JP2008184594A - 摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車用ブレーキなどに利用する摩擦材について、環境保全の面で好ましくない鉛化合物やアンチモン化合物を使用しなくても高温域での耐摩耗性と対面攻撃性の抑制効果及びブレーキ鳴きの抑制効果を得られるようにすることを課題としている。
【解決手段】繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材の原料組成物中に、硫化ビスマス、硫化タングステン、硫化亜鉛、硫化銅、硫化錫、硫化鉄、硫化マンガンの中から選ばれる1種または複数種の金属硫化物とマンガンを添加した。
【選択図】なし
【解決手段】繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材の原料組成物中に、硫化ビスマス、硫化タングステン、硫化亜鉛、硫化銅、硫化錫、硫化鉄、硫化マンガンの中から選ばれる1種または複数種の金属硫化物とマンガンを添加した。
【選択図】なし
Description
この発明は、各種ブレーキやクラッチフェーシングなどに利用する摩擦材、特に、環境にやさしく、性能も優れた摩擦材に関する。
自動車用ブレーキなどに採用される摩擦材(ディスクブレーキ用の摩擦パッドやドラムブレーキ用のブレーキライニングなど)には、従来、耐摩耗性を向上させるために、黒鉛や二硫化モリブデンを配合することが行われている。また、高温域で発生するメタルキャッチによる対面攻撃性の悪化を抑制するために、硫化鉛、酸化アンチモン、硫化アンチモン等の鉛化合物やアンチモン化合物が有効であることが知られている。しかしながら、この鉛化合物やアンチモン化合物は環境問題への取り組みから使用を抑制する動きが高まっている。
鉛化合物やアンチモン化合物の使用を抑制するためには、環境負荷の小さい代替材料が必要である。そこで、下記特許文献1は、その代替材料として、硫化チタン及び金属複合硫化物以外の金属硫化物を3種以上含有させることを提案している。なお、含有させる金属硫化物については、硫化亜鉛、硫化銅、硫化ビスマス、硫化錫、硫化鉄、硫化マンガン
および硫化モリブデンを具体例として挙げている。
および硫化モリブデンを具体例として挙げている。
また、高温域での耐摩耗性の確保と高周波鳴き(制動時に発生する高周波の異音)の低減を図る目的で、摩擦材料マトリックスに、総容量を基準にして、約2〜10容量%の硫化ビスマスを添加する下記特許文献2に記載された摩擦材も開発され、さらに、耐熱フェード性および耐水フェード性に優れ、高速、高負荷、降雨等の環境下でも摩擦係数が安定した下記特許文献3に記載のブレーキ用焼結金属摩擦材も開発されている。
特開2003−313312号公報
特表2003−503555号公報
特開平5−179232号公報
特許文献1は、硫化チタン及び金属複合硫化物以外の金属硫化物を3種以上含有させるとしているが、金属硫化物のみをアンチモン化合物や鉛化合物の代替材として用いるその方法では、メタルキャッチの抑制、摩擦材自身の耐摩耗性、低周波鳴き(制動時に発生する低周波の異音)の抑制に関して十分に満足できる性能を得ることが難しい。
特許文献2の摩擦材も、アンチモン化合物や鉛化合物の代替材として硫化ビスマスを添加しているが、硫化ビスマスのみを代替材にしたこの摩擦材は、高温域での耐摩耗性の確保と高周波鳴きの抑制に関しては満足できても、低周波鳴きの抑制に関する効果が悪く、総合評価では満足できるものではない。
特許文献3の摩擦材は、金属硫化物である二硫化モリブデンや二硫化タングステンが添加され、また、銅、錫、亜鉛、ニッケル、鉄、クロム、モリブデン、タングステンなどの金属が併用されているが、これは焼結金属摩擦材であり、繊維基材、摩擦調整材、充填材などを樹脂の結合材で固めた摩擦材に適用されたものではない。
繊維基材、摩擦調整材、充填材などを樹脂の結合材で固めた摩擦材は、焼結金属摩擦材に比べるとブレーキノイズが少なく、その中でも特に、NAO(Non−asbesto
s organic)材が日本国内では主流をなしている。
s organic)材が日本国内では主流をなしている。
この発明は、自動車用ブレーキなどに利用するNAO材に代表される摩擦材について、環境保全の面で好ましくない鉛化合物やアンチモン化合物を使用せずに高温域での耐摩耗性と対面攻撃性の抑制効果を得られるようにすることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、硫化ビスマス、硫化タングステン、硫化亜鉛、硫化銅、硫化錫、硫化鉄、硫化マンガンの中から選ばれる1種または複数種の金属硫化物とマンガンを併用し、これを、繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材の原料組成物中に添加した。
この摩擦材の原料組成物に対する金属硫化物の添加量は、合計で0.1〜15.0体積%、より好ましくは、合計で0.5〜10.0体積%、マンガンの添加量は、0.1〜5.0体積%、より好ましくは0.5〜3.0体積%の範囲に収めるのがよく、金属硫化物とマンガンの添加量をその範囲に制限した摩擦材はより良い性能を発揮する。
この発明の摩擦材は、金属硫化物とマンガンを併用しており、摩擦材に高い負荷が加わったときに摺動相手材(ディスクロータなど)を構成した鉄よりもイオン化傾向の大きいマンガンが分解、酸化され、相手材の摺動面に酸化物の被膜を適量生成し、自身の耐摩耗性能を高め、メタルキャッチによる対面攻撃性の抑制効果を発揮する。これに加えて、低周波ノイズ(例えば、周波数2kHz以下の鳴き)や高周波ノイズ(例えば周波数2kHz以上の鳴き)を抑制する効果も発揮するようになる。
なお、この発明の摩擦材は、鉛化合物やアンチモン化合物の代替材として金属硫化物とマンガンを添加したものであるので、環境負荷の大きい鉛化合物やアンチモン化合物を原料組成物中に含ませる必要がなく、環境負荷への悪影響もなくすることができる。
以下、この発明の摩擦材の実施の形態について説明する。この発明の摩擦材は、繊維基材として、アラミド繊維、銅繊維などの有機、無機の繊維を使用する。有害な石綿は用いない。また、摩擦調整材及び充填材として、黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、マイカ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムなどを使用する。
これらの原料を結合させるバインダー(結合材)は、熱硬化性樹脂、中でも、耐熱性、難燃性、機械的性質などに優れたフェノール樹脂を使用する。そのフェノール樹脂は粉末を添加し、これを一旦溶かして硬化させる。
このほかに、鉛化合物やアンチモン化合物の代替材(極圧添加材)として金属硫化物と鉄に比べてイオン化傾向の大きいマンガンを添加する。
このように、金属硫化物とマンガンを併用すると、環境問題に配慮しながら所望の耐摩耗性能と、メタルキャッチによる対面攻撃性の抑制効果を得ることができる。さらに、マンガンの働きで適量の酸化物被膜が鉄で形成された相手材の摺動面に生成されることにより、トルク変動が抑えられることから、低周波ノイズのみならず高周波ノイズの抑制効果も発揮されるようになる。これらの効果は、後述する実施例によって証明される。
金属硫化物は、硫化ビスマス、硫化タングステン、硫化亜鉛、硫化銅、硫化錫、硫化鉄
および硫化マンガンの中から任意のものを1種または複数種選んで用いる。この金属硫化物は、摩擦材の原料組成物に対して、合計で0.1〜15.0体積%、より好ましくは、合計で0.5〜10.0体積%添加するとよい。
および硫化マンガンの中から任意のものを1種または複数種選んで用いる。この金属硫化物は、摩擦材の原料組成物に対して、合計で0.1〜15.0体積%、より好ましくは、合計で0.5〜10.0体積%添加するとよい。
また、マンガンは、摩擦材の原料組成物に対して、0.1〜5.0体積%、より好ましくは0.5〜3.0体積%添加するとよい。
金属硫化物の合計添加量が0.1体積%未満では添加の効果が小さく、メタルキャッチを十分に抑えることができない。また、その量が15.0体積%を超えると、低周波ノイズが発生する傾向が高まる。
マンガンも、その添加量が0.1体積%未満では添加の効果が小さく、高温(例えば400℃)でのメタルキャッチの抑制効果が不十分になる。また、このマンガンの添加量が
5.0体積%を超えると、高周波ノイズが発生する傾向が高まる。
マンガンも、その添加量が0.1体積%未満では添加の効果が小さく、高温(例えば400℃)でのメタルキャッチの抑制効果が不十分になる。また、このマンガンの添加量が
5.0体積%を超えると、高周波ノイズが発生する傾向が高まる。
鉛化合物やアンチモン化合物を用いた従来の摩擦材と同等の摩擦性能と対面攻撃性を金属硫化物のみの添加によって得ようとすると、金属硫化物を多量に添加する必要があり、目的に副わない種類の被膜が多量に生成されて摩擦係数が著しく低下する。
また、金属成分のみを添加する場合にも、従来の摩擦材と同等の摩擦性能と対面攻撃性を発揮させようとすると多量の添加が必要になり、目的に副わない種類の被膜が多量に生成されて摩擦係数が著しく高騰し、高周波ノイズが発生し易くなる。この発明の摩擦材は、金属硫化物とマンガンを併用したことによって、そのような不具合を生じないものになる。
なお、金属硫化物とマンガンの添加量を上記の範囲に制限した摩擦材は、安定した摩擦係数の確保、メタルキャッチによる対面攻撃性の抑制、ノイズ抑制などの効果が平均的に
発揮されて性能の偏りが少ないものになる。
発揮されて性能の偏りが少ないものになる。
なお、この発明の摩擦材は、必要な原料を所定の比率で混合して得られる原料組成物を、所定の温度と圧力を加えて成形し、さらに、バインダーのフェノール樹脂を熱硬化させ、必要に応じて仕上げ研磨などを施して摩擦パッドなどの所望の製品に仕上げる。成形と硬化は、特許文献1が開示しているような方法や摩擦材製造の一般的な方法で行える。製造条件も、特別な条件は必要でなく、特許文献1が開示しているような条件で足りる。
−実施例−
性能評価のための摩擦材を製造した。その摩擦材の原料成分とその原料成分の含有量を表1に示す。表1の実施例1〜14は発明品、比較例1〜6は比較品である。なお、比較例1は前掲の特許文献1が開示している摩擦材に相当し、また、比較例2は特許文献2が開示している摩擦材に相当する。
性能評価のための摩擦材を製造した。その摩擦材の原料成分とその原料成分の含有量を表1に示す。表1の実施例1〜14は発明品、比較例1〜6は比較品である。なお、比較例1は前掲の特許文献1が開示している摩擦材に相当し、また、比較例2は特許文献2が開示している摩擦材に相当する。
性能評価の試験結果を表2に示す。性能評価は、摩耗試験を行い、その摩耗試験におけるメタルキャッチの発生状況と、低周波ノイズ及び高周波ノイズの発生状況、環境負荷への影響について調べた。試験の方法と評価の基準を以下にまとめる。
・〔摩耗試験〕
制動初速度50km/h、制動減速度0.3G、制動回数1000回換算、制動前温度100℃、200℃、300℃、400℃の条件での摩耗量を測定。
・〔メタルキャッチの発生〕
上記の摩耗試験において、各温度の摩耗量測定時にメタルキャッチの発生状況を観察し、下記基準で評価。
◎:メタルキャッチ無し。○:長径3mm以下の小さなメタルキャッチ数個以下。
△:小さなメタルキャッチ多数。×:長径5mm以上の大きなメタルキャッチ。
・〔平均摩擦係数〕
JASO C406 の第2効力時の摩擦係数の平均値
・ 〔低周波ノイズ〕
実車評価で時速40km/h、制動前ブレーキ温度60℃、90℃、120℃、150℃、180℃、150℃、120℃、90℃、60℃、制動減速度0.2G、0.3G、0.4G、0.6G、0.8Gにおいて、ドライバーの官能評価で2kHz以下の低周波ノイズの音圧が大レベル発生時×、中レベル発生時△、小レベル発生時○、発生無し◎。
・ 〔高周波ノイズ〕
実車評価で時速40km/h、制動前ブレーキ温度60℃、90℃、120℃、150℃、180℃、150℃、120℃、90℃、60℃、制動減速度0.2G、0.3G、0.4G、0.6G、0.8Gにおいて、ドライバーの官能評価で2kHz以上の高周波ノイズの音圧が大レベル発生時×、中レベル発生時△、小レベル発生時○、発生無し◎。
・〔環境負荷〕
原料組成物中にアンチモン化合物をごく少量でも含むものは環境負荷への影響×、全く含んでいないもののみ◎。
制動初速度50km/h、制動減速度0.3G、制動回数1000回換算、制動前温度100℃、200℃、300℃、400℃の条件での摩耗量を測定。
・〔メタルキャッチの発生〕
上記の摩耗試験において、各温度の摩耗量測定時にメタルキャッチの発生状況を観察し、下記基準で評価。
◎:メタルキャッチ無し。○:長径3mm以下の小さなメタルキャッチ数個以下。
△:小さなメタルキャッチ多数。×:長径5mm以上の大きなメタルキャッチ。
・〔平均摩擦係数〕
JASO C406 の第2効力時の摩擦係数の平均値
・ 〔低周波ノイズ〕
実車評価で時速40km/h、制動前ブレーキ温度60℃、90℃、120℃、150℃、180℃、150℃、120℃、90℃、60℃、制動減速度0.2G、0.3G、0.4G、0.6G、0.8Gにおいて、ドライバーの官能評価で2kHz以下の低周波ノイズの音圧が大レベル発生時×、中レベル発生時△、小レベル発生時○、発生無し◎。
・ 〔高周波ノイズ〕
実車評価で時速40km/h、制動前ブレーキ温度60℃、90℃、120℃、150℃、180℃、150℃、120℃、90℃、60℃、制動減速度0.2G、0.3G、0.4G、0.6G、0.8Gにおいて、ドライバーの官能評価で2kHz以上の高周波ノイズの音圧が大レベル発生時×、中レベル発生時△、小レベル発生時○、発生無し◎。
・〔環境負荷〕
原料組成物中にアンチモン化合物をごく少量でも含むものは環境負荷への影響×、全く含んでいないもののみ◎。
−評価−
表2からわかるように、発明品の中でも、金属硫化物の合計添加量を0.5〜10.0体積%、マンガンの添加量を0.5〜3.0体積%とした実施例1,2,5〜7,11,12は、全ての評価項目において最良の結果が得られている。金属硫化物の添加量がより好ましいとした範囲から外れている実施例4とマンガンの添加量がより好ましいとした範囲から外れている実施例13も、×の評価項目がなく、性能の安定した摩擦材になっている。
表2からわかるように、発明品の中でも、金属硫化物の合計添加量を0.5〜10.0体積%、マンガンの添加量を0.5〜3.0体積%とした実施例1,2,5〜7,11,12は、全ての評価項目において最良の結果が得られている。金属硫化物の添加量がより好ましいとした範囲から外れている実施例4とマンガンの添加量がより好ましいとした範囲から外れている実施例13も、×の評価項目がなく、性能の安定した摩擦材になっている。
なお、この発明の摩擦材は、ディスクロータやドラムロータを相手材とするディスクブレーキ用の摩擦パッドやドラムブレーキ用のブレーキシューなどに利用するのに適しているが、クラッチフェーシングなどにも利用できる。
Claims (4)
- 繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材において、原料組成物中に硫化ビスマス、硫化タングステン、硫化亜鉛、硫化銅、硫化錫、硫化鉄、硫化マンガンの中から選ばれる1種または複数種の金属硫化物とマンガンを添加したことを特徴とする摩擦材。
- 原料組成物に対する金属硫化物の添加量を合計で0.1〜15.0体積%、マンガンの添加量を0.1〜5.0体積%にしたことを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
- 原料組成物に対する金属硫化物の添加量を合計で0.5〜10.0体積%、マンガンの添加量を0.5〜3.0体積%にしたことを特徴とする請求項2に記載の摩擦材。
- 前記繊維基材として有機繊維と、石綿を除く無機繊維を使用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007021713A JP2008184594A (ja) | 2007-01-31 | 2007-01-31 | 摩擦材 |
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Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010090334A (ja) * | 2008-10-10 | 2010-04-22 | Toyota Motor Corp | 摩擦対 |
JP2016079250A (ja) * | 2014-10-14 | 2016-05-16 | 日本ブレーキ工業株式会社 | 摩擦材組成物、摩擦材及び摩擦部材 |
KR20180026030A (ko) * | 2016-09-01 | 2018-03-12 | 현대자동차주식회사 | 금속성 브레이크 마찰재 |
CN114630887A (zh) * | 2019-10-30 | 2022-06-14 | Gkn动力传动国际有限公司 | 用于等速万向节的包含硫化锌和硫化铜以及二硫化钼和/或二硫化钨的润滑脂组合物 |
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2007
- 2007-01-31 JP JP2007021713A patent/JP2008184594A/ja active Pending
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