JP2018150988A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細な硬質異物に対する耐性に優れた転がり軸受を提供する。【解決手段】内輪11、外輪12、複数のボール13および保持器保持器14を備え、内輪11および外輪12に対する保持器14の相対回転が外輪12の内径面12aによって案内され、軸受外部から連続的に供給される潤滑油により軸受内部が冷却される転がり軸受10において、少なくとも内側軌道面11bおよび外側軌道面12bの表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層A1,A2が設けられ、外輪12に、一端が外側軌道面12bに開口すると共に他端が外輪12の外径面に開口した排油孔21が設けられている。【選択図】図2
Description
本発明は、転がり軸受に関し、特に、高温雰囲気下で高速回転する軸を支持するために用いられ、軸受外部から連続的に供給される潤滑油により軸受内部が潤滑・冷却される転がり軸受に関する。
周知のように、転がり軸受は、内側軌道面を有する内輪と、外側軌道面を有する外輪と、内側軌道面と外側軌道面の間に転動自在に配された複数の転動体と、内外輪間に配置され、複数の転動体を周方向所定間隔で保持する保持器とを備える。
例えば、ガスタービン装置の回転軸(主軸、あるいは主軸の回転を受けて回転する従動回転軸)のように、200℃超の高温雰囲気下で高速回転する軸を支持するために用いられる転がり軸受(例えば、特許文献1)においては、所定の軸受性能を安定的に発揮可能とするために、軸受内部(部材同士の摺動部)の潤滑・冷却効率を極力高める必要がある。このため、この種の転がり軸受の潤滑方式としては、ジェット潤滑やアンダーレース潤滑などといった、潤滑油を連続的に供給する潤滑方式が採用される場合が多い。なお、ジェット潤滑とは、軸受外部に配置した給油ノズルから内外輪間の開口部を介して潤滑油を高圧で連続的に供給(噴射)する潤滑方式であり、アンダーレース潤滑とは、回転側となる内輪の内側軌道面に開口した給油孔を介して潤滑油を連続的に供給する潤滑方式である。
また、この種の転がり軸受においては、保持器を精度良く案内移動(内輪および外輪に対して相対回転)させるため、保持器の案内形式にいわゆる外輪案内を採用する場合が多い。
ジェット潤滑あるいはアンダーレース潤滑等、潤滑油を連続的に供給する潤滑方式が採用される転がり軸受においては、軸受外部への潤滑油の排出性を担保するため、グリース潤滑タイプの転がり軸受に通常設けられるようなシール部材が内外輪間の開口部に配置されない。このため、この種の転がり軸受の運転中には、その内部空間に微細な硬質異物(例えば、数μm〜数十μm程度の金属粉やカーボン粉)が侵入し易い。特許文献1の転がり軸受では、内輪および外輪を所定の鋼材で形成し、内輪および外輪の表層部に硬質層としての窒素富化層を形成することにより、両軌道面の硬質異物に対する耐性を高めるようにしている。
しかしながら、上記のように、軌道面を含む内輪および外輪の表層部に硬質層を形成していても、内部空間に硬質異物が滞留した状態で転がり軸受の運転が継続されると、軌道面の変形・損傷等に起因した軸受性能の低下問題が生じ易くなる。特に、特許文献1の転がり軸受のように、保持器の案内形式として外輪案内を採用した場合にボールと外側軌道面との間に硬質異物が侵入すると、軸受運転時にボールや保持器に作用する遠心力の影響等によって上記硬質異物を円滑に排出することができないため、軸受性能が顕著に低下するおそれがある。
以上の実情に鑑み、本発明の課題は、軸受の内部空間に微細な硬質異物が侵入することに由来する軸受性能の低下を可及的に防止することができ、所望の軸受性能を長期間に亘って安定的に発揮可能な転がり軸受を提供することにある。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、熱処理された鋼材で形成された内輪および外輪と、内輪の内側軌道面と外輪の外側軌道面の間に転動自在に配された複数のボールと、内輪と外輪の間に配置され、複数のボールを周方向所定間隔で保持する保持器とを備え、内輪および外輪に対する保持器の相対回転が外輪の内径面によって案内され、軸受外部から連続的に供給される潤滑油により軸受内部が冷却される転がり軸受において、少なくとも内側軌道面および外側軌道面の表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層が設けられ、外輪に、一端が外側軌道面に開口すると共に他端が外輪の外径面に開口した排油孔が設けられていることを特徴とする。
上記のように、少なくとも内側軌道面および外側軌道面の表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層を設けておけば、両軌道面の表面形状を変化させることなく、両軌道面の硬質異物に対する耐性を高めることができる。また、外輪に、一端が外側軌道面に開口すると共に他端が外輪の外径面に開口した排油孔を設けておけば、軸受の内部空間に微細な硬質異物が侵入した場合でも、この硬質異物を、軸受内部に供給される潤滑油と共に軸受外部に円滑に排出することができる。以上のように、本発明に係る転がり軸受は、軸受内部に侵入した硬質異物による軌道面の損傷防止対策、および硬質異物の滞留防止対策が採られていることから、硬質異物に由来する軸受性能の低下を可及的に防止することができ、所望の軸受性能を長期間に亘って安定的に発揮することができる。
排油孔の一端が外側軌道面上を転動するボールによって塞がれてしまうと、排油性(内部空間に侵入した硬質異物の排出性)が低下する。このため、排油孔の一端は、外側軌道面のうち、軸受運転時に外側軌道面とボールとの接触による接触楕円が及ぶ範囲の外側に開口させるのが好ましい。
排油孔を、その一端側から他端側に向けて孔径が徐々に拡大したテーパ形状に形成しておけば、例えば排油孔を径一定のストレート形状に形成する場合に比べ、排油性を高めることができる。
ボールとしては、内輪および外輪と同様に、熱処理された鋼材で形成され、かつその表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層が設けられたもの(鋼球)、あるいはセラミックスで形成されたもの(セラミックスボール)、を採用することができる。特に、セラミックスボールは、同じ大きさの鋼球に比べて軽量であることから、遠心力の影響によってボールと外側軌道面の接触角が小さくなることを可及的に防止することができることに加え、ボールと外側軌道面の接触による接触楕円を小さくすることができる、という利点がある。
内側軌道面および外側軌道面に設けるべき硬質層は、例えば窒化処理又は浸炭処理により形成することができる。
本発明は、例えば、内輪が、軸方向で分割され、それぞれが内側軌道面の一部および残部を有する第1および第2の分割内輪を備え、ボールが、第1の分割内輪に設けられた内側軌道面の一部および第2の分割内輪に設けられた内側軌道面の残部のそれぞれと一点で接触すると共に、外側軌道面と一点で接触する、いわゆる3点接触玉軸受に好ましく適用することができる。
本発明に係る転がり軸受は、前述したような特徴を有することから、内輪がガスタービン装置の回転軸(ガスタービンの主軸、又はこの主軸の回転を受けて回転する従動回転軸)に装着される転がり軸受、に好ましく適用することができる。この場合、一端が内側軌道面に開口した給油孔を設け、この給油孔を介して軸受内部に潤滑油を供給する、いわゆるアンダーレース潤滑を採用すれば、軸受内部に供給される潤滑油を遠心力によって径方向外側に円滑に移動させることができるため、潤滑油の供給〜排出といった一連の潤滑サイクルを効率良く行うことができる。
以上より、本発明によれば、軸受の内部空間に微細な硬質異物が侵入することに由来する軸受性能の低下を可及的に防止することができ、所望の軸受性能を長期間に亘って安定的に発揮可能な転がり軸受を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係る転がり軸受を備えたガスタービン装置の一構成例を概念的に示す。同図に示すガスタービン装置は、主に航空機用のエンジンとして使用されるターボファンエンジンであって、空気を吸入するファン2と、吸入した空気の一部を圧縮する圧縮機3と、圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させることにより燃焼ガスを発生させる燃焼室4と、燃焼室4で生じた燃焼ガスによって高速回転するタービン5とを備えており、圧縮機3のロータおよびタービン5を装着した回転軸としての主軸6が軸方向に離間した複数箇所(図示例では2箇所)に配置された転がり軸受10によって回転自在に支持されている。
上記のターボファンエンジン1において、主軸6は、1〜5×104rpm程度の高速で回転する。そのため、主軸6に内輪が装着される転がり軸受10のDN値(支持すべき軸の軸径[mm]に回転数[rpm]を乗じて算出される値)は概ね30万以上である。また、ターボファンエンジン1の内部温度は、燃焼室4で発生する燃焼ガス等の影響により200℃を超える。さらに、ターボファンエンジン1の内部空間では、金属粉やカーボン粉等、最大径が数μm〜数十μm程度の微細な硬質異物が無数に浮遊・飛翔している可能性がある。従って、転がり軸受10は、200℃超の高温で、かつ微細な硬質異物が無数に浮遊・飛翔する過酷環境下においても、高速回転する主軸6を長期間に亘って精度良く支持し得るような構成を有する。以下、転がり軸受10について詳細に説明する。
図2に、本発明の一実施形態に係る転がり軸受10の縦断面図を示す。この転がり軸受10は、外径面11aに内側軌道面11bが設けられた内輪11と、内径面12aに外側軌道面12bが設けられた外輪12と、両軌道面11b,12b間に転動自在に配された複数のボール13と、内輪11と外輪12の間に配された円環状の保持器14とを備える玉軸受であり、より詳細には、内輪11が図1に示す主軸6の外周に装着された状態で使用される内輪回転型の3点接触玉軸受である。すなわち、内輪11は、軸方向で分割された一対の分割内輪(第1の分割内輪11Aおよび第2の分割内輪11B)を有し、ボール13は、第1の分割内輪11Aに設けられ、内側軌道面11bの一部(軸方向の一部領域)を構成する第1内側軌道面11b1、第2の分割内輪11Bに設けられ、内側軌道面11bの残部を構成する第2内側軌道面11b2、および外輪12の外側軌道面12bに対してそれぞれ一点で接触している。
本実施形態の内輪11は、内側軌道面11bの溝底(内輪11の軸方向中央部)付近で2分割されており、第1の分割内輪11Aと第2の分割内輪11Bの対向二面間には所定寸法の軸方向隙間を設けることができる(図2においては、軸方向隙間を示していない)。このような軸方向隙間を設けておけば、転がり軸受10を軸方向一方側に付勢するアキシャル荷重が作用すると、ボール13は、第1内側軌道面11b1(又は第2内側軌道面11b2)および外側軌道面12bのそれぞれと一点で接触した状態で回転し、これとは逆に、転がり軸受10を軸方向他方側に付勢するアキシャル荷重が作用すると、ボール13は、第2内側軌道面11b2(又は第1内側軌道面11b1)および外側軌道面12bのそれぞれと一点で接触した状態で回転する。従って、3点接触玉軸受からなる本実施形態の転がり軸受10は、ラジアル方向およびアキシャル双方向の荷重を受けることができる、という特徴を有する。
前述のとおり、転がり軸受10は、200℃超の高温雰囲気下で高速回転する主軸6を支持するものであり、軸受の内部空間(内輪11と外輪12の間の環状空間S)にグリースを充填するいわゆるグリース潤滑では、軸受内部(転がり軸受10を構成する部材同士の接触部)を十分に潤滑・冷却することができない。このため、転がり軸受10においては、軸受外部から潤滑油を連続的に供給することにより、軸受内部を冷却する潤滑方式が採用される。本実施形態では、一端(径方向外側の端部)が内輪11の内側軌道面11bに開口すると共に、他端(径方向内側の端部)が内輪11の内径面に開口した径方向の給油孔20を介して環状空間Sに潤滑油が連続的に供給される、いわゆるアンダーレース潤滑を採用している。給油孔20は、周方向の一箇所のみに設けても構わないが、環状空間Sの全域に万遍なく潤滑油を行き渡らせるため、周方向に離間した複数箇所に設けられる(図3参照)。
転がり軸受10の運転時には、内側軌道面11b上をボール13が転動するため、給油孔20の一端が内側軌道面11bのうちでボール13が接触する(接触する可能性のある)領域内に開口していると、環状空間Sに所定量の潤滑油を供給することができなくなる。そのため、給油孔20は、その一端が、内側軌道面11bのうち、軸受運転時に内側軌道面11bとボール13との接触による接触楕円が及ぶ範囲の外側に開口するように設けられる。本実施形態では、内側軌道面11bの溝底付近に給油孔20の一端を開口させている。
環状空間Sに次々に供給される潤滑油は、主に内輪11と外輪12の間の開口部を介して軸受外部に排出される。このように、本実施形態の転がり軸受10では、内輪11と外輪12の間の開口部が潤滑油の排出口として機能することから、内輪11と外輪12の間の開口部には、グリース潤滑タイプの転がり軸受に設けられるシール部材が配置されない。
内輪11および外輪12は、転がり軸受10が高温雰囲気下で高速回転する主軸6の支持に用いられることに鑑み、高温での機械的強度および靱性が高く、疲労寿命が長く、かつ寸法変化が小さい、などという特性を有する鋼材、例えば耐熱軸受鋼で形成される。耐熱軸受鋼としては、AMS6491規格のM50、あるいはAMS6278規格のM50NiLを使用することができる。M50とは、主に、0.77〜0.85質量%の炭素、0.25質量%以下の珪素、0.35質量%以下のマンガン、0.15質量%以下のニッケル、3.75〜4.25質量%のクロム、4〜4.5質量%のモリブデンおよび0.9〜1.1質量%のバナジウムを含有し、残部鉄および不可避的不純物からなる鋼材である。また、M50NiLとは、主に、0.11〜0.15質量%の炭素、0.1〜0.25質量%の珪素、0.15〜0.35質量%のマンガン、3.2〜3.6質量%のニッケル、4〜4.25質量%のクロム、4〜4.5質量%のモリブデンおよび1.13〜1.33質量%のバナジウムを含有し、残部鉄および不可避的不純物からなる鋼材である。
内輪11のうち、少なくとも内側軌道面11b(11b1,11b2)の表層部には硬質層A1が形成されている。硬質層A1は、硬度のピークが表面付近にあり、その厚さ方向で硬度が徐々に低下する(表面側から内輪11の厚さ方向中央部側に向けて硬度が徐々に低下する)層であり、好ましくは、表面硬度がビッカース硬さ[単位:HV]で800以上で、かつ厚さが0.025mm以上の層とされる。このような硬質層A1は、焼入硬化処理が施された後、略完成品形状に仕上げられた内輪11(の素形材)に対して、窒化処理を施すことによって形成される。従って、硬質層A1は窒素富化層とされる。窒化処理の手法としては、ガス窒化、ガス軟窒化、プラズマ窒化などがある。また、外輪12のうち、少なくとも外側軌道面12bの表層部には、内側軌道面11bの表層部に形成した硬質層A1と同様の硬質層A2が形成されている。なお、上記硬質層A1は、内輪11のうち、内側軌道面11b以外の領域に形成しても良く、上記硬質層A2も、外輪12のうち、外側軌道面12b以外の領域に形成しても良い。
本実施形態のボール13は、内輪11および外輪12と同様に、M50あるいはM50NiL等の耐熱軸受鋼で形成される。ボール13の表層部には、図4に模式的に示すように、硬質層A3が形成されている。この硬質層A3は、内側軌道面11bおよび外側軌道面12bの表層部に形成した硬質層A1,A2と同様の硬質層である。
保持器14は、その外径面および内径面に開口したポケット部15を有し、ポケット部15は、周方向に所定間隔で複数設けられている。本実施形態において、ポケット部15はボール13を1個ずつ保持する。これにより、ボール13は、内側軌道面11bと外側軌道面12bとで形成される円環状の軌道上に周方向所定間隔で保持される。本実施形態の保持器14は、その全体が一体的に設けられた、いわゆる一体型もみ抜き保持器であり、高い機械的強度と耐熱性を併せ持つ合金鋼、例えば、ニッケルクロムモリブデン鋼で形成される。好ましく使用できるニッケルクロムモリブデン鋼の具体例としては、AMS6444規格のSAE4340を挙げることができる。なお、SAE4340とは、概ね、1.8質量%のニッケル、0.8質量%のクロム、0.25質量%のモリブデンおよび0.38〜0.43質量%の炭素を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる鋼材である。
転がり軸受10の運転中、保持器14は、その外径面14aが外輪12の内径面12aによって摺動案内されながら、内輪11および外輪12に対して相対回転する。要するに、転がり軸受10における保持器14の案内形式として、保持器14の外径面14aを外輪12の内径面12aで案内する、いわゆる外輪案内が採用される。
図示は省略するが、外輪12に対する保持器14の摺動性を高めるため、保持器14には、その外径面14aを被覆する潤滑皮膜(例えば、固体潤滑剤の集合体からなる皮膜)を設けても良い。
図2および図3に示すように、外輪12には、一端(径方向内側の端部)が外側軌道面12bに開口すると共に、他端(径方向外側の端部)が外輪12の外径面に開口した径方向の排油孔21が設けられている。そのため、転がり軸受10の運転時、給油孔20を介して環状空間Sに供給された潤滑油は、遠心力の影響を受けて径方向外側に移動し、内外輪11,12間の開口部、および排油孔21を介して軸受外部に排出される。排油孔21は周方向の一箇所のみに設けても構わないが、排油孔21を介しての排油効率を高めるため、本実施形態では、周方向に離間した複数箇所に排油孔21を設けている(図3参照)。
転がり軸受10の運転時には、外側軌道面12b上をボール13が転動するため、排油孔21の一端が外側軌道面12bのうちでボール13が接触する(接触する可能性のある)領域内に開口していると、排油孔21を介しての排油性が低下する。そのため、排油孔21は、その一端が、外側軌道面12bのうち、軸受運転時に外側軌道面12bとボール13との接触による接触楕円が及ぶ範囲の外側に開口するように設けられる。本実施形態では、外側軌道面12bの溝底に排油孔21の一端を開口させている。
前述したように、アンダーレース潤滑が採用される関係上、内外輪11,12間の開口部をシールすることができない本実施形態の転がり軸受10は、ターボファンエンジン1内を浮遊・飛翔する微細な硬質異物が環状空間Sに侵入し易く、硬質異物がボール13(の外表面)と内側軌道面11bおよび外側軌道面12bとの間に介在した状態で転がり軸受10が運転されると、両軌道面11b,12bの変形・損傷等に起因した軸受性能の低下が生じ易くなる。
このような問題に対し、本実施形態の転がり軸受10は、内側軌道面11bおよび外側軌道面12bの表層部、さらにはボール13の表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、その厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層A1,A2,A3をそれぞれ設けている。このようにすれば、両軌道面11b,12b、さらにはボール13の表面形状を変化させることなく、硬質異物に対する耐性を高めることができる。このため、ボール13の転動性、ひいては軸受性能を長期間に亘って良好な状態に保つことができる。
また、本実施形態の転がり軸受10は、保持器14の案内形式として、いわゆる外輪案内を採用しているため、何ら対策を講じていなければ、ボール13と外側軌道面12bとの間に一旦硬質異物が侵入してしまうと、ボール13と外側軌道面12bの間に硬質異物が滞留した状態で転がり軸受10の運転が継続されることとなる。この場合、たとえ上記のような硬質層A2,A3を設けていても、外側軌道面12bやボール13の外表面が変形・損傷等する可能性が高まる。
これに対し、本実施形態の転がり軸受10では、外輪12に、一端が外側軌道面12bに開口すると共に他端が外輪12の外径面に開口した排油孔21を設けていることから、上記の問題発生を可及的に防止することができる。すなわち、上記態様で排油孔21を設けておけば、ボール13と外側軌道面12bとの間に微細な硬質異物が侵入した場合でも、この硬質異物を、環状空間Sに供給される潤滑油と共に軸受外部に円滑に排出することができる。また、本実施形態では、回転側となる内輪11に、一端が内側軌道面11bに開口した給油孔20を設け、この給油孔20を介して環状空間Sに潤滑油を供給する、いわゆるアンダーレース潤滑を採用している。この場合、環状空間Sに供給された潤滑油を遠心力によって径方向外側に円滑に移動させることができるため、潤滑油の供給〜排出といった一連の潤滑サイクルを効率良く行うことができる。
以上から、本発明によれば、高温、かつ微細な硬質異物が環状空間Sに侵入し易い過酷環境で使用される転がり軸受10においても、異物耐性に優れ、所望の軸受性能を長期間に亘って安定的に発揮することのできる、信頼性に富む転がり軸受10を実現することができる。
以上、本発明の一実施形態に係る転がり軸受10について詳細に説明したが、本発明の実施の形態はこれに限られるわけではない。
例えば、外輪12に設ける排油孔21は、図2に示すように、その孔径が長手方向全域で一定のストレート形状としても良いが、図5に模式的に示すように、一端側(径方向内側の端部)から他端側(径方向外側の端部)に向けて孔径が徐々に拡大したテーパ形状に形成することもできる。このようなテーパ形状の排油孔21を採用すれば、ストレート形状の排油孔21を採用する場合に比べ、排油性を高める上で有利となる。
また、ボール13としては、耐熱軸受鋼等の鋼材で形成された鋼球に替えて、セラミックス材料で形成された、いわゆるセラミックスボールを採用しても良い。セラミックスボールは、同じ大きさの鋼球に比べて軽量であることから、遠心力の影響によってボール13と外側軌道面12bの接触角が小さくなることを可及的に防止できることに加え、外側軌道面12bとの接触による接触楕円を小さくすることができる、という利点がある。なお、セラミックスボールを採用した場合には、当然のことながら、ボール13の外表面に硬質層A3は形成されない。
また、以上で説明した転がり軸受10においては、いわゆるアンダーレース潤滑により軸受内部を潤滑・冷却するようにしたが、本発明は、いわゆるジェット潤滑により軸受内部が潤滑・冷却される転がり軸受10にも好ましく適用できる。詳細な図示は省略するが、ジェット潤滑を採用する場合、内輪11には給油孔20が設けられず、例えば内輪11と外輪12の間の開口部の外側に配置された給油ノズルから環状空間Sに潤滑油が連続的に供給(噴射)される。
また、以上では、本発明に係る転がり軸受10の具体例として、ボール13が内輪11の内側軌道面11bと2点で接触すると共に外輪12の外側軌道面12bと1点で接触する、いわゆる3点接触玉軸受を例示したが、本発明は、ボール13が内側軌道面11bおよび外側軌道面12bとそれぞれ2点で接触する、いわゆる4点接触玉軸受にも適用できる。
また、以上では、本発明に係る転がり軸受10を、ガスタービン装置の一種であるターボファンエンジンの主軸6支持用軸受として用いる場合を説明したが、転がり軸受10は、その他の公知のガスタービン装置、例えば、ターボジェットエンジン、一軸式ガスタービン、二軸式ガスタービンなどにおいて、主軸、又は主軸の回転を受けて回転する従動回転部材の支持用軸受としても好適に用い得る。すなわち、転がり軸受10は、航空機用のガスタービン装置のみならず、コージェネレーションシステムや非常用発電設備等、産業設備用のガスタービン装置にも好適に用い得る。
さらに、本発明は、内輪11が回転側となる転がり軸受10のみならず、外輪12が回転側となる転がり軸受10にも適用することができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 ターボファンエンジン(ガスタービン装置)
6 主軸(回転軸)
10 転がり軸受
11 内輪
11A 第1の分割内輪
11B 第2の分割内輪
11b 内側軌道面
12 外輪
12b 外側軌道面
13 ボール
14 保持器
20 給油孔
21 排油孔
A1 硬質層
A2 硬質層
A3 硬質層
6 主軸(回転軸)
10 転がり軸受
11 内輪
11A 第1の分割内輪
11B 第2の分割内輪
11b 内側軌道面
12 外輪
12b 外側軌道面
13 ボール
14 保持器
20 給油孔
21 排油孔
A1 硬質層
A2 硬質層
A3 硬質層
Claims (9)
- 熱処理された鋼材で形成された内輪および外輪と、内輪の内側軌道面と外輪の外側軌道面の間に転動自在に配された複数のボールと、内輪と外輪の間に配置され、複数のボールを周方向所定間隔で保持する保持器とを備え、内輪および外輪に対する保持器の相対回転が外輪の内径面によって案内され、軸受外部から連続的に供給される潤滑油により軸受内部が冷却される転がり軸受において、
少なくとも内側軌道面および外側軌道面の表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層が設けられ、
外輪に、一端が外側軌道面に開口すると共に他端が外輪の外径面に開口した排油孔が設けられていることを特徴とする転がり軸受。 - 排油孔の一端が、外側軌道面のうち、軸受運転時に外側軌道面とボールとの接触による接触楕円が及ぶ範囲の外側に開口している請求項1に記載の転がり軸受。
- 排油孔は、その一端側から他端側に向けて孔径が徐々に拡大したテーパ形状をなす請求項1又は2に記載の転がり軸受。
- ボールが、熱処理された鋼材で形成され、かつその表層部に、硬度のピークが表面付近にあり、厚さ方向で硬度が徐々に低下する硬質層が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の転がり軸受。
- ボールがセラミックスで形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の転がり軸受。
- 内側軌道面および外側軌道面に設けられた前記硬質層が、窒化処理により形成されている請求項1〜5の何れか一項に記載の転がり軸受。
- 内輪が、軸方向で分割され、それぞれが内側軌道面の一部および残部を有する第1および第2の分割内輪を備え、
ボールが、第1の分割内輪に設けられた内側軌道面の一部および第2の分割内輪に設けられた内側軌道面の残部のそれぞれと一点で接触すると共に、外側軌道面と一点で接触する3点接触玉軸受である、請求項1〜6の何れか一項に記載の転がり軸受。 - 内輪がガスタービン装置の回転軸に装着される請求項1〜7の何れか一項に記載の転がり軸受。
- 一端が内側軌道面に開口した給油孔を有し、この給油孔を介して軸受内部に潤滑油が供給される請求項8に記載の転がり軸受。
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CN109307055A (zh) * | 2018-11-15 | 2019-02-05 | 南京南邦科技开发有限公司 | 一种具有高效润滑的汽车减速器及其工作方法 |
DE102020101951A1 (de) | 2019-01-30 | 2020-07-30 | Jtekt Corporation | Wälzlager |
CN112253618A (zh) * | 2020-11-06 | 2021-01-22 | 瓦房店轴承集团国家轴承工程技术研究中心有限公司 | 双内圈三点接触球轴承 |
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- 2017-03-13 JP JP2017047110A patent/JP2018150988A/ja active Pending
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