JP2008150496A - 摩擦材 - Google Patents

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恭 古川
Hironari Kishimoto
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Abstract

【課題】自動車用ブレーキなどに利用する摩擦材について、環境保全の面で好ましくない鉛化合物やアンチモン化合物を使用しなくても高温域での耐摩耗性と対面攻撃性の抑制効果及び低周波鳴きの抑制効果を得られるようにすることを課題としている。
【解決手段】繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材の原料組成物中に、硫化ビスマスを0.1体積%〜1.9体積%添加した。
【選択図】なし

Description

この発明は、各種ブレーキやクラッチフェーシングなどに利用する摩擦材、特に、環境にやさしく、性能も優れた摩擦材に関する。
自動車用ブレーキなどに採用される摩擦材(ディスクブレーキ用の摩擦パッドやドラムブレーキ用のブレーキライニングなど)には、従来、耐摩耗性を向上させるために、黒鉛や二硫化モリブデンを配合することが行われている。また、高温域で発生するメタルキャッチによる対面攻撃性の悪化を抑制するために、硫化鉛、酸化アンチモン、硫化アンチモン等の鉛化合物やアンチモン化合物が有効であることが知られている。しかしながら、この鉛化合物やアンチモン化合物は環境問題への取り組みから使用を抑制する動きが高まっている。
鉛化合物やアンチモン化合物の使用を抑制するためには、環境負荷の小さい代替材料が
必要である。そこで、下記特許文献1は、その代替材料として、硫化チタン及び金属複合硫化物以外の金属硫化物を3種以上含有させることを提案している。なお、含有させる金属硫化物については、硫化亜鉛、硫化銅、硫化ビスマス、硫化錫、硫化鉄、硫化マンガン、硫化モリブデンを具体例として挙げている。
また、高温域での耐摩耗性の確保と高周波鳴き(制動時に発生する高周波の異音)の低減を図る目的で、摩擦材料マトリックスに、総容量を基準にして、約2〜10容量%の硫化ビスマスを添加する摩擦材も開発されている(下記特許文献2参照)。
特開2003−313312号公報 特表2003−503555号公報
前掲の特許文献1は、アンチモン、鉛の硫化物の代替として、硫化チタン及び金属複合硫化物以外の金属硫化物を3種以上含有させるとしているが、その方法では、メタルキャッチの抑制、摩擦材自身の耐摩耗性、低周波鳴き(制動時に発生する低周波の異音)の抑制に関して十分に満足できる性能を得ることが難しい。
特許文献2の摩擦材も、高温域での耐摩耗性の確保と高周波鳴きの抑制に関しては満足できても、低周波鳴きの抑制に関する効果が悪く、総合評価で満足できるものではない。
この発明は、自動車用ブレーキなどに利用する摩擦材について、環境保全の面で好ましくない鉛化合物やアンチモン化合物を使用しなくても高温域での耐摩耗性と対面攻撃性の抑制効果及び低周波鳴きの抑制効果を得られるようにすることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材を改善の対象にして、その摩擦材の原料組成物中に硫化ビスマスを0.1体積%〜1.9体積%添加した。
原料組成物に対する硫化ビスマスの添加量は、望ましくは、0.3体積%〜1.6体積%、より好ましくは0.5体積%〜1.3体積%の範囲がよく、硫化ビスマスの添加量をその範囲に制限した摩擦材はより良い性能を発揮する。
この発明の摩擦材は、硫化ビスマスを単独で添加しており、摩擦材に高い負荷が加わったときにイオン化傾向の大きいその硫化ビスマスが分解、酸化され、相手材(ディスクロータなど)の摺動面に酸化物の被膜を適量生成し、自身の耐摩耗性能を高め、メタルキャッチによる対面攻撃性の抑制効果を発揮する。それだけではなく、低周波鳴きと称される周波数2kHz以下の異音(ノイズ)を抑制する効果も発揮するようになる。
特許文献1の摩擦材は、含有させる金属硫化物の中に硫化ビスマスが含まれる場合があるが、硫化ビスマスも含めて硫化チタン及び金属複合硫化物以外の金属硫化物を3種以上含有させるよりも、硫化ビスマスのみを添加した方がメタルキャッチの抑制、自身の耐摩耗性向上、低周波鳴きの抑制に関してより優れた効果が得られることがわかった。理由は定かでないが、後述する実施例がそれを証明している。
また、特許文献2の摩擦材も硫化ビスマスを含むが、その硫化ビスマスの添加量を特許文献2が開示している添加量の下限よりも少なくすることで、特許文献2の摩擦材では得られない低周波鳴きの抑制効果も十分に高めることができる(この効果も実施例参照)。
なお、この発明の摩擦材は、鉛化合物やアンチモン化合物の代替材として硫化ビスマスを添加したものであるので、環境負荷の大きい鉛化合物やアンチモン化合物を原料組成物中に含ませる必要がなく、環境負荷への悪影響もなくすることができる。
以下、この発明の摩擦材の実施の形態について説明する。この発明の摩擦材は、繊維基
材として、アラミド繊維、銅繊維などの有機、無機の繊維を使用する。有害な石綿は用いない。また、摩擦調整材及び充填材として、黒鉛、カシューダスト、水酸化カルシウム、マイカ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムなどを使用する。
これらの原料を結合させるバインダーは、熱硬化性樹脂、中でも、耐熱性、難燃性、機械的性質などに優れたフェノール樹脂を使用する。そのフェノール樹脂は粉末を添加し、これを一旦溶かして硬化させる。
このほかに、鉛化合物やアンチモン化合物の代替材(極圧添加材)として硫化ビスマスを0.1体積%〜1.9体積%添加する。硫化ビスマスの添加量は、0.1体積%未満では添加の効果が小さく、メタルキャッチを十分に抑えることができない。また、その量が
1.9体積%を超えると、生成される酸化物被膜の量が多くなり、相手材の摺動面に多量の酸化物被膜が付着してブレーキの効きが低下し、低周波鳴きが発生する傾向も生じて実用に適さないものになる。その硫化ビスマスの添加量は、0.3体積%〜1.6体積%が適しており、特に0.5体積%〜1.3体積%が最適である。
この発明の摩擦材は、必要な原料を所定の比率で混合して得られる原料組成物を、所定の温度と圧力を加えて成形し、さらに、バインダーのフェノール樹脂を熱硬化させ、必要に応じて仕上げ研磨などを施して摩擦パッドなどの所望の製品に仕上げる。成形と硬化は、特許文献1が開示しているような方法や摩擦材製造の一般的な方法で行える。製造条件も、特別な条件は必要でなく、特許文献1が開示しているような条件で足りる。
−実施例−
性能評価のための摩擦材を製造した。その摩擦材の原料成分とその原料成分の含有量を表1に示す。表1の実施例1〜実施例7は発明品、比較例1〜比較例6は従来品である。なお、比較例1は前掲の特許文献2が開示している摩擦材に相当し、また、比較例6は特許文献1が開示している摩擦材に相当する。
性能評価の試験結果を表2に示す。性能評価は、摩耗試験を行い、その摩耗試験におけるメタルキャッチの発生状況と、低周波鳴きの発生状況、環境負荷への影響について調べた。試験の方法と評価の基準を以下にまとめる。
・〔摩耗試験〕
制動初速度50km/h、制動減速度0.3G、制動回数1000回換算、制動前温度100℃、200℃、300℃、400℃の条件での摩耗量を測定。
・ 〔メタルキャッチの発生〕
上記の摩耗試験において、各温度の摩耗量測定時にメタルキャッチの発生状況を観察
し、下記基準で評価。
◎:メタルキャッチ無し。○:長径3mm以下の小さなメタルキャッチ数個以下。
△:小さなメタルキャッチ多数。×:長径5mm以上の大きなメタルキャッチ
・〔平均摩擦係数〕
JASO C406 の第2効力時の摩擦係数の平均値
・〔低周波鳴き〕
実車評価で時速40km/h、制動前ブレーキ温度60℃、90℃、120℃、150
℃、180℃、150℃、120℃、90℃、60℃、制動減速度0.2G、0.3G、0.4G、0.6G、0.8Gにおいて、ドライバーの官能評価で2kHz以下の低周波ノイズの音圧が大レベル発生時×、中レベル発生時△、小レベル発生時○、発生無し◎。
・〔環境負荷〕
原料組成物中にアンチモン化合物をごく少量でも含むものは環境負荷への影響×、全く含んでいないもののみ◎。
−評価−
表2からわかるように、発明品、中でも硫化ビスマスの含有量を0.5体積%〜1.3体積%にした実施例4,5は、全ての評価項目において最良の結果が得られている。また、
硫化ビスマスの含有量が0.3体積%の実施例3、その含有量が1.6体積%の実施例6
も、△や×の評価項目がなく、性能の良い摩擦材になっている。
なお、この発明の摩擦材は、ディスクロータやドラムロータを相手材とするディスクブレーキ用の摩擦パッドやドラムブレーキ用のブレーキシューなどに利用するのに適しているが、クラッチフェーシングなどにも利用できる。
Figure 2008150496
Figure 2008150496

Claims (2)

  1. 繊維基材、摩擦調整材、充填材、及びバインダーとして添加されるフェノール樹脂を主成分とする原料組成物を成形、硬化してなる摩擦材において、原料組成物中に硫化ビスマスを0.1体積%〜1.9体積%添加したことを特徴とする摩擦材。
  2. 原料組成物に対する硫化ビスマスの添加量を、0.5体積%〜1.3体積%にしたことを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
JP2006340006A 2006-12-18 2006-12-18 摩擦材 Pending JP2008150496A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010090334A (ja) * 2008-10-10 2010-04-22 Toyota Motor Corp 摩擦対

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