図1には、本発明の一実施形態による抜け止め装置1の全体構成が示されている。連結ピン50は、ある部材のピン穴と別の部材のピン穴とに挿通されてそれらの部材同士を連結するものであり、本実施形態ではクレーンの上部旋回体の旋回フレーム100の取付部101のピン穴103aと、旋回フレーム100上に搭載されるウインチ105のウインチプレート110のピン穴110aとに挿通されて取付部101とウインチプレート110とを連結するものである。本実施形態による抜け止め装置1は、この連結ピン50がピン穴110a,103aから抜け出すのを阻止するためのものである。
旋回フレーム100は、クレーンの下部本体(図示せず)上に旋回可能に搭載され、ウインチ105がその上に設置されるフレーム本体100aと、そのフレーム本体100a上に設けられた取付部101と、当該旋回フレーム100の幅方向の一端に設けられた側壁104とを有する。
取付部101は、本発明における穴部材の一例である。取付部101は、フレーム本体100aの上面に固定された基部102と、その基部102から上方に突出するように設けられた一対の板状の立設部103とを有する。一対の立設部103は、旋回フレーム100の幅方向においてそれらの間に隙間をあけて配置されている。各立設部103は、その板厚方向が旋回フレーム100の幅方向に一致するように配置されている。各立設部103は、当該立設部103をその板厚方向に貫通するピン穴103aを有する。
側壁104は、旋回フレーム100の幅方向においてフレーム本体100a上のウインチ105及び取付部101の外側に位置している。この側壁104は、フレーム本体100aから上方へ延びている。
ウインチ105は、例えば、起伏ロープの巻き取り/繰り出しを行ってブーム等の起伏部材を起伏させる起伏ウインチや、吊ロープの巻き取り/繰り出しを行ってフック装置及びそれに吊られた吊荷の巻上げ/巻下げを行うウインチ等である。ウインチ105は、ロープを巻き取るウインチドラム111と、当該ウインチドラム111がその中心軸回りに回転可能となるように当該ウインチドラム111を支持するウインチプレート110とを有する。
ウインチドラム111は、その中心軸が旋回フレーム100の幅方向に延びるように配置されている。また、ウインチドラム111は、その中心軸方向の端部に軸部111aを有する。ウインチプレート110は、軸受112を介してウインチドラム111の軸部111aを支持する。ウインチプレート110は、平板状であり、その板厚方向がウインチドラム111の中心軸方向及び旋回フレーム100の幅方向に一致するように配置されている。ウインチプレート110の下端近傍の部位には、当該ウインチプレート110をその板厚方向に貫通するピン穴110aが設けられている。ウインチプレート110は、本発明における穴部材の一例である。
連結ピン50は、丸棒状であり、その中心軸方向がウインチドラム111の中心軸方向及び旋回フレーム100の幅方向に一致するように配置されている。ウインチプレート110の下端近傍の部位は一対の立設部103間に差し込まれ、その部位に設けられたピン穴110aと各立設部103のピン穴103aとに連結ピン50が挿通される。これにより、連結ピン50は、ウインチプレート110と取付部101の一対の立設部103とを連結するようになっている。
旋回フレーム100上には、連結ピン50をピン穴110a,103aに挿脱するための挿脱装置115が設けられている。この挿脱装置115は、油圧シリンダであり、シリンダ本体116と、ピストンロッド117とを有する。ピストンロッド117は、旋回フレーム100の幅方向に延びるとともにその幅方向においてシリンダ本体116に対して進退するようになっている。連結ピン50は、このピストンロッド117の先端に取り付けられている。挿脱装置115は、ピストンロッド117をシリンダ本体116から進出させることによって連結ピン50を前記ピン穴110a,103aに挿通させる一方、ピストンロッド117をシリンダ本体116に退入させることによって連結ピン50をピン穴110a,103aから抜き出させる。
連結ピン50は、その中心軸方向における両端を有している。この連結ピン50の両端のうちの一端は、シリンダ本体116寄りに配置されてピストンロッド117の先端に取り付けられた基端であり、他端が当該連結ピン50の先端である。連結ピン50は、その先端近傍の部位である突出部50aを有する。この突出部50aは、ピン穴110a,103aを通って取付部101の一対の立設部103のうちシリンダ本体116から遠い方の立設部103から突出する部分である。突出部50aは、当該突出部50aをその径方向に貫通する抜け止め穴51を有する。連結ピン50は、この抜け止め穴51が上下方向に延びるように配置される姿勢をとっている。
本実施形態による抜け止め装置1は、ピン穴110a,103aに挿通された連結ピン50がそのピン穴110a,103aから抜け出るのを防止する。この抜け止め装置1は、抜け止め部材2と、固定部12と、固定具4とを有する。
抜け止め部材2は、ピン穴110a,103aに挿通された状態の連結ピン50の抜け止め穴51に挿嵌されてその連結ピン50の中心軸方向における変位を規制し、それによって連結ピン50がピン穴110a,103aから抜け出るのを防止するものである。この抜け止め部材2は、本体部6と、取手部7と、被固定部8とを有する。
本体部6は、細長い直棒状であり、連結ピン50の中心軸方向と直交する方向、具体的には上下方向に延びるように配置される。ピン穴110a,103aからの連結ピン50の抜け止めのために、この本体部6の下端近傍の部位が抜け止め穴51に挿嵌される。
取手部7は、抜け止め部材2の本体部6を抜け止め穴51に挿脱する際に作業者が把持する部分である。取手部7は、本体部6のうち抜け止め穴51に挿通される端部と反対側の端部、すなわち本体部6の上端部に取り付けられている。取手部7は、本体部6と直交する方向において前記反対側の端部の両側に延びている。
被固定部8は、抜け止め部材2を抜け止め位置又は離脱位置で固定するときに固定部12に固定される部分である。この被固定部8は、平板状であり、本体部6の外周面から突出するようにその外周面に設けられている。被固定部8は、その板面が本体部6の中心軸と平行になるように配置されている。被固定部8には、当該被固定部8をその板厚方向に貫通する穴8aが設けられている。
固定部12は、抜け止め部材2を抜け止め位置(図1及び図2参照)と離脱位置(図3参照)のいずれか一方の位置で固定するために固定具4を介して被固定部8が固定されるものである。抜け止め位置は、抜け止め部材2がピン穴110a,103aから連結ピン50が抜け出るのを防止する当該抜け止め部材2の位置であり、本体部6の下端近傍の部位が抜け止め穴51に挿嵌される当該抜け止め部材2の位置である。この抜け止め位置において、抜け止め部材2は、ウインチドラム111の中心軸Aよりも上の位置まで延びており、当該抜け止め部材2の取手部7はウインチドラム111の中心軸Aよりも上、具体的にはウインチプレート110の上端よりも上に配置されている。
離脱位置は、抜け止め部材2によるピン穴110a,103aからの連結ピン50の抜け止めが解除される当該抜け止め部材2の位置であり、本体部6が抜け止め穴51から離脱する当該抜け止め部材2の位置である。抜け止め部材2の離脱位置は、抜け止め位置よりも上方の位置である。
固定部12は、平板状であり、旋回フレーム100の側壁104の内側面から突出するようにその内側面に固定されている。すなわち、固定部12は、抜け止め部材2、連結ピン50、取付部101及びウインチプレート110以外の部材に設けられている。固定部12は、連結ピン50の中心軸方向と直交する上下方向に延びるように配置されている。固定部12は、前記抜け止め位置に配置された抜け止め部材2が連結されてその抜け止め部材2をその抜け止め位置で固定するための抜け止め位置固定部14と、前記離脱位置に配置された抜け止め部材2が連結されてその抜け止め部材2をその離脱位置で固定するための離脱位置固定部16とを有する。
抜け止め位置固定部14は、固定部12の下部に位置している。この抜け止め位置固定部14は、当該抜け止め位置固定部14をその板厚方向に貫通する抜け止め位置固定穴14aを有する。抜け止め位置固定穴14aは、抜け止め部材2が抜け止め位置に配置された状態で被固定部8の穴8aと同心となる位置に配置されている。抜け止め位置固定部14は、ウインチドラム111の中心軸Aよりも上の位置に配置されている。旋回フレーム100の側壁104とウインチ105との間の空間においてウインチドラム111の中心軸Aよりも下の領域では、図示していない配管等が存在してスペースが小さいため、抜け止め部材2を固定したり、操作したりする作業を行うことが困難である。これに対し、側壁104とウインチ105との間の空間においてウインチドラム111の中心軸Aよりも上の領域では、配管等が存在せず、比較的広いスペースを確保可能であり、抜け止め部材2を固定したり、操作したりする作業の作業性が良い。
離脱位置固定部16は、固定部12の上部に位置している。離脱位置固定部16は、抜け止め位置固定部14の上方にその抜け止め位置固定部14から間隔をあけて配置されている。この離脱位置固定部16は、当該離脱位置固定部16をその板厚方向に貫通する離脱位置固定穴16aを有する。離脱位置固定穴16aは、抜け止め部材2が離脱位置に配置されたときに被固定部8の穴8aと同心となる位置に配置されている。
固定具4は、抜け止め部材2の被固定部8を抜け止め位置固定部14又は離脱位置固定部16に固定するためのものである。本実施形態では、固定具4はスプリングピンである。固定具4は、挿通部4aと、外れ止め部4bとを有する。
挿通部4aは、抜け止め部材2が抜け止め位置に配置されたときに被固定部8の穴8aと抜け止め位置固定穴14aに挿通されることによってその抜け止め部材2を抜け止め位置に固定する一方、抜け止め部材2が離脱位置に配置されたときに被固定部8の穴8aと離脱位置固定穴16aに挿通されることによってその抜け止め部材2を離脱位置に固定する。
外れ止め部4bは、被固定部8の穴8aと抜け止め位置固定穴14a又は離脱位置固定穴16aに挿通された挿通部4aがそれらの穴から抜け出して固定具4が被固定部8と抜け止め位置固定部14又は離脱位置固定部16から外れるのを防止するための部分である。この外れ止め部4bは、挿通部4aのうち抜け止め位置固定穴14a又は離脱位置固定穴16aを通って固定部12から突出した部分に掛けられるフック状のものである。挿通部4aの固定部12から突出した部分に掛けられた外れ止め部4bをその突出した部分から外すことによって挿通部4aを抜け止め位置固定穴14a又は離脱位置固定穴16a及び被固定部8の穴8aから抜き出すことが可能となっている。
本実施形態による抜け止め装置1は、以上のように構成されている。
クレーンを保管場所から例えば作業現場等へ輸送する際には、一般的に、ウインチ105を旋回フレーム100から取り外して輸送し、輸送後、作業現場等にて旋回フレーム100上にウインチ105を搭載して固定する。
この過程において、ウインチ105を旋回フレーム100上に搭載して固定する際には、挿脱装置115によりウインチプレート110のピン穴110aと取付部101の各立設部103の穴103aに連結ピン50を挿通させる。その後、作業者が抜け止め部材2の取手部7を把持してその抜け止め部材2の本体部6を連結ピン50の突出部50aの抜け止め穴51に上方から挿嵌し、その抜け止め部材2を抜け止め位置(図2参照)に配置する。これにより、連結ピン50がピン穴110a,103aから抜け出すのを阻止できる。そして、この際、抜け止め部材2の被固定部8の穴8aが抜け止め位置固定穴14aと同心となるようにその穴8aを抜け止め位置固定穴14aに対して位置合わせし、その穴8aと抜け止め位置固定穴14aに固定具4の挿通部4aを挿通する。そして、外れ止め部4bを挿通部4aに掛けて固定具4が被固定部8と抜け止め位置固定部14から外れるのを防止する。これにより、抜け止め部材2が抜け止め位置で固定される。
一方、ウインチ105を旋回フレーム100から取り外す際には、外れ止め部4bを挿通部4aから外し、その挿通部4aを被固定部8の穴8aと抜け止め位置固定穴14aから抜き出して固定具4を被固定部8及び抜け止め位置固定部14から取り外す。その後、作業者が、取手部7を把持して抜け止め部材2を引き上げ、本体部6を連結ピン50の抜け止め穴51から抜き出す。これにより、連結ピン50はその中心軸方向に移動可能となる。そして、挿脱装置115により連結ピン50をピン穴110a,103aから抜き出す。これにより、ウインチプレート110が旋回フレーム100の取付部101から分離可能となり、ウインチ105を旋回フレーム100から取り外す。
前記のように本体部6を抜け止め穴51から抜き出すように引き上げた抜け止め部材2は、離脱位置(図3参照)に配置し、被固定部8の穴8aが離脱位置固定穴16aと同心となるようにその穴8aを離脱位置固定穴16aに対して位置合わせする。そして、その穴8aと離脱位置固定穴16aに固定具4の挿通部4aを挿通し、外れ止め部4bを挿通部4aに掛けて固定具4が被固定部8と離脱位置固定部16から外れるのを防止する。これにより、抜け止め部材2が離脱位置で固定される。
本実施形態による抜け止め装置1では、抜け止め位置に配置された抜け止め部材2をその位置で固定するための抜け止め位置固定部14が、抜け止め部材2、連結ピン50、取付部101及びウインチプレート110以外の部材である旋回フレーム100の側壁104に設けられているため、取付部101のうちピン穴103aが設けられた部位及びウインチプレート110のうちピン穴110aが設けられた部位の周囲のスペースが狭くてそのスペースでの作業が困難な場合であっても、そのピン穴110a,103aが設けられた部位の周囲から離れて広いスペースを確保可能な位置で固定部14に抜け止め部材2を固定することができる。
具体的に、クレーンの旋回フレーム100上において、その旋回フレーム100の取付部101のうちピン穴103aが設けられた部位及びウインチプレート110のうちピン穴110aが設けられた部位の周囲のスペースは配管等の存在により非常に狭く、そのスペースでの作業は困難である。しかしながら、本実施形態の構成によれば、その狭いスペースから離れた旋回フレーム100の側壁104に抜け止め位置固定部14が設けられており、この抜け止め位置固定部14に、抜け止め位置に配置した抜け止め部材2を固定することができるため、比較的広いスペースでその固定作業を行うことができる。従って、本実施形態では、旋回フレーム100の取付部101のピン穴103a及びウインチプレート110のピン穴110aからの連結ピン50の抜け止めをしている抜け止め部材2が当該連結ピン50から離脱しないように当該抜け止め部材2を固定する作業性を向上できる。
また、本実施形態では、抜け止め部材2を離脱位置固定部16に固定することで、離脱位置に配置された抜け止め部材2をその位置に固定できるため、離脱位置から抜け止め位置への抜け止め部材2の意図しない移動を防ぐことができる。すなわち、抜け止め部材2が重力で勝手に離脱位置から抜け止め位置へ降下するのを防ぐことができる。このため、連結ピン50をピン穴110a,103aに挿通する前に抜け止め部材2が離脱位置から抜け止め位置へ降下して、その抜け止め部材2がピン穴110a,103aに連結ピン50を挿通して規定の位置まで進出させる作業の邪魔になるのを防ぐことができる。
本発明による抜け止め装置は、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。本発明による抜け止め装置の構成として、例えば以下のような構成を採用可能である。
例えば、図4に示す第1変形例のように、抜け止め部材2は、連結ピン50の外周面に形成された周溝52に嵌合して連結ピン50がピン穴110a,103aから抜け出るのを阻止するものであってもよい。
具体的に、この第1変形例では、図5及び図6に示すように、連結ピン50の先端近傍の突出部50aは、連結ピン50の軸心を中心とした当該連結ピン50の周方向に延びるように突出部50aの外周面に形成された周溝52を有する。この周溝52は、突出部50aの全周に亘っている。なお、突出部50aは、連結ピン50の先端近傍の部位であり、前記実施形態における突出部50aと同様の部位である。
また、この第1変形例による抜け止め部材2の離脱位置から抜け止め位置への移動方向は、前記実施形態と同様、連結ピン50の軸心に対して直交する直交方向である。そして、図7に示すように、この第1変形例による抜け止め部材2は、直棒状の本体部6の下端部に取り付けられた嵌合部22を有する。嵌合部22は、連結ピン50の軸心に対して直交する直交方向において突出部50aの外側から周溝52に嵌まり込むことが可能に構成されている。この嵌合部22は、平板状であり、下端が開放された凹部23を有する。この凹部23の上部は、連結ピン50の周溝52内の外周面に沿う湾曲した形状を有しており、嵌合部22が周溝52に嵌め込まれたときに周溝52内の外周面に対してその周方向に連続して接触する。連結ピン50がピン穴110a,103aに挿通された状態で抜け止め部材2が離脱位置から抜け止め位置に移動されることによって凹部23に連結ピン50の周溝52内の外周面が嵌合するように嵌合部22が周溝52に外側から嵌まり込むようになっている。
この第1変形例によれば、連結ピン50の周方向のいずれの位置でも抜け止め部材2の嵌合部22を周溝52に嵌め込むことができる。このため、連結ピン50の意図しない周方向への回転が生じた場合であっても、その連結ピン50の周溝52に抜け止め部材2の嵌合部22を嵌合させて連結ピン50のピン穴110a,103aからの抜け止めを行うことができる。
また、この第1変形例では、周溝52の周方向に連続する広い範囲で嵌合部22を周溝52に嵌合させることができるので、連結ピン50の周溝52内の部分と嵌合部22のうち周溝52内に嵌まり込む部分とにかかる負荷を広く分散させることができる。このため、嵌合部22及び連結ピン50の周溝52内の部分の損耗を抑制できる。
また、抜け止め部材2が前記第1変形例のような嵌合部22を有する場合において、必ずしもその嵌合部22が直棒状の本体部6の下端部に取り付けられる構成でなくてもよい。例えば、図8に示す第2変形例のように、抜け止め部材2の本体部6が嵌合部22と一体で連続した板体であってもよい。
この第2変形例によれば、抜け止め部材2の本体部6と嵌合部22を一連の板材で形成することができるため、その抜け止め部材2の製造に要する材料の数を削減できる。
また、図9及び図10に示す第3変形例のように、抜け止め装置1は、抜け止め部材2を抜け止め位置と離脱位置との間で案内するように当該抜け止め部材2を保持する保持部26を備えていてもよい。
保持部26は、図9及び図10に示すように円筒状であり、上下方向に延びるように旋回フレーム100の側壁104の内側面に固定されている。当該第3変形例の抜け止め部材2は、前記第1実施形態の抜け止め部材2と同様のものであり、その本体部6が保持部26に挿通されている。これにより、抜け止め部材2は、保持部26により上下方向に案内されて抜け止め位置と離脱位置との間で移動可能となっている。
この第3変形例によれば、抜け止め部材2を保持部26によって案内しながら離脱位置から抜け止め位置へ移動させることができる。このため、抜け止め部材2を離脱位置から抜け止め位置へ移動させるときに抜け止め部材2にブレが生じてその抜け止め部材2を連結ピン50の突出部50aに結合させにくくなるのを抑制できる。すなわち、抜け止め部材2の本体部6を突出部50aの抜け止め穴51に挿通させにくくなるのを抑制できる。
また、図11及び図12に示す第4変形例のように、抜け止め装置1が前記第2変形例と同様の板状の抜け止め部材2を有する構成において、抜け止め装置1は、その板状の抜け止め部材2を抜け止め位置と離脱位置との間で案内するように当該抜け止め部材2を保持する枠状の保持部30を備えていてもよい。
この第4変形例における保持部30は、旋回フレーム100の側壁104の内側面に固定されている。保持部30は、旋回フレーム100の幅方向に直交する旋回フレーム100の前後方向において互いに間隔をあけて配置された一対の保持材31を有する。
各保持材31は、第1規制部31aと、第2規制部31bとを有する。
第1規制部31aは、側壁104の内側面から旋回フレーム100の幅方向内側へ突出するようにその内側面に固定されている。この第1規制部31aは、旋回フレーム100の前後方向への抜け止め部材2の移動を規制するものである。
一方の保持材31の第2規制部31bは、その一方の保持材31の第1規制部31aの突出端から他方の保持材31へ向かって延びており、他方の保持材31の第2規制部31bは、その他方の保持材31の第1規制部31aの突出端から前記一方の保持材31へ向かって延びている。第2規制部31bは、側壁104の内側面から離れる方向への抜け止め部材2の移動を規制するものである。
抜け止め部材2は、一対の保持材31の第1規制部31a間で且つ側壁104の内側面と一対の保持材31の第2規制部31bとの間で保持される。これにより、抜け止め部材2は、保持部30により上下方向に案内されて抜け止め位置と離脱位置との間で移動可能となっている。
この第4変形例によれば、抜け止め部材2を保持部30によって案内しながら離脱位置から抜け止め位置へ移動させることができる。このため、抜け止め部材2を離脱位置から抜け止め位置へ移動させるときに抜け止め部材2にブレが生じてその抜け止め部材2の嵌合部22を連結ピン50の突出部50aの周溝52に嵌合させにくくなるのを抑制できる。
また、本発明による抜け止め装置は、前記のようにウインチプレートをクレーンの旋回フレームに連結する連結ピンの抜け止めに適用されるものに限定されない。すなわち、ピン穴が設けられた穴部材とその穴部材のピン穴に挿通されるピンとを備える様々な機械において、本発明による抜け止め装置をピン穴からのピンの抜け止めのために適用することが可能である。
また、本発明による抜け止め装置がクレーンに適用される場合において、当該抜け止め装置は、例えば、クレーンのブームを起伏させるための起伏装置の下部スプレッダを旋回フレームに連結する連結ピンの抜け止めをするものであってもよい。図13には、このような形態の第5変形例による抜け止め装置が適用される起伏装置122を備えたクレーン150の全体構成が示されている。また、図14は、当該第5変形例による抜け止め装置1及びその周辺部を後方から見た図である。
図13に示すように、クレーン150の旋回フレーム100の前端部には、ブーム121が取り付けられている。このブーム121は、その先端部から吊作業用のフック装置123が吊り下げられるものである。クレーン150は、このブーム121を起伏させるための起伏装置122を備えている。
起伏装置122は、マスト125と、ガイライン126と、起伏ウインチ128と、上部スプレッダ132と、下部スプレッダ134とを有する。
マスト125は、ブーム121の後側に配置されており、旋回フレーム100に取り付けられた基端部を有する。マスト125は、その基端部を中心として旋回フレーム100の幅方向に延びる軸回りに回動可能となっている。ガイライン126は、このマスト125の先端部とブーム121の先端部とを繋いでいる。
上部スプレッダ132は、マスト125の先端部に設けられており、複数のシーブを有する。また、下部スプレッダ134は、旋回フレーム100の後部に設置されており、複数のシーブ136(図14参照)を有する。
起伏ウインチ128は、旋回フレーム100上に搭載されており、この起伏ウインチ128から延びる起伏ロープ129が上部スプレッダ132の複数のシーブと下部スプレッダ134の複数のシーブ136とに複数回掛け回されている。起伏ウインチ128は、起伏ロープ129を巻き取ることにより、上部スプレッダ132を下部スプレッダ134へ接近させ、それによってマスト125を後下向きに回動させることでブーム121の先端部をガイライン126を介して後方へ引っ張ってブーム121を起立させる。また、起伏ウインチ128は、起伏ロープ129を繰り出すことにより、上部スプレッダ132が下部スプレッダ134から離れることを許容し、それによってブーム121の先端部をガイライン126を介してマスト125によって後方から支持しつつ当該ブーム121を倒伏させる。
以上のような構成の当該第5変形例におけるクレーン150において、図14に示すように、旋回フレーム100のフレーム本体100aの後部上に、前記実施形態の取付部101及び挿脱装置115と同様の取付部101及び挿脱装置115が設けられている。また、当該第5変形例における旋回フレーム100の構成は、前記実施形態における旋回フレーム100の構成と同様である。
下部スプレッダ134は、図14に示すように、前記複数のシーブ136に加えて、当該複数のシーブ136が回転可能となるようにそれらのシーブ136を支持する軸138と、その軸138が旋回フレーム100の幅方向に延びるように当該軸138を支持する一対の支持プレート140とを有する。なお、図14では、旋回フレーム100の幅方向において下部スプレッダ134の中央近傍から片側の部位を部分的に示しているため、一対の支持プレート140のうち片側のもののみが図示されており、もう一方の支持プレート140の図示は省略されている。一対の支持プレート140は、旋回フレーム100の幅方向において互いに間隔を空けて配置されている。また、支持プレート140は、本発明における穴部材の一例である。
各支持プレート140の一端近傍の部位には、その部位を支持プレート140の厚み方向に貫通する穴が設けられており、この穴に軸138が挿通されることで各支持プレート140に軸138が結合されている。また、各支持プレート140の他端近傍の部位には、連結ピン50が挿通されるピン穴140aが設けられている。この支持プレート140の他端近傍の部位が旋回フレーム100の取付部101の一対の立設部103間に差し込まれ、その部位に設けられたピン穴140aと各立設部103のピン穴103aとに連結ピン50が挿通される。これにより、支持プレート140と取付部101の一対の立設部103とが連結ピン50によって連結されるようになっている。
そして、この第5変形例による抜け止め装置1は、前記ピン穴140a,103aに挿通された連結ピン50がそれらのピン穴140a,103aから抜け出るのを防止する。この抜け止め装置1は、抜け止め部材2と、固定部12と、固定具4とを有する。これらの抜け止め部材2、固定部12及び固定具4は、前記実施形態における抜け止め部材2、固定部12及び固定具4と同様のものである。また、この第5変形例では、固定部12は、旋回フレーム100の後部の側壁104に設けられている。具体的には、固定部12は、旋回フレーム100の後部の側壁104の内側面から突出するようにその内側面に固定されている。
この第5変形例では、前記実施形態と同様に、抜け止め部材2が抜け止め位置に配置されてその抜け止め部材2の本体部6が連結ピン50の抜け止め穴51に挿通されることにより連結ピン50がピン穴140a,103aから抜け出すのが阻止され、その抜け止め位置に配置された抜け止め部材2が固定具4によって固定部12の抜け止め位置固定部14に固定されることで当該抜け止め部材2は抜け止め位置に固定されるようになっている。
旋回フレーム100上において、取付部101と下部スプレッダ134の支持プレート140のピン穴140aが設けられた部位の周囲のスペースは非常に狭く、そのスペースでの作業は困難である。しかし、この第5変形例の構成によれば、その狭いスペースから離れた旋回フレーム100の側壁104に設けられた抜け止め位置固定部12に、抜け止め位置に配置した抜け止め部材2を固定することができるため、比較的広いスペースでその抜け止め部材2の固定作業を行うことができる。従って、この第5変形例では、クレーン150において、旋回フレーム100の取付部101のピン穴103a及び下部スプレッダ134の支持プレート140のピン穴140aからの連結ピン50の抜け止めをしている抜け止め部材2が当該連結ピン50から離脱しないように当該抜け止め部材2を固定する作業性を向上することができる。
この第5変形例の前記以外の構成は、前記実施形態の構成と同様である。
また、第5変形例において、抜け止め部材2及び連結ピン50の構成として、前記第1変形例や前記第2変形例の抜け止め部材2及び連結ピン50の構成を採用してもよい。
また、第5変形例において、前記第3変形例の保持部26を採用してもよく、前記第4変形例の抜け止め部材2、連結ピン50及び保持部30を採用してもよい。
また、第5変形例において、抜け止め部材2は、ピン穴140a,103aに挿通された連結ピン50から後方に延びるように配置されてもよい。この場合には、抜け止め穴51が旋回フレーム100の前後方向に延びるように連結ピン50を配置し、前後方向に延びる抜け止め部材2の本体部6をその抜け止め穴51に挿通して連結ピン50の抜け止めをすればよい。
そして、この構成において、固定部12は、旋回フレーム100の取付部101の後方の側壁104に設ければよい。第5変形例において取付部101が設けられた旋回フレーム100の後部の後方の周辺領域はオープンな空間になっているため、この構成によれば、抜け止め位置に配置した抜け止め部材2を抜け止め位置固定部14に固定する作業をそのオープンな空間から行うことができる。このため、抜け止め部材2を抜け止め位置で固定する作業性を向上できる。
また、抜け止め部材を固定部に固定するための固定具は、前記のようなスプリングピンに必ずしも限定されない。例えば、固定具として、スプリングピン以外のピンや、ボルトなどを用いることが可能である。
また、前記実施形態では、抜け止め位置固定部14と離脱位置固定部16は一体に形成された固定部12の各部分であるが、抜け止め位置固定部と離脱位置固定部は別体で互いに離間して設けられていてもよい。