JP2018153098A - 製菓用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間の保存安定性が必要な製菓用途に幅広く使用でき、経日的な固液分離が生じにくく、風味安定性及びブルーム耐性に優れたソフトな食感を有する菓子類を得ることのできる油脂組成物を提供すること。【解決手段】下記の条件(a)〜(d)を満たす製菓用油脂組成物により解決することができる。(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50〜80質量%(油相基準)(b)UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)(c)StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が15〜35質量%(油相基準)(d)SSS型トリグリセリドの占める割合が2〜7質量%(油相基準)【選択図】なし

Description

本発明は、幅広く製菓用途に使用でき、経日的な固液分離が生じにくく、風味安定性及びブルーム耐性に優れたソフトな食感を有する菓子類を得ることのできる油脂組成物に関する。
消費者の嗜好の多様化に合わせ、従来とは異なる様々な食感を有する菓子類が求められるようになっており、菓子類の物性に大きな影響を及ぼす油脂についても多様な要望がある。一般に、チョコレート類、焼菓子類、クリーム等の菓子類に対してソフトな食感を付与するには、菓子類に用いる固型脂と液状油の比率を変えていくことが行われている。しかし、単に固形脂や乳化剤を液状油に分散させただけでは、保存条件によっては、経日的に固形脂の油脂結晶が粗大化して、固形脂が沈殿したり、液状油が表面に分離する等して、固液分離を起こしてしまう。このような現象は、製菓用途においてはクリームの耐熱性の低下や、焼菓子の白色化等の原因となってしまうほか、経日的な風味の劣化につながる場合もあり、保存期間の長い製菓用途では特に問題となりやすいものであった。固液分離が生じやすい理由としては、固形脂は、結晶を介してネットワークを形成し、ある程度性質の異なるトリグリセリド組成の油脂どうしであっても分離が抑制されるのに対し、液状油はネットワークの形成が期待できず、混合油脂中で液状油の割合が多くなるとこの傾向が顕著になることが挙げられる。
このような課題に対し、固液分離し難く流動性を有する油脂組成物を用いる方法が開発され、さらに様々な改良が行なわれてきた。例えば、異性化水添した油脂と極度硬化油脂とをエステル交換した機能性油脂を配合した油脂組成物(例えば特許文献1参照)、ナタネ微水添油、パーム中融点部及び極度硬化油脂からなる油脂組成物(例えば特許文献2参照)等のトランス脂肪酸の機能を利用した改良が行われてきた。
しかし、特許文献1及び2それぞれに記載の油脂組成物は、固液分離耐性に乏しいことに加え、特許文献1に記載の油脂組成物は、異性化水添とエステル交換とを組み合わせて製造するため、製造方法が煩雑であるという問題があった。
また、特許文献1及び2それぞれに記載の油脂組成物は、いずれも1〜12%のトランス脂肪酸を含むものであるが、近年では、実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有する流動状油脂組成物が望まれている。
そのため、パーム軟部油をエステル交換して得られた油脂を主体とした流動状油脂組成物(特許文献3)や、特定のエステル交換油脂を主体とする流動状油脂組成物(特許文献4)が提案された。
しかし、特許文献3に記載の油脂組成物や特許文献4の油脂組成物では、油脂組成物あるいは該油脂組成物を使用して得られた菓子類を長期間保存した場合に風味が劣ったものとなる場合があり、製菓用途では課題を残すものであった。
特開平07−203847号公報 特開昭56−110798号公報 特開2006−115724号公報 特開2015−89350号公報
よって本発明は、長期間の保存安定性が必要な製菓用途に幅広く使用でき、経日的な固液分離が生じにくく、風味安定性、ブルーム耐性に優れたソフトな食感を有する菓子類を得ることのできる油脂組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、特定の組成を有する油脂組成物により、上記課題を解決できることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記の条件(a)〜(d)を満たす製菓用油脂組成物を提供するものである。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50〜80質量%(油相基準)
(b)UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)
(c)StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が15〜35質量%(油相基準)
(d)SSS型トリグリセリドの占める割合が2〜7質量%(油相基準)
(ただし、Sは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基、Uは炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基、Stはステアリン酸残基、Pはパルミチン酸残基を示す。UUUはUが3分子結合しているトリグリセリド、SSSはSが3分子結合しているトリグリセリド、StU2はステアリン酸残基1分子と炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基2分子が結合しているトリグリセリド、PU2はパルミチン酸残基1分子と炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基2分子が結合しているトリグリセリドを示す。)
また、本発明は、上記製菓用油脂組成物を含有する菓子、及び上記製菓用油脂組成物を菓子に含有させる、菓子のブルーム抑制方法を提供するものである。
本発明によれば、長期間の保存安定性が必要な製菓用途に幅広く使用でき、経日的な固液分離が生じにくく、風味安定性及びブルーム耐性に優れたソフトな食感を有する菓子類を得られる油脂組成物を得ることができる。
以下、本発明の製菓用油脂組成物について、その好ましい実施形態に基づいて詳述する。
本発明の製菓用油脂組成物は下記の条件(a)〜(d)を満たすものである。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50〜80質量%(油相基準)
(b)UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)
(c)StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が15〜35質量%含有(油相基準)
(d)SSS型トリグリセリドの占める割合が2〜7質量%(油相基準)
条件(a)について
本発明の製菓用油脂組成物は、UUU型トリグリセリド(以下、UUUということもある。)の占める割合が油相基準で50〜80質量%であり、好ましくは53〜77質量%、より好ましくは55〜75質量%である。ここで、Uは炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基、UUUはUが3分子結合しているトリグリセリドを示す。本発明においてUUUが50質量%よりも少ないと、油脂組成物が硬い物性となり用途が制約されるほか、本発明の効果、特にソフトな食感が得られない場合がある。UUUが80質量%よりも多いと、経日的な固液分離が生じてしまう。
条件(b)について
本発明の製菓用油脂組成物は、上記UUU型トリグリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)、好ましくは77〜93質量%、より好ましくは80〜90質量%である。
オレイン酸残基が75質量%よりも少ない又は95質量%よりも多いと、本発明の効果、特にブルーム抑制効果が不十分となってしまい、特に75質量%よりも少ないと風味安定性にも劣ったものとなってしまう。
オレイン酸残基の占める割合の大きいUUUを多く含む油脂としては、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂等の各種動植物油脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用することができるが、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックキャノーラ油を使用することが好ましい。
条件(c)について
本発明の製菓用油脂組成物は、StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が油相基準で15〜35質量%であり、好ましくは17〜33質量%、より好ましくは19〜30質量%である。ここでStはステアリン酸残基、Pはパルミチン酸残基を示し、StU2はステアリン酸残基1分子と炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基2分子が結合しているトリグリセリド、PU2はパルミチン酸残基1分子と炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基2分子が結合しているトリグリセリドを示す。
本発明の製菓用油脂組成物における上記StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計が上記範囲となるようにするには、StU2型トリグリセリドを多く含有する油脂とPU2型トリグリセリドを多く含有する油脂を含有させる方法のほか、後述するランダムエステル交換油脂を含有させる方法が挙げられる。
条件(d)について
本発明の製菓用油脂組成物は、SSS型トリグリセリド(以下、SSSということもある。)の占める割合が油相基準で2〜7質量%であり、好ましくは2.5〜6.5質量%、より好ましくは3〜6質量%である。ここでSは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基、SSSはSが3分子結合しているトリグリセリドを示す。
SSSが2質量%よりも少ないと本発明の効果が得られず、また7質量%よりも多くなるとソフトな食感が得られなくなってしまう。
本発明においては、上記SSS型トリグリセリドのうち、その50質量%以上が極度硬化油脂由来であることが好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。その上限は特に制限はなく、多いほど好ましい。
上記極度硬化油脂は、原料油脂に対し、ヨウ素価が好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、最も好ましくは1未満となるまで水素添加し、実質的に構成成分である不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和することによって得られる油脂であって、その融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。融点の上限は、特に制限されるものではないが、通常70℃程度である。
上記水素添加に用いる食用油脂としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ハイエルシン菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、ひまわり油、からし油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の食用油脂、また、これらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することができる。本発明においては、上記水素添加に用いる油脂として、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を混合した混合油を用いることもできる。
また、上記極度硬化油脂としては、これらの油脂から上記のようにして得られた極度硬化油脂を更に分別した硬部油、あるいは1種又は2種以上の極度硬化油脂をエステル交換したものを使用することもでき、また、極度硬化油脂と、飽和脂肪酸や、飽和脂肪酸を主体とする部分グリセリド等とをエステル交換したものを使用することもできる。本発明では、これら全てを極度硬化油脂として扱う。
本発明では、これらの極度硬化油脂のいずれかを単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。
本発明の製菓用油脂組成物においては、上記極度硬化油脂の中でも、微細結晶が得られ、固液分離耐性が特に優れている点において、以下の(1)〜(4)のいずれかの極度硬化油脂を使用することが好ましい。
(1)「牛脂、豚脂、乳脂等の奇数酸を多く含む動物油脂、又はハイエルシン菜種油、魚油等の長鎖脂肪酸を多く含有する油脂」を原料油脂とした極度硬化油脂。
(2)「構成脂肪酸の平均鎖長が異なる2種以上の油脂からなる油脂配合物を、化学的あるいは酵素的にエステル交換して、構成脂肪酸の鎖長をばらつかせた油脂配合物」を原料油脂とした極度硬化油脂。
(3)構成脂肪酸の平均鎖長が異なる2種以上の極度硬化油脂をエステル交換した油脂。
(4)「1種又は2種以上の極度硬化油脂に、該極度硬化油脂と構成脂肪酸の平均鎖長が異なる飽和脂肪酸又は該飽和脂肪酸を主体とする部分グリセリドを添加してなる油脂配合物」を、化学的あるいは酵素的にエステル交換して、構成脂肪酸の鎖長をばらつかせた油脂。
本発明では、これらの中でも、ハイエルシン菜種油の極度硬化油脂、魚油の極度硬化油脂等、長鎖脂肪酸を多く含む油脂を原料油脂とした極度硬化油脂が、高温域での固液分離が特に少ない製菓用油脂組成物を得られる点で好ましく使用される。
本発明の製菓用油脂組成物は、10℃でのSFC(固体脂含量)が5〜45%であるランダムエステル交換油脂(以下、「油脂A」ということもある)を油相基準で5〜30質量%含有することが好ましく、より好ましくは7〜27質量%、さらに好ましくは10〜25質量%含有する。油脂Aの含量が5質量%未満であると本発明の効果、特に十分な固液分離耐性が得られない場合がある。また、油脂Aの含量が30質量%超であると、口どけが悪くなってしまう場合がある。尚、10℃でSFCが5〜45%であるランダムエステル交換油脂を2種以上使用した場合には、それらの合計を上記ランダムエステル交換油脂(油脂A)の量とする。
本明細書において、SFCは、次のようにして測定する。即ち、先ず、油脂(又は油相)を60℃に30分保持して完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させる。次いで、25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に順次30分保持後、SFCを測定する。
上記油脂Aは、1種の油脂又は2種以上の油脂の油脂配合物(以下、1種の油脂の場合も含めて単に「油脂配合物」ということもある)をランダムエステル交換(非選択的エステル交換)して得られる油脂である。
該油脂配合物に使用することのできる油脂としては、食用に使用可能な油脂であれば特に制限はなく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記油脂配合物のランダムエステル交換は、常法に従って行うことができ、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でも可能である。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明の製菓用油脂組成物においては、上記油脂Aの一部として下記(I)を満たす油脂X(以下、単に「油脂X」ということもある)を油脂A基準で10〜60質量%含有することが好ましく、15〜55質量%含有することがより好ましく、20〜50質量%含有することがさらに好ましい。油脂Xは、さらに下記(II)も満たすことが好ましい。
(I)10℃でのSFCが10未満である油脂と極度硬化油脂とのランダムエステル交換油脂である。
(II)SFCが、0℃で10〜25%、20℃で1〜5%、40℃で0〜2%である。
上記油脂Xを一定量含有することにより、本発明の効果、特にブルーム耐性がより良好なものとなる。
(I)について
上記10℃でSFCが10未満である油脂としては、例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油等が挙げられ、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の油脂を分別することで得られた軟部油であって、10℃でSFCが10未満となる油脂も挙げられる。
上記極度硬化油脂としては、上記条件(d)で述べた極度硬化油脂と同様の油脂を挙げることができるが、上記条件(I)において用いる極度硬化油脂として、脂肪酸組成において、炭素数16の飽和脂肪酸含量が好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%であり、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が好ましくは15〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%である極度硬化油脂を使用することが、とりわけ、経日的な固液分離抑制効果に優れ、良好なブルーム抑制効果が得られる点で好ましい。
上記の特定の脂肪酸含量を有する極度硬化油脂を得る方法としては、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油脂と、炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油脂とを混合する方法や、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂との混合油脂を水素添加により極度硬化油脂とする方法、更には、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂とのエステル交換油脂を水素添加により極度硬化油脂とする方法等が挙げられる。
上記炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂としては、パーム油、或いはパーム油に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはパーム油及び/又はパーム分別硬部油を使用する。また、上記炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂としては、ハイエルシン菜種油、からし油、及びこれらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはハイエルシン菜種油を使用する。
上記油脂Xを得るためのエステル交換前の油脂配合物において、上記10℃でSFCが10未満である油脂と上記極度硬化油脂との配合割合は、より良好な本発明の効果を得るためには、極度硬化油脂の配合割合が5〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜25質量%、更に好ましくは12〜20質量%である(残部は全て10℃でSFCが10未満である油脂)。極度硬化油脂の配合割合が5質量%未満であると、得られるエステル交換油脂の融点が低すぎ、本発明の効果を一層高めるという目的を達成できない場合があり、一方、35質量%を超えると、得られるエステル交換油脂の融点が高くなり、ソフトな食感が得られなくなってしまう場合がある。
(II)について
上記油脂Xは、SFC(固体脂含量)が0℃で10〜25%、特に10〜20%であり、20℃で1〜5%、特に1〜4%であり、40℃で0〜2%、特に0〜1%であることが好ましい。油脂XのSFCがこのような範囲であることにより、油脂Xを含有する効果をより高めることができる。
本発明の製菓用油脂組成物は、上記(a)〜(d)を満たす限りにおいて、これまで述べていないその他の油脂を含有することができる。
また、本発明の製菓用油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、油脂組成物の使用油脂の全構成脂肪酸中、トランス脂肪酸含量が好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%未満であることをいう。
水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、部分水素添加油脂は、通常構成脂肪酸中にトランス脂肪酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、上述のように、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
本発明の製菓用油脂組成物に用いることができる上記エステル交換油脂及び上記極度硬化油脂は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないため、その他の油脂に部分水素添加油脂を使用しないことにより、トランス脂肪酸を含まずとも適切なコンステンシーを有する、製菓用油脂組成物とすることができる。
本発明の製菓用油脂組成物における上記のその他の油脂の配合量は、油相中に、油相基準で好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
尚、本明細書において「油相」とは、トリグリセリドの他、油溶性の成分もあわせたものとする。本発明の製菓用油脂組成物における油相含量は、80〜100質量%、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは99質量%〜100質量%である。
また、本発明の製菓用油脂組成物における水相含量は、20質量%未満、好ましくは10質量%未満、より好ましくは1質量%未満である。
本発明の製菓用油脂組成物は、油相に使用する全ての油脂を配合してなる油脂配合物のSFCが10℃、20℃、30℃のいずれにおいても20%以下であることが、より幅広い製菓用途で適用できる点で好ましい。
また、本発明の製菓用油脂組成物には、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、蔗糖・液糖・はちみつ・ブドウ糖・麦芽糖・オリゴ糖・水飴・ソルビトール・還元水飴・モラセス等の糖類や糖アルコール類、デキストリン類、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、サポニン類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記乳化剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の製菓用油脂組成物中、好ましくは0〜3質量%、更に好ましくは0〜1.5質量%である。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の製菓用油脂組成物中、好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%である。
本発明の製菓用油脂組成物中において、上記その他の成分の使用量は、それらの成分の使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは全油脂分100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
次に、本発明の製菓用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明の製菓用油脂組成物は、下記の条件(a)〜(d)の全てを満たす油相を溶解した後、冷却し、結晶化させることにより製造することができる。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50〜80質量%(油相基準)
(b)UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)
(c)StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が15〜35質量%(油相基準)
(d)SSS型トリグリセリドの占める割合が2〜7質量%(油相基準)
具体的には、先ず、溶解した上記油相に、必要により水相を混合乳化する。そして次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、上記油相(又は乳化物)を冷却する。好ましくは急冷練り合わせし、結晶を均一にする。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。
尚、上記その他の成分を使用する場合は、基本的には油溶性成分は油相に、水溶性成分は水相に添加して本発明の製菓用油脂組成物を製造することができるが、その他の成分がダマになることを避ける等の目的で、水溶性成分を油相に分散させて製造することもでき、油溶性成分を水相に分散して製造することもできる。
また、本発明の製菓用油脂組成物を製造する際のいずれかの工程で、窒素、空気等を含気させることもできるが、本発明の製菓用油脂組成物は、気相を含有することにより粘度が高くなり、特に低温度域での流動性が失われるおそれがあることから、気相は含有させないことが好ましい。
次に、本発明の製菓用油脂組成物の用途について説明する。
本発明の製菓用油脂組成物は、経日的な固液分離が生じにくく、風味安定性及びブルーム耐性に優れたソフトな食感を有する菓子類を得られるものであり、チョコレート用、シュガークリーム、バタークリーム、焼き残りクリーム等のクリーム状食品練り込み用、クッキーやビスケット等の焼き菓子練り込み用等、幅広く製菓用途に使用することができる。
本発明の製菓用油脂組成物は、これらの用途の中でもチョコレート用途、特にテンパリング操作を必要としないノーテンパー型チョコレート用として使用することが、ブルーム抑制効果を有効に活用できる点で特に好ましい。
本発明の製菓用油脂組成物を含有する菓子は、配合、製造方法等に特に制限はなく、従来使用されていた油脂組成物に代えて本発明の製菓用油脂組成物を使用する点以外は、従来の菓子と同様とすることができる。
最後に本発明のブルーム抑制方法について説明する。
本発明のブルーム抑制方法は、下記の条件条件(a)〜(d)を満たす製菓用油脂組成物を菓子中に含有させるものである。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50〜80質量%(油相基準)
(b)UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)
(c)StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が15〜35質量%含有(油相基準)
(d)SSS型トリグリセリドの占める割合が2〜7質量%(油相基準)
本発明のブルーム抑制方法について特に説明しない点については、本発明の製菓用油脂組成物及びそれを含有する菓子についての説明を適宜適用することができる。本発明のブルーム抑制方法によれば、菓子の経日的なブルームを抑制することができ、好ましくはチョコレート、より好ましくはノーテンパー型チョコレートに用いた場合にその効果が顕著に発揮される。
以下に、実施例と比較例とを共に挙げて更に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。尚、下記実施例等において、脂肪酸含量は、特に断りのない限り、構成脂肪酸組成における脂肪酸含量を示す。
尚、下記製造例1〜4のうち、製造例1及び2は油脂Aであり且つ油脂Xであるエステル交換油脂の製造例を示し、製造例3及び4は油脂Aであるが油脂Xではないエステル交換油脂の製造例を示す。
<エステル交換油脂の製造>
〔製造例1〕エステル交換油脂Iの製造
菜種油(キャノーラ油)80質量部に、極度硬化油脂として、パーム油の極度硬化油脂と、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂とを50:50の質量比で混合した混合油脂(炭素数16の飽和脂肪酸含量が24質量%、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が30質量%)20質量部を添加し、溶解した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で15%、10℃で12%、20℃で3%、40℃で0%であるエステル交換油脂Iを得た。
〔製造例2〕エステル交換油脂IIの製造
菜種油(キャノーラ油)80質量部に、パーム油の極度硬化油脂(炭素数16の飽和脂肪酸含量が44質量%、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が0質量%)20質量部を添加し、溶解した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で13%、10℃で10%、20℃で2%、40℃で0%であるエステル交換油脂IIを得た。
〔製造例3〕エステル交換油脂IIIの製造
ヨウ素価65のパーム分別軟部油に、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で32%、10℃で28%、20℃で16%、40℃で2%であるエステル交換油脂IIIを得た。
〔製造例4〕エステル交換油脂IVの製造
ヨウ素価55のパーム分別軟部油に、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で50%、10℃で41%、20℃で20%、40℃で5%であるエステル交換油脂IVを得た。
以下、実施例1〜11として製菓用油脂組成物A〜K、及び比較例1〜3として比較用の油脂組成物L〜Nの製造例を示す。
尚、得られた全ての油脂組成物は、油相のSFCが、10℃、20℃、30℃いずれにおいても20%以下であり、また流動性を有するものであった。また、得られた全ての油脂組成物は、トランス脂肪酸含量が2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔実施例1〕
ハイオレイックヒマワリ油80質量部、エステル交換油III16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Aを得た。表1に油脂組成物中の組成を示す(以下、実施例及び比較例について同じ)。
〔実施例2〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油III16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Bを得た。
〔実施例3〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油Iを1質量部、エステル交換油IIIを15質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Cを得た。
〔実施例4〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油Iを4質量部、エステル交換油IIIを12質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Dを得た。
〔実施例5〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油Iを8質量部、エステル交換油IIIを8質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Eを得た。
〔実施例6〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油Iを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Fを得た。
〔実施例7〕
ハイオレイックヒマワリ油80質量部、エステル交換油IVを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Gを得た。
〔実施例8〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油30質量部、ハイオレイックキャノーラ油20質量部、エステル交換油IIIを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Hを得た。
〔実施例9〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油30質量部、ハイオレイックキャノーラ油20質量部、エステル交換油IIIを11質量部、エステル交換油Iを5質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Iを得た。
〔実施例10〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油30質量部、ハイオレイックキャノーラ油20質量部、エステル交換油IIIを11質量部、エステル交換油IIを5質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Jを得た。
〔実施例11〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油30質量部、ハイオレイックキャノーラ油20質量部、エステル交換油IIIを15質量部、エステル交換油IIを1質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、製菓用油脂組成物Kを得た。
〔比較例1〕
ナタネ油80質量部、エステル交換油IIIを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、比較用の油脂組成物Lを得た。
〔比較例2〕
ナタネ油94質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂6質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、比較用の油脂組成物Mを得た。
〔比較例3〕
エステル交換油Iを100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、比較用の油脂組成物Nを得た。
Figure 2018153098
〔評価例1〕固液分離の評価
得られた製菓用油脂組成物A〜K及び比較用の油脂組成物L〜Nを直径90mmのシャーレに50g投入し、20℃に12時間と30℃に12時間との温度サイクル下で放置テストを行った。1週間放置後に固液分離の状況を観察し、下記評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
(固液分離性の評価基準)
−:液状成分の染みだしは全く見られなかった。
±:若干の液状成分の染みだしが見られた。
+:かなりの液状成分の染みだしが見られ、またザラの発生も若干見られた。
++:液状成分の染みだし及びザラの発生がかなり見られた。
Figure 2018153098
〔評価例2〕チョコレートの製造及び評価
製菓用油脂組成物A〜K及び比較用の油脂組成物L〜Nのうちのいずれか25質量部、カカオマス(油分55質量%)3質量部を60℃に加温して溶解し、ココアパウダー(油分12質量%)12質量部、脱脂粉乳7質量部及び砂糖45質量部を加えて練り合わせてペースト状とし、ロール掛けした後、はじめに使用した油脂組成物(油脂組成物A〜Nのいずれか)と同じ油脂組成物8質量部とレシチン0.4質量部を加えてコンチングして、チョコレート生地を得た。このチョコレート生地を型に注入し、15℃で30分冷却・固化させチョコレートA〜N(英字は使用した油脂組成物に対応)を製造した。
得られたチョコレートA〜Nについて、下記のようにして「食感」「ブルーム」「風味安定性」の評価を行った。
<食感、ブルーム及び風味安定性の評価>
得られたチョコレートA〜Nを、18℃に4時間と27℃に2時間との温度サイクル下で保管し、サイクル試験を行った。
上記温度サイクル下での保管開始から1週間後、3週間後、6週間後、9週間後、12週間後の時点でのチョコレートについて、下記評価基準に従って「ブルーム」の評価を行い、また10人のパネラーにより下記評価基準に従って「食感」及び「風味安定性」の官能評価を行った。それらの結果を表3に示す。尚、表3において、「食感」及び「風味安定性」については、10人のパネラーの評価結果の合計点を評価点数とし、評価点数に基づいて下記のようにして4段階で表した。
40〜50点:◎、30〜39点:〇、16〜29点:△、15点以下:×
(ブルームの評価基準)
−:ブルームが見られずツヤがある
±:ブルームは見られないがツヤがない
+:一部にブルームが見られる
++:激しいブルームが見られる
(食感の評価基準)
5点:非常にソフトであり極めて良好である
3点:ソフトな食感であり良好である
1点:やや食感に硬さが感じられる
0点:食感が硬く、不良である
(風味安定性の評価基準)
5点:製造時と比較して変化がなく非常に良好
3点:製造時と比べわずかに風味が弱くなっているものの良好
1点:製造時と比べ風味が弱い、又は風味の変化がありやや不良である
0点:製造時と比べ風味にはっきりとした変化があり、違和感を感じ不良である
Figure 2018153098
〔評価例3〕シュガークリームの製造
製菓用油脂組成物D25質量部に、脱脂粉乳20質量部及び砂糖55質量部を混合して練り合わせてペースト状とし、ロール掛けした後、レシチン0.4質量部を添加してコンチングして、シュガークリームを得た。得られたシュガークリームは、ソフトな食感を有し、また風味安定性も良好であった。

Claims (6)

  1. 下記の条件(a)〜(d)を満たす製菓用油脂組成物。
    (a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50〜80質量%(油相基準)
    (b)UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75〜95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)
    (c)StU2型トリグリセリドとPU2型トリグリセリドの合計の占める割合が15〜35質量%(油相基準)
    (d)SSS型トリグリセリドの占める割合が2〜7質量%(油相基準)
    (ただし、Sは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基、Uは炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基、Stはステアリン酸残基、Pはパルミチン酸残基を示す。UUUはUが3分子結合しているトリグリセリド、SSSはSが3分子結合しているトリグリセリド、StU2はステアリン酸残基1分子と炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基2分子が結合しているトリグリセリド、PU2はパルミチン酸残基1分子と炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基2分子が結合しているトリグリセリドを示す。)
  2. 下記油脂Aを5〜30質量%含有する、請求項1記載の製菓用油脂組成物。
    油脂A:10℃でのSFC(固体脂含量)が5〜45%であるランダムエステル交換油脂
  3. 油脂Aの一部として下記油脂Xを油脂A基準で10〜60質量%含有する、請求項2記載の製菓用油脂組成物。
    油脂X:10℃でのSFCが10未満である油脂と極度硬化油脂とのランダムエステル交換油脂
  4. チョコレート用である、請求項1〜3いずれか一項に記載の製菓用油脂組成物。
  5. 請求項1〜4いずれか一項に記載の製菓用油脂組成物を含有する菓子。
  6. 請求項1〜4いずれか一項に記載の製菓用油脂組成物を菓子に含有させる、菓子のブルーム抑制方法。
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