以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、紙葉類処理装置の「前」とは、紙葉類の投入及び排出の少なくとも一方の操作を処理部に設けられた開口を介して行う操作者側を意味する。言い換えると、紙葉類処理装置の「前」とは、紙葉類の投入及び排出の少なくとも一方の操作を行うための開口が設けられた側を意味する。また、紙葉類処理装置の「後」とは、その反対側を意味する。また、紙葉類処理装置の「左」とは、前記操作者から見て左側を意味し、紙葉類処理装置の「右」とは、前記操作者からみて右側を意味する。
また、「リジェクト紙幣」とは、所定の処理で処理対象とできない紙幣をいう。「リジェクト紙幣」には、例えば、偽札や、後述する識別部を斜行状態や重送状態で通過したために識別部によって正しく識別されなかった紙幣が含まれる。「正券」とは、汚れや破れ等が比較的少ない状態の紙幣をいい、「損券」とは、汚れや破れ等が比較的多い状態の紙幣をいう。
(1)第1の実施形態
図1に本発明の第1の実施形態に係る紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1の右側面視模式図を示す。また、図2に紙幣処理装置1を構成する収納庫20の平面視模式図を示す。図1及び図2において、左側が紙幣処理装置1の前方、右側が同後方である。なお、図1には、後述する第1収納庫扉221及び第2収納庫扉222が閉じられている状態が示されており、図2には、第1収納庫扉221及び第2収納庫扉222が開かれている状態が示されている。
紙幣処理装置1は、紙葉類としての紙幣を入出金する紙幣入出金機である。紙幣処理装置1は、処理部10及び処理部10の下方に設けられた収納庫20を備える。
処理部10は上部筐体11によって囲われている。上部筐体11の前方、すなわち処理部10の前方には、入金口(開口)121と出金口(開口)131が設けられている。上部筐体11内、すなわち処理部10内には、搬送部15、識別部16、一時保留部17及び制御部18が配置されている。
入金口121の近傍には、所定の周期で紙幣を1枚ずつ搬送部15に繰り出す紙幣繰り出し機構(図示略)が配置されている。入金口121と紙幣繰り出し機構によって入金部12が構成されている。
出金口131の近傍には、紙幣を積み重ねる集積機構(図示略)が配置されている。出金口131と集積機構によって出金部13が構成されている。必要に応じて、出金部13と同様の構成を有する第2出金部14を出金部13の隣に設けてもよい。
なお、処理部10の前方には、必要に応じて入金部12と出金部13のいずれか一方のみが設けられていてもよい。また、紙幣の入金及び出金の両方が行われる開口が設けられるとともに、この開口の周囲に紙幣繰り出し機構及び集積機構が配置されることによって、入出金部が設けられていてもよい。
搬送部15は、紙幣を所定の搬送速度で搬送する。搬送部15は、紙幣を搬送するベルト機構やローラ機構によって構成されている。搬送部15は、紙幣を双方向に搬送可能とするループ状搬送路150と、このループ状搬送路150から分岐する第1分岐路151、第2分岐路152、第3分岐路153及び第4分岐路154を有している。第1分岐路151〜第4分岐路154は、それぞれ、ループ状搬送路150と入金部12、出金部13、一時保留部17、並びに、後述する第1収納部251及び第2収納部252とを接続する。
識別部16は、画像センサ、光学センサ、磁気センサ等のセンサを備えており、搬送部15で搬送される紙幣の真偽、金種、正損等を識別する。
一時保留部17は、紙幣を一時的に収納する。一時保留部17は、紙幣を1枚ずつ取り込んで収納し、収納している紙幣を1枚ずつ繰り出す。一時保留部17は、例えば、複数の紙葉類が回転体に巻き取られた状態で収納される巻き取り式の収納部で構成することができる。また、一時保留部17は、複数の紙葉類が積層状態で収納される積層式の収納部で構成されていてもよい。
制御部18は、少なくともCPUとメモリを備えている。制御部18は、搬送部15を介して、入金部12、出金部13、一時保留部17、第1収納部251、及び、第2収納部252の間で紙幣が搬送されるように、紙幣処理装置1を構成する各部を制御する。
収納庫20は例えば金庫で構成することができる。収納庫20は、前方及び後方に開口を有する下部筐体21を形成する。また、収納庫20は、下部筐体21の前方の開口を開閉する施錠可能な第1収納庫扉221と、下部筐体21の後方の開口を開閉する施錠可能な第2収納庫扉222を有している。第1収納庫扉221を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報と、第2収納庫扉222を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報は異なる。
下部筐体21内には、前方の開口から水平方向に引き出し可能な第1収納ユニット231と、後方の開口から水平方向に引き出し可能な第2収納ユニット232が配置されている。なお、第1収納ユニット231と第2収納ユニット232の間には、図1中に破線で示される隔壁24を設けてもよい。その場合、隔壁24は鉛直方向に延在する。
第1収納ユニット231内には、紙幣が種類別に収納される種類別収納部である第1収納部251が配置されており、第2収納ユニット232内には、回収される紙幣が収納される回収用収納部である第2収納部252が配置されている。ただし、第1収納ユニット231内及び第2収納ユニット232内の両方に種類別収納部が配置されてもよいし、第1収納ユニット231内及び第2収納ユニット232内の両方に回収用収納部が配置されてもよい。なお、複数の回収用収納部が配置される場合は、一方の回収用収納部から紙幣を回収する者と、他方の回収用収納部から紙幣を回収する者を互いに異なる者(例えば、銀行と警備輸送業者)とすることができる。
第1収納部251及び第2収納部252はいずれも第4分岐路154を介して搬送部15に接続されている。
第1収納部251及び第2収納部252は、ぞれぞれ、複数の紙葉類が積層状態で収納される積層式の収納領域、又は、複数の紙葉類が回転体に巻き取られた状態で収納される巻き取り式の収納領域を有する収納部である。なお、回収用収納部として使用される収納部は、駆動部分のない収納袋又は収納箱であってもよい。
本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、第2収納部252は、収納庫20の後方に設けられている第2収納庫扉222を開き、図2に矢印で示されるように第2収納ユニット232を後方に引き出すことで、収納庫20外に引き出される。よって、仮に、紙幣処理装置1の前方側に、入金部12や出金部13を操作する操作者や不特定多数の者がいても、それらの者に妨害される恐れなく、紙幣処理装置1の後方で紙幣の回収作業を行うことができる。
また、従来、紙幣処理装置の稼働(例えば紙幣搬送)中に紙幣処理装置から収納ユニット又は収納部が引き出された場合、紙幣処理装置の稼働を強制的に中断する制御が行われていた。また、収納ユニット又は収納部が引き出された状態にある場合、紙幣処理装置の稼働を禁止する制御が行われていた。このような制御は、例えば銀行のスタッフのような、入金部又は出金部を介した操作を行う操作者の作業を妨げるものであった。また、収納ユニット又は収納部を引き出す作業、例えば警備輸送業者の作業者による回収作業を優先すると、上記操作者に待機時間が発生し、上記操作者による操作を優先すると当該作業者に待機時間が発生するという問題があった。
これに対し、本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、紙幣処理装置1の稼働中に、図2に矢印で示されるように第2収納ユニット232を後方に引き出されたとしても、特定の処理は中断されることなく継続することができる。そのような処理としては、例えば、第2収納部252を使用しない処理である一部入金処理、出金処理、又は精査処理が挙げられる。また、第2収納ユニット232が引き出されている最中に、これらの処理を開始することも可能である。
また、従来、紙幣処理装置が銀行内のセキュリティエリア等に設置された場合、警備輸送業者等の作業者による紙幣回収作業に、銀行のスタッフが立ち会う必要があった。これは当該スタッフにとっては煩わしいものであり、一方、当該スタッフが忙しいときには、警備輸送業者に待機時間が発生するという問題があった。さらには、警備輸送業者は紙幣回収作業にかかった時間に基づきサービス費用を請求する場合があるため、警備輸送業者の作業者を待機させるとサービス費用が余分にかかってしまうという問題があった。
そこで、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、図1及び図2に示されるように、壁Wに設けられた貫通孔Hに途中まで挿入された状態で設置することができる。この場合において、紙幣処理装置1の後方がクローズドエリア(例えば警備輸送業者の専用通路又は専用室)に配置されるようにすれば、銀行のスタッフが立ち会うことなく、第2収納庫扉222を開いて紙幣の回収作業を作業者が行うことができる。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、その後方の第2収納庫扉222に加え、その前方に第1収納庫扉221を有している。よって、紙幣処理装置1をその前方で操作しているときにエラーが発生したとしても、紙幣処理装置1の後方、すなわち壁Wの反対側に移動することなく対処することができる。よって、紙幣処理装置1の前方に設けられた第1収納庫扉221を開いて、図2に矢印で示されるように第1収納ユニット231を手前側に引き出して、迅速にエラー解除作業を行うことができる。
また、第1収納庫扉221を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報は、第2収納庫扉222を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報と異なる。よって、第1収納庫扉221を解錠する権限しか有さない者が、第2収納部252にアクセスしたり、逆に、第2収納庫扉222を解錠する権限しか有さない者が、第1収納部251にアクセスしたりすることを防止できる。第1収納庫扉221を解錠する権限しか有さない者とは、例えば銀行等の紙幣処理装置1を設置した施設のスタッフであり、第2収納庫扉222を解錠する権限しか有さない者とは、警備輸送業者の作業者である。
本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、第1収納部251及び第2収納部252が配置される領域である下部筐体21の内部を、隔壁24によって2つに分けることが可能である。この場合、前方の開口を通じて第2収納ユニット232側にアクセスすることはできず、後方の開口を通じて第1収納ユニット231側にアクセスすることはできない。したがって、第1収納庫扉221を解錠する権限しか有さない者が、第2収納部252にアクセスしたり、逆に、第2収納庫扉222を解錠する権限しか有さない者が、第1収納部251にアクセスしたりすることをより確実に防止することができる。
なお、本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、処理部10が第1収納部251と第2収納部252に跨がるようにそれらの上方に配置されている。よって、隔壁24を設け、第1収納部251と第2収納部252とを互いに隔離された状態にしても、第1収納部251と第2収納部252との間で、搬送部15を介して紙幣を搬送することが可能である。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、その構造上、収納庫20から1方向に全ての収納部(第1収納部251及び第2収納部252)を引き出すことはできない。よって、収納庫20から1方向に全ての収納部が引き出されることによって、紙幣処理装置1の重量バランスが崩れ、紙幣処理装置1がずれたり転倒したりすることを未然に防止することができる。また、各収納部を引き出すために確保すべきスペースはそれぞれ小さくて済むので、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、収納庫20から1方向に全ての収納部を引き出す場合には設置できないような場所にも設置することができる。更に、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、各収納部を引き出すための最大引き出し距離が短くて済むので、最も奥に配置されている収納部にも容易にアクセスすることができる。
また、図2に示されるように、収納庫20は、第1収納ユニット231が引き出されているか否かを検知することができる第1収納ユニットセンサ261を有していてもよい。また、収納庫20は、第2収納ユニット232が引き出されているか否かを検知することができる第2収納ユニットセンサ262を有していてもよい。これらのセンサは、例えば、各収納ユニットが下部筐体21内に配置されている際に各収納ユニットに接触し、信号を出力する接触式センサとすることができる。これらのセンサから出力された信号は制御部18に入力される。
また、収納庫20は、第2収納ユニット232が引き出されていることが第2収納ユニットセンサ262によって検知されたときに、第1収納ユニット231が引き出されることを防止する第1収納ユニットロック機構271を有していてもよい。更に、収納庫20は、第1収納ユニット231が引き出されていることが第1収納ユニットセンサ261によって検知されたときに、第2収納ユニット232が引き出されることを防止する第2収納ユニットロック機構272を有していてもよい。これらのロック機構は、例えば、下部筐体21から各収納ユニットに向けて出没する閂を有する機構である。これらのロック機構は制御部18によって制御される。
これらのセンサ及びロック機構が備わっている場合、第2収納ユニット232が引き出されていないことが第1収納ユニット231の引き出しを許可する条件の1つとすることができる。また、第1収納ユニット231が引き出されていないことが第2収納ユニット232の引き出しを許可する条件の1つとすることができる。この場合、第1収納ユニット231(つまり、第1収納部251)と第2収納ユニット232(つまり、第2収納部252)が同時期に引き出されることが防止される。よって、複数の収納ユニット(つまり、収納部)が引き出されることによって、紙幣処理装置1の重量バランスが崩れ、紙幣処理装置1がずれたり転倒したりすることを未然に防止することができる。
また、図2に示されるように、収納庫20は、第1収納庫扉221が開放されているか否かを検知することができる第1収納庫扉センサ281を有していてもよい。また、収納庫20は、第2収納庫扉222が開放されているか否かを検知することができる第2収納庫扉センサ282を有していてもよい。これらのセンサは、例えば、各収納庫扉が閉じている際に各収納庫扉に接触し、信号を出力する接触式センサとすることができる。これらのセンサから出力された信号は制御部18に入力される。
また、収納庫20は、第2収納庫扉222が開放されていることが第2収納庫扉センサ282によって検知されたときに、第1収納庫扉221が開放されることを防止する第1収納庫扉ロック機構291を有していてもよい。更に、収納庫20は、第1収納庫扉221が開放されていることが第1収納庫扉センサ281によって検知されたときに、第2収納庫扉222が開放されることを防止する第2収納庫扉ロック機構292を有していてもよい。これらのロック機構は、例えば、下部筐体21から各収納庫扉に向けて出没する閂を有する機構である。これらのロック機構は制御部18によって制御される。
これらのセンサ及びロック機構が備わっている場合、第1収納庫扉221が開放されていないことが第2収納庫扉222の開放を許可する条件の1つとすることができる。また、第2収納庫扉222が開放されていないことが第1収納庫扉221の開放を許可する条件の1つとすることができる。この場合、第1収納庫扉221と第2収納庫扉222が同時期に開放されることが防止される。よって、例えばエラー解除等、一方の収納庫扉を開放して行う作業が行われている最中に、他方の収納庫扉が開放されて他の作業が行われ、2つの作業が互いに影響を及ぼしあうことを未然に防止することができる。
なお、扉を1つずつ有する2つの金庫を、互いに背面合わせとなるように隣接配置することで収納庫20を構成することも可能である。この場合、隔壁は各金庫の背面側側壁によって構成される二重隔壁となる。
(2)第2の実施形態
図3に本発明の第2の実施形態に係る紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1の右側面視模式図を示す。図3において、左側が紙幣処理装置1の前方、右側が同後方である。以下、先の実施形態に係る紙幣処理装置1と異なる点を中心に説明する。
本実施形態に係る紙幣処理装置1は、先の実施形態に係る紙幣処理装置1と比較すると、収納庫20の構成が異なる。すなわち、本実施形態に係る紙幣処理装置1が備える収納庫20においては、種類別収納部である第1収納部251が下部筐体21の上側に配置されており、回収用収納部である第2収納部252が下部筐体21の下側に配置されている。ただし、下部筐体21の上側及び下側の両方に種類別収納部が配置されてもよいし、下部筐体21の上部及び下部の両方に回収用収納部が配置されてもよい。なお、複数の回収用収納部が配置される場合は、一方の回収用収納部から紙幣を回収する者と、他方の回収用収納部から紙幣を回収する者を互いに異なる者(例えば、銀行と警備輸送業者)とすることができる。
具体的には、収納庫20は、前方上部及び後方下部に開口を有する下部筐体21を形成する。また、収納庫20は、下部筐体21の前方上部の開口を開閉する施錠可能な第1収納庫扉221と、下部筐体21の後方下部の開口を開閉する施錠可能な第2収納庫扉222を有している。第1収納庫扉221を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報と、第2収納庫扉222を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報は異なる。なお、収納庫20の構成はこのようなものには限られない。例えば、下部筐体21は前方下部及び後方上部に開口を有しており、これらの開口それぞれを、第1収納庫扉221及び第2収納庫扉222が開閉してもよい。
下部筐体21内には、前方上部の開口から前方に向けて水平に引き出し可能な第1収納ユニット231と、後方下部の開口から後方に向けて水平に引き出し可能な第2収納ユニット232が配置されている。なお、第1収納ユニット231と第2収納ユニット232の間には、図3中に破線で示される隔壁24を設けてもよい。その場合、隔壁24は水平方向に延在する。
第1収納ユニット231内には第1収納部251が配置されている。第1収納部251は第4分岐路154を介して搬送部15に接続されている。また、第2収納ユニット232内には第2収納部252が配置されている。第1収納部252は第4分岐路154を介して搬送部15に接続されている。また、収納庫20は鉛直搬送路30を有している。鉛直搬送路30は、第1収納ユニット231を鉛直方向に貫通するとともに第4分岐路154を介して第2収納部252と搬送部15とを接続する。鉛直搬送路30は第1収納ユニット231とともに水平方向に移動可能である。
第1収納部251は、複数の紙葉類が上下方向、又は、紙幣処理装置1の前後方向に積層された状態で収納される積層式の収納領域、若しくは、複数の紙葉類が回転体に巻き取られた状態で収納される巻き取り式の収納領域を有する収納部である。また、第2収納部252は、紙幣処理装置1の前後方向に細長く延在する形状を有する収納部である。第2収納部252内においては、複数の紙葉類が紙幣処理装置1の前後方向、又は、上下方向に並ぶように積層されて収納される。
本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、第2収納部252は、収納庫20の後方に設けられている第2収納庫扉222を開き、第2収納ユニット232を後方に引き出すことで、収納庫20外に引き出される。よって、本実施形態に係る紙幣処理装置1も、先の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様の利点を得ることができる。例えば、仮に、紙幣処理装置1の前方側に、入金部12や出金部13を操作する操作者や、不特定多数の者がいても、それらの者に妨害される恐れなく、紙幣処理装置1の後方で紙幣の回収作業を行うことができる。また、例えば、一部入金処理、出金処理、又は精査処理といった、第2収納部252を使用しない処理が行われている最中に第2収納部252が引き出されてもそれらの処理を継続することができる。また、第2収納部252が引き出されている状態でも、そのような処理を開始することができる。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においても、先の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様に、第1収納ユニットセンサ261、第2収納ユニットセンサ262、及び第2収納ユニットロック機構272を収納庫20に設けてもよい。また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においても、先の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様に、第1収納庫扉センサ281、第2収納庫扉センサ282、第2収納庫扉ロック機構292、及び、第1収納庫扉ロック機構291を収納庫20に設けてもよい。
なお、扉を1つずつ有する2つの金庫を、扉が互いに逆方向を向くように上下に積み重ねて収納庫20を構成することも可能である。この場合、隔壁は上側金庫の底部壁と下側金庫の天井壁によって構成される二重隔壁となる。
(3)第3の実施形態
図4に本発明の第3の実施形態に係る紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1を構成する収納庫20の平面視模式図を示す。図4において、左側が紙幣処理装置1の前方、右側が同後方である。以下、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と異なる点を中心に説明する。
本実施形態に係る紙幣処理装置1は、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と比較すると、収納庫20の構成が異なる。すなわち、本実施形態に係る紙幣処理装置1が備える収納庫20は、左右両側面から収納部が引き出されるように構成されている。
具体的には、収納庫20は、右側面前方及び左側面後方に開口を有する下部筐体21を形成する。また、収納庫20は右側面前方の開口を開閉する施錠可能な第1収納庫扉221と、左側面後方の開口を開閉する施錠可能な第2収納庫扉222を有している。第1収納庫扉221を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報と、第2収納庫扉222を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報は異なる。
更に、第1収納庫扉221には、下部筐体21内に配置された第1収納ユニット231が結合されている。第1収納庫扉221及び第1収納ユニット231は、下部筐体21の右側面前方の開口から右側に向かって水平に一体的に引き出し可能に構成されている。
また、第2収納庫扉222には、下部筐体21内に配置された第2収納ユニット232が結合されている。第2収納庫扉222及び第2収納ユニット232は、下部筐体21の左側面後方の開口から左側に向かって水平に一体的に引き出し可能に構成されている。
下部筐体21内の第1収納ユニット231と第2収納ユニット232の間の位置には、図4中に破線で示される隔壁24を設けてもよい。その場合、隔壁24は鉛直方向に延在する。
第1収納ユニット231内には、紙幣を種類別に収納する種類別収納部である第1収納部251が配置されており、第2収納ユニット232内には、回収される紙幣が収納される回収用収納部である第2収納部252が配置されている。ただし、第1収納ユニット231内及び第2収納ユニット232内の両方に種類別収納部が配置されてもよいし、第1収納ユニット231内及び第2収納ユニット232内の両方に回収用収納部が配置されてもよい。なお、複数の回収用収納部が配置される場合は、一方の回収用収納部から紙幣を回収する者と、他方の回収用収納部から紙幣を回収する者を互いに異なる者(例えば、銀行と警備輸送業者)とすることができる。
第1収納部251及び第2収納部252はいずれも第4分岐路154(図1参照)を介して搬送部15に接続されている。
また、下部筐体21の右側面後方には、下部筐体21の内部を目視することが可能な窓40が設けられている。
本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、図4中に矢印で示されるように、収納庫20の左側面後方に設けられている第2収納庫扉222を第2収納ユニット232とともに左側に向けて引き出すことによって、第2収納部252は収納庫20外に引き出される。よって、本実施形態に係る紙幣処理装置1も、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様の利点を得ることができる。例えば、仮に、紙幣処理装置1の前方側に、入金部12や出金部13を操作する操作者や、不特定多数の者がいても、それらの者に妨害される恐れなく、紙幣処理装置1の後方で紙幣の回収作業を行うことができる。また、例えば、一部入金処理、出金処理、又は精査処理といった、第2収納部252を使用しない処理が行われている最中に第2収納部252が引き出されてもそれらの処理を継続することができる。また、第2収納部252が引き出されている状態でも、そのような処理を開始することができる。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、図4中に矢印で示されるように、収納庫20の右側面前方に設けられている第1収納庫扉221を第1収納ユニット231とともに右側に向けて引き出すことによって、第1収納部251は収納庫20外に引き出される。よって、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、紙幣処理装置1の前方や後方に第1収納ユニット231又は第2収納ユニット232を引き出すのに十分なスペースが確保できない場所にも設置することができる。
例えば、図4に示されるように、2つの壁Wがなす隅部に貫通孔Hを設けておけば、この貫通孔Hに第2収納庫扉222の位置を合わせることで、この隅部を構成する2つの壁Wに沿わせて、紙幣処理装置1を配置することが可能である。
この場合、第2収納部252が引き出される側の空間と、紙幣処理装置1が設置されている側の空間とが、壁Wによって隔離される。よって、紙幣処理装置1の前方側に、入金部12や出金部13を操作する操作者や、不特定多数の者がいても、それらの者に妨害される恐れなく、第2収納部252の引き出し作業を隔離された空間で行うことができる。
更に、本実施形態に係る紙幣処理装置1は窓40を有しているので、紙幣処理装置1の右側にいる者が、第2収納庫扉222を空けることなく、窓40を通じて、第2収納部252の状態を迅速に目視確認することができる。例えば、第2収納部252が収納袋である場合、第2収納部252に収納されている紙幣のおおよその量を確認することができる。また、第2収納部252が適切に取り付けられているか否かを確認することができる。なお、窓40の取り付け位置は紙幣処理装置1の右側に限られないことは勿論であり、紙幣処理装置1の設置位置に応じて、後方や上方とすることも可能である。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においても、図2に示される第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様に、収納庫20は、第1収納ユニットセンサ261、第2収納ユニットセンサ262、及び第2収納ユニットロック機構272を有していてもよいことは勿論である。また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においても、図2に示される第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様に、収納庫20は、第1収納庫扉センサ281、第2収納庫扉センサ282、第2収納庫扉ロック機構292、及び、第1収納庫扉ロック機構291を有していてもよいことは勿論である。
なお、扉を1つずつ有する2つの金庫を、互いの右側面同士又は左側面同士が接触するように隣接配置して収納庫20を構成することも可能である。この場合、隔壁は各金庫の側壁によって構成される二重隔壁となる。
(4)第4の実施形態
図5に本発明の第4の実施形態に係る紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1を構成する収納庫20の平面視模式図を示す。図5において、左側が紙幣処理装置1の前方、右側が同後方である。以下、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と異なる点を中心に説明する。
本実施形態に係る紙幣処理装置1が備える収納庫20は、前方向、右方向及び左方向の3方向に収納部を引き出すことができるように構成されている。
具体的には、収納庫20は、前方、右側面中央及び左側面後方に開口を有する下部筐体21を形成する。また、収納庫20は前方の開口を開閉する施錠可能な第1収納庫扉221と、右側面中央の開口を開閉する施錠可能な第2収納庫扉222と、左側面後方の開口を開閉する施錠可能な第3収納庫扉223を有している。
下部筐体21内には、前方の開口から前方に向かって水平に引き出し可能な第1収納ユニット231と、右側面中央の開口から右側に向かって水平に引き出し可能な第2収納ユニット232と、左側面後方の開口から左側に向かって水平に引き出し可能な第3収納ユニット233が配置されている。第1収納ユニット231と第2収納ユニット232の間、及び、第2収納ユニット232と第3収納ユニット233との間には、それぞれ、図5中に破線で示される隔壁24を設けてもよい。その場合、各隔壁24は鉛直方向に延在する。
第1収納ユニット231内には、紙幣を種類別に収納する種類別収納部である第1収納部251が配置されている。また、第2収納ユニット232内には、紙幣を種類別に収納する種類別収納部である第2収納部252が配置されている。また、第3収納ユニット233内には、回収される紙幣が収納される回収用収納部である第3収納部253が配置されている。ただし、各収納ユニット内に配置される収納部はこれらには限られず、必要に応じて適宜変更することが可能である。例えば、第1収納ユニット231内、第2収納ユニット232内及び第3収納ユニット233内の全てに種類別収納部が配置されてもよい。また、第1収納ユニット231内、第2収納ユニット232内及び第3収納ユニット233内の全てに回収用収納部が配置されてもよい。なお、複数の回収用収納部が配置される場合は、一方の回収用収納部から紙幣を回収する者と、他方の回収用収納部から紙幣を回収する者を互いに異なる者(例えば、銀行と警備輸送業者)とすることができる。
第1収納部251、第2収納部252及び第3収納部253はいずれも第4分岐路154(図1参照)を介して搬送部15に接続されている。
本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、第3収納部253は、収納庫20の左側面後方に設けられている第3収納庫扉223を開き、第3収納ユニット233を左側に向けて引き出すことで、収納庫20外に引き出される。よって、本実施形態に係る紙幣処理装置1によれば、仮に、紙幣処理装置1の前方側に、入金部12や出金部13を操作する操作者や、不特定多数の者がいても、それらの者に妨害される恐れなく、紙幣処理装置1の左側後方で紙幣の回収作業を行うことができる。また、例えば、一部入金処理、出金処理、又は精査処理といった、第2収納部252又は第3収納部253を使用しない処理が行われている最中に第2収納部252又は第3収納部253が引き出されてもそれらの処理を継続することができる。また、第2収納部252又は第3収納部253が引き出されている状態でも、そのような処理を開始することができる。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、第1収納部251を収納庫20から引き出す場合も、第2収納部252を収納庫20から引き出す場合も、引き出し距離は短い。よって、収納部引き出し用に広いスペースを確保できない場所にも設置することができる。
また、第1収納庫扉221を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報と、第2収納庫扉222を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報と、第3収納庫扉223を解錠するための鍵又は解錠するために入力される情報を異なるものとすることが可能である。そのようにすることで、特定の収納部には特定の者しかアクセスできないようにすることができる。よって、より柔軟に紙幣処理装置1を運用することが可能となる。なお、3つの収納部に割り当てる機能が上で説明したものに限られないことは言うまでもない。例えば、第1収納部251及び第3収納部253を種類別収納部とし、第2収納部252を回収用収納部とすることも可能である。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においても、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様に、収納庫20は、第1収納ユニットセンサ261、第2収納ユニットセンサ262を有していてもよい。更に、収納庫20は、第3収納ユニット233が引き出されているか否かを検知することができる第3収納ユニットセンサ263を有していてもよい。これらのセンサは、例えば、各収納ユニットが下部筐体21内に配置されている際に各収納ユニットに接触し、信号を出力する接触式センサとすることができる。これらのセンサから出力された信号は制御部18に入力される。
また、収納庫20は、第2収納ユニット232又は第3収納ユニット233が引き出されていることが第2収納ユニットセンサ262又は第3収納ユニットセンサ263によって検知されたときに、第1収納ユニット231が引き出されることを防止する第1収納ユニットロック機構271を有していてもよい。また、収納庫20は、第1収納ユニット231又は第3収納ユニット233が引き出されていることが第1収納ユニットセンサ261又は第3収納ユニットセンサ263によって検知されたときに、第2収納ユニット232が引き出されることを防止する第2収納ユニットロック機構272を有していてもよい。また、収納庫20は、第1収納ユニット231又は第2収納ユニット232が引き出されていることが第1収納ユニットセンサ261又は第2収納ユニットセンサ262によって検知されたときに、第3収納ユニット233が引き出されることを防止する第3収納ユニットロック機構273を有していてもよい。これらのロック機構は、例えば、下部筐体21から各収納ユニットに向けて出没する閂を有する機構である。これらのロック機構は制御部18によって制御される。
これらのセンサ及びロック機構が備わっている場合、第2収納ユニット232と第3収納ユニット233の少なくとも一方が引き出されていないことを、第1収納ユニット231の引き出しを許可する条件の1つとすることができる。第2収納ユニット232及び第3収納ユニット233の引き出し許可条件についても同様である。すなわち、ある収納ユニットが引き出されているときに他の収納ユニットが引き出されることを防止することができる。よって、複数の収納ユニット(つまり、収納部)が同時期に引き出されることによって、紙幣処理装置1の重量バランスが崩れ、紙幣処理装置1がずれたり転倒したりすることを未然に防止することができる。
なお、同時期に引き出すことができる収納ユニットの数を、必要に応じて1つ、2つ又は3つとすることができることは言うまでもない。
また、本実施形態に係る紙幣処理装置1においても、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と同様に、収納庫20は、第1収納庫扉センサ281、及び、第2収納庫扉センサ282
を有していてもよい。更に、収納庫20は、第3収納庫扉223が開放されているか否かを検知することができる第3収納庫扉センサ283を有していてもよい。これらのセンサは、例えば、各収納庫扉が閉じている際に各収納庫扉に接触し、信号を出力する接触式センサとすることができる。これらのセンサから出力された信号は制御部18に入力される。
また、収納庫20は、第2収納庫扉222又は第3収納庫扉223が開放されていることが第2収納庫扉センサ282又は第3収納庫扉センサ283によって検知されたときに、第1収納庫扉221が開放されることを防止する第1収納庫扉ロック機構291を有していてもよい。また、収納庫20は、第1収納庫扉221又は第3収納庫扉223が開放されていることが第1収納庫扉センサ281又は第3収納庫扉センサ283によって検知されたときに、第2収納庫扉222が開放されることを防止する第2収納庫扉ロック機構292を有していてもよい。更に、収納庫20は、第1収納庫扉221又は第2収納庫扉222が開放されていることが第1収納庫扉センサ281又は第2収納庫扉センサ282によって検知されたときに、第3収納庫扉223が開放されることを防止する第3収納庫扉ロック機構293を有していてもよい。これらのロック機構は、例えば、下部筐体21から各収納庫扉に向けて出没する閂を有する機構である。これらのロック機構は制御部18によって制御される。
これらのセンサ及びロック機構が備わっている場合、第2収納庫扉222と第3収納庫扉223の少なくとも一方が開放されていないことを、第1収納庫扉221の開放を許可する条件の1つとすることができる。第2収納庫扉222及び第3収納庫扉223の開放許可条件についても同様である。すなわち、ある収納庫扉が開放されているときに他の収納庫扉が開放されることを防止することができる。よって、エラー解除等、ある収納庫扉を開放して行う作業が行われている最中に、他の収納庫扉が開放されて他の作業が行われ、2つ以上の作業が互いに影響を及ぼしあうことを未然に防止することができる。
なお、同時期に開放することができる収納庫扉の数を、必要に応じて1つ、2つ又は3つとすることができることは言うまでもない。
また、扉を1つずつ有する3つの金庫を、互いに隣接配置することで収納庫20を構成することも可能である。この場合、2つの隔壁はいずれも、各金庫の側壁によって構成される二重隔壁となる。
(5)第5の実施形態
図6に本発明の第5の実施形態に係る紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1を構成する収納庫20の平面視模式図を示す。図6において、左側が紙幣処理装置1の前方、右側が同後方である。以下、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と異なる点を中心に説明する。
本実施形態に係る紙幣処理装置1は、第1の実施形態に係る紙幣処理装置1と比較すると、収納庫20の構成が異なる。すなわち、本実施形態に係る紙幣処理装置1が備える収納庫20は、単一の収納ユニットとして第1収納ユニット231を有し、第1収納ユニット231内に第1収納部251及び第2収納部252が配置されている。よって、前方及び後方のいずれの方向にも全ての収納部を引き出すことができる。
したがって、本実施形態に係る紙幣処理装置1においては、回収される紙幣が収納される第2収納部252は、収納庫20の後方に設けられている第2収納庫扉222を開き、第1収納ユニット231を後方に引き出すことで、収納庫20外に引き出される。よって、仮に、紙幣処理装置1の前方側に、入金部12や出金部13を操作する操作者や、不特定多数の者がいても、それらの者に妨害される恐れなく、紙幣処理装置1の後方で紙幣の回収作業を行うことができる。逆に、そのような懸念がない場合には、第1収納ユニット231を前方に引き出して、紙幣処理装置1の前方で紙幣の回収作業や、メンテナンス作業を行うことも可能である。
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、収納庫からの収納ユニット(収納部)の引き出し方向は、紙幣処理装置の前方、後方、右方向又は左方向には限られない。すなわち、紙幣処理装置の上方に引き出すことも可能であるし、貫通孔を有する床面上に紙幣処理装置を設置することによって、下方に引き出すことも可能である。
また、紙葉類処理装置は紙幣処理装置に限定されず、小切手や伝票などの紙や樹脂から作られたシート類を含む紙葉類を処理する装置であってもよい。