JP6490936B2 - 摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材 - Google Patents

摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材 Download PDF

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本発明は、自動車等の制動に用いられるディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材に適した摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材に関する。
自動車等には、制動のためにディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材は、相手材となるディスクロータやブレーキドラム等と摩擦することによって制動の役割を果たす。そのため摩擦材には、使用条件に応じた適切な摩擦係数(効き特性)が求められるだけでなく、ブレーキ鳴きが発生しにくいこと(鳴き特性)、摩擦材の寿命が長いこと(耐摩耗性)等が要求される。
特に摩擦係数の安定性は効き特性だけでなく、鳴き特性にも大きく影響する重要な要素である。一般的に、摩擦係数が高いとブレーキ鳴きの発生確率が高まるため、制動条件や温湿度等の環境条件に依らず、摩擦係数を適正な範囲にコントロールすることが重要である。
さらに近年、回生協調ブレーキの普及により、摩擦係数の安定性に対する要求がますます高まっている。回生協調ブレーキでは制動が電子制御されるため、摩擦材の摩擦係数が安定していないとドライバーが想定した以上の制動力が発生して急ブレーキになってしまうことがある。逆に、ドライバーが求める制動力が得られず制動距離が伸びてしまうこともあり、快適なドライビングが損なわれるだけでなく、事故の原因ともなり得る。
摩擦材には、結合材、繊維基材、無機充填材及び有機充填材等が含まれ、前記特性を発現させるために、一般的に、それぞれ1種もしくは2種以上を組み合わせたものが含まれる。繊維基材としては、有機繊維、金属繊維、無機繊維等が用いられる。従来は繊維機材としてアスベストが用いられていたが、近年はアスベストを用いないノンアスベスト摩擦材が主流となっている。
アスベストを用いないノンアスベスト摩擦材において、摩擦係数を安定化させる目的で用いられてきた素材として、銅が挙げられる。銅は延性の高い金属であり、制動時に摩擦界面に延びることで被膜を形成し、摩擦界面に凝着力と潤滑性を程よく付与する。結果、摩擦係数が安定化するだけでなく、特に高温の耐摩耗性も向上する。しかし、銅や銅合金を含有する摩擦材は、制動時に生成する摩耗粉中に銅を含むため、河川や湖を汚染するという可能性が示唆されている。
また、銅とは異なる高温潤滑材として、三硫化アンチモンや三酸化アンチモン等のアンチモン化合物も一般的に用いられてきたが、人体有害性の観点から摩擦材に添加しないことが望まれている。
銅の代替技術として、これまでにいくつかの手法が検討されてきた。例えば、銅を使用せず、酸化マグネシウムと黒鉛を摩擦材中に45〜80体積%含有し、酸化マグネシウムと黒鉛の比率を1/1〜4/1とする方法が提案されている(特許文献1)。
特開2002−138273号公報
特許文献1のブレーキ用摩擦材では、研削材である酸化マグネシウムと、潤滑材である黒鉛の添加量が極端に多くなり、各種摩擦特性をバランス良く改善することは困難である。特に黒鉛の潤滑性は湿度影響を大きく受けることが一般的に知られており、湿度に対する摩擦係数の安定性が大きく損なわれてしまう。
そこで本発明は、アスベストを用いない摩擦材において、元素としてのアンチモンを含まず、かつ銅含有率が0.5質量%を超えない環境有害性、および人体有害性が低い組成で、制動条件や温湿度に対して安定した摩擦係数を発現し、かつ優れた耐摩耗性を有する摩擦材を与える摩擦材組成物を提供することを目的とする。また、該摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、摩擦材組成物として、元素としてのアンチモンを含まず、かつ元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えない組成とした場合に、チタン酸塩として、チタン酸カリウムを含有するとともに、チタン酸リチウムカリウムおよびチタン酸マグネシウムカリウムのうち少なくとも一方を含有し、前記チタン酸塩の合計量が8〜30質量%であり、かつ酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムの少なくとも一方を8〜30質量%含有することで、銅の添加量が極めて少ない、あるいは銅を含有せず、かつアンチモンを含有しなくても、安定した摩擦係数と優れた耐摩耗性を有する摩擦材を提供可能であることを見出した。
すなわち、本発明の摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、元素としてのアンチモンを含まず、かつ元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、チタン酸塩として、チタン酸カリウムを含有するとともに、チタン酸リチウムカリウムおよびチタン酸マグネシウムカリウムのうち少なくとも一方を含有し、前記チタン酸塩の合計量が8〜30質量%であり、かつ酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムの少なくとも一方を8〜30質量%含有することを特徴とする。
上記摩擦材組成物においては、チタン酸マグネシウムカリウムを含有することが好ましい。また、上記摩擦材組成物においては、チタン酸マグネシウムカリウムを4〜20質量%含有することが好ましく、および/または、酸化ジルコニウムを8〜20質量%含有することが好ましい。さらに、上記摩擦材組成物を成形して摩擦材とすることが好ましく、この摩擦材と裏金とを一体化して摩擦部材とすることが好ましい。
本発明によれば、自動車用ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材に用いた際に、環境有害性、および人体有害性が低い組成としつつ、安定した摩擦係数、および優れた耐摩耗性を有する摩擦材を与える摩擦材組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記特性を有する摩擦材及び摩擦部材を提供することができる。
以下、本発明の摩擦材組成物、これを用いた摩擦材及び摩擦部材について詳述する。なお、本発明の摩擦材組成物は、アスベストを含まない、いわゆるノンアスベスト摩擦材組成物である。
[摩擦材組成物]
本実施形態の摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、元素としてのアンチモンを含まず、かつ元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、チタン酸塩として、チタン酸カリウムを含有するとともに、チタン酸リチウムカリウムおよびチタン酸マグネシウムカリウムのうち少なくとも一方を含有し、前記チタン酸塩の合計量が8〜30質量%であり、かつ酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムの少なくとも一方を8〜30質量%含有することを特徴とする。なお、上記の「元素としてのアンチモン」とは、三硫化アンチモンや三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物に含まれるアンチモン元素の、全摩擦材組成物中における含有率を示す。また、「元素としての銅」とは、繊維状や粉末状等の銅、銅合金及び銅化合物に含まれる銅元素の、全摩擦材組成物中における含有率を示す。
[無機充填材]
本実施形態の摩擦材組成物は無機充填材を含有する。無機充填材は、摩擦材の耐熱性の悪化を避けるために摩擦調整材として含まれるものである。本実施形態において、無機充填材としてはチタン酸塩としてチタン酸カリウムを含有するとともに、チタン酸マグネシウムカリウム、およびチタン酸リチウムカリウムのうち少なくとも一方を含有する。さらに、酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を含有する。
上記チタン酸塩の合計含有率は8〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましい。チタン酸塩の含有率を8質量%以上とすることで摩擦係数の安定性が向上し、30質量%以下とすることで、極端な気孔率上昇を避けることができる。気孔率が極端に上昇してしまうと、摩擦材の機械強度が低下するだけでなく、吸湿による摩擦係数の安定性低下、及び摩擦材と相手が錆で固着する危険性が高まる。また、チタン酸カリウムとしては、8チタン酸カリウム、6チタン酸カリウム等を用いることができる。
また、チタン酸カリウムのみを含有させても優れた耐摩耗性は得られない。一方で、チタン酸マグネシウムカリウム、およびチタン酸リチウムカリウムのうち少なくとも一方のみを含有させると摩擦係数が極端に低下してしまう。従って、チタン酸カリウムだけでなく、チタン酸マグネシウムカリウム、およびチタン酸リチウムカリウムのうち少なくとも一方を組み合わせて含有することが必要である。
さらに、チタン酸マグネシウムカリウムを含有することがより好ましい。チタン酸マグネシウムカリウムはチタン酸リチウムカリウムに対して融点が高く、高温域における摩擦材の耐摩耗性がより向上する。
さらに、チタン酸マグネシウムカリウムの含有率は2〜20質量%であることが好ましく、2〜16質量%であることがより好ましく、2〜12質量%であることがさらに好ましい。チタン酸マグネシウムカリウムの含有率を2質量%以上とすることで摩擦材の耐摩耗性が向上し、20質量%以下とすることで極端な摩擦係数の低下を避けることができる。
上記酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムの含有率は8〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましい。酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムの含有率を8質量%以上とすることで摩擦係数の極端な低下を避けることができ、30質量%以下とすることで摩擦材の耐摩耗性が極端に悪化すること、及び相手材への攻撃性が極端に高くなることを回避できる。
上記酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムのメジアン径は、1〜30μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましく、1〜15μmであることがさらに好ましい。酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムのメジアン径を1μm以上とすることで良好な摩擦係数、耐摩耗性が発現し、30μm以下とすることで摩擦界面での分散性を高め、摩擦係数を安定化できるだけでなく、相手材への攻撃性が極端に高くなることを回避できる。
なお、上記酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムのメジアン径は、レーザー回折粒度分布測定などの方法を用いて測定することができる。例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、商品名:LA・920(株式会社堀場製作所製)で測定することができる。また、本発明の効果を損なわない程度であれば、本実施形態の酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムに、通常、摩擦材に用いられる無機充填材を組み合わせて用いることができる。
上記酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウム以外の無機充填材としては、例えば、硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ドロマイト、コークス、黒鉛、マイカ、酸化鉄、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、珪酸ジルコニウム、ムライト、クロマイト、酸化チタン、シリカ、γ−アルミナ等の活性アルミナを用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記無機充填材の総含有量は、酸化ジルコニウム、および酸化マグネシウムを含め、摩擦材用組成物において20〜80質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく40〜80質量%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有量を20〜80質量%とすると、耐熱性の悪化を避けることができる。
[繊維基材]
本実施形態の摩擦材組成物は繊維基材を含有する。繊維基材は摩擦材において補強作用を示すものである。繊維基材としては、有機繊維、金属繊維、無機繊維等が挙げられる。
本実施形態の摩擦材組成物は有機繊維としてアラミド繊維、アクリル繊維、セルロース繊維、フェノール樹脂繊維等を用いることができ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、耐熱性、補強効果の観点から、アラミド繊維を用いることが好ましい。
金属繊維としては銅繊維、鉄系繊維、チタン繊維、亜鉛繊維、アルミ繊維等を用いることができ、1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができるが、銅繊維を用いる場合は、摩擦材中の元素としての銅含有率が0.5質量%を超えないようにする。
無機繊維としては、ウォラストナイト、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミノシリケート繊維等を用いることができ、1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができるが、環境への優しさの観点から、吸引性のチタン酸カリウム繊維等を含有しないことが好ましい。
なお、ここでいう鉱物繊維とは、スラグウール等の高炉スラグ、バサルトファイバー等の玄武岩、その他の天然岩石等を主成分として溶融紡糸した人造無機繊維であり、Al元素を含む天然鉱物であることがより好ましい。具体的には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれるもの、又はこれら化合物が1種又は2種以上含有されるものを鉱物繊維として用いることができ、これらのうちAl元素を含むものがより好ましい。摩擦材組成物中に含まれる鉱物繊維全体の平均繊維長が大きくなるほど摩擦組成物中の各成分との接着強度が低下する傾向があるため、鉱物繊維全体の平均繊維長は500μm以下が好ましく、より好ましくは100〜400μmである。ここで、平均繊維長とは、該当する全ての繊維の長さの平均値を示した数平均繊維長のことをいう。例えば200μmの平均繊維長とは、摩擦材組成物原料として用いる鉱物繊維を無作為に50個選択し、光学顕微鏡で繊維長を測定し、その平均値が200μmであることを示す。
本実施形態で用いられる鉱物繊維は、人体有害性の観点で生体溶解性であることが好ましい。ここでいう生体溶解性の鉱物繊維とは、人体内に取り込まれた場合でも短時間で一部分解され体外に排出される特徴を有する鉱物繊維である。具体的には、化学組成がアルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物総量(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの酸化物の総量)が18質量%以上で、かつ呼吸による短期バイオ永続試験で、20μm以上の繊維の質量半減期が40日以内又は腹膜内試験で過度の発癌性の証拠がないか又は長期呼吸試験で関連の病原性や腫瘍発生がないことを満たす繊維を示す(EU指令97/69/ECのNota Q(発癌性適用除外))。このような生体分解性鉱物繊維としては、SiO−Al−CaO−MgO−FeO−NaO系繊維等が挙げられ、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等を任意の組み合わせで含有した繊維が挙げられる。市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V.製のRoxulシリーズ(「Roxul」は、登録商標)等が挙げられる。「Roxul」には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれる。
繊維基材は、摩擦材組成物中に5〜40質量%含有することが好ましく、5〜35質量%含有することがより好ましく、6〜30質量%含有することがさらに好ましい。繊維基材の含有量を5〜40質量%とすると、効き特性の著しい低下等の弊害を与えることなく、適度な補強効果を摩擦材に付与する効果がある。
[結合材]
本実施形態の摩擦材組成物は、結合材を含有する。結合材は、摩擦材組成物に含まれる有機充填材及び繊維基材等を一体化して、強度を与えるものである。本実施形態の摩擦材組成物に含まれる結合材としては、通常、摩擦材に用いられる熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種変性フェノール樹脂が挙げられ、特に、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂が好ましく、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。良好な耐熱性、成形性及び摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
本実施形態の摩擦材組成物における、結合材の含有量は、5〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。結合材の含有量を5〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制でき、また、摩擦材の気孔率が減少し、弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能悪化を抑制できる。
[有機充填材]
本実施形態の摩擦材組成物は、有機充填材を含有する。有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性等を向上させるための摩擦調整剤として含まれるものである。本発明の摩擦材用組成物に含まれる有機充填材としては、カシューダストやゴム成分等を用いることができる。
上記カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを重合、硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。
上記ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
また、カシューダストとゴム成分とを併用してもよく、カシューダストをゴム成分で被覆したものを用いてもよいが、音振性能の観点から、カシューダストとゴム成分とを併用することが好ましい。上記カシューダストの含有量は、2〜8質量%であることが好ましく、2.5〜8質量%であることがより好ましく、2.5〜7.5質量%であることがさらに好ましい。カシューダストの含有量を2〜8質量%とすることで、摩擦材の弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能の悪化を避けることができ、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
本実施形態の摩擦材組成物中における、有機充填材の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることがさらに好ましい。有機充填材の含有量を1〜20質量%の範囲とすることで、摩擦材の弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能の悪化を避けることができ、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
[その他の成分]
また、本実施形態の摩擦材組成物は、前記の材料以外に、必要に応じてその他の材料を配合することができ、例えば、鉄粉や亜鉛粉等の金属粉末等を配合することができる。
<摩擦材及び摩擦部材>
本実施形態の摩擦材組成物は、自動車等のディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材として又は本実施形態の摩擦材組成物を目的形状に成形、加工、貼り付け等の工程を施すことによりクラッチフェーシング、電磁ブレーキ、保持ブレーキ等の摩擦材としても使用することができる。
本実施形態の摩擦材組成物は、摩擦面となる摩擦部材そのものとして用いて摩擦材を得ることができる。それを用いた摩擦材としては、例えば、下記の構成などが挙げられる。
(1)摩擦部材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に形成させ、摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦部材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦部材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、裏金と摩擦部材の接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成、等が挙げられる。
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属又は繊維強化プラスチック等を用いることができ、例えば、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックが挙げられる。プライマー層及び接着層としては、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
本実施形態の摩擦材組成物は、一般に使用されている方法を用いて摩擦材を製造することができ、本発明の摩擦材組成物を加熱加圧成形して製造することができる。詳細には、例えば、本実施形態の摩擦材組成物をレーディゲミキサー(「レーディゲ」は、登録商標。)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は、登録商標。)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130〜160℃、成形圧力20〜50MPa、成形時間2〜10分間の条件で成形し、得られた成形物を150〜250℃で2〜10時間熱処理することにより本実施形態の摩擦材を得ることができる。なお、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理等を行ってもよい。
本実施形態の摩擦材組成物は、摩擦係数の安定性や高温での耐摩耗性等に優れるため、ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦部材の「上張り材」として有用であり、さらに摩擦部材の「下張り材」として成形して用いることもできる。
なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近の剪断強度、耐クラック性向上を目的とした層のことである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜7及び比較例1〜7>
[ディスクブレーキパッドの作製]
表1及び2に示す配合比率に従って材料を配合し、実施例1〜7及び比較例1〜7の摩擦材組成物を得た。
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形温度145℃、成形圧力35MPa、成形時間5分間の条件で成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて、日立オートモティブシステムズ株式会社製の裏金(鉄製)と共に加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃で4.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、500℃のスコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ9.5mm、摩擦材投影面積52cmを得た。
なお、実施例及び比較例において使用した各種材料は次のとおりである。
[結合材]
・フェノール樹脂:日立化成(株)製(商品名 HP491UP)
[有機充填材]
・カシューダスト
・SBR粉
[無機充填材]
・チタン酸塩A
8チタン酸カリウム:大塚化学(株)製(商品名 テラセスTF−SS)
・チタン酸塩B
6チタン酸カリウム:東邦マテリアル(株)製(商品名 TOFIX−S)
・チタン酸塩C
チタン酸マグネシウムカリウム:大塚化学(株)製(商品名 テラセスPCS)
・チタン酸塩D
チタン酸リチウムカリウム:大塚化学(株)製(商品名 テラセスL−SS)
・硫酸バリウム
・黒鉛
・硫化錫
・マイカ
・水酸化カルシウム
・酸化ジルコニウム:第一稀元素化学工業(株)製(商品名 BR−QZ)
・酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製(商品名 工業用酸化マグネシウム2000)
[繊維基材]
・アラミド繊維(有機繊維)
・鉱物繊維(無機繊維)
前記の方法で作製した実施例1〜7及び比較例1〜7のディスクブレーキパッドを、ブレーキダイナモ試験機(新日本特機株式会社製)を用いて各種性能の評価を行った。実験には、一般的なピンスライド式のコレット型キャリパー及び株式会社キリウ製ベンチレーテッドディスクローター(FC250(ねずみ鋳鉄))を用い、日産自動車株式会社製、商品名:スカイラインV35の慣性モーメントで評価を行った。
[効き特性の評価]
試験は自動車技術会規格JASO C406に準拠し、第2効力試験における50km/h−0.3G及び130km/h−0.3Gセクションの摩擦係数を評価した。ただし、評価は夏環境を想定して温度35℃、湿度60%、冬環境を想定して温度0℃、湿度35%で各々実施した。
(摩擦係数)
夏環境、冬環境共に、第2効力試験における50km/h−0.3G及び130km/h−0.3Gセクションの摩擦係数を評価した。
◎:0.38〜0.42
○:0.36〜0.37、0.43〜0.45
△:0.34〜0.35、0.46〜0.47
×:0.34未満、0.48以上
(速度に対する効き安定性)
速度に対する安定性として、冬環境における130km/h−0.3Gセクションの摩擦係数と50km/h−0.3Gセクションの摩擦係数の差を評価した。
◎:0.02以下
○:0.03
△:0.04
×:0.05以上
(環境に対する効き安定性)
環境に対する安定性として、冬環境と夏環境における50km/h−0.3Gセクションの摩擦係数の差を評価した。
◎:0.02以下
○:0.03
△:0.04
×:0.05以上
[耐摩耗性の評価]
試験はJASO C427に準拠し、制動前ブレーキ温度が400℃におけるディスクパッドの摩耗量をそれぞれ計測し、耐摩耗性として評価した。
◎:0.60mm未満
○:0.60〜0.89mm
△:0.90〜1.19mm
×:1.20mm以上
Figure 0006490936
Figure 0006490936
実施例1〜7は、銅、および三硫化アンチモンを含有する比較例7と同水準の摩擦係数の安定性、耐摩耗性を示した。また、実施例1〜7は、チタン酸カリウムのみ含有する比較例1、2、チタン酸マグネシウムのみ含有する比較例3、4、チタン酸塩の合計率が30質量%を超える比較例5、酸化ジルコニウムの含有率が30質量%を超える比較例6に対して摩擦係数の安定性、および耐摩耗性が優れることは明らかである。
本発明の摩擦材組成物は従来品と比較して、環境負荷、および人体有害性の高い銅、アンチモン化合物を用いなくとも、制動条件や環境等の外乱に対する摩擦係数の安定性、および耐摩耗性に優れるため、該摩擦材組成物は乗用車用ブレーキパッドなどの摩擦材及び摩擦部材に好適である。


Claims (7)

  1. 結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、
    元素としてのアンチモンを含まず、かつ
    元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、
    チタン酸塩として、層状又は柱状のチタン酸カリウムを含有するとともに、チタン酸リチウムカリウムおよびチタン酸マグネシウムカリウムのうち少なくとも一方を含有し、
    前記チタン酸塩の合計量が8〜30質量%であり、かつ
    酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を8〜30質量%含有する摩擦材組成物。
  2. チタン酸マグネシウムカリウムを含有する請求項1に記載の摩擦材組成物。
  3. チタン酸マグネシウムカリウムを2〜20質量%含有する請求項2に記載の摩擦材組成物。
  4. 酸化ジルコニウムを8〜20質量%含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の摩擦材組成物。
  5. 前記チタン酸カリウムが層状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の摩擦材組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材。
  7. 請求項に記載の摩擦材と裏金とを一体化してなる摩擦部材。
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