JP2023073058A - 摩擦材組成物、摩擦材及び摩擦部材 - Google Patents

摩擦材組成物、摩擦材及び摩擦部材 Download PDF

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Takehiko Ikeda
健司 高田
Kenji Takada
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Abstract

【課題】ジャダーの発生が抑制される摩擦材を形成可能な摩擦材組成物の提供。【解決手段】摩擦材組成物は、平均粒子径が100μm~500μmの第1の黒鉛を6質量%~9質量%含み、平均粒子径が10μm~50μmの第2の黒鉛を1質量%~4質量%含み、黒鉛の総含有率が8質量%~12質量%であり、ゴム粉末を3質量%~6質量%含む。【選択図】なし

Description

本開示は、摩擦材組成物、摩擦材及び摩擦部材に関する。
自動車、鉄道車両、各種産業用機械等には、その制動のためディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。摩擦材は、ディスクローター、ブレーキドラム等の対面材と摩擦することにより、制動の役割を果たしている。
例えば、摩擦特性及び振動特性が両立した摩擦材を提供するため、繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、銅、銅合金及び銅化合物から選ばれるうち少なくとも一種の銅成分の含有量が銅元素換算で5質量%以下であり、弾性黒鉛を2~7質量%、クロマイトを3~10質量%、スチール繊維を3~15質量%含む、摩擦材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、高温制動におけるブレーキ振動が少なく、かつ低温摩耗の少ない摩擦材組成物を提供するため、結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含み、摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2~5質量%含有し、層状結晶構造のチタン酸塩を含有することを特徴とする摩擦材組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、高温制動におけるブレーキ振動を抑制できる摩擦材組成物を提供するため、結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含み、摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2~5質量%含有することを特徴とする摩擦材組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、高温制動におけるブレーキ振動を抑制できる摩擦材を提供するため、有機摩擦調整材としてカシューダストを1~4重量%、無機摩擦調整材として白雲母を7~12重量%、無機摩擦調整材としてアルミニウム粒子を0.5~5重量%含むことを特徴とする摩擦材組成物から成型された摩擦材が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2015-093935号公報 特開2016-121244号公報 特開2019-214731号公報 特開2021-017521号公報
しかしながら、近年のブレーキへの性能要求は益々高度化する傾向にある。特に、高速走行時における制動時のブレーキ振動(以下ジャダーと称することがある。)を防止又は低減できる摩擦材が求められている。
本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、本開示の一形態は、ジャダーの発生が抑制される摩擦材を形成可能な摩擦材組成物、並びにこの摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材を提供することを目的とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 平均粒子径が100μm~500μmの第1の黒鉛を6質量%~9質量%含み、平均粒子径が10μm~50μmの第2の黒鉛を1質量%~4質量%含み、黒鉛の総含有率が8質量%~12質量%であり、ゴム粉末を3質量%~6質量%含む摩擦材組成物。
<2> 前記第1の黒鉛の前記第2の黒鉛に対する質量基準の含有比率が、1~5である<1>に記載の摩擦材組成物。
<3> さらにジルコニアを含み、前記ジルコニアの含有率が、25質量%以下である<1>又は<2>に記載の摩擦材組成物。
<4> 前記ジルコニアの前記第1の黒鉛に対する質量基準の含有比率が、1.5~5.0である<3>に記載の摩擦材組成物。
<5> 前記ゴム粉末が、タイヤゴムを含む<1>~<4>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
<6> さらに結合材を含み、前記結合材の含有率が、4質量%~20質量%である<1>~<5>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
<7> さらに繊維基材を含み、前記繊維基材の含有率が、10質量%~40質量%である<1>~<6>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
<8> さらに金属硫化物を含み、前記金属硫化物の含有率が、1質量%~3質量%である<1>~<7>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物を用いて形成される摩擦材。
<10> <9>に記載の摩擦材を含む摩擦部材。
本開示の一形態によれば、ジャダーの発生が抑制される摩擦材を形成可能な摩擦材組成物、並びにこの摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材が提供される。
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定された粒度分布の体積分布から求めた50%(メディアン)径(D50)をいう。平均粒子径は、例えば、LA-920((株)堀場製作所製)で測定することができる。
[摩擦材組成物]
本開示の摩擦材組成物は、平均粒子径が100μm~500μmの第1の黒鉛を6質量%~9質量%含み、平均粒子径が10μm~50μmの第2の黒鉛を1質量%~4質量%含み、黒鉛の総含有率が8質量%~12質量%であり、ゴム粉末を3質量%~6質量%含む。本開示の摩擦材組成物は、上記成分以外のその他の成分を含んでもよい。
本開示の摩擦材組成物によれば、ジャダーの発生が抑制される摩擦材を形成可能となる。本発明者等は鋭意検討の結果、平均粒子径が100μm~500μmの第1の黒鉛と均粒子径が10μm~50μmの第2の黒鉛とゴム粉末とを所定の比率で含有させることにより、ジャダーの発生が抑制される摩擦材を形成可能な摩擦材組成物が得られることを見いだして、本発明を完成させた。
以下、本開示の摩擦材組成物を構成する成分について詳細に説明する。
(黒鉛)
本開示の摩擦材組成物は、平均粒子径が100μm~500μmの第1の黒鉛を6質量%~9質量%含み、平均粒子径が10μm~50μmの第2の黒鉛を1質量%~4質量%含み、黒鉛の総含有率が8質量%~12質量%である。黒鉛は、摩擦材組成物から形成される摩擦材の摩擦係数の安定化に寄与すると推察される。
第1の黒鉛の含有率は、摩擦材組成物全体に対して6.0質量%~8.5質量%が好ましく、6.0質量%~8.0質量%がより好ましい。
第1の黒鉛の平均粒子径は、150μm~450μmが好ましく、200μm~400μmがより好ましく、250μm~350μmがさらに好ましい。
第2の黒鉛の含有率は、摩擦材組成物全体に対して1.5質量%~4.0質量%が好ましく、2.0質量%~3.5質量%がより好ましい。
第2の黒鉛の平均粒子径は、15μm~45μmが好ましく、20μm~40μmがより好ましい。
本開示の摩擦材組成物における黒鉛の総含有率は、摩擦材組成物全体に対して8.5質量%~11.5質量%が好ましく、9.0質量%~11.0質量%がより好ましい。
第1の黒鉛の第2の黒鉛に対する質量基準の含有比率(第1の黒鉛/第2の黒鉛)は、1~5が好ましく、1.2~4.5がより好ましく、1.4~4.0がさらに好ましい。
本開示で用いられる黒鉛としては、石油ピッチ系、石炭ピッチ系等の人造黒鉛、天然黒鉛などが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
(ゴム粉末)
本開示の摩擦材組成物は、摩擦材組成物全体に対してゴム粉末を3質量%~6質量%含む。ゴム粉末、後述のカシューダスト等の有機充填材は、摩擦材組成物から形成される摩擦材の振動減衰性の向上に寄与し、摩擦材の鳴き等の音振性能の悪化が抑制されると推察される。また、摩擦材の耐熱性の悪化の抑制及び熱履歴による強度低下の抑制に寄与すると推察される。
ゴム粉末の含有率は、摩擦材組成物全体に対して3.5質量%~6.0質量%が好ましく、4.0質量%~5.5質量%がより好ましい。
ゴム粉末を構成するゴム成分としては、タイヤゴム、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR),アクリルゴム、イソプレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ゴム粉末は、タイヤゴムで構成されるタイヤ粉であってもよい。
(カシューダスト)
本開示の摩擦材組成物は、カシューダストを含んでもよい。カシューダストとしては特に制限はなく、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。カシューダストとしては、例えば、カシューナッツシェルオイルを硬化させたものを粉砕して得られる粒子が挙げられる。
カシューダストの含有率は、摩擦材組成物全体に対して0.1質量%~5.0質量%が好ましく、0.5質量%~4.0質量%がより好ましく、1.0質量%~3.5質量%がさらに好ましい。
(ジルコニア)
本開示の摩擦材組成物は、ジャダーの発生をさらに抑制するため、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)を含んでもよい。
ジルコニアの含有率は、摩擦材組成物全体に対して25質量%以下が好ましい。ジルコニアの含有率は、摩擦材組成物全体に対して10質量%~25質量%がより好ましく、15質量%~24質量%がさらに好ましい。
ジルコニアの第1の黒鉛に対する質量基準の含有比率(ジルコニア/第1の黒鉛)は、1.5~5.0が好ましく、2.0~4.5がより好ましく、2.5~4.0がさらに好ましい。
ジルコニアの平均粒子径は、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
(金属硫化物)
本開示の摩擦材組成物は、摩擦材の摩擦係数の低下を抑制し耐クラック性の向上を計るため、金属硫化物を含んでもよい。
本開示で用いられる金属硫化物としては、三硫化アンチモン、硫化錫、二硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、二硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、二硫化タングステン等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、硫化錫、三硫化アンチモン、硫化ビスマス、硫化亜鉛及び二硫化モリブデンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、三硫化アンチモンがより好ましい。
金属硫化物の含有率は、摩擦材組成物全体に対して1質量%~3質量%が好ましく、1.2質量%~2.8質量%がより好ましく、1.4質量%~2.6質量%がさらに好ましい。
(無機充填材)
本開示の摩擦材組成物は、黒鉛、必要に応じて用いられるジルコニア及び金属硫化物以外のその他の無機充填材を含んでもよい。
その他の無機充填材としては、マイカ、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等のチタン酸塩、コークス、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ドロマイト、酸化鉄、バーミキュライト、硫酸カルシウム、粒状チタン酸カリウム、板状チタン酸カリウム、タルク、クレー、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ムライト、クロマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、酸化鉄、ガーネット、α-アルミナ、γ-アルミナ、炭化珪素などが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(結合材)
本開示の摩擦材組成物は、結合材を含んでもよい。
結合材は、摩擦材組成物に含まれる黒鉛、ゴム粉末等を結合して一体化し、所定の形状と強度を与えるものである。本開示の摩擦材組成物に含まれる結合材としては特に制限はなく、摩擦材の結合材として用いられる公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂)、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。さらには、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種変性フェノール樹脂なども挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、良好な耐熱性、成形性及び摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂及びアルキルベンゼン変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
結合材の含有率は、摩擦材組成物全体に対して4質量%~20質量%が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましく、6質量%~10質量%がさらに好ましい。結合材の含有率を摩擦材組成物全体に対して4質量%~20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制できる。
(繊維基材)
本開示の摩擦材組成物は、繊維基材を含んでもよい。
繊維基材は、摩擦材において補強作用を奏するために含まれるものである。
本開示の摩擦材組成物では、摩擦材組成物の分野において、通常、繊維基材として用いられる、無機繊維、金属繊維、有機繊維、炭素系繊維等を用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
無機繊維としては、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、シリケート繊維、ウォラストナイト等を用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ここでいう炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、活性炭繊維等を用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、ここでいう鉱物繊維とは、スラグウール等の高炉スラグ、バサルトファイバー等の玄武岩、その他の天然岩石などを主成分として溶融紡糸した人造無機繊維をいう。鉱物繊維としては、Al元素を含む天然鉱物由来の繊維であることがより好ましい。具体的には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が1種単独で又は2種以上含有されるものを用いることができ、より好ましくはこれらのうちAl元素を含むものを、鉱物繊維として好ましく用いることができる。
摩擦材組成物中に含まれる鉱物繊維の平均繊維長が小さくなるほど接着強度は向上する傾向があるため、鉱物繊維の平均繊維長は500μm以下が好ましい。より好ましくは、100μm~400μmであり、さらに好ましくは、110μm~350μmである。
ここで、平均繊維長とは、鉱物繊維の長さの平均値を示した数平均繊維長のことをいう。平均繊維長は、鉱物繊維を無作為に50個選択し、光学顕微鏡で繊維長を測定したときの算術平均をいう。例えば200μmの平均繊維長とは、摩擦材組成物原料として用いる鉱物繊維を無作為に50個選択し、光学顕微鏡で繊維長を測定し、その平均値が200μmであることを示す。
本実施形態で用いる鉱物繊維は、生体溶解性であることが好ましい。ここでいう生体溶解性の鉱物繊維とは、人体内に取り込まれた場合でも所定の時間内に一部分解され体外に排出される特徴を有する鉱物繊維である。具体的には、化学組成としてアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の総含有率(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムの酸化物の総含有率)が18質量%以上で、且つ呼吸による短期バイオ永続試験で、20μm以上の繊維の質量半減期が40日以内か、腹膜内試験で過度の発癌性の証拠がないか、又は長期呼吸試験で関連の病原性及び腫瘍発生がないことを満たす繊維を示す(EU指令97/69/ECのNota Q(発癌性適用除外))。このような生体溶解性鉱物繊維としては、SiO-Al-CaO-MgO-FeO-NaO系繊維等が挙げられ、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等を任意の組み合わせで含有する繊維が挙げられる。市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V製のRoxulシリーズ等が挙げられる。「Roxul」には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれる。
金属繊維としては、耐クラック性及び耐摩耗性の向上のため、銅又は銅合金の繊維を用いることができる。
銅又は銅合金の繊維としては、銅繊維、黄銅繊維、青銅繊維等を用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、金属繊維として、銅及び銅合金以外のその他の金属繊維を用いてもよい。銅及び銅合金以外のその他の金属繊維は、摩擦係数の向上及び耐クラック性の観点から含有させてもよい。
銅及び銅合金以外のその他の金属繊維としては、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコン等の金属単体又は合金形態の繊維、鋳鉄繊維等の金属を主成分とする繊維などが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機繊維としては、アラミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、架橋構造を有してもよいフェノール樹脂繊維等を用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。有機繊維としては、耐熱性の観点からアラミド繊維を用いることが好ましい。
繊維基材の含有率は、摩擦材組成物全体に対して10質量%~40質量%が好ましく、15質量%~35質量%がより好ましく、20質量%~30質量%がさらに好ましい。
(その他の材料)
本開示の摩擦材組成物は、上述の各成分以外のその他の材料を、必要に応じて含有してもよい。
その他の材料としては、耐摩耗性の観点から、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系ポリマーのような有機添加剤などが挙げられる。
[摩擦材]
本開示の摩擦材は、本開示の摩擦材組成物を用いて形成される。本開示の摩擦材は、自動車等に用いられるディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材として使用することができる。本開示の摩擦材はジャダーの発生が抑制されるため、制動時に負荷の大きいディスクブレーキパッドの摩擦材に好適である。
本開示の摩擦材は、本開示の摩擦材組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができる。好ましくは、加熱加圧成形して製造される。詳細には、本開示の摩擦材組成物をレーディゲミキサー、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー等の混合機を用いて混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度140℃~160℃、成形圧力20MPa~50MPaの条件で4分~10分の間加熱して成形し、得られた成形物を180℃~250℃で2時間~10時間熱処理することで得られる。また、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理等を行う。
[摩擦部材]
本開示の摩擦部材は、本開示の摩擦材を含む。本開示の摩擦部材においては、本開示の摩擦材が摩擦部材における摩擦面を構成することが好ましい。
本開示の摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に設けられる摩擦面となる本開示の摩擦材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の摩擦材に対する接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、及び裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成
本開示の摩擦材組成物は、ジャダーの発生が抑制されるため、摩擦部材の「上張り材」の材料として有用である。
なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材である。
以下に、本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
[ディスクブレーキパッドの作製]
表1に示す配合比率(質量%)に従って材料を配合し、実施例及び比較例の摩擦材組成物を得た。なお表1の各成分の配合量の単位は、摩擦材組成物中の質量%である。また、表1において「-」は該当する成分を含有しないことを意味する。なお、チタン酸カリウムとしては、粒子状のチタン酸カリウムを用いた。
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて成形温度145℃、成形圧力30MPaの条件で5分間、鉄鋼製の裏金と共に加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃で5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、520℃で5分間のスコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ11mm、摩擦材投影面積52cm)を得た。
[ジャダー評価]
上述のようにして得られたディスクブレーキパッドをダイナモ試験機に備え付け、65km/hで3.5m/sの馴らし制動を200回実施した。その後、120km/hで3.0m/sの制動を60秒間隔で60回実施して、その時のトルク変動量の最大値を求め、下記基準に基づいて評価した。
A:トルク変動量が150Nm以下
B:トルク変動量が150Nmを超え200Nm以下
C:トルク変動量が200Nmを超え400Nm以下
D:トルク変動量が400Nmを超える
Figure 2023073058000001
表1の評価結果から明らかなように、実施例の摩擦材組成物を用いて形成されたブレーキパッドは、比較例の摩擦材組成物を用いて形成されたブレーキパッドに比較して、ジャダーの発生が抑制されることがわかる。

Claims (10)

  1. 平均粒子径が100μm~500μmの第1の黒鉛を6質量%~9質量%含み、平均粒子径が10μm~50μmの第2の黒鉛を1質量%~4質量%含み、黒鉛の総含有率が8質量%~12質量%であり、ゴム粉末を3質量%~6質量%含む摩擦材組成物。
  2. 前記第1の黒鉛の前記第2の黒鉛に対する質量基準の含有比率が、1~5である請求項1に記載の摩擦材組成物。
  3. さらにジルコニアを含み、前記ジルコニアの含有率が、25質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の摩擦材組成物。
  4. 前記ジルコニアの前記第1の黒鉛に対する質量基準の含有比率が、1.5~5.0である請求項3に記載の摩擦材組成物。
  5. 前記ゴム粉末が、タイヤゴムを含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
  6. さらに結合材を含み、前記結合材の含有率が、4質量%~20質量%である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
  7. さらに繊維基材を含み、前記繊維基材の含有率が、10質量%~40質量%である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
  8. さらに金属硫化物を含み、前記金属硫化物の含有率が、1質量%~3質量%である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
  9. 請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の摩擦材組成物を用いて形成される摩擦材。
  10. 請求項9に記載の摩擦材を含む摩擦部材。
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