JP2018141821A - レーザ光源およびレーザレーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザ光の周波数の線形掃引性を向上させる。【解決手段】レーザ光源1は、単一モードの光を出力する光増幅器50と、単一モードの光を多モードの光に変換し鏡像を形成しつつ干渉させ、干渉後の多モードの光を単一モードの光に変換して出力する多モード干渉導波路、および鏡像が形成される位置に複数のチャネルを有する光変調器42とを備え、光変調器42が、光増幅器50から出力された光の経路上に配置される。【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ光源およびレーザレーダ装置に関する。
従来から、出力する光の波長を可変することができるレーザ光源、および当該レーザ光源を用いた測定対象物の速度距離測定手法が提案されている。
例えば、特許文献1では、波長可変フィルタを用いて、数十GHz程度の範囲で光の波長を調整するレーザ光源が開示されている。
また、非特許文献1では、三角波状に周波数変調された光を発光する発光素子を用いて、測定対象物までの距離および相対速度を計測する手法が開示されている。
特許第5029364号公報
木谷 博、「周波数変調光による物体の距離・速度測定」、福井工業大学研究紀要、福井工業大学、2003年、第33号、p.17−21
光の波長を可変することができるレーザ光源は、例えばFMCW(Frequency−Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)方式のレーザレーダ装置等の光源に用いられる。
しかし、FMCW方式のレーザレーダ装置では、送信波として用いる周波数変調されたレーザ光源の周波数の線形性が、距離等の測定精度に大きな影響を及ぼす。従って、例えばFMCW方式のレーザレーダに用いるレーザ光源には、掃引周波数の線形性が高く、かつ、安定度の高いレーザ光源が要求される。
しかしながら、特許文献1のレーザ光源では、薄膜ヒータを用いて導波路を加熱して導波路を伝播する光の波長を制御する方法を用いているため、周波数制御に係る応答速度が遅いという問題がある。
また、非特許文献1では、発光素子に注入する注入電流を変調することで、光を三角波状に周波数変調するが、注入電流変化に対する周波数変化は非線形であることから、掃引周波数を線形に変化させることは困難である。そのため、得られる距離等の測定結果には、掃引周波数の非線形性に起因する誤差が含まれることになる。
本発明は、上記に示した問題点を鑑みてなされたものであり、レーザ光の周波数の線形掃引性を向上したレーザ光源およびレーザレーダ装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のレーザ光源は、単一モードの光を出力する光増幅器と、単一モードの光を多モードの光に変換し鏡像を形成しつつ干渉させ、干渉後の多モードの光を単一モードの光に変換して出力する多モード干渉導波路、および前記鏡像が形成される位置に光の伝播方向と交差する方向に延伸されたチャネルを有する光変調器と、を備え、前記光変調器が、前記光増幅器から出力された光の経路上に配置される。
請求項2に記載のレーザ光源は、前記経路上に、光を伝播する導波路と、予め定めた周波数の光を透過させるリング共振器とを備え、前記リング共振器および前記導波路の少なくとも一方に前記光変調器を配置する。
請求項3に記載のレーザ光源は、前記光増幅器が化合物半導体で構成され、前記導波路、前記リング共振器および前記光変調器が光集積回路で構成される。
請求項4に記載のレーザ光源は、前記予め定めた周波数が互いに異なる複数の前記リング共振器を備え、前記リング共振器に前記光変調器を配置する場合、前記リング共振器の少なくとも1つに前記光変調器を配置する。
請求項5に記載のレーザ光源は、前記チャネルの各々に、P型にドーピングされたP型領域同士によるPP接合が形成される。
請求項6に記載のレーザ光源は、前記チャネルの各々に、N型にドーピングされたN型領域同士によるNN接合が形成される。
請求項7に記載のレーザ光源は、前記チャネルの各々に、P型にドーピングされたP型領域とN型にドーピングされたN型領域によるPN接合が形成される。
請求項8に記載のレーザレーダ装置は、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のレーザ光源と、前記レーザ光源から出力された光を対象物に放射する放射部と、前記放射部から放射した光のうち、前記対象物で反射した光を受光する受光部と、前記放射部から放射した光と前記受光部で受光した光との位相差を検出する検出部と、前記検出部で検出された位相差を用いて、前記対象物までの距離および前記対象物に対する相対速度を算出する算出部と、を備える。
請求項9に記載のレーザレーダ装置は、前記放射部および前記受光部が、複数の導波路の各々に熱量を供給し、前記複数の導波路を伝播する光の各々の位相を変調する位相変調部と、前記複数の導波路の各々に対応して配置された複数の回折格子から光を放射または受光する回折格子アレイと、を備えた光フェーズドアレイを含む。
以上説明したように、本発明に係るレーザ光源およびレーザレーダ装置によれば、レーザ光の周波数の線形掃引性を向上することができる、という効果を奏する。
レーザ光源の構成例を示す図である。 光変調器の構成例を示す図である。 光変調器の多モード干渉導波路を通過する光の状態について説明する模式図である。 三角波状に周波数変調された送信レーザ光および受信レーザ光の一例を示す図である。 レーザ光源の他の構成例を示す図である。 レーザ光源の他の構成例を示す図である。 レーザ光源を用いたレーザレーダの構成例を示す図である。 レーザ光源を用いたスキャン式レーザレーダの構成例を示す図である。 方形波状に周波数変調された送信レーザ光および受信レーザ光の一例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るレーザ光源1の構成例を示す図である。レーザ光源1は、共振器40と、利得媒体の一例である半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)50を含む。
SOA50は、例えばインジウム、ガリウム、ヒ素およびリンを用いた化合物であるInGaAsP系の1.55μm帯光増幅器であり、一端側が反射面M1とされ、他端側から光を出力する。
共振器40は、反射面M1と反射面M2とでファブリペロー共振器を構成し、選択された特定の波長を有する共振器出力光Pを出力する。
ここで、共振器40は、光変調器42、導波路48A、48B、48C、48D、48E、光フィルタ44A、光フィルタ44Bおよびアウトカプラ46を含む。
光変調器42は、多モード干渉導波路(Multi Mode Interference:MMI)を備え、電極から電流注入し、光の屈折率を変化させることで、共振器40における光の経路長を変化させる。
導波路48A、48B、48C、48D、48Eは、光を伝播する経路である。SOA50における光の出力端は導波路48Aに接続され、光変調器42を透過した光は、導波路48Bを経由して光フィルタ44Aに入力される。そして、光フィルタ44Aを透過した光は導波路48Cを経由して光フィルタ44Bに入力される。
ここで、光フィルタ44A、44Bは、透過する光の波長を選択する素子であり、本実施の形態では、リング導波路を用いたリング共振器型の光フィルタを用いている。経路長を変えることで、互いに予め定めた異なる波長(すなわち、周波数)の光が透過されるように光フィルタ44A、44Bを構成することによって、レーザ光源1における共振器出力光Pの周波数帯域が狭くなり、共振器出力光Pのピーク強度が高くなる。
一方、光フィルタ44Bを透過した光は、導波路48Dを経由してアウトカプラ46に入力される。
アウトカプラ46は、2つのループミラーを方向性結合器により結合させた構造を有するカプラであり、方向性結合器の部分が入射された光を反射する反射面M2の機能を有している。そして、アウトカプラ46から出力された光が、導波路48Eを介して共振器出力光Pとして共振器40から出力される。
図1では一例として、光変調器42を導波路48Aと導波路48Bの間に配置したが、これに限られず、例えば導波路48Dに配置するようにしてもよい。
なお、以降では、導波路48A、48B、48C、48D、48Eを区別する必要がない場合、まとめて「導波路48」ということにする。同様に、光フィルタ44A、44Bを区別する必要がない場合は、まとめて「光フィルタ44」ということにする。
次に、共振器40における光変調器42について詳細に説明する。
図2は、光変調器42の構成例を示した図である。図2に示すように、光変調器42は、Siの基板30、基板30上に形成されたSiO2(二酸化珪素)層32、多モード干渉導波路12、入力導波路14a、出力導波路14b、P電極18a、および同じくP電極18bを含む光集積回路として構成される。
光変調器42では、多モード干渉導波路12、入力導波路14a、および出力導波路14bはSiによって形成されると共に、多モード干渉導波路12、入力導波路14a、および出力導波路14bによって導波路が構成されている。そして、入力導波路14aの入力部Eiから入力光Piが入力され、出力導波路14bの出力部Eoから出力光Poが出力される。
ここで、本実施の形態に係る入力導波路14aおよび出力導波路14bの各々は、単一モード(シングルモード)から多モード(マルチモード)への変換、多モードから単一モードへの変換を考慮して平面視テーパ状に形成されているが、これに限られず、たとえば、均一の幅の導波路としてもよい。
光変調器42の入力光Piおよび出力光Poはいずれも単一モードの光である。本実施の形態に係る多モード干渉導波路12は、単一モードである入力光Piを多モードの光に変換して伝播させた後、伝播された多モードの光を単一モードに変換し、出力導波路14bから単一モードの出力光Poとして出力させる。なお、光変調器42は光の伝播方向に対して対称であるので、入力導波路14aと出力導波路14bとを逆にする、つまり出力導波路14bから入力光Piを入力し、入力導波路14aから出力光Poを出力することも可能である。
多モード干渉導波路12からは、SiにP型不純物を拡散(ドーピング)したPドープ領域であるPチャネル16a、16bが、光の伝播方向と直交する方向に延伸されている(以下、「Pチャネル16a」と「Pチャネル16b」とを区別しない場合には「チャネル16」という場合がある)。
図2(b)に示すように、Pチャネル16a、16bとの界面(すなわち、多モード干渉導波路12の略中央)においてPP接合PPが形成されている。後述するように、本実施の形態に係る光変調器42のチャネル16は、多モード干渉導波路12を伝播する光において鏡像が形成される位置に配置される。
なお、本実施の形態ではPチャネル16a、16bが各々3本の場合を例示しているが、チャネル16の数はこれに限定されず、例えば1本または3本以外の複数本であってもよい。また、以下において、図2(b)に示すチャネル16を含む断面で示される領域を、「チャネル形成領域」という場合がある。これに対し、図2(c)に示すチャネル16を含まない断面で示される領域を、「チャネル非形成領域」という場合がある。
Pチャネル16aの延伸方向端部近傍にはP+領域20aが、Pチャネル16bの延伸方向の端部近傍にはP+領域20bが形成されている。
P+領域20a、20bは、各々P電極18a、18bに接続するためのコンタクト領域であり、P+領域20aはビア22aを介してP電極18aに、P+領域20bはビア22bを介してP電極18bに接続されている。なお、本実施の形態に係るP+領域とはSiに高濃度のP型不純物が拡散された領域である。
ここで、図2(c)に示すように、チャネル非形成領域、すなわち光の伝播方向に沿ったチャネル16とチャネル16との間の領域ではチャネルが無いために、PP接合に相当する部分が分離されている。しかしながら、P電極18a、18bは、各々3本のPチャネル16a、3本のPチャネル16bを短絡して接続するために、P+領域20a、20b、ビア22a、22bは、チャネル形成領域とチャネル非形成領域とにかけて連続して形成されている。
本実施の形態に係る光変調器42の多モード干渉導波路12、入力導波路14a、出力導波路14b、およびチャネル16は、先述したようにSiで形成されており、多モード干渉導波路12、入力導波路14a、出力導波路14b、およびチャネル16の上部は、クラッドとしてのSiO2膜34によって覆われている。
図3は、入力部Eiから出力部Eoまで伝播する光の多モード干渉導波路12を通過する際の断面を示しており、図3(a)、(b)、(c)は、各々図2(a)、(b)、(c)に相当する断面図である。図3(b)に示すように、チャネル形成領域では、光はチャネル形成領域の略中央部分(PP接合PPの近傍)に沿って伝播する。また、図3(c)に示すように、チャネル非形成領域では、光はSiO2膜で分離されたSiの部分に沿って伝播する。
上記のような構成を有する光変調器42では、P電極18a、18bとの間に電流が注入されると、キャリアプラズマ効果によってPP接合PPにおける屈折率が変化し、入力光Piが位相変調されて出力光Poとして出力される。
ここで、キャリアプラズマ効果とは、半導体中の自由キャリアにより当該半導体の屈折率が変化する現象であり、P電極18a、18bに注入する電流によって自由キャリアの密度を制御することにより、光変調器42を伝播する光の波長を変化させる。
また、PP接合PPでは、P電極18a、18bに注入する電流によってジュール熱が発生し、更に光の屈折率が変化する。
先述したように、本実施の形態に係る光変調器42では、多モード干渉導波路12を伝播する光の鏡像が出る位置にチャネル16を配置することをひとつの特徴としている。
入力導波路14aから多モード干渉導波路12に入力する場合のように、単一モードの導波路から多モードの導波路に入射された光は周期的に像を結ぶ。これは、モード間の伝播定数の差からビートが発生するためである。像は一般に複数結ばれ、像を結ぶ周期は「MMI長」と称される場合もある。図2(a)では、間隔dがMMI長となっている。
多モードの導波路に入射された光が像を結ぶ位置は、換言すると、導波路に対して伝播する光が導波路の中心近くに収束する位置であり、鏡像が形成される位置となっている。この鏡像が形成される位置は電界が収束しているので波長依存性が少なく、また光学損失も少ないという特性を有している。
そこで、光変調器42では、鏡像が形成される位置にチャネル16を配置することにより、光変調器42の波長依存性および光学損失を低減させている。また、MMI長は回折格子のピッチに比べて長く、製造プロセス上の精度が小さくてすむので、光変調器42の製造プロセスが簡素化される。更に、チャネル16にリブを形成する必要がないため、光変調器42の製造プロセスが簡素化される。
次に、図4を参照して、FMCW方式のレーザレーダ装置(以下、「レーザレーダ」という)について説明する。
レーザレーダは、図4に示すように、時間tに対して例えば三角波状に周波数変調された送信レーザ光PTを送信する。送信レーザ光PTが距離dだけ離れた測定対象物Qで反射されると、受信レーザ光PRとなってレーザレーダに戻り、受信される。
送信レーザ光PTと受信レーザ光PRを時間軸に沿って表すと、受信レーザ光PRは送信レーザ光PTより遅延時間τだけ遅れる。この遅延時間τが測定対象物Qまでの距離dの情報を含んでおり、FMCW方式では、送信レーザ光PTと受信レーザ光PRとの周波数差δfを用いて距離dを算出する。
なお、図4に示す送信レーザ光PT、受信レーザ光PRの波形は一例であって、他の波形、例えば鋸歯状の波形を有する送信レーザ光PT、受信レーザ光PRであってもよい。
以上のように構成されたFMCW方式のレーザレーダでは、周波数変調された送信レーザ光PTを発生させるためのレーザ光源、すなわち光周波数掃引レーザ光源が、測距等における精度の向上の観点から重要なキーコンポーネントとなる。すなわち、掃引周波数の線形性、及び安定度のより優れた光周波数掃引レーザ光源を用いることが重要である。
レーザレーダの掃引周波数を制御する手法として、従来は導波路をヒータで加熱して光の屈折率を変化させる手法が用いられることがあった。
しかしながら、ヒータを光集積回路に内蔵し導波路を直接加熱することは、例えば排熱の観点からも困難であるため、光集積回路の表面にヒータを接触させて加熱することになる。この場合、光集積回路内の導波路から光集積回路の表面までは比較的距離が離れているため、ヒータで導波路を直接加熱する場合に比べて、ヒータで加熱を始めてから実際に導波路が加熱されるまでに時間差が生じる。また、熱容量は非線形性を有するため、導波路の加熱特性も非線形となる。
一方、光変調器42は、半導体中の自由キャリアにより当該半導体の屈折率を変化させているため、電極18a、18bからの電流注入量に応じて導波路の屈折率を線形に制御することが可能である。したがって、光変調器42は、導波路をヒータで加熱することにより光の屈折率を変化させる従来の手法に比べて、光の周波数を線形に変化させることができる。更に、光変調器42は、電流の注入によって生じるジュール熱により、導波路を直接加熱することができるため、ヒータで光集積回路の表面を加熱する場合に比べて、導波路の温度追従性が向上し、光の周波数制御に係る応答速度が向上する。したがって、図1に示したレーザ光源1は、レーザレーダの光源として適した特性を有する。
なお、上記に説明した光変調器42では、Pチャネル16aおよびPチャネル16bに、共にP型不純物を拡散したチャネル16を用いたが、それぞれN型不純物を拡散したNチャネル16aおよびNチャネル16bに置き換えてもよい。この場合、「P+領域20a」は「N+領域20a」、「P+領域20b」は「N+領域20b」、「P電極18a」は「N電極18a」、「P電極18b」は「N電極18b」にそれぞれ置き換えられる。
また、光変調器42のPチャネル16aはそのままにして、Pチャネル16bをN型不純物を拡散させたNチャネル16bに置き換えてもよい。この場合、「P+領域20b」は「N+領域20b」、「P電極18b」は「N電極18b」にそれぞれ置き換えられる。
光変調器42のチャネル16の境界にNN接合またはPN接合を設けた場合も、PP接合を設けた光変調器42と同じように、従来に比べて光の周波数の線形掃引性を向上することができる。
この際、光変調器42と共に共振器40を光集積回路で構成し、SOA50と組み合わせることで、従来に比べて光の周波数の線形掃引性に優れた外部共振器型レーザ光源を構成することができる。
また、図5に示すように、光変調器42を導波路48ではなく光フィルタ44に配置しても、従来に比べて光の周波数の線形掃引性を向上することができる。図5に示すレーザ光源1では、光変調器42を光フィルタ44Bに配置した例を示しているが、光フィルタ44Aに配置してもよく、また、光フィルタ44A、44Bの両方に光変調器42を配置してもよい。
更に、図6に示すように、光変調器42を導波路48と光フィルタ44の両方に配置してもよい。図6に示すレーザ光源1では、光変調器42を区別するため、導波路48に配置する光変調器42を「光変調器42A」、光フィルタ44に配置する光変調器42を「光変調器42B」で表している。光フィルタ44に光変調器42Bを配置する際、光フィルタ44Aに光変調器42Bを配置してもよく、また、光フィルタ44A、44Bの両方に光変調器42Bを配置してもよい。
なお、光変調器42を光フィルタ44に配置した場合、光変調器42を導波路48に配置する場合に比べて、光の周波数を大きく変化させることができる。
今、レーザ光源1に含まれる経路を屈折率に基づいてi個の区間に分割し、分割した各々の区間の経路長をLi、規定屈折率をni、屈折率変化量をΔniとすれば、レーザ光源1の光学的経路長Lは(1)式で表される。
(数1)
L=Σ(ni+Δni)Li ・・・(1)
すなわち、光学的経路長Lは、物理的経路長に対して屈折率が変化する部分がどの程度の割合を占めるかによって変動量が決まる。光学的経路長Lの変動量が大きければ光の周波数は大きく変化し、光学的経路長Lの変動量が小さければ光の周波数は小さく変化する。
光フィルタ44は直線状の導波路(例えば導波路48)に比べて経路長が短く、しかもリング形状をしているため、導波路48に比べて屈折率が変化する部分が占める割合が大きくなる。したがって、光変調器42を光フィルタ44に配置した場合は、光変調器42を導波路48に配置した場合に比べて光の周波数変動幅が大きくなる。
一方、導波路48は、光フィルタ44に比べて経路長が長く、屈折率が変化する部分は相対的に狭い範囲に限られる。したがって、光変調器42を導波路48に配置した場合は、光変調器42を光フィルタ44に配置した場合に比べて光の周波数変動幅が小さくなる。
(レーザ光源1の応用例1)
上記で説明したように、レーザ光源1は、レーザレーダの光源として用いることができる。
図7は、レーザ光源1を用いたレーザレーダ2の構成例である。レーザレーダ2は、レーザ光源1、送信光アンテナ60、受信光アンテナ62、光検出器64および処理装置66を含む。図1で示したようにレーザ光源1にはアウトカプラ46も含まれるが、図7では図示を省略している。
レーザレーダ2において、レーザ光源1から出力された共振器出力光Pは、送信光アンテナ60から測定対象物Qに向けて放射される。一方、共振器出力光Pは図示しない光カプラによって分岐され、分岐導波路68を経由して光検出器64に送信レーザ光PTとして入力される。
受信光アンテナ62は、送信光アンテナ60から放射された光のうち、測定対象物Qで反射した光を受信レーザ光PRとして受光する。
光検出器64は、送信レーザ光PTと受信レーザ光PRとを合波して合波光を生成し、ヘテロダイン干渉によって送信レーザ光PTと受信レーザ光PRとの位相差、すなわち周波数差δfを示す差周波信号を生成する。
処理装置66は、光検出器64から受け付けた差周波信号δfに対して周波数解析を行い、公知の手法を用いて、測定対象物Qまでの距離dおよび測定対象物Qとの相対速度vを算出する。
なお、送信光アンテナ60は、光を測定対象物Qに放射する放射部の一例であり、受信光アンテナ62は、測定対象物Qで反射した光を受光する受光部の一例である。また、光検出器64は、送信レーザ光PTと受信レーザ光PRとの位相差を検出する検出部の一例であり、処理装置66は、測定対象物Qまでの距離dおよび測定対象物Qとの相対速度vを算出する算出部の一例である。
光の周波数をヒータの温度で制御する場合に比べて、周波数の優れた線形掃引性を有するレーザ光源1をレーザレーダ2に用いることで、レーザレーダ2における距離および相対速度等の測定精度を向上させることができる。
(レーザ光源1の応用例2)
図8は、レーザ光源1を用いたスキャン式レーザレーダ3の構成例である。スキャン式レーザレーダ3とは、光アンテナから放射する光の放射方向を変化させることで、光の放射方向を固定した場合に比べて、より広範囲に存在する測定対象物Qの距離d等を測定するレーダ装置である。
スキャン式レーザレーダ3は、レーザ光源1、光フェーズドアレイアンテナ(以降、「光フェーズドアレイ」という)70A、光フェーズドアレイ70B、光検出器64および処理装置66を含む。図1で示したようにレーザ光源1にはアウトカプラ46も含まれるが、図8では図示を省略している。
スキャン式レーザレーダ3において、レーザ光源1から出力された共振器出力光Pは、光フェーズドアレイ70Aから測定対象物Qに向けて放射される。一方、共振器出力光Pは図示しない光カプラによって分岐され、分岐導波路68を経由して光検出器64に送信レーザ光PTとして入力される。
ここで、光フェーズドアレイ70Aとは、入力した光を図示しない光カプラによって複数の導波路(図8の例では、70−1から70−8の8本)に分岐させ、導波路70−1〜導波路70−8の端部から光を放射する光アンテナの一例である。以降では、導波路70−1から導波路70−8をまとめて「導波路70」と表す。
導波路70において、光を放射する側の端部には回折格子が設けられており、導波路70を伝播する光は、回折格子から測定対象物Qに向けて放射される。
光フェーズドアレイ70Aには、導波路70の各々を加熱するヒータ72A、72Bが取り付けられており、ヒータ72A、72Bで導波路70を加熱することで、導波路70を伝播する各々の光の屈折率を変化させ、複数の回折格子(回折格子アレイ)から放射される光の方向を変えることができる。すなわち、ヒータ72A、72Bは、位相変調部の一例として機能する。
ヒータ72Aは、導波路70−1から導波路70−8に進むにつれて、導波路70を加熱する面積が大きくなるような形状を有する(一例として、図8では三角形の形状で表している)。逆に、ヒータ72Bは、導波路70−1から導波路70−8に進むにつれて、導波路70を加熱する面積が小さくなるような形状を有する。
光の屈折率は、導波路70に供給される熱量(ヒータ72A、72Bの発熱量)に比例するため、導波路70の各々から放射される光の位相は直線状、すなわち、線形に変化する。したがって、導波路70の各々から放射された光の等しい位相をつないだ波面は直線となる。この波面の進行方向が送信光の伝播方向となり、測定対象物Qに放射される。
光フェーズドアレイ70Bは、光フェーズドアレイ70Aから放射された光のうち、測定対象物Qで反射した光を受信レーザ光PRとして受光する。
光フェーズドアレイ70Bは、光フェーズドアレイ70Aと光の伝播方向が逆方向になるだけで、光フェーズドアレイ70Aと同じ構造を備えている。光フェーズドアレイ70Bは、導波路70の各々に設けられた回折格子で受信レーザ光PRを受光し、受光した受信レーザ光PRを図示しない光カプラで合波して光検出器64に伝播する光アンテナの一例である。光フェーズドアレイ70Bは、ヒータ72A、72Bの温度を制御することで受光する光の方向を制御する。
既に説明したように、光変調器42を光フィルタ44に配置した場合は、光変調器42を導波路48に配置する場合に比べて、光の周波数を大きく変化させることができる。したがって、光変調器42Bの電極18a、18bに注入する電流の大きさを制御することで、光フェーズドアレイ70Aから放射される送信レーザ光PTの放射角を変化させることができる。
一方、光変調器42を導波路48に配置した場合は、光変調器42を光フィルタ44に配置した場合に比べて、狭い範囲の周波数を制御することができる。したがって、光変調器42Aの電極18a、18bに注入する電流の大きさを制御することで、図4に示したように、送信レーザ光PTの周波数を線形に掃引することができる。
このように本実施の形態に係るレーザ光源1では、多モード干渉導波路12の光の鏡像が形成される位置にチャネル16を配置した光変調器42が、共振器40における光の経路上に配置されている。キャリアプラズマ効果の作用によって光の屈折率を変化させる光変調器42は、導波路48をヒータで加熱して光の屈折率を変化させる手法に比べて、光の周波数を線形に制御することができる。したがって、レーザ光源1における光の周波数の線形掃引性が向上する。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えばレーザ光源1の出力光の波形は、図4に示した三角波状に限られず、図9に示すように、送信レーザ光PTが方形波となるように、光変調器42の電極18a、18bに注入する電流の大きさを制御してもよい。
1・・・レーザ光源、2・・・レーザレーダ、3・・・スキャン式レーザレーダ、12・・・多モード干渉導波路、14a・・・入力導波路、14b・・・出力導波路、16(16a、16b)・・・チャネル、18a、18b・・・電極、40・・・共振器、42(42A、42B)・・・光変調器、44(44A、44B)・・・光フィルタ、46・・・アウトカプラ、48(48A〜48E)・・・導波路、60・・・送信光アンテナ、62・・・受信光アンテナ、64・・・光検出器、66・・・処理装置、68・・・分岐導波路、70A、70B・・・光フェーズドアレイ、70(70−1〜70−8)・・・(光フェーズドアレイ内)導波路、72A、72B・・・ヒータ、P・・・共振器出力光、PR・・・受信レーザ光、PT・・・送信レーザ光、Q・・・測定対象物

Claims (9)

  1. 単一モードの光を出力する光増幅器と、
    単一モードの光を多モードの光に変換し鏡像を形成しつつ干渉させ、干渉後の多モードの光を単一モードの光に変換して出力する多モード干渉導波路、および前記鏡像が形成される位置に光の伝播方向と交差する方向に延伸されたチャネルを有する光変調器と、
    を備え、
    前記光変調器が、前記光増幅器から出力された光の経路上に配置された、
    レーザ光源。
  2. 前記経路上に、光を伝播する導波路と、予め定めた周波数の光を透過させるリング共振器とを備え、
    前記リング共振器および前記導波路の少なくとも一方に前記光変調器を配置した
    請求項1記載のレーザ光源。
  3. 前記光増幅器が化合物半導体で構成され、前記導波路、前記リング共振器および前記光変調器が光集積回路で構成された
    請求項2記載のレーザ光源。
  4. 前記予め定めた周波数が互いに異なる複数の前記リング共振器を備え、
    前記リング共振器に前記光変調器を配置する場合、前記リング共振器の少なくとも1つに前記光変調器を配置した
    請求項2または請求項3記載のレーザ光源。
  5. 前記チャネルの各々に、P型にドーピングされたP型領域同士によるPP接合が形成された
    請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレーザ光源。
  6. 前記チャネルの各々に、N型にドーピングされたN型領域同士によるNN接合が形成された
    請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレーザ光源。
  7. 前記チャネルの各々に、P型にドーピングされたP型領域とN型にドーピングされたN型領域によるPN接合が形成された
    請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレーザ光源。
  8. 請求項1から請求項7の何れか1項に記載のレーザ光源と、
    前記レーザ光源から出力された光を対象物に放射する放射部と、
    前記放射部から放射した光のうち、前記対象物で反射した光を受光する受光部と、
    前記放射部から放射した光と前記受光部で受光した光との位相差を検出する検出部と、
    前記検出部で検出された位相差を用いて、前記対象物までの距離および前記対象物に対する相対速度を算出する算出部と、
    を備えたレーザレーダ装置。
  9. 前記放射部および前記受光部が、複数の導波路の各々に熱量を供給し、前記複数の導波路を伝播する光の各々の位相を変調する位相変調部と、前記複数の導波路の各々に対応して配置された複数の回折格子から光を放射または受光する回折格子アレイと、を備えた光フェーズドアレイを含む
    請求項8記載のレーザレーダ装置。
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