JP2018153833A - 軸肥大加工装置、および肥大部の形成方法 - Google Patents

軸肥大加工装置、および肥大部の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】割れなどを生じることなく大径の肥大部を形成する。【解決手段】ワークWの中心軸X1の軸方向で間隔をあけて把持する第1金型11および第2金型12と、第1金型11および第2金型12で把持されたワークWの回転、ワークWに作用させる圧縮圧力Pa、およびワークWの曲げ角度θを制御する制御装置20と、ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差を検出する位相差センサ30と、を有し、ワークWを中心軸X1回りに回転させながら、ワークWに基準圧縮圧力Ptを作用させると共にワークWの曲げ角度を基準曲げ角度θtにすることで、ワークWに大径の肥大部Waを形成する軸肥大加工装置1であって、制御装置20は、検出した位相差Δradが閾値の位相差Th1を超えた場合に、ワークWの曲げ角度θを、位相差を減少させる方向に変化させる。【選択図】図1

Description

本発明は、軸肥大加工装置、および肥大部の形成方法に関する。
車両用の自動変速機において、軸、歯車を有する金属部品が使用されている。これら金属部品は、切削、研削加工、および鍛造成型により作製されることが多い。
自動変速機が備えるプーリ部品の多くは、冷間または熱間鍛造成型により作製されており、切削加工などの機械加工工程の削減による作製コストの削減が図られている。
プーリ部品を鍛造成型により作製するためには、軸部と、この軸部に設けた大径フランジ部を成型するために、複数の金型やプレス設備を準備する必要がある。
特許文献1には、金属製の軸部材の軸方向の任意の位置に、軸部材よりも大径の肥大部を形成する方法が開示されている。
特開2002−346684号公報
この肥大部の形成方法では、金属製の軸部材を、当該軸部材の中心軸回りに回転させながら、軸部材に中心軸の軸方向の圧縮圧力を作用させつつ、軸部材に曲げ力を作用させることで、軸部材における曲げ力の作用部周りに、軸部材よりも大径の肥大部を形成する。
ここで、特許文献1の肥大部の形成方法で、大径フランジ部を有するプーリ部品を加工する場合、形成する肥大部の外径が大きくなるほど、肥大部の外径側に割れが生じやすくなる傾向がある。
そのため、割れなどを生じることなく肥大部を形成することが求められている。
本発明は、
金属製の軸部材を、当該軸部材の中心軸の軸方向で間隔をあけて把持する第1の金型および第2の金型と、
前記第1の金型および前記第2の金型で把持された前記軸部材の回転、前記軸部材に作用させる圧縮圧力、および前記軸部材の曲げ角度を制御する制御手段と、
前記軸部材における前記第1の金型で把持された領域と、前記軸部材における前記第2の金型で把持された領域との前記中心軸回りの位相差を検出する位相差検出手段と、を有し、
前記軸部材を前記中心軸回りに回転させながら、前記軸部材に基準圧縮圧力を作用させると共に前記軸部材の曲げ角度を基準曲げ角度にすることで、
前記軸部材における前記第1の金型と前記第2の金型と間の領域に、前記軸部材よりも大径の肥大部を形成する軸肥大加工装置であって、
前記制御手段は、
前記検出した位相差が閾値の位相差を超えた場合に、前記軸部材の曲げ角度を、前記位相差を減少させる方向に変化させる構成とした。
本発明によれば、割れを生じることなく肥大部を形成できる。
実施の形態にかかる軸肥大加工装置の主要部を説明する図である。 軸肥大加工装置を用いた肥大部の形成を説明する図である。 肥大部を形成する過程での圧縮圧力と曲げ角度を説明する図である。 肥大部を形成する過程での肥大部の外径の変化量と、ねじれを説明する図である。 肥大部を形成する過程で生じる位相差を説明する図である。
以下、実施の形態にかかる肥大部の成形装置(軸肥大加工装置1)について説明する。
図1は、ワークW(軸部材)に肥大部Waを形成する際に用いられる軸肥大加工装置1の主要部の構成を説明する図である。図1の(a)は、金属製の軸部材であるワークWを金型10に保持させた状態を示す図である。図1の(b)は、ワークWを、当該ワークWの中心軸X1回りに回転させながら、ワークWに中心軸X1の軸方向の圧縮圧力Paを作用させた状態を示す図である。
なお、図1の(a)では、説明の便宜上、軸肥大加工装置1の金型10と、他の構成要素との具体的な接続関係の図示を省略して、簡略的に示している。また、図1の(b)では、軸肥大加工装置1の主要部である金型10と、この金型10で保持されたワークWのみを示している。
軸肥大加工装置1では、金属製のワークW(軸部材)を中心軸X1回りに回転させた状態で、中心軸X1の軸方向の圧縮圧力Paを作用させつつ、ワークWの曲げ角度θを変更することで、ワークWの外径D1よりも大径の肥大部Waを、ワークWの長手方向の途中位置に形成するようになっている。
ここで、ワークWは、圧延によって製造された金属製の軸状部材であり、長手方向の全長に亘って略同じ外径D1で形成された円柱形状を成している。
軸肥大加工装置1は、円柱形状のワークWを保持する金型10(第1金型11、第2金型12)を有している。
さらに、軸肥大加工装置1は、駆動用のインバータモータ(第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22)と、スライド機構23と、傾斜機構24と、位相差センサ30と、制御装置20と、を有している。
制御装置20は、駆動用モータ(第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22)と、スライド機構23と、傾斜機構24とのうちの少なくとも1つを制御することで、ワークWの中心軸X1回りの回転速度N、ワークWに作用する圧縮圧力Paおよび曲げ角度θのうちの少なくとも1つを制御する。
金型10は、肥大部Waを成形する際に、ワークWを保持するものであり、ワークWの中心軸X1の軸方向に間隔をあけて配置された一対の金型(第1金型11、第2金型12)を有している。
第1金型11と第2金型12は、ワークWの中心軸X1上で対向して配置されており、これら第1金型11と第2金型12には、ワークWの保持穴11a、12aが、中心軸X1の軸方向に貫通して設けられている。
保持穴11a、12aは、ワークWの外径D1と整合する内径で形成されている。ワークWは、当該ワークWの外周面と、保持穴11a、12aの内周面との間に隙間がある状態で、保持穴11a、12aに挿入されている。
保持穴11a、12aに、ワークWの長手方向の一端側と他端側とを、それぞれ挿入すると、ワークWの一端側と他端側とが、第1金型11と第2金型12により保持される。
これにより、ワークWが、第1金型11および第2金型12との相対回転が規制された状態で、第1金型11と第2金型12とで保持されるようになっている。
第1金型11と第2金型12には、それぞれ専用の駆動用モータ(第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22)が付設されている。第1金型11と第2金型12は、駆動用モータの出力回転が伝達されて、中心軸X1回りに回転する。
第1金型11と第2金型12の中心軸X1回りの回転は、制御装置20が制御する。
制御装置20は、ワークWに肥大部を形成する際に、第1金型11と第2金型12を、所定の回転速度N1で中心軸X1回りに回転させる。
第1金型11と第2金型12は、ワークWの中心軸X1の軸方向の任意の位置に、所定の隙間Sa(図1の(a)参照)をあけて対向して配置されている。
第1金型11は、スライド機構23により、中心軸X1の軸方向に変位可能に設けられている。制御装置20は、スライド機構23により、第1金型11の中心軸X1の軸方向への変位を制御して、ワークWに作用する圧縮圧力Paを制御する。
図1の(b)に示すように、第1金型11と第2金型12で保持したワークWを中心軸X1回りに回転させた状態で、第1金型11を、中心軸X1に沿って第2金型12に近づける方向に移動させると、中心軸X1の軸方向の圧縮圧力PaがワークWに作用する。
そうすると、ワークWにおける第1金型11と第2金型12との間の領域Kの肉が、中心軸X1の軸方向に圧縮されると共に、中心軸X1の径方向外側(外径側)に膨出して肥大部Waが形成される(図1(b)の破線参照)。
第2金型12は、傾斜機構24により、中心軸X1に対して傾斜可能に設けられている。制御装置20は、傾斜機構24により、第2金型12の中心軸X1に対する傾きθを制御する。
図2の(d)に示すように、第2金型12を中心軸X1に対して所定角度θ傾斜させると、ワークWにおける第1金型11で保持された領域と、ワークWにおける第2金型12で保持された領域との間の領域Kに曲げ力Pbが作用する。
これにより、ワークWが領域Kを境にして、第1金型11で保持された領域と、第2金型12で保持された領域とが、所定角度θで曲げられた状態となる。
なお、以下の説明では、第2金型12を中心軸X1に対して所定角度θ傾斜させた際に、ワークWの曲げ角度が、第2金型12を中心軸X1に対する傾き(角度θ)と略同じ角度θになるものとして説明する。
ワークWが所定角度θで曲げられると、ワークWでは、第1金型11と第2金型12との間の領域Kの肉のうち、第2金型12の曲げ側に位置する領域Kの肉が、中心軸X1の軸方向に圧縮されつつ、中心軸X1の径方向に肥大化する。
すなわち、領域Kの肉が、第2金型12の曲げ方向側に肥大化する(図2の(d)参照)。
前記したように、ワークWに作用する圧縮圧力Paと曲げ角度θの制御は、ワークWを中心軸X1回りに回転させながら実施される。そのため、第2金型12を中心軸X1に対して所定角度θ傾斜させて、ワークWを中心軸X1に対して曲げている間、ワークWの領域Kでは、第2金型12の曲げ側に位置する領域が、中心軸X1周りの周方向に変化する。よって、圧縮圧力Paにより形成された肥大部は、中心軸X1周りの周方向の全周に亘って肥大化する。
位相差センサ30は、ワークWにおける第1金型11で保持された領域と、ワークWにおける第2金型12で保持された領域との中心軸X1回りの位相差を検出する。
前記したように、ワークWにおける肥大部Waの形成は、第1金型11と第2金型12で保持したワークWを中心軸X1回りに回転させた状態で、ワークWに作用する圧縮圧力Paと曲げ角度θを制御することで行われる。
位相差センサ30は、肥大部Waを形成している際に、ワークWにおける第1金型11で保持された領域と、ワークWにおける第2金型12で保持された領域との中心軸X1回りの位相差を検出して、制御装置20に出力する。
ここで、軸肥大加工装置1を用いた軸部材(ワークW)における肥大部Waの形成方法であって、従来例にかかる方法を説明する。
図2は、軸肥大加工装置1を用いて、ワークWにおける肥大部Waの形成する過程を説明する図である。
図2の(a)は、肥大部Waを形成する前の円柱形状のワークWを金型10にセットした状態を示す図であり、図2の(b)は、ワークWを中心軸X1回りに回転させている状態を示す図である。図2の(c)は、ワークWを中心軸X1回りに回転させている状態で、ワークWに中心軸X1の軸方向の圧縮圧力Paを作用させた状態を示す図であり、図2の(d)は、さらにワークWを所定角度θで曲げた状態(ワークWに曲げ力Pbを作用させている状態)を示す図である。図2の(e)は、ワークWの曲げを解消した状態(曲げ戻している状態)を示す図であり、図2の(f)は、最終的に得られるワークWであって、長手方向の途中位置に肥大部Waが目的の外径Dtで形成されたワークWを示す図である。
図3は、肥大部Waの形成過程での圧縮圧力Paと曲げ角度θの変化を説明する図である。図3の(a)は、実施の形態の場合における圧縮圧力Paと曲げ角度θの変化を示した図であり、図3の(b)は、従来例にかかる肥大部Waの形成過程での圧縮圧力Paと曲げ角度θの変化を示した図である。
図4は、肥大部Waを形成する過程での肥大部Waの外径Dの変化量(外径変化量)と、肥大部Waに作用するねじれ力(ねじれ)の変化を説明する図である。図4の(a)は、実施の形態の場合における肥大部Waの外径Dの変化量と、ねじれ力の変化を示した図であり、図4の(b)は、従来例にかかる肥大部の形成過程での肥大部Waの外径Dの変化量と、ねじれ力の変化を示した図である。
ワークWにおける肥大部Waの形成は、第1金型11と第2金型12で保持した円柱形状のワークWを、中心軸X1周りに所定の回転速度N1で回転させた状態で開始される(図2の(a)、(b)参照)。
この状態で、スライド機構23により第1金型11を第2金型12に近づける方向に変位させて、所定の圧縮圧力P2(第2の目標圧縮力)を、ワークWに作用させる。
ここで、所定の圧縮圧力P2は、ワークWに曲げ力Pbを作用させてワークWを所定の曲げ角度θtにする際に、ワークWに作用させておく中心軸X1の軸方向の圧縮圧力であり、予め設定された値の圧縮圧力である。
これにより、圧縮圧力Paが時刻t0から一定の割合で増加して、時刻t1において、所定の圧縮圧力P2に到達する(図3の(b):Phase1参照)。
この圧縮圧力Paが圧縮圧力P2に到達するまでの間で、中心軸X1の軸方向に圧縮されたワークWの領域Kに、肥大部WaがワークWの外径D1よりも大きい外径で形成される(図2の(c)参照)。
続いて、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θが、所定の曲げ角度θtとなるように、傾斜機構24により第2金型12を中心軸X1に対して傾ける。
ここで、所定の曲げ角度θtは、ワークWに作用させる圧縮圧力Paを、所定の圧縮圧力P2から基準圧縮圧力Ptまで増加させるまでの間と、圧縮圧力Paを基準圧縮圧力Ptで保持している間に、ワークWに作用させる曲げ角度θであり、予め設定された角度である(以下、基準曲げ角度θtとも標記する)。
これにより、曲げ角度θが、時刻t1から一定の割合で大きくなって、時刻t2’において、基準曲げ角度θtに到達する(図3の(b):Phase1参照)。
なお、この時刻t1から時刻t2’までの間、圧縮圧力Paは、圧縮圧力P2のままで保持される。
そして、圧縮圧力Paが、肥大部Waを形成するための基準圧縮圧力Ptとなるように、スライド機構23により第1金型11を第2金型12に近づける方向に変位させる。
これにより、圧縮圧力Paが時刻t2’から一定の割合で増加して、時刻t3’において、基準圧縮圧力Ptに到達する(図3の(b):Phase2参照)。
さらに、基準圧縮圧力Ptに到達するまでの間に、ワークWの領域Kに形成された肥大部Waの外径Dが大きくなる。
なお、この時刻t2’から時刻t3’までの間、曲げ角度θは、基準曲げ角度θtのままで保持される。
そして、時刻t3’以降、第2金型12を、基準曲げ角度θtに保持しつつ、基準圧縮圧力PtをワークWに作用させた状態を継続する。
これにより、領域Kに形成された肥大部Waの外径Dが、時間の経過と共に大きくなる(図3の(b):Phase3参照)。
なお、図4の(b)では、外径Dの変化量が示されているので、肥大部Waの外径が大きくなる程度が、時間の経過と共に、小さくなることが示されている。
そして、肥大部Waの外径Dが、肥大部Waの目標の外径Dtを基準とした所定の閾値範囲Dt±αに到達するまで、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θと圧縮圧力Paとが、基準曲げ角度θtと、基準圧縮圧力Ptで、それぞれ保持される(図3の(b):Phase3参照)。
そして、肥大部Waの外径Dが目標の外径Dtを基準とした所定の閾値範囲Dt±αに到達した時点(時刻t4’)において、圧縮圧力Paを、基準圧縮圧力Ptよりも低く、圧縮圧力P2よりも高い圧縮圧力P3(第3の目標圧縮圧力)まで一気に変化させる(図3の(b)、Phase4参照)。
さらに、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θを、ゼロ(=0)度に向けて一定の割合で減少させる(図3の(b):Phase4、図2の(e)参照)。
そして、第2金型12の中心軸X1に対する角度θがゼロ(=0)度に到達した時点で、第1金型11を第2金型12から離間させて、ワークWに作用する圧縮圧力Paをゼロ(=0)にする。
これにより、目標の外径Dtを基準とした所定の閾値範囲Dt±αの外径の肥大部Waを持つワークWが得られることになる(図2の(f)参照)。
ここで、従来例に係る方法にて肥大部Waを形成すると、肥大部Waの目標の外径Dtが大きくなるにつれて、肥大部Wa、特に肥大部Waの外周に亀裂Cが生じやすくなる傾向がある(図5の(b)参照)。
そして、肥大部Waの外周において亀裂Cは、周方向に間隔をあけて生じる傾向があり、さらに、亀裂Cの各々は、中心軸X1の径方向から見て、中心軸X1に対して略同じ角度傾斜して、生じる傾向がある。
本願発明者は、亀裂Cの各々が、中心軸X1に対して略同じ角度傾斜する傾向に着目して、肥大部Waの形成過程を詳細に検討した。
その結果、以下の点を確認した。
(a)第2金型12を中心軸X1に対して傾けて、肥大部Waの外径を大きくしている過程で、ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、第2金型12で把持された領域との間で、中心軸X1回りの位相差(ねじれ:図4の(b)参照)が発生する。
(b)肥大部Waを目的の外径Dtまで拡径するまでの時間が長くなるほど、発生するねじれの程度が大きくなる。
そこで、位相差の発生原因を鋭意検討したところ、肥大部Waを形成する過程での第1金型11と肥大部Waとの接触面積と、第2金型12と肥大部Waとの接触面積の差が影響していることと見いだした。
以下、具体的に説明する。
図5は、肥大部Waを形成する過程で生じる位相差を説明する図であり、(a)は、位相差が生じる場合の肥大部Waと第1金型11および第2金型12との接触半径(半径r1、r2)の違いを説明する図であり、(b)は、位相差が大きい場合に肥大部Waの外周に生じる亀裂Cを説明する図であり、(c)は、位相差を減少させる場合の第2金型12の中心軸X1に対する傾き(曲げ角度θ)の変更を説明する図である。
図5の(a)に示すように、肥大部Waを形成する過程では、第2金型12が中心軸X1に対して所定角度(基準曲げ角度θt)傾いている。
そして、形成途中の肥大部Waは、第1金型11から作用する基準圧縮圧力Ptで、第2金型12に圧接している。
そのため、第1金型11と肥大部Waとが接触する領域における中心軸X1を基準とした半径r1が、第2金型12と肥大部Waとが接触する領域における中心軸X1を基準とした半径r2よりも小さくなる傾向がある。
そのため、拡径している途中の肥大部Waは、第2金型12との接触面積のほうが、第1金型11との接触面積よりも大きくなり、肥大部Waと第1金型11とが接触する領域での摩擦抵抗よりも、肥大部Waと第2金型12とが接触する領域での摩擦抵抗のほうが大きくなる。
そうすると、第2金型12を中心軸X1回りに回転させる第2金型用駆動モータ22にかかる負荷が、第1金型11を中心軸X1回りに回転させる第1金型用駆動モータ21にかかる負荷よりも大きくなる。
その結果、第2金型12が第1金型11よりも遅れて中心軸X1回りに回転することになり、ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域との間に位相差が生じる。
この発生した位相差は、第1金型11と第2金型12との間の形成される途上の肥大部Waに、中心軸X1周りのねじりせん断力を作用させ、肥大部Waには、ねじりせん断力に起因するせん断ひずみが発生する。
これらねじりせん断力とせん断ひずみは、位相差が大きくなるほど大きなものとなるので、肥大部Waに作用するねじれ力が、肥大部Waを形成している過程で大きくなる(図4の(b)参照)。
肥大部Waが大径化すると、大径化している途中の肥大部Waの外周側には、大径化に伴う周方向の大きな引っ張り応力が発生し、そこへねじりせん断力が作用する(図5の(b)参照)。
そのため、肥大部Waの外周には、亀裂Cが生じ易くなり、この亀裂Cは、位相差が大きくなるほど、いっそう生じやすくなる(図5の(b)参照)。
ここで、実施の形態にかかる軸肥大加工装置1では、第1金型11と第2金型12の回転が、インバータモータ(第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22)で制御されている。
制御装置20は、第1金型11と第2金型12を同じ回転速度N1で中心軸X1回りに回転させるために、第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22に同じ指令値を与えているが、制御装置20は、第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22のフィードバック制御を行っていない。
そのため、実施の形態にかかる軸肥大加工装置1では、肥大部Waを形成する際の圧縮圧力Paの作用のさせ方と、曲げ角度θの大きさを工夫して、位相差に起因する亀裂の発生を抑制している。
以下、実施の形態にかかる軸肥大加工装置1による肥大部Waの形成過程を説明する。
実施の形態にかかる軸肥大加工装置1においても、ワークWにおける肥大部Waの形成は、第1金型11と第2金型12で保持した円柱形状のワークWを、中心軸X1回りに所定の回転速度N1で回転させた状態で開始される(図2の(a)、(b)参照)。
この状態で、スライド機構23により第1金型11を第2金型12に近づける方向に変位させて、所定の圧縮圧力P2(第2の目標圧縮力)を、ワークWに作用させる。
ここで、所定の圧縮圧力P2は、ワークWに曲げ力Pbを作用させてワークWを所定の曲げ角度θ1にする際に、ワークWに作用させておく中心軸X1の軸方向の圧縮圧力であり、予め設定された値の圧縮圧力である。
これにより、圧縮圧力Paが時刻t0から一定の割合で増加して、時刻t1において、曲げ力Pbを作用させる際の所定の圧縮圧力P2に到達する(図3の(a):Phase1参照)。
この圧縮圧力Paが圧縮圧力P2に到達するまでの間で、中心軸X1の軸方向に圧縮されたワークWの領域Kに、肥大部WaがワークWの外径D1よりも大きい外径で形成される(図2の(c)参照)。
続いて、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θが、基準曲げ角度θtよりも小さい曲げ角度θ1(第1の目標曲げ角度)となるように、傾斜機構24により第2金型12を中心軸X1に対して傾ける。
これにより、曲げ角度θが、時刻t1から一定の割合で大きくなって、時刻t2において、曲げ角度θ1に到達する(図3の(a):Phase1参照)。
ここで、曲げ角度θの変化の割合は、前記した従来例にかかる場合と同じに設定されている。そのため、図3の(a)の本願の場合における時刻t1から時刻t2までの時間間隔は、図3の(b)の従来例にかかる場合の時刻t1からt2’までの時間間隔よりも短いものとなる。
なお、この時刻t1から時刻t2までの間、圧縮圧力Paは、所定の圧縮圧力P2のままで保持される。
そして、圧縮圧力Paが、肥大部Waを形成するための基準圧縮圧力Ptよりも高い圧縮圧力P1(第1の目標圧縮圧力)となるように、スライド機構23により第1金型11を第2金型12に近づける方向に変位させる。
これにより、圧縮圧力Paが時刻t2から一定の割合で増加して、時刻t3において、目標の圧縮圧力P1に到達する(図3の(a):Phase2参照)。
ここで、圧縮圧力Paの変化の割合は、前記した従来例にかかる場合と同じに設定されている。そのため、図3の(a)の本願の場合における時刻t2から時刻t3までの時間間隔は、図3の(b)の従来例にかかる場合の時刻t2’からt3’までの時間間隔よりも長いものとなる。
この圧縮圧力Paが目標の圧縮圧力P1に到達するまでの間に、ワークWにおける第1金型11と第2金型12との間の領域Kに、より大径の肥大部Waが形成される。
なお、この時刻t2から時刻t3までの間、曲げ角度θは、原則として上記した所定角度θ1のままで保持される。
実施の形態では、時刻t2から時刻t3までの間、制御装置20が位相差センサ30の出力信号に基づいて、ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差Δradを確認する。
そして、位相差Δradが、閾値の位相差Th1を超えた場合に、制御装置20が、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θをゼロ(=0)度に近づける方向に変化させる(曲げ角度θを小さくする)。
前記したように、第1金型11と肥大部Waとの接触面積と、第2金型12と肥大部Waとの接触面積の差が大きくなると、位相差Δradが大きくなる。
そのため、実施の形態では、軸肥大加工により肥大部Waを形成するに当たり、外周に割れを生じさせずに肥大部Waを形成できる閾値の位相差Th1が実験などに基づいて、ある程度余裕を持って設定されている。
そのため、検出した位相差Δradが閾値の位相差Th1を超えた時点で、曲げ角度θを小さくすることで、第2金型12と肥大部Waとの接触面積を小さくする。
これにより、第1金型11と肥大部Waとの接触面積と、第2金型12と肥大部Waとの接触面積の差が小さくなって、割れの原因となる位相差Δradが小さくなる。
これにより、第1金型11で把持された領域と、第2金型12で把持された領域との間に生じるねじりせん断力を小さくすることができ、最終的に得られる肥大部に亀裂Cなどが生じ難くなるようにしている。
そして、時刻t3以降、曲げ角度θを上記した所定角度θ1から基準曲げ角度θtとなるまで、傾斜機構24により第2金型12を中心軸X1に対してさらに傾ける。
そして、ワークWを基準曲げ角度θtで曲げつつ、目標の圧縮圧力P1を作用させた状態を継続する。これにより、領域Kに形成された肥大部Waの外径Dが、時間の経過と共に大きくなる(図3の(a):Phase3参照)。
そして、肥大部Waの外径Dが、形成される肥大部の目標の外径Dtを基準とした所定の閾値範囲Dt±αに到達するまで、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θと圧縮圧力Paが、基準曲げ角度θtと、目標の圧縮圧力P1でそれぞれ保持される(図3の(a):Phase3参照)。
そして、肥大部Waの外径Dが目標の外径Dtを基準とした所定の閾値範囲Dt±αに到達した時点(時刻t4)において、圧縮圧力Paを、基準圧縮圧力Ptよりも低く、所定の圧縮圧力P2よりも高い圧縮圧力P3まで一気に変化させる(図3の(a):Phase4参照)。
さらに、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θを、ゼロ(=0)度に向けて一定の割合で減少させる(図3の(a):Phase4、図2の(e)参照)。
そして、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θが、ゼロ(=0)度に到達した時点で、第1金型11を第2金型12から離間させて、圧縮圧力Paをゼロ(=0)にする。
これにより、目標の外径Dtを基準とした所定の閾値範囲Dt±αの外径の肥大部Waを持つワークWが得られることになる。
なお、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θと圧縮圧力Paを、基準曲げ角度θtと、目標の圧縮圧力P1でそれぞれ保持している間(図3の(a):Phase3参照)にも、制御装置20が位相差センサ30の出力信号に基づいて、ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差Δradを確認する。
そして、位相差Δradが、閾値の位相差Th1を超えた場合に、第2金型12の中心軸X1に対する曲げ角度θをゼロ(=0)度に近づける方向に変化させる(曲げ角度θを小さくする)。
これにより、ワークWにおいて、第1金型11で把持された領域と、第2金型12で把持された領域との間に生じるねじりせん断力を小さくすることができ、最終的に得られる肥大部Waに亀裂Cなどが生じ難くなる。
なお、肥大部Waを形成している途中で、第2金型12の曲げ角度θを小さくした場合、以降、第2金型12の曲げ角度θを変更後の角度で保持しても良いが、位相差Δradが、閾値の位相差Th1未満になった時点で、元の曲げ角度θ(基準曲げ角度θt)に戻すようにしても良い。
また、肥大部Waを形成している途中で、位相差Δradが、閾値の位相差Th1を超える度に、第2金型12の曲げ角度θを小さくするようにしても良い。
何れの場合にも、最終的に得られる肥大部Waに亀裂Cなどを生じ難くすることができる。
以上の通り、実施の形態では、
(1)金属製の軸部材(ワークW)を、当該ワークWの中心軸X1の軸方向で間隔をあけて把持する一対の金型(第1金型11および第2金型12)と、
第1金型11および第2金型12で把持されたワークWの回転、ワークWに作用させる圧縮圧力Pa、およびワークWの曲げ角度θを制御する制御装置20(制御手段)と、
ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差Δradを検出する位相差センサ30(位相差検出手段)と、を有し、
ワークWを中心軸X1回りに回転させながら、ワークWに基準圧縮圧力Ptを作用させると共にワークWの曲げ角度を基準曲げ角度θtにすることで、
ワークWにおける第1金型11と第2金型12と間の領域Kに、ワークWよりも大径の肥大部Waを形成する軸肥大加工装置1であって、
制御装置20は、
検出した位相差Δradが閾値の位相差Th1を超えた場合に、ワークWの曲げ角度θを、位相差を減少させる方向に変化させる構成とした。
このように構成すると、位相差Δradが減少することで、肥大部Waを径方向に肥大させている際にワークWの肥大部Wa周りに作用するねじりせん断力を抑えることができ、ねじりせん断力に起因して肥大部Waの外径側に生じる亀裂Cなどを好適に抑制できる。
ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差Δradが大きくなるほど、肥大部Wa周りに作用するねじりせん断力が大きくなる。
よって、亀裂Cの発生を防ぐための閾値の位相差Th1を予め用意しておき、検出した位相差Δradが、閾値の位相差Th1を超えた時点で、位相差を減少させる方向に曲げ角度θを調整することで、亀裂Cの発生を好適に抑制できる。
例えば、ワークWにおける第2金型12で把持された領域の中心軸X1に対する傾きを小さくすることで、位相差Δradを減少させる方向に曲げ角度θを調整できる。
また、ワークWにおける第1金型11で把持された領域の中心軸X1回りの回転と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域の中心軸X1回りの回転とを、別々のインバータモータ(第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22)で行っている場合に、位相差Δradと閾値の位相差Th1との比較により、肥大部Waの外径側に生じる亀裂Cや、モータの不具合を先読みできる。
これにより、亀裂Cなどを見越して、ワークWの肥大部Wa周りに作用するねじりせん断力を抑えることができる。
(2)制御装置20は、
基準圧縮圧力Ptよりも大きい目標の圧縮圧力P1(第1の目標圧縮圧力)を作用させて、肥大部Waを形成すると共に、
基準曲げ角度θtよりも小さい目標の曲げ角度θ1(第1の目標曲げ角度)に曲げ角度θを保持している間に、圧縮圧力Paを目標の圧縮圧力P1まで一定の割合で増加させ、
圧縮圧力Paが目標の圧縮圧力P1に到達した後、圧縮圧力Paを目標の圧縮圧力P1で保持している間に、曲げ角度θを、曲げ角度θ1から基準曲げ角度θtまで一定の割合で増加させる構成とした。
従来では、肥大部Waは、ワークWに中心軸X1の軸方向の基準圧縮圧力Ptを作用させると共に、ワークWの曲げ角度θを基準曲げ角度θtにすることで形成される。
ここで、肥大部Waに生じる亀裂Cは、以下の場合に生じる傾向がある。
(a)肥大部Waを大径化している際に肥大部Wa周りに作用するねじりせん断力が大きくなる。
(b)肥大部Waを形成している加工時間が長くなる。
そのため、上記のように構成して、肥大部Waを大径化しているときに作用させる曲げ角度θを二段階で作用させることで、ねじりせん断力を低減する。
そして、肥大部Waを大径化しているときに作用させる圧縮圧力Paを、基準圧縮圧力Ptよりも大きい目標の圧縮圧力P1とすることで、曲げ角度θを二段階で変更することに起因して加工時間が長くなることを防止している。
これにより、ワークWの肥大部Waの外径側に生じる亀裂Cなどを好適に抑制できる。
(3)制御装置20は、
基準圧縮圧力Ptよりも小さい第2の目標の圧縮圧力P2に圧縮圧力Paを保持している間に、曲げ角度θを、第1の目標曲げ角度θ1まで一定の割合で増加させる構成とした。
このように構成すると、曲げ角度θが一定の割合で増加するので、曲げ角度θの急激な増加に起因する亀裂Cを好適に防止できる。
(4)制御装置20は、
曲げ角度θが基準曲げ角度θtに到達した後、肥大部Waの外径Dが、当該肥大部Waの目標の外径Dtを基準とした閾値範囲Dt±α内に達するまで、圧縮圧力Paを目標の圧縮圧力P1で保持すると共に曲げ角度θを基準曲げ角度θtで保持する構成とした。
このように構成すると、肥大部Waを大径化しているときに作用させる圧縮圧力Paを、基準圧縮圧力Ptよりも大きい目標の圧縮圧力P1とすることで、曲げ角度θを二段階で変更することに起因して加工時間が長くなることを防止できる。
(5)制御装置20は、
肥大部Waの外径Dが、当該肥大部Waの目標の外径Dtを基準とした閾値範囲Dt±α内に達すると、以降、曲げ角度θを一定の割合で減少させて最終的にゼロにすると共に、
曲げ角度θを一定の割合で減少させて最終的にゼロにするまでの間、圧縮圧力Paを、基準圧縮圧力Ptよりも低い圧縮圧力P3(第3の目標圧縮圧力)で保持する構成とした。
このように構成すると、曲げ角度θが一定の割合で徐々に減少するので、曲げ角度θの急激な開放に起因する不具合を好適に防止できる。
また、肥大部Waの外径Dが、当該肥大部Waの目標の外径Dtを基準とした閾値範囲Dt±α内に達した時点で、ワークWの保持に必要な圧縮圧力P3まで低減させることで、ワークWを中心軸X1回りに回転させる駆動機構(第1金型用駆動モータ21、第2金型用駆動モータ22)への負荷を低減できる。
(6)制御装置20は、
第1金型11を中心軸X1の軸方向で第2金型12に近づける方向に変位させて、圧縮圧力Paを制御し、
第2金型12の中心軸X1に対する傾きを変化させて、ワークWの曲げ角度θを制御する構成とした。
このように構成すると、第1金型11の中心軸X1の軸方向の変位と、第2金型12の中心軸X1に対する傾きの変更により、圧縮圧力Paと曲げ角度θを制御できる。
よって、圧縮圧力Paと曲げ角度θの制御を容易に行うことができる。
(7)制御装置20は、
曲げ角度θを小さくすることで、位相差Δradを減少させる構成とした。
このように構成すると、圧縮圧力Pa(目標の圧縮圧力P1)をワークWに作用させて、第1金型11と第2金型12の間で肥大部Waを圧縮して肥大部Waを径方向に肥大させる際に、第1金型11と肥大部Waとの接触面積と、第2金型12と肥大部Waとの接触面積との差を小さくできる。
これにより、肥大部Waを径方向に肥大させている際にワークWの肥大部Wa周りに作用するねじりせん断力を小さくでき、ねじりせん断力に起因して肥大部Waの外径側に生じる亀裂Cなどを好適に抑制できる。
本願発明は、肥大部Waの形成方法としても特定できる。
すなわち、
(8)金属製の軸部材であるワークWを、当該ワークWの中心軸X1の軸方向で間隔をあけて把持する一対の第1金型11および第2金型12と、
第1金型11および第2金型12で把持されたワークWの回転、ワークWに作用させる圧縮圧力Pa、およびワークWの曲げ角度θを制御する制御装置20(制御手段)と、
ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差を検出する位相差センサ30(位相差検出手段)と、を有する軸肥大加工装置1を用いて、ワークWにおける第1金型11と第2金型12と間の領域Kに、ワークWよりも大径の肥大部Waを形成する肥大部の形成方法であって、
ワークWを中心軸X1回りに回転させながら、ワークWに基準圧縮圧力Ptを作用させると共にワークWの曲げ角度θを基準曲げ角度θtにすることで、ワークWにおける第1金型11と第2金型12と間の領域Kに、ワークWよりも大径の肥大部Waを形成する第1ステップと、
肥大部Waを形成する過程で、ワークWにおける第1金型11で把持された領域と、ワークWにおける第2金型12で把持された領域との中心軸X1回りの位相差Δradが、閾値の位相差Th1を超えた場合に、位相差を減少させる方向にワークWの曲げ角度θを変化させる第2ステップと、を有する構成とした。
このように構成することによっても、位相差Δradが減少することで、肥大部Waを径方向に肥大させている際にワークWの肥大部Wa周りに作用するねじりせん断力を抑えることができ、ねじりせん断力に起因して肥大部Waの外径側に生じる亀裂Cなどを好適に抑制できる。
(9)第1ステップでは、
基準圧縮圧力Ptよりも大きい目標の圧縮圧力P1(第1の目標圧縮圧力)を作用させて、肥大部Waを形成すると共に、
基準曲げ角度θtよりも小さい曲げ角度θ1(第1の目標曲げ角度)に曲げ角度θを保持している間に、圧縮圧力Paを目標の圧縮圧力P1まで一定の割合で増加させ、
圧縮圧力Paが目標の圧縮圧力P1に到達した後、圧縮圧力Paを目標の圧縮圧力P1で保持している間に、曲げ角度θを、曲げ角度θ1から基準曲げ角度θtまで一定の割合で増加させる構成とした。
このように構成すると、肥大部Waを大径化しているときに作用させる曲げ角度θが二段階で作用するので、ワークWに作用するねじりせん断力が低減される。
そして、肥大部Waを大径化しているときに作用させる圧縮圧力Paを、基準圧縮圧力Ptよりも大きい目標の圧縮圧力P1とすることで、曲げ角度θを二段階で変更することに起因して加工時間が長くなることを防止する。
よって、ワークWの肥大部Waの外径側に生じる亀裂Cなどを好適に抑制できる。
前記した実施の形態では、基準圧縮圧力Ptよりも大きい目標の圧縮圧力P1を、ワークWに作用させて肥大部Waを形成する場合に、位相差Δradに応じて曲げ角度θを調整する場合を例示した。
本願発明は、この態様に限定されるものではなく、基準圧縮圧力PtをワークWに作用させて肥大部Waを形成するようにしても良く、この場合に、位相差Δradに応じて曲げ角度θを調整する構成としても良い。
1 軸肥大加工装置
10 金型
11 第1金型(第1の金型)
12 第2金型(第2の金型)
20 制御装置(制御手段)
30 位相差センサ(位相差検出手段)
W ワーク
Wa 肥大部
D、D1、Dt 外径
N、N1 回転速度
Pa 圧縮圧力
Pt 基準圧縮圧力
P1 圧縮圧力(第1の目標圧縮圧力)
P2 圧縮圧力(第2の目標圧縮圧力)
P3 圧縮圧力(第3の目標圧縮圧力)
θ 曲げ角度
θt 基準曲げ角度
θ1 曲げ角度(第1の目標曲げ角度)
X1 中心軸

Claims (8)

  1. 金属製の軸部材を、当該軸部材の中心軸の軸方向で間隔をあけて把持する第1の金型および第2の金型と、
    前記第1の金型および前記第2の金型で把持された前記軸部材の回転、前記軸部材に作用させる圧縮圧力、および前記軸部材の曲げ角度を制御する制御手段と、
    前記軸部材における前記第1の金型で把持された領域と、前記軸部材における前記第2の金型で把持された領域との前記中心軸回りの位相差を検出する位相差検出手段と、を有し、
    前記軸部材を前記中心軸回りに回転させながら、前記軸部材に基準圧縮圧力を作用させると共に前記軸部材の曲げ角度を基準曲げ角度にすることで、
    前記軸部材における前記第1の金型と前記第2の金型と間の領域に、前記軸部材よりも大径の肥大部を形成する軸肥大加工装置であって、
    前記制御手段は、
    前記検出した位相差が閾値の位相差を超えた場合に、前記軸部材の曲げ角度を、前記位相差を減少させる方向に変化させることを特徴とする軸肥大加工装置。
  2. 前記制御手段は、
    前記基準圧縮圧力よりも大きい第1の目標圧縮圧力を作用させて、前記肥大部を形成すると共に、
    前記基準曲げ角度よりも小さい第1の目標曲げ角度に前記曲げ角度を保持している間に、前記圧縮圧力を前記第1の目標圧縮圧力まで一定の割合で増加させ、
    前記圧縮圧力が前記第1の目標圧縮圧力に到達した後、前記圧縮圧力を前記第1の目標圧縮圧力で保持している間に、前記曲げ角度を、前記第1の目標曲げ角度から前記基準曲げ角度まで一定の割合で増加させることを特徴とする請求項1に記載の軸肥大加工装置。
  3. 前記制御手段は、
    前記基準圧縮圧力よりも小さい第2の目標圧縮圧力に前記圧縮圧力を保持している間に、前記曲げ角度を、前記第1の目標曲げ角度まで一定の割合で増加させることを特徴とする請求項2に記載の軸肥大加工装置。
  4. 前記制御手段は、
    前記曲げ角度が前記基準曲げ角度に到達した後、前記肥大部の外径が、当該肥大部の目標の外径を基準とした所定範囲内に達するまで、前記圧縮圧力を前記第1の目標圧縮圧力で保持すると共に前記曲げ角度を前記基準曲げ角度で保持することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の軸肥大加工装置。
  5. 前記制御手段は、
    前記肥大部の外径が、当該肥大部の目標の外径を基準とした所定範囲内に達すると、以降、前記曲げ角度を一定の割合で減少させて最終的にゼロにすると共に、
    前記曲げ角度を一定の割合で減少させて最終的にゼロにするまでの間、前記圧縮圧力を、前記基準圧縮圧力よりも低い第3の目標圧縮圧力で保持することを特徴とする請求項4に記載の軸肥大加工装置。
  6. 前記制御手段は、
    前記第1の金型を前記中心軸の軸方向で前記第2の金型に近づける方向に変位させて、前記圧縮圧力を制御し、
    前記第2の金型の前記中心軸に対する傾きを変化させて、前記軸部材の曲げ角度を制御することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の軸肥大加工装置。
  7. 前記制御手段は、
    前記曲げ角度を小さくすることで、前記位相差を減少させることを特徴とする請求項6に記載の軸肥大加工装置。
  8. 金属製の軸部材を、当該軸部材の中心軸の軸方向で間隔をあけて把持する第1の金型および第2の金型と、
    前記第1の金型および前記第2の金型で把持された前記軸部材の回転、前記軸部材に作用させる圧縮圧力、および前記軸部材の曲げ角度を制御する制御手段と、
    前記軸部材における前記第1の金型で把持された領域と、前記軸部材における前記第2の金型で把持された領域との前記中心軸回りの位相差を検出する位相差検出手段と、を有する軸肥大加工装置を用いて、前記軸部材における前記第1の金型と前記第2の金型と間の領域に、前記軸部材よりも大径の肥大部を形成する肥大部の形成方法であって、
    前記軸部材を前記中心軸回りに回転させながら、前記軸部材に基準圧縮圧力を作用させると共に前記軸部材の曲げ角度を基準曲げ角度にすることで、前記軸部材における前記第1の金型と前記第2の金型と間の領域に、前記軸部材よりも大径の肥大部を形成するステップと、
    前記肥大部を形成する過程で、前記軸部材における前記第1の金型で把持された領域と、前記軸部材における前記第2の金型で把持された領域との前記中心軸回りの位相差が、閾値の位相差を超えた場合に、前記軸部材の曲げ角度を、前記位相差を減少させる方向に変化させるステップと、を有することを特徴とする肥大部の形成方法。
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