JP2018145122A - Activatable型光音響プローブ - Google Patents
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Abstract
Description
[1]以下の一般式(I):
(式中、
R1は、水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし4個の同一又は異なる置換基を示し:
R2a及びR2bは、それぞれ独立に、水素、スルホ基、アルコキシ基、アミノ基、リン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はチオール基から選択され;
R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示し;
R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示し;
R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を示し;
R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を示し;
R7及びR9は、一緒になってR7が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成していてもよく;
R8及びR10は、一緒になってR8が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成していてもよく;
xは、酸素原子、Si(Ra)(Rb)、C(Ra)(Rb)、P(=O)Rc、SO2、Ge(Ra)(Rb)、テルル原子又はセレン原子から選択され、
ここで、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1〜6個のアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、Rcは、炭素数1〜6個のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基であり;
yは、酸素原子、硫黄原子、NR、NPh(o−NH2)、C=N+=N−、又はセレン原子から選択され、
ここで、Rは、水素又は有機基を表し、Phはフェニル基を表し;
wは、炭素数1〜3の置換されていてもよいアルキレン基、C=O、SO2、又はC=Sから選択され、
ここで、wがC=O、SO2又はC=Sの場合は、これらの基のC(炭素原子)又はS(硫黄原子)に、1又は2個の置換されていてもよいメチレン基、あるいは1つの置換されていてもよいエチレン基が結合して6又は7員環を形成してもよい;
で表される化合物又はその塩。
[2]R7及びR8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又はプロピル基である、[1]に記載の化合物又はその塩。
[3]R7及びR8は何れもメチル基である、[1]又は[2]に記載の化合物又はその塩。
[4]R7及びR9は、一緒になってR7が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成しており、R8及びR10は、一緒になってR8が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成していている、[1]に記載の化合物又はその塩。
[5]前記ヘテロシクリルがピロリジンである、[4]に記載の化合物又はその塩。
[6]R2a及びR2bは何れもスルホ基である、[1]〜[5]の何れか1項に記載の化合物又はその塩。
[7]xがSi(Ra)(Rb)である、[1]〜[6]の何れか1項に記載の化合物又はその塩。
[8]yは硫黄原子であり、wは、炭素数1〜3の置換されていてもよいアルキレン基又はC=Oである、[1]〜[7]の何れか1項に記載の化合物又はその塩。
[9]wはメチレン基である、[8]に記載の化合物又はその塩。
[10][1]〜[9]の何れか1項に記載の化合物又はその塩を含有する光音響プローブ。
[11][8]又は[9]に記載の化合物又はその塩を含有するHClO検出光音響プローブ。
[12][10]に記載の光音響プローブを用いる光音響イメージング方法であって、生体分子にプローブ分子を結合させ、これに光を照射して前記プローブ分子からの光音響シグナルを検出することを含む、前記方法。
を提供するものである。
また、本発明により、高い感度及び特異性を持ってHClOを検出することが可能なactivatable型HClO検出光音響プローブを提供することができる。
これらの一価の置換基は更に任意の置換基を1個又は2個以上有していてもよい。例えば、R1が示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR1が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、又はアミノアルキル基などであってもよい。また、例えばR1が示すアミノ基には1個又は2個のアルキル基が存在していてもよく、R1が示すアミノ基はモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。更に、R1が示すアルコキシ基が置換基を有する場合としては、例えば、カルボキシ置換アルコキシ基又はアルコキシカルボニル置換アルコキシ基などが挙げられ、より具体的には4−カルボキシブトキシ基又は4−アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基などを挙げることができる。
本発明の1つの好ましい側面においては、R2a及びR2bは何れもスルホ基である。また、本発明の1つの好ましい側面においては、R2a及びR2bとして、各ベンゼン環のパラ位に1つのスルホ基が結合する。
R3又はR4がアルキル基を示す場合には、該アルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR3又はR4が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが好ましく、R3及びR4がともに水素原子である場合、又はR3及びR4がともにフッ素原子又は塩素原子である場合がより好ましい。
R7及びR9が、一緒になってR7が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成しており、R8及びR10が、一緒になってR8が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成している構造であると、本発明の化合物は、700nmを超える近赤外領域に吸収・蛍光波長を有することが可能であり、このような波長領域の光はヘモグロビンの吸収が少ないため生体内透過性に優れ、生体深部の観察が可能となり好ましい。
本発明の好ましい態様においては、xは、Si(Ra)(Rb)である。
合成上の導入のし易さの点から、Rcは、好ましくはメチル基又はフェニル基である。また、Rcがメチル基である方が水溶性は高いため、より好ましい。
ここで、アルキレン基が有することができる置換基としては、炭素数1〜6個のアルキル基が挙げられる。アルキレン基としては、置換されていてもよいメチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基である。
即ち、wがC=Oの場合の実施態様には、(i)C(RdRe)C=O及び(C=O)C(RdRe)(即ち、wとyとが一緒になって6員環を形成する)、(ii)C(RdRe)(C=O)C(RfRg)、C(RdRe)C(RfRg)C=O及び(C=O)C(RdRe)C(RfRg)(即ち、wとyとが一緒になって7員環を形成する)も含まれる。
同様に、wがSO2の場合の実施態様には、(i)C(RdRe)SO2及び(SO2)C(RdRe)(wとyとが一緒になって6員環を形成する)、(ii)C(RdRe)(SO2)C(RfRg)、C(RdRe)C(RfRg)SO2及び(SO2)C(RdRe)C(RfRg)(wとyとが一緒になって7員環を形成する)も含まれる。
wがC=Sの場合の実施態様には、(i)C(RdRe)C=S及び(C=S)C(RdRe)(wとyとが一緒になって6員環を形成する)、(ii)C(RdRe)(C=S)C(RfRg)、C(RdRe)C(RfRg)C=S及び(C=S)C(RdRe)C(RfRg)(wとyとが一緒になって7員環を形成する)も含まれる。
ここで、Rd、Re、Rf及びRgは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を表す。
以下の説明においては、特段の定めがない限りは、wがC=O、SO2又はC=Sである場合は、これらの基のC(炭素原子)あるいはS(硫黄原子)に1又は2個の置換されていてもよいメチレン基、あるいは1つの置換されていてもよいエチレン基が結合して6又は7員環を形成する場合も含まれる。
この実施形態における化合物又はその塩は、HClOとの反応性が高いことから、有効なactivatable型HClO検出光音響プローブを提供することができる。
ここで、wとy部分(C(=O)NR)が金属イオンを捕捉(キレート)する構造を形成する。C(=O)NRにより形成される金属イオンを捕捉(キレート)する構造については、例えば、Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 1465-1472等を参照して選択することができる。具体例として、RがNH2の場合、Cu2 +を捕捉することができる。
ここで、例えば、RがNH2である場合水銀イオンの検出に有効である。
この実施形態における化合物又はその塩は、水素イオンと反応して5〜7員環が開環することから、有効なactivatable型プロトン検出光音響プローブを提供することができる。
ここで、例えば、Rは水素又はアルキル基(メチル基等)が好ましい。
この実施形態における化合物又はその塩は、硫化水素、CN−と反応して5〜7員環が開環することから、これら化合物を有効に検出するactivatable型光音響プローブを提供することができる。
R1=H、COOH又はCONHR’(R’はアルキル基)
R2=H、SO3H、OMe、NH2、OH、SH
X=O、SiMe2、P(=O)Me、P(=O)Ph、SO2、Te、Ge(Me2)又はSe
y、z=O、NR(Rは水素又は有機基)、S、C=N+=N−、Se又はNPh(o−NH2)
(1)光音響顕微鏡
オリンパス製の光音響顕微鏡を使用した。この光音響顕微鏡は、671nmのパルスレーザー(パルス幅:15ns、パルス反復速度:10kHz、パルスエネルギー:1.0μJ又は2.0μJ)を照射し、超音波変換器(中央振動数:5MHz)を備えている。なお、光音響顕微鏡はこれに限らずに同種の機器も使用することができる。
予備検討:モデル化合物による光音響シグナル変換効率の比較
実施例において、671nmの光で励起を行う光音響顕微鏡を使用することから、この波長付近に吸収のピークトップを持つ3種類の色素SiR650、SiNQ660 Sulfo、Cy5(図1A)を合成し、その光音響シグナル変換効率の比較を行うことで光音響プローブとして最適な色素骨格の検討を行った。このうち、SiNQ660 SulfoはSi−ローダミン(SiR)の3、6位のN原子にPh基が結合した構造をしており、このような構造を有するN−PhSiR類は無蛍光性を示すことが知られている(J. Am. Chem. Soc., 2015, 137, 4759-4765.)。
図1Aに、3種類の色素の化学式と、共溶媒として0.1%DMSOを含有し、0.05%TFAを含有するH2O/EtOH=1/1中で各色素のλex、λem及びΦflを示す。ここで、SiR650のΦflを絶対蛍光量子収率として決定し、SiNQ660 Sulfo及びCy5のΦflは、参照として0.05%TFAを含有するH2O/EtOH=1/1中のSiR650のΦfl(0.50)を用いて決定した相対蛍光量子収率である。
図1Aに示すように、実際に、SiNQ660 SulfoはΦfl<0.001となり無蛍光性を示した。一般的に、光音響シグナルは光によって励起された物質の無輻射失活によって生じるとされており、蛍光量子収率は低いほうがより効率的に光音響シグナルを放出すると考えられている。このため、本発明者等は、SiNQ660 Sulfoが3種の色素の中で最も効率よく光音響シグナルを放出するのではないかと予想した。
実験は、H2O/EtOH=1/1 with 0.05%TFA中に溶解させた色素を内径1mmのシリコンチューブに詰め、671nmの光で励起した際の光音響シグナルを比較することで行った。濃度に関しては、SiR650 は100μMで調整し、SiNQ660 Sulfo及びCy5については、励起波長である671nmでSiR650と同じ吸光度を持つように濃度を調整した。671nmにおいて同じ吸光度を持つように調整した3種の色素について光音響イメージングを行ったところ、SiR類の3、6位のN原子にPh基を結合させたSiNQ660 Sulfoにおいて最も強い光音響シグナルが放出されることが明らかとなった(図1B及び1C)。
光音響イメージングは、671nmのパルスレーザー(パルス幅:15ns、パルス反復速度:10kHz、パルスエネルギー:2.0μJ)及び超音波変換器(中央振動数:5MHz)を用いて行った。
また、図1Bの各々の光音響イメージング中の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度をイメージJで計算した。図1Bの光音響イメージングの外側の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度は、バックグラウンドシグナルとして各光音響シグナルから差し引いた。
以下のスキーム1により、本発明の化合物である化合物9(PA−ROS)(4,4’−((5’,5’−ジメチル−3H,5’H−スピロ[ベンゾ[c]チオフェン−1,10’−ジベンゾ[b,e]シリン]−3’,7’−ジイル)ビス(メチルアザネジル))ジベンゼンスルホン酸)を合成した。
Scheme 1. (a) (i) sec-BuLi / THF, - 78°C (ii) dichlorodimethylsilane, THF, -78°C to r.t. (iii) KMnO4 / CH3CN, 0 °C, y. 28% (b) Pd(PPh3)4, 1,3-dimethylbarbituric acid / CH2Cl2, 35°C, y. 87% (c) NaNO2 / MeOH, H2SO4 aq., 0°C to reflux, y. 59%, (d) N-phenyltrifluoromethanesulfonimide, DIEA / DMF, r.t., y. 80% (e) N-methylaniline, Cs2CO3, Pd2(dba)3, Xantphos / toluene, 100°C, y. 55% (f) (i) chlorosulfuric acid, / CH2Cl2, 0°C (ii) triisopropyl orthoformate / 2-propanol, 55°C, y. 66% (g) (i) sec-BuLi / THF, - 78°C (ii) 7, THF, -78°C to r.t. (iii) 2N HCl, CH3CN, reflux, y. 38%.
文献(Chem. Commun., 2011, 47, 4162-4164.)に従って合成した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.41 (s, 6H), 4.02 (d, J = 4.4 Hz, 8H), 5.18 (d, J = 2.9 Hz, 4H), 5.18-5.23 (m, 8H), 5.82-5.94 (m, 4H), 6.80-6.84 (m, 4H), 8.34 (d, J = 8.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ-1.2, 52.6, 113.4, 114.7, 116.6, 133.0, 131.6, 133.0, 140.3, 150.1, 185.0 ; HRMS (ESI+): Calcd for [M+H]+, 429.2362; found, 429.2369 (+0.7 mmu).
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.39 (s, 6H), 4.20 (s, 4H), 6.76 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4Hz, 2H), 6.81 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 8.31 (d, J = 8.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ-1.5, 116.1, 117.5, 131.6, 131.9, 140.9, 149.3, 185.3.; HRMS (ESI+) :Calcd for [M + H]+,269.1110; found, 269.1093 (-1.7 mmu).
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.00 (s, 6H), 4.67 (br s, 2H), 6.55 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 2H) , 6.68 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.86 (d, J = 8.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ -1.6, 118.3, 120.0, 133.3, 133.7, 143.0, 161.9, 187.7.; HRMS (ESI+): Calcd for [M+H]+, 271.0791; found, 271.0792 (+0.1 mmu).
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.59 (s, 6H), 7.49 (dd, J = 8.8 Hz, 2.2 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 2.9 Hz, 2H), 8.54 (d, J = 8.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ -1.9, 118.7 (q, J = 318.9 Hz) 123.2, 125.4, 133.0, 139.9, 142.0, 152.1, 184.8.; HRMS (ESI+): Calcd for [M+H]+,534.9776; found, 534.6760 (-1.6 mmu).
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.38 (s, 6H), 3.42 (s, 6H), 6.93 (dd, J = 8.8, 2.9 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 2.9 Hz, 2H), 7.19-7.27 (m, 6H), 7.39-7.44 (m, 4H), 8.24 (d, J = 8.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ -1.3, 40.4, 116.9, 118.2, 125.4, 125.8, 130.1, 131.3, 131.8, 140.7, 147.9, 151.1, 185.0.; HRMS (Corona ESI+): Calcd for [M+H]+, 449.2049; found, 449.2061 (+1.2 mmu).
1H NMR (300 MHz, CD2Cl2): δ0.44 (s, 6H), 1.27 (d, J = 5.9 Hz, 12H), 3.48 (s, 6H), 4.69 (sep, J = 5.9 Hz, 2H), 7.10-7.15 (m, 4H), 7.34 (dd, J = 8.8 Hz, 2.2 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 2.2 Hz, 2H), 7.74-7.78 (m, 4H), 8.40 (d, J = 8.8 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, CD2Cl2): δ -1.4, 22.9, 40.4, 77.2, 118.3, 124.3, 126.5, 128.4, 129.6, 131.9, 136.4, 141.3, 150.3, 152.4, 185.5.; HRMS (ESI+): Calcd for [M+H]+, 693.2124; found, 693.2135 (+1.1 mmu).
文献(J. Org. Chem., 2000, 65 (3), 900-906.)に従って合成した。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.46 (s, 3H), 0.52 (s, 3H), 3.34 (s, 6H), 4.38 (s, 2H), 6.81 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 8.1 Hz, 4H), 6.99 (dd, J = 8.8, 1.5 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.31-7.42 (m, 4H), 7.49 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 8.8 Hz, 4H).
HRMS (ESI+): Calcd for [M+H]+, 715.1427; found, 715.1425 (-0.2 mmu).
合成したPA ROS(化合物9)がHClOとの反応によりHClO依存的に光音響シグナルを放出するかの検討を行った。プローブ(100μM)とHClO(600μM)をPBS(pH7.4)に溶解させた溶液、プローブ(100μM)のみを溶解させた溶液、及びPBS(pH7.4)の3種の溶液を内径1mmのシリコンチューブに注入し、光音響イメージングを行った。
図3Aは、HClO(600μM)との反応前(左)と反応後(中央)でのPBS(pH7.4)中のPA ROS(100μM)の光音響イメージング、及びPBSのみの光音響イメージング(右)を示す。
光音響イメージングは、671nmのパルスレーザー(パルス幅:15ns、パルス反復速度:10kHz、パルスエネルギー:1.0μJ)及び超音波変換器(中央振動数:5MHz)を用いて行った。
図3Bは、図3Aの各々の光音響イメージング中の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度をイメージJで計算した結果を示す。図3Aの光音響イメージングの外側の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度は、バックグラウンドシグナルとして各光音響シグナルから差し引いた。
図3A及び3Bで示されるように、PA ROS(100μM)とHClO(600μM)をPBS(pH7.4)に加えた溶液からは強い光音響シグナルが観察された一方、プローブのみを注入したシリコンチューブからの光音響シグナルはほとんど観察されなかった。よって、開発したプローブは、分子設計通りにHClOとの反応で671nmにおける吸収が回復し、HClO依存的な光音響シグナルの大きな増大を示すことが分かる。
PA ROSが様々なROSの中でHClOを特異的に検出するかの検討を行った。PBS(pH7.4)中においてPA ROS(100μM)と様々なROS(HClO、HONOO、H2O2、OH・、O2 −、NO)を反応させ、それぞれの溶液をシリコンチューブに詰めその光音響シグナルの比較を行った。
図4Aは、以下の様々なROSを添加した後の、PBS((pH7.4、共溶媒として1%DMSOを含有)中のPA ROS(100μM)の光音響イメージングを示す。ROS:(a)NaOCl溶液(500μM)、(b)ペルオキシ亜硝酸ナトリウム溶液(500μM)、(c)H2O2(500μM)、(d)H2O2(500μM)及びFe(ClO4)2(500μM)(Fenton反応がヒドロキシラジカルを生成)、(e)KO2(500μM)、(f)NOC7(酸化窒素ドナー)(250μM)光音響イメージングは、671nmのパルスレーザー(パルス幅:15ns、パルス反復速度:10kHz、パルスエネルギー:2.0μJ)及び超音波変換器(中央振動数:5MHz)を用いて行った。また、図4Bは、図4Aの各々の光音響イメージング中の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度をイメージJで計算した結果を示す。図4Aの光音響イメージングの外側の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度は、バックグラウンドシグナルとして各光音響シグナルから差し引いた。
図4A及び4Bで示すように、PA ROSはHClOに高い特異性を持って光音響シグナルの増大を示し、様々なROSの中でHClOを特異的に検出することができることが分かった。
PA ROSが酵素反応によって産生されるHClOを検出できるかどうかの検討を行った。MPOは好中球に多く含まれる酵素であり、H2O2及びCl−を基質としてHClOを産生することが知られている(Biochemistry, 2006, 45, 8152-8262.)。PA ROS(100μM)を、MPO(100nM)及びH2O2(500μM)を加えたPBS(pH7.4)中に加えたところ強い光音響シグナルが検出された一方、基質であるH2O2非存在下においては光音響シグナルが検出されなかった。また、MPOの特異的阻害剤として知られる4−アミノ安息香酸ヒドラジド(Biochem. J., 1997, 321, 503-508.)(50μM)の存在下では、光音響シグナルが大きく減少した(図5A及び5B)。
光音響イメージングは、671nmのパルスレーザー(パルス幅:15ns、パルス反復速度:10kHz、パルスエネルギー:2.0μJ)及び超音波変換器(中央振動数:5MHz)を用いて行った。また、図5Aの各々の光音響イメージング中の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度をイメージJで計算した(図5B)。図5Aの光音響イメージングの外側の四角で囲んだ領域の光音響シグナル強度は、バックグラウンドシグナルとして各光音響シグナルから差し引いた。
以上の結果から、PA ROSは酵素反応によって生じるHClOを検出することができることが明らかとなった。
マウス皮下においてPA ROSを用いたHClO依存的な光音響イメージングが可能か検討を行った。イソフルランで麻酔をかけて眠らせたマウスに、20μLの生理食塩水に溶解したPA ROS(final:200μM)をマウスの大腿部に皮下注射し、続いて20μLの生理食塩水に溶解したHClO(final:500μM)を同じ場所に皮下注射した(図6A及び6Bの左側の〇で囲んだ部分)。また、コントロールとして、PA ROSのみ(図6Aの右側の〇で囲んだ部分)、およびHClOのみ(図6Bの右側の〇で囲んだ部分)の皮下注射も行い、生きたマウスの皮下におけるPA ROSの光音響イメージングを行った。
明視野像は注射直後に得られ、光音響イメージは注射後20分して得られた。光音響イメージングは、671nmのパルスレーザー(パルス幅:15ns、パルス反復速度:10kHz、パルスエネルギー:1.0μJ)及び超音波変換器(中央振動数:5MHz)を用いて行った。
実験の結果、PA ROS及びHClOの両方を皮下注射した部位からのみ強い光音響シグナルが検出され、PA ROSのみ、及びHClOのみを皮下注射した部位からは光音響シグナルが検出されなかったことから、実際にPA ROSはマウス皮下においてHClO依存的な光音響イメージングが可能であることが明らかとなった。
Claims (12)
- 以下の一般式(I):
(式中、
R1は、水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし4個の同一又は異なる置換基を示し:
R2a及びR2bは、それぞれ独立に、水素、スルホ基、アルコキシ基、アミノ基、リン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はチオール基から選択され;
R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示し;
R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基又はハロゲン原子を示し;
R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を示し;
R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を示し;
R7及びR9は、一緒になってR7が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成していてもよく;
R8及びR10は、一緒になってR8が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成していてもよく;
xは、酸素原子、Si(Ra)(Rb)、C(Ra)(Rb)、P(=O)Rc、SO2、Ge(Ra)(Rb)、テルル原子又はセレン原子から選択され、
ここで、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1〜6個のアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、Rcは、炭素数1〜6個のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基であり;
yは、酸素原子、硫黄原子、NR、NPh(o−NH2)、C=N+=N−、又はセレン原子から選択され、
ここで、Rは、水素又は有機基を表し、Phはフェニル基を表し;
wは、炭素数1〜3の置換されていてもよいアルキレン基、C=O、SO2、又はC=Sから選択され、
ここで、wがC=O、SO2又はC=Sの場合は、これらの基のC(炭素原子)又はS(硫黄原子)に、1又は2個の置換されていてもよいメチレン基、あるいは1つの置換されていてもよいエチレン基が結合して6又は7員環を形成してもよい;
で表される化合物又はその塩。 - R7及びR8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又はプロピル基である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
- R7及びR8は何れもメチル基である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
- R7及びR9は、一緒になってR7が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成しており、R8及びR10は、一緒になってR8が結合している窒素原子を含む4〜7員のヘテロシクリルを形成していている、請求項1に記載の化合物又はその塩。
- 前記ヘテロシクリルがピロリジンである、請求項4に記載の化合物又はその塩。
- R2a及びR2bは何れもスルホ基である、請求項1〜5の何れか1項に記載の化合物又はその塩。
- xがSi(Ra)(Rb)である、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物又はその塩。
- yは硫黄原子であり、wは、炭素数1〜3の置換されていてもよいアルキレン基又はC=Oである、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物又はその塩。
- wはメチレン基である、請求項8に記載の化合物又はその塩。
- 請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物又はその塩を含有する光音響プローブ。
- 請求項8又は9に記載の化合物又はその塩を含有するHClO検出光音響プローブ。
- 請求項10に記載の光音響プローブを用いる光音響イメージング方法であって、生体分子にプローブ分子を結合させ、これに光を照射して前記プローブ分子からの光音響シグナルを検出することを含む、前記方法。
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- 2017-03-02 JP JP2017039786A patent/JP2018145122A/ja active Pending
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