用することができる。有機充填材の含有量についても特に制限はなく、当該技術分野で通常使われる含有量とすることができる。
無機充填材としては、pH調製材、無機摩擦調整材、チタン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、及び、ケイ酸カルシウム等を使用することができる。チタン酸塩は、チタン酸アルカリ金属塩、チタン酸アルカリ金属・第二族塩等が例示でき、具体例として、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸リチウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等を挙げることができる。チタン酸塩は、摩擦材原料全体に対して好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%で含有する。これにより、銅成分の削減による耐摩耗性悪化を補填することができ、耐摩耗性に優れた摩擦材を提供することができる。
pH調製材として、水酸化カルシウム等を含有することができる。
無機摩擦調整材として、二酸化ケイ素等のシリカ、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化クロム(酸化クロム(II)等)、酸化鉄(四三酸化鉄や酸化第二鉄等)、及び、セラミック粉等を含有することができる。好ましくは、無機摩擦調整材はモース硬度が6.5以上の物質を使用することができ、上記具体例に限定されることなく当該技術分野で公知の無機物を好ましく使用することができる。
鉄、アルミ、亜鉛、スズ等の単独金属、並びに、それぞれの合金金属による金属粉等の金属を含有させることができる。
これらの無機充填材は、1種類を単独で、又は、複数種類を併用することもできる。無機充填材の含有量は特に制限はなく、当該技術分野で通常使われる含有量とすることができる。
更に、本実施形態の摩擦材には潤滑材を含有させることができ、具体例としては、コークス、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、及び、金属硫化物等を挙げることができる。金属硫化物は、硫化スズ、三硫化アンチモン、二硫化モリブテン、硫化タングステン等が例示できる。潤滑材は、1種類を単独で、又は、複数種類を併用することもできる。潤滑材の含有量は特に制限はなく、当該技術分野で通常使われる含有量とすることができる。
本実施形態の摩擦材は、当該技術分野で公知の方法により製造することができ、摩擦材原料を配合し混合する混合工程と、混合された摩擦材原料を所望の形状に成形する成形工程とにより製造することができる。
ここで、混合工程は、粘着付与樹脂をはじめとする摩擦材原料を粉体状で混合することが好ましく、これにより摩擦材原料を均一に混合することが容易となる。混合方法は、摩擦材原料を均一に混合できる限り特に制限はなく、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。好ましくは、混合に際しては、フェンシェルミキサやレディーゲミキサ等の混合機を使用して混合することができ、例えば、常温で10分程度混合する。このとき、摩擦材原料の混合物が昇温しないように公知の冷却方法によって冷却しながら混合するようにしてもよい。
成形工程は、摩擦材原料をプレス等で押し固めることにより行うことができ、当該技術分野で公知の方法に基づいて行うことができる。プレスによる成形に際しては、摩擦材原料を加熱して押し固めて成形するホットプレス工法と、摩擦材原料を加熱せずに常温で押し固めて成形する常温プレス工法の何れで行ってもよい。ホットプレス工法で成形する場合には、例えば、成形温度を140℃〜200℃(好ましくは160℃)とし、成形圧力を10MPa〜30MPa(好ましくは20MPa)とし、成形時間を3分〜15分(好ましくは10分)とすることができる。常温プレス工法で成形する場合には、例えば、成形圧力を50MPa〜200MPa(好ましくは100MPa)とし、成形時間を5秒〜60秒(好ましくは15秒)とすることで成形することができる。続いて、クランプ処理(例えば、180℃、1MPa、10分)を行う。その後、150℃〜250℃、5分〜180分の熱処理(好ましくは、230℃、3時間)を行うことができる。
更に、必要に応じて、摩擦材の表面を研磨し摩擦面を形成する研磨工程を設けてもよい。
本実施形態に係る摩擦材は、車両等のディスクブレーキ用パッドに適用できるが、これに限られるものではなく、ブレーキシュー等、従来公知の摩擦材が適用できるものに適用することができる。本実施形態の摩擦材は、例えば、裏板としての金属板等の板状部材と一体化してブレーキ用パッドとして使用することができる。
本実施形態の摩擦材によれば、摩擦材に粘着付与樹脂を含有させることで摩擦材の静摩擦係数を高めクリープ異音の発生を低減できると共に、銅成分の削減による耐摩耗性の悪化を抑制し、優れた耐摩耗性とクリープ異音発生の低減を両立することができる。特に、銅成分の削減による耐摩耗性の悪化を補填するためにチタン酸カリウム等のチタン酸塩を多く含有させた摩擦材において、問題となっていたクリープ異音の発生を効果的に低減することができる。
以下に、本実施形態に係る摩擦材の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。
実施例1〜11及び比較例1〜3として、図2に示す配合量に従って摩擦材原料を配合し作製した摩擦材をブレーキパッドに使用し、一般効力、耐摩耗性、クリープ異音について評価を行った。なお、図中の各摩擦材原料組成における配合量の単位は、摩擦材原料全体に対する重量%である。
(一般効力)
JASO C406に準じて、第2効力試験の初速50km/hと100km/h時の平均摩擦係数(μ)を測定した。ここでは、下記の基準にて3段階で評価した。
〇:平均摩擦係数0.37以上0.43以下
△:平均摩擦係数0.34以上0.37未満、又は、0.43を超え0.46未満
×:平均摩擦係数0.34未満、又は、0.46を超える
JASO C406に準じて、第2効力試験の初速50km/hと100km/h時の平均摩擦係数(μ)を測定した。ここでは、下記の基準にて3段階で評価した。
〇:平均摩擦係数0.37以上0.43以下
△:平均摩擦係数0.34以上0.37未満、又は、0.43を超え0.46未満
×:平均摩擦係数0.34未満、又は、0.46を超える
(耐摩耗性)
JASO C427に準じて、100℃、200℃、400℃の各温度における摩耗試験を行い、摩耗材の厚み(mm)を測定し摩耗量を算出した。制動回数1000回当たりの摩耗量に換算し、下記の基準にて4段階で評価した。
◎:0.20mm未満
〇:0.20mm以上0.25mm未満
△:0.25mm以上0.30mm未満
×:0.30mm以上
JASO C427に準じて、100℃、200℃、400℃の各温度における摩耗試験を行い、摩耗材の厚み(mm)を測定し摩耗量を算出した。制動回数1000回当たりの摩耗量に換算し、下記の基準にて4段階で評価した。
◎:0.20mm未満
〇:0.20mm以上0.25mm未満
△:0.25mm以上0.30mm未満
×:0.30mm以上
(クリープ異音)
実車を使用しJASO C406相当の擦り合わせを実施後、一晩屋外で放置し、翌朝エンジン始動直後にブレーキペダルをリリースし、発生したクリープ異音の車内異音を評価した。ここでは、下記の基準にて2段階で評価した。
〇:異音発生なし、又は、一般ドライバーが不快に感じない許容レベルでの異音の発生
×:一般ドライバーが不快に感じるレベルの異音の発生
実車を使用しJASO C406相当の擦り合わせを実施後、一晩屋外で放置し、翌朝エンジン始動直後にブレーキペダルをリリースし、発生したクリープ異音の車内異音を評価した。ここでは、下記の基準にて2段階で評価した。
〇:異音発生なし、又は、一般ドライバーが不快に感じない許容レベルでの異音の発生
×:一般ドライバーが不快に感じるレベルの異音の発生
結果を図2に示す。実施例1〜11では、一般効力、耐摩耗性、及びクリープ異音について、良好な結果が得られた。これにより、本実施例の摩擦材は、良好な一般効力及び耐摩耗性を確保しつつ、クリープ異音の発生を効果的に低減できることが判明した。一方、粘着付与樹脂を含有しない比較例1、及び、0.3重量%と粘着付与樹脂の含有量の少ない比較例2では、クリープ異音の発生を効果的に低減できないことが判明したことから、本実施例で確認されたクリープ異音発生の低減効果は粘着付与樹脂によるものであることは明確である。また、粘着付与樹脂を2.5重量%で含有する比較例3では、クリープ異音の低減効果は良好であるものの、高温での耐摩耗性が劣ることが確認された。したがって、耐摩耗性とクリープ異音発生低減の両立には、粘着付与樹脂の含有量も重要であることが判明した。
本発明の摩擦材は、車両等のディスクブレーキ用パッドやブレーキシュー等、摩擦材が要求される分野に適用することができる。
Claims (4)
- 繊維基材、結合材、有機充填材、及び、無機充填材を含有する摩擦材であって、
前記摩擦材は、元素として銅の含有量が摩擦材全体に対して0.5重量%以下であり、
前記無機充填材としてチタン酸塩を含有すると共に、粘着付与樹脂を摩擦材全体に対して0.5〜2.0重量%で含有する摩擦材。 - 前記粘着付与樹脂が、ロジン又はテルペンを主成分とする樹脂、又は、前記ロジン又は前記テルペンの変性樹脂である請求項1に記載の摩擦材。
- 前記粘着付与樹脂が、C5系脂肪族炭化水素石油系樹脂、C9系芳香族炭化水素石油系樹脂、又は、前記石油系樹脂の何れかの誘導体である請求項1に記載の摩擦材。
- 前記銅を含まず、前記チタン酸塩を摩擦材全体に対して10〜20重量%で含有する請求項1〜3の何れか一項に記載の摩擦材。
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Cited By (1)
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CN110594324A (zh) * | 2019-09-12 | 2019-12-20 | 西北工业大学 | 一种低噪音高耐磨阻燃型摩擦材料及制备方法 |
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