(ダイカストマシンの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
ダイカストマシン1は、溶解されて液状となった金属材料(溶湯)を金型101内(キャビティCa等の空間。以下同様。)へ射出し、溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金属は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金である。なお、溶湯に代えて、固液共存金属を用いることも可能である。
金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。本実施形態の説明では、便宜上、固定金型103又は移動金型105の断面を1種類のハッチングで示すが、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定金型103及び移動金型105には、中子などが組み合わされてもよい。
ダイカストマシン1は、例えば、成形のための機械的動作を行うマシン本体部3と、マシン本体部3の動作を制御する制御ユニット5とを有している。
マシン本体部3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(図1では移動金型105)から押し出す押出装置11とを有している。マシン本体部3において、射出装置9以外の構成(例えば型締装置7及び押出装置11の構成)は、基本的には(例えば射出装置9の取付けに係る部分を除いて)、公知の種々の構成と同様とされてよい。
成形サイクルにおいて、型締装置7は、移動金型105を固定金型103へ向かって移動させ、型閉じを行う。さらに、型締装置7は、タイバー(符号省略)の伸長量に応じた型締力を金型101に付与して型締めを行う。型締めされた金型101内には成形品と同一形状のキャビティCaが構成される。射出装置9は、そのキャビティCaへ溶湯を射出・充填する。キャビティCaに充填された溶湯は、金型101に熱を奪われて冷却され、凝固する。これにより、成形品が形成される。その後、型締装置7は、移動金型105を固定金型103から離れる方向へ移動させて型開きを行う。この際又はその後、押出装置11は、移動金型105から成形品を押し出す。
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御装置13(図3参照)と、画像を表示する表示装置15と、オペレータの入力操作を受け付ける入力装置17とを有している。また、別の観点では、制御ユニット5は、例えば、電源回路及び制御回路等を有する不図示の制御盤と、ユーザインターフェースとしての操作部19とを有している。
制御装置13は、例えば、不図示の制御盤及び操作部19に設けられている。制御装置13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。
表示装置15及び入力装置17は、例えば、操作部19に設けられている。操作部19は、例えば、型締装置7の固定的部分に設けられている。表示装置15は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。入力装置17は、例えば、機械式のスイッチ及び前記のタッチパネルによって構成されている。
なお、ダイカストマシン1のうち射出装置9に着目する場合において、制御ユニット5は、射出装置9の制御ユニットとして捉えられてよい。制御ユニット5の構成要素(例えば制御装置13)についても同様である。
(射出装置の構成)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ21と、スリーブ21内を摺動可能なプランジャ23と、プランジャ23を駆動する射出駆動部25とを有している。なお、射出装置9の説明においては、金型101側(図1の紙面左側)を前方、その反対側を後方ということがあり、また、この定義に従って、前進または後退の語を用いることがある。
スリーブ21は、例えば、固定金型103に連結された筒状部材であり、上面には溶湯をスリーブ21内に受け入れるための供給口21aが開口している。プランジャ23は、スリーブ21内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ23aと、先端がプランジャチップ23aに固定されたプランジャロッド23bとを有している。
型締装置7による金型101の型締めが完了すると、不図示の給湯装置によって1ショット分の溶湯が供給口21aからスリーブ21内へ注がれる。そして、プランジャ23が図示の位置からスリーブ21内を前方へ摺動することにより、スリーブ21内の溶湯が金型101内に押し出される(射出される)。
(射出駆動部の概略構成)
図2は、射出装置9(射出駆動部25)の具体的な構成を示す模式図である。図2は、基本的に上方から見た図となっているが、図示の都合上、一部(例えば液圧系)はこの限りではない。また、図2は適宜に断面図を含んでいる。
射出駆動部25は、いわゆるハイブリッド式のものであり、液圧(例えば油圧)式の駆動力によってプランジャ23を前進させることが可能であるとともに、電動式の駆動力によってプランジャ23を前進させることが可能である。具体的には、射出駆動部25は、プランジャ23に連結された射出シリンダ27と、射出シリンダ27に作動液を供給する液圧装置29と、射出シリンダ27を移動させる電動駆動部31と、射出シリンダ27の移動を規制する停止装置33とを有している。
射出シリンダ27は、その駆動力によってプランジャ23を前後進させることが可能である。また、電動駆動部31は、射出シリンダ27を移動させることによって、射出シリンダ27ごとプランジャ23を前後進させることが可能である。停止装置33は、射出シリンダ27の移動を規制することによって、例えば、制御の容易化等の種々の効果を奏する。
射出シリンダ27、液圧装置29、電動駆動部31及び停止装置33の構成は、具体的には、例えば、以下のとおりである。
(射出シリンダの構成)
射出シリンダ27は、例えば、直結型増圧式シリンダにより構成されている。すなわち、射出シリンダ27は、シリンダ部35と、シリンダ部35の内部を摺動可能な射出ピストン37及び増圧ピストン39と、射出ピストン37から前方(プランジャ23側)へ延びるピストンロッド41とを有している。
シリンダ部35は、例えば、射出用部分35aと、その後方に通じ、射出用部分35aよりも内径が大きい増圧用部分35bとを有している。射出ピストン37は、射出用部分35aを摺動可能であり、射出用部分35aの内部を前側のロッド側室35rと、その反対側のヘッド側室35hとに区画している。増圧ピストン39は、例えば、射出用部分35aを摺動可能な小径部39aと、増圧用部分35bを摺動可能な大径部39bとを有している。大径部39bは、例えば、増圧用部分35bの内部を前側の前側室35fと、後側の後側室35eとに区画している。
このような構成の射出シリンダ27においては、例えば、ヘッド側室35h及びロッド側室35rに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン37が前進又は後退する(往復する。)。また、例えば、ヘッド側室35hからの作動液の流出が禁止されるとともに前側室35fがタンク圧とされた状態で、後側室35eに作動液が供給されると、増圧ピストン39の前後の受圧面積の差に応じてヘッド側室35hの作動液が増圧される。
なお、射出シリンダ27は、増圧用部分35b及び増圧ピストン39を有さない、いわゆる単胴式のものであってもよい。以下の説明では、増圧用部分35b及び増圧ピストン39に係る説明は適宜に省略されることがある。
射出シリンダ27は、プランジャ23に対してその後方に同軸(直列)に配置されている。ピストンロッド41の先端は、プランジャロッド23bの後端に連結されている。従って、射出ピストン37及びピストンロッド41の前後進に伴ってプランジャ23も前後進する。プランジャ23とピストンロッド41との連結は、例えば、カップリング(符号省略)によってなされている。
(液圧装置の構成)
液圧装置29は、例えば、作動液を貯留するタンク43と、タンク43の作動液を送出するポンプ45と、ポンプ45を駆動するポンプ用電動機47と、蓄圧した作動液を供給するアキュムレータ49と、これらの要素及び射出シリンダ27を互いに接続する液圧回路51とを有している。
タンク43は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク43は、例えば、液圧回路51を介して射出シリンダ27における作動液の過不足を解消し、また、ポンプ45及び液圧回路51を介してアキュムレータ49に作動液を供給する。
ポンプ45は、例えば、ロータリポンプでもプランジャポンプでもよいし、定容量ポンプでも可変容量ポンプでもよい。また、ポンプ45は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
ポンプ用電動機47は、回転式の電動機である。ポンプ用電動機47は、例えば、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。ポンプ用電動機47は、オープンループにおいて設けられた定速電動機として機能するものであってもよいし、クローズドループにおいて設けられたサーボモータとして機能するものであってもよい。ポンプ用電動機47は、常時駆動されていてもよいが、本実施形態では、必要に応じて駆動される態様を例に取る。
アキュムレータ49は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ49は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ49内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧される。蓄圧された作動液は、液圧回路51を介して射出シリンダ27に供給される。
(液圧回路)
液圧回路51は、射出シリンダ27(ロッド側室35r、ヘッド側室35h、前側室35f及び後側室35e)、タンク43、ポンプ45及びアキュムレータ49を互いに接続する複数の流路、及び、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。複数の弁は、例えば、パイロット式でない又はパイロット式の逆止弁、切換弁、流量制御を行うサーボバルブである。
液圧回路51は、後述する作動液の流れが実現されるように適宜に構成されてよい。また、その構成は、従来の液圧式の射出装置におけるものと同様とされてもよい。図2では、液圧回路51の構成要素のうち、主要なものをいくつか例示している。具体的には、以下のとおりである。
例えば、液圧回路51は、タンク43又はポンプ45と、アキュムレータ49とを接続する流路(符号省略)と、当該流路に設けられ、アキュムレータ49からの逆流を防止するための逆止弁53とを有している。これにより、例えば、ポンプ45によってアキュムレータ49を蓄圧可能である。
また、例えば、液圧回路51は、アキュムレータ49とヘッド側室35hとを接続する流路(符号省略)と、当該流路に設けられたAcc用弁55とを有している。Acc用弁55は、例えば、パイロット式の逆止弁によって構成されており、パイロット圧が導入されていないときはアキュムレータ49からヘッド側室35hへの作動液の流れを禁止するとともにその逆方向の流れを許容し、パイロット圧が導入されているときは双方の流れを許容する。従って、例えば、パイロット圧を導入することによって、アキュムレータ49からヘッド側室35hへ作動液を供給し、射出ピストン37を前進させることができる。
また、例えば、液圧回路51は、タンク43又はポンプ45と、ロッド側室35rとを接続する流路(符号省略)と、当該流路に設けられ、当該流路における流量を制御する流量制御弁57を有している。流量制御弁57は、例えば、圧力補償付流量調整弁によって構成されており、また、別の観点では、サーボ機構の中で使用され、入力信号に応じて流量を無段階に変調可能なサーボバルブによって構成されている。
従って、例えば、射出ピストン37の前進に伴って容積が縮小するロッド側室35rの作動液をタンク43へ排出可能である。また、この際、流量制御弁57によりロッド側室35rから排出される作動液の流量を制御することにより、射出ピストン37の前進速度を制御可能である。すなわち、流量制御弁57は、いわゆるメータアウト回路を構成している。また、例えば、ポンプ45からロッド側室35rへ作動液を供給して、射出ピストン37を後退させることが可能である。
また、例えば、アキュムレータ49からタンク43及びポンプ45へ延びる流路と、ロッド側室35rからタンク43及びポンプ45へ延びる流路とは、タンク43及びポンプ45側が共通化されており、この共通化されている部分には、接続先をタンク43とポンプ45との間で切り換える切換弁59が設けられている。これにより、例えば、アキュムレータ49又はロッド側室35rについて、ポンプ45からの作動液の供給とタンク43への作動液の排出とを切り換えることができる。
(電動駆動部)
電動駆動部31は、例えば、電動機によってシリンダ部35を前後方向(別の観点ではシリンダ部35に対する射出ピストン37の移動方向)に駆動するように構成されている。具体的には、電動駆動部31は、回転式の移動用電動機61と、移動用電動機61の回転を伝達する伝達機構63と、伝達機構63によって伝達された回転を並進運動に変換しつつシリンダ部35に伝達するねじ機構65とを有している。
電動駆動部31は、上記の移動用電動機61、伝達機構63及びねじ機構65の組み合わせを、例えば、左右対称に2組有している。ただし、電動駆動部31は、上記の組み合わせを1組のみ有していてもよいし、3組以上有していてもよい。2組の間で移動用電動機61が共用されるなど、一部が共用されてもよい。
シリンダ部35を前後方向に移動可能に支持するための構成は適宜なものとされてよい。例えば、シリンダ部35は、不図示のリニアガイドによって支持された移動テーブル67(図1も参照)に搭載されている。なお、図2は、模式図であることから、シリンダ部35と移動テーブル67とを一体的に示している。シリンダ部35及び移動テーブル67を構成する部材の数、形状及び固定方法等は適宜に設定されてよい。
移動用電動機61は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。移動用電動機61は、ブレーキ付きの電動機であってもよいし、ブレーキが付いていないものであってもよい。移動用電動機61は、例えば、サーボモータとして構成されており、移動用電動機61の回転を検出するエンコーダ61eを有し、エンコーダ61eの検出値に基づいてフィードバック制御される。
なお、後述する動作の説明において、移動用電動機61が停止しているとき、移動用電動機61は、トルクフリーの状態とされてもよいし、一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。移動用電動機61が停止される状況等に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
伝達機構63は、例えば、プーリ・ベルト機構により構成されており、移動用電動機61の出力軸に固定された第1プーリ69と、ねじ機構65(厳密には本実施形態では後述するねじ軸75)に固定された第2プーリ71と、第1プーリ69及び第2プーリ71に架け渡されたベルト73とを有している。従って、移動用電動機61が回転されると、その回転は伝達機構63を介してねじ機構65に伝達される。
ねじ機構65は、例えば、ボールねじ機構又はすべりねじ機構により構成されており、ねじ軸75と、ねじ軸75に螺合するナット77とを有している。
ねじ軸75は、射出シリンダ27に平行に配置されている。また、ねじ軸75は、不図示の適宜な軸受によって支持されることなどにより、軸方向の移動が規制されているとともに軸回りの回転が許容されている。一方、ナット77は、シリンダ部35に固定されることなどにより、シリンダ部35とともに軸方向に移動可能とされるとともに、軸回りの回転が規制されている。従って、ねじ軸75が回転されると、ナット77はプランジャ23に平行な方向において移動し、ひいては、シリンダ部35が前後方向に移動する。
なお、ナット77とシリンダ部35との固定は、両者が直接的に固定されるものであってもよいし、ナット77が移動テーブル67に固定されることによる間接的なものであってもよい。図2の模式図では、ナット77は、移動テーブル67に形成された孔部に嵌め込まれることなどによりシリンダ部35に対して固定されている。
(停止装置)
停止装置33は、例えば、摩擦式のブレーキ79を含んでおり、ブレーキ79は、直接的には、ねじ軸75の回転を規制し、これによりシリンダ部35の移動を規制する。具体的には、以下のとおりである。
ブレーキ79は、例えば、ねじ軸75と共に回転するようにねじ軸75に連結された被制動部材81と、被制動部材81に当接して被制動部材81の回転を規制可能な制動部材83とを有している。制動部材83は、当然に、被制動部材81の回転方向における運動は規制されている。被制動部材81及び制動部材83は、例えば、ねじ軸75の同軸上に配置され、ねじ軸75の軸方向において互いに対向している。そして、被制動部材81及び制動部材83の一方が他方に向かって移動することによって両者は当接する。これにより、被制動部材81の回転に対して、被制動部材81と制動部材83との間に摩擦力が生じる。すなわち、制動力が生じる。
被制動部材81及び制動部材83を近接及び離反させるための駆動方式は、例えば、電磁式である。具体的には、例えば、被制動部材81は、矩形で模式的に示された支持機構87によって被制動部材81及び制動部材83の対向方向において移動可能に支持されているとともに、不図示のばねによって制動部材83から離反する方向に付勢されている。そして、模式的に示されているように、制動部材83側にはコイル85が設けられており、このコイル85に通電がなされることによって(電磁石が作動することによって)、被制動部材81及び/又は支持機構87内の被制動部材81に固定されている部材(金属部材)がコイル85に引き寄せられる。これにより、被制動部材81と制動部材83とが当接する。
なお、ブレーキとして、通電時に制動力が発揮されるものを例に挙げたが、ブレーキは、上記とは逆に、ばねによって互いに当接されている被制動部材81と制動部材83とが通電(電磁石)によって離反されるものであってもよい。制動部材83側にコイル85を図示したが、被制動部材81側にコイル85が設けられてもよい。被制動部材81に代えて又は加えて、制動部材83が近接・離反の方向に移動してもよい。また、公知の種々の電磁式摩擦ブレーキが適宜に適用されてよい。
上記の説明から理解されるように、ブレーキ79は、シリンダ部35の移動可能範囲内の任意の位置においてシリンダ部35の移動を規制することが可能である。従って、ブレーキ79は、移動可能範囲内の中途位置(前進限及び後退限を除く位置)においてシリンダ部35を停止させることが可能である。
(信号処理系の構成)
図3は、射出装置9の信号処理系の構成の概要を示すブロック図である。
制御装置13は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び補助記憶装置を含んで構成されている。そして、CPUがROM及び/又は補助記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、各種の機能部が構築される。
具体的には、液圧装置29を介して射出シリンダ27を制御する液圧制御部89、移動用電動機61を制御する電動制御部91、及びブレーキ79を制御する停止制御部93が構築される。なお、停止装置33は、図示のように、停止制御部93及びブレーキ79を含んでいると捉えられてもよいし、図示とは異なり、停止制御部93及びブレーキ79のうちブレーキ79のみを含んでいると捉えられてもよい。
上記のような各種の機能部が構築された制御装置13は、各種の入力信号に基づいて、各部を制御するための信号を出力する。
制御装置13に信号を入力するのは、例えば、入力装置17、エンコーダ61e(図2)、プランジャ23の位置を検出するための位置センサ95(図2も参照)、及び液圧装置29の適宜な位置において作動液の圧力を検出する不図示の圧力センサである。また、流量制御弁57は、その開度に応じた信号を制御装置13へ出力してもよい。
制御装置13が信号を出力するのは、例えば、表示装置15、液圧回路51(例えばポンプ用電動機47に電力を供給する不図示のドライバ及び各種の弁(そのドライバ等))、移動用電動機61に電力を供給する不図示のドライバ、及びブレーキ79(コイル85に電力を供給する不図示のドライバ)である。
位置センサ95は、例えば、不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。例えば、位置センサ95は、シリンダ部35の前方に固定的に設けられ、スケール部は、ピストンロッド41に設けられ、その軸方向に延びている。そして、位置センサ95は、ピストンロッド41の移動に伴って移動するスケール部の位置を検出することによってプランジャ23の位置を間接的に検出する。なお、位置センサ95、又は、制御装置13は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
圧力センサは、液圧系において適宜な位置に設けられる。例えば、特に図示しないが、ヘッド側室35hの圧力を検出する圧力センサ及びロッド側室35rの圧力を検出する圧力センサが設けられ、制御装置13は、これらの圧力センサの検出値に基づいて、プランジャ23が溶湯に加える圧力を特定可能である。また、例えば、特に図示しないが、アキュムレータ49の圧力を検出する圧力センサが設けられ、制御装置13は、その検出値に基づいて、アキュムレータ49の充填完了を判定可能である。
(射出装置の動作)
図4は、射出装置9の動作を説明する図である。図4において、横軸は時間を示している。また、線Lvは射出速度の変化を示し、線Lpは射出圧力の変化を示している。線Lv及びLpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度及び射出圧力の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、移動テーブル67、射出ピストン37、移動用電動機61、ブレーキ79、流量制御弁57、Acc用弁55、アキュムレータ49及びポンプ用電動機47の動作が示されている。
なお、移動用電動機61の「正転」は、移動テーブル67が前進する方向に回転する状態を示し、「逆転」は、その逆方向に回転する状態を示している。射出ピストン37の「停止」、「前進」及び「後退」は、シリンダ部35に対する相対的な移動を示している。流量制御弁57の「制御」は、開口度が適宜に制御されている状態を示している。アキュムレータ49の「充填」は、アキュムレータ49を充填可能な状態を示している(「充填」とされた範囲全体に亘って充填が行われている必要は無い)。
射出装置9は、概観すると、低速射出、高速射出、増圧(昇圧)及び保圧を順に行う。すなわち、射出装置9は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ23を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ23を前進させる。その後、射出装置9は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ23の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧し、さらに、その増圧した圧力を維持して成形品の凝固を待つ。具体的には、以下のとおりである。
(射出開始直前:t0直前)
射出開始直前において、射出装置9は、図1及び図2に示す状態となっている。すなわち、移動テーブル67(別の観点ではシリンダ部35及びナット77)及び射出ピストン37は、後退限等の初期位置において停止している。ひいては、プランジャ23は後退限等の初期位置において停止している。移動用電動機61は停止している。ブレーキ79は、作動していても、作動していなくてもよい。図4では図示が省略されているが、増圧ピストン39は後退限等の初期位置において停止している。
液圧装置29は、射出ピストン37が初期位置において停止するように制御されている。例えば、流量制御弁57は閉じられ、及び/又はAcc用弁55は閉じられている。後述する低速射出時と同様の制御がなされていてもよい。
また、液圧装置29は、アキュムレータ49の充填を行っていてもよいし、充填を完了していてもよい。充填がなされているとき、ポンプ用電動機47は駆動され、切換弁59はポンプ45とアキュムレータ49とを接続している。充填が完了しているとき、例えば、ポンプ用電動機47は停止されている、及び/又は切換弁59はポンプ45とアキュムレータ49とを遮断している。
(低速射出:t0〜t1)
固定金型103及び移動金型105の型締が終了し、溶湯がスリーブ21に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、移動用電動機61を正転させる。その駆動力は、伝達機構63及びねじ機構65を介して移動テーブル67(シリンダ部35)に伝達される。これにより、射出シリンダ27ごと、プランジャ23が前進する。すなわち、電動駆動部31の駆動力によって低速射出が行われる。
この間、射出ピストン37は、シリンダ部35に対して停止している。すなわち、低速射出は、基本的に電動駆動部31の駆動力のみによって行われ、射出シリンダ27の駆動力によっては行われない。
液圧装置29は、射出ピストン37が停止されるように適宜に制御される。例えば、図示の例では、流量制御弁57が閉じられている。これにより、ロッド側室35rからの作動液の排出が禁止され、ひいては、射出ピストン37の前進が規制されている。
ただし、Acc用弁55は開かれている。すなわち、アキュムレータ49は、その動作が点線で示されているように、作動液を放出可能な状態とされている。ここで、ロッド側室35rからの作動液の排出は上記のように禁止されている。従って、ロッド側室35rの作動液(例えば油)は圧縮された状態となっている。
なお、射出ピストン37は、ロッド側室35rの作動液の圧縮や漏れに応じた量でシリンダ部35に対してわずかに前進する。しかし、特に断りがない限りは、このようなわずかな前進が生じても、射出ピストン37は停止していると表現するものとする。また、図示の例とは異なり、Acc用弁55を閉じておくことも可能である。
低速射出において、ブレーキ79は作動されていない(ねじ軸75の回転を規制していない。)。ポンプ45(ポンプ用電動機47)は、例えば、停止されている。ただし、ポンプ45は、アキュムレータ49側へ作動液を送出していてもよい。上述したヘッド側室35hへの作動液の供給によるロッド側室35rの作動液の圧縮は、アキュムレータ49に代えてポンプ45によって行うことも可能である。
プランジャ23の速度は、移動用電動機61の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置13は、位置センサ95の検出値に基づいて移動用電動機61の回転数をフィードバック制御する。ここでの速度のフィードバック制御は、プランジャ23の速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、所定の時間刻みで経過時間に対して設定された目標位置と現時点の位置との偏差に基づくもの(時々刻々と行われる位置フィードバックによって実質的に速度フィードバックを実現するもの)であってもよい。
低速射出におけるプランジャ23の速度(低速射出速度VL)は、例えば、1m/s未満である。低速射出速度VLの具体的な値は、オペレータによって適宜に設定されてよい。制御装置13は、入力装置17を介して当該値の入力を受け付ける。
(高速射出:t1〜t2)
制御装置13は、低速射出において、プランジャ23の位置が所定の高速切換位置に到達したか否か判定する。当該判定は、適宜に行われてよい。例えば、制御装置13は、位置センサ95の検出位置が所定の高速切換位置に到達したか否かを判定し、又は射出開始から所定の時間が経過したか否かを判定する。
そして、制御装置13は、高速切換位置に到達したと判定すると、射出ピストン37がシリンダ部35に対して前進するように液圧装置29を制御する。これにより、プランジャ23が前進する。また、このときの速度は、比較的高速とされる。すなわち、射出シリンダ27の駆動力によって高速射出が行われる。
具体的には、制御装置13は、流量制御弁57を適宜な開度で開く。これにより、ロッド側室35rからの作動液の排出が許容され、ひいては、射出ピストン37の前進が許容される。一方、アキュムレータ49は、かねてからヘッド側室35hへ作動液を供給可能とされている。従って、射出ピストン37は、アキュムレータ49からの液圧によって前進する。
流量制御弁57を介して排出された作動液は、例えば、切換弁59を介してタンク43へ排出される。なお、特に図示しないが、ロッド側室35rから排出される作動液をヘッド側室35hへ還流するランアラウンド回路が設けられ、タンク43への流れに代えて、このランアラウンド回路における流れが許容されてもよい。
ヘッド側室35hには、かねてからアキュムレータ49の圧力が付与され、ロッド側室35rの作動液は予め圧縮されている。従って、射出ピストン37がロッド側室35rの作動液の圧縮を伴って前進することに起因するサージ圧の発生は抑制される。
射出シリンダ27が駆動される一方で、移動テーブル67は停止される。すなわち、低速射出とは逆に、高速射出は、基本的に射出シリンダ27の駆動力のみによって行われ、電動駆動部31の駆動力によっては行われない。
具体的には、制御装置13は、移動用電動機61を停止させ、また、ブレーキ79を作動させる。なお、既に述べたように、停止されている移動用電動機61は、トルクフリーの状態であってもよいし、一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。
移動テーブル67の停止及び停止の維持における、移動用電動機61及びブレーキ79の役割乃至は分担は適宜に設定されてよい。例えば、移動用電動機61は、単にトルクフリーの状態とされるだけで、主としてブレーキ79によって移動テーブル67の移動の規制が実現されてもよい。また、例えば、ねじ機構65がすべりねじ機構によって構成され、その摩擦力が移動テーブル67の移動の規制に寄与し、ブレーキ79はその補助をしてもよい。
制御装置13は、移動用電動機61の停止のための制御及びブレーキ79の作動のための制御を概ね同じタイミングで開始する。ただし、上記のように役割乃至は分担が適宜に設定されてよいことからも明らかなように、両制御の開始タイミングは互いにずれていてもよい。
プランジャ23の速度は、流量制御弁57の開口度の調整により制御される。具体的には、制御装置13は、位置センサ95の検出値に基づいて流量制御弁57の開度をフィードバック制御する。なお、この速度のフィードバック制御は、低速射出と同様に、速度自体の偏差に基づくものであってもよいし、位置フィードバックによって実質的に実現されるものであってもよい。
高速射出以後、少なくとも保圧(後述)が完了するまで、高速射出と同様に、プランジャ23は、射出シリンダ27の駆動力によって駆動され、電動駆動部31の駆動力によっては駆動されない。すなわち、移動用電動機61は停止状態が維持され、ブレーキ79は作動状態が維持され、ひいては、移動テーブル67(シリンダ部35)は移動が規制されている(停止されている)。
(減速射出:t2〜t3)
溶湯がキャビティCaにある程度充填されると、プランジャ23は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ23が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときに流量制御弁57の開口度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
(増圧:t3〜t4)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置13は、増圧工程を開始するように液圧回路51を制御する。増圧開始条件は、例えば、ヘッド側室35hの圧力を検出する不図示の圧力センサ(及び必要に応じてロッド側室35rの圧力を検出する不図示の圧力センサ)の検出値に基づく射出圧力が所定の値に到達したこと、又は、位置センサ95により検出されるプランジャ23の検出位置が所定の位置に到達したことである。
液圧回路51は、増圧開始のために、アキュムレータ49から後側室35eへの作動液の放出の許容、前側室35fからタンク43への作動液の排出の許容、ヘッド側室35hからの作動液の排出の禁止、及び、ロッド側室35rからタンク43への作動液の排出の許容(例えば流量制御弁57を全開にするなど)を行う。これにより、ヘッド側室35hの圧力が増圧ピストン39により加圧され、射出圧力は上昇し、射出圧力は終圧Pに到達する。また、射出速度は、キャビティCaに溶湯が完全に充填されることにより0となる。
なお、図示の例とは異なり、射出シリンダが単胴式の場合においては、例えば、増圧工程においては、流量制御弁57の速度フィードバック制御が行われないことを除いては、概ね高速射出における制御と同様の制御が行われる。流量制御弁57は、例えば、全開とされ、ヘッド側室35hの圧力はアキュムレータ49の圧力と同等の圧力まで上昇し、この圧力によって終圧Pが規定される。増圧式又は単胴式において、適宜なタイミングで流量制御弁57を全閉として、ロッド側室35rとヘッド側室35hとの圧力差で終圧Pを規定することも可能である。
(保圧:t4〜t5)
制御装置13は、射出圧力が終圧Pとなっている状態を維持する。具体的には、制御装置13は、上記の増圧工程における液圧回路51の状態を維持する。この終圧Pが維持されている間に、溶湯は冷却されて凝固する。
制御装置13は、保圧している間、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧Pが得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。そして、制御装置13は、溶湯が凝固したと判定すると、保圧を終了する。例えば、制御装置13は、アキュムレータ49から後側室35eへの液圧の供給を停止する。
(押出追従:t6〜t7)
保圧終了後、制御装置13は、不図示の型締装置に型開きを行わせるとともに、押出装置11により固定金型103から成形品を押し出す。このとき、制御装置13は、プランジャ23によりビスケットを押し出すための駆動力を射出シリンダ27及び/又は電動駆動部31が生じるようにこれらを制御する。なお、図4では、射出シリンダ27の駆動力によって押出追従を行っている場合を例示している。
(プランジャ後退:t8〜)
その後、制御装置13は、プランジャ23を初期位置まで後退させる。具体的には、移動用電動機61を逆転させて移動テーブル67(シリンダ部35)を後退させるとともに、ポンプ45からロッド側室35rへ作動液を供給して射出ピストン37をシリンダ部35に対して相対的に後退させる。
なお、射出ピストン37を後退させるとき、液圧回路51は、例えば、切換弁59によってポンプ45と流量制御弁57側とを接続するとともに、流量制御弁57を開く。また、液圧回路51は、例えば、ヘッド側室35hからタンク43への作動液の排出を許容し、タンク43から前側室35fへの作動液の補給を許容し、後側室35eからタンク43への作動液の排出を許容する。増圧ピストン39は、例えば、射出ピストン37によって押されて後退する。なお、ヘッド側室35hからの作動液の排出を禁止して増圧ピストン39を後退させたり、ヘッド側室35h又は後側室35eから排出される作動液をアキュムレータ49へ充填したりしてもよい。
また、制御装置13は、適宜な時期に、アキュムレータ49の充填を行う。具体的には、例えば、制御装置13は、流量制御弁57を閉じ、ポンプ45から切換弁59を介してアキュムレータ49へ作動液を供給する。この充填は、例えば、次の射出開始までに行われる。ただし、次の低速射出の間に行われても構わない。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置9は、射出シリンダ27、移動用電動機61及び停止装置33を有している。射出シリンダ27は、成形材料を金型に押し出すプランジャ23に連結される射出ピストン37、及び射出ピストン37を収容しているシリンダ部35を有している。移動用電動機61は、シリンダ部35に対する射出ピストン37の移動方向にシリンダ部35を移動させるための駆動力を生じる。停止装置33は、シリンダ部35の移動可能範囲の中途位置にてシリンダ部35を停止させる。
従って、例えば、停止装置33によってシリンダ部35の移動を停止させる一方で、射出ピストン37をシリンダ部35に対して前進させてプランジャ23を前進させることができる。その結果、例えば、射出シリンダ27及び移動用電動機61の複合制御が不要となり、制御が簡素化される。ひいては、高精度に所望の射出速度を得ることが容易化される。また、例えば、シリンダ部35を前進させつつ射出ピストン37をシリンダ部35に対して前進させる場合に比較して、移動用電動機61の駆動力は小さくてよい。その結果、例えば、移動用電動機61の小型化、消費電力の低減及び/又は発熱量の低減を図ることができる。
本実施形態では、停止装置33は、シリンダ部35の移動に伴って運動する被制動部材81と、被制動部材81に当接して被制動部材81の運動を停止させる制動部材83とを有するブレーキ79を含む。
従って、例えば、射出ピストン37をシリンダ部35に対して前進させてプランジャ23を前進させるときに、シリンダ部35の後退をより確実に抑制することができる。また、例えば、増圧及び保圧において、移動用電動機61の駆動力によってシリンダ部35の後退を抑制するとなると、移動用電動機61は比較的長時間に亘って大きな駆動力を生じることになる。その結果、例えば、消費電力の増加、発熱量の増加及び/又は移動用電動機61の大型化が顕著となる。しかし、本実施形態では、ブレーキ79によってシリンダ部35の後退を抑制することから、そのような不都合が解消される。当該効果は、ブレーキ79が作動している間において、移動用電動機61がトルクフリーとされている場合に顕著となる。
本実施形態では、移動用電動機61は回転式である。射出装置9には、移動用電動機61の回転を直線運動に変換してシリンダ部35に伝達する変換機構(本実施形態ではねじ機構65)が設けられている。ねじ機構65は、移動用電動機61の回転が伝達されて回転される回転部材(本実施形態ではねじ軸75)と、直線運動をシリンダ部35に伝達する移動部材(本実施形態ではナット77)と、を有している。被制動部材81は、ねじ軸75に対して共に回転するように連結されている、又はナット77に対して共に移動するように連結されている(本実施形態では前者)。
従って、例えば、ブレーキが移動テーブル67を直接的に制動する態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる。後述する図5(e)参照)に比較して、ブレーキ79は、ねじ機構65を介してシリンダ部35からの力を受けることから、ブレーキ79の負担が軽減される。その一方で、例えば、ブレーキが移動用電動機61に設けられたものである態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、移動テーブル67からの力を確実に受けることができ、また、移動用電動機61を衝撃などから保護することが容易できる。
本実施形態では、被制動部材81は、回転部材(本実施形態ではねじ軸75)に対して共に回転するように連結されている。
従って、例えば、被制動部材81がナット77に対して共に移動する(直線運動する)ように連結されている部材である態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、制動力に対する被制動部材81及び制動部材83の大きさを小さくすることができる。例えば、後述する図5(d)及び図5(e)の変形例から理解されるように、被制動部材81が直線運動する場合においては、被制動部材81及び制動部材83の一方の部材は、移動テーブル67の移動方向に延在するから、ブレーキは比較的大きくなりやすい。
本実施形態では、回転運動を直線運動に変換する変換機構は、射出ピストン37の移動方向に延びるねじ軸75と、ねじ軸75に螺合するナット77とを有しているねじ機構65である。移動用電動機61の回転が伝達されて回転する回転部材は、ねじ軸75であり、シリンダ部35に直線運動を伝達する移動部材は、ナット77である。被制動部材81は、回転部材(本実施形態ではねじ軸75)に対して共に回転するように連結されている。
従って、例えば、ブレーキ79の構成の自由度が高い。例えば、本実施形態とは異なり、ナット77が回転し、ねじ軸75が移動する態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる)においては、ねじ軸75は、その前進又は後退に伴って、ナット77の前方又は後方に突出する。従って、ナット77の回転を制動するブレーキは、例えば、ねじ軸75の挿通を許容可能に環状に構成される必要がある。しかし、本実施形態のように、回転するねじ軸75を制動する態様においては、そのような不都合は生じない。
本実施形態では、被制動部材81及び制動部材83は、ねじ軸75に対して同軸に配置されるとともに、ねじ軸75の軸方向において互いに対向している。
従って、例えば、ドラムブレーキのように被制動部材及び制動部材がねじ機構65の径方向において対向している態様、またはディスクブレーキのように被制動部材の外縁の一部において1対の制動部材が被制動部材を挟み込む態様(これらの態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、ブレーキを径方向において小型化しやすい。その結果、ねじ機構65を射出シリンダ27に近づけやすくなり、鉛直軸回りのモーメント等の意図しないモーメントがねじ機構65から射出シリンダ27へ加えられるおそれを低減できる。
本実施形態では、射出装置9は、低速射出においてシリンダ部35を前進させるように移動用電動機61を制御する電動制御部91と、低速射出に続く高速射出において射出ピストン37をシリンダ部35に対して前進させるように射出シリンダ27を制御する液圧制御部89と、を有している。停止装置33は、高速射出においてシリンダ部35を停止させる停止制御部93を含んでいる。
従って、例えば、低速射出においては、電動式の長所である高精度な制御によって射出速度を制御することができる。その一方で、例えば、高速射出においては、液圧式の長所である大きな駆動力によって十分な射出速度を得ることができる。高速射出においてシリンダ部35が停止されることから、例えば、高速射出における制御が簡素化される。
本実施形態では、停止制御部93は、高速射出においてブレーキ79を作動させる。
従って、例えば、高速射出のための大きな駆動力を射出シリンダ27が発揮したときに、シリンダ部35の後退をブレーキ79によって抑制できることから、移動用電動機61の負担を十分に低減することができる。また、例えば、ブレーキ79は、主として、停止しているシリンダ部35の移動を規制することに利用されるものであるから、例えば、静止摩擦係数がシリンダ部35の移動の規制に十分な大きさであればよい。換言すれば、ブレーキ79は、静止摩擦係数よりも小さい運動摩擦係数が大きくなるように構成される必要はない。その結果、ブレーキ79は、小型化可能である。
本実施形態では、射出装置9は、射出工程(増圧及び保圧を含まない狭義の射出。本実施形態では低速射出及び高速射出)の少なくとも一部(本実施形態では低速射出)においてシリンダ部35を前進させるように移動用電動機61を制御する電動制御部91と、射出工程の後の増圧工程及び保圧工程において射出ピストン37をシリンダ部35に対して前進させる方向の駆動力を生じるように射出シリンダ27を制御する液圧制御部89と、を有している。停止装置33は、増圧工程及び保圧工程においてシリンダ部35を停止させる停止制御部93を含んでいる。
従って、例えば、(狭義の)射出においては、電動式の長所である高精度な制御によって射出速度を制御することができる。その一方で、増圧及び保圧においては、液圧式の長所である大きな駆動力によって十分な鋳造圧力を得ることができる。
本実施形態では、停止制御部93は、増圧工程及び保圧工程においてブレーキ79を作動させる。
従って、例えば、増圧及び保圧のための大きな駆動力を射出シリンダ27が発揮したときに、シリンダ部35の後退をブレーキ79によって抑制できることから、移動用電動機61の負担を十分に低減することができる。また、例えば、既に述べたように、ブレーキ79は、主として、停止しているシリンダ部35の移動を規制することに利用されるものであるから、運動摩擦係数が大きくなるように構成される必要はなく、小型化可能である。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例である。射出ピストン37はピストンの一例である。移動用電動機61は電動機の一例である。ねじ機構65は変換機構の一例である。ねじ軸75は回転部材の一例である。ナット77は移動部材の一例である。
(変形例)
図5(a)〜図5(f)は、変形例に係る射出装置の要部を示す模式図である。これらの図では、増圧ピストン39及び移動テーブル67等の図示は省略されている。
図5(a)に示すように、移動用電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータ201であってもよい。なお、この場合、リニアモータ201とシリンダ部35との間に伝達機構は不要である。
図5(b)に示すように、回転式の移動用電動機61の回転を直線運動に変換する変換機構は、ねじ機構に限定されない。図5(b)では、変換機構の他の例として、ラック・ピニオン機構203を例示している。ラック・ピニオン機構203は、例えば、シリンダ部35の移動方向に配列された複数の歯を有するラック205と、ラック205に噛み合い、移動用電動機61によって回転されるピニオン207とを有している。この他、特に図示しないが、例えば、リンク機構によって変換機構が構成されてもよい。
図5(c)に示すように、移動用電動機61の回転を直線運動に変換する変換機構がねじ機構65である場合において、ねじ軸75及びナット77の役割は実施形態と逆であってもよい。すなわち、ナット77は、軸方向の移動が規制されるとともに移動用電動機61によって軸回りに回転される。ねじ軸75は、軸方向の移動が許容されるとともにシリンダ部35に固定されており、また、軸回りの回転が規制されている。
上記の図5(b)及び図5(c)に示すように、回転式の移動用電動機61とその回転を直線運動に変換する変換機構との間の伝達機構は省略されてもよい。図5(b)の例では、移動用電動機61の出力軸にピニオン207が固定されている。図5(c)の例では、移動用電動機61の可動子とナット77とが同心状に直接的に固定されている。変換機構が他の形式の機構である場合においても同様に、移動用電動機61の可動子は、変換機構の回転する部材に対して、同心または同軸に固定されてよい。
図5(d)に示すように、停止装置又はブレーキは、摩擦ブレーキに限定されない。図5(d)の例では、ラチェット機構(ワンウェイクラッチ)によって構成されたブレーキ211が示されている。ブレーキ211は、被制動部材としてのラック213と、制動部材としての爪215とを有している。ラック213は、シリンダ部35の移動方向に配列された複数の歯を有している。爪215は、ラック213の歯に係合する係合位置と、当該係合位置からラック213から離れる方向へ退避した位置との間で移動可能である。
上記の図5(d)に示すように、被制動部材(図5(d)ではラック213)は、変換機構(図5(d)ではねじ機構65)の、移動用電動機61によって回転される回転部材(図5(d)ではねじ軸75)に対して共に回転するように連結されるのではなく、シリンダ部35に直線運動を伝達する移動部材(図5(d)ではナット77)に対して共に移動するように連結されていてもよい。
別の観点では、図5(d)に示すように、ブレーキは、シリンダ部35の移動を直接的に制動するものであってもよい。なお、図5(d)では、ラック213は、直接的には、移動テーブル67に固定されているが、シリンダ部35及びナット77に直接的に固定されている場合も、シリンダ部35の移動を直接的に制動するものの範疇に含まれてよい。
なお、特に図示しないが、図5(d)とは逆に、摩擦ブレーキ以外のブレーキにおいて、被制動部材は、移動用電動機61によって回転される回転部材に対して共に回転するように連結される部材であってもよい。例えば、回転式のワンウェイクラッチがねじ機構65の回転部材に取り付けられてもよい。
図5(e)に示すように、ブレーキが摩擦ブレーキである場合においても、図5(d)と同様に、被制動部材223は、移動部材(ナット77)に対して共に移動するように連結された部材であってよい。別の観点では、摩擦ブレーキは、シリンダ部35を直接的に制動するものであってもよい。図5(e)の例では、ブレーキ221は、シリンダ部35の移動方向に延びている被制動部材223と、被制動部材223に当接する位置と、離間する位置との間で移動可能な制動部材225とを有している。
上記の図5(e)に示すように、ブレーキを作動させる(被制動部材及び制動部材の少なくとも一方を駆動する)駆動方式は、電磁式に限定されない。図5(e)の例では、シリンダ227によって制動部材225が駆動されている。シリンダ227は、液圧式のものであってもよいし、気体圧式のものであってもよい。この他、例えば、ボイスコイルモータが用いられてもよい。図5(e)のブレーキ221は、被制動部材223が直線運動する摩擦式のものであるが、回転式のブレーキ及び摩擦式以外のブレーキにおいても同様に、適宜な駆動方式が採用されてよい。
図5(f)に示すように、停止装置は、ブレーキを有さず、停止制御部93のみを有していてもよい。そして、停止制御部93は、高速射出、増圧及び/又は保圧において、移動用電動機61が停止するように移動用電動機61の位置制御を行ってよい。この場合においても、高速射出、増圧及び/又は保圧において移動用電動機61によってシリンダ部35を前進させる場合に比較すれば、簡素な制御が可能であるし、移動用電動機61の負担を軽減することができる。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機(成形機)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。成形材料は、液状のものに限定されず、半凝固金属又は半溶融金属のように固液共存状態のものであってもよい。
射出シリンダに利用される液体は、油に限定されず、例えば水でもよい。プランジャはスクリュー状のものであってもよい。メータイン回路に代えて又は加えて、ヘッド側室への作動液の流量を制御する流量調整弁(メータアウト回路)が設けられてもよい。
射出は、低速射出及び高速射出を有するものに限定されず、例えば、射出開始から増圧開始まで、射出速度が一定であったり、連続的に上昇したりするものであってもよい。また、停止装置又はブレーキを利用する工程は、任意に選択されてよい。例えば、高速射出においてはブレーキを使用せず、増圧及び/又は保圧においてブレーキを使用してもよい。